(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073590
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】部材の接合方法および接合体
(51)【国際特許分類】
B21D 53/88 20060101AFI20220510BHJP
B21D 39/06 20060101ALI20220510BHJP
B21D 39/20 20060101ALI20220510BHJP
B60R 19/04 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B21D53/88 Z
B21D39/06 B
B21D39/20 D
B60R19/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183666
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】橋村 徹
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥ-ル・リケッツ
(72)【発明者】
【氏名】前田 康裕
(72)【発明者】
【氏名】山川 大貴
(57)【要約】
【課題】管体が孔部から引き抜かれる向きの力に対して、高い接合強度を有する部材の接合方法および接合体を提供する。
【解決手段】バンパーシステム1は、孔部16,17が設けられたバンパービーム10の後壁12と、長手方向に延びる管状部21,22を有し、管状部21,22が孔部16,17に挿通されるとともに孔部16,17に対して拡管接合されたバンパーステイ20とを備える。バンパーステイ20は、長手方向に垂直な断面において管状部21,22の外面から突出する引抜障害部24を有している。引抜障害部24は、バンパーステイ20が孔部16,17から引き抜かれる向きA1においてバンパービーム10の後壁12に当接している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部が設けられた壁面体と、
長手方向に延びる管状部を有し、前記管状部が前記孔部に挿通されるとともに前記孔部に対して拡管接合された管体と
を備え、
前記管体は、前記長手方向に垂直な断面において前記管状部の外面から突出する引抜障害部を有し、
前記引抜障害部は、前記管体が前記孔部から引き抜かれる向きにおいて前記壁面体に当接している、接合体。
【請求項2】
前記孔部は、非拡管状態の前記管状部および前記引抜障害部を挿通可能な形状を有している、請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記壁面体は、前記孔部の孔縁と前記管状部の前記外面との隙間を埋めるように配置されるカラー部材を備える、請求項1または請求項2に記載の接合体。
【請求項4】
前記壁面体は、前記孔部を部分的に閉じるように配置され、前記管体が前記孔部から引き抜かれる向きにおいて前記引抜障害部と当接するロック部材を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項5】
前記管体は、前記長手方向に垂直な断面において前記管状部の前記外面から突出する押込障害部を有し、
前記押込障害部は、前記管体が前記孔部に押し込まれる向きにおいて、前記壁面体に当接している、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項6】
前記管体は、前記管状部を2つ有し、
前記押込障害部は、2つの前記管状部を接続している、請求項5に記載の接合体。
【請求項7】
前記壁面体の材質と、前記管体の材質とは、異なっている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項8】
孔部を有する壁面体と、長手方向に延びる管状部および前記長手方向に垂直な断面において前記管状部の外面から突出する引抜障害部を有する管体とを準備し、
前記管体の前記管状部および前記引抜障害部を前記孔部に挿通し、
前記管体が前記孔部から引き抜かれる向きにおいて前記引抜障害部を前記壁面体に当接させるとともに前記管体を前記孔部に対して拡管接合する
ことを含む、部材の接合方法。
【請求項9】
