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特開2022-75006制御装置、周囲環境取得システム、リーン車両、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075006
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】制御装置、周囲環境取得システム、リーン車両、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20220511BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20220511BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20220511BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W30/14
B60W30/08
B60W40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185519
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】大高 順
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA61
3D241CA12
3D241CC20
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DB14Z
(57)【要約】
【課題】周囲環境検出装置がリーン車両のハンドルと共に動く構成の場合でも、ライダー支援システムによるライダーの支援精度の低下を従来よりも抑制できる制御装置を得る。
【解決手段】制御装置は、リーン車両のライダーの運転の支援のために前記リーン車両の周囲環境を検出する周囲環境検出装置の姿勢を制御する制御装置であって、前記周囲環境検出装置は、前記リーン車両に搭載された際、少なくとも前記リーン車両の前方の周囲環境を検出し、前記リーン車両のハンドルと共に動くものであり、当該制御装置は、前記リーン車両が旋回した際、前記周囲環境検出装置の姿勢を変化させる駆動機構を動作させ、前記駆動機構を動作させない場合と比べて前記周囲環境検出装置の検出中心軸が上向きとなるように、前記周囲環境検出装置の姿勢を変化させる構成となっている。
【選択図】図5


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーン車両(1)のライダーの運転の支援のために前記リーン車両(1)の周囲環境を検出する周囲環境検出装置(11)の姿勢を制御する制御装置(30)であって、
前記周囲環境検出装置(11)は、前記リーン車両(1)に搭載された際、少なくとも前記リーン車両(1)の前方の周囲環境を検出し、前記リーン車両(1)のハンドル(2)と共に動くものであり、
当該制御装置(30)は、前記リーン車両(1)が旋回した際、前記周囲環境検出装置(11)の姿勢を変化させる駆動機構(20)を動作させ、前記駆動機構(20)を動作させない場合と比べて前記周囲環境検出装置(11)の検出中心軸(12)が上向きとなるように、前記周囲環境検出装置(11)の姿勢を変化させる構成である
制御装置(30)。
【請求項2】
前記リーン車両(1)が旋回した際に、前記駆動機構(20)を動作させない場合と比べて前記周囲環境検出装置(11)の前記検出中心軸(12)が上向きとなる角度を上げ角(θ)とした場合、
旋回中の前記リーン車両(1)の旋回度に応じて前記上げ角(θ)を決定する構成である
請求項1に記載の制御装置(30)。
【請求項3】
前記旋回度を求めるパラメータとして前記リーン車両(1)のリーン角を用い、前記リーン角に基づいて前記上げ角(θ)を決定する構成である
請求項2に記載の制御装置(30)。
【請求項4】
前記旋回度を求めるパラメータとして前記リーン車両(1)のヨーレートを用い、前記ヨーレートに基づいて前記上げ角(θ)を決定する構成である
請求項2又は請求項3に記載の制御装置(30)。
【請求項5】
前記旋回度を求めるパラメータとして前記リーン車両(1)の横加速度を用い、前記横加速度に基づいて前記上げ角(θ)を決定する構成である
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の制御装置(30)。
【請求項6】
前記旋回度を求めるパラメータとしてさらに前記リーン車両(1)の舵角を用い、これら前記パラメータに基づいて前記上げ角(θ)を決定する構成である
請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の制御装置(30)。
【請求項7】
前記周囲環境検出装置(11)は撮像装置であり、
前記撮像装置の撮像データから前記上げ角(θ)を決定する構成である
請求項2~請求項6のいずれか一項に記載の制御装置(30)。
【請求項8】
前記リーン車両(1)の旋回中のピッチング方向の姿勢情報と、前記旋回度とに基づき、前記上げ角(θ)を決定する構成である
請求項2~請求項7のいずれか一項に記載の制御装置(30)。
【請求項9】
前記ピッチング方向の姿勢情報として、前記リーン車両(1)のピッチング角を用いる構成である
請求項8に記載の制御装置(30)。
【請求項10】
前記ピッチング方向の姿勢情報として、前記リーン車両(1)の前輪(3)側のサスペンション(4)の伸縮量を用いる構成である
請求項8又は請求項9に記載の制御装置(30)。
【請求項11】
前記ピッチング方向の姿勢情報として、前記リーン車両(1)の前後方向の加減速度を用いる構成である
請求項8~請求項10のいずれか一項に記載の制御装置(30)。
【請求項12】
前記リーン車両(1)に搭載された際、少なくとも前記リーン車両(1)の前方の周囲環境を検出し、前記リーン車両(1)のハンドル(2)と共に動く周囲環境検出装置(11)と、
