特開 2022-72918 刃物の製造方法及び刃物

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022072918

(43)【公開日】2022-05-17

(54)【発明の名称】刃物の製造方法及び刃物

(51)【国際特許分類】

   B26B 3/00 20060101AFI20220510BHJP

【ＦＩ】

B26B3/00 C

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2020182621

(22)【出願日】2020-10-30

(71)【出願人】

【識別番号】520372733

【氏名又は名称】小澤 一憲

(74)【代理人】

【識別番号】100140671

【弁理士】

【氏名又は名称】大矢 正代

(72)【発明者】

【氏名】小澤 一憲

【テーマコード（参考）】

3C061

【Ｆターム（参考）】

3C061AA02

3C061BA03

3C061BB10

3C061DD15

3C061EE13

(57)【要約】

【課題】中子を有する刃体を柄部に取り付ける工程が容易であり、外観のよい刃物を製造することができる刃物の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂で形成され、合わせることで柱状をなす一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂで、貫通孔１５を有する中子１２を両側から挟み込み、一対の樹脂半体の少なくとも一方が備える柱状部２５を、貫通孔に挿入することにより相手方の樹脂半体に当接させた状態で、柱状部を含む樹脂半体の一部を加熱溶解することにより、中子を両側から挟み込んでいる一対の樹脂半体を溶着して中子と一体化し、中子を両側から挟み込んでいる状態で中子と一体化された一対の樹脂半体を、柄部３０の孔部３５に挿入して接着により固定する。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

中子を有する刃体を柄部に取り付ける刃物の製造方法であり、
前記中子は貫通孔を備えており、
熱可塑性樹脂で形成され、合わせることで柱状をなす一対の樹脂半体で、前記中子を両側から挟み込み、
一対の前記樹脂半体の少なくとも一方が備える柱状部を、前記貫通孔に挿入することにより一対の前記樹脂半体同士を当接させた状態で、前記柱状部を含む前記樹脂半体の一部を加熱溶解することにより、前記中子を両側から挟み込んでいる一対の前記樹脂半体同士を溶着して前記中子と一体化し、
前記中子を両側から挟み込んでいる状態で前記中子と一体化された一対の前記樹脂半体を、前記柄部の孔部に挿入して接着により固定する
ことを特徴とする刃物の製造方法。

【請求項2】

前記中子は金属製であり、
前記柱状部を含む前記樹脂半体の一部の加熱溶解は、前記中子を誘導加熱することにより行う
ことを特徴とする請求項１に記載の刃物の製造方法。

【請求項3】

前記柱状部は、凸部と凹部との嵌合により一対の前記樹脂半体同士を当接させている
ことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の刃物の製造方法。

【請求項4】

中子を有する刃体が柄部に取り付けられている刃物であり、
前記中子は貫通孔を備えており、
熱可塑性樹脂で形成され、合わせることで柱状をなす一対の樹脂半体が、前記中子を両側から挟み込んだ状態で、前記中子の前記貫通孔に浸入した前記熱可塑性樹脂によって溶着していることにより前記中子と一体化しており、
前記中子を両側から挟み込んでいる状態で前記中子と一体化された一対の前記樹脂半体が、前記柄部の孔部に挿入された状態で接着剤層を介して前記柄部に固着している
ことを特徴とする刃物。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、包丁やナイフなど中子を有する刃体が柄部に取り付けられている刃物の製造方法、及び、該製造方法により製造された刃物に関するものである。

【背景技術】

【0002】

包丁やナイフなどの刃体を柄部に取り付けるために、刃体の基部には、「中子（茎子）」と称される部分が設けられている。中子は、刃体における刃部の幅より細く板状に突出した部分である。一方、柄部の端部には、細いスリット状の溝が形成されており、この溝に中子を挿し込むことにより、刃体が柄部に取り付けられる。

【0003】

しかしながら、このような方法で刃体を柄部に取り付ける場合、柄部の溝が中子より大きいと、刃体が柄部から抜け出てしまうため、溝を中子の断面形状に合致させて形成する必要があり、この工程に手間がかかるという問題があった。また、柄部の溝と中子との間に空隙が形成されることを防止するために、一般的には、柄部の溝を中子より小さく形成しておき、中子を溝に圧入する。この場合は、中子を溝に少しずつ圧入していくため、この工程に手間がかかる。

