(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080742
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】定電位電解式ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220523BHJP
G01N 27/404 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G01N27/416 311A
G01N27/416 311G
G01N27/404 341U
G01N27/416 311L
G01N27/416 316Z
G01N27/416 311H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191973
(22)【出願日】2020-11-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和2年2月25日アサゴエ工業株式会社(岡山県岡山市南区箕島557-4)、住友金属鉱山株式会社(東京都港区新橋5丁目11-3)、株式会社 日立ハイテク(山口県下松市大字東豊井794)及びJマテ.カッパープロダクツ株式会社(新潟県上越市大潟区土底浜2024-1)において納入。
(71)【出願人】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】上杉 慎治
(72)【発明者】
【氏名】袋井 詢
(57)【要約】
【課題】酸素ガスおよび毒性ガスを検知する定電位電解式ガスセンサにおいて、毒性ガス用作用極の設定電位が0であっても、被検ガス中の雑ガスによる干渉を抑制することができる定電位電解式ガスセンサを提供する。
【解決手段】酸素ガスおよび毒性ガスを検知する定電位電解式ガスセンサであって、電極積層構造体を有するセンサ本体と、このセンサ本体を駆動する動作制御回路とを備えてなり、前記電極積層構造体は、電解液が含侵されたシート状の電解液保持部材と、前記電解液保持部材の一面に互いに離間して配置された、酸素ガス用作用極および毒性ガス用作用極と、前記電解液保持部材の他面に互いに離間して配置された対極および参照極とを備え、前記動作制御回路は、前記対極および前記参照極を電気的に接続するフィードバック抵抗を有することを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスおよび毒性ガスを検出する定電位電解式ガスセンサであって、
電極積層構造体を有するセンサ本体と、このセンサ本体を駆動する動作制御回路とを備えてなり、
前記電極積層構造体は、電解液が含侵されたシート状の電解液保持部材と、前記電解液保持部材の一面に互いに離間して配置された、酸素ガス用作用極および毒性ガス用作用極と、前記電解液保持部材の他面に互いに離間して配置された対極および参照極とを備え、
前記動作制御回路は、前記対極および前記参照極を電気的に接続するフィードバック抵抗を有することを特徴とする定電位電解式ガスセンサ。
【請求項2】
酸素ガスおよび毒性ガスを検出する定電位電解式ガスセンサであって、
電極積層構造体を有するセンサ本体と、このセンサ本体を駆動する動作制御回路とを備えてなり、
前記電極積層構造体は、電解液が含侵されたシート状の電解液保持部材と、前記電解液保持部材の一面に互いに離間して配置された、酸素ガス用作用極および毒性ガス用作用極と、前記電解液保持部材の他面に互いに離間して配置された対極および参照極とを備え、
前記動作制御回路は、前記対極の印加電圧と同等の電圧を印加する電位調整電源と、この電位調整電源および前記参照極を電気的に接続するフィードバック抵抗とを有することを特徴とする定電位電解式ガスセンサ。
【請求項3】
前記毒性ガス用作用極は、白金黒を含む電極触媒層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定電位電解式ガスセンサ。
【請求項4】
前記動作制御回路は、ポテンショスタット回路を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の定電位電解式ガスセンサ。
【請求項5】
前記参照極は、二酸化イリジウムと白金黒とよりなり、当該二酸化イリジウムと当該白金黒との割合が質量比で99:1~80:20である混合触媒よりなる電極触媒層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の定電位電解式ガスセンサ。
【請求項6】
