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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069402
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】静電モータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
H02N1/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163545
(22)【出願日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020178494
(32)【優先日】2020-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595153125
【氏名又は名称】鈴木 数馬
(74)【代理人】
【識別番号】100101421
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 数馬
(57)【要約】
【課題】圧電素子を使用して、安価で使い易く、高速回転の可能な長寿命な静電モータを提供する。
【解決手段】圧電素子を使用した高電圧発生装置と、中心軸線CLの回りに回動可能に支持されたロータ30と、該ロータに設けられた1個以上のロータ電極30D1と、ステータ側構成として、電荷注入電極20N1とステータ電極20D1とを1組以上具備し、電荷注入電極の先端20Tとステータ電極とは、ロータが中心軸線の回りに回動すればロータ電極と対面することができる位置に設けられており、ロータ電極が前記先端と対面した状態におけるロータ電極と前記先端との成す第1隙間δ1はコロナ放電が可能に小さく、ロータ電極がステータ電極と対面した状態におけるロータ電極とステータ電極との成す第2隙間δ2よりも小さく、高電圧発生装置の一方の出力端子を電荷注入電極と接続し、他方の出力端子をステータ電極と接続する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を使用した高電圧発生装置と、
中心軸線の回りに回転可能に支持されたロータと、
該ロータに設けられた1個又は2個以上のロータ電極と、
ステータ側構成として、電荷注入電極とステータ電極とを1組以上具備し、
前記電荷注入電極の先端と前記ステータ電極とは、前記ロータが前記中心軸線を中心とした円周方向に回動すれば前記ロータ電極と対面することができる位置に設けられており、
前記ロータ電極が前記先端と対面した状態における前記ロータ電極と前記先端との成す第1の隙間はコロナ放電が可能な小ささであり、前記ロータ電極が前記ステータ電極と対面した状態における前記ロータ電極と前記ステータ電極との成す第2の隙間よりも小さく、
前記高電圧発生装置の一方の出力端子は、前記電荷注入電極と電気接続されているか又は接続可能であり、他方の出力端子は前記ステータ電極と電気接続されているか又は接続可能なことを特徴とする静電モータ。
【請求項2】
前記ステータ電極の前記ロータと対面する側に突出電極部が設けられている請求項1記載の静電モータ。
【請求項3】
前記突出電極部は、前記組を成す前記電荷注入電極と前記ステータ電極との関係であって、該電荷注入電極から遠い側の前記ステータ電極の縁部を折り曲げて形成するか、又は、前記ロータと対面する側の前記ステータ電極の面が、前記ロータ電極の面に対して前記円周方向に傾斜しており、その傾斜は、該ステータ電極と組を成す前記電荷注入電極から遠い位置程、前記ロータ側に近づくよう形成されている請求項2記載の静電モータ。
【請求項4】
圧電素子を使用した高電圧発生装置と、
中心軸線の回りに回動可能に支持されたロータと、
該ロータに設けられた1個又は2個以上のロータ電極と、
ステータ側構成として、ステータ電極と1対の電荷注入電極とを1組以上具備し、前記1対の電荷注入電極の夫々は、前記円周方向において前記ステータ電極に対して互いに反対側に位置しており、
前記1対の電荷注入電極の各先端と前記ステータ電極とは、前記ロータが前記円周方向に回動すれば前記ロータ電極と対面することができる位置に設けられており、
前記ロータ電極が前記各先端と対面した状態における前記ロータ電極と前記各先端との成す第1の隙間はコロナ放電が可能な小ささであり、前記ロータ電極が前記ステータ電極と対面した状態における前記ロータ電極と前記ステータ電極との成す第2の隙間よりも小さく、
前記高電圧発生装置の一方の出力端子は、切替スイッチを介して前記1対の電荷注入電極の夫々と選択的に電気接続可能であり、他方の出力端子は、前記ステータ電極と電気接続されているか又は接続可能なことを特徴とする静電モータ。
【請求項5】
前記ステータ電極の前記ロータと対面する側に突出電極部が設けられており、前記突出電極部は、前記ステータ電極上の前記円周方向における中央部に配設されている請求項4記載の静電モータ。
【請求項6】
前記突出電極部は、前記ステータ電極の前記中央部を盛り上げて形成されている請求項5記載の静電モータ。
【請求項7】
圧電素子を使用した高電圧発生装置と、
所定ラインに沿って移動可能に支持されたロータと、
該ロータに設けられた1個又は2個以上のロータ電極と、
ステータ側構成として、電荷注入電極とステータ電極とを1組以上具備し、
前記電荷注入電極の先端と前記ステータ電極とは、前記ロータが移動すれば前記ロータ電極と対面することができる位置に設けられており、
前記ロータ電極が前記先端と対面した状態における前記ロータ電極と前記先端との成す第1の隙間はコロナ放電が可能な小ささであり、前記ロータ電極が前記ステータ電極と対面した状態における前記ロータ電極と前記ステータ電極との成す第2の隙間よりも小さく、
