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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080118
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20220520BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
B60C11/03 C
B60C11/12 C
B60C11/03 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191112
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】新井 真人
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC13
3D131BC18
3D131CB05
3D131EB03U
3D131EB12V
3D131EB12X
3D131EB51U
3D131EB52V
3D131EB52X
3D131EB62V
3D131EB62X
3D131EB68U
3D131EB86V
3D131EB86W
3D131EC12V
3D131EC12W
(57)【要約】
【課題】ドライ性能を維持しつつ優れた雪上性能を発揮し得るタイヤを提供する。
【解決手段】回転方向Rが指定されたトレッド部2を有するタイヤである。前記トレッド部2は、第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2を含む。トレッド部2には、第1トレッド端T1からタイヤ赤道C側に向かって回転方向Rの側に傾斜して延びる複数の第1傾斜溝6と、第2トレッド端T2からタイヤ赤道側に向かって回転方向Rの側に傾斜して延びる複数の第2傾斜溝7と、タイヤ周方向で隣り合う2本の前記第1傾斜溝6の間を連通する第1縦溝9とが設けられている。第1傾斜溝6のタイヤ赤道C側の端部は、第2傾斜溝7に連通している。第2傾斜溝7のタイヤ赤道C側の端部は、第1傾斜溝6に連通している。第1縦溝9は、前記回転方向Rに向かって溝幅が大きくなっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向が指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端及び第2トレッド端を含み、
前記トレッド部には、少なくとも前記第1トレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記回転方向の側に傾斜して延びる複数の第1傾斜溝と、少なくとも前記第2トレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記回転方向の側に傾斜して延びる複数の第2傾斜溝と、タイヤ周方向で隣り合う2本の前記第1傾斜溝の間を連通する第1縦溝とが設けられ、
前記第1傾斜溝のタイヤ赤道側の端部は、前記第2傾斜溝に連通しており、
前記第2傾斜溝のタイヤ赤道側の端部は、前記第1傾斜溝に連通しており、
前記第1縦溝は、前記回転方向に向かって溝幅が大きくなっている、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1縦溝の前記溝幅が、前記回転方向に向かって、連続的に大きくなっている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1縦溝は、タイヤ軸方向に対して前記第1傾斜溝とは逆向きに傾斜している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1傾斜溝は、タイヤ軸方向に対する角度がタイヤ赤道側に向かって大きくなっている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1傾斜溝は、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状に延びる直線溝部を複数含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1傾斜溝は、少なくとも前記第1トレッド端からタイヤ軸方向に傾斜して直線状に延びる第1直線溝部と、前記第1直線溝部に連なりかつタイヤ軸方向に対して前記第1直線溝部よりも大きい角度で直線状に延びる第2直線溝部とを含み、
前記第1縦溝の少なくとも一方の端部は、前記第2直線溝部に連通している、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部には、タイヤ周方向で隣り合う2本の前記第1傾斜溝の間を連通しかつ前記第1縦溝よりも小さい深さの複数の縦浅溝が設けられている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記縦浅溝は、前記第1縦溝とは反対向きに溝幅が大きくなっている、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記縦浅溝は、一定の溝幅を有する第1部分と、前記回転方向と反対向きに溝幅が大きくなる第2部分とを含む、請求項7又は8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド部は、2本の前記第1傾斜溝の間で前記第1縦溝よりもタイヤ赤道側に区分された中央陸部を含み、