前記拡管接合は、ゴムバルジ接合である、請求項8に記載の部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の接合方法および接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野では、軽量化や安全性向上のために、軽量のアルミニウム合金製部品と、高強度の鋼製部品とを合わせて活用するマルチマテリアル化が行われている。マルチマテリアル化で問題となるのは、異種金属製部品の接合である。異種金属製部品の接合には、通常よく使用される溶接を採用し難く、代替的な接合方法が必要となる。
【0003】
マルチマテリアル化における異種金属製部品の接合を可能にする方法として、ゴムバルジ接合が知られている。ゴムバルジ接合は、壁面体の孔部に管体を挿通し、弾性体を使用して管体を拡管変形させることにより管体と壁面体の孔部とを圧接する方法である。
【0004】
例えば、特許文献1には、ゴムバルジ接合による部材の接合方法および接合体が開示されている。特許文献1では、2つの管部を側面にて接続壁によって接続した二連管として管体(バンパーステイ)を構成している。そのため、管体(バンパーステイ)が壁面体(バンパービーム)の孔部に押し込まれる向きに力が付加された際に接続壁が壁面体に当接する。従って、管体の突き抜けが抑制され、管体と壁面体との接合が解除されることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の部材の接合方法および接合体においては、管体が孔部に押し込まれる向きの力に対しては高い接合強度を有しているが、管体が孔部から引き抜かれる向きの力に対しては十分な検討がなされておらず、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、管体が孔部から引き抜かれる向きの力に対して、高い接合強度を有する部材の接合方法および接合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、孔部が設けられた壁面体と、長手方向に延びる管状部を有し、前記管状部が前記孔部に挿通されるとともに前記孔部に対して拡管接合された管体とを備え、前記管体は、前記長手方向に垂直な断面において前記管状部の外面から突出する引抜障害部を有し、前記引抜障害部は、前記管体が前記孔部から引き抜かれる向きにおいて前記壁面体に当接している、接合体を提供する。
【0009】
この構成によれば、管体が孔部から引き抜かれる向きに力が付加された場合でも引抜障害部が壁面体に引っ掛かるため、管体が孔部から引き抜かれることを抑制できる。よって、接合体として高い接合強度および信頼性を確保できる。
【0010】
前記孔部は、非拡管状態の前記管状部および前記引抜障害部を挿通可能な形状を有してもよい。
【0011】
この構成によれば、接合体の製造を容易にできる。具体的には、製造容易性の観点から、引抜障害部は、管体を孔部に押し込む際には壁面体に引っ掛かることなく、管体を孔部から引き抜く際には壁面体に引っ掛かることが好ましい。上記構成では管体の非拡管状態において孔部に対して管状部および引抜障害部を挿通可能であることから、前者については具体的に実現できる。これにより、管体に引抜障害部を予め形成できるため、管状部を孔部に挿入した後に引抜障害部を形成するといった加工工程を省略することができる。また、後者については管体を孔部に挿通した後に引抜障害部が壁面体に引っ掛かるように管体の姿勢を変更してもよいし、管体の拡管接合に伴って引抜障害部が壁面体に引っ掛かるように管体を膨出させてもよいし、管体を孔部に挿通した後に引抜障害部が壁面体に引っ掛かるように孔部を部分的に閉じるなどしてもよい。
【0012】
前記壁面体は、前記孔部の孔縁と前記管状部の前記外面との隙間を埋めるように配置されるカラー部材を備えてもよい。
【0013】
この構成によれば、カラー部材によって管状部と孔部との隙間を埋めることができ、管状部と孔部との密着度を高め、接合体の接合強度を高めることができる。
【0014】
前記壁面体は、前記孔部を部分的に閉じるように配置され、前記管体が前記孔部から引き抜かれる向きにおいて前記引抜障害部と当接するロック部材を備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、ロック部材によって引抜障害部の引っ掛かり構造を容易に構成できる。
【0016】
前記管体は、前記長手方向に垂直な断面において前記管状部の前記外面から突出する押込障害部を有し、前記押込障害部は、前記管体が前記孔部に押し込まれる向きにおいて、前記壁面体に当接してもよい。また、前記管体は、前記管状部を2つ有し、前記押込障害部は、2つの前記管状部を接続してもよい。