【0004】

一方、洋包丁やナイフでは、中子を半割の柄部で挟み込み、リベット（鋲）を貫通させて中子と柄部とを一体化させる方法も多用されている。類似の方法で、中子の一部のみが柄部の外表面にあらわれるように、柄部に側方に開口するスリットを形成しておき、このスリットに中子を挿し込んだ状態で、リベットを貫通させで中子と柄部とを一体化させる方法もある。このように、リベットで中子と柄部を一体化させる場合、リベットの端部が柄部の外表面にあらわれるため、外観がよくないという問題がある。また、柄を握る手指を傷めないように、リベットの端部のバリ取りをする処理が必要であり、この工程にも手間がかかる。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、中子を有する刃体を柄部に取り付ける工程が容易であり、外観のよい刃物を製造することができる刃物の製造方法、及び、該製造方法により製造される刃物の提供を、課題とするものである。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記の課題を解決するため、本発明にかかる刃物の製造方法は、
「中子を有する刃体を柄部に取り付ける刃物の製造方法であり、
前記中子は貫通孔を備えており、
熱可塑性樹脂で形成され、合わせることで柱状をなす一対の樹脂半体で、前記中子を両側から挟み込み、
一対の前記樹脂半体の少なくとも一方が備える柱状部を、前記貫通孔に挿入することにより一対の前記樹脂半体同士を当接させた状態で、前記柱状部を含む前記樹脂半体の一部を加熱溶解することにより、前記中子を両側から挟み込んでいる一対の前記樹脂半体同士を溶着して前記中子と一体化し、
前記中子を両側から挟み込んでいる状態で前記中子と一体化された一対の前記樹脂半体を、前記柄部の孔部に挿入して接着により固定する」ものである。

【0007】

「中子を有する刃体が柄部に取り付けられる刃物」としては、包丁、ナイフの他、鉈、鎌、鋸、短刀を、例示することができる。

【0008】

本構成では、中子を直接に柄部に取り付けるのではなく、中子を両側から挟み込んだ状態で中子と一体化させた一対の樹脂半体を介して、中子を柄部に取り付ける。一対の樹脂半体は、合わせることで柱状をなすため、中子を両側から挟み込んだ状態で中子と一体化されている一対の樹脂半体を挿入するために柄部に形成すべき孔部は、大きく単純な形状である。このような孔部は、従来、中子を直接に柄部に取り付けるために、中子の形状に合致させて柄部に形成していた細いスリット状の溝に比べて、形成する作業が非常に容易である。

【0009】

また、本構成では、熱可塑性樹脂で形成された樹脂半体のうち、中子の孔部に挿入されて一対の樹脂半体同士を当接させている柱状部及びその近傍のみを加熱溶解することによって一対の樹脂半体同士を溶着し、中子と一体化する。仮に、柄部の孔部の内部に中子を位置させた状態で、流動性を有する樹脂を孔部に充填し、樹脂を硬化させることによって中子を樹脂に埋設するとしたら、流動性を有する状態から硬化させる樹脂の量が多く、この工程に時間がかかる。これに対し、本構成では、樹脂半体のごく一部の部分のみを加熱溶融させることによって、一対の樹脂半体同士を溶着するため、短時間の容易な作業で刃体を柄部に取り付けることができる。

【0010】

ここで、「一対の前記樹脂半体の少なくとも一方が備える柱状部を、前記貫通孔に挿入することにより一対の前記樹脂半体同士を当接させる」態様としては、一対の樹脂半体の双方が柱状部を備えており、双方の柱状部の高さの和が中子の厚さと等しく、中子の貫通孔の内部で双方の柱状部が突き合わされる態様、一対の樹脂半体の一方のみが柱状部を備えており、その柱状部が中子の貫通孔に挿通されて他方の樹脂半体に当接している態様を、例示することができる。

【0011】

本発明の刃物の製造方法は、上記構成に加え、
「前記中子は金属製であり、
前記柱状部を含む前記樹脂半体の一部の加熱溶解は、前記中子を誘導加熱することにより行う」ものとすることができる。

【0012】

仮に、樹脂を加熱溶解させるために、「一対の樹脂半体で前記中子を両側から挟み込み、一対の前記樹脂半体の少なくとも一方が備えている柱状部を、前記貫通孔に挿入することにより一対の前記樹脂半体同士を当接させた状態で」、その周囲の雰囲気全体を加熱した場合、樹脂半体が全体的に溶融して変形してしまうおそれがある。樹脂半体が変形してしまうと、中子を挟み込んだ状態で中子と一体化させた一対の樹脂半体を、柄部の孔部に挿入して固定する作業に不具合が生じるおそれがある。

