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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070425
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】尿素水タンク
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/296 20220101AFI20220506BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20220506BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G01F23/296 B
F01N3/08 B
F01N3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020179483
(22)【出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】戸田 敬介
(72)【発明者】
【氏名】大野 成弘
【テーマコード(参考)】
2F014
3G091
【Fターム(参考)】
2F014AA06
2F014AB02
2F014AC04
2F014FB01
3G091AA18
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA17
(57)【要約】
【課題】
貯留された尿素水溶液の液面高さ(FH)を測定するための超音波センサ(30)が設けられた樹脂製の尿素水タンク(20)に関し、超音波発センサ(30)による液面高さ(FH)の測定精度を改善する。
【解決手段】
前記尿素水タンク(20)は、貯留された前記尿素水溶液の液面高さ(FH)を測定するための超音波センサ(30)が設けられた底壁(23)と、前記底壁(23)の上方に設けられ、前記底壁とともに前記貯留室(22)を構成する上壁(25)と、を備え、前記上壁(25)の前記貯留室(22)側の面である上面(26)に反射器(35)が設けられている尿素水タンク。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素水溶液を貯留する貯留室(22)を有する樹脂製の尿素水タンク(20)であって、
前記尿素水タンク(20)は、
貯留された前記尿素水溶液の液面高さ(FH)を測定するための超音波センサ(30)が設けられた底壁(23)と、
前記底壁(23)の上方に設けられ、前記底壁とともに前記貯留室(22)を構成する上壁(25)と、
を備え、
前記上壁(25)の前記貯留室(22)側の面である上面(26)に反射器(35)が設けられている尿素水タンク。
【請求項2】
前記反射器(35)が金属薄板で形成されている、
請求項1に記載の尿素水タンク。
【請求項3】
前記反射器(35)が前記上面(26)に金属コーティングで形成されている、
請求項1に記載の尿素水タンク。
【請求項4】
前記反射器(35)が前記上面(26)にガラスコーティングで形成されている、
請求項1に記載の尿素水タンク。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留された尿素水の液面高さを測定するための超音波センサが設けられた尿素水タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中には、環境に影響を与えるおそれのある窒素酸化物(以下、「NOx」と称する。)が含まれている。このNOxを浄化するために用いられる排気浄化装置として、排気通路に配設された触媒の上流側に尿素水溶液等の還元剤を噴射供給し、触媒中で排気ガス中のNOxを還元反応させる排気浄化装置が知られている。
【0003】
このような排気浄化装置では、還元剤である尿素水溶液を貯留する尿素水タンクが設けられている。特許文献1には、量産時のコスト等を考慮した樹脂製の尿素水タンクが開示されている。また、この樹脂製の尿素水タンクには、貯留された尿素水溶液の液面高さを計測するための超音波センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-173684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波センサの発信器から発信された超音波は、尿素水溶液の液面すなわち尿素水溶液と空気との境界面で反射する。この反射波が超音波センサの受信器で受信され、発信から受信までの時間が計測される。液面高さはこの計測時間に基づいて算出される。