(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069297
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】紙積層シート、および該シートを用いた包装用シート、袋、紙積層シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 29/00 20060101AFI20220428BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20220428BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B32B29/00
B65D65/02 E
B65D65/40 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178401
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 洋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 周平
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB03
3E086CA11
4F100AK03C
4F100AK03D
4F100AK04C
4F100AK63D
4F100AR00E
4F100AT00B
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4F100GB15
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4F100YY00
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4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ピンホールの発生を抑制した、撓みやすい紙基材を用いた紙積層シートの提供、また、性能を低下させることなくプラスチックの使用を抑えることができる紙積層シートの提供。
【解決手段】紙基材層11、アンカーコート層13、ポリオレフィン系樹脂から成る接着用樹脂層14、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層12を順に備える紙積層シート10であって、前記紙基材層の重量をXg/m
2、紙積層シート全体の重量をYg/m
2とするとき、Y/2<X<120であることを特徴とする紙積層シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂から成る接着用樹脂層、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層を順に備える紙積層シートであって、
前記紙基材層の重量をXg/m2、紙積層シート全体の重量をYg/m2とするとき、Y/2<X<120であることを特徴とする紙積層シート。
【請求項2】
前記接着用樹脂層を成すポリオレフィン系樹脂が、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が5~30g/10minであるポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の紙積層シート。
【請求項3】
前記紙基材層と、前記アンカーコート層との間に、バリア層を有することを特徴とする請求項1又は2記載の紙積層シート。
【請求項4】
前記紙基材層が、前記バリア層側と反対側の面に、印刷層を有することを特徴とする請求項3記載の紙積層シート。
【請求項5】
最表面に、抗菌及び/又は抗ウィルス層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の紙積層シート。
【請求項6】
前記シーラント層の厚さが、50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の紙積層シート。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の紙積層シートから成ることを特徴とする包装用シート。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の紙積層シートから成ることを特徴とする袋。
【請求項9】
内面にチャックを有することを特徴とする請求項8記載の袋。
【請求項10】
必要に応じバリア剤が塗工された紙基材の一方の面にアンカーコート剤を塗布し、これを乾燥させ、紙基材層/アンカーコート層、もしくは、紙基材層/バリア層/アンカーコート層の積層シートを得る第一工程と、
第一工程で得られた積層シートと、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層用のフィルムとの間に、ポリオレフィン系樹脂から成る接着用樹脂層を溶融状態で押出す第二工程とを有する請求項1乃至6のいずれかに記載の紙積層シートの製造方法。
【請求項11】
