(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080426
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】保持具
(51)【国際特許分類】
B43K 23/00 20060101AFI20220523BHJP
F16L 3/12 20060101ALI20220523BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
B43K23/00 100J
F16L3/12 G
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191488
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】504251702
【氏名又は名称】株式会社清和産業
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】光山 容行
【テーマコード(参考)】
3H023
5G363
【Fターム(参考)】
3H023AA04
3H023AB07
3H023AD02
3H023AD54
3H023AE07
3H023AE12
5G363BA01
5G363DA13
(57)【要約】
【課題】細長い被対象物の保持方向に自由度が増して使い勝手性を向上させ、かつ保持具を接着し直す煩わしい脱着作業を不要にすることができる保持具を提供する。
【解決手段】平坦な取付基板21の表面より略半円球状に突出する突出部23において細長い被対象物を保持する保持具本体2と、取付基板21の裏面に設けた接着部材3とを備える。突出部23を、弾性を有する合成樹脂材により塊状に成形する。保持具本体2に、突出部23の中心位置を取付基板21に対し略平行に貫通する第1挿通孔41と、突出部23の中心位置を第1挿通孔41と略直交した状態で取付基板21に対し略平行に貫通する第2挿通孔42と、突出部23の第1及び第2挿通孔41,42よりも反取付基板21側に対応する対応部分を各挿通孔41,42の各保持中心軸に沿って略十字状に切り欠く第1及び第2スリット43,44とを設けている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な取付基板の表面より突出する突出部において細長い被対象物を保持する保持具本体と、この保持具本体の取付基板の裏面に設けられ、前記取付基板が取り付けられる取付対象に対し接着する接着部材とを備えた保持具であって、
前記突出部は、弾性を有する合成樹脂材により塊状に成形されているとともに、
前記保持具本体は、
前記取付基板の中心に対応する前記突出部の中心位置を前記取付基板に対し略平行に貫通し、内部に前記被対象物を挿通した状態で保持する保持部を有する第1挿通孔と、
前記突出部の中心位置を前記第1挿通孔と略直交した状態で前記取付基板に対し略平行に貫通し、内部に前記被対象物を挿通した状態で保持する保持部を有する第2挿通孔と、
前記突出部の前記第1及び第2挿通孔よりも反取付基板側に対応する対応部分を前記第1及び第2挿通孔のそれぞれの保持部の保持中心軸に沿って略十字状に分割するように互いに十字に交差する2条のスリットと、
を備え、
前記被対象物は、前記第1及び第2挿通孔の保持部のうちの一方の保持部に対し、その一方の保持部に該当する前記2条のスリットのうちの一方のスリットを介して挿通された状態で保持されていることを特徴とする保持具。
【請求項2】
前記第1挿通孔は、前記第2挿通孔の断面形状よりも大きな断面形状に設定されている請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記取付基板は略円板状に形成され、
前記突出部は、前記取付基板の表面より略半円球状に突出している請求項1又は請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
前記第1及び第2挿通孔は、それぞれ断面略円形状に形成されている請求項3に記載の保持具。
【請求項5】
前記第1挿通孔の少なくとも一方の開口縁は、その取付基板側の略半分のみが反取付基板側に開口する略コの字状のコ字状部により拡張され、前記取付基板及び前記接着部材を貫通して前記取付対象に対しホッチキスのステープルが打ち込まれるように前記第1挿通孔の保持部に前記ホッチキスのドライバを挿通可能にしている請求項4に記載の保持具。