しかしながら、貯留タンクが満水状態、すなわち、尿素水溶液が尿素水タンクの天井面まで達しているときには、超音波は尿素水溶液と尿素水タンクの天井面との境界で反射することになる。この場合、樹脂製の尿素水タンクでは、検出すべき尿素水溶液の液面は、尿素水溶液と樹脂材料との境界面となる。尿素水溶液と樹脂材料との境界面は、尿素水溶液と空気との境界面に比べ超音波の反射率が低く、反射波の強度が低くなり、液面高さの測定結果が不正確になる、または、液面高さの計測が不可能になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、特に、貯留された尿素水の液面高さを測定するための超音波センサが設けられた樹脂製の尿素水タンクに関し、超音波センサによる液面高さの測定精度を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、尿素水溶液を貯留する貯留室を有する樹脂製の尿素水タンクであって、前記尿素水タンクは、貯留された前記尿素水溶液の液面高さを測定するための超音波センサが設けられた底壁と、前記底壁の上部に設けられ、前記底壁とともに前記貯留室を構成する上壁と、を備え、前記上壁の前記貯留室側の面である上面に反射器が設けられている尿素水タンクが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯留された液体の液面高さを測定するための超音波センサが設けられた樹脂製の貯留タンクに関し、超音波センサよる液面高さの測定精度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る尿素水タンクを適用可能な尿素SCRシステムの全体構成の全体的構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る尿素水タンクの一例を示す模式図である。
図3】金属薄板からなる反射器の拡大図である。
図4】従来型の尿素水タンクにおける超音波の反射を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る尿素水タンクにおける超音波の反射を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。ただし、この実施形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
【0011】
<1.尿素SCRシステムの全体構成>
まず、本実施形態に係る尿素水タンクを適用可能な尿素SCRシステムの全体構成の一例について図1を用いて説明する。
【0012】
尿素SCRシステム1は、ディーゼルエンジンに代表される内燃機関2の排気通路3の
途中に設けられた選択還元型触媒5と、選択還元型触媒5の上流側で排気通路3内に還元剤である尿素水溶液を供給するための尿素水供給装置10とを備える。尿素SCRシステム1は、選択還元型触媒5よりも上流側に、公知の酸化触媒7をさらに備えていても良い。
【0013】
選択還元型触媒5は、内燃機関2の排気ガス中に含まれるNOxを選択的に還元する。具体的に、選択還元型触媒5は、尿素水供給装置10により供給される尿素水溶液が分解して生成されるアンモニアを吸着し、流入する排気ガス中のNOxをアンモニアと反応させることにより還元する。尚、選択還元型触媒5は、パティキュレートフィルタの機能を併せ持つものであってもよい。
【0014】
<2.尿素水供給装置>
尿素水供給装置10は、選択還元型触媒5の上流側の排気通路3に取り付けられた噴射弁50と、尿素水溶液を貯留する尿素水タンク20と、ポンプ40と、噴射弁50やポンプ40等を電子制御する制御装置80とを備える。
【0015】
尿素水供給装置10は、尿素水タンク20内の尿素水溶液をポンプ40によって噴射弁50に向けて圧送し、供給圧力が所定の目標圧力に維持されるようにポンプ40のフィードバック制御を行う。この状態で、目標噴射量に応じた開弁時間で噴射弁50の開閉操作を行うことで、所定量の尿素水溶液が排気通路中に噴射される。
【0016】
また、尿素水溶液としては、例えば凍結温度が最も低い、約32.5%濃度の尿素水溶液が用いられる。この場合の凍結温度は、約マイナス11℃である。尿素水供給装置10の停止中に尿素水溶液が凍結して体積が膨張すると、噴射弁50やこれに連結する尿素水供給管60等が破損するおそれがある。このため、内燃機関2の停止時には、尿素水供給装置10は、ポンプ40によって噴射弁50等に残留する尿素水溶液を噴射弁50から尿素水タンク20に向かう方向に回収することができるように構成されている。
【0017】
<3.尿素水タンク>
