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特開2022-72344組立式木造簡易ハウス、壁部材、及び屋根部材
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  • 特開-組立式木造簡易ハウス、壁部材、及び屋根部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072344
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】組立式木造簡易ハウス、壁部材、及び屋根部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/10 20060101AFI20220510BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20220510BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20220510BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
E04B1/10 C
E04B1/26 A
E04B1/343 M
E04B1/343 E
E04B1/343 N
E04H1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181718
(22)【出願日】2020-10-29
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】519183036
【氏名又は名称】株式会社ミユキ商会
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】須田 仁美
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来のものより簡単かつ安全に、しかも素人でも短工期で組立可能な組立式木造簡易ハウスを提供する。
【解決手段】簡易ハウス1は、隣り合う2つの柱15の外面に設けられる外壁パネル36と、全体が2つの柱15の間に嵌入して2つの柱15の取付角度を確保する内壁パネル31を有する壁部材30と、両端部に位置する天井梁に、一部が嵌入した状態で架け渡される複数の屋根パネルを有する屋根部材を備え、壁部材30は、外壁パネル36と、内壁パネル31を個別に組立てることで完成し、屋根パネルは、屋根を構成する屋根材と、天井を構成する天井部材を含み、屋根パネルを組立てることで屋根と天井が同時に完成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱の外面に設けられる外壁パネルと、隣り合う2つの柱の間に全体が嵌入して前記2つの柱の取付角度を確保する内壁パネルと、を有する壁部材と、
両端部に位置する天井梁に、一部が嵌入した状態で架け渡される複数の屋根パネルを有する屋根部材と、を備えたことを特徴とする組立式木造簡易ハウス。
【請求項2】
請求項1に記載の壁部材であって、
前記内壁パネルは、複数のパネル部と、該パネル部と連結し、該パネル部の外縁端部から前記外壁の方向に向かって突設する固定凸部を有し、
前記固定凸部は、前記複数の柱、並びに床板及び/又は前記天井梁に固定され、
前記固定凸部の厚みが前記柱の厚みよりも少なく設定されたことを特徴とする壁部材。
【請求項3】
前記内壁パネルは、前記柱に対して、前記複数の柱の内面よりも前記外壁パネルの側に位置し、前記柱、内壁パネル、及び外壁パネルで囲まれた空間を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の壁部材。
【請求項4】
前記内壁パネルは、両端部が前記固定凸部に接続して、水平方向又は垂直方向に延びる接続凸部を有し、
前記外壁パネルは、接続凸部に固定されることを特徴とする請求項2に記載の壁部材。
【請求項5】
前記内壁パネルは、複数に分割された分割パネル部材で構成されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の壁部材。
【請求項6】