【0013】

これに対し、本構成では、中子を金属製として誘導加熱（電磁誘導加熱、高周波誘導加熱）する。これにより、加熱された中子を介して、中子の孔部に挿入されている柱状部を中心として樹脂半体の一部が加熱される。そのため、樹脂半体が全体的に溶融して変形することを防止しつつ、柱状部の加熱溶解によって一対の樹脂半体同士を溶着することができる。

【0014】

本発明の刃物の製造方法は、上記構成に加え、
「前記柱状部は、凸部と凹部との嵌合により相手方の前記樹脂半体に当接している」ものとすることができる。

【0015】

本構成では、柱状部を介した一対の樹脂半体同士の当接を、凸部と凹部との嵌合によるものとしている。これにより、一対の樹脂半体同士が柱状部を介して当接している状態が安定するため、柱状部を中心とした樹脂の加熱溶解によって一対の樹脂半体同士を溶着する操作を、確実に行うことができる。

【0016】

ここで、柱状部が「凸部と凹部との嵌合により一対の前記樹脂半体同士を当接させている」態様としては、一対の樹脂半体の双方が柱状部を備えており、双方の柱状部の高さの和が中子の厚さと等しいと共に、一方の樹脂半体の柱状部が凸部を有しており、他方の樹脂半体の柱状部が凹部を有している態様を、例示することができる。また、一対の樹脂半体の双方が、中子の厚さと等しい高さの柱状部を備えており、一方の樹脂半体の柱状部自体が凸部であると共に、これと嵌合する凹部を他方の樹脂半体の柱状部が備えている態様を、例示することができる。

【0017】

更に、一対の樹脂半体の一方のみが柱状部を備えており、その柱状部自体が凸部であり、中子の貫通孔を通過した上で、他方の樹脂半体に形成されている凹部と嵌合する態様、を例示することができる。

【0018】

次に、本発明にかかる刃物は、
「中子を有する刃体が柄部に取り付けられている刃物であり、
前記中子は貫通孔を備えており、
熱可塑性樹脂で形成され、合わせることで柱状をなす一対の樹脂半体が、前記中子を両側から挟み込んだ状態で、前記中子の前記貫通孔に浸入した前記熱可塑性樹脂によって溶着していることにより前記中子と一体化しており、
前記中子を両側から挟み込んでいる状態で前記中子と一体化された一対の前記樹脂半体が、前記柄部の孔部に挿入された状態で接着剤層を介して前記柄部に固着している」ものである。

【0019】

これは、上記の製造方法により製造される刃物の構成である。一対の樹脂半体は、中子の貫通孔に浸入した樹脂、すなわち、もとは柱状部であった樹脂によって溶着しているが、中子を両側から挟み込んでいる部分では、樹脂が溶融することなく、合わせることで柱状をなす形状が保持されている。

【発明の効果】

【0020】

以上のように、本発明によれば、中子を有する刃体を柄部に取り付ける工程が容易であり、外観のよい刃物を製造することができる刃物の製造方法、及び、該製造方法により製造される刃物を、提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0021】

【図1】（ａ）本発明の一実施形態である刃物の製造方法を説明する分解斜視図であり、（ｂ）製造された刃物の斜視図である。

【図2】（ａ）図１（ｂ）の刃物の平面図（峰側から見た図）であり、（ｂ）Ｘ－Ｘ線断面図である。

【図3】（ａ）中子を両側から挟み込んだ一対の樹脂半体を溶着する前の断面図であり、（ｂ）中子を両側から挟み込んだ一対の樹脂半体を溶着した後の断面図であり、（ｃ）図１（ｂ）の刃物の一部省略側面図であり、（ｄ）Ｙ－Ｙ線断面図である。

【図4】Ａ－Ａ範囲におけるＢ－Ｂ線断面図である。

【図5】（ａ），（ｂ）柱状部の変形例を説明する断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0022】

以下、本発明の一実施形態である刃物の製造方法、及び、該製造方法により製造される刃物１について、図面を用いて具体的に説明する。本実施形態の刃物の製造方法には、刃体１０と、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂと、柄部３０とが使用される。