前記中央陸部は、2本の前記第1傾斜溝の間を連通しかつ前記第1縦溝よりも小さい深さの少なくとも1本の縦浅溝に区分された複数のブロック片を含み、
前記複数のブロック片は、最もタイヤ赤道側に区分されたクラウンブロック片と、前記クラウンブロック片より前記第1トレッド端側に配されたミドルブロック片とを含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記クラウンブロック片には、タイヤ軸方向に沿って延びる複数のクラウンサイプが設けられている、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ミドルブロック片には、タイヤ軸方向に対して前記第1傾斜溝とは逆向きに傾斜した複数のミドルサイプが設けられている、請求項10又は11に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雪上走行に適したタイヤが種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、複数の第1傾斜溝と、これらの間を連通する継ぎ溝が設けられたタイヤが提案されている。前記第1傾斜溝は、タイヤ軸方向の一方側の第1トレッド端からタイヤ赤道側に向かって斜めに延び、他の溝に連なることなく途切れている。前記継ぎ溝は、2本の第1傾斜溝の間を一定の溝幅で延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-193056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の高性能化に伴い、近年のタイヤには、雪上性能のより一層の向上が求められている。一般に、雪上性能を向上させるためには、トレッド部に設けられた溝の容積を拡大する手法が考えられる。しかしながら、このような手法は、乾燥路面での走行性能である、ドライ性能の低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ドライ性能を維持しつつ優れた雪上性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転方向が指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端及び第2トレッド端を含み、前記トレッド部には、少なくとも前記第1トレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記回転方向の側に傾斜して延びる複数の第1傾斜溝と、少なくとも前記第2トレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記回転方向の側に傾斜して延びる複数の第2傾斜溝と、タイヤ周方向で隣り合う2本の前記第1傾斜溝の間を連通する第1縦溝とが設けられ、前記第1傾斜溝のタイヤ赤道側の端部は、前記第2傾斜溝に連通しており、前記第2傾斜溝のタイヤ赤道側の端部は、前記第1傾斜溝に連通しており、前記第1縦溝は、前記回転方向に向かって溝幅が大きくなっている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第1縦溝の前記溝幅が、前記回転方向に向かって、連続的に大きくなっているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1縦溝は、タイヤ軸方向に対して前記第1傾斜溝とは逆向きに傾斜しているのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第1傾斜溝は、タイヤ軸方向に対する角度がタイヤ赤道側に向かって大きくなっているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第1傾斜溝は、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状に延びる直線溝部を複数含むのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第1傾斜溝は、少なくとも前記第1トレッド端からタイヤ軸方向に傾斜して直線状に延びる第1直線溝部と、前記第1直線溝部に連なりかつタイヤ軸方向に対して前記第1直線溝部よりも大きい角度で直線状に延びる第2直線溝部とを含み、前記第1縦溝の少なくとも一方の端部は、前記第2直線溝部に連通しているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部には、タイヤ周方向で隣り合う2本の前記第1傾斜溝の間を連通しかつ前記第1縦溝よりも小さい深さの複数の縦浅溝が設けられているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記縦浅溝は、前記第1縦溝とは反対向きに溝幅が大きくなっているのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記縦浅溝は、一定の溝幅を有する第1部分と、前記回転方向と反対向きに溝幅が大きくなる第2部分とを含むのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、2本の前記第1傾斜溝の間で前記第1縦溝よりもタイヤ赤道側に区分された中央陸部を含み、前記中央陸部は、2本の前記第1傾斜溝の間を連通しかつ前記第1縦溝よりも小さい深さの少なくとも1本の縦浅溝に区分された複数のブロック片を含み、前記複数のブロック片は、最もタイヤ赤道側に区分されたクラウンブロック片と、前記クラウンブロック片より前記第1トレッド端側に配されたミドルブロック片とを含むのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記クラウンブロック片には、タイヤ軸方向に沿って延びる複数のクラウンサイプが設けられているのが望ましい。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドルブロック片には、タイヤ軸方向に対して前記第1傾斜溝とは逆向きに傾斜した複数のミドルサイプが設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ドライ性能を維持しつつ優れた雪上性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の第1傾斜溝の輪郭の拡大図である。
図3図2の第4直線溝部の長さ方向に沿った断面図である。
図4図1の第1縦溝の拡大図である。
図5図1の中央陸部及び外側陸部の拡大図である。
図6】比較例のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある。)1のトレッド部2の展開図である。図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、冬用の空気入りタイヤであって、乗用車用であるのが望ましい。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0022】
本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2を含む。また、トレッド部2は、タイヤ赤道Cと第1トレッド端T1との間の第1トレッド部2Aと、タイヤ赤道Cと第2トレッド端T2との間の第2トレッド部2Bとを含んでいる。第1トレッド部2Aと第2トレッド部2Bとは、タイヤ周方向に位置ずれしている点を除き、実質的にタイヤ赤道Cで線対称に構成されている。このため、少なくとも以下で説明される第1トレッド部2Aの各構成は、第2トレッド部2Bに適用することができる。
【0023】
第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0024】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0025】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0026】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0027】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0028】
トレッド部2には、複数の第1傾斜溝6及び複数の第2傾斜溝7が設けられている。第1傾斜溝6は、少なくとも第1トレッド端T1からタイヤ赤道C側に向かって回転方向Rの側に傾斜して延びている。第2傾斜溝7は、少なくとも第2トレッド端T2からタイヤ赤道C側に向かって回転方向Rの側に傾斜して延びている。また、トレッド部2には、2本の第1傾斜溝6の間を連通する第1縦溝9が設けられている。
【0029】
第1傾斜溝6のタイヤ赤道C側の端部は、第2傾斜溝7に連通している。第2傾斜溝7のタイヤ赤道C側の端部は、第1傾斜溝6に連通している。第1縦溝9は、回転方向Rに向かって溝幅が大きくなっている。本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ドライ性能を維持しつつ優れた雪上性能を発揮することができる。その理由として、以下のメカニズムが推察される。
【0030】
本発明のタイヤ1において、第1傾斜溝6のタイヤ赤道C側の端部が第2傾斜溝7に連通しており、第2傾斜溝7のタイヤ赤道C側の端部が第1傾斜溝6に連通しているため、傾斜溝の連通部で固い雪柱を形成でき、これをせん断することによって大きな反力(以下、雪柱せん断力という場合がある。)が得られる。
【0031】
また、第1縦溝9が回転方向Rに向かって溝幅が大きくなっていることにより、タイヤの回転を利用して第1縦溝9内で雪柱を溝長さ方向に固く圧縮でき、より大きな雪柱せん断力が得られる。
【0032】