内壁パネルは、複数に分離された前記分割パネル部材同士を接続する固定凸部を有し、前記外壁パネルは、前記固定凸部又は接続凸部に固定されることを特徴とする請求項2又は4に記載の壁部材。
【請求項7】
請求項1に記載の屋根部材であって、
複数の屋根パネルは、屋根を構成する屋根材と、天井を構成する天井部材と、を含み、前記天井部材は、前記天井梁に嵌入し、前記屋根材は、前記天井梁に支持されることを特徴とする屋根部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立式木造簡易ハウス、並びに組立式木造簡易ハウスに用いる壁パネル、及び屋根パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
「子供の勉強部屋」、「趣味の部屋」、「離れ家」等を増設する目的で、床面積が10m以下の組立式簡易ハウスが数多く販売されている。購入者自らが、専門業者の助けを借りることなく、比較的、手軽に組立できること、一定要件下、建築確認申請が不要なことが一因であると考えられる。
【0003】
特許文献1では、柱材の間に木製の壁材を多段に積み重ねることによって、外観体裁が良好な高断熱の壁面を形成することができる木造の簡易建物が開示されている。具体的には、枠状に組み合わせる土台と、この土台に立設する柱材と、柱材の間に多段に積み重ねる木製の壁材と、柱材上に架設する梁材と梁材上に設置する屋根材とを備えるものである。
【0004】
非特許文献1では、工場で壁、切妻屋根をパネル加工したボルト組立式のミニハウスキットが開示されている。パネルは、断熱材が充填されており、内壁と外壁は杉板となっているため、断熱性能を確保できるとともに一定の贅沢を得られるものである。組立はパネルを土台に載せて順次固定することで組み立てる方式であり、施工日数は2人作業で4日が標準施工日数となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-60425号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】https://www.daimarulog.com/panelhouse.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1で開示された簡易建物は、柱材の間に多段に積み重ねる木製の壁材によって壁を構築している。すなわち、一つの部材自体が重い木製の壁材を多くの段数積み重ねるので、作業者の負担が重く、作業性も悪い問題があった。
【0008】
非特許文献1で開示された組立ハウスは、パネルを土台の上に建て込んだ後に、土台とパネルを固定するので、建て込むときにパネルが不安定になる。特に、風が強いとき、パネルは大きな風圧を受けて建て込みが困難になり、作業ができない事態が生じる。また、内壁と外壁が一体となっているため、個々のパネルは重くならざるを得ない。また、切妻屋根を取り付けるときは、頂部の止水処理のために屋根の上に昇って作業する必要があり、安全性に問題があった。
【0009】
本発明の目的は、従来のものより簡単かつ安全に、しかも素人でも短工期で組立可能な組立式木造簡易ハウス及びその部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための発明は、組立式木造簡易ハウスであって、複数の柱の外面に設けられる外壁パネルと、隣り合う2つの柱の間に全体が嵌入して前記2つの柱の取付角度を確保する内壁パネルと、を有する壁部材と、両端部に位置する天井梁に、一部が嵌入した状態で架け渡される複数の屋根パネルを有する屋根部材と、を備えることを特徴とする組立式木造簡易ハウス。
【0011】
この構成によれば、内壁パネルの全体を2つの柱の間に嵌入することで、柱は所定の取付角度(通常は直角)を保った状態を確保できる。その結果、柱の立ち上がり角度を確保するために設ける筋交いを省略できるとともに、組立てるときの、柱の角度調整を省略できる。
【0012】
この構成によれば、外壁パネルと内壁パネルは、一体化した部材ではなく、独立しているので、1個の部材重量を軽量化できる。
前記内壁パネルを個別に組立てることで側壁を完成することができる。
【0013】
