(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077143
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】可塑剤、組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20220516BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220516BHJP
C08L 29/10 20060101ALI20220516BHJP
C08L 33/26 20060101ALI20220516BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20220516BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220516BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220516BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20220516BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L101/00
C08L29/10
C08L33/26
C08L9/06
C08K3/36
C08K3/04
C08F293/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187834
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲頭 健介
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA03
3D131AA04
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3D131AA07
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3D131BC19
3D131BC51
3D131CC01
4J002AC01X
4J002AC03Y
4J002AC08W
4J002AC11W
4J002BP03Z
4J002DA037
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4J002DE100
4J002DJ016
4J002EF050
4J002EX080
4J002FD016
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4J002GN01
4J026HA06
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4J026HA28
4J026HA39
4J026HB10
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4J026HB22
4J026HB28
4J026HB39
4J026HB45
4J026HE01
(57)【要約】
【課題】タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができ、かつ、タイヤ用組成物を製造可能である可塑剤、組成物及びタイヤを提供する。
【解決手段】本発明は、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有し、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃である、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有し、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃である、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤。
【請求項2】
オイル、エステル系可塑剤、液状又は固体樹脂のいずれかである請求項1記載の可塑剤。
【請求項3】
前記基が、下記式(I)で表される基又は下記式(II)で表される基である請求項1又は2に記載の可塑剤。
【化1】
(式中、nは1~1000の整数を表し、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【化2】
(式中、nは1~1000の整数を表し、R
4は、n-ブチル基又はtert-ブチル基を表し、R
5は、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【請求項4】
前記基が、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)である請求項1~3のいずれかに記載の可塑剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の可塑剤を含む組成物。
【請求項6】
ゴムを含む請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ゴムとして、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含む多元共重合体を含む請求項6記載の組成物。
【請求項8】
シリカを含み、ゴム成分100質量部に対するシリカの配合量(質量部)/シリカの平均一次粒子径(nm)が、1~1000である請求項6又は7記載の組成物。
【請求項9】
カーボンブラックを含み、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの配合量(質量部)/カーボンブラックの平均一次粒子径(nm)が、1~1000である請求項6~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
タイヤトレッド用である請求項5~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
請求項5~10のいずれかに記載の組成物を用いたタイヤ部材を有するタイヤ。
【請求項12】
前記タイヤ部材が、トレッドである請求項11記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤、組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からタイヤには、種々の性能が求められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤ業界では、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させる点についてこれまで着目されておらず、従来の技術では、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させるという点では改善の余地がある。
本発明は、前記課題を解決し、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができ、かつ、タイヤ用組成物を製造可能である可塑剤、組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有し、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃である、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤に関する。
【0006】
上記可塑剤は、オイル、エステル系可塑剤、液状又は固体樹脂のいずれかであることが好ましい。
【0007】
上記基が、下記式(I)で表される基又は下記式(II)で表される基であることが好ましい。
【化1】
(式中、nは1~1000の整数を表し、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【化2】
(式中、nは1~1000の整数を表し、R
4は、n-ブチル基又はtert-ブチル基を表し、R
5は、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【0008】
上記基が、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、上記可塑剤を含む組成物に関する。
【0010】
上記組成物は、ゴムを含むことが好ましい。
【0011】
上記組成物は、ゴムとして、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含む多元共重合体を含むことが好ましい。
【0012】
上記組成物は、シリカを含み、ゴム成分100質量部に対するシリカの配合量(質量部)/シリカの平均一次粒子径(nm)が、1~1000であることが好ましい。
【0013】
上記組成物は、カーボンブラックを含み、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの配合量(質量部)/カーボンブラックの平均一次粒子径(nm)が、1~1000であることが好ましい。
【0014】
上記組成物は、タイヤトレッド用であることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記組成物を用いたタイヤ部材を有するタイヤに関する。
【0016】
上記タイヤ部材が、トレッドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有し、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃である、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤であるので、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができ、かつ、タイヤ用組成物を製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(可塑剤)
本発明の可塑剤は、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有し、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃である、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤である。これにより、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができ、かつ、タイヤ用組成物を製造可能である。
【0019】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
本発明の可塑剤は、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有するため、温度変化により親水性が変化することで、組成物中の他の成分との相溶性が変化し、温度変化に応答してタイヤ性能が変化するものと推測される。
更に、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃であるため、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができる。具体的には、前記基の下限臨界溶液温度よりも高温では、疎水性の可塑剤として機能し、前記基の下限臨界溶液温度よりも低温では、親水性の可塑剤として機能することにより、上記温度範囲を境として、タイヤ性能を変化させることができ、タイヤに必要な温度領域(例えば、-40~40℃)においてタイヤ性能を変化させることができる。
また、下限臨界溶液温度が上記範囲内であるため、タイヤ用組成物の骨格成分である樹脂及び/又はエラストマーへの影響も最小限に抑えることができ、タイヤ用組成物を製造可能である。
本発明の可塑剤は、例えば、低燃費性、ウェットグリップ性能の総合性能を改善できる。
【0020】