紙基材に印刷を行う印刷工程を、前記第二工程の後に備えることを特徴とする請求項10記載の紙積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材にプラスチックフィルムを積層した紙積層シートに関する。詳しくは、紙基材に熱可塑性樹脂から成るシーラントフィルムを積層し、紙基材にヒートシール性を付与した紙積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料などの分野においては、プラスチックからの脱却が望まれている。特許文献1、2は、紙カップ、ゲーベルトップ型液体用紙容器、フラットトップ型液体用紙容器、円筒型液体用紙容器等の液体用紙容器に用いられる包装材料に関する発明である。当該包装材料は紙基材を使用している為、従来のプラスチック基材を使用した容器よりも、プラスチックの使用量を減らすことが可能である。
【0003】
しかしながら特許文献1、2では紙基材として坪量が250~400g/m2のものが例示されている(特許文献1[0019]、特許文献2[0017])。当該紙基材は、高強度で液体容器には適するが、撓み難く袋等の用途には適さない。
また包装材料の分野においては、プラスチックだけでなく、すべての原材料の使用量を削減することも求められている。特許文献1、2に開示された包装材料においても、軽量化・薄膜化により、原材料の使用量を減らすことが求められている。
【0004】
特許文献3も、紙基材を用いた包装材料に関する発明である。特許文献3では、ガスバリア性と水蒸気バリア性を併せ持つ紙製バリア材料を得るために、紙基材上に、水蒸気バリア層、水溶性高分子を含有するガスバリア層を有する紙製バリア原紙の少なくとも一方の面上に、さらに保護層を有することを特徴とする紙製バリア材料が開示されている。当該発明において用いられている紙基材は30~110g/m2程度であり(特許文献3[0017])、可撓性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-111345号公報
【特許文献2】特開2020-111346号公報
【特許文献3】WO2018/062466
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら本発明者らは、紙基材として坪量120g/m2未満の撓みやすいものを用い、これにシーラント層を設けた包装材料は、輸送時の振動などにより特定の部分が屈曲を繰り返し、ピンホールと呼ばれる小さな穴が開きやすいという課題を見出した。シーラント層を厚くすると、ピンホールの発生はある程度抑制することができるが、プラスチックの使用量が多くなる為、環境に与える負荷が大きくなる。
本発明は撓みやすい紙基材を用いた紙積層シートにおいて、ピンホールの発生を抑制することを課題とする。プラスチックの使用を抑えることができる紙積層シートの分野において、性能を低下させることなく積層シートを軽量化・薄膜化し、環境負荷を低減し、もって地球環境の持続可能な発展に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題を解決するために以下の手段が提案される。
[1]紙基材層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂から成る接着用樹脂層、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層を順に備える紙積層シートであって、前記紙基材層の重量をXg/m2、紙積層シート全体の重量をYg/m2とするとき、Y/2<X<120であることを特徴とする紙積層シート。
[2]前記接着用樹脂層を成すポリオレフィン系樹脂が、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が5~30g/10minであるポリエチレン系樹脂であることを特徴とする[1]の紙積層シート。
[3]前記紙基材層と、前記アンカーコート層との間に、バリア層を有することを特徴とする[1]又は[2]の紙積層シート。
【0008】
[4]前記紙基材層が、前記バリア層側と反対側の面に、印刷層を有することを特徴とする[3]の紙積層シート。
[5]最表面に、抗菌及び/又は抗ウィルス層を有することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかの紙積層シート。
[6]前記シーラント層の厚さが、50μm以下であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかの紙積層シート。
【0009】
[7][1]乃至[6]のいずれかの紙積層シートから成ることを特徴とする包装用シート。
[8][1]乃至[6]のいずれかの紙積層シートから成ることを特徴とする袋。
[9]内面にチャックを有することを特徴とする[8]の袋。
【0010】
[10]必要に応じバリア剤が塗工された紙基材の一方の面にアンカーコート剤を塗布し、これを乾燥させ、紙基材層/アンカーコート層、もしくは、紙基材層/バリア層/アンカーコート層の積層シートを得る第一工程と、第一工程で得られた積層シートと、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層用のフィルムとの間に、ポリオレフィン系樹脂から成る接着用樹脂層を溶融状態で押出す第二工程とを有する[1]乃至[6]のいずれかの紙積層シートの製造方法。
[11]紙基材に印刷を行う印刷工程を、前記第二工程の後に備えることを特徴とする[10]の紙積層シートの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
