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特開2022-75724トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075724
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20220511BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220511BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220511BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20220511BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220511BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C08L9/06
C08K3/36
C08K3/04
C08K5/548
B60C1/00 A
B60C11/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031793
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2020190322の分割
【原出願日】2019-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雅子
(57)【要約】
【課題】低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能に優れたトレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】25℃におけるM200、30℃におけるE、及び30℃におけるtanδが下記式を満たすトレッド用ゴム組成物。
M200×E/tanδ≧400
(式中、前記M200は、JIS K6251:2010に基づいて、25℃において実施した引張試験による200%伸張時応力〔MPa〕である。前記Eは、温度30℃、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪み2%の条件下での粘弾性試験による複素弾性率〔MPa〕である。前記tanδは、温度30℃、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪み2%の条件下での粘弾性試験による損失正接である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃におけるM200、30℃におけるE、及び30℃におけるtanδが下記式を満たすトレッド用ゴム組成物であって、
前記トレッド用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムとシリカとを含み、
ゴム成分100質量部に対して、シリカを80質量部以上含むトレッド用ゴム組成物。
M200×E/tanδ≧400
(式中、前記M200は、JIS K6251:2010に基づいて、25℃において実施した引張試験による200%伸張時応力〔MPa〕である。前記Eは、温度30℃、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪み2%の条件下での粘弾性試験による複素弾性率〔MPa〕である。前記tanδは、温度30℃、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪み2%の条件下での粘弾性試験による損失正接である。)
【請求項2】
前記M200、E及びtanδが下記式を満たす請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
M200×E/tanδ≧500
(式中、前記M200は、JIS K6251:2010に基づいて、25℃において実施した引張試験による200%伸張時応力〔MPa〕である。前記Eは、温度30℃、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪み2%の条件下での粘弾性試験による複素弾性率〔MPa〕である。前記tanδは、温度30℃、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪み2%の条件下での粘弾性試験による損失正接である。)
【請求項3】
ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを1~8質量部含む請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
メルカプト系シランカップリング剤を含む請求項1~3のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物で構成されたトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドには、走行中の操縦安定性能、耐摩耗性能、低燃費性能等の性能が要求され、例えば、トレッドに用いるゴム成分、フィラー等を工夫する方法等により、性能の改善が行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の変性ジエン系ゴムと、特定のシリカとを配合し、良好なタイヤ物性を付与する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/125614号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能に優れたトレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、25℃におけるM200、30℃におけるE、及び30℃におけるtanδが下記式を満たすトレッド用ゴム組成物に関する。
M200×E/tanδ≧400
【0007】
前記M200、E及びtanδが下記式を満たすことが好ましい。
M200×E/tanδ≧500
【0008】
ゴム成分100質量部に対して、シリカを75質量部以上含むことが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物で構成されたトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、25℃におけるM200、30℃におけるE、及び30℃におけるtanδがM200×E/tanδ≧400を満たすトレッド用ゴム組成物であるので、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能に優れたトレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、25℃におけるM200、30℃におけるE、及び30℃におけるtanδが、M200×E/tanδ≧400を満たす。これにより、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能の総合性能を顕著に改善できる。
【0011】
ゴム組成物(加硫済)の物性として、伸長時応力(モジュラス)、複素弾性率、損失正接等が挙げられるが、本発明は、特に、25℃におけるM200、30℃におけるE、及び30℃におけるtanδが前記式を満たす場合に、ゴムの剛性や耐久性が確保されると共に、転がり抵抗を小さくできるという知見を見出し、完成に至ったものである。従って、前記式を満たすゴム組成物によれば、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能の総合性能を顕著に改善できる。