この構成によれば、屋根部材を天井梁に架け渡すことで、上に昇ることなく、屋根及び天井を同時に、一体的に設置できる。さらに、屋根パネルを適切に分割することで、それぞれの部材の重量を人力で運べる重さとすることができるので、重機等を用いることがなくなり、屋根パネルを外部側から簡単に取り付けることができる。これらの壁部材、屋根部材を用いることで組立式木造簡易ハウスを、短時間に容易に組立できる。
【0014】
上記課題を解決するための他の態様の発明は、組立式木造簡易ハウスに用いる壁部材であって、前記内壁パネルは、複数のパネル部と、該パネル部と連結し、該パネル部の外縁端部から前記外壁の方向に向かって突設する固定凸部を有し、前記固定凸部は、前記複数の柱、並びに床板及び/又は前記天井梁に固定され、前記固定凸部の厚みが前記柱の厚みよりも少なく設定されたことを特徴とする壁部材である。
【0015】
この構成によれば、固定凸部は、2つの柱、並びに床板及び/又は天井梁の少なくとも3つの領域で固定されるので内壁パネルと2つの柱の固定はより強固となる。また、この構成によれば、内壁パネルを固定するのに必要となるビスや釘が、室内に現われることはない。これにより、室内を贅沢な空間に仕上げられるとともに、ビス等の突出によるケガを防止できる。
【0016】
上記課題を解決するための他の態様の発明は、組立式木造簡易ハウスに用いる壁部材であって、前記内壁パネルは、前記柱に対して、前記複数の柱の内面よりも前記外壁パネルの側に位置し、前記柱、内壁パネル、及び外壁パネルで囲まれた空間を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、外壁パネルと内壁パネルの間に空気層が設けられるので、組立式木造簡易ハウスの断熱性能を向上できる。
【0018】
内壁パネルは、横断面がコ字形状の構造が例示される。
【0019】
好ましくは、内壁パネルは、2つの柱の内面よりも外壁パネルの側に位置することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、内壁パネルは、2つの柱の内面よりも外壁パネルの側に位置するので、床面積の大きさが制限される組立式木造簡易ハウスの室内空間に凹凸部が画定される。これにより、室内の壁面は凹凸のある変化にとんだものとなるため、狭小な内部空間であるにも関わらず、使用者が圧迫感を感じることはなく快適に過ごすことができる。凹部が設けられることで、室内のスペースが増加する。ここで柱の内面とは室内に現れる柱の面のうち、嵌入する内壁パネルの室内に現れる面と平行な面を示す。
【0021】
好ましくは、内壁パネルは、両端部が固定凸部に接続して、水平方向又は垂直方向に延びる接続凸部を有し、外壁パネルは、接続凸部に固定されることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、外壁パネルは、接続凸部に固定されるので、内壁パネルと外壁パネルを一体化できる。
【0023】
好ましくは、内壁パネルは、複数に分割された分割パネル部材で構成されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、内壁パネルを適切に分割することで、それぞれの部材の重量を人力で運べる重さとすることにできるので、重機等を用いることなく木製壁構造を簡単に組立てることができる。
【0025】
好ましくは、内壁パネルは、複数に分離された前記分割パネル部材同士を接続する固定凸部を有し、前記外壁パネルは、前記固定凸部及び/又は接続凸部に固定される。
【0026】
この構成によれば、外壁パネルは、固定凸部及び/又は接続凸部と固定されるので、外壁パネルと内壁パネルは協働して相互に強度を増強させることができる。
【0027】
上記課題を解決するための他の態様の発明は、組立式木造簡易ハウスに用いる屋根部材であって、複数の屋根パネルは、屋根を構成する屋根材と、天井を構成する天井部材と、を含み、前記天井部材は、前記天井梁に嵌入し、前記屋根材は、前記天井梁に支持されることを特徴とする屋根部材である。
【0028】
この構成によれば、天井部を天井梁に嵌入することで屋根部材を簡単に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a)は、組立式木造簡易ハウスの正面図である。(b)は、同、背面図である。(c)は、同、左側面図である。(d)は、同、右側面図である。