本明細書において、可塑剤とは、樹脂及び/又はエラストマーに可塑性を付与する材料であり、液体可塑剤(25℃で液体(液状)の可塑剤)及び固体可塑剤(25℃で固体の可塑剤)を含む概念である。具体的には、組成物からアセトンを用いて抽出されるような成分である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本明細書において、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基とは、温度の変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基であればよく、温度の変化によって不凍液に対する相互作用が可逆的に変化する基であることが好ましい。より具体的には、温度の変化によって親水性が変化する基であればよく、温度の変化によって親水性が可逆的に変化する基であることが好ましい。更に具体的には、温度の変化によって、比較的低温(好ましくは後述する温度応答性高分子の相転移温度の好ましい温度範囲内)下で親水性が変化する基であればよく、温度の変化によって、比較的低温(好ましくは後述する温度応答性高分子の相転移温度の好ましい温度範囲内)下で親水性が可逆的に変化する基であることが好ましい。
【0022】
温度の変化によって不凍液に対する相互作用(親水性)が可逆的に変化する基としては、温度応答性高分子(温度応答性高分子基)が挙げられる。すなわち、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有する可塑剤とは、例えば、温度応答性高分子により形成された基を有する可塑剤を意味する。上記可塑剤としては、例えば、温度応答性高分子がグラフトされた可塑剤、主鎖中に温度応答性高分子単位を有する可塑剤、主鎖中に温度応答性高分子ブロックを有する可塑剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
温度応答性高分子は、水中で温度変化に応じて、水和と脱水和に伴うポリマー鎖のコンフォメーション変化を可逆的に生起し、温度の変化によって親水性、疎水性が可逆的に変化する材料である。この可逆変化は、一つの分子内に水素結合が可能な親水性基と、水とはなじみにくい疎水性基を有する分子構造に起因するものであることが知られている。
そして、本発明者は、温度応答性高分子は、水中だけではなく、不凍液中(すなわち、低温下)や、樹脂及び/又はエラストマーを含む組成物中であっても、温度の変化によって親水性、疎水性が可逆的に変化することを見出した。
【0024】
温度応答性高分子としては、水中で下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature;LCST、下限臨界共溶温度、下限臨界溶解温度とも言う)を示す高分子と、水中で上限臨界溶液温度(Upper Critical Solution Temperature;UCST、上限臨界共溶温度、上限臨界溶解温度とも言う)を示す高分子が知られている。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記温度応答性高分子は、不凍液中においても水中と同様の温度で、親水性、疎水性が可逆的に変化する。例えば、水中でLCSTが約32℃であるPNIPAMは、不凍液中においてもLCSTが約32℃である。
【0025】
LCSTを示す高分子は、LCSTを境にそれより高い温度ではその分子内、又は分子間の疎水結合が強まりポリマー鎖が凝集し、疎水性となる。一方、LCSTよりも低い温度では、ポリマー鎖が水分子を結合し水和し、親水性となる。このように、LCSTを境に可逆的な相転移挙動を示す。
逆にUCSTを示す高分子は、UCSTよりも低温で疎水性となって不溶となる一方、UCSTよりも高温で親水性となり溶解する。このように、UCSTを境に可逆的な相転移挙動を示す。これは、複数個のアミド基を側鎖に有しており、側鎖間の水素結合を駆動力として分子間力が働き、UCST型挙動を示すと考えられている。
【0026】
温度の変化によって不凍液に対する相互作用が可逆的に変化する基が、LCSTを示す高分子である場合、温度変化により、組成物中の他の成分と非相溶となることでガラス転移温度が変化し、温度変化に応答してタイヤ性能(例えば、ウェットグリップ性能、アイスグリップ性能)を変化させることができる。
上記可塑剤では、温度の変化によって不凍液に対する相互作用が可逆的に変化する基が、LCSTを示す高分子であることが好ましい。すなわち、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基が、不凍液中で下限臨界溶液温度を示す基であることが好ましい。
ここで、本明細書において、不凍液中で下限臨界溶液温度(LCST)を示す基とは、可塑剤が有する基を可塑剤から切断し、切断した基(高分子)を不凍液中に投入した場合に、不凍液中で下限臨界溶液温度を示す基を意味する。
同様に、本明細書において、不凍液中で上限臨界溶液温度(UCST)を示す基とは、可塑剤が有する基を可塑剤から切断し、切断した基(高分子)を不凍液中に投入した場合に、不凍液中で上限臨界溶液温度を示す基を意味する。
【0027】
本明細書において、不凍液とは、メタノールと水からなる液体であって、水に対して体積基準で9倍量のメタノールを添加し、25℃で30分間混合することにより得られる液体である。
【0028】
以下において、LCSTを示す基(高分子)について説明する。
LCSTを示す基(高分子)は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
LCSTを示す基(高分子)としては、LCSTを示す基(高分子)であれば特に限定されないが、ポリ(アルキルビニルエーテル)が好ましく、下記式(I)で表される基がより好ましい。また、下記式(II)で表される基も好ましい。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化3】
(式中、nは1~1000の整数を表し、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【0029】
nは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは20以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは150以下、特に好ましくは80以下、最も好ましくは40以下、より最も好ましくは30以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0030】
R1のヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは6以下、より最も好ましくは4以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0031】
R2及びR3のヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、特に好ましくは1である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0032】
R1、R2及びR3のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;メチルフェニル基、エチルフェニル基等のアリール基等があげられる。なかでも、アルキル基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0033】
R1がアルキル基、R2及びR3が、水素原子であることが好ましく、R1がエチル基、R2及びR3が、水素原子であることがより好ましい。
【0034】
上記式(I)で表される基としては、例えば、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(プロピルビニルエーテル)、ポリ(ブチルビニルエーテル)、ポリ(ペンテニルエーテル)、ポリ(ヘキシルビニルエーテル)、ポリ(ヘプチルビニルエーテル)、ポリ(オクチルエーテル)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ポリ(エチルビニルエーテル)(PEVE)が好ましい。本発明者が鋭意検討を行った結果、PEVEは-10℃~+10℃においてLCSTを示すことがわかった。すなわち、PEVE基を有する可塑剤は、PEVE基が-10℃~+10℃において親水性/疎水性の表面物性が大きく変化するため、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤として使用することにより、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができ、かつ、タイヤ用組成物を製造可能である。
【0035】
次に、下記式(II)で表される基について説明する。
【化4】
(式中、nは1~1000の整数を表し、R
4は、n-ブチル基又はtert-ブチル基を表し、R
5は、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【0036】
nは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは20以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは150以下、特に好ましくは80以下、最も好ましくは40以下、より最も好ましくは30以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0037】
R4は、n-ブチル基又はtert-ブチル基であるが、tert-ブチル基が好ましい。
【0038】
R5のヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、特に好ましくは1である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0039】
R5のヒドロカルビル基としては、R1、R2及びR3のヒドロカルビル基と同様の基があげられる。なかでも、アルキル基が好ましい。
【0040】
R5のヒドロカルビル基は、分岐であっても非分岐であってもよい。
【0041】
R5としては、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0042】
R4がn-ブチル基又はtert-ブチル基、R5が水素原子であることが好ましく、R4がtert-ブチル基、R5が水素原子であることがより好ましい。
【0043】
上記式(II)で表される基としては、例えば、ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-n-ブチルメタクリルアミド)、ポリ(N-tert-ブチルメタクリルアミド)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)が好ましい。本発明者が鋭意検討を行った結果、ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)、ポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)は-10℃~+10℃においてLCSTを示すことがわかった。すなわち、ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)基又はポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)基を有する可塑剤は、当該基が-10℃~+10℃において親水性/疎水性の表面物性が大きく変化するため、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤として使用することにより、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができ、かつ、タイヤ用組成物を製造可能である。
【0044】