紙基材層の重量をXg/m2、紙積層シート全体の重量をYg/m2とするとき、本発明の紙積層シートは、Y/2<X<120である。よって、紙基材層の重量Xが、紙積層シート全体の重量Yの1/2を超える為、使用されるプラスチックの割合は1/2未満である。また紙基材の重量Xが120g/m2未満、紙積層シート全体の重量Yが240g/m2未満であり、使用するプラスチックの量も原材料の量も共に少なく、環境に与える負荷を低減し、地球環境の持続可能な発展に寄与することができる。また本発明の紙積層シートは撓みやすく、袋等の用途にも利用することができる。更に紙基材と、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層とが、ポリオレフィン系樹脂から成る接着用樹脂層により積層されている為、ヒートシール性に優れ、ピンホールの発生も少ない。
特に前記接着用樹脂層を成すポリオレフィン系樹脂が、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が5~30g/10minであるポリエチレン系樹脂であると、当該接着用樹脂層が緩衝機能を発揮し、ピンホールの発生をより確実に抑制することができる。
【0012】
また紙基材層と、接着用樹脂層との間に、バリア層を設けると、ナイロンなどのプラスチック基材を用いた積層シートと同等のバリア性を発揮することができる。
また紙基材層が、前記バリア層と反対側となる面に、印刷層を備えると、植物由来水性インキを使用して美麗な印刷を行うことができるため、環境負荷低減に、更に貢献することができる。
また最表面に、抗菌及び/又は抗ウィルス層を有すると、紙積層シート自体を清潔に保つことができる。また紙積層シートを包装資材として用いると、内容物に菌やウィルスが付着することを抑制できる。更に該紙積層シートは、不特定多数の人が集まる場所で使用しても、快適で衛生的な環境づくりに役立つ。
またシーラント層を50μm以下とすることにより、使用するプラスチックの量、原材料の量を抑えることができる。
【0013】
本発明の紙積層シートは、可撓性を備えるため、包装用シートや袋等に使用することができる。またシーラント層を備えるため、内面にチャックを取り付けることが容易で、チャック付き袋の基材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の紙積層シートの一実施例を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の紙積層シートの一実施例を示す模式的断面図である。
【
図3】本発明のチャック付き袋を表す模式的平面図(A)とそのI-I’端面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、同様の効果を奏する範囲において種々の実施形態をとることができる。
【0016】
[紙積層シート]
本発明の紙積層シートは、
図1に示すように、紙基材層11と、シーラント層12と、これらを接着させるアンカーコート層13と、接着用樹脂層14とを備える。また
図2に示す実施形態では、本発明の紙積層シート20は、抗ウィルス層27、印刷層26、紙基材層21、バリア層25、アンカーコート層23、接着用樹脂層24、シーラント層22を順に備える。
(紙基材層)
本発明の紙基材層は、上質紙、中質紙、塗工紙、片艶紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、グラシン紙、板紙、白板紙、ライナーなどの各種公知の紙基材からなる層である。これらの中でも、未漂白のクラフト紙は、環境に優しい印象を与える色目である為、本発明の基材として特に適する。
【0017】
本発明の紙基材層は、坪量Xg/m2が120g/m2未満である。Xが120以上では紙基材が撓みにくくなる為、袋等の用途に使用することが難しくなる。該Xは、可撓性や環境負荷を考慮すると、100未満であることが好ましく、特に80未満であることが好ましく、更には70未満であることが好ましい。またXは、強度の面から、10を超えることが好ましく、更には30を超えることが好ましく、特に40を超えることが好ましい。
また紙積層シート全体の重量をYg/m2とするとき、紙基材層の坪量Xg/m2は全体の重量Yの1/2を超える。XがYの1/2以下であると、紙積層シートにおけるプラスチックの割合が大きくなり、環境負荷が増大する。
【0018】
(シーラント層)
シーラント層は、紙積層シートにヒートシール性を付与する層であり、紙積層シートにおいて、少なくとも一方の表面層を形成する層である。本発明のシーラント層はポリオレフィン系樹脂から成る。当該ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のエチレン系ホモポリマー、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などのエチレン系共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体やプロピレン-ブテン共重合体等のプロピレン系共重合体、ポリブテン、ポリ-4メチルペンテン-1等を例示することができる。尚、本発明のシーラント層は、上述した樹脂を単独で使用してもよく、適宜ブレンドして用いてもよく、また上述した樹脂を用いた多層シートとしてもよい。さらに本発明の効果を阻害しない範囲において、他の樹脂層をブレンドしてもよい。
またシーラント層は、トウモロコシやサトウキビ等の植物を原料とするエタノールを重合して得られるポリエチレンやポリプロピレン等(以下、「バイオマス由来ポリオレフィン」と略称する。)を含んでいてもよい。シーラント層にバイオマス由来ポリオレフィンを加えることにより、紙積層シートにおける化石燃料由来原料の使用量を減らすことができ、環境負荷を低減することができる。