【請求項6】
前記第1挿通孔の両端の開口縁には、前記取付基板に沿って当該取付基板の周縁まで延びる舌部がそれぞれ設けられ、
前記各舌部には、前記取付基板の周縁よりも外方へ延びる延長舌部がそれぞれ設けられ、
前記各延長舌部には、前記取付対象に向けてホッチキスのステープルが打ち込まれている請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コードやペンなどの細長い被対象物を保持する保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、このような保持具としては、平坦な取付基板の表面より突出する突出部において細長い被対象物を保持する保持具本体と、この保持具本体の取付基板の裏面に設けられ、取付基板が取り付けられる壁面などの取付対象に対し接着する接着部材とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この保持具の突出部は、合成樹脂材により成形されたクリップ片により構成されている。このクリップ片(突出部)は、取付基板の表面の一方側縁寄りから突出し、途中で他方側縁側へ向かって折曲り、その自由端縁と取付基板との間に設けたスリットを介して細長い被対象物をクリップ片の内部の保持部に挿通させた状態で保持するようにしている。このとき、細長い被対象物は、その被対象物の延びる方向と、保持部にて被対象物を保持する保持中心軸の方向とが互いに略一致した状態で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来のものでは、細長い被対象物を保持する際にその被対象物の延びる方向と、保持部の保持中心軸の方向とを互いに略一致させる必要があるため、保持部に対する被対象物の保持方向が単一の角度に限定されたものとなり、使い勝手性が悪い。
【0006】
しかも、コードなどの細長い被対象物を保持部に保持する場合には、被対象物の延びる方向と保持部の保持中心軸とが不一致であれば、保持部の保持中心軸に対する被対象物の延びる方向が最大で90°ずれることがあり、これでは、保持部の内部に被対象物を保持しておくことができない。そのため、被対象物が保持可能となるように被対象物の延びる方向と保持部の保持中心軸とを保持可能な許容角度範囲内(例えば45°以内)にする必要がある。
【0007】
かかる点から、細長い被対象物を保持する際の使い勝手性と、被対象物の延びる方向と保持部の保持中心軸とを許容角度範囲内にするに当たり、壁面などの取付対象から保持具を取り外し、この取り外した保持具を、保持部の保持中心軸が被対象物の延びる方向に対して許容角度範囲内となるように、接着し直すことが考えられる。このように、保持部の保持中心軸を被対象物の延びる方向に対して許容角度範囲内となるように接着し直すことで、被対象物の保持方向に自由度が増して使い勝手性も向上できるものの、保持具を接着し直す必要があり、この脱着作業が非常に煩わしいものとなる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、保持部の保持中心軸が細長い被対象物の延びる方向に対して常に許容角度範囲内となるようにして、被対象物の保持方向に自由度が増して使い勝手性を向上させ、かつ保持具を接着し直す煩わしい脱着作業を不要にすることができる保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明では、平坦な取付基板の表面より突出する突出部において細長い被対象物を保持する保持具本体と、この保持具本体の取付基板の裏面に設けられ、前記取付基板が取り付けられる取付対象に対し接着する接着部材とを備えた保持具を前提とし、前記突出部を、弾性を有する合成樹脂材により塊状に成形する。更に、前記保持具本体に、前記取付基板の中心に対応する前記突出部の中心位置を前記取付基板に対し略平行に貫通し、内部に前記被対象物を挿通した状態で保持する保持部を有する第1挿通孔と、前記突出部の中心位置を前記第1挿通孔と略直交した状態で前記取付基板に対し略平行に貫通し、内部に前記被対象物を挿通した状態で保持する保持部を有する第2挿通孔と、前記突出部の前記第1及び第2挿通孔よりも反取付基板側に対応する対応部分を前記第1及び第2挿通孔のそれぞれの保持部の保持中心軸に沿って略十字状に分割するように互いに十字に交差する2条のスリットと、を設ける。そして、前記被対象物を、前記第1及び第2挿通孔の保持部のうちの一方の保持部に対し、その一方の挿通孔に該当する前記2条のスリットのうちの一方のスリットを介して挿通した状態で保持することを特徴としている。