上記以外のLCSTを示す基としては、例えば、N-イソプロピルアクリルアミドとブチルアクリレートとの共重合体、N-イソプロピルアクリルアミドとポリエチレンオキサイドとのブロック共重合体、N-イソプロピルアクリルアミドとフッ素モノマーとの共重合体、アクリル酸2メトキシエチルとN,N-ジメチルアクリルアミドとの共重合体、ビオチン固定化温度応答性磁性微粒子(N-アクリロイルグリシンアミド、メタクリル化磁性微粒子及びビオチンモノマーを反応させることにより得られる微粒子)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体のモノアミン化物、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイドブロック共重合体、マルトペンタオース修飾ポリプロピレンオキサイド、アクリル酸2メトキシエチルとアクリロイルモルホリンとの共重合体、アクリル酸2メトキシエチルとN-ビニルピロリドンとの共重合体、アクリル酸2メトキシエチルと2-ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体、アクリル酸2メトキシエチルとメトキシトリエチレングリコールアクリレートとの共重合体、ポリ[2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート]、ポリ(2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート-コ-2-(メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、N-ビニルカプロラクタムとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体、メチルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体、ポリ(1-n-プロピル-3-ビニル-2-イミダゾリドン)、ポリ(N-ビニル-2-イミダゾリドン化合物)、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルと酢酸ビニルとの共重合体、ジエチレングリコールモノビニルエーテルと酢酸ビニルとの共重合体、磁性ナノ粒子、アミノ基を有するポリスチレン、グリコルリル重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
なお、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基、温度応答性高分子基、LCSTを示す基(高分子)、ポリ(アルキルビニルエーテル)、上記式(I)で表される基としては、以下の化合物(基)が除かれることが好ましい。
ポリビニルメチルエーテル(ポリ(メチルビニルエーテル))
【0046】
また、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有する、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤としては、以下の可塑剤が除かれることが好ましい。
(1)窒素置換したガラス製フラスコにN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAMモノマー)11.32gを添加し、トルエン25mLを添加し室温にて30分撹拌し、均一の溶液とした後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)1.10gを添加した後、3時間還流をして反応させ、反応液を40℃まで冷却した後、スチレンアクリル樹脂(PS、東亞合成(株)製のARUFON UH-2170(軟化点:80℃))11.32gとトルエン25mLを添加し、3時間還流させて反応させた後、反応液をロータリーエバポレーターによってトルエン溶媒を留去した後、残った乾固物を減圧度0.1Pa以下、80℃で8時間減圧乾燥をして得られた可塑剤(PNIPAM-PS樹脂)
(2)窒素置換したガラス製フラスコにN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAMモノマー)11.32gを添加し、トルエン25mLを添加し室温にて30分撹拌し、均一の溶液とした後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)1.10gを添加した後、3時間還流をして反応させ、反応液を40℃まで冷却した後、マレイン酸変性液状ポリブタジエン(クレイバレイ社製のRicon 130MA8(マレイン酸変性液状BR、Mw:2700))11.32gとトルエン25mLを添加し、3時間還流させて反応させた後、反応液をロータリーエバポレーターによってトルエン溶媒を留去した後、残った乾固物を減圧度0.1Pa以下、80℃で8時間減圧乾燥をして得られた可塑剤(PNIPAM-BR)
【0047】
また、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基、温度応答性高分子基、LCSTを示す基(高分子)としては、以下の化合物(基)が除かれることが好ましい。
下記式(A)で表される基
【化5】
(式中、nは1~1000の整数を表し、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表し、R
1及びR
2の少なくとも1つが水素原子ではなく、R
1とR
2とで環構造を形成してもよい。)
下記式(II)で表されるポリ(N-ビニル-カプロラクタム)
下記式(III)で表されるポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)
アルキル置換セルロース
ポリ(N-エトキシエチルアクリルアミド)
ポリ(N-エトキシエチルメタクリルアミド)
ポリ(N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド)
ポリ(N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド)
ポリビニルメチルエーテル
ポリ[2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]
ポリ(3-エチル-N-ビニル-2-ピロリドン)
ヒドロキシルブチルキトサン
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート
2~6個のエチレングリコール単位を有するポリ(エチレングリコール)メタクリレート
ポリエチレングリコール-co-ポリプロピレングリコール
エトキシル化イソ-C
13H
27-アルコール
4~50個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール
4~30個のプロピレングリコール単位を有するポリプロピレングリコール
4~50個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールのモノメチル、ジメチル、モノエチル、およびジエチルエーテル
4~50個のプロピレングリコール単位を有するポリプロピレングリコールのモノメチル、ジメチル、モノエチル、およびジエチルエーテル。
【化6】
(式(II)~(III)中、nは上記式(A)のnと同様である。式(III)中、Rは、n-プロピル基、イソプロピル基又はエチル基から選択されるアルキル基である。)
【0048】
また、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基、温度応答性高分子基、LCSTを示す基(高分子)としては、以下の化合物(基)が除かれることが好ましい。
ポリ(N-置換(メタ)アクリルアミド)
下記式(II)で表されるポリ(N-ビニル-カプロラクタム)
下記式(III)で表されるポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)
アルキル置換セルロース
ポリ(N-エトキシエチルアクリルアミド)
ポリ(N-エトキシエチルメタクリルアミド)
ポリ(N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド)
ポリ(N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド)
ポリビニルメチルエーテル
ポリ[2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]
ポリ(3-エチル-N-ビニル-2-ピロリドン)
ヒドロキシルブチルキトサン
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート
2~6個のエチレングリコール単位を有するポリ(エチレングリコール)メタクリレート
ポリエチレングリコール-co-ポリプロピレングリコール
エトキシル化イソ-C
13H
27-アルコール
4~50個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール
4~30個のプロピレングリコール単位を有するポリプロピレングリコール
4~50個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールのモノメチル、ジメチル、モノエチル、およびジエチルエーテル
4~50個のプロピレングリコール単位を有するポリプロピレングリコールのモノメチル、ジメチル、モノエチル、およびジエチルエーテル。
【化7】
(式(II)~(III)中、nは上記式(A)のnと同様である。式(III)中、Rは、n-プロピル基、イソプロピル基又はエチル基から選択されるアルキル基である。)
【0049】
温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基(温度応答性高分子により形成された基)の重量平均分子量は、好ましくは50以上、より好ましくは560以上、更に好ましくは1130以上であり、好ましくは57000以下、より好ましくは34000以下、更に好ましくは17000以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0050】
温度応答性高分子の相転移温度(下限臨界溶液温度(LCST)又は上限臨界溶液温度(UCST)、特にLCST)は、-20℃以上であり、20℃以下、好ましくは10℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
本明細書において、温度応答性高分子の相転移温度の測定は、90v/v%メタノール水溶液(不凍液)を用いて、1質量%高分子/不凍液の溶液を調製し、所定の温度の冷凍庫(例えば、-20℃)又は冷蔵庫(例えば、+5℃)に1時間以上保管し、各温度での濁りを確認することで容易に判断できる。
ここで、温度応答性高分子は、可塑剤が有する温度応答性高分子基を可塑剤から切断した切断後の温度応答性高分子基(温度応答性高分子)を意味する。
また、90v/v%メタノール水溶液は、メタノールと水からなる液体であって、水に対して体積基準で9倍量のメタノールを添加し、25℃で30分間混合することにより得られる液体である。
【0051】
上記可塑剤100質量%中の温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基(温度応答性高分子により形成された基)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上、最も好ましくは20質量%以上、より最も好ましくは30質量%以上、更に最も好ましくは40質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
上記の通り、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有する可塑剤とは、例えば、温度応答性高分子により形成された基を有する可塑剤、すなわち、温度応答性高分子により形成された基が結合した可塑剤を意味する。
具体的には、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有する可塑剤とは、オイル、エステル系可塑剤、液状または固体樹脂のいずれか(以下では、まとめてオイル等とも言う)であって、温度応答性高分子により形成された基を有するものである。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
従来から使用されてきたオイル等は、通常、温度応答性高分子により形成された基を有さない。
そこで、上記可塑剤として、市販品があれば市販品を使用してもよいが、公知の合成技術を使用して上記可塑剤を製造すればよい。例えば、特開2005-314419号公報、特表2016-505679号公報、特表2015-531672号公報、特開2003-252936号公報、特開2004-307523号公報等を参考にして上記可塑剤を製造すればよい。
【0054】