【0012】
トレッド用ゴム組成物(加硫済)は、25℃におけるM200(温度25℃における200%モジュラス(200%伸張時応力)〔MPa〕)、30℃におけるE(温度30℃における複素弾性率〔MPa〕)、及び30℃におけるtanδ(温度30℃における損失正接)が下記式を満たす。
M200×E/tanδ≧400
低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能の総合性能の観点から、M200×E/tanδは、450以上が好ましく、500以上が更に好ましく、510以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、800以下が好ましく、700以下がより好ましい。
【0013】
トレッド用ゴム組成物(加硫済)は、耐摩耗性能、操縦安定性能の観点から、25℃におけるM200〔MPa〕が8.0MPa以上が好ましく、8.3MPa以上がより好ましく、8.5MPa以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、15.0MPa以下が好ましく、12.0MPa以下がより好ましく、11.0MPa以下が更に好ましい。
【0014】
トレッド用ゴム組成物(加硫済)は、操縦安定性能の観点から、30℃におけるE〔MPa〕が8.0MPa以上が好ましく、8.3MPa以上がより好ましく、8.5MPa以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、15.0MPa以下が好ましく、12.0MPa以下がより好ましく、11.0MPa以下が更に好ましい。
【0015】
トレッド用ゴム組成物(加硫済)は、低燃費性能の観点から、30℃におけるtanδは、0.25以下が好ましく、0.22以下がより好ましく、0.19以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、0.10以上が好ましく、0.12以上がより好ましい。
【0016】
なお、M200は、実施例に記載のJIS K6251:2010に基づく方法、E、tanδは、実施例に記載の方法で測定した値である。
【0017】
ここで、M200、E、tanδは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、フィラー)の種類や量により調整が可能であり、例えば、M200は、高分子量のゴム成分を用いると大きくなる傾向があり、Eは、高分子量のゴム成分を用いたり、フィラーを増量すると大きくなる傾向があり、tanδは、変性ゴムを使用したり、フィラーとしてシリカを使用すると小さくなる傾向がある。
【0018】
M200×E/tanδ≧400を満足させる手法としては、(a)連続重合方式で重合した高分子量のゴム成分を用いる方法、(b)ゴム成分に変性基を導入した変性ゴムを用いる方法、(c)シリカ量を調整する方法、(d)可塑剤を調整する方法、等を単独又は適宜組み合わせる手法が挙げられる。これにより、前記式を満足することで、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能の総合性能が改善される。
【0019】
このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
一般に低燃費性能を確保する手法としてフィラーの減量が挙げられるが、剛性を確保できず、また、フィラーによる補強が不十分で耐摩耗性も劣るため、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能のバランスが悪化する。また、通常、低燃費性能に優れる変性スチレン-ブタジエン共重合体はバッチ重合で作製されるが、加工性などの問題で分子量が低くなることが多い一方で、連続重合方式で作製されたスチレン-ブタジエン共重合体は、高分子量で剛性、耐摩耗性能に優れるものの、低燃費性能に劣る傾向がある。これに対し、例えば、耐摩耗性能に優れる連続重合方式で重合した高分子量のスチレン-ブタジエン共重合体に変性基を導入したゴムを用い、前記式を満足させることで、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能の総合性能を顕著に改善できる。これは、高分子量による耐摩耗性能の確保及び変性基による低燃費性能の確保により、これらのバランスが向上すると共に、高分子量であることでゴムの剛性(操縦安定性能)も確保され、低燃費性能と操縦安定性能のバランスも向上する。そして、その結果、前記総合性能が顕著に改善されると推察される。
【0020】
トレッド用ゴム組成物は、通常、ゴム成分とフィラーとを含む。
ゴム成分としては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。なかでも、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能の観点から、SBR、BRが好ましい。なお、ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
SBRとしては、油展スチレン-ブタジエン共重合体を好適に使用できる。
油展スチレン-ブタジエン共重合体は、スチレン-ブタジエン共重合体に対して伸展油を用いて油展したものである。このように、予め伸展油によって油展した油展スチレン-ブタジエン共重合体を含有することにより、ゴム組成物の配合時に油を混練した配合ゴムと比較して、ゴム成分中の伸展油及びフィラーの分散性を向上できる。
【0022】
ゴム成分100質量%中の油展スチレン-ブタジエン共重合体の含有量は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
【0023】
油展スチレン-ブタジエン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40万以上、より好ましくは60万以上、更に好ましくは80万以上である。下限以上であれば、高分子量であることでゴムの剛性も確保され、低燃費性能と操縦安定性能のバランスが向上する傾向がある。該Mwは特に限定されないが、好ましくは150万以下、より好ましくは130万以下、更に好ましくは110万以下である。
【0024】
油展スチレン-ブタジエン共重合体の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)(Mw/Mn)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、更に好ましくは1.8以上であり、また、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.7以下、更に好ましくは2.5以下である。上記範囲内であると、良好な低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0025】
油展スチレン-ブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは38質量%以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0026】