前記周囲環境検出装置(11)の姿勢を変化させる駆動機構(20)と、
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の制御装置(30)と、
を備えている周囲環境取得システム(10)。
【請求項13】
請求項12に記載の周囲環境取得システム(10)を備えているリーン車両(1)。
【請求項14】
リーン車両(1)のライダーの運転の支援のために前記リーン車両(1)の周囲環境を検出する周囲環境検出装置(11)の姿勢を制御する制御方法であって、
前記周囲環境検出装置(11)は、前記リーン車両(1)に搭載された際、少なくとも前記リーン車両(1)の前方の周囲環境を検出し、前記リーン車両(1)のハンドル(2)と共に動くものであり、
制御装置(30)が、前記リーン車両(1)が旋回した際、前記周囲環境検出装置(11)の姿勢を変化させる駆動機構(20)を動作させ、前記駆動機構(20)を動作させない場合と比べて前記周囲環境検出装置(11)の検出中心軸(12)が上向きとなるように、前記周囲環境検出装置(11)の姿勢を変化させる姿勢制御ステップ(S30)を備えている制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーン車両のライダーの運転の支援のためにリーン車両の周囲環境を検出する周囲環境検出装置の姿勢を制御する制御装置、該制御装置を備えた周囲環境取得システム、該周囲環境取得システムを備えたリーン車両、及び、リーン車両のライダーの運転の支援のためにリーン車両の周囲環境を検出する周囲環境検出装置の姿勢を制御する制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リーン車両の一種である従来の自動二輪車には、ライダーの運転の支援を行うライダー支援システムを採用するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。ライダー支援システムは、自動二輪車に搭載された周囲環境検出装置によって自動二輪車の周囲環境を検出し、周囲環境検出装置の検出結果に基づいて、自動二輪車のライダーの運転を支援する動作(例えば、警告機能、緊急ブレーキ機能、クルーズ走行機能等)を実行する。なお、リーン車両とは、旋回する際に車体が旋回方向に傾斜する車両である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-116882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リーン車両に周囲環境検出装置を搭載する際、ハンドルと共に動く位置に周囲環境検出装置が搭載されることも想定される。ここで、リーン車両は、旋回時に車体が旋回方向に傾斜した際、ハンドルが自然に旋回方向に切れていくセルフステアが発生する。このため、周囲環境検出装置がリーン車両のハンドルと共に動く構成の場合、リーン車両が旋回した際、周囲環境検出装置が地面の方を向いてしまう。すなわち、周囲環境検出装置がリーン車両のハンドルと共に動く構成の場合、リーン車両が旋回した際、リーン車両が直進している場合と比べ、周囲環境検出装置の検出中心軸が地面の方を向いてしまう。このため、周囲環境検出装置がリーン車両のハンドルと共に動く構成の場合、遠くの物を検出できない、地面を障害物として検出してしまう等の発生により、ライダー支援システムによるライダーの支援精度が低下してしまうという場合がある。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、リーン車両のライダーの運転の支援のためにリーン車両の周囲環境を検出する周囲環境検出装置の姿勢を制御する制御装置であって、周囲環境検出装置がリーン車両のハンドルと共に動く構成の場合でも、ライダー支援システムによるライダーの支援精度の低下を従来よりも抑制できる制御装置を得ることを目的とする。また、本発明は、このように構成された制御装置を備えた周囲環境取得システムを得ることを目的とする。また、本発明は、このように構成された周囲環境取得システムを備えたリーン車両を得ることを目的とする。また、本発明は、リーン車両のライダーの運転の支援のためにリーン車両の周囲環境を検出する周囲環境検出装置の姿勢を制御する制御方法であって、周囲環境検出装置がリーン車両のハンドルと共に動く構成の場合でも、ライダー支援システムによるライダーの支援精度の低下を従来よりも抑制できる制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、リーン車両のライダーの運転の支援のために前記リーン車両の周囲環境を検出する周囲環境検出装置の姿勢を制御する制御装置であって、前記周囲環境検出装置は、前記リーン車両に搭載された際、少なくとも前記リーン車両の前方の周囲環境を検出し、前記リーン車両のハンドルと共に動くものであり、当該制御装置は、前記リーン車両が旋回した際、前記周囲環境検出装置の姿勢を変化させる駆動機構を動作させ、前記駆動機構を動作させない場合と比べて前記周囲環境検出装置の検出中心軸が上向きとなるように、前記周囲環境検出装置の姿勢を変化させる構成となっている。
【0007】
また、本発明に係る周囲環境取得システムは、前記リーン車両に搭載された際、少なくとも前記リーン車両の前方の周囲環境を検出し、前記リーン車両のハンドルと共に動く周囲環境検出装置と、前記周囲環境検出装置の姿勢を変化させる駆動機構と、本発明に係る制御装置と、を備えている。
【0008】
また、本発明に係るリーン車両は、本発明に係る周囲環境取得システムを備えている。
【0009】