【0010】
また、前記第1挿通孔を、前記第2挿通孔の断面形状よりも大きな断面形状に設定していてもよい。
【0011】
また、前記取付基板を略円形状に形成し、前記突出部を、前記取付基板の表面より略半円球状に突出させていてもよい。
【0012】
また、前記第1及び第2挿通孔を、それぞれ断面略円形状に形成していてもよい。
【0013】
また、前記第1挿通孔の少なくとも一方の開口縁を、その取付基板側の略半分のみが反取付基板側に開口するような略コの字状に拡張し、前記取付基板及び前記接着部材を貫通して前記取付対象に対しホッチキスのステープルが打ち込まれるように前記第1挿通孔の保持部に前記ホッチキスのドライバを挿通可能にしていてもよい。
【0014】
また、前記第1挿通孔の両端の開口縁に、前記取付基板に沿って当該取付基板の周縁まで延びる舌部をそれぞれ設ける。そして、前記各舌部に、前記取付基板の周縁よりも外方へ延びる延長舌部をそれぞれ設け、前記各延長舌部に、前記取付対象に向けてホッチキスのステープルを打ち込んでいてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上、要するに、弾性を有する合成樹脂材により塊状に成形した突出部の中心位置を貫通して互いに直交する第1及び第2挿通孔の反取付基板側の対応部分を2条のスリットにより略十字に分割し、突出部の第1及び第2挿通孔の一方の挿通孔の保持部に対しその一方の挿通孔に該当する一方のスリットを介して細長い被対象物を挿通した状態で保持している。このため、互いに直交する2つの挿通孔によって保持部の保持中心軸の方向が2方向となり、単一の角度に限定されたものに比して保持部に対する被対象物の保持方向に自由度が増し、保持具の使い勝手性を向上させることを可能にしている。
【0016】
その場合、細長いコードなどの被対象物を保持する際に当該コードの延びる方向が第1及び第2挿通孔の保持部の保持中心軸と不一致であっても、第1及び第2挿通孔の保持中心軸に対するコードの延びる方向のずれは最大で45°であるため、2条のスリットのいずれか一方を介して一方の挿通孔の保持部にコードがさほど無理せずとも挿通することが可能となる。これにより、保持部の保持中心軸が細長い被対象物の延びる方向に対して常に許容角度範囲内となり、保持具を取付対象に対し接着し直すといった煩わしい脱着作業を不要にすることができる。
【0017】
また、第1挿通孔を第2挿通孔の断面形状よりも大きな断面形状に設定することで、太さの異なる細長い被対象物であっても、それぞれの太さに応じた挿通孔を選択して無理なく内部に挿通することが可能となり、両挿通孔の保持部において太さの異なる被対象物を円滑に保持することができる。
【0018】
また、取付基板を略円形状に形成し、突出部を取付基板の表面より略半円球状に突出させることで、第1及び第2挿通孔の反取付基板側の対応部分の容積が小さく抑えられて合成樹脂材の材料費の低廉化を図ることができる。
【0019】
また、第1及び第2挿通孔をそれぞれ断面略円形状に形成することで、第1及び第2挿通孔の反取付基板側の対応部分を略半円球状の突出部と相俟ってほぼ均等な厚みに設定することも可能となり、当該対応部分の肉厚の均一化によって2条のスリットを介した第1及び第2挿通孔の内部への被対象物の挿通を無理なく行うことができる。
【0020】
また、第1挿通孔の少なくとも一方の開口縁の取付基板側の略半分のみを反取付基板側に開口するような略コの字状に拡張して、第1挿通孔の保持部にホッチキスのドライバを挿通可能とし、その挿通したドライバによって取付基板及び接着部材を貫通して取付対象に対しホッチキスのステープルを打ち込むことで、保持具の取付基板を接着部材の接着力とステープルの打ち込み力とによって取付対象に対し強固に取付けることができる。
【0021】
更に、第1挿通孔の両端の開口縁より取付基板の周縁までそれぞれ延びる各舌部に、それよりも外方へ延長舌部をそれぞれ延長させ、この各延長舌部にホッチキスのステープルを取付対象に向けて打ち込むことで、保持具の取付基板を接着部材の接着力と取付基板の周縁よりも外方からのステープルの打ち込み力とによって取付対象に対し強固に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る保持具を第2挿通孔の一方の開口縁側から見た正面図である。