油展スチレン-ブタジエン共重合体のビニル結合量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。下限以上にすることで、良好な操縦安定性能が得られる傾向がある。該ビニル結合量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上限以下にすることで、良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0027】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定でき、スチレン含有量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0028】
油展スチレン-ブタジエン共重合体は、分岐構造を導入したものが好ましい。分岐構造が導入されたスチレン-ブタジエン共重合体としては、例えば、その重合体末端がエポキシ化合物、ハロゲン含有ケイ素化合物、及び第二のアルコキシシラン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の多官能性カップリング剤で変性されているものや、少量の分岐剤の存在下で重合したものを挙げることができる。これらの中でも、その重合体末端が多官能性カップリング剤で変性されているものが好ましい。
【0029】
スチレン-ブタジエン共重合体は、例えば、重合開始剤を用いて、スチレンとブタジエンを共重合させて調製できる。重合開始剤としては、リチウム系開始剤が好ましい。リチウム系開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム;1,4-ジリチウムブタン等のアルキレンジリチウム;フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジイソプロペニルベンゼンリチウム、ブチルリチウム等のアルキルリチウムとジビニルベンゼン等の反応物等の芳香族炭化水素リチウム;リチウムナフタレン等の多核炭化水素リチウム;アミノリチウム、トリブチルスズリチウム等を挙げることができる。
【0030】
重合の際には、必要に応じて、共重合時のスチレンランダム化剤として、またビニル結合量の調節剤として、エーテル化合物又はアミン等を用いることができる。エーテル化合物又はアミン等としては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン等が挙げられる。また、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、リノレイン酸カリウム、安息香酸カリウム、フタール酸カリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸カリウム等の活性剤も同様の目的で使用できる。
【0031】
重合溶媒としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン等を用いることができる。重合方式は、バッチ重合方式、連続重合方式のいずれでもよいが、前述の各種特性を有するスチレン-ブタジエン共重合体が好適に得られるという観点から、連続重合方式を用いることが好ましい。重合条件として、重合温度は、通常、0~130℃であり、好ましくは10~100℃である。重合時間は、通常、5分~24時間であり、好ましくは10分~10時間である。重合溶媒中の単量体濃度(単量体の合計/(単量体の合計+重合溶媒))は、通常、5~50質量%であり、好ましくは10~35質量%である。
【0032】
なお、一般にリチウム系開始剤を用いた場合、スチレンの重合反応速度とブタジエンの重合反応速度は異なる。また、それぞれの重合反応速度は重合温度や単量体濃度の影響を受ける。そのため、単純な反応を行うと、重合温度が高まる反応後半において、重合温度の影響及びスチレン単量体の濃度が高いことにより、スチレンが多く反応して、スチレン長連鎖が多く発生し、スチレン長連鎖の含有割合が増加してしまう場合がある。そこで、スチレン単連鎖及びスチレン長連鎖の含有割合を適切な値とするための方法として、重合温度を、スチレン及びブタジエンの反応速度が同値となるところで制御する方法や、反応前のブタジエン仕込み量を減らした状態で反応を開始することにより、重合初期のスチレン取り込み量を上げ、次に減らした量のブタジエンを連続的に導入する方法等がある。
【0033】
スチレン-ブタジエン共重合体に分岐構造を導入する具体的な方法として、多官能性カップリング剤によって変性する場合、回分重合法や連続重合法によって得られるリチウム活性末端を有する活性重合体を、四塩化ケイ素等のハロゲン含有ケイ素化合物、第二のアルコキシシラン化合物、アルコキシシランサルファイド化合物、(ポリ)エポキシ化合物、尿素化合物、アミド化合物、イミド化合物、チオカルボニル化合物、ラクタム化合物、エステル化合物、及びケトン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の多官能性カップリング剤と反応させる方法を挙げることができる。これらの中でも、四塩化ケイ素等のハロゲン含有ケイ素化合物、第二のアルコキシシラン化合物、アルコキシシランサルファイド化合物、(ポリ)エポキシ化合物が好ましく、ハロゲン含有ケイ素化合物、第二のアルコキシシラン化合物、(ポリ)エポキシ化合物が更に好ましい。また、少量の分岐剤の存在下で重合する場合、分岐剤の具体例としては、ジビニルベンゼンを挙げることができる。導入量は、スチレン-ブタジエン共重合体100質量%に対し、10質量%以下とすることが好ましい。
【0034】
スチレン-ブタジエン共重合体の油展に用いる伸展油としては、例えば、ナフテン系、パラフィン系、芳香族油展系等が挙げられる。これらの中でも、芳香族油展系が好ましい。また、ナフテン系、又はパラフィン系のゴム用伸展油を併用することもできる。油展の方法としては、例えば、重合終了後、伸展油を加え、従来公知の方法により脱溶媒及び乾燥する方法等が挙げられる。
【0035】
伸展油の使用量は、スチレン-ブタジエン共重合体100質量部に対し、5~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましく、12~30質量部が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。上限以下にすることで、配合の自由度を確保できる傾向がある。
【0036】
SBRとしては、油展スチレン-ブタジエン共重合体以外に、非油展スチレン-ブタジエン共重合体を併用してもよい。
【0037】
ゴム成分100質量%中の非油展スチレン-ブタジエン共重合体の含有量は、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。上限は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
【0038】
非油展スチレン-ブタジエン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、更に好ましくは15万以上であり、また、好ましくは40万未満、より好ましくは35万以下、更に好ましくは30万以下である。上記範囲内であると良好な低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0039】
非油展スチレン-ブタジエン共重合体の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上であり、また、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.5以下である。上記範囲内であると、良好な低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0040】