また、本発明に係る制御方法は、リーン車両のライダーの運転の支援のために前記リーン車両の周囲環境を検出する周囲環境検出装置の姿勢を制御する制御方法であって、前記周囲環境検出装置は、前記リーン車両に搭載された際、少なくとも前記リーン車両の前方の周囲環境を検出し、前記リーン車両のハンドルと共に動くものであり、制御装置が、前記リーン車両が旋回した際、前記周囲環境検出装置の姿勢を変化させる駆動機構を動作させ、前記駆動機構を動作させない場合と比べて前記周囲環境検出装置の検出中心軸が上向きとなるように、前記周囲環境検出装置の姿勢を変化させる姿勢制御ステップを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、リーン車両が旋回した際、駆動機構によって、すなわちメカ的な機構によって、駆動機構を動作させない場合と比べて周囲環境検出装置の検出中心軸が上向きとなるように、周囲環境検出装置の姿勢を変化させる。このため、本発明においては、周囲環境検出装置がリーン車両のハンドルと共に動く構成の場合でも、リーン車両の直進時と旋回時とにおける周囲環境検出装置の検出中心軸の上下方向のずれを従来よりも小さくすることができる。したがって、本発明は、周囲環境検出装置がリーン車両のハンドルと共に動く構成の場合でも、ライダー支援システムによるライダーの支援精度の低下を従来よりも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る周囲環境取得システムが搭載されたリーン車両の側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るリーン車両が側方に傾斜している状態において、該リーン車両の前輪周辺を該リーン車両の前方から観察した概略図である。
図3】本発明の実施の形態に係るリーン車両が側方に傾斜している状態において、該リーン車両の前輪周辺を該リーン車両の側方から観察した概略図である。
図4】本発明の実施の形態に係るリーン車両が側方に傾斜している状態において、該リーン車両の前輪周辺を該リーン車両の側方から観察した概略図である。
図5】本発明の実施の形態に係る駆動機構の一例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る周囲環境取得システムの制御装置の一例を示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態に係る周囲環境取得システムの制御装置における動作の一例の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る制御装置、周囲環境取得システム、リーン車両、及び制御方法について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下で説明する構成及び動作等は本発明の一例であり、本発明は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0014】
例えば、以下では、リーン車両として自動二輪車を例示している。しかしながら、リーン車両とは、旋回する際に車体が旋回方向に傾斜する車両全般を指し示すものである。このため、リーン車両は自動二輪車に限定されない。例えば、リーン車両には、旋回する際に車体が旋回方向に傾斜するモータサイクル(自動二輪車、旋回する際に車体が旋回方向に傾斜する自動三輪車)、及び自転車等が含まれる。また、旋回する際に車体が旋回方向に傾斜するモータサイクルは、エンジンを推進源とするものであってもよく、電動モータを推進源とするものであってもよく、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0015】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0016】
実施の形態.
以下に、実施の形態に係る制御装置、該制御装置を備えた周囲環境取得システム、該周囲環境取得システムを備えたリーン車両、及び実施の形態に係る制御方法について説明する。
【0017】
<周囲環境取得システムが搭載されたリーン車両の構成>
実施の形態に係る制御装置、該制御装置を備えた周囲環境取得システム、該周囲環境取得システムを備えたリーン車両の構成について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る周囲環境取得システムが搭載されたリーン車両の側面図である。なお、図1では、紙面右側が、リーン車両1の前側となる。
リーン車両1は、例えば自動二輪車である。リーン車両1は、前輪3と、該前輪3に接続され、該前輪3の操作部となるハンドル2と、を備えている。また、本実施の形態では、リーン車両1は、車体と前輪3との間に、サスペンション4を備えている。
【0019】
リーン車両1には、ライダー支援システムが搭載されている。このライダー支援システムは、周囲環境取得システム10及び制御装置5を備えている。また、周囲環境取得システム10は、周囲環境検出装置11を備えている。周囲環境検出装置11は、リーン車両1のライダーの運転の支援のためにリーン車両1の周囲環境を検出するものであり、例えば、リーン車両1の周囲に位置する対象(例えば、障害物、先行車、標識等)を検出する。周囲環境検出装置11は、例えば、レーダー、撮像装置、又は超音波センサ等である。本実施の形態では、周囲環境検出装置11は、リーン車両1に搭載された際、少なくともリーン車両1の前方の周囲環境を検出する。また、本実施の形態では、周囲環境検出装置11は、ハンドル2に直接設けられる構成、あるいは、ハンドル2と共に動く構造物に設けられる構成となっている。すなわち、周囲環境検出装置11は、リーン車両1のハンドル2と共に動く構成となっている。なお、周囲環境取得システム10の詳細については後述する。
【0020】
制御装置5は、周囲環境検出装置11の検出結果に基づいて、リーン車両1のライダーの運転を支援する動作(例えば、警告機能、緊急ブレーキ機能、クルーズ走行機能等)を実行するものである。例えば、制御装置5の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置5の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置5は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