上記可塑剤の製造方法としては、例えば、公知の方法に従って、温度応答性高分子単位を形成可能なモノマー成分を使用して可塑剤を合成すればよい。例えば、可塑剤をカチオン重合によって重合した後、温度応答性高分子であるPEVEを構成するモノマーであるエチルビニルエーテル(EVE)を添加すれば、分子量の増加によって可塑剤構造に温度応答性高分子であるPEVEが付加したことが確認できる。
【0055】
上記可塑剤の他の製造方法としては、例えば、公知の方法に従って、PEVEをラジカル重合し、ラジカル付加可能な可塑剤成分と反応させることにより、PEVEが付加した可塑剤が合成できる。すなわち、温度応答性高分子単位を形成可能なモノマー成分を使用して可塑剤を合成すればよい。これにより、主鎖中に温度応答性高分子単位を有する可塑剤が製造できる。
例えば、主鎖中にPEVE単位を有する可塑剤を製造するためには、PEVEを構成するモノマーであるエチルビニルエーテルをモノマー成分として、AIBN等のラジカル発生剤とともに撹拌し、ラジカル重合し、ラジカルと反応することが可能な二重結合又はカルボン酸基を有する液状樹脂又は固体樹脂とラジカル付加反応を行うことで、主鎖中にPEVE単位を有する樹脂を製造できる。
また、重合方法を適宜調整することにより、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーを製造できるが、該技術を使用して、主鎖中に温度応答性高分子ブロックを有する可塑剤も製造できる。
【0056】
温度応答性高分子の末端について説明する。
温度応答性高分子が付加された可塑剤の場合、温度応答性高分子の一方の末端は、主鎖又は主鎖への結合手であり、もう一方の末端は、通常は水素原子であるが、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の重合開始剤が結合していることもある。
主鎖中に温度応答性高分子単位を有する可塑剤や主鎖中に温度応答性高分子ブロックを有する可塑剤の場合、温度応答性高分子の末端は、他の構成単位又は他の構成単位への結合手であり、温度応答性高分子単位(温度応答性高分子ブロック)が分子末端に存在する場合は、一方の末端は、通常は水素原子であるが、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の重合開始剤が結合していることもある。
【0057】
以下において、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基(温度応答性高分子により形成された基)が導入される、オイル、エステル系可塑剤、液状樹脂、固体樹脂(まとめてオイル等とも言う)について説明する。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記基が導入されるオイル等は、特に限定されず、可塑性を有するものであればよく、例えば、タイヤ配合物として、一般的に用いられるものを使用できる。上記基が導入されるオイル等としては、オイル、液状樹脂、固体樹脂が好ましく、液状樹脂、固体樹脂がより好ましく、固体樹脂が更に好ましい。
【0058】
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好ましい。上記アロマ系プロセスオイルとしては、具体的には、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAHシリーズ等が挙げられる。
【0059】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0060】
エステル系可塑剤としては、前記植物油;グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル、グリセリン脂肪酸トリエステル等の合成品や植物油の加工品;リン酸エステル(ホスフェート系、これらの混合物等);が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
エステル系可塑剤として、例えば、下記式で示される脂肪酸エステルを好適に使用できる。
【化8】
(式中、R
11は、炭素数1~8の直鎖若しくは分枝状アルキル基、炭素数1~8の直鎖若しくは分枝状アルケニル基、又は1~5個のヒドロキシル基で置換された炭素数2~6の直鎖又は分枝状アルキル基を表す。R
12は、炭素数11~21のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0062】
R11としては、メチル基、エチル基、2-エチルヘキシル基、イソプロピル基、オクチル基、これらの基が1~5個のヒドロキシル基で置換された基、等が挙げられる。R12としては、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等の直鎖又は分岐状アルキル基、アルケニル基が挙げられる。
【0063】
脂肪酸エステルとしては、オレイン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、リノール酸アルキル、パルミチン酸アルキル等が挙げられる。なかでも、オレイン酸アルキル(オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸オクチル等)が好ましい。この場合、脂肪酸エステル100質量%中のオレイン酸アルキルの含有量は、80質量%以上が好ましい。
【0064】
脂肪酸エステルとしては、脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、パルミチン酸等)と、アルコール(エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトール、イノシトール等)との脂肪酸モノエステル及び脂肪酸ジエステル等も挙げられる。なかでも、オレイン酸モノエステルが好ましい。この場合、脂肪酸モノエステル及び脂肪酸ジエステルの合計量100質量%中のオレイン酸モノエステルの含有量は、80質量%以上が好ましい。
【0065】
エステル系可塑剤として、リン酸エステルも好適に使用できる。
リン酸エステルは、炭素数が12~30の化合物であることが好ましく、なかでも、炭素数12~30のリン酸トリアルキルが好適である。なお、リン酸トリアルキルの炭素原子数は、3つのアルキル基の炭素原子の総数を意味し、当該3つのアルキル基は、同一の基でも、異なる基でもよい。アルキル基は、例えば、直鎖又は分岐状アルキル基が挙げられ、酸素原子などのヘテロ原子を含むものでも、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子で置換されたものでもよい。
【0066】
リン酸エステルとしては、リン酸と、炭素数1~12のモノアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのモノ、ジ又はトリエステル;前記リン酸トリアルキルのアルキル基の1又は2個がフェニル基に置換された化合物;等、公知のリン酸エステル系可塑剤も挙げられる。具体的には、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2-ブトキシエチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0067】
固体樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂(ロジン系樹脂を含む)、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、オレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)等の25℃で固体のレジンが挙げられる。上記樹脂は、水素添加されたものであってもよい。これらは、1種でも2種以上の混合物でもよく、また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。なかでも、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂が好ましく、スチレン系樹脂がより好ましい。
【0068】
固体樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0069】
固体樹脂の軟化点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは140℃以下、特に好ましくは120℃以下である。上記範囲内にすることで、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、レジン(樹脂)の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0070】
上記テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。なかでも、ポリテルペンが好ましい。
【0071】
上記テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
上記テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンが好ましく、β-ピネンがより好ましい。すなわち、ポリテルペンとしては、ポリα-ピネン、ポリβ-ピネンが好ましく、ポリβ-ピネンがより好ましい。
【0072】
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0073】
上記スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。なかでも、スチレン系単量体を単独で重合した単独重合体が好ましい。
【0074】
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0075】
上記スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体を単独で重合した単独重合体が好ましく、スチレン単独重合体、o-メチルスチレン単独重合体、m-メチルスチレン単独重合体、p-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレン単独重合体がより好ましく、スチレン単独重合体、α-メチルスチレン単独重合体が更に好ましい。
また、上記スチレン系樹脂としては、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)も好ましい。
【0076】
液状樹脂としては、前記固体樹脂と類似構造で軟化点が低い樹脂を用いることができ、例えば、25℃で液状のテルペン系樹脂(ロジン系樹脂を含む)、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、オレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)等の25℃で液状のレジンが挙げられる。上記樹脂は、水素添加されたものであってもよい。これらは、1種でも2種以上の混合物でもよく、また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。なかでも、スチレン系樹脂が好ましい。スチレン系樹脂としては、上述の固体樹脂で説明したスチレン系樹脂と同様の態様が好ましい。すなわち、上述の固体樹脂で説明したスチレン系樹脂と分子量が異なる点以外は同様の態様が好ましい。
【0077】
更に別の液状樹脂としては、例えば、液状(25℃において液状を意味する、以下同様)のファルネセン単独重合体、液状ファルネセン-スチレン共重合体、液状ファルネセン-ブタジエン共重合体、液状ファルネセン-スチレン-ブタジエン共重合体、液状ファルネセン-イソプレン共重合体、液状ファルネセン-スチレン-イソプレン共重合体等の液状ファルネセン系ポリマー;液状ミルセン単独重合体、液状ミルセン-スチレン共重合体、液状ミルセン-ブタジエン共重合体、液状ミルセン-スチレン-ブタジエン共重合体、液状ミルセン-イソプレン共重合体、液状ミルセン-スチレン-イソプレン共重合体等の液状ミルセン系ポリマー;液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等の液状ジエン系ポリマー;ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂をハードセグメント(硬質相)とし、ゴム成分をソフトセグメント(軟質相)とする液状オレフィン系ポリマー;ハードセグメントとしてポリエステルと、ソフトセグメントとしてポリエーテルまたはポリエステルなどを含む液状エステル系ポリマー;等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、液状BRが好ましい。