非油展スチレン-ブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。該スチレン含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上限以下にすることで、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0041】
非油展スチレン-ブタジエン共重合体のビニル結合量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。下限以上にすることで、良好な操縦安定性能が得られる傾向がある。該ビニル結合量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。上限以下にすることで、良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0042】
非油展スチレン-ブタジエン共重合体は、非変性SBR、変性SBRのいずれも使用可能であるが、変性SBRが好ましい。
【0043】
変性非油展スチレン-ブタジエン共重合体(変性SBR(非油展))としては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するものであればよく、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体の少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性スチレン-ブタジエン共重合体(末端に上記官能基を有する末端変性スチレン-ブタジエン共重合体)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性スチレン-ブタジエン共重合体や、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性スチレン-ブタジエン共重合体(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性スチレン-ブタジエン共重合体)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0045】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0046】
BRとしては特に限定されず、高シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由から、BRのシス含量は90質量%以上(好ましくは95質量%以上)であることが好適である。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0047】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能が得られる傾向がある。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。
【0048】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0049】
フィラーとしては、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどのゴム分野で公知のものが挙げられる。なかでも、シリカ、カーボンブラックが好ましい。
【0050】
トレッド用ゴム組成物に用いるシリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0051】
トレッド用ゴム組成物では、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは75質量部以上、より好ましくは80質量部以上である。下限以上にすることで、良好な低燃費性能、耐摩耗性が得られる傾向がある。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
【0052】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは120m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは220m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0053】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0054】
トレッド用ゴム組成物は、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系、メルカプト系シランカップリング剤が好ましい。
【0055】
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤や、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。なかでも、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が好ましい。
【化1】
(式中、R1001は-Cl、-Br、-OR1006、-O(O=)CR1006、-ON=CR10061007、-NR10061007及び-(OSiR10061007(OSiR100610071008)から選択される一価の基(R1006、R1007及びR1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R1002はR1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R1003は-[O(R1009O)]-基(R1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化2】
【化3】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
【0056】
式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0057】
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0058】
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0059】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
【0060】
式(I)、(II)におけるRについて、ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などがあげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基などがあげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基などがあげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基などがあげられる。
【0061】
式(I)、(II)におけるRについて、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基などがあげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基などがあげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基などがあげられる。