【
図2】
図1の保持具を第2挿通孔の他方の開口縁側から見た背面図である。
【
図3】
図1の保持具を第1挿通孔の一方の開口縁側から見た右側面図である。
【
図4】
図1の保持具を第1挿通孔の他方の開口縁側から見た左側面図である。
【
図5】
図1の保持具を突出部側から見た平面図である。
【
図6】
図1の保持具を接着部材側から見た底面図である。
【
図7】
図1の保持具を突出部側から見た斜視図である。
【
図8】
図1の保持具の使用状態を示す参考斜視図である。
【
図9】
図5の保持具をA-A線で切断した断面図である。
【
図10】
図5の保持具をB-B線で切断した断面図である。
【
図11】
図5の保持具をC-C線で切断した断面図である。
【
図12】
図1の保持具を接着部材とステープルとの併用により壁面に取り付けた状態での縦断面図である。
【
図13】第1の実施の形態の変形例に係る保持具を接着部材とステープルとの併用により壁面に取り付けた状態での縦断面図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態に係る保持具を第2挿通孔の一方の開口縁側から見た正面図である。
【
図15】
図14の保持具を第2挿通孔の他方の開口縁側から見た背面図である。
【
図16】
図14の保持具を第1挿通孔の一方の開口縁側から見た右側面図である。
【
図17】
図14の保持具を第1挿通孔の他方の開口縁側から見た左側面図である。
【
図25】
図14の保持具を接着部材とステープルとの併用により壁面に取り付けた状態での縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る保持具を第2挿通孔の一方の開口縁側から見た正面図、
図2は
図1の保持具を第2挿通孔の他方の開口縁側から見た背面図、
図3は
図1の保持具を第1挿通孔の一方の開口縁側から見た右側面図、
図4は
図1の保持具を第1挿通孔の他方の開口縁側から見た左側面図をそれぞれ示している。また、
図5は
図1の保持具を突出部側から見た平面図、
図6は
図1の保持具を接着部材側から見た底面図をそれぞれ示している。更に、
図7は
図1の保持具を突出部側から見た斜視図、
図8は
図1の保持具の使用状態を示す参考斜視図をそれぞれ示している。
【0025】
図1~
図8に示すように、1は保持具であって、この保持具1は、コードやペンP(
図8に表れる)などの細長い被対象物を保持する際に供される。この保持具1は、平坦な薄板状の取付基板21の表面より突出する突出部23において細長い被対象物としてのペンPを保持する保持具本体2と、この保持具本体2の取付基板21の裏面に設けられた合成樹脂材よりなる接着部材3とを備えている。この場合、取付具本体3の直径が約31mmに、高さが約15.5mmにそれぞれ設定され、取付基板21の厚み(高さ)が約2.5mmに設定されている。
【0026】
取付基板21は、略真円形状に形成されている。また、突出部23は、取付基板21と共にポリ塩化ビニルなどの弾性を有する合成樹脂材により塊状に一体成形され、取付基板21の表面より略半円球状に突出している。
図6中Qは、取付基板21の中心に対応する突出部23の中心位置である。
【0027】
保持具本体2は、突出部23の中心位置Qを取付基板21の表面に対し略平行に貫通する第1挿通孔41と、突出部23の中心位置Qを第1挿通孔41と略直交した状態で取付基板21の表面に対し略平行に貫通する第2挿通孔42と、を備えている。第1及び第2挿通孔41,42は、それぞれの内部においてコードやペンPなどの細長い被対象物を挿通した状態で保持する保持部を有している。そして、第1及び第2挿通孔41,42は、それぞれ保持部の保持中心軸m,n方向から見て共に断面略真円形状に形成され、突出部23の中心位置Qにおいて両保持部の保持中心軸m,n同士が互いに交差した状態で直線状に延びている。
【0028】
図9は
図5の保持具1をA-A線で切断した断面図、
図10は
図5の保持具1をB-B線で切断した断面図、
図11は
図5の保持具1をC-C線で切断した断面図をそれぞれ示している。
【0029】
図9~