【0078】
上記液状樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10万未満、より好ましくは8万以下、更に好ましくは5万以下であり、好ましくは0.05万以上、より好ましくは0.2万以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0079】
上記液状樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0080】
温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有する可塑剤としては、不凍液中で下限臨界溶液温度を示す基を有する可塑剤であることが好ましく、ポリ(アルキルビニルエーテル)を有する可塑剤であることがより好ましく、上記式(I)で表される基を有する可塑剤であることが更に好ましく、ポリ(エチルビニルエーテル)を有する可塑剤であることが特に好ましい。
更に、上記可塑剤としては、上記基が、固体樹脂に導入されていることが好ましい。また、上記可塑剤としては、上記基が、スチレン系樹脂に導入されていることがより好ましく、スチレン単独重合体又はα-メチルスチレン単独重合体に導入されていることが更に好ましい。
【0081】
温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有する可塑剤は、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤である。
【0082】
上記可塑剤を適用することが可能な樹脂としては、特に限定されず、上記樹脂に加えて、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリーレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、液晶樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリパラバン酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルエステル樹脂、ポリフタル酸ジアリル樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、マレイン樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂;等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
上記可塑剤を適用することが可能なエラストマーとしては、特に限定されず、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等、タイヤ用組成物のゴム成分として一般的に使用されるジエン系ゴム;ブチルアクリレートゴム、エチルアクリレートゴム、オクチルアクリレートゴムなどのアクリルゴム、ニトリルゴム、イソブチレンゴム、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートブロック共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム(ミラブル型、室温加硫型)、ブチルゴム、フッ素ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記可塑剤を適用することが可能な樹脂、エラストマーのなかでも、ゴムが好ましく、ジエン系ゴムがより好ましく、イソプレン系ゴム、BR、SBRが更に好ましい。
【0085】
(組成物)
次に、上記可塑剤(温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有する可塑剤)を含む組成物について説明する。
なお、組成物中に含まれる上記可塑剤は、例えば、以下の方法により同定可能である。
ソックスレー抽出装置によって、組成物100mgをテトラヒドロフラン溶媒によって室温で24時間連続抽出し、抽出残渣をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)または液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)によって分子量に基づいて分取し、NMRで分析することで化合物を特定することができる。
上記組成物において、上記可塑剤の含有量は、ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上、最も好ましくは10質量部以上、より最も好ましくは20質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは60質量部以下、最も好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0086】
上記可塑剤と共に、上記可塑剤以外の可塑剤を使用してもよい。上記可塑剤以外の可塑剤としては、上述の上記基が導入されるオイル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
可塑剤の合計含有量(上記可塑剤及び上記可塑剤以外の可塑剤の合計含有量)は、上記可塑剤の含有量と同様である。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれる可塑剤の量も含まれる。
【0087】
上記組成物において、使用できるポリマー成分としては、上述の上記可塑剤を適用することが可能な樹脂、エラストマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムが好ましく、ジエン系ゴムがより好ましく、イソプレン系ゴム、BR、SBRが更に好ましい。
【0088】
ここで、ポリマー成分(好ましくはゴム成分)は、重量平均分子量(Mw)が20万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のポリマー(ゴム)である。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
なお、本明細書において、Mw、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0089】
ポリマー成分100質量%(好ましくはゴム成分100質量%)中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0090】
ポリマー成分は、非変性ポリマーでもよいし、変性ポリマーでもよい。
変性ポリマーとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するポリマー(好ましくはジエン系ゴム)であればよく、例えば、ポリマーの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ポリマー(末端に上記官能基を有する末端変性ポリマー)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ポリマーや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ポリマー(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ポリマー)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ポリマー等が挙げられる。
【0091】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0092】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは25質量%以上である。また、該スチレン量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン量は、1H-NMR測定により算出される。
【0094】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0095】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性ポリマーと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。なかでも、変性SBRが好ましい。
【0096】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性能が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法により測定できる。
【0097】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ポリマーと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0098】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0099】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0100】
ポリマー成分100質量%(好ましくはゴム成分100質量%)中のSBRの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、100質量%でもよいが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0101】
ポリマー成分100質量%(好ましくはゴム成分100質量%)中のBRの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、100質量%でもよいが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0102】
ポリマー成分100質量%(好ましくはゴム成分100質量%)中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、特に好ましくは4質量%以上、最も好ましくは10質量%以上であり、100質量%でもよいが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0103】
また、ゴム成分として、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含む多元共重合体を含むことが好ましい。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0104】
上記多元共重合体において、共役ジエン単位は、共役ジエン化合物由来の構成単位であり、該共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
【0105】
上記多元共重合体において、非共役オレフィン単位は、非共役オレフィン由来の構成単位であり、該非共役オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、エチレン、プロピレン、1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0106】
上記多元共重合体において、芳香族ビニル単位は、芳香族ビニル化合物由来の構成単位であり、該芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、スチレン、α-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0107】