【0023】

刃体１０は、柄部３０に取り付けられる側の基部に、中子１２を有している。中子１２は、刃部１１の幅より細く板状に突出した部分であり、中子１２の板面は刃部１１の板面の延長上にある。中子１２には、その厚さ方向に貫通する貫通孔１５が穿設されている。本実施形態では、複数の貫通孔１５が中子１２に穿設されている。また、本実施形態では貫通孔１５は円形孔であるが、角形孔であってもよい。本実施形態では、刃体１０及び中子１２は金属製である。

【0024】

一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂは、同一種類の熱可塑性樹脂で形成されている。一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂは、細長い柱状の部材を軸方向に半割にしたような形状である。この一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂは、中子１２を両側から挟み込むように使用される。そして、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂで両側から中子１２を挟み込んだとき、全体として円柱状となるように、樹脂半体２０ａ，２０ｂの形状が設定されている。本実施形態では、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂで両側から中子１２を挟み込んだときに全体として形成される円柱は、一端側で不連続に大径となるように樹脂半体２０ａ，２０ｂの形状が設定されている。ここでは、それぞれの樹脂半体２０ａ，２０ｂにおいて、この大径の部分を構成する部分を拡径部２１と称し、残部を縮径部２２と称する。

【0025】

一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂにおいて、それぞれ相手方と対面する平面からは、柱状部２５が突出している。柱状部２５は、中子１２における貫通孔１５の数と同数あり、隣接する柱状部２５の間隔は隣接する貫通孔１５の間隔と同一である。それぞれの柱状部２５は、ちょうど貫通孔１５に嵌め込まれる形状及び大きさである。本実施形態では貫通孔１５は円形孔であるため、柱状部２５は円柱状であり、柱状部２５の外径は貫通孔１５の径よりごく僅かに小さく設定されている。また、柱状部２５の高さは、中子１２の厚さの二分の一に設定されている。

【0026】

更に、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂのうち一方の樹脂半体２０ａの柱状部２５には凸部２６が形成されており、他方の樹脂半体２０ｂの柱状部２５には凹部２７が形成されている。凸部２６と凹部２７は、互いに嵌め合わされる形状及び大きさに形成されている。

【0027】

柄部３０は、全長が中子１２の長さより長い柱状であり、一端に開口する有底の孔部３５が形成されている。孔部３５は、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂで両側から中子１２を挟み込んで形成される円柱が、ちょうど挿入される形状及び大きさに形成されている。すなわち、孔部３５は、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂにおける縮径部２２で中子１２が挟み込まれている部分が挿入される縮径孔部３５ｂと、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂにおける拡径部２１で中子１２が挟み込まれている部分が挿入される拡径孔部３５ａとからなり、拡径孔部３５ａ側で柄部３０の一端に開口している。

【0028】

次に、上記構成の部材を使用して行う刃物１の製造方法について説明する。まず、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂそれぞれの柱状部２５を貫通孔１５に挿入しつつ、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂで中子１２を両側から挟み込む。一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂそれぞれの柱状部２５の高さは、中子１２の厚さの二分の一であるため、一方の樹脂半体２０ａの柱状部２５と他方の樹脂半体２０ｂの柱状部２５とは、貫通孔１５の中央で付き合わされて当接する。また、一方の樹脂半体２０ａの柱状部２５には凸部２６が、他方の樹脂半体２０ｂの柱状部２５には凹部２７が形成されているため、凸部２６と凹部２７との嵌合により、柱状部２５同士が付き合わされている状態が安定する（図３（ａ）を参照）。

【0029】

なお、図１（ａ）に図示したように、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂそれぞれには、中子１２を両側から挟み込んだときに形成される円柱の外周面において、周方向に円形を呈する溝２９が複数形成されている。従って、これらの溝２０に沿って細いワイヤを配し、このワイヤで巻き締めることにより、一方の樹脂半体２０ａ，２０ｂで中子１２を両側から挟み込んでいる状態を安定的に保持することができる。なお、このような円形の溝２９に代替して、らせん状の溝を形成してもよい。

【0030】

この状態で、一方の樹脂半体２０ａ，２０ｂで両側から挟み込まれた中子１２を、誘導加熱する。誘導加熱では、電導線を巻いたコイルに交流電流を流すと、コイルの周囲において大きさ及び方向が変化する磁力線が発生する。コイルの内部または周囲に中子１２を置くと、金属製である中子１２には磁束の変化を妨げるうず電流が生じるため、金属内の電気抵抗により中子１２が発熱する。その結果、中子１２を両側から挟み込んでいる一方の樹脂半体２０ａ，２０ｂそれぞれが、中子１２によって加熱される。樹脂半体２０ａ，２０ｂは熱可塑性樹脂で形成されているため、加熱によって溶融する。特に、中子１２に穿設された貫通孔１５の内部で付き合わされている柱状部２５が効果的に溶融する。