図2】(a)は、室内から視た組立式木造簡易ハウスの正面断面図である。(b)は、同、背面断面図である。(c)は、同、左側面断面図である。(d)は、同、右側面断面図である。
図3図2(b)の拡大図である。
図4図2(c)の拡大図である。
図5】組立式木造簡易ハウスの平面断面図である。
図6】右側壁の壁部材を構成する内壁パネルの図である。
図7】屋根部材の断面図である。
図8】屋根部材の組立手順を説明する斜視図である。
図9】屋根部材と天井梁の固定を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態の組立式木造簡易ハウス1(以後、簡易ハウス1と呼ぶ。)は、図2図9を参照して説明する。
【0031】
図2図5に示す通り、簡易ハウス1は、床10、側壁20及び屋根部材50で室内100が画定されている。ここでいう簡易ハウス1は、一定要件下、建築確認申請が不要な床面積となる住居である。例えば、床面積が10m以下の住居であることが必須となる。簡易ハウス1は、重量が30kg以内の部材を用いることが好ましい。これにより、人力での搬送が可能となり、組立に際して、重機を用いることを要さない。
【0032】
床10は、基礎(図示略)に固定されて、四方に組まれた土台11の上に床板12が固定された構造である。床板12の撓みを抑制するために、大引き13を適宜設けることが好ましい。土台11に用いる素材は、腐食に強く、軽量な木材であることが好ましい。具体的には檜材等である。
【0033】
床板12は、合板の上に杉板縁甲板があらかじめ張り付けられた積層構造であり、土台11及び大引き13に支持されている。また、柱15との干渉を回避するために切欠き部12aが設けられている。床板12は、単一部材としてもよいが、組立てるときの施工性を考慮して、複数の部材に分割されたものでもよい。
【0034】
柱15は、合計8本の柱15a、b、c、d、e、f、g、hを有しており、下端部は、土台11と、上端部は天井梁55と、ほぞ組接合されている。柱15に用いる素材は、軽量で組立が容易な木材であることが好ましい。具体的には、杉の角材、檜の角材である。
【0035】
側壁20は、全体が2つの柱15、15の間に嵌入して2つの柱15、15の取付角度を確保する内壁パネル31と、隣り合う2つの柱15の外面に設けられる外壁パネル36と、を有する壁部材30を備えている。屋根部材50は、両端部に位置する天井梁55に、一部が嵌入した状態で架け渡される複数の屋根パネル51~53を有する。内壁パネル31と、外壁パネル36を、個別に組立てることで壁部材30は完成し、屋根パネル51~53は、屋根を構成する屋根材57と、天井を構成する天井部材58を含むことを特徴とする。
【0036】
側壁20は、前述の複数の木製の壁部材30を備え、その他に、正面壁20aには、扉22、背面壁20bに窓24、右側壁20dに窓25が設けられている。右側壁20dから突設する庇26が設けられている。扉22は、両面杉板縁甲板貼りの片開木戸である。本実施形態では、扉22の厚さとして40mmが例示されている。窓24は、開閉可能な突出し窓であり、窓25は固定窓である。これにより、風通しを確保できるとともに、適度な採光を得ることができる。扉、庇及び窓の形式、取付位置については、本実施形態にとらわれることなく使用環境に応じて適宜変更すればよい。
【0037】
左側壁20cに設けられる壁部材30について説明する。右側壁20dは左側壁20cと同様の構造であるので、説明は援用する。
【0038】
壁部材30は、内壁パネル31と外壁パネル36の間に空気層が設けられる2層構造の壁である。図6に示す通り、内壁パネル31は、簡易ハウス1を組立てるときに、内壁パネル部材31a、31bを接続凸部35で接合して一体化した構造である。すなわち、簡易ハウス1を組立てる前は、人力で搬送できる重さとなるように縦方向に2分割されている。
【0039】