前記高電圧発生装置の一方の出力端子は、前記電荷注入電極と電気接続されているか又は接続可能であり、他方の出力端子は前記ステータ電極と電気接続されているか又は接続可能なことを特徴とする静電モータ。
【請求項8】
前記ステータ電極の前記ロータと対面する側に突出電極部が設けられている請求項7記載の静電モータ。
【請求項9】
前記突出電極部は、前記組を成す前記電荷注入電極と前記ステータ電極との関係であって、該電荷注入電極から遠い側の前記ステータ電極の縁部を折り曲げて形成するか、又は、前記ロータと対面する側の前記ステータ電極の面が、前記ロータ電極の面に対して前記所定ラインに沿って傾斜しており、その傾斜は、該ステータ電極と組を成す前記電荷注入電極から遠い位置程、前記ロータ側に近づくよう形成されている請求項8記載の静電モータ。
【請求項10】
圧電素子を使用した高電圧発生装置と、
所定ラインに沿って移動可能に支持されたロータと、
該ロータに設けられた1個又は2個以上のロータ電極と、
ステータ側構成として、ステータ電極と1対の電荷注入電極とを1組以上具備し、前記1対の電荷注入電極の夫々は、前記所定ラインに沿った方向において前記ステータ電極に対して互いに反対側に位置しており、
前記1対の電荷注入電極の各先端と前記ステータ電極とは、前記ロータが前記所定ラインに沿って移動すれば前記ロータ電極と対面することができる位置に設けられており、
前記ロータ電極が前記各先端と対面した状態における前記ロータ電極と前記各先端との成す第1の隙間はコロナ放電が可能な小ささであり、前記ロータ電極が前記ステータ電極と対面した状態における前記ロータ電極と前記ステータ電極との成す第2の隙間よりも小さく、
前記高電圧発生装置の一方の出力端子は、切替スイッチを介して前記1対の電荷注入電極の夫々と選択的に電気接続可能であり、他方の出力端子は、前記ステータ電極と電気接続されているか又は接続可能なことを特徴とする静電モータ。
【請求項11】
前記ステータ電極の前記ロータと対面する側に突出電極部が設けられており、前記突出電極部は、前記ステータ電極上の前記所定ラインに沿った中央部に配設されている請求項10記載の静電モータ。
【請求項12】
前記突出電極部は、前記ステータ電極の前記中央部を盛り上げて形成されている請求項11記載の静電モータ。
【請求項13】
前記ステータ電極の前記ロータ電極と対面し得る面に、電気絶縁被膜を設けている請求項2,3,5,6,8,9,11,12の何れか1記載の静電モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を使用した高電圧発生装置の発生電圧を駆動エネルギー源としてロータが回転作動する回転式静電モータと、直線又は曲線に沿ってリニア作動するリニア式静電モータとに関する。
ここでは、ステータに対して駆動される側をロータと称し、回転する場合のみならず、直線又は曲線に沿ってリニア作動する場合もロータと称する。また、以下、静電モータという場合はリニア式も含む場合がある。特許請求の範囲では、回転式とリニア式とを区別なく静電モータと称している。
【背景技術】
【0002】
静電モータは電磁式モータと異なるタイプとして従来から考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、静電モータには高電圧を必要とする。そのため、静電モータは実用性の低い物と見做される傾向があった。本願発明者の知る範囲では、安価で使い易い高速回転やリニア移動の可能な静電モータはなお実現できていないようである。圧電素子を使えば、高電圧を容易に発生させられると共に、半永久的に使用でき、圧電素子は使用の物は、電池と異なり、基本的には消耗によって新しい物と置き換える必要性がない。また、圧電素子は安価である。
依って、解決しようとする課題は、圧電素子を使用して、安価で使い易く、高速の回転やリニア移動の可能な長寿命な静電モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
<以下は回転式静電モータ>
上記課題に鑑みて本願第1の発明形態は、圧電素子を使用した高電圧発生装置と、中心軸線の回りに回動可能に支持されたロータと、該ロータに設けられた1個又は2個以上のロータ電極と、ステータ側構成として、電荷注入電極とステータ電極とを1組以上具備し、前記電荷注入電極の先端と前記ステータ電極とは、前記ロータが前記中心軸線を中心とした円周方向に回動すれば前記ロータ電極と対面することができる位置に設けられており、前記ロータ電極が前記先端と対面した状態における前記ロータ電極と前記先端との成す第1の隙間はコロナ放電が可能な小ささであり、前記ロータ電極が前記ステータ電極と対面した状態における前記ロータ電極と前記ステータ電極との成す第2の隙間よりも小さく、前記高電圧発生装置の一方の出力端子は、前記電荷注入電極と電気接続されているか又は接続可能であり、他方の出力端子を前記ステータ電極と電気接続されているか又は接続可能なことを特徴とする静電モータを提供する。
ステータ電極とロータ電極は、夫々、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、或いは9個以上でもよい。両電極は同数ではない方が良く、これらの数の組み合わせは自在である。
【0005】
第2の発明形態は、前記ステータ電極の前記ロータと対面する側に突出電極部が設けられている。
第3の発明形態は、前記突出電極部は、前記組を成す前記電荷注入電極と前記ステータ電極との関係であって、該電荷注入電極から遠い側の前記ステータ電極の縁部を折り曲げて形成するか、又は、前記ロータと対面する側の前記ステータ電極の面が、前記ロータ電極の面に対して前記円周方向に傾斜しており、その傾斜は、該ステータ電極と組を成す前記電荷注入電極から遠い位置程、前記ロータ側に近づくよう形成されている。