検知対象である前記毒性ガスは、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、塩素、アンモニア、二酸化窒素、一酸化窒素、シアン化水素、水素ガス、ホスフィン、オゾンおよび二酸化塩素から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の定電位電解式ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ガスおよび毒性ガスを検知することができる定電位電解式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素ガスや毒性ガスの検出を行うに際しては、目的とする検知対象ガスの選択性に優れ、高感度で、かつ、高い精度でガス濃度を検出することができるなどの理由から、電解反応を利用した定電位電解式ガスセンサが広く利用されている。
【0003】
このような定電位電解式ガスセンサとして、特許文献1には、作用極、参照極および対極が、電解液が含浸された親水性の不織布よりなる電解液保持部材を介して積層されてなる電極積層構造体を備えてなるものが開示されている。また、特許文献1には、分割された複数の作用極を設けることによって、複数の種類のガスを検知するガスセンサを構成することが可能であることが開示されている。
【0004】
このような複数の種類のガスを検知する定電位電解式ガスセンサにおいて、酸素ガスおよび毒性ガスを検知する小型の定電位電解式ガスセンサを構成した場合には、被検ガス中の酸素ガスの濃度が低下すると、毒性ガスの濃度指示値が大きく変動する、という問題がある。これは、酸素ガス用作用極と毒性ガス用作用極とでは、設定電位や出力電流が大きく異なるので、小型化を図るために酸素ガス用作用極と毒性ガス用作用極とを接近して配置すると、酸素ガス用作用極が毒性ガス用作用極に干渉するためであると考えられる。従って、この問題を解決するためには、毒性ガス用作用極を構成する触媒として、白金黒などの感度の高い触媒を用いることが考えられる。
【0005】
然るに、白金黒などの触媒は、Pt-Ru触媒に比較して10倍程度の感度を有するが、水素ガスや一酸化窒素などの雑ガスによる干渉が生じるため、被検ガス中に雑ガスが存在すると、検知対象ガスのみを高い精度で検知することが困難である、という問題がある。このような問題を解決するために、毒性ガス用作用極に電圧を印加することにより、毒性ガス用作用極の設定電位を、雑ガスの酸化反応が抑制される電位に変更する手段が知られている(特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、上記の手段を採用する場合には、毒性ガス用作用極に電圧を印加して制御するための制御回路が必要であり、装置全体の大型化や製造コストの上昇を招き、また、検査対象ガスや雑ガスが常時存在する環境下で長期間使用すると、参照極の電位が変化する結果、毒性ガス用作用極に所期の電位が維持されなくなる、という問題があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7608177号明細書
【特許文献2】特公昭59-10494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、酸素ガスおよび毒性ガスを検知する定電位電解式ガスセンサにおいて、毒性ガス用作用極の設定電位が0であっても、被検ガス中の雑ガスによる干渉を抑制することができる定電位電解式ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の定電位電解式ガスセンサは、酸素ガスおよび毒性ガスを検出する定電位電解式ガスセンサであって、
電極積層構造体を有するセンサ本体と、このセンサ本体を駆動する動作制御回路とを備えてなり、
前記電極積層構造体は、電解液が含侵されたシート状の電解液保持部材と、前記電解液保持部材の一面に互いに離間して配置された、酸素ガス用作用極および毒性ガス用作用極と、前記電解液保持部材の他面に互いに離間して配置された対極および参照極とを備え、
前記動作制御回路は、前記対極および前記参照極を電気的に接続するフィードバック抵抗を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の定電位電解式ガスセンサは、酸素ガスおよび毒性ガスを検出する定電位電解式ガスセンサであって、
電極積層構造体を有するセンサ本体と、このセンサ本体を駆動する動作制御回路とを備えてなり、
前記電極積層構造体は、電解液が含侵されたシート状の電解液保持部材と、前記電解液保持部材の一面に互いに離間して配置された、酸素ガス用作用極および毒性ガス用作用極と、前記電解液保持部材の他面に互いに離間して配置された対極および参照極とを備え、
前記動作制御回路は、前記対極の印加電圧と同等の電圧を印加する電位調整電源と、この電位調整電源および前記参照極を電気的に接続するフィードバック抵抗とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の定電位電解式ガスセンサにおいては、前記毒性ガス用作用極は、白金黒を含む電極触媒層を有することが好ましい。