内壁パネル31は、外縁端部から外壁パネル36の方向に向かって突設する固定凸部33を有し、固定凸部33は、2つの柱15、並びに床板12及び/又は天井梁55に固定されて、2つの柱15の取付角度を確保することを特徴とする。内壁パネル31は、横断面がコ字形状の構造である。内壁パネル31は、内面16よりも外壁パネル36の側に位置する。この内面16は、2つの柱15の室内側に向いた面を結んで構成され、柱15の間に嵌入する内壁パネル31の室内側に現れる面と平行な面(図5の点線部分)を示す。固定凸部33の厚みが柱15の厚みよりも少なく設定されている。内壁パネル31は、複数の柱15の内面よりも外壁パネル36の側に位置し、柱15、内壁パネル31、及び外壁パネル36で囲まれた空間Sを有する。この空間Sの横断面積は、柱15の横断面積よりも大きく設定されている。柱15と、パネル部40a、40bとの間に凹み空間Dを有する。内壁パネル31の両端部は、柱15の側面の中央部に固定されている。
【0040】
凹み空間Dをなくす場合、内部の有効面積が小さくなり、外壁パネル36を固定するための固定凸部33の奥行き寸法を大きくする必要があり、固定凸部33の部材自体の大きさが大きくなり、重量が増すと共に、コストも上がり、軽量化、短時間で組み立てられるというメリットが少なくなる可能性がある。
【0041】
内壁パネル部材31a、31bは、複数部材に分割されたパネル部40a、40bと、内壁パネル31の外縁端部に環状に設けられ、外壁パネル36の方向に向かって垂直に突設している固定凸部33と、中間部に配置され、固定凸部33に固定される接続凸部35を有している。パネル部40a、40bは、例えば、杉板縁甲板貼り(横張り)である。固定凸部33は、一対の水平部材と、一対の垂直部材から構成され、これらが連結された矩形の枠体となっている。接続凸部35は、固定凸部33と協働して複数に分割されたパネル部40a、40bを補強するものである。固定凸部33の前面に外壁パネル36に当接し、側面の1つが、柱15に側面が当接している。固定凸部33は、内壁パネル31と外壁パネル36とに挟持された形態となっている。
【0042】
無垢の板材を横張りにしたものを内壁パネル31としているが、縦張りや、合板、石膏ボードに塗料を塗ったもの等、バリエーションは可能である。
【0043】
内壁パネル31の固定凸部33が室内側にないのは、表裏反転させた場合、壁に固定するビスが露出するため、美観を大きく損ねること、断熱材を組み込むことが困難なことからである。
【0044】
固定凸部33の側面と、柱15a、15eの側面はほぼ面一となっている。固定凸部33は、柱15a、15e、床板12、及び天井梁55にビス又は釘等で固定されている。
【0045】
固定凸部33は、(1)複数の柱15、床10、天井梁55、(2)複数の柱15、床10、(3)複数の柱15、天井梁55のいずれかに固定されてもよいが、この他のバリエーションは、外壁パネル36への固定も考えられる。その他、固定凸部33内部の壁に棚板を取り付ける際の下地材の役割も果たすことができる。
【0046】
内壁パネル31が柱15a、柱15eに内挿されることで、室内100側の側壁20に、凹凸部が画定される。壁が平坦な場合、狭小な室内では、壁が迫ってくるようで、なんとなく息苦しさを感じる。しかし、室内100の側壁20は凹凸のある変化に富んだものとなるため、狭小な内部空間であるにも関わらず、使用者が圧迫感を感じることはなく快適に過ごすことができる。
【0047】
柱15a、15eは、下端部は土台11と、また上端部は天井梁55とほぞ組接合されている。この状態では、ほぞ組の遊びによって、柱15a、15eは、ある程度自由に変形する。従来、変形を拘束するために、柱を組立てた段階で、筋交いを設けて、柱の変形を拘束するとともに鉛直度を確保するのが一般的である。しかし、すべての柱の鉛直度を確保して筋交いを設けるのは、特段の技術力を有しない者、例えば購入者が自ら組立てることは困難である。
【0048】
しかし、本実施形態では、内壁パネル31を柱15の間に配設するだけで、柱15の面内方向の変位は拘束され、内壁パネル31の固定凸部33に沿って柱15が固定される。そのため、購入者は、専門の技術者に頼ることなく、鉛直度を確保した状態で容易に柱を固定できる。
【0049】
在来の軸組み工法では、内壁を作る際、下地材を柱に固定し、その後仕上げ材を張る工程が一般的であるが、本実形態のようにパネル化することで、下地材を固定する工程を省略できる。
【0050】
左側壁20c、右側壁20dの内壁パネル31は、簡易ハウス1を組立てる前は、人力で搬送できる重さとなるように、縦方向に2分割されており、簡易ハウス1を組立てるときに、柱15の間に固定することで隙間なく配設される。また、内壁パネル31は、床板12、柱15、及び天井梁55にも固定されている。