上述の作用効果は、溝容積の拡大に依存せずに得ることが可能である。このため、ドライ性能を維持することができる。本発明では、このようなメカニズムにより、ドライ性能を維持しつつ優れた雪上性能を発揮することができると推察される。
【0033】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0034】
図2には、図1の第1傾斜溝6の輪郭の拡大図が示されている。なお、図2では、陸部に配されたサイプは省略されている。図2に示されるように、第1傾斜溝6は、例えば、タイヤ赤道Cを横断する横断第1傾斜溝6aと、タイヤ赤道Cを横断せずに第2傾斜溝7と連通する非横断第1傾斜溝6bとを含む。
【0035】
第1傾斜溝6は、例えば、タイヤ軸方向に対する角度がタイヤ赤道C側に向かって大きくなっている。このような第1傾斜溝6は、多方向に雪柱せん断力を提供し、雪上でのトラクション性能及び旋回性能を高めるのに役立つ。
【0036】
第1傾斜溝6は、タイヤ軸方向に対して傾斜して直線状に延びる直線溝部10を複数含むのが望ましい。より望ましい態様として、本実施形態の第1傾斜溝6は、複数の直線溝部10からなり、曲線状の溝縁を含んでいない。このような第1傾斜溝6は、曲線の溝縁で構成された傾斜溝と比較して、溝縁が発生する摩擦力を維持しつつ、陸部の面積を大きくすることができる。
【0037】
第1傾斜溝6は、例えば、第1直線溝部11、第2直線溝部12、第3直線溝部13及び第4直線溝部14を含む。第1直線溝部11は、例えば、少なくとも第1トレッド端T1からタイヤ軸方向に傾斜して直線状に延びている。第2直線溝部12は、第1直線溝部11に連なりかつタイヤ軸方向に対して第1直線溝部11よりも大きい角度で直線状に延びている。第3直線溝部13は、第2直線溝部12に連なりかつタイヤ軸方向に対して前記第2直線溝部よりも大きい角度で直線状に延びている。第4直線溝部14は、第3直線溝部13に連なりかつタイヤ軸方向に対して第3直線溝部13よりも大きい角度で直線状に延びている。
【0038】
第1直線溝部11のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。第1直線溝部11の長さ(溝の長さ方向に沿った所謂ペリフェリ長さである。)は、第1傾斜溝6の第1トレッド端T1からタイヤ赤道C側の端部までの全長さ(同じく前記ペリフェリ長さである。)の25%~40%である。以下、本明細書において、特に断りのない限り、溝又は溝部の長さは、その長さ方向に沿った所謂ペリフェリ長さを指すものとする。
【0039】
第2直線溝部12のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、30~40°である。第2直線溝部12の長さは、第1直線溝部11の長さよりも小さく、例えば、第1傾斜溝6の全長さの15%~30%である。
【0040】
第3直線溝部13のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、50~60°である。第3直線溝部13の長さは、第2直線溝部12の長さよりも大きく、例えば、第1傾斜溝6の全長さの25%~40%である。
【0041】
第4直線溝部14のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、55~65°である。第4直線溝部14の長さは、第3直線溝部13の長さよりも小さく、例えば、第1傾斜溝6の全長さの5%~15%である。
【0042】
上述の直線溝部10の配置により、雪上でのトラクション性能と旋回性能とがバランス良く向上し得る。但し、第1傾斜溝6は、このような直線溝部10の配置に限定されるものではない。
【0043】
第1直線溝部11は、例えば、一定の溝幅で延びている。第1直線溝部11の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TW(図1に示す)の3.0%~6.0%である。このような第1直線溝部11は、ドライ性能を維持しつつ雪上性能を高めるのに役立つ。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0044】
第1傾斜溝6は、第2直線溝部12から第4直線溝部14に向かって、溝幅が小さくなっている。第1傾斜溝6のタイヤ赤道C側の端部における溝幅は、第1直線溝部11の溝幅W1の25%~50%である。これにより、トレッド部2のタイヤ赤道C付近の剛性が高められ、ドライ性能が向上する。
【0045】
また、横断第1傾斜溝6aのタイヤ赤道C側の端部における溝幅は、非横断第1傾斜溝6bのタイヤ赤道C側の端部における溝幅よりも小さい。これにより、第1傾斜溝6が発生するノイズの周波数帯域が分散し易く、ノイズ性能が向上する。
【0046】
上述の効果を高めるために、横断第1傾斜溝6aの第3直線溝部13の長さは、非横断第1傾斜溝6bの第3直線溝部13の長さよりも大きい。また、横断第1傾斜溝6aの第3直線溝部13は、タイヤ赤道C側に向かって溝幅が小さくなっている。これに対し、非横断第1傾斜溝6bの第3直線溝部13は、一定の溝幅で延びている。
【0047】