本実施形態に係る尿素水タンク20について図2を用いて説明する。尿素水タンク20は、尿素水溶液を貯留可能な貯留室22を有するタンク部21と、超音波センサ30と、反射器35とを備える。尚、図2に示すように尿素水タンク20にはポンプ40が設けられていても良い。さらに、ポンプ40と超音波センサ30とが一体のサプライモジュールとして形成され、当該サプライモジュールが尿素水タンク20に取り付けられるように構成されていてもよい。
【0018】
タンク部21は尿素水溶液を貯留可能な貯留室22が形成された中空体である。タンク部21は貯留室22の底部を構成する底壁23と、底壁23の上方に位置し貯留室22の天井部を構成する上壁25とを有する。底壁23の貯留室22側には底面24が、上壁25の貯留室22側であって底面24に対向する位置に上面26がそれぞれ形成されている。タンク部21は、量産時のコスト等を考慮し、多層ブロー成形等によって製造される樹脂製のタンクである。
【0019】
超音波センサ30はタンク部21の底壁23に設けられている。詳しくは、底壁23の貯留室22側には超音波センサ30の発信部31と受信部32が上面26に対向するように設けられており、超音波センサ30の電気接続部は尿素水タンク20の外部に例えば電気コネクタ33として形成されている。超音波センサ30は当該電気コネクタ33を介して電気信号を制御装置80等との間で受発信することができる。
【0020】
図2のFSは尿素水溶液の液面を示す。また、FHは底面24から液面FSまでの距離であり液面高さを示す。図2の状態で超音波センサ30の発信部31から超音波USが発射されると、当該超音波USは尿素水溶液と空気の境界面である液面FSで反射して、その反射波は超音波センサ30の受信部32に入射する。図2中の点線は超音波USの発射から入射までを模式的に表したものである。超音波センサ30は超音波センサ30と液面FSとの間を超音波USが往復するのに要した時間長Tに対応する信号を出力する。この超音波センサ30から出力された信号が電気コネクタ33を介して制御装置80に送信される。制御装置80はこの超音波センサ30からの信号に基づいて尿素水タンク20内の尿素水溶液の液面高さFHを取得する。尚、液面高さFHが超音波センサ30にて算出され、液面高さFHに対応する信号が制御装置80に送信されるようにしてもよい。
【0021】
超音波センサ30の発信部31および受信部32から液面FSまでの距離は、例えば、時間長Tに超音波の尿素水溶液中における伝搬速度を乗算し、これを2で除算ことにより算出される。この算出結果に発信部31および受信部32と底面24との上下方向位置の差分を加算または減算することにより、液面高さFHが算出される。例えば、発信部31および受信部32が底面24から貯留室側に突出して配置されている場合には、発信部31および受信部32と底面24との上下方向位置の差分を超音波センサ30の発信部31および受信部32から液面FSまでの距離に加算することにより、液面高さFHが算出される。発信部31および受信部32と底面24との上下方向の位置関係がこの逆の場合には、発信部31および受信部32と底面24との上下方向位置の差分を超音波センサ30の発信部31および受信部32から液面FSまでの距離から減算することにより、液面高さFHが算出される。
【0022】
反射器35は、底面24に対向する上面26に設けられている。反射器35は超音波センサ30から液面高さFHを測定する方向にある液面FSと面平行な上面26に形成されるのが好ましい。
【0023】
反射器35は例えば金属製の薄板で形成されている。図3に示すように、金属薄板36は例えば液面FSと面平行な上面26に接着剤等により固定されていてもよいし、液面FSと面平行な上面26にボルト等によって機械的に固定されてもよい。また、上面26に金属薄板36の厚さ分の凹部を形成し、当該凹部に金属薄板36を配置し固定してもよい。尚、上面26が液面FSと面平行でない場合には、上面26と金属薄板36との間に金属薄板36の貯留室側の面が液面FSと面平行となるように中間物を介在させことができる。金属薄板36の材料は、例えばステンレス鋼等であることが好ましい。
【0024】
また、反射器35は尿素水タンク20の液面FSと面平行な上面26に金属コーティングにより形成されてもよい。
【0025】
図4は、従来型の樹脂製の尿素水タンク120において上面126に到達するまで尿素水溶液が充填されている状態を示す。従来型の尿素水タンク120は、上面に反射器を有していないので、超音波センサ30から発射された超音波USは尿素水溶液と樹脂製の上面126の境界面で反射する。しかしながら尿素水溶液と樹脂材料との境界面は尿素水溶液と空気との境界面に比べ、超音波USの反射率が低い。したがって、反射波の強度が低くなってしまうので超音波センサ30における時間長Tの計測が不正確になり、その結果、正確な液面高さFHを取得できないおそれがある。