【0019】
シーラント層は、ヒートシール性、耐衝撃性を考慮すると、エチレン系ホモポリマーあるいはエチレン系共重合体が適する。特に好適な樹脂は低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレン、更には直鎖状低密度ポリエチレンである。シーラント層が低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンである場合、そのMFR(JIS-K7210 190℃ 2.16kg荷重)は0.1~15.0g/10min、特に0.1~10.0g/10min、更には3.0~7.0g/10minであることが望ましい。MFRが当該範囲より小さいと、インフレーション押出成形法やTダイ押出成形法といった、一般的な製膜方法にてシーラント層用のフィルムを成形することが困難となる。
【0020】
また、シーラント層の厚さは特に限定されるものではないが、20~100μm、特に25~80μm、更には30~70μm、特に50μm以下であることが好ましい。シーラント層が当該範囲よりも薄いと、紙積層シートに十分なヒートシール性を付与することが難しくなり、またシーラント層の厚さが当該範囲を超えても、ヒートシール性の改善は見られず、使用する原材料の量が多くなるだけである。
【0021】
(アンカーコート層)
アンカーコート層は、紙基材層と接着用樹脂層との密着強度を高める為の層である。アンカーコート層は、従来公知の反応硬化型接着剤を用いて成形することができる。該接着剤としては、溶剤タイプの1液硬化型アンカーコート剤、2液硬化型アンカーコート剤などを例示することができる。またアンカーコート剤の種類としては、ポリウレタン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤等を例示することができる。アンカーコート層の厚さは、特に制限するものではないが、例えば、0.01~3μmであることが好ましく、0.05~1μmであることがより好ましい。厚さが上記範囲よりも薄いと、密着強度が小さくその効果を発揮できない恐れがある。厚さが上記範囲よりも厚くても、密着性の改善効果は見られず、コストアップに繋がるだけである。
【0022】
(接着用樹脂層)
接着用樹脂層は、上述した紙基材とシーラント層とを接着させるための層である。本発明の紙積層シートは、該接着用樹脂層にポリオレフィン系樹脂を用いることにより、ピンホールの発生を抑制する。
接着性樹脂層に用いられるポリオレフィン系樹脂層は、シーラント層と同様に、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のエチレン系ホモポリマー、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などのエチレン系共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体やプロピレン-ブテン共重合体等のプロピレン系共重合体、ポリブテン、ポリ-4メチルペンテン-1等を例示することができる。またこれらの樹脂を変性した樹脂を用いてもよい。更に、上述した樹脂を単独で使用してもよく、適宜ブレンドして用いてもよい。また本発明の効果を阻害しない範囲において、他の樹脂層をブレンドしてもよい。
また接着用樹脂層は、シーラント層と同様に、バイオマス由来ポリオレフィンを含んでいてもよい。バイオマス由来ポリオレフィンを加えることにより、紙積層シートにおける化石燃料由来原料の使用量を減らすことができ、環境負荷を低減することができる。
【0023】
接着用樹脂層は、耐ピンホール性を考慮すると、エチレン系ホモポリマーあるいはエチレン系共重合体が適する。特に好適な樹脂は低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレン、特には低密度ポリエチレンである。接着用樹脂層が低密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンである場合、そのMFR(JIS-K7210 190℃ 2.16kg荷重)は5~30g/10min、特に6~20g/10min、更には8~15g/10minであることが望ましい。MFRが当該範囲より小さいと、樹脂の分子量が大きくなり、ピンホール性改善の効果が乏しくなる。またMFRが該範囲よりも大きいと、後述するサンドラミネート等によって、紙基材とシーラント層用のフィルムとを接着することが困難になる。
【0024】
接着用樹脂層の厚さは特に限定されるものではないが、5~50μm、特に10~40μm、更には15~35μmであることが好ましい。接着用樹脂層が5μm未満では、紙基材とシーラント層用のフィルムを、安定して接着することが難しくなる。また接着用樹脂層が50μmを超えても、効果の改善は見られず、使用する原材料が増えるだけである。
【0025】
(バリア層)
図2も本発明の紙積層シートの一実施形態を表す模式的断面図であるが、該紙積層シート20は紙基材21とアンカーコート層23との間に、バリア層25を備える。
紙基材は酸素や水蒸気などを通しやすいので、予め紙基材にバリア層を設けておくことが望ましい。バリア層は、無機蒸着層や無機蒸着フィルム、金属箔、バリア剤を塗工した層等、従来公知の水蒸気及び/又はガスをバリアする層である。これらの中でも、リサイクル性や原材料削減を考慮すると、バリア剤を塗工した層であることが好ましい。尚、バリア剤の塗工によるバリア層が形成された紙基材として、日本製紙株式会社の「シールドプラス(登録商標)」が販売されているので、これを用いてもよい。