なお、図1に示す走行状態検出装置40は、リーン車両1の走行状態を検出するものであり、詳細は後述する。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態に係るリーン車両が側方に傾斜している状態において、該リーン車両の前輪周辺を該リーン車両の前方から観察した概略図である。図3及び図4は、本発明の実施の形態に係るリーン車両が側方に傾斜している状態において、該リーン車両の前輪周辺を該リーン車両の側方から観察した概略図である。なお、図2は、リーン角αで旋回方向に傾斜しているリーン車両1を示している。また、図3及び図4は、リーン角αで旋回方向に傾斜しているリーン車両1の前輪3周辺を側方から観察した図となっており、紙面右側がリーン車両1の前方となっている。また、図2及び図3は、セルフステアが発生していない状態のリーン車両1を示している。図4は、セルフステアが発生している状態のリーン車両1を示している。なお、図4には、想像線である二点鎖線で、セルフステアが発生していない状態での周囲環境検出装置11の検出中心軸12(換言すると図3に示した検出中心軸12)を示している。後述のように、リーン車両1の側方から見た際、セルフステアが発生していない状態での周囲環境検出装置11の検出中心軸12の方向は、リーン車両1が直進している状態の周囲環境検出装置11の検出中心軸12と概略同方向である。
【0022】
リーン車両1は、旋回時に車体が旋回方向に傾斜する。ここで、リーン車両1の旋回時、リーン車両1にセルフステアが発生しなければ、リーン車両1の直進時と旋回時とで、周囲環境検出装置11の検出中心軸12は、概略同方向となる。例えば、リーン車両1の直進時、周囲環境検出装置11の検出中心軸12は、リーン車両1の側方から見て概略水平方向を向いているとする。この場合、リーン車両1の旋回時にセルフステアが発生しなければ、図3に示すように、周囲環境検出装置11の検出中心軸12は、リーン車両1の側方から見て概略水平方向となる。
【0023】
しかしながら、リーン車両1は、旋回時に車体が旋回方向に傾斜した際、ハンドル2が自然に旋回方向に切れていくセルフステアが発生する。このため、周囲環境検出装置11がハンドル2と共に動く構成の場合、図4に示すように、リーン車両1が旋回した際、周囲環境検出装置11が地面の方を向いてしまう。すなわち、周囲環境検出装置11がハンドル2と共に動く構成の場合、図4に示すように、リーン車両1が旋回した際、リーン車両1が直進している場合と比べ、周囲環境検出装置11の検出中心軸12が地面の方を向いてしまう。このため、周囲環境検出装置11がハンドル2と共に動く構成の場合、遠くの物を検出できない、地面を障害物として検出してしまう等の発生により、ライダー支援システムによるライダーの支援精度が低下してしまうという場合がある。
【0024】
ここで、周囲環境検出装置11の検出範囲をソフト的に変更し、リーン車両1の旋回時に発生する周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれを補正することも考えられる。しかしながら、周囲環境検出装置11がハンドル2と共に動く構成の場合の旋回時の上述の軸ずれは、大きくなる場合があり、ソフト的に補正することが困難となる場合もある。
【0025】
そこで、本実施の形態に係る周囲環境取得システム10は、図1に示すように、周囲環境検出装置11に加えて駆動機構20及び制御装置30を備え、上述の周囲環境検出装置11の軸ずれをメカ的な機構によって抑制できる構成となっている。以下、本実施の形態に係る周囲環境取得システム10の詳細について説明する。
【0026】
駆動機構20は、周囲環境検出装置11の姿勢を変化させるものである。駆動機構20は、例えば図5のように構成することができる。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態に係る駆動機構の一例を示す図である。この図5は、リーン車両1に搭載されている周囲環境検出装置11及び駆動機構20を、リーン車両1の側方から観察した図である。なお、図5では、紙面右側がリーン車両1の前方となっている。また、図5には、駆動機構20によって姿勢が変化した後の周囲環境検出装置11を、想像線である二点鎖線で示している。
【0028】
周囲環境検出装置11には、回転軸13が取り付けられている。回転軸13は、リーン車両1のハンドル2に、あるいはハンドル2と共に動く構造物に、回転自在に保持されている。駆動機構20は、歯車21、歯車22、及びモータ23を備えている。歯車21は、周囲環境検出装置11に取り付けられている。歯車22の歯は、歯車21の歯に噛み合わされている。この歯車22は、モータ23の駆動軸24に取り付けられている。このように構成された駆動機構20においては、モータ23の駆動軸24が回転することにより、連動して周囲環境検出装置11が回転軸13を中心として回転し、周囲環境検出装置11の検出中心軸12の方向が上下方向に変更される。
【0029】
なお、図5で示した駆動機構20の構成は、あくまでも一例である。周囲環境検出装置11の姿勢をメカ的に変化させることができる構成であれば、駆動機構20の構成は任意である。例えば、駆動機構20は、歯車21、歯車22、及びモータ23に換えて、直動アクチュエーターを備え、該直動アクチュエーターによって、回転軸13を中心として周囲環境検出装置11を回転させてもよい。また例えば、周囲環境検出装置11は、該周囲環境検出装置11を保持するホルダーを介して、リーン車両1に取り付けられる場合がある。また、このようなホルダーは、周囲環境検出装置11の検出中心軸12の上下方向の向き調整する調整ネジを備えている場合がある。このような場合、駆動機構20は、モータ等の駆動力を当該調整ネジに伝達し、該調整ネジを回転させる構成を備えていてもよい。そして、駆動機構20は、該調整ネジを回転させて、周囲環境検出装置11の検出中心軸12の上下方向の向きが変化するように、周囲環境検出装置11の姿勢を変化させてもよい。