また、前記動作制御回路は、ポテンショスタット回路を含むことが好ましい。
また、前記参照極は、二酸化イリジウムと白金黒とよりなり、当該二酸化イリジウムと当該白金黒との割合が質量比で99:1~80:20である混合触媒よりなる電極触媒層を有することが好ましい。
また、検知対象である前記毒性ガスは、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、塩素、アンモニア、二酸化窒素、一酸化窒素、シアン化水素、水素ガス、ホスフィン、オゾンおよび二酸化塩素から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
本発明において、「上」および「下」とは、本発明の定電位電解式ガスセンサを、ケーシングにおける被検ガス導入口が形成された面が上向きとなる姿勢で配置したときに、当該定電位電解式ガスセンサにおける方向を示すものである。従って、例えば定電位電解式ガスセンサを、ケーシングにおける被検ガス導入口が形成された面が下向きとなる姿勢で配置したときには、「上」および「下」は、実際にはそれぞれ逆の方向すなわち「下」および「上」の方向を示し、定電位電解式ガスセンサを、ケーシングにおける被検ガス導入口が形成された面が左向きとなる姿勢で配置したときには、「上」および「下」は、実際にはそれぞれ「左」および「右」の方向を示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の定電位電解式ガスセンサによれば、参照極が、フィードバック抵抗を介して対極または対極の印加電圧と同等の電圧を印加する電位調整電源に電気的に接続されているため、毒性ガス用作用極の設定電位が0であっても、当該毒性ガス用作用極の電位が上昇する結果、被検ガス中の雑ガスによる干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の定電位電解式ガスセンサの一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
【
図2】
図1に示す定電位電解式ガスセンサにおける下壁部を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す定電位電解式ガスセンサにおける酸素ガス用作用極を拡大して示す説明用断面図である。
【
図4】
図1に示す定電位電解式ガスセンサにおける毒性ガス用作用極を拡大して示す説明用断面図である。
【
図5】
図1に示す定電位電解式ガスセンサにおける電極複合体を示す上面図である。
【
図6】動作制御回路の一例における構成を示す説明図である。
【
図7】動作制御回路の他の例における構成を示す説明図である。
【
図8】実施例1に係る定電位電解式ガスセンサについて、試験1の結果を示すグラフである。
【
図9】比較例1に係る定電位電解式ガスセンサについて、試験1の結果を示すグラフである。
【
図10】実施例1および参考例1に係る定電位電解式ガスセンサについて、試験2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の定電位電解式ガスセンサの実施の形態について説明する。
図1は、本発明の定電位電解式ガスセンサの一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
この定電位電解式ガスセンサは、酸素ガスおよび毒性ガスを検出するものであって、電極積層構造体20およびこの電極積層構造体20を収納するケーシング10を有するセンサ本体1と、このセンサ本体1を駆動する動作制御回路60とを備えている。
ここで、検知対象である毒性ガスとしては、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、塩素、アンモニア、二酸化窒素、一酸化窒素、シアン化水素、水素ガス、ホスフィン、オゾンおよび二酸化塩素などが挙げられる。
【0016】
センサ本体1において、ケーシング10は、下端が閉塞された円筒状のケーシング本体11と、ケーシング本体11の上端の開口を塞いで上壁部14を形成する円板状の蓋部材12とにより構成されている。ケーシング本体11および蓋部材12は、それぞれポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂によって形成されている。
【0017】
上壁部14を形成する蓋部材12には、酸素ガス検出用の被検ガス導入口13aおよび毒性ガス検出用の被検ガス導入口13aが、上壁部14を厚み方向に貫通して伸びるよう形成されている。また、蓋部材12の上面には、円形の第1凹所18が形成され、この第1凹所18の底面における中央領域には、円形の第2凹所19が形成されており、第2凹所19の底面における中央領域に酸素ガス検出用の被検ガス導入口13aが形成されている。