【0051】
正面壁20a、背面壁20bの壁部材30について、基本的には、左側壁20c、右側壁20dと同様な構造ではあるが、2つの内壁パネル部材31a、31bが接合したものではなく、当初から、1枚のパネルとなっているので、説明は援用する。
【0052】
外壁パネル36は、杉板甲板張り(堅張り)と合板が積層されて、さらに合板に透湿防水シートが貼られた構造である。このように、あらかじめ透湿防水シートを一体化した構造とすることで、別途、透湿防水シートを張り付ける工程を省略することができる。
【0053】
外壁パネル36は、適宜、分割されている。外壁パネル36は、柱15、及び、内壁パネル31の固定凸部33に釘又はビス等で固定する。
【0054】
図1に示す通り、屋根部材50は、片勾配であり、図8に示す通り、3つの屋根パネル51、52、53で構成されている。本実施形態では屋根部材50を3部材に分割しているが、作業性を考慮して、適宜、分割枚数を変更してもよい。屋根パネル51~53の合計重量は、30kg以内であることが好ましい。
【0055】
屋根パネル51と屋根パネル53の中間に位置する屋根パネル52について図7を参照して説明する。屋根パネル52は、四方に組まれた2組の枠材56a、56bを介して、屋根材57と、天井部材58が接続して一体化している、中間に空気層Aが設けられたいわゆる2重構造となっている。これにより、屋根部材50は、所定の断熱性能を具備する。屋根材57は、構造用合板にガルバリウム鋼板(登録商標)を積層する構造である。ガルバリウム鋼板は、雨漏りを防ぐため、低い位置に配置された屋根の部材を一部覆っている。二組の枠材56a、56bの間には、垂木59が挿入される隙間が設けられている。枠材56a、56bが天井梁55と、垂木59に嵌入されることで、屋根部材50の位置が決定する。
【0056】
天井部材58は、天井梁55に嵌入し、屋根材57は、天井梁55に支持される。天井部材58は、例えば、上面から、ガルバリウム鋼板、構造用合板、杉の下地板、野地板(杉の室内天井板による杉板縁甲板張り)が積層された構造としてもよい。内壁パネル31と同様の素材を用いることで、室内100は、デザイン的に統一された空間となる。
【0057】
ガルバリウム鋼板は、アスファルトシングル等、他の仕上げ材でも代用可能である。構造用合板は杉の無垢板のはぎ合わせでも代用可であり、杉の下地材は他の木材や、金属製のアングル等でも代用が可能であり、野地板は、構造用合板等の面材でも代用可能である。天井部材58の特徴は、杉等の下地材を入れ、空間層を作る事で断熱材を組みこめるようにし、断熱性能を上げている。
【0058】
図9に示す通り、ガルバリウム鋼板をL字に曲げたL字部材61で、外壁パネル36と屋根材57を固定する構造である。
【0059】
簡易ハウス1の人力のみによる組立するための大まかな工程は、(1)基礎設置→(2)床設置→(3)柱建込→(4)天井梁設置→(5)内壁・外壁設置→(6)窓設置→(7)天井屋根取付である。大まかな工程のそれぞれについて、詳細工程(作業手順)は次の通りである。
【0060】
1.基礎設置:簡易ハウス1が風で飛ばされない対策は、基礎のコンクリートブロックBと床10をビスで固定する。風の強いエリア(海辺等)に接地する場合は所定高さのコンクリートブロックを地面に埋め込み、そのコンクリートブロックに簡易ハウス1本体を固定、もしくはベタ基礎打ち込みを推奨している。ベタ基礎の場合は基礎部分のみ別途施工することができる。床設置前に、基礎の上に土台11を組む。
【0061】
2.床設置:床10の水平確保のために、基礎ブロック設置時に、水平器を用いて水平を確認する。
【0062】
3.柱建て込み:床10と柱15の固定方法、及び柱15の鉛直度の確保の方法は、土台11の部分に凹加工、柱15の下部に凸加工が施してあり、土台11に柱15を差し込むことで固定する。柱15の鉛直度の確保は、内壁パネル31を柱15の間に固定することで水平や垂直が取れる仕組みになっている。
【0063】
4.側壁20、外壁パネル36を設置する。詳細は前述した通りであり、例えば、外壁パネル36は、柱15、及び、内壁パネル31の固定凸部33に釘又はビス等で固定する。インパクトレンチ等の電動工具を用いれば、施工時間がより短縮化できる。
【0064】