【0017】
この構成によれば、管体が孔部に押し込まれる向きに力が付加された場合にも押込障害部が壁面体に引っ掛かるため、管体の突き抜けを抑制できる。よって、接合体として一層高い接合強度および信頼性を確保できる。
【0018】
前記壁面体の材質と、前記管体の材質とは、異なってもよい。
【0019】
この構成によれば、マルチマテリアル化を実現できる。特に、マルチマテリアル化では、異種材料の接合が問題となるところ、上記構成によって高い接合強度を有する接合体を提供できる。
【0020】
本発明の第2の態様は、孔部を有する壁面体と、長手方向に延びる管状部および前記長手方向に垂直な断面において前記管状部の外面から突出する引抜障害部を有する管体とを準備し、前記管体の前記管状部および前記引抜障害部を前記孔部に挿通し、前記管体が前記孔部から引き抜かれる向きにおいて前記引抜障害部を前記壁面体に当接させるとともに前記管体を前記孔部に対して拡管接合することを含む、部材の接合方法を提供する。また、前記拡管接合は、ゴムバルジ接合であってもよい。
【0021】
この方法によって製造された接合体は、管体が孔部から引き抜かれる向きに力が付加された場合でも引抜障害部が壁面体に引っ掛かるため、管体が孔部から引き抜かれることを抑制できる。よって、接合体として高い接合強度および信頼性を確保できる。特に、上記方法では、ゴムバルジ接合を採用してもよい。ゴムバルジ接合は、拡管対象となる部材の材質や形状に対する制約が少なく、均等な拡管が可能であるため、高い接合強度を容易に確保できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、部材の接合方法および接合体において、管体が壁面体の孔部から引き抜かれること抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】第1実施形態に係るバンパーシステムのゴムバルジ接合前の斜視図。
【
図3】
図2のバンパーシステムのゴムバルジ接合後の接合部の拡大斜視図。
【
図4】
図2のバンパーシステムのバンパービームの斜視図。
【
図5】
図2のバンパーシステムのバンパーステイの斜視図。
【
図6】
図2のバンパーシステムのカラー部材の斜視図。
【
図7】
図2のバンパーシステムの接合部近傍の側面図。
【
図9】
図8のバンパービームの孔部にバンパーステイを挿入した正面図。
【
図10】
図9のバンパーステイを車幅方向にスライドさせた正面図。
【
図11】
図10のバンパービームの孔部にカラー部材を配置した正面図。
【
図12】第2実施形態に係るバンパーシステムのゴムバルジ接合前の斜視図。
【
図13】
図12のバンパーシステムのバンパービームの斜視図。
【
図14】
図12のバンパーシステムのバンパーステイの斜視図。
【
図18】
図17のバンパービームの孔部にバンパーステイを挿入した正面図。
【
図19】
図18のバンパーステイを車両上下方向にスライドさせた正面図。
【
図20】
図19のバンパービームの孔部にカラー部材を配置した正面図。
【
図21】第3実施形態に係るバンパーシステムのゴムバルジ接合前の斜視図。
【
図22】
図21のバンパーシステムのバンパービームの斜視図。
【
図23】
図21のバンパーシステムのバンパーステイの斜視図。
【
図27】
図26のバンパービームの孔部にバンパーステイを挿入した正面図。
【
図28】
図27のバンパービームの孔部にバンパーステイを挿入した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1,2を参照して、本発明の接合体の一例としてのバンパーシステム1について説明する。
図1,2において、X方向が車両前後方向を示し、Y方向が車幅方向を示し、Z方向が車両上下方向を示している。これは以降の図においても同様である。
【0026】
バンパーシステム1は、自動車骨格の前部に配置され、前方衝撃から車室Rを保護する役割を果たす。バンパーシステム1は、車幅方向に延びるバンパービーム(壁面体の一例)10と、車両前後方向に延びるバンパーステイ(管体の一例)20とを有している。バンパーステイ20は、バンパービーム10の車幅方向における両端部に接合されている。
【0027】