ここでの折り曲げとは、曲面状にカールさせて曲げている場合も含む。
また、傾斜の場合は、ステータ電極の、組を成す電荷注入電極から遠い縁部(端部)が突出電極部となる。
【0006】
第4の発明形態は、圧電素子を使用した高電圧発生装置と、中心軸線の回りに回動可能に支持されたロータと、該ロータに設けられた1個又は2個以上のロータ電極と、ステータ側構成として、ステータ電極と1対の電荷注入電極とを1組以上具備し、前記1対の電荷注入電極の夫々は、前記円周方向において前記ステータ電極に対して互いに反対側に位置しており、前記1対の電荷注入電極の各先端と前記ステータ電極とは、前記ロータが前記円周方向に回動すれば前記ロータ電極と対面することができる位置に設けられており、前記ロータ電極が前記各先端と対面した状態における前記ロータ電極と前記各先端との成す第1の隙間はコロナ放電が可能な小ささであり、前記ロータ電極が前記ステータ電極と対面した状態における前記ロータ電極と前記ステータ電極との成す第2の隙間よりも小さく、前記高電圧発生装置の一方の出力端子は、切替スイッチを介して前記1対の電荷注入電極の夫々と選択的に電気接続可能であり、他方の出力端子は前記ステータ電極と電気接続されているか又は接続可能なことを特徴とする静電モータを提供する。
【0007】
第5の発明形態は、第4の発明形態において、前記ステータ電極の前記ロータと対面する側に突出電極部が設けられており、前記突出電極部は、前記ステータ電極上の前記円周方向における中央部に配設されている。
第6の発明形態は、前記突出電極部は、前記ステータ電極の前記中央部を盛り上げて形成されている。
【0008】
<以下はリニア式静電モータ>
第7の発明形態は、圧電素子を使用した高電圧発生装置と、所定ラインに沿って移動可能に支持されたロータと、該ロータに設けられた1個又は2個以上のロータ電極と、ステータ側構成として、電荷注入電極とステータ電極とを1組以上具備し、前記電荷注入電極の先端と前記ステータ電極とは、前記ロータが移動すれば前記ロータ電極と対面することができる位置に設けられており、前記ロータ電極が前記先端と対面した状態における前記ロータ電極と前記先端との成す第1の隙間はコロナ放電が可能な小ささであり、前記ロータ電極が前記ステータ電極と対面した状態における前記ロータ電極と前記ステータ電極との成す第2の隙間よりも小さく、前記高電圧発生装置の一方の出力端子は、前記電荷注入電極と電気接続されているか又は接続可能であり、他方の出力端子は前記ステータ電極と電気接続されているか又は接続可能なことを特徴とする静電モータを提供する。
【0009】
第8の発明形態では、前記ステータ電極の前記ロータと対面する側に突出電極部が設けられている。
【0010】
第9の発明形態は、前記突出電極部は、前記組を成す前記電荷注入電極と前記ステータ電極との関係であって、該電荷注入電極から遠い側の前記ステータ電極の縁部を折り曲げて形成するか、又は、前記ロータと対面する側の前記ステータ電極の面が、前記ロータ電極の面に対して前記所定ラインに沿って傾斜しており、その傾斜は、該ステータ電極と組を成す前記電荷注入電極から遠い位置程、前記ロータ側に近づくよう形成されている。
【0011】
第10の発明形態は、圧電素子を使用した高電圧発生装置と、所定ラインに沿って移動可能に支持されたロータと、該ロータに設けられた1個又は2個以上のロータ電極と、ステータ側構成として、ステータ電極と1対の電荷注入電極とを1組以上具備し、前記1対の電荷注入電極の夫々は、前記所定ラインに沿った方向において前記ステータ電極に対して互いに反対側に位置しており、前記1対の電荷注入電極の各先端と前記ステータ電極とは、前記ロータが前記所定ラインに沿って移動すれば前記ロータ電極と対面することができる位置に設けられており、前記ロータ電極が前記各先端と対面した状態における前記ロータ電極と前記各先端との成す第1の隙間はコロナ放電が可能な小ささであり、前記ロータ電極が前記ステータ電極と対面した状態における前記ロータ電極と前記ステータ電極との成す第2の隙間よりも小さく、前記高電圧発生装置の一方の出力端子は、切替スイッチを介して前記1対の電荷注入電極の夫々と選択的に電気接続可能であり、他方の出力端子は、前記ステータ電極と電気接続されているか又は接続可能なことを特徴とする静電モータを提供する。
【0012】
第11の発明形態では、前記ステータ電極の前記ロータと対面する側に突出電極部が設けられており、前記突出電極部は、前記ステータ電極上の前記所定ラインに沿った中央部に配設されている。
【0013】
第12の発明形態では、前記突出電極部は、前記ステータ電極の前記中央部を盛り上げて形成されている。
第13の発明形態では、上記突出電極部が存在する発明形態において、前記ステータ電極の前記ロータ電極と対面し得る面に、電気絶縁被膜を設けている。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明形態では、圧電素子を使用した高電圧発生装置により、各組の電荷注入電極とステータ電極との間に高電圧を印加できる。また、電荷注入電極からコロナ放電によりロータ電極に電荷を注入でき、こうしてロータ電極とステータ電極とが異極性同士となるため、引き合うことでロータが回転する。即ち、安価で使い易く、長寿命な高速回転の可能な静電モータが提供できる。
【0015】
ロータ電極とステータ電極とが引き合ってロータが回転する。ここで、ロータ電極とステータ電極との成す第2の隙間の大きさ次第であるが、両電極が対面した後もロータ電極に電荷が残留していることがあり、この場合、回転を続行しようとするロータがステータ電極によって引き戻される。このため、第2の発明形態では、ロータ電極に残留する電荷を消失させることができ、それだけ信頼性高くロータが滑らかに回転できるようになる。