図3には、本実施形態の第4直線溝部14の長さ方向に沿った断面図が示されている。図3に示されるように、第4直線溝部14は、第1傾斜溝6のタイヤ赤道C側の端部に向かって深さが小さくなる隆起部19を含むのが望ましい。隆起部19は、例えば、トレッド部2の接地面に対して傾斜して延びる底面を含んでいる。隆起部19の長さは、例えば。第1傾斜溝6の長さの5%~15%である。隆起部19の最小の深さd1は、例えば、第4直線溝部14の最大の深さの20%~40%である。このような隆起部19は、トレッド部2のタイヤ赤道C付近の剛性を高めてドライ性能を向上させ、かつ、第1傾斜溝6内に雪が詰まるのを抑制するのに役立つ。
【0048】
図1に示されるように、タイヤ赤道Cから第1縦溝9までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの20%~30%である。
【0049】
図2に示されるように、第1縦溝9は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1傾斜溝6とは逆向きに傾斜している。第1縦溝9のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、第4直線溝部14のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、例えば、80~90°である。このような第1縦溝9は、雪上での旋回性能を高めるのに役立つ。
【0050】
第1縦溝9の少なくとも一方の端部は、第2直線溝部12に連通しているのが望ましい。より具体的には、第1縦溝9の回転方向Rの側の端部9aは、第1傾斜溝6の第1直線溝部11と第2直線溝部12とを跨ぐように連通しており、第1縦溝9の回転方向Rの反対側の端部9bは、第1傾斜溝6の第2直線溝部12に連通している。
【0051】
図4には、第1縦溝9の拡大図が示されている。図4に示されるように、第1縦溝9の溝幅は、回転方向Rに向かって、連続的に大きくなっているのが望ましい。これにより、第1縦溝9の内部で雪が押し固められ易くなる。
【0052】
第1縦溝9の回転方向Rの側における第1傾斜溝6に対する第1開口幅W2は、第1縦溝9の回転方向Rの反対側における第1傾斜溝6に対する第2開口幅W3の望ましくは120%以上、より望ましくは125%以上であり、望ましくは140%以下、より望ましくは135%以下である。また、第1縦溝9の一方の溝縁と他方の溝縁との間の角度θ1は、3~7°である。これにより、第1縦溝9周辺の陸部の剛性が維持されつつ、第1縦溝9が固い雪柱を形成できる。したがって、ドライ性能を維持しつつ、雪上性能が向上する。
【0053】
上述の効果をさらに高めるために、第1開口幅W2及び第2開口幅W3は、第3直線溝部13の溝幅及び第2直線溝部12の溝幅よりも大きいのが望ましい。また、第2開口幅W3は、第1直線溝部11の溝幅よりも小さいのが望ましい。
【0054】
図2に示されるように、トレッド部2には、タイヤ周方向で隣り合う2本の第1傾斜溝6の間を連通しかつ第1縦溝9よりも小さい深さの複数の縦浅溝20が設けられている。縦浅溝20の深さは、例えば、第1縦溝9の深さの半分以下である。具体的には、縦浅溝20の深さは、第1縦溝9の深さの望ましくは25%以上、より望ましくは30%以上であり、望ましくは40%以下、より望ましくは35%以下である。このような縦浅溝20は、ドライ性能と雪上性能とをバランス良く向上させる。
【0055】
縦浅溝20は、第1縦溝9とは反対向きに溝幅が大きくなっている。本実施形態の縦浅溝20は、一定の溝幅を有する第1部分20aと、回転方向Rと反対向きに溝幅が大きくなる第2部分20bとを含む。第2部分20bは、第1部分20aの回転方向Rの反対側に連なっている。このような縦浅溝20は、第2部分20b側から雪が排出され易く、内部に雪が詰まるのを抑制できる。
【0056】
第2部分20bの第1傾斜溝6における開口幅W5は、第1部分20aの溝幅W4の1.5~2.5倍である。また、第2部分20bの長さは、例えば、縦浅溝20の全長さの半分以下であり、望ましくは縦浅溝20の全長さの20%~30%である。
【0057】
縦浅溝20は、第1縦溝9よりも第1トレッド端T1側に配された外側縦浅溝21と、第1縦溝9よりもタイヤ赤道C側の内側縦浅溝22とを含む。本実施形態では、2本の第1傾斜溝6の間において、外側縦浅溝21が1本配されており、内側縦浅溝22が1本又は2本配されている。
【0058】
図1に示されるように、トレッド部2は、2本の第1傾斜溝6の間で第1縦溝9よりもタイヤ赤道C側に区分された中央陸部25と、2本の第1傾斜溝6の間で第1縦溝9よりも第1トレッド端T1側に区分された外側陸部26とを含む。
【0059】
図5には、中央陸部25及び外側陸部26の拡大図が示されている。図5に示されるように、中央陸部25は、少なくとも1本の縦浅溝20に区分された複数のブロック片を含む。複数のブロック片は、最もタイヤ赤道C側に区分されたクラウンブロック片27と、クラウンブロック片27より第1トレッド端T1側に配されたミドルブロック片28とを含む。
【0060】