上記多元共重合体は、例えば、共役ジエン化合物、非共役オレフィン及び芳香族ビニル化合物を共重合する方法や、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物、又は、共役ジエン化合物、非共役オレフィン及び芳香族ビニル化合物を共重合した後、水素添加により、共役ジエン単位の一部を非共役オレフィン単位に変換する方法によって調製できる。すなわち、上記多元共重合体は、共役ジエン化合物、非共役オレフィン及び芳香族ビニル化合物の共重合体であってもよいし、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体、又は、共役ジエン化合物、非共役オレフィン及び芳香族ビニル化合物の共重合体の水素添加物(水添共重合体)であってもよい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体の水素添加物が好ましく、水添スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)がより好ましい。
【0108】
上記多元共重合体を調製するにあたり、重合方法は特に限定されず、ランダム重合でもブロック重合でもよいが、ランダム重合が好ましい。
【0109】
上記多元共重合体が水添共重合体である場合、水素添加の方法、反応条件については特に限定はなく、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。その他の製造に関する方法、条件も特に限定されず、例えば、上述の国際公開第2016/039005号に記載の内容を適用できる。
【0110】
上記多元共重合体が水添共重合体である場合、水素添加率は、水素添加前の共役ジエン単位全体を100モル%として、好ましくは65モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であり、また、好ましくは95モル%以下、より好ましくは94.5モル%以下、更に好ましくは94モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、水素添加率は、1H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0111】
上記多元共重合体において、共役ジエン単位の含有量は、構成単位全体を100モル%として、好ましくは1.9モル%以上、より好ましくは2.4モル%以上、更に好ましくは2.9モル%以上であり、また、好ましくは23.7モル%以下、より好ましくは16.9モル%以下、更に好ましくは10.7モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0112】
上記多元共重合体において、非共役オレフィン単位の含有量は、構成単位全体を100モル%として、65モル%を超えることが好ましく、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であり、また、95モル%未満であることが好ましく、より好ましくは94.5モル%以下、更に好ましくは94モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0113】
上記多元共重合体において、芳香族ビニル単位の含有量は、構成単位全体を100モル%として、好ましくは4モル%以上、より好ましくは8モル%以上であり、また、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは35モル%以下、特に好ましくは25モル%以下、最も好ましくは20モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0114】
上記多元共重合体の各構成単位の含有量は、NMRにより測定される値である。
【0115】
上記多元共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上、特に好ましくは40万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下、特に好ましくは60万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0116】
ゴム成分100質量%中の上記多元共重合体の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、100質量%でもよいが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0117】
上記組成物は、充填剤(補強性充填剤)として、シリカを含有することが好ましい。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0118】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0119】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは150m2/g以上である。また、該N2SAは好ましくは300m2/g以下、より好ましくは250m2/g以下、更に好ましくは200m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
【0120】
ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対するシリカの含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは50質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下、更に好ましくは150質量部以下、特に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0121】
ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対するシリカの配合量(質量部)/シリカの平均一次粒子径(nm)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは1以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下、特に好ましくは100以下、最も好ましくは10以下、最も好ましくは5以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、シリカの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0122】
上記組成物は、シリカを配合する場合、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0123】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0124】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0125】
上記組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。
【0126】
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは5m2/g以上、より好ましくは30m2/g以上、更に好ましくは60m2/g以上、特に好ましくは90m2/g以上、最も好ましくは120m2/g以上である。また、上記N2SAは、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下、更に好ましくは170m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0128】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは5ml/100g以上、より好ましくは70ml/100g以上、更に好ましくは90ml/100g以上である。また、該DBPは、好ましくは300ml/100g以下、より好ましくは200ml/100g以下、更に好ましくは160ml/100g以下、特に好ましくは130ml/100g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS-K6217-4:2001に準拠して測定できる。
【0129】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0130】
ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対するカーボンブラックの含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0131】
ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対するカーボンブラックの配合量(質量部)/カーボンブラックの平均一次粒子径(nm)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは1以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは1000以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは2以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたカーボンブラックの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0132】
上記組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0133】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0134】
硫黄の含有量は、ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0135】
上記組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
【0137】
加硫促進剤の含有量は、ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0138】
上記組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0139】
ステアリン酸の含有量は、ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0140】
上記組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0141】
酸化亜鉛の含有量は、ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0142】
上記組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、p-フェニレンジアミン系老化防止剤がより好ましい。
【0143】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0144】
老化防止剤の含有量は、ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0145】
上記組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0146】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0147】
ワックスの含有量は、ポリマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0148】
上記組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物)、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタン等を例示できる。これら各成分の含有量は、ポリマー成分(好ましくはゴム成分)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは200質量部以下である。
【0149】
上記組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0150】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0151】