【0030】
制御装置30は、例えば、一部又は全てがマイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置30の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置30は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置30の少なくとも一部は、制御装置5の少なくとも一部と一体に形成されていてもよい。この制御装置30は、周囲環境検出装置11の姿勢を制御するものである。具体的には、制御装置30は、リーン車両1が旋回した際、駆動機構20を動作させ、駆動機構20を動作させない場合と比べて周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きとなるように、周囲環境検出装置11の姿勢を変化させる構成となっている。例えば、制御装置30は、図6のように構成することができる。
【0031】
図6は、本発明の実施の形態に係る周囲環境取得システムの制御装置の一例を示すブロック図である。
制御装置30は、リーン車両1の走行状態の情報を検出する走行状態検出装置40の検出結果に基づいて、駆動機構20を動作させる。
【0032】
走行状態検出装置40は、少なくとも1つの検出装置を備えている。走行状態検出装置40を構成する検出装置は、走行状態検出装置40専用に設けられた検出装置であってもよいし、他の用途に用いられている検出装置を走行状態検出装置40の検出装置として用いてもよい。
【0033】
走行状態検出装置40は、少なくとも、リーン車両1の旋回度の情報を検出する検出装置を備えている。ここで、旋回度とは、リーン車両1の旋回の度合いを示すものである。例えば、リーン車両1が同一速度で走行している場合、旋回半径が小さくなるほど、旋回度は大きくなる。また例えば、リーン車両1が同一旋回半径で旋回している場合、速度が高くなるほど、旋回度は大きくなる。そして、旋回度が大きくなるにしたがって、リーン車両1のリーン角、及び、セルフステアによる舵角のうちの少なくとも一方が大きくなる。このため、旋回度が大きくなるにしたがって、リーン車両1における直進時と旋回時とでの周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれが大きくなる。
【0034】
例えば、走行状態検出装置40は、リーン車両1の旋回度の情報を検出する検出装置として、リーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの少なくとも1つを検出する検出装置を備えている。なお、リーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの少なくとも1つを検出する検出装置は、これらの情報に実質的に変換可能な物理量を検出するものであってもよい。リーン車両1の旋回度が大きくなるにしたがって、リーン車両1のリーン角も概ね大きくなる。また、リーン車両1の旋回時、リーン車両1のヨーレート及び横加速度は、概ね、リーン車両1のリーン角の増減に対応して増減する。このため、リーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度をリーン車両1の旋回度の情報として用いることができる。
【0035】
なお、走行状態検出装置40は、リーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの複数を検出する場合、それぞれの情報を検出する別々の検出装置を備えていてもよいし、これらのうちの少なくとも2つの情報を1つの検出装置で検出してもよい。本実施の形態では、走行状態検出装置40は、リーン車両1の旋回度の情報を検出する検出装置として、慣性計測装置を備え、リーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの少なくとも1つを検出する。慣性計測装置は、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサを備えており、リーン車両1の3軸の加速度と3軸の角速度の検出結果を出力するものである。
【0036】
走行状態検出装置40は、リーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの少なくとも1つを検出する検出装置を備えている場合、リーン車両1の旋回度の情報を検出する検出装置として、リーン車両1の舵角を検出する検出装置を備えていることが好ましい。なお、リーン車両1の舵角を検出する検出装置は、リーン車両1の舵角に実質的に変換可能な物理量を検出するものであってもよい。上述のように、リーン車両1における直進時と旋回時とでの周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれは、リーン車両1のリーン角及び舵角に起因する。このため、リーン車両1の舵角を検出することにより、制御装置30は、リーン車両1における直進時と旋回時とでの周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれをより正確に把握することが可能となる。
【0037】
また例えば、周囲環境検出装置11が撮像装置の場合、走行状態検出装置40は、リーン車両1の旋回度の情報を検出する検出装置として、周囲環境検出装置11を用いてもよい。リーン車両1が直進しているときの周囲環境検出装置11の撮像データと、リーン車両1が旋回しているときの周囲環境検出装置11の撮像データとの比較によって、リーン車両1における直進時と旋回時とでの周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれを検出することができるからである。