【0062】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3~300の範囲が好ましい。
【0063】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
【0064】
トレッド用ゴム組成物に使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられるが、特に限定されない。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。カーボンブラックを配合することにより、補強性が得られ、耐摩耗性等が顕著に改善される。
【0065】
トレッド用ゴム組成物では、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。下限以上にすることで、カーボンブラックを配合した効果が得られる傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
【0066】
トレッド用ゴム組成物では、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは105m/g以上である。下限以上であると、良好な補強性が得られる傾向がある。カーボンブラックのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは180m/g以下、より好ましくは150m/g以下、更に好ましくは130m/g以下である。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0067】
トレッド用ゴム組成物は、オイルを含むことが好ましい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、プロセスオイルが好ましく、アロマ系プロセスオイルが特に好ましい。
【0068】
オイルを含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイル(伸展油)の量も含まれる。
【0069】
トレッド用ゴム組成物は、樹脂を含有していてもよい。
樹脂としては、タイヤ工業で汎用されているものであれば特に限定されず、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、α-メチルスチレン系樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、C5樹脂、C9樹脂等が挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
樹脂を含有する場合、樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
【0071】
トレッド用ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0072】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0073】
ワックスを含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0074】
トレッド用ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
【0075】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0076】
老化防止剤を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0077】
トレッド用ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0078】
ステアリン酸を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0079】
トレッド用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0080】
酸化亜鉛を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0081】
トレッド用ゴム組成物は、硫黄を含有することが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0083】
硫黄を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0084】
トレッド用ゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0085】
加硫促進剤を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0086】
トレッド用ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている他の配合剤(有機架橋剤等)を更に配合してもよい。これらの配合剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0087】
トレッド用ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0088】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0089】
トレッド用ゴム組成物は、タイヤのトレッドに使用する。キャップトレッド及びベーストレッドで構成されるトレッドの場合、キャップトレッドに好適に使用可能である。
【0090】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0091】
なお、上記空気入りタイヤのトレッドは、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0092】
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。また、オールシーズンタイヤ、サマータイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)等に使用できる。
【実施例0093】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0094】
〔製造例1〕
十分に窒素置換された、攪拌機及びジャケットの付いた内容積20Lのオートクレーブ反応容器に、温度を70℃でコントロールしつつ、スチレンを10.5g/分の速度で、1,2-ブタジエンを100ppm含む1,3-ブタジエンを19.5g/分の速度で、シクロヘキサンを150g/分の速度で、テトラヒドロフランを1.5g/分の速度で、n-ブチルリチウムを0.117mmol/分の速度で連続的にチャージした。1基目の反応容器の頂部出口にて、四塩化ケイ素を0.14mmol/分の速度で連続的に添加し、これを1基目の反応容器に連結した2基目の反応容器に導入して変性反応を行った。変性反応終了後の重合体溶液に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、商品名「VIVATEC500」(H&R社製)を37.5phr(ゴム成分100部当たり37.5部)加える事によって油展し、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥し、油展スチレン-ブタジエン共重合体(SBR1)を得た。