【0018】
酸素ガス検出用の被検ガス導入口13aにより形成された内部空間は、後述するガス供給制限手段50のピンホール51を介して導入される被検ガスの拡散空間として機能する。
被検ガス導入口13aにより形成された内部空間の体積は、例えば約0.1~10mm3 であることが好ましい。このような構成とされていることにより、導入された被検ガスを十分に拡散させることができると共に電源オフ後にセンサ内部に残留する酸素ガスの量を低減させことができる。
【0019】
ケーシング本体11の底壁部すなわちケーシング10の下壁部15の中央位置には、断面円形の通気管部16が、ケーシング本体12の軸方向に沿って下壁部15から上方(内方)に突出して後述する圧力調整膜28の下面に接するよう形成されている。この通気管部16によって、下壁部15の外面から圧力調整膜28の下面に通ずる通気孔Vが形成されている。
【0020】
図2に示すように、ケーシング10の下壁部15における通気管部16の周囲には、酸素ガス用作用極端子40、毒性ガス用作用極端子41、対極端子42および参照極端子43が、円周方向に互いに離間して並ぶよう配設されている。
電極積層構造体20とケーシング10の下壁部15との間における通気管部16の周囲には、電解液を収容する電解液室Sが形成されている。この電解液室Sは、ケーシング10の周壁部17と後述する支持板30との間の間隙Kを介して、電極積層構造体20が配置された空間に通じている。
【0021】
また、下壁部15の内面(上面)には、エポキシ樹脂接着剤などの接着剤が硬化されてなる封止用樹脂材料層45が、酸素ガス用作用極端子40、毒性ガス用作用極端子41、対極端子42および参照極端子43を覆うよう形成されている。この封止用樹脂材料層45が設けられることにより、電解液室Sが、電解液によって酸素ガス用作用極端子40、毒性ガス用作用極端子41、対極端子42および参照極端子43が腐食されない液密封止構造とされている。
【0022】
蓋部材12における第2凹所19には、当該第2凹所19の形状に適合する円板状のガス供給制限手段50が収容されて配置されている。
このガス供給制限手段50には、厚み方向に伸びるピンホール51が蓋部材12の被検ガス導入口13に連通するよう形成されている。被検ガスがピンホール51を通過することにより、被検ガス導入口13からケーシング10内に導入される被検ガスの供給量が制限される。
【0023】
ピンホール51は、軸方向において均一な大きさの内径を有する。ピンホール51の内径の大きさは、1.0~200μmであることが好ましい。また、ピンホール51の長さは、例えば0.1mm以上である。
【0024】
第1凹所18には、円形の緩衝膜55が収容されて配置されている。
この例の緩衝膜55は、被検ガスが外周面から流入されるガス拡散層56と、ガス不透過性かつ撥水性を有する保護層57とを有する積層体によって構成されており、全体が円板状に形成されている。
【0025】
ガス拡散層56は、蓋部材12の第1凹所18の底面およびガス供給制限手段50の上面に、ピンホール51に連通する貫通孔58aが形成された両面粘着テープ58によって接着されて固定されている。
ガス拡散層56は、例えばPTFEフィルムなどのフッ素樹脂フィルムにより構成することができる。
ガス拡散層56は、空気透過率が0.15~1.5L/dayであるものが好ましく、厚み、外径寸法、空隙率およびその他の具体的構成は、空気透過率が前記数値範囲内となるよう設定することができる。
【0026】
両面粘着テープ58の貫通孔58aの内径の大きさは、例えば0.05~3mmであることが好ましい。また、両面粘着テープ58の厚みは、例えば0.05~1mmであることが好ましい。
このような構成とされていることにより、ガス応答性を大幅に低下させることなく、外部環境に対する十分な耐久性を得ることができ、安定した指示値を確実に得ることができる。
【0027】
保護層57は、ガス拡散層56の上面に両面粘着テープ59によって接着されて固定されている。保護層57は、両面粘着テープ59の代わりに粘着剤よりなる粘着層を用いてガス拡散層56の上面に固定されていてもよい。
保護層57は、例えばPETなどの樹脂フィルムにアルミニウム箔や銀を積層した複合フィルムにより構成することができる。
【0028】
センサ本体1において、電極積層構造体20は、電解液が含浸されたシート状の電解液保持部材23と、電解液保持部材23の上面に互いに離間して配置された、酸素ガスを検出する円形のシート状の酸素ガス用作用極21および毒性ガスを検出する半円形のシート状の毒性ガス用作用極22と、電解液保持部材23の上面に互いに離間して配置された対極26および参照極27を有する電極複合体25とにより構成されている。