図3を参照して、詳細は後述するが、バンパーステイ20は、バンパービーム10に対して拡管接合されている。本実施形態のバンパーシステム1では、拡管接合が解かれることを抑制する構造が採用されている。特に、当該構造によって、バンパーステイ20がバンパービーム10から車両後方に向かって引き抜かれるようにして接合が解かれることを効果的に抑制している。以下、当該構造について説明する。
【0028】
図4を参照して、バンパービーム10は、鋼板を曲げ加工して形成されている。バンパービーム10は、概略車幅方向に延びている。バンパービーム10は、車両上下方向から見て弓なりに湾曲している。バンパービーム10の車幅方向に垂直な断面の形状は8の字状であり、2つの閉断面部C1,C2が車両上下方向に連なっている。
【0029】
詳細には、バンパービーム10は、車両前後方向に対向して配置された前壁11および後壁12と、車両上下方向に対向して配置された上壁13および下壁14とを有している。上壁13は前壁11および後壁12の車両上下方向における上端を接続し、下壁14は前壁11および後壁12の車両上下方向における下端を接続している。また、バンパービーム10は、車両上下方向において上壁13と下壁14との間に、上壁13と下壁14と対向して配置された仕切壁15を有している。
【0030】
後壁12には、車幅方向の各端部においてバンパーステイ20を挿通可能な2つの孔部16,17が設けられている。車両上下方向においては、仕切壁15が2つの孔部16,17の間に位置するように配置されている。仕切壁15は、2つの閉断面部C1,C2を区画するとともに2つの閉断面部C1,C2に共有されている。
【0031】
孔部16,17は、車両前後方向に後壁16を貫通する貫通孔16a,17aと、貫通孔16a,17aを画定するとともに車両前後方向から見て角丸長方形状(トラック形)の孔縁16b,17bとをそれぞれ含んでいる。孔縁16b,17bには、後述する引抜障害部24と相補的な形状を有するガイド溝16c,17cがそれぞれ設けられている。ガイド溝16c,17cは、孔縁16b,17bをそれぞれ部分的に下方または上方にそれぞれ切り欠いて形成されている。
【0032】
図5を参照して、バンパーステイ20は、アルミニウム合金製の押出材からなる。バンパーステイ20は車両前後方向(長手方向)に延び、前端部がバンパービーム10の湾曲形状に合わせて切断されている。
【0033】
バンパーステイ20は、車両前後方向(長手方向)に延びるとともに車両上下方向に離間して配置された2つの管状部21,22と、それらを繋ぐ押込障害部23と、2つの管状部21,22の外面から突出した引抜障害部24とを有している。
【0034】
2つの管状部21,22は、長手方向に垂直な断面において同じ角丸長方形状(トラック形状)を有している。2つの管状部21,22のそれぞれの外形は、2つの孔部16,17のそれぞれの内形と相似形である。また、2つの管状部21,22のそれぞれの外形は2つの孔部16,17のそれぞれの内形よりわずかに小さく、2つの管状部21,22が2つの孔部16,17に挿通可能に構成されている。
【0035】
押込障害部23は、車幅方向に対向する2枚の接続壁23a,23bを含んでいる。2枚の接続壁23a,23bのそれぞれは、車両上下方向において、上端が上側の管状部21の下面に接続され、下端が下側の管状部22の上面に接続されている。従って、バンパーステイ20は、車両前後方向に垂直な断面において車両上下方向に連なる3つの閉断面部C3~C5を有している。
【0036】
2枚の接続壁23a,23bのそれぞれは2つの管状部21,22の後方4分の3程度の領域に配置され、車両前後方向において前端部がバンパービーム10の湾曲形状に合わせて切断されている。残りの前方4分の1程度の領域には引抜障害部24が配置されている。
【0037】
引抜障害部24は、上側の管状部21の外面(詳細には下面)から下方に突出する突出部24aと、下側の管状部22の外面(詳細には上面)から上方に突出する突出部24bとを含んでいる。突出部24a,24bは、車両前後方向に延びるとともに車幅方向に対向する一対の突条形状をそれぞれ有している。
【0038】
図4,5を参照して、下方に突出する突出部24aのサイズは、下方に切り欠かれたガイド溝16cのサイズよりも小さく、管状部21を孔部16に挿通する際に突出部24aがガイド溝16cを通過できるようになっている。同様に、上方に突出する突出部24bのサイズは、上方に切り欠かれたガイド溝17cのサイズよりも小さく、管状部22を孔部17に挿通する際に突出部24bがガイド溝17cを通過できるようになっている。
【0039】