図11にも示すように、第1挿通孔41は、第2挿通孔42の断面形状よりも大きく設定されている。具体的には、第1挿通孔41の径r1が約11mmに、第2挿通孔42の径r2が約9mmに設定され、第1挿通孔41は第2挿通孔42よりも大径となっている。この場合、第1挿通孔41は、取付基板21の裏面から約2.5mm離間、つまり取付基板21の表面に沿って突出部23を貫通している。一方、第2挿通孔42は、取付基板21の裏面から約3.5mm離間、つまり取付基板21の表面から約1mm離間した状態で当該取付基板21の表面に沿って突出部23を貫通している。
【0030】
また、保持具本体2は、突出部23の第1及び第2挿通孔41,42よりも反取付基板21側(
図1~
図4では上側)に対応する対応部分を第1及び第2挿通孔41,42のそれぞれの保持部の保持中心軸m,nに沿って平面視(反取付基板21側から見た状態)で略十字状(
図5参照)に切り欠く2条の第1及び第2スリット43,44を備えている。この各スリット43,44は、互いに直交(交差)し、突出部23の対応部分を4つに等分に分割している。
【0031】
そして、各スリット43,44は、互いに相隣なる分割片45,45同士の間を約0.6mm程度の間隔とするように離間させている。このとき、保持具本体2は、後述するペンPが第1及び第2挿通孔41,42の保持部のうちの一方の保持部に当該一方の保持部に該当する第1及び第2スリット43,44のうちの一方のスリット43(又は44)を介して挿通された際に、当該一方のスリット43が拡がるものの直ぐに閉じてペンPの不慮の離脱が回避される程度の弾性を保有している。
【0032】
接着部材3は、発砲ポリウレタンフォームよりなる接着シート31と、ポリエチレンテレフタレートよりなる両面テープ32とを備え、これらによって2層構造に構成されている。接着シート31は、接着部材3の外層側(
図1~
図4では下側)に設けられ、この接着シート31の表面(
図1~
図4では上面)に両面テープ32の裏面(
図1~
図4では下面)が接着されている。両面テープ32の表面(
図1~
図4では上面)は、取付基板21の裏面(
図1~
図4では下面)に接着されている。
【0033】
接着部材3の裏側つまり接着シート31の裏面には、図示しない薄い剥離紙が接着されている。この剥離紙は、ポリエチレン製のものであり、接着部材3(接着シート31の裏面)に対する剥離性を高めている。この場合、接着シート31の裏面に汚れやゴミなどが付着したときは、水などで洗浄することで粘着性が復活する。
【0034】
第1挿通孔41の両端の開口縁46,46は、その取付基板21側(
図1~
図4では下側)の略半分のみが反取付基板21側(
図1~
図4では上側)に開口する略コの字状のコ字状部47により取付基板21付近(取付基板21の裏面から1.5mmの高さ)まで拡張されている。このコ字状部47の幅L(第2挿通孔42の保持中心軸n方向の長さ)は、第1挿通孔41の径r1と略一致する約11mmに設定されている。また、コ字状部47は、第1挿通孔41の径r1と略一致した状態で当該第1挿通孔41の取付基板21側(
図3及び
図4では下側)へ連続するように当該第1挿通孔41の下半分の略半円弧部分を保持中心軸mに対し直交する面に沿って延びる縦壁40を有している。
【0035】
そして、第1挿通孔41の両開口縁46,46におけるコ字状部47の縦壁40の先端(
図3及び
図4では下端)は、取付基板21の表面から約1.0mm裏面側に入り込んだ位置まで延び、その延長端より取付基板21の裏面と略平行に第1挿通孔41とは逆向き(外方)に取付基板21の周縁端まで延びる舌部49を有している。この各舌部49の取付基板21裏面からの厚みは約1.5mmに設定され、当該各舌部49の幅はコ字状部47の幅Lと略一致している。また、舌部49は、縦壁40から取付基板21の端縁まで長さが約3mmに設定されている。この場合、各コ字状部47の幅Lは、一般的なホッチキスXのドライバX1(
図13参照)の幅と略一致している。なお、48は、第2挿通孔42の両端の開口縁である。
【0036】
第1挿通孔41の開口縁46,46は、コ字状部47によって切り欠かれた各開口縁46の下半分の略半円弧部分によって当該第1貫通孔41の保持部の保持中心軸m方向の長さが短くなっている。このため、第1挿通孔41を挟んだ両側の各分割片45,45は、互いに第1スリット43を拡げる方向へ倒れ易くなっていて、ホッチキスXのドライバX1が開口縁46を介して第1挿通孔41の保持部に挿入可能となっている。
【0037】
図12は
図1の保持具1を接着部材3とステープルとの併用により壁面に取り付けた状態での縦断面図を示している。この