【0029】
電解液保持部材23の厚みは、十分な量の電解液を含浸させることができるものでありながら、電解液保持部材23の体積が可及的に小さくなる大きさとされ、具体的には、例えば0.1~2mmである。このような構成とされることにより、高湿度環境下においても信頼性の高いガス検知を行うことができる。
電解液保持部材23としては、例えば、ガラス繊維濾紙、シリカ濾紙、あるいはガラス繊維、PP繊維、PP/PE複合繊維もしくはセラミックス繊維からなる不織布などを用いることができる。
【0030】
酸素ガス用作用極21は、
図3に示すように、疎水性を有するガス透過性フィルム21a上に、電極触媒層21bが形成されて構成されており、電極触媒層21bが電解液保持部材23に接するよう配置されている。また、酸素ガス用作用極21におけるガス透過性フィルム21aは、被検ガス導入口13を塞ぐよう配置されている。また、ガス透過性フィルム21aの上面は、被検ガス導入口13aを取り囲むよう上壁部14の下面(内面)に熱溶着されている。ガス透過性フィルム21aが上壁部14に熱溶着されていることにより、電解液が、ガス透過性フィルム21aと上壁部14との間から漏出することを防止することができる。
【0031】
毒性ガス用作用極22は、
図4に示すように、疎水性を有するガス透過性フィルム22a上に、電極触媒層22bが形成されて構成されており、電極触媒層22bが電解液保持部材23に接するよう配置されている。また、毒性ガス用作用極22におけるガス透過性フィルム22aの各々は、被検ガス導入口13bを塞ぐよう配置されている。また、ガス透過性フィルム22aの上面は、被検ガス導入口13bを取り囲むよう上壁部14の下面(内面)に熱溶着されている。ガス透過性フィルム22aが上壁部14に熱溶着されていることにより、電解液が、ガス透過性フィルム22aと上壁部14との間から漏出することを防止することができる。
【0032】
ガス透過性フィルム21a,22aとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂よりなる多孔質膜を用いることができる。
多孔質膜は、ガーレー数が3~3000秒であるものが好ましい。多孔質膜の厚みおよび空隙率は、ガーレー数が上記数値範囲内の大きさとなるよう設定することができ、例えば、空隙率は10~70%とされ、厚みは0.01~1mmとされることが好ましい。
【0033】
酸素ガス用作用極21における電極触媒層21bは、電解液に対して不溶性の触媒金属の微粒子、当該触媒金属の酸化物の微粒子、当該触媒金属の合金の微粒子、またはこれらの微粒子の混合物などの触媒微粒子によって形成されている。電解液に対して不溶性の触媒金属としては、例えば白金(Pt)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)などを用いることができる。
毒性ガス用作用極22における電極触媒層22bとしては、毒性ガスに対する感度が高い毒性ガス用作用極22が得られる点で、白金黒を用いることが好ましい。
このような電極触媒層21b,22bは、触媒微粒子およびバインダーを含有するペーストを調製し、このペーストを、スクリーン印刷などによってガス透過性フィルム21aの表面に塗布して焼成することにより、形成することができる。
【0034】
酸素ガス用作用極21および毒性ガス用作用極22は、それぞれ作用極用リード部材(図示省略)の一端に電気的に接続されている。酸素ガス用作用極21が接続された作用極用リード部材の他端には、酸素ガス用作用極端子40が電気的に接続されている。また、毒性ガス用作用極22が接続された作用極用リード部材の他端には、毒性ガス用作用極端子41が電気的に接続されている。
作用極用リード部材を構成する材料としては、金(Au)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)などの金属を用いることができる。また、作用極用リード部材としては、樹脂被覆された白金(Pt)線を用いることもできる。これらの中では、酸素ガス用作用極21に接続する作用極用リード部材として、タンタル(Ta)線を用い、毒性ガス用作用極22に接続する作用極用リード部材として、白金(Pt)線を用いることが好ましい。
【0035】
図5にも示すように、電極複合体25は、互いに離間して配置された、それぞれ電極触媒層よりなる対極26および参照極27と、対極26および参照極27を保持する、疎水性多孔質材料よりなる圧力調整膜28とにより構成されている。この電極複合体25における圧力調整膜28は、ケーシング10における通気管部16の上端面に通気孔Vを塞ぐよう配置されている。これにより、ケーシング10の内部空間が、圧力調整膜28および通気孔Vを介して外部の大気に解放された状態となる。また、圧力調整膜28の下面は、通気孔Vを取り囲むよう通気管部16の上端面に熱溶着されている。圧力調整膜28が通気管部16の上端面に熱溶着されていることにより、電解液が、圧力調整膜28と通気管部16の上端面との間から漏出することを防止することができる。