また、突出部24aの後面と、上側の管状部21の下面と、押込障害部23(接続壁23a,23b)の前面とによって、上方に凹んだ形状を有する凹部21aが構成される。同様に、突出部24bの後面と、下側の管状部22の上面と、押込障害部23(接続壁23a,23b)の前面とによって、下方に凹んだ形状を有する凹部22aが構成される。詳細を後述するが、バンパーステイ20の凹部21a,22aにバンパービーム10の後壁12が配置されることにより、バンパーステイ20およびバンパービーム10の車両前後方向における相対的な変位が拘束される。
【0040】
図6,7を参照して、本実施形態では、バンパービーム10がカラー部材18を有している。カラー部材18は、孔縁16b,17bと管状部21,22との隙間を埋めるように配置される。カラー部材18は、孔縁16b,17bの車幅方向外側部分にそれぞれ取り付けられるように孔縁16b,17bに沿った湾曲形状を有している。
【0041】
詳細には、カラー部材18は、C字形で車両前後方向に延びる挿入部18aと、挿入部18aから後方へ連続して挿入部18aよりも大きなC字形を有するフランジ部18bとを有している。挿入部18aは孔部16,17に挿入される部分であり、フランジ部18bはバンパービーム10の後壁12と車両前後方向において対向および当接する部分である。
【0042】
図7を参照して、凹部21a,22aには後壁12が配置される。これにより、バンパーステイ20がバンパービーム10に対して車両前後方向に動かないように固定される。具体的には、引抜障害部24によってバンパーステイ20が孔部16,17から引き抜かれることが抑制され、押込障害部23によってバンパーステイ20が孔部16,17に押し込まれることが抑制されている。
【0043】
引抜障害部24は、バンパーステイ20が孔部16,17から引き抜かれる向き(矢印A1参照)においてバンパービーム10の後壁12に当接している。詳細には、車両前後方向において、引抜障害部24の突出部24a,24bの後面と、後壁12の前面とが当接している。換言すれば、引抜障害部24は、バンパーステイ20が孔部16,17から引き抜かれる向きに力が付加された際に、後壁12に引っ掛かるようになっている。
【0044】
押込障害部23は、バンパーステイ20が孔部16,17に押し込まれる向き(矢印A2参照)においてバンパービーム10の後壁12に当接している。詳細には、車両前後方向において、押込障害部23の接続壁23a,23bの前面と、後壁12の後面とが当接している。換言すれば、押込障害部23は、バンパーステイ20が孔部16,17に押し込まれる向きに力が付加された際に、後壁12に引っ掛かるようになっている。
【0045】
次に、
図8~11を参照して、上記構成を有するバンパーシステム1のための部材の接合方法を説明する。
【0046】
図8,9を参照して、バンパーステイ20の管状部21,22を、バンパービーム10の後壁12の孔部16,17に対してそれぞれ挿通する。このとき、バンパーステイ20の引抜障害部24はガイド溝16c,17cを通るため、後壁12には引っ掛からない。そして、バンパーステイ20は前端がバンパービーム10の前壁11に当接するまで押し込まれる。バンパーステイ20の前端がバンパービーム10の前壁11に当接した状態では、凹部21a,22aと後壁12の車両前後方向における位置が揃っている。これにより、後壁12は凹部21a,22a内で車幅方向に摺動可能となっている(
図7参照)。
【0047】
2つの孔部16,17のそれぞれは、非拡管状態の2つの管状部21,22のそれぞれおよび引抜障害部24を挿通可能な形状を有している。2つの孔部16,17のそれぞれの大きさは、車両上下方向においては2つの管状部21,22のそれぞれと概略同一であるが、車幅方向においては2つの管状部21,22よりも隙間D1だけ大きい。引抜障害部24がガイド溝16c,17cを通って車両前方へ押し込まれている状態では、2つの孔部16,17のそれぞれの車幅方向内側部分において、管状部21,22のそれぞれと孔縁16b,17bのそれぞれとの間に隙間D1が生じている。即ち、バンパーステイ20は、車幅方向内側に隙間D1だけ移動する余地がある。
【0048】
図10を参照して、
図9の状態からバンパーステイ20は車幅方向内側に隙間D1だけ移動されている。このとき、凹部21a,22a内では後壁12が車幅方向内側に摺動し、バンパーステイ20がバンパービーム10に対して車両前後方向に動かないように固定される(
図7参照)。その結果、2つの孔部16,17のそれぞれの車幅方向内側部分の隙間D1(