【0038】
また、走行状態検出装置40は、リーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの少なくとも1つを検出する検出装置を備えている場合、リーン車両1の旋回度の情報を検出する検出装置に加え、リーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報を検出する検出装置を備えていることが好ましい。ピッチング方向とは、図1に円弧状の矢印Pで示す方向である。リーン車両1の旋回中、リーン車両1のピッチング方向の姿勢が変化すると、リーン車両1における直進時と旋回時とでの周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれ量も変化する。このため、リーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報を検出することにより、制御装置30は、リーン車両1における直進時と旋回時とでの周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれをより正確に把握することが可能となる。
【0039】
例えば、走行状態検出装置40は、リーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報を検出する検出装置として、リーン車両1のピッチング角を検出する検出装置を備えている。リーン車両1のピッチング方向の姿勢が変化すると、リーン車両1のピッチング角も変化するからである。なお、リーン車両1のピッチング角を検出する検出装置は、リーン車両1のピッチング角に実質的に変換可能な物理量を検出するものであってもよい。本実施の形態では、リーン車両1のピッチング角を検出する検出装置として、上述の慣性計測装置を用いている。
【0040】
また例えば、走行状態検出装置40が備えるリーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報を検出する検出装置は、リーン車両1の前輪3側のサスペンション4の伸縮量を検出する検出装置であってもよい。リーン車両1のピッチング方向の姿勢が変化すると、サスペンション4の伸縮量も変化するからである。なお、サスペンション4の伸縮量を検出する検出装置は、サスペンション4の伸縮量に実質的に変換可能な物理量を検出するものであってもよい。
【0041】
また例えば、走行状態検出装置40が備えるリーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報を検出する検出装置は、リーン車両1の前後方向の加減速度を検出する検出装置であってもよい。リーン車両1のピッチング方向の姿勢が変化すると、リーン車両1の前後方向の加減速度も変化するからである。なお、リーン車両1の前後方向の加減速度を検出する検出装置は、リーン車両1の前後方向の加減速度に実質的に変換可能な物理量を検出するものであってもよい。本実施の形態では、リーン車両1の前後方向の加減速度を検出する検出装置として、上述の慣性計測装置を用いている。なお、リーン車両1の速度の単位時間当たりの変化量から、リーン車両1の前後方向の加減速度を検出してもよい。
【0042】
制御装置30は、機能部として、情報取得部31、上げ角決定部32、及び動作制御部33を備えている。
【0043】
情報取得部31は、走行状態検出装置40の検出結果を取得する機能部である。動作制御部33は、上げ角決定部32によって後述のように決定された上げ角θとなるように、駆動機構20を動作させる機能部である。
【0044】
上げ角決定部32は、リーン車両1が旋回した際に周囲環境検出装置11の検出中心軸12を上向きとする量を決定する機能部である。具体的には、リーン車両1が旋回した際に、駆動機構20を動作させない場合と比べて周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きとなる角度を、上げ角θとする。ここで、リーン車両1が旋回した際に駆動機構20を動作させない場合とは、リーン車両1が直進状態から旋回した際、直進時から駆動機構20を動作させない場合である。例えば、図5において紙面水平方向となっている周囲環境検出装置11の検出中心軸12を、リーン車両1が直進しているときの周囲環境検出装置11の検出中心軸12とする。そして、図5において紙面右側に向かって上昇している周囲環境検出装置11の検出中心軸12を、リーン車両1が旋回しているときの周囲環境検出装置11の検出中心軸12とする。この場合、上げ角θは、図5に示すようになる。
【0045】
例えば、上げ角θは、固定値であってもよい。この場合、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回度が規定の閾値以上となった場合、上げ角θを0°より大きな固定値とする。また、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回度が規定の閾値よりも小さくなった場合、上げ角θを0°とする。このように上げ角θを決定することにより、リーン車両1の旋回時に動作制御部33が駆動機構20を動作させた際、リーン車両1の直進時と旋回時とで、リーン車両1の側方から見たときの周囲環境検出装置11の検出中心軸12の上下方向のずれを、従来よりも抑制できる。
【0046】
また、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回度に応じて上げ角θを決定してもよい。すなわち、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回度が大きくなっている状態ほど、上げ角θを大きな値に決定してもよい。なお、上げ角θの変化のさせ方は、任意である。リーン車両1の旋回度が大きくなるにしたがって、上げ角θの値を線形に大きくしていってもよいし、上げ角θの値を階段状に大きくしていってもよい。上げ角決定部32がリーン車両1の旋回度に応じて上げ角θを決定することにより、リーン車両1の旋回時に動作制御部33が駆動機構20を動作させた際、リーン車両1の直進時と旋回時とで、リーン車両1の側方から見たときの周囲環境検出装置11の検出中心軸12の上下方向のずれをより抑制できる。