5.窓等の取付:窓等の固定構造・固定方法の詳細について、前述した説明を参照されたい。
【0065】
6.天井屋根の取付:図8に示す通り、枠材の部分を、外部空間110から天井梁55、垂木59の間に嵌入して屋根パネル51~53を低い位置から傾斜に沿って順次設置することで屋根及び天井の設置は事足る。杉板縁甲板貼りの野地板と、ガルバリウム鋼板が一体となった屋根パネル51~53(3分割したもの)を、屋根流れ方向の下から、置いてゆく。屋根パネル51~53の3枚を置き終えたら、図9に示す通り、L字部材61を利用して天井梁55と屋根材57とを固定する。屋根パネル51~53の配置は、2人の作業者が、屋根パネル51~53を持ち上げて、天井梁55、垂木59に間に嵌入すればよい。これを繰り返すことで屋根部材50は設置できる。屋根材57、天井部材58の取付は脚立等の足場から可能であり、屋根の上に登る必要がない。このように、外屋根、天井を一括して外部空間110から組立できるので組立作業の効率化を図り得る。
【0066】
従来の天井の通常の組立手順は、室内から天井を持ち上げて、垂木等に接触させた状態でビス又は釘等で固定する。作業性の悪い上向きの作業姿勢での作業が必要であり、専門技術を持たない購入者が、自ら天井を施工することは困難であった。しかし、本実施形態における天井部材58は、屋根材57と一体となっていることから、屋根材57を外部空間から天井梁55に架け渡して固定することで、同時に天井部材58の設置も完了する。
【0067】
簡易ハウス1の組立工程で省略できる工程は、以下のとおりである。
【0068】
1.床10はパネル構造とすることで、床板の杉板を一枚一枚切断し、一枚づつ貼る作業を省略している。
【0069】
2.内壁パネル31を柱15に固定することで、水平力を負担する筋交いを入れる工程を省略している。
【0070】
3.従来、内壁をつくる際、下地材を柱に固定し、その後仕上げ材を貼る工程であるが、下地材と仕上げ材をパネル化した内壁パネル31とすることで、下地材を固定する作業を省略している。
【0071】
4.内壁パネル31、外壁パネル36とすることで、内壁、外壁共に、仕上げ材の板を一枚一枚切断し、一枚づつ貼る作業を省略している。
【0072】
5.屋根部材50は、野地板の板を一枚一枚貼り、下地材を組み、その上に合板を貼り、その上に防水シートを貼り、その上にガルバリウム鋼板をふくという工程と比較して、野地板から仕上げのガルバリウム鋼板まで一体となったパネルとし、複数に分割することで、屋根に登ることなく、複数の屋根パネル51~53を乗せて固定するという3工程に省略している。
【0073】
簡易ハウス1の全部の部材数は、例えば、65部材であるが、限定されるわけではなく、状況に応じて、適宜数に設定が可能である。
【0074】
以上説明した簡易ハウス1によれば、従来のものより簡単かつ安全に、しかも素人でも短工期で組立可能な組立式木造簡易ハウス及びその部材を提供することができる。例えば、素人でも部材を運搬でき、電動工具で部材の結合をビスにより行うことができるので、一人でも楽しみながら簡易ハウス1の組立が可能である。
【0075】
内壁パネル31の全体を2つの柱15の間に嵌入することで、柱15は内壁パネル31の辺に対して所定の取付角度(通常は直角)を保った状態を確保できる。その結果、柱15の立ち上がり角度を確保するために設ける筋交いを省略できるとともに、組立てるときの、柱15の角度調整を省略できる。
【0076】
柱15の側面に内壁パネル31を固定しているので、素人でも柱15を水平や垂直に容易に固定でき、柱15の水平や垂直が自動的に確保され、外壁パネル36を固定するための下地材としての役割も果たすことができる。限られたスペースを少しでも広くするため、柱15の室内側に固定せず、外壁パネル36の近い側の柱15の側面に固定することで室内の有効面積を広く確保できる。
【0077】
外壁パネル36と内壁パネル31は、一体化した部材ではなく、独立しているので、1個の部材の重量を軽量化できる。
【0078】
外壁パネル36は、内壁パネル31の固定凸部33に釘又はビス等で固定するので、内壁パネル31と外壁パネル36を一体化できる。
【0079】