【0026】
図5は、本実施形態に係る尿素水タンク20において上面26に到達するまで尿素水溶液が充填されている状態を示す。本実施形態に係る尿素水タンク20は、上面に反射器35を有しているので、超音波センサ30から発射された超音波USは尿素水溶液と反射器35の底面24側の金属面で形成される境界面で反射する。尿素水溶液と金属材料との境界面は尿素水溶液と樹脂材料との境界面に比べ超音波の反射率が高い。したがって、本実施形態に係る尿素水タンク20によれば従来型の尿素水タンク120に比べ、反射波の強度が高く、正確な時間長Tの計測が可能である。その結果、正確な液面高さFHを取得することができる。
【0027】
また、超音波センサ30から発射された超音波USは放射状に広がるので,反射器35の超音波センサ30に対向する側の面は、当該超音波USの放射状の広がりを全てカバーできる面積を有することが好ましい。
【0028】
さらに、超音波USが尿素水溶液と反射器35の境界面で反射する際に、反射器35の超音波センサ30に対向する側の面の平滑度によっては超音波USが乱反射するおそれがある。したがって、反射器35の超音波センサ30に対向する側の面は、乱反射が発生しない程度の平滑度とすることが好ましい。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る尿素水タンク20においては、上面26に到達するまで尿素水溶液が充填されている状態でも、上面26に反射器35、特に金属薄板36または金属コーティングにより形成された反射器35を有しているので、正確な液面高さFHを取得することができる。
【0030】
<4.変形例>
反射器35の材料は金属材料に限られるものではない。尿素水溶液と境界面を構成した際に、当該境界面において超音波の反射率が高い材料であればよい。例えば、ガラス材料を使用することができる。反射器35が尿素水タンク20の液面FSと面平行な上面26にガラスコーティングにより形成されていてもよい。変形例に係る尿素水タンク20は、上面26にガラスコーティングにより形成された反射器35を有しているので、超音波センサ30から発射された超音波USは尿素水溶液と反射器35の底面24側のガラス面で形成される境界面で反射する。尿素水溶液とガラス材料との境界面は尿素水溶液と樹脂材料との境界面に比べ超音波の反射率が高い。したがって、本実施形態に係る尿素水タンク20によれば従来型の尿素水タンク120に比べ、反射波の強度が高く、正確な時間長Tの計測が可能である。その結果、正確な液面高さFHを取得することができる。
【0031】
また、超音波センサ30から発射された超音波USは放射状に広がるので,変形例においても、反射器35の超音波センサ30に対向する側の面は、当該超音波USの放射状の広がりを全てカバーできる面積を有することが好ましい。
【0032】
さらに、超音波USが尿素水溶液と反射器35の境界面で反射する際に、反射器35の超音波センサ30に対向する側の面の平滑度によっては超音波USが乱反射するおそれがある。したがって、変形例においても、反射器35の超音波センサ30に対向する側の面は、乱反射が発生しない程度の平滑度とすることが好ましい。
【0033】
以上のように、変形例に係る尿素水タンク20によれば、上面26に到達するまで尿素水溶液が充填されている状態でも、上面に反射器35、特にガラスコーティングにより形成された反射器35を有しているので、正確な液面高さFHを取得することができる。
【0034】
また、本発明の基本的な思想は、尿素水を貯蔵する尿素水タンクに限られない。樹脂などの超音波の反射率が低い素材で作られた液体タンクにおいて,超音波センサを用いて液面高さを検出する場合に応用することができる。但し,反射器の素材については,貯留する液体の種類や化学的な特性に応じて,適切なものを選ぶ必要がある。例えば、ガソリンや軽油等の燃料を貯留する燃料タンクに応用することができる。この場合、反射器の素材は、銅、アルミおよびその合金等、鉄、鉄合金、例えばステンレス鋼等を用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 尿素SCRシステム、2 内燃機関、3 排気通路、5 選択還元型触媒、7 酸化触媒、10 尿素水供給装置、20 尿素水タンク、21 タンク部、22 貯留室、23 底壁、24 底面、25 上壁、26 上面、30 超音波センサ、31 発信部、32 受信部、33 コネクタ、35 反射器、36 金属薄板、37 金属コーティング、40 ポンプ、50 噴射弁、60 尿素水供給管、80 制御装置、120 尿素水タンク、126 上面。


図1
図2
図3
図4
図5