第3の発明形態では、突出電極部をロータ電極自体で形成できるため、簡便に突出電極部を設けることができる。
【0016】
第4の発明形態では、第1の発明と同じ原理で回転するが、高電圧発生装置の一方の出力端子が、切替スイッチを介して1対の電荷注入電極の夫々と選択的に電気接続可能であるため、ロータを時計回り方向にでも、また、反時計回り方向にでも回転させることができる。
【0017】
第5の発明形態は、第2の発明形態と同じ理由で突出電極部を設けるが、ステータ電極の円周方向の中央部に設けることで、何れの方向に回転する場合もロータ電極の残留電荷を消失させることができる。
第6の発明形態では、突出電極部をステータ電極自体の中央部を盛り上げて形成するため、製作時にロータ電極以外の別部品が不要であり、製作が簡便である。
【0018】
第7の発明形態では、圧電素子を使用した高電圧発生装置により、各組の電荷注入電極とステータ電極との間に高電圧を印加できる。また、電荷注入電極からコロナ放電によりロータ電極に電荷を注入でき、こうしてロータ電極とステータ電極とが異極性同士となるため、引き合うことでロータが所定ラインに沿って移動する。即ち、安価で使い易く、長寿命なリニア移動の可能なリニア式静電モータが提供できる。
【0019】
ロータ電極とステータ電極とが引き合ってロータが移動する。ここで、ロータ電極とステータ電極との成す第2の隙間の大きさ次第であるが、両電極が対面した後もロータ電極に電荷が残留していることがあり、この場合、移動しようとするロータがステータ電極によって引き戻される。このため、第8の発明形態では、ロータ電極に残留する電荷を消失させることができ、それだけ信頼性高くロータが滑らかに移動できるようになる。
第9の発明形態では、突出電極部をロータ電極自体で形成できるため、簡便に突出電極部を設けることができる。
【0020】
第10の発明形態では、第7の発明形態と同じ原理で回転するが、高電圧発生装置の一方の出力端子が、切替スイッチを介して1対の電荷注入電極の夫々と選択的に電気接続可能であるため、ロータを所定ラインに沿って何れの方向にでも移動させることができる。
【0021】
第11の発明形態は、第8の発明形態と同じ理由で突出電極部を設けるが、ステータ電極の前記所定ラインに沿った方向の中央部に設けることで、何れの方向に移動する場合もロータ電極の残留電荷を消失させることができる。
第12の発明形態では、突出電極部をステータ電極自体の中央部を盛り上げて形成するため、製作時にロータ電極以外の別部品が不要であり、製作が簡便である。
【0022】
第13の発明形態は、上記突出電極部が存在する発明形態において、前記ステータ電極の、前記ロータ電極と対面し得る面に電気絶縁被膜を設けているので、前記第2の隙間を電気絶縁被膜の無い形態の場合より小さくしても放電が防止でき、結局は互いが引き合うクーロン力を強くでき、ロータを力強く動かすことができる。また、ステータ電極にロータ電極が一部対面し始めてもロータ電極がその帯電電荷を放電することを防止でき、突出電極部に対面するまでは放電せず、強いクーロン力が長く維持でき、ロータが力強く動き、ロータ電極が突出電極部に対面して初めて放電する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明に係る第1実施形態例の回転式静電モータの構造部の模式図であり、図2のラインA-CL-Bに沿って切断し、それを広げて視認した側面図である。
図2図2図1の静電モータのステータ部の平面図である。
図3図3図1の静電モータのロータの平面図である。
図4図4図1の静電モータの構造部へ電圧を印加する、圧電素子を使用した高電圧発生装置の説明図であり、(A)はその構造模式図、(B)は(A)の構造使用時の電気回路図、(C)は(A)に使用の圧電素子の変形例の模式図である。
図5図5図1のロータの変形例を示す模式的断面図である。
図6図6図1のロータの他の変形例を示す模式的断面図である。
図7図7は圧電素子を使用した高電圧発生装置の他の利用形態を示す模式図である。
図8図8は圧電素子を使用した高電圧発生装置の更に他の利用形態を示す模式図であり、(A)は上面図、(B)は縦断面図であって、夫々、模式図である。
図9図9はリニア式静電モータの第1実施形態例を示す模式図である。
図10図10はリニア式静電モータの第2実施形態例を示す模式図である。
図11図11はリニア式静電モータのロータ支持構造の1例である。
図12図12はリニア式静電モータのロータ支持構造の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<以下の静電モータは回転式>
以下、本発明に係る静電モータの一実施形態例を添付図面を参照して更に詳細に説明する。電極とは導電体で形成されていることを意味する。まず、図1図2を参照してステータ側構造を説明する。非導電体の基板10に軸Sを立設する。その軸Sの中心軸線CLの回りに、電荷注入電極とステータ電極とを1組以上、この例では3組配設している。電荷注入電極20N1とステータ電極20D1とで1組を成し、電荷注入電極20N2とステータ電極20D2とで2つ目の組を成し、電荷注入電極20N3とステータ電極20D3とで3つ目の組を成している。また、この例では、前記3組は中心軸線CLの回りに等角度配置しているが、角度間隔は任意である。また、各ステータ電極の平面形状、寸法も特に制限はないが、この形態例では夫々が同じ寸法形状に形成されている。なお、想像線で示す電荷注入電極20N1’,20N2’,20N3’はこの実施形態例では不要であり、後述の両方向に回転させる場合に必要となる。