【0047】
例えば、上げ角決定部32は、旋回度を求めるパラメータとしてリーン車両1のリーン角を用い、該リーン角に基づいて上げ角θを決定する。具体的には、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回時、リーン車両1のリーン角が大きくなっている状態ほど、上げ角θを大きな値に決定する。また、例えば、上げ角決定部32は、旋回度を求めるパラメータとしてリーン車両1のヨーレートを用い、該ヨーレートに基づいて上げ角θを決定する。具体的には、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回時、リーン車両1のヨーレートが大きくなっている状態ほど、上げ角θを大きな値に決定する。また、例えば、上げ角決定部32は、旋回度を求めるパラメータとしてリーン車両1の横加速度を用い、該横加速度に基づいて上げ角θを決定する。具体的には、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回時、リーン車両1の横加速度が大きくなっている状態ほど、上げ角θを大きな値に決定する。
【0048】
なお、上げ角決定部32は、旋回度を求めるパラメータとしてリーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの複数を用い、上げ角θを決定してもよい。これにより、リーン車両1の旋回度をより正確に把握することができ、リーン車両1の旋回時に動作制御部33が駆動機構20を動作させた際、リーン車両1の直進時と旋回時とで、リーン車両1の側方から見たときの周囲環境検出装置11の検出中心軸12の上下方向のずれをさらに抑制できる。
【0049】
また、上げ角決定部32は、旋回度を求めるパラメータとしてリーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの少なくとも1つを用いる場合、旋回度を求めるパラメータとしてさらにリーン車両1の舵角を用い、これらのパラメータによって上げ角θを決定してもよい。具体的には、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回時、舵角が大きくなっている状態ほど、上げ角θを大きな値に決定する。上述のように、リーン車両1における直進時と旋回時とでの周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれは、リーン車両1のリーン角及び舵角に起因する。このため、旋回度を求めるパラメータの1つとしてリーン車両1の舵角を用いることにより、リーン車両1の旋回時に動作制御部33が駆動機構20を動作させた際、リーン車両1の直進時と旋回時とで、リーン車両1の側方から見たときの周囲環境検出装置11の検出中心軸12の上下方向のずれをさらに抑制できる。
【0050】
また例えば、周囲環境検出装置11が撮像装置の場合、上げ角決定部32は、周囲環境検出装置11の撮像データから上げ角θを決定してもよい。リーン車両1が直進しているときの周囲環境検出装置11の撮像データと、リーン車両1が旋回しているときの周囲環境検出装置11の撮像データとの比較によって、リーン車両1における直進時と旋回時とでの周囲環境検出装置11の検出中心軸12のずれを直接的又は補足的に求めることができる。このため、リーン車両1の旋回時に動作制御部33が駆動機構20を動作させた際、リーン車両1の直進時と旋回時とで、リーン車両1の側方から見たときの周囲環境検出装置11の検出中心軸12の上下方向のずれを抑制できる。
【0051】
また、上げ角決定部32は、旋回度を求めるパラメータとしてリーン車両1のリーン角、ヨーレート及び横加速度のうちの少なくとも1つを用いる場合、上述の旋回度と、リーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報とに基づき、上げ角θを決定してもよい。具体的には、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回時、リーン車両1の車体において後方に対する前方の沈み込み量が大きくなっている状態ほど、上げ角θを大きな値に決定する。また、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回時、リーン車両1の車体において後方に対する前方の浮き上がり量が大きくなっている状態ほど、上げ角θを小さな値に決定する。
【0052】
例えば、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報として、リーン車両1のピッチング角を用いる。例えば、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報として、リーン車両1の前輪3側のサスペンション4の伸縮量を用いる。例えば、上げ角決定部32は、リーン車両1の旋回中のピッチング方向の姿勢情報として、リーン車両1の前後方向の加減速度を用いる。詳しくは、上げ角決定部32は、リーン車両1の前進時に減速度が大きくなるほど、上げ角θを大きな値に決定する。また、上げ角決定部32は、リーン車両1の前進時に加速度が大きくなるほど、上げ角θを小さな値に決定する。
【0053】
<周囲環境取得システムの制御装置の動作>
実施の形態に係る周囲環境取得システム10の制御装置30の動作について説明する。
【0054】
図7は、本発明の実施の形態に係る周囲環境取得システムの制御装置における動作の一例の制御フローを示す図である。