図9参照)はなくなり、車幅方向外側部分において隙間D1が生じる(
図10参照)。
【0049】
図11を参照して、
図10の状態において孔部16,17の車幅方向外側部分に生じていた隙間D1を埋めるようにカラー部材18を取り付ける。カラー部材18は、挿入部18a(
図6参照)を孔部16,17に押し込むようにして取り付けられ、フランジ部18bと後壁12が当接する。
【0050】
詳細を図示しないが、
図11のようにカラー部材18を取り付けた後、柱状のゴム部材(弾性体)を2つの管状部21,22のそれぞれの内部に挿入し、ゴム部材を車両前後方向において後壁12を跨ぐように配置する。次いで、ゴム部材を車両前後方向に圧縮することにより、ゴム部材を車両前後方向に垂直な方向に膨出させ、2つの管状部21,22のそれぞれを拡管する。この拡管によって管状部21,22を孔部16,17にそれぞれ圧接(拡管接合)する(
図3参照)。即ち、バンパーステイ20をバンパービーム10の孔部16,17に対してゴムバルジ接合する。ゴムバルジ接合は、溶接とは異なり接合対象となる2つの部材(バンパービーム10とバンパーステイ20)の材質が異なる場合にも接合できる。
【0051】
このようにして、本実施形態のバンパーシステム1が製造される。
【0052】
本実施形態によれば、管状部21,22が孔部16,17からそれぞれ引き抜かれる向きに力が付加された場合でも引抜障害部24がバンパービーム10の後壁12に引っ掛かるため、管状部21,22が孔部16,17からそれぞれ引き抜かれることを抑制できる。よって、バンパーシステム1において、接合体として高い接合強度および信頼性を確保できる。特に本実施形態では、ゴムバルジ接合が採用されている。ゴムバルジ接合は、拡管対象となる部材の材質や形状に対する制約が少なく、均等な拡管が可能であるため、高い接合強度を容易に確保できる。
【0053】
また、本実施形態によれば、製造容易性の観点から、引抜障害部24は、管状部21,22を孔部16,17に押し込む際には後壁12に引っ掛かることなく、管状部21,22を孔部16,17から引き抜く際には後壁12に引っ掛かるように構成されている。従って、バンパーシステム1を容易に製造できる。
【0054】
また、本実施形態によれば、カラー部材18によって管状部21,22と孔部16,17との隙間D1を埋めることができ、管状部21,22と孔部16,17との密着度を高め、拡管接合(本実施形態ではゴムバルジ接合)の接合強度を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、管状部21,22が孔部16,17にそれぞれ押し込まれる向きに力が付加された場合にも押込障害部23が後壁12に引っ掛かるため、バンパーステイ20の突き抜けを抑制できる。よって、拡管接合(本実施形態ではゴムバルジ接合)の接合強度を一層高めることができ、バンパーシステム1として一層高い信頼性を確保できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、異なる材質のバンパービーム10とバンパーステイ20を使用しているため、マルチマテリアル化を実現させている。特に、マルチマテリアル化では、異種材料の接合が問題となるところ、ゴムバルジ接合によって高い接合強度を有するバンパーシステム1を実現できる。
【0057】
(第2実施形態)
図12に示す第2実施形態のバンパーシステム1は、バンパービーム10とバンパーステイ20との接合部に関する構成以外、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0058】
図13を参照して、本実施形態では、バンパービーム10の後壁12の孔部16,17にガイド溝16c,17c(
図4参照)が設けられていない。孔部16,17は、車両前後方向に後壁12を貫通する貫通孔16a,17aと、貫通孔16a,17aを画定するとともに車両前後方向から見て単純な角丸長方形状(トラック形)の孔縁16b,17bとをそれぞれ含んでいる。
【0059】
図14を参照して、本実施形態では、バンパーステイ20の下側の管状部22に突出部24b(
図5参照)が設けられていない。なお、上側の管状部21には第1実施形態と同様に突出部(引抜障害部)24aが設けられている。従って、本実施形態では上側の管状部21においてのみ、凹部21aが設けられる。凹部21aに後壁12が配置されることで、第1実施形態と同様に、バンパーステイ20がバンパービーム10に対して車両前後方向に動かないように固定される。