【0025】
次に、図1図3を参照してロータを説明する。この例では非導電体であって、平面視で円形の平板をロータ30の基板としている。このロータ30は、例えば軸Sの所定位置に固定されていて、軸Sと共に回転してもよく、また、軸Sは回転せず、この軸Sの回りに回転自在に支持されていてもよいが、中心軸線CLに沿った所定位置で支持されていると共に、回転可能に構成されている。前述の各組の電荷注入電極とステータ電極に対面する側のロータ30の面(この例では下面)に、ロータ電極を設けている。この例では、8個のロータ電極30D1,30D2,・・・,30D8を、中心軸線CLの回りに等角度配置しているが、角度間隔は任意である。また、各ロータ電極の平面形状、寸法も特に制限はないが、この形態例ではそれぞれが同じ寸法形状に形成されている。
【0026】
以下では、図1に示す通り、1組目の電荷注入電極20N1とステータ電極20D1と、ロータ電極30D1を使って説明する。ロータ電極30D1と対面した状態での電荷注入電極20N1の先端20Tとこのロータ電極30D1との成す第1の隙間δ1は、ステータ電極20D1の面20F(この例では上面)と、ロータ電極30D1との成す第2の隙間δ2よりも狭い。この第1の隙間δ1は、後述する高電圧発生装置50により発生した電圧に応じた電荷を、コロナ放電と呼ばれる現象によってロータ電極30D1へ注入できる小ささであればよい。従って、この隙間は小さいほど良いのであるが、静電モータの製作精度に依存するロータ30の回転に起因する振れや、ロータ30自体の材質、厚さ、大きさ等に起因する撓み変形等を考慮すれば、例えば、0.5mmから1.5mm程度が実用域とも考えられる。また、異極性同士となったロータ電極とステータ電極との間での吸引力、即ち、ステータ電極によってロータ電極を吸引するクーロン力が大きいほど良い。このため、電気絶縁被膜の無い形態では、第2の隙間δ2はコロナ放電をするかしないかというぎりぎりの寸法に設定し、ロータ電極がステータ電極に十分に対面した際にコロナ放電が完了するのが良い。そうすればロータ30は滑らかに回転を続行できる。
【0027】
ロータ電極がステータ電極に十分に対面した際にロータ電極の帯電電荷のコロナ放電を完了させるために、後述の突出電極部20Pを設けることが好ましい。この突出電極部20Pを設けていて、電気絶縁被膜を設けない形態では、第2の隙間δ2はコロナ放電はしないが、もう僅か小さければコロナ放電するという程度のギリギリの寸法が最良である。ステータ電極表面ではコロナ放電をさせない方がステータ電極とロータ電極の間のクーロン力が保持され、ロータ30がよく回転できるからである。このため第2の隙間δ2は1mmから2mm程度がよいとも考えられる。発明者はこの程度の隙間で試作して、良好な結果を得ている。ステータ電極表面においてこのコロナ放電を防止するためには、後述もするが、ステータ電極表面に電気絶縁被膜を設けるとよい。この場合は、第2の隙間δは更に小さくできる。
【0028】
また、各電荷注入電極は銅板等の金属板で形成したり、棒部材や針金部材で形成できる。そうした金属板や棒部材、針金部材の厚さや直径にもよるが、先端部は尖っていることが好ましい。
【0029】
1組の電荷注入電極20N1とステータ電極20D1における両電極の間隔角度は、図2に示す程度(20度から30度程度)としている。他の2組についても同様である。従って、例えば、電荷注入電極20N1に最も近いステータ電極は、当該電荷注入電極20N1と組を構成するステータ電極20D1である。
【0030】
後述する高電圧発生装置50の2つの出力端子の任意の一方T1を電荷注入電極20N1に電気接続し、他方T2をステータ電極20D1に電気接続する。他の2つの組についても、同じ電気接続をする。即ち、端子T1は3つの電荷注入電極20N1、20N2,20N3と電気接続され、他方の端子T2は、3つのステータ電極20D1,20D2,20D3と電気接続されている。端子T1,T2を逆に接続してもよい。
【0031】
以下ではもう少し作動を詳細に説明しつつ突出電極部20Pの役割を説明する。図3のロータ30を図2のステータに重ねた状態を考えれば分かるが、この図示の場合では、電荷注入電極20N1の位置にロータ電極30D1が対面している。従って、高電圧発生装置50の発生電圧によって、端子T1を介して、どちらでもよいが、例えば、マイナス電荷が電荷注入電極20N1に入り、更にコロナ放電によってロータ電極30D1へマイナス電荷が注入されてロータ電極30D1が帯電する。この時、ステータ電極20D1へは、端子T2を介してプラス電荷が帯電する。少し回転すれば、他の2つの組においても同様なことが生じる。従って、ロータ電極30D1は、最も近い位置の(電荷注入電極20N1と組を成す)ステータ電極20D1にクーロン力によって引き寄せられる。即ち、ロータ30は、図1で言えば、左方向に移動する。図2図3で言えば、時計回り方向に回転することになる。
【0032】
その結果、ロータ電極30D1がステータ電極20D1に対面して平面視で重なる位置に来るが、既述の電気絶縁被膜を設けていない場合は、この回転作動中に、ロータ電極30D1のマイナス電荷は、第2の隙間δ2を介してステータ電極20D1のプラス電荷によって或る程度打ち消される(放電する)。しかし、ロータ電極30D1には未だマイナス電荷が残留していることがある。こうした残留の場合、ロータ電極30D1がステータ電極20D1に対面する位置に来た後、ロータ30は慣性で時計回り方向に回転し続けようとするが、プラス電荷の帯電しているステータ電極20D1によって引き戻す力が作用する。この時に、他のロータ電極と他のステータ電極との間で、先程述べたクーロン力による引き寄せる力が十分に働いてロータ30を時計回りに回転させる力が十分作用していれば、先ほどの引き戻す力に打ち勝ってロータ30を時計回り方向に回転させることができる。それは各電極の配置間隔や各電極の大きさ等に依存する。従って、ロータ30は円滑に時計回り方向に回動できないことがある。