【0036】
対極26を構成する電極触媒層は、電解液に対して不溶性の触媒金属の微粒子、当該触媒金属の酸化物の微粒子、当該触媒金属の合金の微粒子、またはこれらの微粒子の混合物などの触媒微粒子によって形成されている。電解液に対して不溶性の触媒金属としては、例えば白金(Pt)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)などを用いることができる。
参照極27を構成する電極触媒層としては、二酸化イリジウムと白金黒とよりなり、二酸化イリジウムと白金黒との割合が質量比で99:1~80:20である混合触媒よりなるものを用いることが好ましい。このような混合触媒を参照極27を構成する電極触媒層として用いることにより、高温環境下で使用した場合でも、毒性ガスの濃度指示値のゼロ点が上昇することを抑制することができる。
対極26および参照極27を構成する電極触媒層は、触媒微粒子およびバインダーを含有するペーストを調製し、このペーストを、スクリーン印刷などによって圧力調整膜28の表面に塗布して焼成することにより、形成することができる。
また、対極26および参照極27を構成する電極触媒層は、同一の材質のものであっても異なる材質のものであってもよいが、単一の工程で対極26および参照極27の両方を形成することが可能な観点から、同一の材質のものであることが好ましい。
【0037】
圧力調整膜28としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂よりなる多孔質膜を用いることができる。
多孔質膜は、ガーレー数が3~3000秒であるものが好ましい。多孔質膜の厚みおよび空隙率は、ガーレー数が上記数値範囲内の大きさとなるよう設定することができ、例えば、空隙率は10~70%とされ、厚みは0.01~1mmとされることが好ましい。
【0038】
圧力調整膜28は、対極26および参照極27が形成された円形の電極形成部28aと、それぞれ電極形成部28aの外周縁から径方向外方に突出して伸びる3つ以上(図示の例では4つ)の矩形の舌片部28bとにより構成されている。舌片部28bの各々は、電極形成部28aの周方向に等間隔で並ぶよう形成されている。
【0039】
対極26および参照極27は、対極用リード部材(図示省略)および参照極用リード部材(図示省略)の一端に電気的に接続され、対極用リード部材および参照極用リード部材の他端には、それぞれ対極端子42および参照極端子43が電気的に接続されている。
対極用リード部材および参照極用リード部材を構成する材料としては、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)などの金属を用いることができる。
【0040】
通気管部16の上端部分には、電極積層構造体20を支持する支持板30が設けられている。この支持板30は、圧力調整膜28における電極形成部28aを支持する電極形成部支持部31と、この電極形成部支持部31の周囲に形成された、圧力調整膜28における舌片部28bを支持する舌片部支持部35とを有する。
電極形成部支持部31の中央位置には、ケーシング10における通気管部16の外径に適合する内径を有する通気管部用貫通孔32が形成されている。この通気管部用貫通孔32には、通気管部16の先端部分が嵌合されている。
また、舌片部支持部35には、舌片部用貫通孔36が形成されている。そして、圧力調整膜28における舌片部28bの各々は、舌片部用貫通孔36に進入し、当該舌片部28bの先端部が電解液室S内に位置するよう形成されている。このような構成によれば、定電位電解式ガスセンサの姿勢に拘わらず、ケーシング10の内部に対する外気の通気によって、ケーシング10の内部圧力を一定に保持することができる。
【0041】
このセンサ本体1においては、酸素ガス用作用極端子40、毒性ガス用作用極端子41、対極端子42および参照極端子43の各々が、動作制御回路60に電気的に接続されている。
動作制御回路60は、酸素ガス用作用極21および毒性ガス用作用極22の各々が参照極27に対して所定の設定電位に保つよう制御するポテンショスタット回路を含むものである。
図6は、動作制御回路の一例における構成を示す説明図である。この例における動作制御回路60は、3つのオペアンプを有する。
【0042】
第1のオペアンプ61の出力端子には、対極26が電気的に接続されている。第1のオペアンプ61の反転入力端子(-)には、参照極61が電気的に接続されており、非反転入力端子(+)は、基準電圧電源(図示省略)に電気的に接続されている。