【0031】

そして、溶融した樹脂の冷却固化により、もともと突き合わされた二つの柱状部２５であった樹脂は、一体の樹脂層２０となり、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂ同士が樹脂層２０で溶着した状態となる（図３（ｂ）を参照）。すなわち、中子１２を両側から挟み込んでいる一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂ同士が、中子１２の孔部３５を介して合体することにより、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂ及び中子１２が一体化される。

【0032】

なお、誘導加熱による中子１２の発熱により、樹脂半体２０ａ，２０ｂにおいて主に柱状部２５が溶融するが、樹脂半体２０ａ，２０ｂにおいて中子１２に接触している他の部分も溶融し、冷却固化により中子１２の表面に溶着することがある。

【0033】

そして、中子１２を両側から挟み込んだ状態で中子１２と一体化された一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂを、柄部３０の孔部３５に挿入し、接着剤を使用して固着する（図３（ｃ），（ｄ）、図２（ｂ）、及び図４を参照）。これにより、中子１２を有する刃体１０が柄部３０に取り付けられた刃物１の製造が終了する。なお、図２及び図４では、説明の便宜上、溶融前の柱状部２５、凸部２６、及び凹部２７の形状を破線で示している。

【0034】

以上のように、本実施形態の刃物１の製造方法によれば、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂそれぞれから突出している柱状部２５を中子１２の貫通孔１５に両側から挿入し、凸部２６と凹部２７とを嵌め合わせた状態で中子１２を誘導加熱することにより、極めて容易に一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂと中子１２とを一体化することができる。そして、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂと中子１２とが一体化されることにより形成された円柱状の部材を、柄部３０の孔部３５に挿入し接着剤で固着することにより、刃体１０を柄部３０に取り付けることができる。

【0035】

このような円柱状の部材を挿入するための孔部３５は、大きく単純な形状であるため、従来、中子の形状に合致させて形成していた細いスリット状の溝に比べて、形成する作業が非常に容易である。また、従来とは異なり、中子を柄部に圧入する必要がなく、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂと中子１２が一体化された円柱状の部材を、大きな孔部３５に挿入して接着するのみで刃体１０を柄部３０に固定することができるため、短時間で容易に刃物１を製造することができる。

【0036】

また、中子１２と柄部３０との一体化のためにリベットを使用しないため、外観のよい刃物１を製造することができる。

【0037】

なお、本実施形態では、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂが拡径部２１を有しているのに対応して、孔部３５の開口側が拡径孔部３５ａとなっている。柄部３０において孔部３５が開口している端部は、刃体１０に近い端部であり、刃物１を使用する際に大きく力が作用する部分である。このように、大きな力が作用する部分で、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂの外表面と孔部３５の内表面との接触面積が大きくなっているため、接着による接合強度が大きい利点がある。

【0038】

以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。

【0039】

例えば、上記では、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂの双方が柱状部２５を備えており、双方の柱状部２５の高さの和が中子１２の厚さと等しい（それぞれの柱状部２５の高さが中子の厚さの二分の一）と共に、一方の樹脂半体２０ａの柱状部２５が凸部２６を有しており、他方の樹脂半体２０ｂの柱状部２５が凹部２７を有している場合を例示した。これに限定されず、図５（ａ）に示すように、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂが、それぞれ中子１２の厚さと等しい高さの柱状部２５ｂ，２５ｃを備えており、一方の柱状部２５ｂ自体が凸部であると共に、これと嵌合する凹部２７ｃを他方の柱状部２５ｃが備えている態様を、例示することができる。

【0040】

更に、図５（ｂ）に示すように、一対の樹脂半体２０ａ，２０ｂのうち、一方の樹脂半体２０ａのみが柱状部２５ｄを備えており、その柱状部２５ｄ自体が凸部であり、中子１２の貫通孔１５を通過した上で、他方の樹脂半体２０ｂに形成されている凹部２７ｄと嵌合させる態様、を例示することができる。

【符号の説明】

【0041】

１ 刃物
１０ 刃体
１２ 中子
１５ 貫通孔
２０ａ，２０ｂ 一対の樹脂半体
２５，２５ｂ，２５ｃ，２５ｄ 柱状部
２６ 凸部
２７，２７ｃ，２７ｄ 凹部
３０ 柄部
３５ 孔部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】