【0033】
この途中で回転できなくなることを防止するために、この実施形態例では、ステータ電極20D1の上面20Fに突出電極部20Pを設け、ロータ電極30D1と突出電極部20Pとの成す隙間が第1の隙間δ1と同じ程度の小ささになっている。この突出電極部20Pは、ステータ電極20D1の上であって、ステータ電極20D1と組を成す電荷注入電極20N1から遠い側の縁部付近に設けることが良い。ロータ電極30D1がこの突出電極部20Pの位置に来ると、ロータ電極30D1に残留していたマイナス電荷が消失する。その結果、ロータ30はステータ電極20D1によって引き戻されることなく、回転を続行できる。
【0034】
突出電極部20Pは、図1図2においては円錐状の形を示しているが、図示の電荷注入電極20N1のように、断面矩形状でもよく、形状に限定は無い。ステータ電極20D1の上面20Fに導電性の別部材を設けることで形成してもよいが、ステータ電極20D1の縁部をロータ30側に折り曲げることで形成してもよく、また、ステータ電極20D1の上面20Fを、ロータ30の回転方向に行くに従いロータ30に近づくように傾斜させることで形成してもよい。この場合の第2隙間δ2は、ロータ回転方向における上面20Fの中間位置での隙間(この場合の平均隙間)と考える。
【0035】
上記では、1組の電荷注入電極20N1とステータ電極20D1について説明したが、他の組においても同様な現象が生じる。従って、ステータ電極の数やロータ電極の数が多ければ、それだけロータ電極が電荷注入電極から電荷を受け取れるチャンスが多くなる。従って、それだけ円滑な回転が望める。また、この図示例では、図3のロータ30に設けたロータ電極30D1が図2の電荷注入電極20N1から電荷を受け取れる位置に描いているが、仮に、それが外れている状態では、他のロータ電極と何れかの電荷注入電極とが対面していれば同様に作動する。全てが外れている場合は(それは電極の設計が良くないのであるが)、ロータ30を僅かに回転させて、最初に対面するチャンスを作る必要がある。従って、ステータ電極の数とロータ電極の数を同数にしない方が両電極の対面チャンスを多くさせる設計といえよう。
【0036】
次に、図4を参照して、圧電素子40を使用した高電圧発生装置50につき説明する。図4(A)の形態は既に公知の技術であるので簡単に説明する。支持部44に支持された圧電素子40を、対面する部材42、42’で挟んでいる。Pは分極方向を示す。対になった部材42,42’を夫々矢印の方向に撓ませる様に挟む力を加える(握る)と、部材42側に接着されている圧電素子40が撓む。この時の握る力は大きくなく、子供でも難なく可能である。この圧電素子40の撓み変形により両端子T1,T2間に高電圧が発生する。この構造の使用時には、(B)の電気回路に構成して使用することが良い。コンデンサCは貯電のためである、整流ダイオードDは、握った際に電圧が発生するように接続する。抵抗Rsは放電時の音を抑えるためであり、抵抗Rpは浮遊電荷を消失させて、作動の円滑化を図るためである。また、放電ギャップGは沿面放電破壊防止用であり、必須ではないが有った方が良い。
【0037】
圧電素子は、部材42’の側にも同じ圧電素子を設けて直列に使用することもできる。また、(C)に示すように、2つを並列に使用してもよい。この場合、(B)に想像線(2点鎖線)で示すように圧電素子40がもう一つ加わり、2つの圧電素子が並列に並ぶことになる。
【0038】
また、図4の形態例ように圧電素子を曲げる高電圧発生装置50の他、圧電素子全体を圧縮することで高電圧を得る高電圧発生装置としてもよい。
圧電素子による発電は小さな力で高電圧、例えば2万から5万ボルトを得ることも容易であり、長寿命でもある。これを駆動源にすれば10000rpm以上の高速回転も可能となる。
【0039】
図1の実施形態例の静電モータの変形例を説明する。図1のロータ30の基板である円形平板は、その外郭形状は円形であったが、星型や正多角形等任意である。回転対称形状が好ましい。また、軽量化のために、薄く形成する場合、撓み変形に対して強くすべく、基板に凹凸ビードを形成してもよい。
更には、図5に示すように、基板を平板でなく、有底の円筒状に形成し、中心軸線CLに沿った円筒側面部の内面にロータ電極30D1’等を固定させたロータ30’としてもよい。この場合、ロータ電極30D1’に対面するようステータ電極と電荷注入電極も図1の形態から変形させる必要があることは勿論である。
【0040】
図6は、図1のロータ30の円形平板の基板がお椀やお皿の如く湾曲した変形例のロータ30”を図示している。この場合、ロータ電極30D1”等も湾曲しており、これに対面するステータ電極20D1”等も湾曲形状に形成することが好ましい。
この変形例の場合、ロータ30”の中に玉を入れて、ロータ30”の回転と共に、それらの玉が転がる様を面白く観られる。
【0041】
以上では、ロータが一つの方向(上記実施形態例では時計回り方向)に回転できる場合を説明したが、何れの方向にも回転可能にする場合につき、図2を参照して説明する。ステータ電極20D1の円周方向における両側に、該ステータ電極20D1と組を成す1対の電荷注入電極20N1,20N1’の夫々を設ける。この実施形態例では、電荷注入電極20N1と電荷注入電極20N1’とは、ステータ電極20D1に対して互いに逆の円周方向に同じ角度離れているが、その角度は互いに異なっていてもよい。同様に、他のステータ電極20D2に対しても1対の電荷注入電極20N2,20N2’を設け、ステータ電極20D3に対しても1対の電荷注入電極20N3,20N3’を設ける。しかし、電荷注入電極20N1’の役割を電荷注入電極20N2に、電荷注入電極20N2’ の役割を電荷注入電極20N3に、電荷注入電極20N3’ の役割を電荷注入電極20N1に、夫々代用させることはできる。特に、電荷注入電極20N1,20N2,20N3が、各ステータ電極20D1,D2,D3間の円周方向中央に位置にしている場合、代用というよりも一致する。円周方向中央に位置にしている場合、例えば、電荷注入電極20N2が電荷注入電極20N1’の役割を果たせる。