【0043】
第2のオペアンプ63の出力端子は、抵抗素子65を介して反転入力端子(-)に電気的に接続されており、出力が負帰還されるよう構成されている。第2のオペアンプ63における反転入力端子(-)には、酸素ガス用作用極21が抵抗素子64を介して電気的に接続されており、非反転入力端子(+)は、電圧電源(図示省略)に電気的に接続されている。
【0044】
第3のオペアンプ66の出力端子は、抵抗素子68を介して反転入力端子(-)に電気的に接続されており、出力が負帰還されるよう構成されている。第3のオペアンプ66における反転入力端子(-)には、毒性ガス用作用極22が抵抗素子67を介して電気的に接続されており、非反転入力端子(+)は、電圧電源(図示省略)に電気的に接続されている。
【0045】
また、動作制御回路60は、対極26および参照極27を電気的に接続するフィードバック抵抗62を有する。このフィードバック抵抗62としては、抵抗値が0.68~44MΩのものを用いることが好ましい。
【0046】
上記の定電位電解式ガスセンサにおいては、酸素ガス用作用極21、毒性ガス用作用極22および参照極27が、動作制御回路60によって、所定の電位に保たれる。参照極27に対する酸素ガス用作用極21の設定電位は例えば-750mVであり、参照極27に対する毒性ガス用作用極22の設定電位は例えば0mVである。
【0047】
そして、ケーシング10の被検ガス導入口13aから導入された被検ガスが、酸素ガス用作用極21におけるガス透過性フィルム21aを透過し、当該被検ガスに含まれる酸素(O2)が電極触媒層21bに接触すると、当該電極触媒層21bにおいて、下記反応式(1)に示す酸素(O2)の還元反応が生じると共に、対極26において、下記反応式(2)に示す水(H2O)の分解反応が生じる。
反応式(1):O2+4H+ +4e- →2H2O
反応式(2):2H2O→O2+4H++4e-
【0048】
一方、被検ガス中に検知対象である毒性ガスが含有されている場合には、ケーシング10の被検ガス導入口13bから導入された被検ガスが、毒性ガス用作用極22におけるガス透過性フィルム22aを透過して電極触媒層22bに接触すると、当該電極触媒層22bにおいて酸化反応が生じると共に、対極26において還元反応が生じる。
【0049】
例えば検知対象である毒性ガスが一酸化炭素(CO)である場合には、毒性ガス用作用極22における電極触媒層22bにおいて、下記反応式(3)に示す酸化反応が生じると共に、対極26において、下記反応式(4)に示す還元反応が生じる。
反応式(3):CO+H2O→CO2+2H++2e-
反応式(4):1/2O2+2H++2e- →H2O
【0050】
また、例えば検知対象である毒性ガスが硫化水素(H2 S)である場合には、毒性ガス用作用極22における電極触媒層22bにおいて、下記反応式(5)に示す酸化反応が生じ、一方、対極26において、下記反応式(6)に示す還元反応が生じる。
反応式(5):H2S+4H2O→H2SO4+8H++8e-
反応式(6):2O2+8H++8e-→4H2O
【0051】
このとき、酸素ガス用作用極21および毒性ガス用作用極22と対極26との間に生じる電流の値は、検知対象である酸素ガスや毒性ガスの濃度と相関関係にあるため、酸素ガス用作用極21および毒性ガス用作用極22と対極26との間に流れる電流を測定することによって、被検ガス中の検知対象ガスの濃度を測定することができる。
また、対極26においては、水の電気分解が生じることによって酸素(O2)が発生するが、圧力調整膜28によってケーシング10の内部の圧力が調整される。
【0052】
以上において、被検ガス中に一酸化窒素(NO)や水素ガス(H2 )などの雑ガスが存在すると、毒性ガス用作用極22および対極26において、各雑ガスによる酸化還元反応が生じるおそれがある。例えば被検ガス中に一酸化窒素(NO)が存在すると、毒性ガス用作用極22において、下記反応式(7)に示す酸化反応が生じ、被検ガス中に水素ガス(H2 )が存在すると、毒性ガス用作用極22において、下記反応式(8)に示す酸化反応が生じる。
反応式(7):NO+H2O→NO2+2H++2e-
反応式(8):H2 →2H++2e-
【0053】
毒性ガス用作用極22において、上記の反応式(7)および反応式(8)に係る酸化反応を抑制するためには、毒性ガス用作用極22に電圧を印加することによって、毒性ガス用作用極22の設定電位を上げることが必要である。然るに、動作制御回路60には、対極26および参照極27を電気的に接続するフィードバック抵抗62が設けられているため、毒性ガス用作用極22の設定電位が0であっても、当該毒性ガス用作用極22において、上記の反応式(7)および反応式(8)に係る酸化反応が抑制される。
【0054】