制御の開示条件となった場合、ステップS10において制御装置30は、図7に示す制御を開始する。制御の開始条件とは、リーン車両1のエンジンが起動したとき等である。ステップS20は、情報取得ステップである。ステップS20において制御装置30の情報取得部31は、走行状態検出装置40の検出結果を取得する。
【0055】
ステップS20の後のステップS30は、姿勢制御ステップである。姿勢制御ステップとは、リーン車両1が旋回した際、駆動機構20を動作させ、駆動機構20を動作させない場合と比べて周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きとなるように、周囲環境検出装置11の姿勢を変化させる制御ステップである。本実施の形態に係るステップS30(姿勢制御ステップ)は、ステップS31及びステップS32を備えている。
【0056】
具体的には、ステップS31において制御装置30の上げ角決定部32は、ステップS10において取得した走行状態検出装置40の検出結果に基づいて、上述したいずれかの方法により、上げ角θを決定する。ステップS31の後のステップS32では、制御装置30の動作制御部33は、ステップS32で決定された上げ角θとなるように、駆動機構20を動作させる。
【0057】
ステップS30の後のステップS40は、終了判定ステップである。ステップS40において制御装置30は、制御の終了条件となったか否かを判定する。制御の終了条件とは、リーン車両1のエンジンが停止した等である。制御の終了条件となった場合、制御装置30は、ステップS50に進み、図7に示す制御を終了する。一方、制御の終了条件となっていない場合、制御装置30は、ステップS20からステップS40までを繰り返す。なお、ステップS20からステップS40までを繰り返す過程において、リーン車両1が直進状態となった場合、ステップS30において制御装置30は、上げ角θを0°に戻す。具体的には、ステップS31において上げ角決定部32は、上げ角θを0°に決定する。また、ステップS32において動作制御部33は、上げ角θが0°となるように、駆動機構20を動作させる。
【0058】
<周囲環境取得システムの制御装置の効果>
本実施の形態に係る制御装置30は、リーン車両1のライダーの運転の支援のためにリーン車両1の周囲環境を検出する周囲環境検出装置11の姿勢を制御する制御装置である。周囲環境検出装置11は、リーン車両1に搭載された際、少なくともリーン車両1の前方の周囲環境を検出し、リーン車両1のハンドル2と共に動くものである。制御装置30は、リーン車両1が旋回した際、周囲環境検出装置11の姿勢を変化させる駆動機構20を動作させ、駆動機構20を動作させない場合と比べて周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きとなるように、周囲環境検出装置11の姿勢を変化させる構成となっている。
【0059】
このように構成された制御装置30においては、リーン車両1が旋回した際、駆動機構20によって、すなわちメカ的な機構によって、駆動機構20を動作させない場合と比べて周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きとなるように、周囲環境検出装置11の姿勢を変化させる。このため、このように構成された制御装置30においては、周囲環境検出装置11がリーン車両1のハンドル2と共に動く構成の場合でも、リーン車両1の直進時と旋回時とにおける周囲環境検出装置11の検出中心軸12の上下方向のずれを従来よりも小さくすることができる。したがって、このように構成された制御装置30は、周囲環境検出装置11がリーン車両1のハンドル2と共に動く構成の場合でも、ライダー支援システムによるライダーの支援精度の低下を従来よりも抑制できる。
【0060】
以上、本実施の形態に係る制御装置30について説明したが、本発明に係る制御装置は、本実施の形態の説明に限定されるものではなく、本実施の形態の一部のみが実施されてもよい。
【0061】
例えば、以上では、リーン車両1が旋回した際、ハンドル2の幅方向に沿う軸回りを周囲環境検出装置11が回転されることで、周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きになっているが、ハンドル2の幅方向に沿う軸に対して所定の角度をなす軸回りを周囲環境検出装置11が回転されることで、周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きになってもよい。上述の所定の角度は、例えば、路面鉛直方向に沿って周囲環境検出装置11の検出中心軸12の向きが変更される角度であってもよく、また、周囲環境検出装置11の検出中心軸12がリーン車両1の進行方向を向く角度であってもよい。また、ハンドル2の幅方向に沿う軸回りを周囲環境検出装置11が回転されて、周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きになった上で、周囲環境検出装置11の検出中心軸12の向きが路面平行方向において変更されてもよい。
【0062】
また、例えば、リーン車両1が旋回した際、制御装置30が、周囲環境検出装置11の検出中心軸12が上向きとなるように、周囲環境検出装置11の姿勢を変化させるとともに、周囲環境検出装置11の検出範囲のソフト的な変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 リーン車両、2 ハンドル、3 前輪、4 サスペンション、5 制御装置、10 周囲環境取得システム、11 周囲環境検出装置、12 検出中心軸、13 回転軸、20 駆動機構、21 歯車、22 歯車、23 モータ、24 駆動軸、30 制御装置、31 情報取得部、32 上げ角決定部、33 動作制御部、40 走行状態検出装置、θ 上げ角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7