図12に示すように、第1挿通孔41の保持部に挿入されるホッチキスXのドライバX1からステープルSが打ち出された際に、接着部材3が接着された接着対象としての壁面Hに対しステープルSが取付基板21及び接着部材3を貫通して打ち込まれる。このとき、ホッチキスXのドライバX1は、第1スリット43によりその両側の各分割片45を互いに離間させる方向へ押し倒しながら第1挿通孔41の保持部の中心位置Q付近まで無理なく挿入されるようにしている。
【0038】
そして、コードなどの細長い被対象物を保持する場合は、当該コードが突出部23の各スリット43,44と略平行な方向及び略直交する方向へ延びていても、第1及び第2挿通孔41,42の保持部の保持中心軸m,nと一致するため、第1及び第2挿通孔41,42の保持部に第1及び第2スリット43,44を介して無理なく挿通される。第1スリット43の長さ(第1挿通孔41の保持中心軸m方向の長さ)は約10.2mmに、第2スリット44の長さ(第2挿通孔42の保持中心軸n方向の長さ)は約15.6mmにそれぞれ設定されている。
【0039】
このとき、コードの延びる方向が第1及び第2挿通孔41,42の保持部の保持中心軸m,nと不一致であれば、第1及び第2挿通孔41,42の保持部の保持中心軸m,nに対するコードの延びる方向は最大で45°であることから、両挿通孔41,42の保持部の保持中心軸m,nがコードの延びる方向に対して常に許容角度範囲内となり、2条のスリット43,44のいずれか一方を介して当該一方のスリット43(又は44)に対応する一方の挿通孔41(又は42)の保持部にコードがさほど無理せずとも挿通されることになる。
【0040】
なお、保持具1を壁面Hから取り外す際は、保持具本体2の第1又は第2挿通孔41,42の保持部内に一方の開口縁46,48よりドライバのような長尺な工具などを差し込んだ状態で、突出部23の中心位置Q回りに工具を回転させることで、接着部材3の接着シート31の裏面が壁面Hから離脱するようになっている。
【0041】
したがって、本実施の形態では、取付基板21と共にポリ塩化ビニルなどの弾性を有する合成樹脂材により塊状に一体成形した突出部23の中心位置Qを貫通して互いに直交する第1及び第2挿通孔41,42の反取付基板21側の対応部分を2条のスリット43,44により略十字に分割し、突出部23の第1挿通孔41の保持部に対し当該第1挿通孔41に該当する第1スリット43を介して細長いペンPを挿通した状態で保持している。このため、互いに直交する2つの第1及び第2挿通孔41,42によって保持部の保持中心軸m,nの方向が2方向となり、単一の角度に限定されたものに比して保持部に対するペンPの保持方向に自由度が増し、保持具1の使い勝手性を向上させることを可能にしている。
【0042】
その場合、細長いコードなどの被対象物を保持する際に当該コードの延びる方向が第1及び第2挿通孔41,42の保持部の保持中心軸m,nと不一致であっても、第1及び第2挿通孔41,42の保持中心軸m,nに対するコードの延びる方向のずれは最大で45°であるため、2条のスリット43,44のいずれか一方を介して一方の挿通孔41(又は42)の保持部にコードがさほど無理せずとも挿通することが可能となる。これにより、保持部の保持中心軸m,nがコードの延びる方向に対して常に許容角度範囲内となり、保持具1を壁面Hに対し接着し直すといった煩わしい脱着作業を不要にすることができる。
【0043】
また、突出部23が略真円形状の取付基板21の表面より略半円球状に突出しているので、第1及び第2挿通孔41,42の反取付基板21側の対応部分の容積が小さく抑えられて合成樹脂材の材料費の低廉化を図ることができる。
【0044】
また、第1及び第2挿通孔41,42がそれぞれ断面略真円形状に形成されているので、第1及び第2挿通孔41,42の反取付基板21側の対応部分をほぼ均等な厚みに設定することも可能となり、当該対応部分の肉厚の略均一化によって2条のスリット43,44を介した第1及び第2挿通孔41,42の保持部への被対象物の挿通を無理なく行うことができる。
【0045】
また、第1挿通孔41が第2挿通孔42よりも大径に設定されているので、太さの異なる細長い被対象物であっても、それぞれの太さに応じた挿通孔41,42を選択して無理なく保持部に挿通することが可能となり、両挿通孔41,42の保持部において太さの異なる被対象物を円滑に保持することができる。
【0046】