【0026】
(印刷層)
本発明の紙基材層には、意匠性を付与する目的で、印刷を行うことが好ましい。印刷インキには、環境負荷低減の観点から、水性の植物由来インキを用いることが望ましい。水性の植物由来インキとして、サカタインクスのEcoPino(登録商標)、EcoPlata(登録商標)等を例示することができる。
図2の紙積層シート20では、印刷層26が、紙基材21のバリア層25と反対側の面に形成されている。紙積層シート20のバリア層25上には美麗な印刷を施すことが困難であるが、紙基材に直接であれば、植物由来水性インキを使用して美麗な印刷を行うことができ、環境負荷低減に、更に貢献することができる。
【0027】
(その他の機能層)
本発明の紙基材層には、更に機能層を設けることができる。機能層は特に限定されるものではないが、例えば抗菌コート層や抗ウィルス層等である。抗菌コート層や抗ウィルス層は、効率よく効果を発揮する為に、紙積層シートの最表面に位置することが望ましい。
図2に示す紙積層シート20は最外層に抗ウィルス層27を備える。
【0028】
[紙積層シートの製造方法]
本発明の紙積層シートの製造方法は特に限定されるものではないが、紙基材とシーラント層用のフィルムとを、溶融状態の接着用樹脂を貼り合わせる方法が望ましい。
詳しくは、必要に応じバリア剤が塗工された紙基材を用意し、初めに該紙基材の一方の面にアンカーコート剤を塗布し、これを乾燥させ、紙基材層/アンカーコート層、もしくは、紙基材層/バリア層/アンカーコート層の積層シートを得る。次いで、該積層シートと、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層用のフィルムとの間に、ポリオレフィン系樹脂から成る接着用樹脂層を溶融状態で押出し(いわゆるサンドラミネート法)、紙基材層/アンカーコート層/接着用樹脂層/シーラント層、もしくは、紙基材層/バリア層/アンカーコート層/接着用樹脂層/シーラント層という構成の紙積層シートを得る。
印刷を行う場合は、予め紙基材の表面に印刷を行っておき、その後、シーラント層用のフィルムと貼り合わせてもよい。しかしながら、初めに紙基材とシーラント層用のフィルムとを貼り合わせて積層シートを製造した後、該積層シートに印刷を行うことが好ましい。該方法によると、印刷を行う際に、紙基材の裏面にシーラント層があり、紙基材が柔軟になる為、皺が入りにくい。
【0029】
[紙積層シートの用途]
本発明の紙積層シートは、可撓性に優れるため包装用フィルムの代替として用いることができる。またヒートシール性を備えるため、袋の形状にして使用することもできる。また
図3に示すように、紙積層シート30の内面(シーラント層側)に雄型のチャックテープaと雌型のチャックテープbとを取り付けておき、チャック付き袋として用いることもできる。
【実施例0030】
以下、本発明の紙積層シートを実施例に基づき説明する。尚、紙積層シートの物性は以下の方法にて測定する。
[紙基材重さ・紙製層シート重さ]
100mm×100mmに切り出し、電子天秤を用いて測定する。
[引張強度]
JIS Z 1707に準拠し、フィルムの長さ方向(MD)と幅方向(TD)について測定する。
[引裂強さ]
JIS K 7128-2に準拠し、フィルムの長さ方向(MD)と幅方向(TD)について測定する。
[接着強度]
紙基材層/接着用樹脂層間、接着用樹脂層/シーラント層間の接着強度を、T型剥離法にて測定する。
[酸素透過度]
紙積層シートをMOCON法にて23℃60%RTの環境下にて測定する。またゲルボフレックステスターを用いて紙積層シートを10回屈曲させた後、50回屈曲させた後にも、同様にして酸素透過度を測定する。
[ヒートシール強度]
紙積層シートを2枚用意し、シーラント層同士が接するように重ねて、130℃、0.3MPaにて1秒間ヒートシールし、ヒートシール部のシール硬度を測定する。
[耐ピンホール性]
ゲルボフレックステスターを用いて、紙積層シートを3000回屈曲させた後、積層シートに発生したピンホールの個数を数える。尚、テストは3回行い、その平均値を耐ピンホール性の値とする。
【0031】
[実施例1]
初めに、一方の面にバリア剤が塗工された紙基材(シールドブラス(登録商標)、日本製紙株式会社製 片艶晒紙タイプ)を用意し、該紙基材のバリア層上にイミン系の2液硬化型のアンカーコート剤を塗布し、これを乾燥して、紙基材層/バリア層/アンカーコート層の積層シートを得た。次いで、紙基材/バリア層/アンカーコート層の積層シート上に、低密度ポリエチレン(密度919kg/m3、MFR13g/10min)からなる接着用樹脂を20μmの厚さとなるように溶融押出し、直鎖状低密度ポリエチレン(密度910kg/m3、MFR4g/10min)から成る厚さ40μmのシーラント層用のフィルムと貼り合わせ、紙基材層/バリア層/アンカーコート層/接着用樹脂層/シーラント層の層構成を持つ積層シートを得た。更に、該積層シートに水性の植物インキを用いて印刷を行い、本発明の紙積層シートを得た。該紙積層シートの物性を表1に記す。
【0032】
[実施例2]
紙基材を、片艶晒紙タイプから未晒紙タイプ(シールドブラス(登録商標)、日本製紙株式会社製 未晒紙タイプ)に変更した以外は、実施例1と同様にして、紙積層シートを得た。
該積層シートの物性を表1に併せて記す。
【0033】