【0042】
ステータ電極20D1と組を成す1対の電荷注入電極20N1,20N1’についていえば、この両電極20N1,20N1’と、高電圧発生装置50の一方の出力端子との接続を切替スイッチを使って切り替えれば、時計回り方向にも反時計回り方向にも選択的に回転させることができる。他の2つの組についても同様な接続とする。こうした各方向の回転を選択的に可能にする場合は、図2に示す突出電極部20Pの位置は適切ではなく、これをステータ電極の円周方向の中央位置に設ける。また、ステータ電極の上面20Fをローター電極と平行に形成することが基本である。各ステータ電極の円周方向中央部を盛り上げて各突出電極部とすることができる。しかし、既述の、ステータ電極の上面20Fを傾斜面にする場合の修正としては、これを山形に形成し、山の頂点をステータ電極の円周方向の中央位置に設けることが良い。ここで述べたこと以外は、時計回り方向に回転させる実施形態例に関する種々の説明が適用できる。
【0043】
圧電素子を使用した高電圧発生装置50の利用には、図7に図示する振り子装置が考えられる。水平に設けられた中心軸線CLを中心にして回動可能にぶら下がっている移動電極70Dと、夫々、所定角度位置に保持された固定電極60N1,60N2が設けられている。固定電極60N1と移動電極70Dとの間に電圧を印加すれば、この2つの電極は異極性同士となって引き合い、その結果、移動電極70Dが固定電極60N1に吸引される。電圧(電荷)が減って吸引が解除されると、重力の作用で元の位置に戻り、更にその勢い(慣性)で他方の固定電極60N2の方に向かう。高電圧発生装置50の操作者がタイミングよく高電圧発生装置50を握り操作して、今度は固定電極60N2と移動電極70Dとの間に電圧を印加すれば、移動電極70Dは固定電極60N2の方へ吸引されて、大きく揺れることになる。
【0044】
以上を繰り返すと振り子作用が継続する。中心軸線CLの上方側にも、図7に図示のものと同じ形態の移動電極と固定電極を設ければ、上下合わせてより強い力の振り子作用が得られる。また、図7の上、下を逆にすれば、メトロノームとなる。中心軸線CLを鉛直方向にして移動電極70Dが水平面内で回動することも考えられる。また、最大振幅になった際に、音や光を出してより興味深く構成することも想定できる。
【0045】
図8は、圧電素子を使用した高電圧発生装置50の他の利用形態としての検電器の模式図である。非導電体の上下基板80、80を有し、この上下基板80,80の間に、導電体の円筒体82を有する。上基板80に保持、垂下された中心電極84はその横断面が、例えば、矩形であり、その周囲に4枚の金属箔86の各上縁部を中心電極84に接続固定している。そして、中心電極84と円筒体82との間に高電圧発生装置50の電圧を印加する。そうすると、4枚の金属箔86が傘状に広がる。
また、圧電素子の焦電気を利用すれば室内置物として面白い。
【0046】
<以下の静電モータはリニア式>
以下はリニア式静電モータの場合であるが、駆動原理は回転式静電モータの場合と実質同じであるため、簡便に説明し、説明の無い事項は回転式静電モータの説明を充てる。
【0047】
図9はリニア式静電モータの第1実施形態例であり、(A)はステータの平面図、(B)はリニア式静電モータ(ステータとロータ)の側面図である。回転式の場合と同じ機能の部品等には符号数字に100を加えた符号とするか、又は同じ符号を用いている。基台10の上に、電荷注入電極120N1、ステータ電極120D1、電荷注入電極120N2、・・・と所定ラインL(この例では、図の左右方向直線)に沿って配設している。ラインLは曲線でもよい。
【0048】
ステータ電極120D1等の各ステータ電極の上面には突出電極部120Pが設けられている。ステータ電極上でのその配置位置は、所定ラインLに沿う矢印A方向のステータ電極端部付近である。これらステータ電極に対面する位置(ここでは上側位置)に、ロータ130が前記ラインLに沿って移動自在に支持されている。このロータ130の下面にはロータ電極130D1等が設けられている。支持構造の例は後述する。
【0049】
この形態例に見られるように、電荷注入電極とステータ電極とは、同じ寸法形状の電極を用いることができる。このことは回転式静電モータであっても同様である。
【0050】
高電圧発生装置50の任意の一方の端子T1を電荷注入電極120N1,120N2に接続し、他方の端子T2をステータ電極120D1に接続する。電荷注入電極120N1を介してロータ電極130D1に電荷を注入し、これによってロータ130が所定ラインLに沿う方向である矢印A方向に駆動される。
【0051】
端子T1,T2の接続を図9の通りにしている場合、ステータ電極120D1を介してロータ電極130D1に電荷を注入することもでき、この場合、ロータ130は電荷注入電極120N2に引かれて、やはり矢印A方向に移動する。即ち、上述した電荷注入電極120N1、120N2、・・・の役割と、ステータ電極120D1、・・・の役割とを入れ替えたことになる。
【0052】