更に、第1挿通孔41の両端の開口縁46,46の取付基板21側を略コの字状に形成して、第1挿通孔41の保持部の中心位置Q付近までホッチキスXのドライバX1が無理なく挿入され、その挿入したドライバX1によって取付基板21及び接着部材3を貫通して壁面Hに対しホッチキスXのステープルSが打ち込まれているので、接着部材3の接着力とステープルSの打ち込み力とによって保持具1の取付基板21を壁面Hに対し強固に取付けることができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、第1挿通孔41の保持部の中心位置Q付近まで挿入したホッチキスXのドライバX1によってステープルSを打ち込んだが、ホッチキスXのドライバX1によっては第1挿通孔41の保持部内に挿入できないことがある。その際には、
図13に示すように、第1挿通孔41の両開口縁46,46におけるコ字状部47の縦壁40にホッチキスXのドライバX1の先端を当接させた状態で、各舌部49に、壁面Hに向けてホッチキスXのステープルSが接着部材3を貫通して打ち込まれていてもよい。この場合には、保持具1の取付基板21を接着部材3の接着力と各舌部49からのステープルSの打ち込み力とによって壁面Hに対し強固に取付けることが可能となる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施の形態を
図14~
図24に基づいて説明する。
【0049】
この実施の形態では、保持具の各舌部の構成を変更している。なお、各舌部を除くその他の構成は前記第1の実施の形態を同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0050】
図14は本発明の第2の実施の形態に係る保持具1を第2挿通孔42の一方の開口縁48側から見た正面図、
図15は
図14の保持具1を第2挿通孔42の他方の開口縁48側から見た背面図、
図16は
図14の保持具1を第1挿通孔41の一方の開口縁46側から見た右側面図、
図17は
図14の保持具1を第1挿通孔41の他方の開口縁46側から見た左側面図をそれぞれ示している。また、
図18は
図14の保持具1を突出部23側から見た平面図、
図19は
図14保持具1を接着部材3側から見た底面図、
図20は
図14の保持具1を突出部23側から見た斜視図をそれぞれ示している。更に、
図21は
図14の保持具1の使用状態を示す参考斜視図、
図22は
図18の保持具1をD-D線で切断した断面図、
図23は
図18の保持具1をE-E線で切断した断面図、
図24は
図18の保持具1をF-F線で切断した断面図をそれぞれ示している。
【0051】
すなわち、本実施の形態では、
図14~
図24に示すように、第1挿通孔41の両開口縁46,46におけるコ字状部47の縦壁40先端(
図16及び
図17では下端)の舌部49の外方端には、取付基板21の周縁端よりも外方へ一体的に延びる延長舌部53,53がそれぞれ設けられている。各延長舌部53は、舌部49の表面から取付基板21の裏面側へ0.8mm入り込んだ位置より取付基板21の裏面と略平行に第1挿通孔41とは逆向き(外方向き)に延びている。この各延長舌部53の取付基板21裏面からの厚みは約0.7mmに設定され、当該各延長舌部53の幅はコ字状部47の幅L(11mm)よりも幅方向両側にそれぞれ1mmずつ広い幅K(約13mm)に設定されている。
【0052】
また、各延長舌部53は、各舌部49の外方端が取付基板21の周縁に沿って円弧状に形成された縦面54より外方へ延び、縦面54から延長端までの長さが5mmに設定され、コ字状部47の縦壁40から延長端までの長さでは8mmに設定されている。
【0053】
図25は
図14の保持具1を接着部材3とステープルSとの併用により壁面Hに取り付けた状態での縦断面図を示している。この
図25に示すように、第1挿通孔41の両開口縁46,46における取付基板21の周縁に沿う縦面54にホッチキスXのドライバX1の先端を当接させた状態で、各延長舌部53に、壁面Hに向けてホッチキスXのステープルSが打ち込まれている。
【0054】
したがって、本実施の形態では、第1挿通孔41の両端の開口縁46より取付基板21の周縁までそれぞれ延びる各舌部49に、それよりも外方へ延長舌部53,53を延長させ、この各延長舌部53にホッチキスXのステープルSが壁面Hに向けて打ち込まれているので、保持具1の取付基板21を接着部材3の接着力と取付基板21の周縁よりも外方からの各ステープルSの打ち込み力とによって、壁面Hに対しより強固に取付けることができる。