SBR1のビニル結合量は39質量%、スチレン含有量は34質量%、Mwは85万、Mw/Mnは2.2であった。
【0095】
〔製造例2〕
<末端変性剤の作製>
十分に窒素置換された、100mLメスフラスコに3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランを23.6g入れ、さらに無水ヘキサンを加え、全量を100mLにして作製した。
<変性SBR(非油展)の作製>
十分に窒素置換した30L耐圧容器にn-ヘキサンを18L、スチレンを540g、ブタジエンを1460g、テトラメチルエチレンジアミンを17mmol加え、40℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10.5mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を3.5mL加え、30分撹拌を行った。次に、上記末端変性剤を30mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6-tert-ブチル-p-クレゾール0.2gを溶かしたメタノール2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性SBR(SBR4)を得た。
SBR4のビニル結合量は60質量%、スチレン含有量は28質量%、Mwは20万、Mw/Mnは1.3であった。
【0096】
〔製造例3〕
スチレンを11.7g/分の速度で、1,2-ブタジエンを100ppm含む1,3-ブタジエンを18.3g/分の速度で、テトラヒドロフランを7.0g/分の速度で、n-ブチルリチウムを0.189mmol/分の速度でそれぞれチャージした以外は、製造例1と同様にして、油展スチレン-ブタジエン共重合体(SBR5)を得た。
SBR5のビニル結合量は40質量%、スチレン含有量は38質量%、Mwは87万、Mw/Mnは2.3であった。
【0097】
〔製造例4〕
窒素置換された内容積5Lのオートクレーブ反応容器に、スチレンを175g、1,2-ブタジエンを150ppm含む1,3-ブタジエンを260g、シクロヘキサンを2500g、テトラヒドロフランを8.75g、及びドデシルベンゼンスルホン酸カリウムを0.068g仕込んだ。反応容器内容物の温度を15℃に調整した後に、n-ブチルリチウムを2.83mmol添加して重合を開始した。重合開始5分後から5g/分の流量で、1,3-ブタジエンを55g連続的に導入した。重合転化率が100%に達した後、四塩化ケイ素3.51mmolを加えて、15分間変性反応を行った。変性反応終了後の重合体溶液に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、商品名「VivaTech500」(R&H社製)を37.5phr加えることによって油展し、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールによりゴムを乾燥し、油展スチレン-ブタジエン共重合体(SBR6)を得た。
SBR6のビニル結合量は42質量%、スチレン含有量は35質量%、Mwは77万、Mw/Mnは1.7であった。
【0098】
実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:製造例1
SBR2:日本ゼオン(株)製のNipolNS522(スチレン含有量39質量%、ビニル結合量40質量%、Mw65万、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SBR3:旭化成(株)製のタフデン3830(スチレン含有量36質量%、ビニル結合量31質量%、Mw42万、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SBR4:製造例2
SBR5:製造例3
SBR6:製造例4
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量98質量%)
シリカ:ウルトラシルVN3(エボニック社製、NSA175m/g)
カーボンブラック:ダイアブラックN220(三菱化学(株)製、NSA114m/g)
シランカップリング剤1:Si69(エボニック社製、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT-Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAH-24(アロマ系プロセスオイル)
ワックス:オゾエース0355(日本精蝋(株)製)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製
酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製)
硫黄:粉末硫黄(鶴見化学(株)製)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’-ジフェニルグアニジン)
【0099】
〔実施例及び比較例〕
各表に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。
【0100】
以下の方法により、作製された試験用タイヤのゴム物性、タイヤ性能を評価した。結果を表1に示す。なお、表1は比較例1-2、表2は比較例2-2が基準比較例である。
【0101】
(引張試験)
試験用タイヤのキャップトレッドから採取したサンプル(トレッド用ゴム組成物)から3号ダンベル型試験片を作製し、JIS K6251:2010に基づいて、25℃において引張試験を実施して200%伸張時応力(M200)を測定した。
【0102】
(粘弾性試験)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度30℃、周波数10Hz、初期歪み10%、及び、動歪み2%の条件下で、試験用タイヤのキャップトレッドから採取したサンプル(トレッド用ゴム組成物)の複素弾性率E(MPa)及び損失正接(tanδ)を測定した。
【0103】
(低燃費性能)
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、基準比較例を100とした時の指数で表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性能に優れることを示す。
【0104】
(操縦安定性能)
各試験用タイヤを車両(2000cc)の全輪に装着させ、一般的な走行条件のテストコースで実車走行を行った。操舵時のコントロールの安定性(操縦安定性)をテストドライバーが官能評価し、基準比較例を100として指数表示をした(操縦安定性指数)。指数が大きいほど、操縦安定性能が優れることを示す。
【0105】
(耐摩耗性能)
各試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、基準比較例を100とした時の指数で表示した(耐摩耗性能指数)。指数が大きいほど、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離が長く、耐摩耗性能に優れることを示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
表1~2から、M200(25℃)、E(30℃)、tanδ(30℃)がM200×E/tanδ≧400を満たすトレッドを有する実施例のタイヤは、低燃費性能、操縦安定性能、耐摩耗性能の総合性能が優れていた。