上記組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適に用いられる。トレッドに用いる場合、キャップのみに用いても、ベースのみに用いても、いずれも可能であるが、両方に用いることが好ましい。
【0152】
本発明のタイヤは、上記組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合した組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0153】
上記タイヤとしては、特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ソリッドタイヤ、エアレスタイヤ等が挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。
【0154】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例0155】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0156】
なお、合成、重合時に用いた各種薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
【0157】
また、得られた重合体の評価方法について、以下にまとめて説明する。
【0158】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定)
重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0159】
(重合体の構造同定)
重合体の構造同定は、日本電子(株)製JNM-ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法により測定した。
【0160】
(樹脂A(αメチルスチレン樹脂(PAMS))の重合)
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム1gおよびトルエン200gを添加し、内温を-50~-20℃に維持しながら、αメチルスチレン(AMSモノマー)20gを滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;2132、数平均分子量Mn;1132、分子量分布1.9であった。その後、反応液を室温で撹拌し、内温が0℃以上になったところで、水60gを反応液に添加し反応を停止させた。分液によって水層を取り除いた後、水層のpHが4以上になるまで、水の添加と分液を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させた後、80℃/<10Pa以下で恒量になるまで、減圧乾燥し、樹脂Aを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;2045、数平均分子量Mn;980、分子量分布2.1であった。
【0161】
(樹脂B(エチルビニルエーテル樹脂(ポリ(エチルビニルエーテル)、PEVE))の重合)
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム1gおよびトルエン200gを添加し内温を-20℃~-5℃に維持しながら、エチルビニルエーテル/トルエン溶液(エチルビニルエーテル(EVEモノマー)20.3g、トルエン100g)を滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;2201、数平均分子量Mn;1202、分子量分布1.8であった。反応液を室温で撹拌し、内温が0℃以上になったところで、水60gを反応液に添加し反応を停止させた。分液によって水層を取り除いた後、水層のpHが4以上になるまで、水の添加と分液を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させた後、80℃/<10Pa以下で恒量になるまで、減圧乾燥し、樹脂Bを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;2205、数平均分子量Mn;1110、分子量分布2.0であった。
【0162】
(樹脂C(ポリ(N-tert-ブチルアクリルアミド)(PNTBAM))の重合)
窒素置換したガラス製フラスコにN-tert-ブチルアクリルアミド(NTBAMモノマー)23.9gを添加し、トルエン200mLを添加し室温にて30分撹拌し、均一の溶液とした後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)1.10gを添加した後、3時間還流をして反応させた後、ロータリーエバポレーターでトルエンを留去した後、80℃/10Pa以下で恒量になるまで減圧乾燥し、樹脂Cを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;9721、数平均分子量Mn;3736、分子量分布2.6であった。
【0163】
(樹脂D(ポリ(N-n-ブチルアクリルアミド)(PNNBAM))の重合)
窒素置換したガラス製フラスコにN-n-ブチルアクリルアミド(NNBAMモノマー)23.9gを添加し、トルエン200mLを添加し室温にて30分撹拌し、均一の溶液とした後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)1.10gを添加した後、3時間還流をして反応させた後、ロータリーエバポレーターでトルエンを留去した後、80℃/10Pa以下で恒量になるまで減圧乾燥し、樹脂Dを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;9521、数平均分子量Mn;3661、分子量分布2.6であった。
【0164】
(不凍液との相互作用の温度による変化の確認)
濃度が1質量%になるように各モノマー又は各樹脂をそれぞれ不凍液(メタノールと水からなる液体であって、水に対して体積基準で9倍量のメタノールを添加し、25℃で30分間混合することにより得られる液体)に投入し、-20℃から徐々に加温し+20℃まで加熱し、各温度において2時間保管した後、澄明又は濁りがあることを観察した。結果を表1に示す。
【0165】
【0166】
表1より、以下のことが判明した。
各モノマーはいずれの温度においても不凍液に溶解し、澄明な溶液となった。
樹脂Aはいずれの温度においても不凍液に溶解しなかった。
樹脂Bは10℃未満では澄明な溶液であったが、10℃以上では次第に濁り、不溶分のある分散液となった。よって、樹脂B(PEVE)は、-10℃~+10℃の範囲内にLCSTを持つことが分かった。
樹脂Cは10℃未満では澄明な溶液であったが、10℃以上では次第に濁り、不溶分のある分散液となった。よって、樹脂C(PNTBAM)は、-10℃~10℃の範囲内にLCSTを持つことが分かった。
樹脂Dは10℃未満では澄明な溶液であったが、10℃以上では次第に濁り、不溶分のある分散液となった。よって、樹脂D(PNNBAM)は、-10℃~10℃の範囲内にLCSTを持つことが分かった。
以上のことから、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基(好ましくは不凍液中で下限臨界溶液温度を示す基、より好ましくはポリ(アルキルビニルエーテル)、上記式(II)で表される基、更に好ましくは上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基)は、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化し、すなわち、温度変化により親水性が変化することで、組成物中の他の成分との相溶性が変化し、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることができることが分かった。
更に、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃であるため、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができる。具体的には、前記基の下限臨界溶液温度よりも高温では、疎水性の可塑剤として機能し、前記基の下限臨界溶液温度よりも低温では、親水性の可塑剤として機能することにより、上記温度範囲を境として、タイヤ性能を変化させることができ、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができることも分かった。
【0167】
<温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有する可塑剤の合成>
(特定可塑剤A(αメチルスチレン-エチルビニルエーテル樹脂(PAMS-PEVE(樹脂B)))の重合)
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム1gおよびトルエン200gを添加し、内温を-50~-20℃に維持しながら、αメチルスチレン20gを滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;2165、数平均分子量Mn;1202、分子量分布1.8であった。その後、反応液を内温-20℃~-5℃に維持しながら、エチルビニルエーテル/トルエン溶液(エチルビニルエーテルモノマー20.3g、トルエン100g)を滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;4231、数平均分子量Mn;2202、分子量分布1.9であった。反応液を室温で撹拌し、内温が0℃以上になったところで、水60gを反応液に添加し反応を停止させた。分液によって水層を取り除いた後、水層のpHが4以上になるまで、水の添加と分液を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させた後、80℃/<10Pa以下で恒量になるまで、減圧乾燥し、特定可塑剤Aを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;4231、数平均分子量Mn;2202、分子量分布1.9であった。
【0168】
(特定可塑剤B(αメチルスチレン-N-tert-ブチルアクリルアミド樹脂(PAMS-PNTBAM(樹脂C)))の重合)
窒素置換したガラス製フラスコにαメチルスチレン20gを添加し、トルエン25mLを添加し室温にて30分撹拌し、均一の溶液とした後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)1.10gを添加した後、3時間還流をして反応させ、反応液を40℃まで冷却した後、N-tert-ブチルアクリルアミド20gを添加し、3時間還流させて反応させた後、反応液をロータリーエバポレーターによってトルエン溶媒を留去した後、残った乾固物を減圧度0.1Pa以下、80℃で8時間減圧乾燥し、特定可塑剤Bを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;3265、数平均分子量Mn;1256、分子量分布2.6であった。
【0169】
(特定可塑剤C(αメチルスチレン-N-n-ブチルアクリルアミド樹脂(PAMS-PNNBAM(樹脂D)))の重合)
窒素置換したガラス製フラスコにαメチルスチレン20gを添加し、トルエン25mLを添加し室温にて30分撹拌し、均一の溶液とした後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)1.10gを添加した後、3時間還流をして反応させ、反応液を40℃まで冷却した後、N-n-ブチルアクリルアミド20gを添加し、3時間還流させて反応させた後、、反応液をロータリーエバポレーターによってトルエン溶媒を留去した後、残った乾固物を減圧度0.1Pa以下、80℃で8時間減圧乾燥し、特定可塑剤Cを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;3374、数平均分子量Mn;1123、分子量分布3.0であった。
【0170】
(特定可塑剤D(αメチルスチレン-エチルビニルエーテル樹脂(オイル状PAMS-PEVE(樹脂B))の重合)