本実施形態の中央陸部25は、1本の縦浅溝20が配されることにより、1つのクラウンブロック片27と1つのミドルブロック片28とで構成された第1中央陸部25aと、2本の縦浅溝20が配されることにより、1つのクラウンブロック片27と2つのミドルブロック片28とで構成された第2中央陸部25bとを含む。
【0061】
各ブロック片には、複数のサイプが設けられている。本実施形態の各サイプは、例えば、トレッド平面視においてジグザグ状に延びている。各サイプは、直線状に延びるものでも良い。なお、本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、2つの内壁の間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.2~1.2mmであり、より望ましくは0.5~1.0mmである。本実施形態のサイプは、その深さ方向の全体に亘って、前記幅が前記の範囲とされている。なお、サイプには、幅が前記範囲よりも大きい面取り開口部や、フラスコ底部が連なっても良い。
【0062】
クラウンブロック片27には、タイヤ軸方向に沿って延びる複数のクラウンサイプ31が設けられている。クラウンサイプ31は、例えば、その両端を結ぶ仮想線がタイヤ軸方向に対して5°以下の角度で配されている。このようなクラウンサイプ31は、そのエッジがタイヤ周方向に大きな摩擦力を提供する。
【0063】
ミドルブロック片28には、複数のミドルサイプ32が設けられている。ミドルサイプ32は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1傾斜溝6とは逆向きに傾斜している。ミドルサイプ32の両端を結ぶ仮想線のタイヤ軸方向に対する角度は、第1縦溝9や縦浅溝20のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さく、例えば、40~50°である。このようなミドルサイプ32は、雪上でのトラクション性能及び旋回性能をバランス良く向上させる。
【0064】
外側陸部26には、複数の外側サイプ33が設けられている。外側サイプ33は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1傾斜溝6と同じ向きに傾斜している。望ましい態様では、外側サイプ33の両端を結ぶ仮想線と、第1直線溝部11との角度差が、5°以下とされている。また、前記仮想線のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°とされている。
【0065】
ドライ性能と雪上性能とをバランス良く向上させるために、図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2のランド比Lrは、例えば、55%~70%であるのが望ましい。本明細書において、「ランド比」とは、各溝及びサイプを全て埋めた仮想接地面の全面積Saに対する、実際の合計接地面積Sbの比Sb/Saである。
【0066】
同様の観点から、トレッド部2を形成するトレッドゴムのゴム硬度Htは、例えば、45~65°であるのが望ましい。本明細書において、前記「ゴム硬度」は、JIS-K6253に準拠し、23℃の環境下におけるデュロメータータイプAによる硬さである。
【0067】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0068】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ205/55R16の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図6に示されるように、第1縦溝aが一定の溝幅で延びるタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上記の事項を除き、図1に示されるタイヤと実質的に同じである。各テストタイヤのドライ性能及び雪上性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
テスト車両:排気量2000cc、前輪駆動
テストタイヤ装着位置:全輪
リム:16×6.5
タイヤ内圧:前輪240kPa、後輪220kPa
【0069】
<ドライ性能>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ性能が優れていることを示す。
【0070】
<雪上性能>
上記テスト車両で雪路を走行したときの走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示されるように、テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ性能を維持しつつ優れた雪上性能を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0073】
2 トレッド部
6 第1傾斜溝
7 第2傾斜溝
9 第1縦溝
T1 第1トレッド端
T2 第2トレッド端
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6