【0060】
図15,16を参照して、本実施形態では、2種類のカラー部材18A,18Bが使用される。2種類のカラー部材18A,18Bは、ともに孔縁16b,17bの車両上下方向の上側部分にそれぞれ取り付けられるように孔縁16b,17bに沿った湾曲形状を有している。2種類のカラー部材18A,18Bのうち一方のカラー部材18Aは孔縁16b,17bの上部全体にわたって取り付けられ、他方のカラー部材18Bは孔縁16b,17bの上部両角に離間して取り付けられる。
【0061】
次に、
図17~20を参照して、上記構成を有するバンパーシステム1のための部材の接合方法を説明する。
【0062】
図17,18を参照して、バンパーステイ20の管状部21,22を、バンパービーム10の後壁12の孔部16,17に対してそれぞれ挿通する。バンパーステイ20は前端がバンパービーム10の前壁11に当接するまで押し込まれる。バンパーステイ20の前端がバンパービーム10の前壁11に当接した状態では、凹部21aと後壁12の車両前後方向における位置が揃っている(
図16参照)。
【0063】
2つの孔部16,17のそれぞれは、非拡管状態の2つの管状部21,22のそれぞれおよび引抜障害部24を挿通可能な形状を有している。2つの孔部16,17のそれぞれの大きさは、車幅方向においては2つの管状部21,22のそれぞれと概略同一であるが、車両上下方向においては2つの管状部21,22よりも隙間D2だけ大きい。バンパーステイ20の突出部24a(
図14参照)の突出量は隙間D2よりも小さく、管状部21および引抜障害部24を孔部16に挿通できるようになっている。挿通状態では、2つの孔部16,17のそれぞれの車両上下方向下側部分において、管状部21,22と孔縁16b,17bとの間に隙間D2が生じている。即ち、バンパーステイ20は、車両上下方向において下向きに隙間D2だけ移動する余地がある。
【0064】
図19を参照して、
図18の状態からバンパーステイ20は車両上下方向において下向きに隙間D2だけ移動されている。このとき、凹部21a内に後壁12が配置され、バンパーステイ20がバンパービーム10に対して車両前後方向に動かないように固定される(
図16参照)。その結果、2つの孔部16,17のそれぞれの車両上下方向における下側部分の隙間D2(
図18参照)はなくなり、車両上下方向における上側部分において隙間D2が生じる(
図19参照)。
【0065】
図20を参照して、
図19の状態において孔部16,17の車両上下方向上側部分に生じていた隙間D2を埋めるようにカラー部材18A,18Bをそれぞれ取り付ける。
【0066】
詳細を図示しないが、
図20のようにカラー部材18A,18Bを取り付けた後、柱状のゴム部材(弾性体)を2つの管状部21,22のそれぞれの内部に挿入し、ゴム部材を車両前後方向において後壁12を跨ぐように配置する。次いで、ゴム部材を車両前後方向に圧縮することにより、ゴム部材を車両前後方向に垂直な方向に膨出させ、2つの管状部21,22のそれぞれを拡管する。この拡管によって2つの管状部21,22のそれぞれを2つの孔部16,17のそれぞれに圧接(拡管接合)する。即ち、バンパーステイ20をバンパービーム10の孔部16,17に対してゴムバルジ接合する。
【0067】
このようにして、本実施形態のバンパーシステム1が製造される。
【0068】
本実施形態のバンパーシステム1の作用効果は、第1実施形態と実質的に同じである。
【0069】
(第3実施形態)
図21に示す第3実施形態のバンパーシステム1は、ロック部材19を有している。ロック部材19に関連する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0070】
図22を参照して、本実施形態では、バンパービーム10の形状は、第1実施形態におけるバンパービーム10の形状と概略同一である。ただし、第1実施形態と異なり、孔部16,17のそれぞれの大きさは、車両上下方向においても車幅方向においても管状部21,22のそれぞれと概略同一である。従って、孔部16,17に管状部21,22をそれぞれ挿通した際、車両上下方向においても車幅方向においても隙間が生じない。
【0071】
図23参照して、バンパーステイ20は第1実施形態のものと同じである。
【0072】