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム1gおよびトルエン200gを添加し、内温を-50~-20℃に維持しながら、αメチルスチレン5gを滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;980、数平均分子量Mn;602、分子量分布1.6であった。その後、反応液を内温-20℃~-5℃に維持しながら、エチルビニルエーテル/トルエン溶液(エチルビニルエーテルモノマー35.0g、トルエン100g)を滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;1127、数平均分子量Mn;701、分子量分布1.6であった。反応液を室温で撹拌し、内温が0℃以上になったところで、水60gを反応液に添加し反応を停止させた。分液によって水層を取り除いた後、水層のpHが4以上になるまで、水の添加と分液を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させた後、80℃/<10Pa以下で恒量になるまで、減圧乾燥し、特定可塑剤Dを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;1042、数平均分子量Mn;604、分子量分布1.7であった。
【0171】
(特定可塑剤E(液状樹脂(ポリブタジエン)-PEVE(樹脂B))の重合)
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム1gおよびトルエン200gを添加し、内温を-50~-20℃に維持しながら、エチルビニルエーテル/トルエン溶液(エチルビニルエーテルモノマー20.0g、トルエン100g)gを滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;1129、数平均分子量Mn;988、分子量分布1.6であった。その後、反応液を内温-20℃~-5℃に維持しながら、マレイン酸変性BR/トルエン溶液(マレイン酸変性液状BR Ricon 130MA8 20.0g、トルエン100g)を滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析し、原料のマレイン酸変性BRより高分子側に新しいピークの出現を確認した後、反応液を室温で撹拌し、内温が0℃以上になったところで、水60gを反応液に添加し反応を停止させた。分液によって水層を取り除いた後、水層のpHが4以上になるまで、水の添加と分液を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させた後、80℃/<10Pa以下で恒量になるまで、減圧乾燥し、特定可塑剤Eを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;3631、数平均分子量Mn;2804、分子量分布1.3であった。
【0172】
(特定可塑剤F(ポリスチレン-エチルビニルエーテル樹脂(PS-PEVE(樹脂B))の重合)
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム1gおよびトルエン200gを添加し、内温を0~20℃に維持しながら、スチレン20gを滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;1565、数平均分子量Mn;1122、分子量分布1.4であった。その後、反応液を内温0℃~20℃に維持しながら、エチルビニルエーテル/トルエン溶液(エチルビニルエーテルモノマー20.3g、トルエン100g)を滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;3231、数平均分子量Mn;2302、分子量分布1.4であった。反応液を室温で撹拌し、内温が20℃以上になったところで、水60gを反応液に添加し反応を停止させた。分液によって水層を取り除いた後、水層のpHが4以上になるまで、水の添加と分液を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させた後、80℃/<10Pa以下で恒量になるまで、減圧乾燥し、特定可塑剤Fを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;3331、数平均分子量Mn;2342、分子量分布1.4であった。
【0173】
(特定可塑剤G(ポリテルペン-エチルビニルエーテル樹脂(PTR-PEVE(樹脂B))の重合)
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム1gおよびトルエン200gを添加し、内温を0~20℃に維持しながら、β-ピネン20gを滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;1065、数平均分子量Mn;802、分子量分布1.3であった。その後、反応液を内温0℃~20℃に維持しながら、エチルビニルエーテル/トルエン溶液(エチルビニルエーテルモノマー20.3g、トルエン100g)を滴下した。反応液をサンプリングし、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;2252、数平均分子量Mn;1165、分子量分布1.9であった。反応液を室温で撹拌し、内温が20℃以上になったところで、水60gを反応液に添加し反応を停止させた。分液によって水層を取り除いた後、水層のpHが4以上になるまで、水の添加と分液を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させた後、80℃/<10Pa以下で恒量になるまで、減圧乾燥し、特定可塑剤Gを得た。収率はほぼ100%であり、GPC分析した結果、重量平均分子量Mw;2382、数平均分子量Mn;1342、分子量分布1.8であった。
【0174】
上記にて製造した特定可塑剤A~Gは、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有し、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃である可塑剤である。
【0175】
<重合体(ゴム成分)の合成>
(重合体Aの重合)
十分に窒素置換した耐熱容器にn-ヘキサン1500ml、スチレン25g、1,3-ブタジエン75g、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n-ブチルリチウム0.24mmolを加えて、0℃で48時間攪拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に1mmol/L BHTエタノール溶液を24mL添加した。重合液の10mLを採取し、エタノール40mLで沈殿させ、乾燥することにより重合体Aを得た。得られた共重合体は重量平均分子量460,000、スチレン量25質量%、収率は99%であった。
【0176】
(重合体Bの重合)
触媒溶液Bの調製
乾燥し窒素置換した1Lの耐圧ステンレス容器に、シクロヘキサン350mL、1,3-ブタジエンモノマーを35g添加し、20容量%バーサチック酸ネオジム/シクロヘキサン溶液を54mL添加し、PMAO/トルエン溶液を130mL添加し30分攪拌した後、1MのDAIBAH/ヘキサン溶液を30mL添加した後30分攪拌した後、1Mの2-クロロ-2-メチルプロパン/シクロヘキサン溶液を15mL添加した後30分攪拌して触媒溶液Bとした。
重合体Bの重合
乾燥し窒素置換した3Lの耐圧ステンレス容器に、シクロヘキサン2000mL、1,3-ブタジエン100gを加え、1mol/LのTIBA/ノルマルヘキサン溶液を10mL添加し5分間攪拌し、澄明の溶液であることを確認した後、触媒溶液B30mLを添加し、80℃で3時間重合反応を行った。3時間後、反応停止剤として1Mイソプロパノール/THF溶液を50ml滴下し、反応を終了させた。重合液の10mLを採取し、エタノール40mLで沈殿させ、乾燥することにより重合体Bを得た。得られた重合体は重量平均分子量800,000、シス含量は98質量%、収率は99%であった。
【0177】
(水添SBRの製造)
十分に窒素置換した耐熱反応容器にn-ヘキサン、スチレン、1,3-ブタジエン、TMEDA(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)、n-ブチルリチウムを加えて、50℃で5時間攪拌し、重合反応を行った。その後、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら20分間撹拌し、未反応のポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。水素ガス供給圧力を0.7MPa-Gauge、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主体とする触媒を用いて水素添加を行った。水素の吸収が目的の水素添加率となる積算量に達した時点で、反応温度を常温とし、水素圧を常圧に戻して反応容器より抜き出し、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒をスチームストリッピングにより除去することによって、水添SBRを得た。
【0178】
以下、以下の実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20(天然ゴム)
SBR:上記重合体A
水添SBR:上記水添SBR(共役ジエン単位:3.3モル%、非共役オレフィン単位:88.2モル%、芳香族ビニル単位:8.5モル%(スチレン量:25質量%)、Mw:45万)
BR:上記重合体B
樹脂A~D:上記樹脂A~D
特定可塑剤A~G:上記特定可塑剤A~G
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN110(N2SA:144m2/g、DBP:115ml/100g、平均一次粒子径:18nm)
シリカ:エボニックテグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:16nm)
シランカップリング剤:エボニックテグッサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
【0179】
(実施例及び比較例)
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.77Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0180】
得られた、加硫ゴム組成物を用いて、下記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0181】
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃で、上記加硫ゴム組成物のtanδを測定した。そして、tanδの逆数の値について、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
【0182】
(ウェットグリップ性能)
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてウェットグリップ性能を評価した。上記加硫ゴム組成物からなる円筒形(幅20mm、直径100mm)のゴム試験片を用いて、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件
で、路面に対するサンプルのスリップを0~70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとり、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど摩擦係数の最大値が高く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0183】
低燃費性、ウェットグリップ性能の総合性能は、低燃費性、ウェットグリップ性能の2つの指数の総和で表す。
【0184】
【0185】
表2より、温度変化によって不凍液に対する相互作用が変化する基を有し、前記基の下限臨界溶液温度が-20℃~20℃である、樹脂及び/又はエラストマー用の可塑剤を配合した実施例の組成物は、タイヤに必要な温度領域においてタイヤ性能を変化させることができ、かつ、タイヤ用組成物を製造可能であることが分かった。