【0055】
なお、本発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記各実施の形態では、接着部材3とステープルSとを併用して保持具1を壁面Hに取り付けたが、ステープルを併用せずに接着部材のみで保持具が壁面に取り付けられていてもよい。
【0056】
また、前記第2の実施の形態では、各延長舌部53にホッチキスXのステープルSを打ち込んだが、舌部のみ又は舌部共にホッチキスのステープルが打ち込まれていてもよい。
【0057】
また、前記第2の実施の形態では、各延長舌部53を各舌部49の外方端(取付基板21の周縁端)の縦面54より外方へ延ばしたが、各延長舌部が第1挿通孔の両開口縁におけるコ字状部の縦壁先端から取付基板21の周縁端よりも外方へ延びて形成されていてもよい。この場合には、各延長舌部にホッチキスのステープルを複数打ち込むことも可能である。
【0058】
また、前記各実施の形態では、第1及び第2挿通孔41,42をそれぞれ保持中心軸m,n方向から見て共に断面略真円形状に形成したが、第1及び第2挿通孔がそれぞれ保持中心軸方向から見て共に断面略楕円形状や断面略矩形状のほか、断面略星形状などどのような断面形状に形成されていてもよく、また、第1及び第2挿通孔の断面形状は必ずしも同じ形状に形成されていなくてもよい。更に、第1及び第2挿通孔は同じ大きさであってもよい。
【0059】
また、前記各実施の形態では、取付基板21及び接着部材3を貫通するホッチキスXのステープルSを壁面Hに対し打ち込んだが、細いピンや釘などが取付基板及び接着部材を貫通して壁面に打ち込まれていてもよい。更に、保持具は、壁面に対して取り付けられるものに限らず、天井面や床面に取り付けられていてもよい。
【0060】
また、前記各実施の形態では、接着部材3を接着シート31と両面テープ32とで構成したが、接着部材として、例えばシャープ化学工業株式会社の「ピタッ!とpeel」などの塗付タイプのものが取付基板の裏面に塗布された状態で設けられるようにしたものが適用されていてもよく、その場合には、鏡面に比して凹凸のある紙製、ビニル製又はオレフィン製などの壁紙により形成された壁面に対する接着も可能である。
【0061】
また、前記各実施の形態では、突出部23を略真円形状の取付基板21の表面より略半円球状に突出させたが、略矩形状の取付基板の表面より突出する突出部の形状については、略半円球状又は略四角柱形状や略円柱形状であってもよい。
【0062】
また、前記各実施の形態では、突出部23を取付基板21と共にポリ塩化ビニルなどの弾性を有する合成樹脂材により塊状に一体成形したが、材質はこれに限定されるものではなく、エラストマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はポリエチレン系樹脂などの弾性を有する合成樹脂材によって塊状に保持具本体が成形されていてもよい。要するに、保持具本体が、被対象物が第1及び第2挿通孔のうちの一方の挿通孔の保持部に当該一方の挿通孔に該当するスリットを介して挿通された際に当該スリットが拡がるものの直ぐに閉じて被対象物の不慮の離脱が回避される程度の弾性を保有する合成樹脂材であればなんでもよい。
【0063】
また、前記各実施の形態では、第1挿通孔41の両端の開口縁46を、その取付基板21側の略半分のみが反取付基板21側に開口する略コの字状のコ字状部47によりそれぞれ拡張したが、第1挿通孔の少なくとも一方の開口縁のみがコ字状部により拡張されていてもよい。
【0064】
更に、前記各実施の形態では、被対象物としてのペンPを保持する場合について述べたが、コード類はもちろんのこと、眼鏡などのテンプルのような細長い被対象物がスリットを介して挿通孔の保持部に挿通された状態で保持されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 保持具
2 保持具本体
21 取付基板
23 突出部
3 接着部材
41 第1挿通孔
42 第2挿通孔
43 第1スリット
44 第2スリット
46 第1挿通孔の開口縁
47 コ字状部
48 第2挿通孔の開口縁
49 舌部
53 延長舌部
H 壁面(接着対象)
P ペン(被対象物)
Q 突出部の中心位置
S ステープル
X ホッチキス
X1 ドライバ
m 第1挿通孔の保持部の保持中心軸
n 第2挿通孔の保持部の保持中心軸