屋根部材50を天井梁55に架け渡すことで、上に昇ることなく、屋根及び天井を同時に、一体的に設置できる。屋根部材50を適切に分割することで、それぞれの部材の重量を人力で運べる重さとすることにできるので、重機等を用いることがなくなり、屋根パネル51~53を外部側から簡単に取り付けることができる。これらの壁部材30、屋根部材50を用いることで簡易ハウス1を、短時間に容易に組立できる。
【0080】
内壁パネル31は、柱15、並びに床板12及び/又は天井梁55の少なくとも3つの領域で固定されるので、内壁パネル31と2つの柱15の固定はより強固となる。外壁パネル36と内壁パネル31の間に空気層が設けられるので、簡易ハウス1の断熱性能を向上できる。内壁パネル31を固定するのに必要となるビスや釘が、室内に現われることはない。これにより、室内を贅沢な空間に仕上げられるとともに、ビス等の突出によるケガを防止でき、安全性の向上に寄与できる。
【0081】
内壁パネル31は、2つの柱15の室内側の面よりも外壁パネル36の側に位置するので、床面積の大きさが制限される簡易ハウス1の室内空間に凹凸部が画定される。これにより、室内の壁面は凹凸のある変化にとんだものとなるため、狭小な内部空間であるにも関わらず、使用者が圧迫感を感じることはなく快適に過ごすことができる。
【0082】
内壁パネル31を適切に分割することで、それぞれの部材の重量を人力で運べる重さとすることにできるので、重機等を用いることなく木製壁構造を簡単に組立てることができる。
【0083】
外壁パネル36は、接続凸部35と固定されるので、外壁パネル36と内壁パネル31は協働して相互に強度を増強させることができる。
【0084】
天井部材58を天井梁55に嵌入することで屋根部材50を簡単に設置できる。
【0085】
簡易ハウス1によれば、木造住宅で取り入れられている、ツーバイフォー工法の「面材とする事で耐震力を確保する」という点を参考にしたものの、これでは加工手間がかかるし、一人でも組み立てることは到底困難である。かかる実情に鑑み、簡易ハウス1はこれを解消した構造とし、木造在来工法(従来の工法)では柱間に取り付ける、筋交い(水平力に対応)をなくし、「面材」である内壁パネル31を柱15間に取り付けることによって、筋交いの役割を果たすことができる。ツーバイフォー工法に用いられる柱材部材では、建物全体の重量が軽量になり、風圧力(風対策)に対応できない可能性もあると考え、それぞれの部材自体は人力で持てる重量にしながらも、風圧力(風対策)に耐えられるよう、柱材は木造在来構法と同じ角材(90角)を用い、重量を持たせ、耐震性を強化した。
【0086】
簡易ハウス1の壁構造について、仕上げを含め、内壁パネル31と外壁パネル36の2種類である。ツーバイフォー工法では、構造壁は1種類若しくは2種類で、その上に仕上げを施し、構造~仕上げまでの部材合計は4種類である。簡易ハウス1の壁構造は、ツーバイフォー工法の壁構造での半分程度の部材数になる。
【0087】
本実施形態は、例示であり、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る簡易ハウスは、組立が極めて簡単であるにもかかわらず、贅沢な仕上がりとなり、濃密な時間を過ごせる空間を提供できる。また、一般的な建材とするには、寸法が不足する、又は、見栄えが良くないと敬遠されがちな間伐材も活用できることから、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0089】
1 組立式木造簡易ハウス
10 床
11 土台
12 床板
12a 切欠き部
13 大引き
15、15a~15h 柱
16 内面
20 側壁
20a 正面壁
20b 背面壁
20c 左側壁
20d 右側壁
22 扉
24、25 窓
26 庇
30 壁部材
31 内壁パネル
31a、31b 内壁パネル部材
33 固定凸部
35 接続凸部
36 外壁パネル
40a、40b パネル部
50 屋根部材
51~53 屋根パネル
55 天井梁
56a、56b 枠材
57 屋根材
58 天井部材
59 垂木
61 L字部材
100 室内
110 外部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2020-11-06
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、組立式木造簡易ハウス、並びに組立式木造簡易ハウスに用いる壁部材、及び屋根部材に関する。