話を戻して、電荷注入電極120N1を介してロータ電極130D1に電荷を注入し、ロータ130を矢印A方向に移動させる場合、ステータ電極120D1の上面に電気絶縁被膜を設けておけば、この被膜の無い場合よりもステータ電極とロータ電極との間の隙間をより小さくでき、ロータ130は矢印A方向に、より強力に移動する。
【0053】
また、同じ隙間の場合の比較においても電気絶縁被膜を設けた方が良いと考えられる。ロータ電極130D1が端子T1から受け取った電荷と、ステータ電極120D1が端子T2から受け取った電荷は逆極性故、図9(B)に図示するように、ロータ電極130D1とステータ電極120D1とが所定ラインLに沿って適宜距離離れている際は、ロータ130は、異極に帯電したステータ電極120D1に引かれ、矢印A方向に移動する。その結果、ロータ電極130D1がステータ電極120D1と一部対面しつつ十分に対面する位置に来て、突出電極部120Pと対面する。その突出電極部120Pと十分に対面する前に、両電極間の隙間寸法次第ではあるが、ロータ電極130D1の帯電電荷の一部はステータ電極120D1の電荷と打ち消し合う(放電する)。その残りを突出電極部120Pに対面位置した時に放電する。これでは、ロータ130の移動力をより強くする改善の余地がある。その改善が、前記電気絶縁被膜を設けることであって、前記のロータ電極130D1の帯電電荷の一部が早目に先に放電することを防止して、突出電極部120Pの位置で全ての帯電電荷を放電させる方がロータ130は力強く移動できる。
【0054】
また、前述のように、図9の電極形態の場合は、電荷注入電極120N1、・・・とステータ電極120D1、・・・とは役割を入れ替えることができるので、全てのステータ電極の上面に電気絶縁被膜を形成しておく形態とする。
同じ意義において、次の図10の形態の場合は、ステータ電極120D1,・・・の上面に電気絶縁被膜を施す。更には、既述したが、回転式静電モータの場合も、突出電極部20Pの存在する図2の例で言えば、ステータ電極20D1、20D2、20D3の上面に絶縁被膜を設ける形態にすれば、同様にロータ30の回転力を向上させられる。
【0055】
図10はリニア式静電モータの第2実施形態例であり、(A)はステータの平面図、(B)はリニア式静電モータの側面図である。基台10の上に、電荷注入電極120N1、ステータ電極120D1、電荷注入電極120N2、ステータ電極120D2、・・・と所定ラインL(この例では、図の左右方向直線)に沿って配設している。
【0056】
ステータ電極120D1等の各ステータ電極の上面には突出電極部120Pが設けられている。ステータ電極上でのその配置位置は、所定ラインLに沿う方向のステータ電極幅の中央位置である。これらステータ電極に対面する位置(ここでは上側位置)に、ロータ130が前記所定ラインLに沿って移動自在に支持されている。このロータ130の下面にはロータ電極130D1等が設けられている。
【0057】
高電圧発生装置50の任意の一方の端子T1を電荷注入電極120N1,120N2の何れかに選択的に接続可能にし、他方の端子T2をステータ電極120D1に接続する。電荷注入電極120N1と電気的に接続された端子T1-1と、電荷注入電極120N2と電気的に接続された端子T1-2とを、スイッチSWによって選択的に接続可能に構成している。
【0058】
図10の配置において、スイッチSWによって、端子T1が端子T1-1と接続されると、電荷注入電極120N1を介してロータ電極130D1に電荷を注入でき、ロータ130が、例えば、矢印A方向に移動する。ロータ電極130D1が電荷注入電極120N2と対面する位置に位置している場合、スイッチSWによって、端子T1が端子T1-2と接続されると、電荷注入電極120N2を介してロータ電極130D1に電荷を注入でき、矢印A方向とは反対方向であるB方向にロータ130が移動する。他のステータ電極及び対となるその両側の電荷注入電極に関しても、このステータ電極120D1及び対となるこの両側の電荷注入電極120N1,120N2との関係と同様な電気接続構成である。
【0059】
図11は、リニア式静電モータのロータ支持構造の1例であり、ロータ130の移動する所定ラインに直交する平面で切った図と考えてよい。ステータ電極120D1の左右にガイドレール140を配設し、この上に、ロータ130の左右縁部を支持するローラ150を転動可能に載置する。ローラ150は軸受けを使用して、ローラ150が滑らかに転動することが好ましい。
【0060】
図12は、リニア式静電モータのロータ支持構造の他の例である。天井部10’に、一種のカーテンレール式の吊部材140’を取り付け、吊部材140’の中に、吊部材の長手方向に沿って滑らかに転動する転動部材150’を配設し、この転動部材150’に吊るされたロータ130のロータ電極130D1に対面するように、ステータ電極120D1等のステータ側部品を基台10に設けている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、圧電素子利用の回転式静電モータ及びリニア式静電モータとして成立する。また、圧電素子の応用に関する知育、教育用の教材玩具としての利用も可能である。
【符号の説明】
【0062】
20D1,20D2,20D3 ステータ電極
20N1,20N2,20N3 電荷注入電極
20N1’,20N2’,20N3’ 両方向回転用に追加の電荷注入電極
20P 突出電極部
30 ロータ
30D1,・・・,30D8 ロータ電極
40 圧電素子
50 高電圧発生装置
120D1,120D2 ステータ電極
120N1,120N2 電荷注入電極
130 ロータ
130D1 ロータ電極
CL 中心軸線
L 所定ライン
δ1 第1の隙間
δ2 第2の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12