図24,25を参照して、本実施形態では、バンパービーム10がロック部材19を有している。ロック部材19は、フック状の取付部19aと、取付部19aから2股に分かれて延びる延長部19bとを有している。取付部19aは後壁12に取り付けられる。取付部19aが後壁12に取り付けられた状態では、延長部19bが仕切壁15を跨いで配置される。このとき、延長部19bによってガイド溝16c,17cが閉じられる。即ち、車両前後方向において、引抜障害部24とガイド溝16c,17cとの間に延長部19bが配置される。引抜障害部24は、バンパーステイ20が孔部16,17から引き抜かれる向きにおいてロック部材19に当接する。換言すれば、引抜障害部24は、バンパーステイ20が孔部16,17から引き抜かれる向きに力が付加された際に、ロック部材19に引っ掛かるようになっている。
【0073】
次に、
図25~28を参照して、上記構成を有するバンパーシステム1のための部材の接合方法を説明する。
【0074】
図26~28を参照して、バンパーステイ20の管状部21,22をバンパービーム10の後壁12の孔部16,17に対してそれぞれ挿通する。バンパーステイ20は前端がバンパービーム10の前壁11に当接するまで押し込まれる。バンパーステイ20の前端がバンパービーム10の前壁11に当接した状態では、凹部21a,22aと後壁12の車両前後方向における位置が揃っている(
図28参照)。
【0075】
2つの孔部16,17のそれぞれは、非拡管状態の2つの管状部21,22のそれぞれおよび引抜障害部24を挿通可能な形状を有している。挿通状態では、管状部21,22と孔縁16b,17bとの間に隙間が生じていない。
【0076】
図25,28を参照して、
図28の状態から
図25の状態のように後壁12の端部にロック部材19を取り付ける。ロック部材19が取り付けられると、ガイド溝16c,17cが閉じられるため、バンパーステイ20が孔部16,17から引き抜かれる向きに力が付加されても、引抜障害部24がロック部材19に引っ掛かるようになっている。
【0077】
詳細を図示しないが、
図25のようにロック部材19を取り付けた後、柱状のゴム部材(弾性体)を管状部21,22にそれぞれ挿入し、ゴム部材を車両前後方向において後壁12を跨ぐように配置する。次いで、ゴム部材を車両前後方向に圧縮することにより、ゴム部材を車両前後方向に垂直な方向に膨出させ、管状部21,22のそれぞれを拡管する。この拡管によって管状部21,22を孔部16,17にそれぞれ圧接(拡管接合)する。即ち、バンパーステイ20をバンパービーム10の孔部16,17に対してゴムバルジ接合する。
【0078】
このようにして、本実施形態のバンパーシステム1が製造される。
【0079】
本実施形態のバンパーシステム1の作用効果は、第1実施形態と実質的に同じである。
【0080】
また、本実施形態では、ロック部材19によって引抜障害部24の引っ掛かり構造を容易に構成できる。
【0081】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0082】
また、バンパーステイ20の形状は上記実施形態のものに限定されず、例えば管状部は1つであってもよい。バンパービーム10の形状についても上記実施形態のものに限定されず、例えば仕切壁15が設けられていなくてもよいし、車幅方向に垂直な断面の形状が任意の多角形であってもよい。カラー部材18の形状についても上記実施形態のものに限定されず、孔縁16b,17bと管状部21,22との隙間を埋めることのできる任意の形状であり得る。ロック部材19の形状についても上記実施形態のものに限定されず、引抜障害部24の引っ掛かりを構成するように孔部16,17を部分的に閉じることのできる任意の形状であり得る。
【0083】
また、本発明の適用対象は、上記実施形態のバンパーシステム1に限定されず、孔部を有する壁面体に対して管体を拡管接合した任意の接合体およびそのための部材の接合方法であり得る。部材の接合方法における拡管接合の態様もゴムバルジ接合に限定されず、金型バルジや電磁成形などのその他の任意の拡管接合を採用し得る。
【符号の説明】
【0084】
1 バンパーシステム
10 バンパービーム
11 前壁
12 後壁
13 上壁
14 下壁
15 仕切壁
16,17 孔部
16a,17a 貫通孔
16b,17b 孔縁
16c,17c ガイド溝
18,18A,18B カラー部材
18a 挿入部
18b フランジ部
19 ロック部材
19a 取付部
19b 延長部
20 バンパーステイ
21,22 管状部
21a,22a 凹部
23 押込障害部
23a,23b 接続壁
24 引抜障害部
24a,24b 突出部
R 車室
C1~C5 閉断面部