検知対象毒性ガスが一酸化炭素である場合を例に挙げて具体的に説明すると、第1のオペアンプ61の非反転入力端子(+)の電位を例えば1.2Vに設定すると、第1のオペアンプ61の反転入力端子(-)は、非反転入力端子(+)との仮想短絡により非反転入力端子(+)の電位と同電位である1.2Vとなる。第1のオペアンプ61の反転入力端子(-)には参照極27が電気的に接続されていることから、参照極27の電位は1.2Vであり、この電位1.2Vを基準にして、酸素ガス用作用極21には、例えば0.45Vの電圧(参照極27に対する酸素ガス用作用極21の設定電位=0.45V-1.2V=-0.75V=-750mV)が印加される。そして、大気中の酸素ガス(濃度20.9%)が酸素ガス用作用極21に接触している状態では、対極26において上記反応式(2)の反応が生じることから、第1のオペアンプ61の出力端子に接続された対極26には、例えば1.6Vの高電圧(参照極27に対する対極26の設定電位=1.6V-1.2V=0.4V)が印加される。このとき、対極26と参照極27とがフィードバック抵抗62を介して電気的に接続されているため、参照極27の電位は、対極26の高い電位に持ち上げられて上昇する。参照極27に対する毒性ガス用作用極22の設定電位は0Vであるため、参照極27の電位の上昇に伴って、毒性ガス用作用極22の電位が上昇する。その結果、毒性ガス用作用極22において、上記の反応式(7)および反応式(8)に係る酸化反応が抑制される。
【0055】
また、被検ガス中に高濃度の毒性ガスや雑ガスが含まれている場合に、これらのガスが対極26に連続的に接触すると、対極26の電位が低下するおそれがある。然るに、参照極27がフィードバック抵抗62を介して対極26に電気的に接続されているため、対極26の電位が低下することを抑制することができる。
【0056】
以上のように、上記の定電位電解式ガスセンサによれば、参照極27が、動作制御回路60におけるフィードバック抵抗62を介して対極26に電気的に接続されているため、毒性ガス用作用極22の設定電位が0であっても、当該毒性ガス用作用極22の電位が上昇する結果、被検ガス中の雑ガスによる干渉を抑制することができる。
【0057】
以上、本発明の定電位電解式ガスセンサの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることができる。
例えば動作制御回路60において、対極26および参照極を電気的に接続するフィードバック抵抗62の代わりに、
図7に示すように、対極26の印加電圧と同等の電圧を印加する電位調整電源69と、この電位調整電源69および参照極27を電気的に接続するフィードバック抵抗70とが設けられていてもよい。このような構成によれば、参照極27が、フィードバック抵抗70を介して対極26の印加電圧と同等の電圧を印加する電位調整電源69に電気的に接続されているため、参照極27の電位は、電位調整電源69の高電位に持ち上げられて上昇し、参照極27の電位の上昇に伴って、毒性ガス用作用極22の電位が上昇する。従って、毒性ガス用作用極22の設定電位が0であっても、被検ガス中の雑ガスによる干渉を抑制することができる。
また、電解液保持部材の上面に、それぞれ異なる種類の毒性ガスを検出する複数の毒性ガス用作用極を配置することができる。
【実施例0058】
〈実施例1〉
図1および
図6に示す構成に従い、酸素ガスおよび一酸化炭素を検知する下記の仕様の定電位電解式ガスセンサを作製した。
電極積層構造体(20)において、酸素ガス用作用極(21)は、直径3mmの円形(面積が7mm
2)で、電極触媒層(21b)の材質が白金黒である。毒性ガス用作用極(22)は、直径10mmの半円形(面積が約30mm
2)で、電極触媒層(22b)の材質が白金黒である。また、酸素ガス用作用極(21)と毒性ガス用作用極(22)との離間距離は1mmである。電解液保持部材(23)は、厚みが0.3mmのガラス繊維濾紙よりなる。対極(26)は、面積が約7mm
2で、材質が白金黒5質量%と二酸化イリジウム(IrO
2 )95質量%との混合物である。参照極(27)は、面積が13mm
2で、電極触媒層の材質が、白金黒5質量%と二酸化イリジウム(IrO
2 )95質量%との混合物である。また、対極(26)と参照極(27)との離間距離は1.2mmである。
また、ガス供給制限手段(50)において、ピンホール(51)は、内径が20μmで、長さが0.7mmである。
【0059】
また、動作制御回路(60)において、フィードバック抵抗(62)の抵抗値は22MΩ、第2のオペアンプ(63)の出力端子と反転入力端子(-)との間の抵抗素子(65)の抵抗値は3kΩ、第2のオペアンプ(63)の反転入力端子(-)と酸素ガス用作用極(21)との間の抵抗素子(64)の抵抗値は220Ω、第3のオペアンプ(66)の出力端子と反転入力端子(-)との間の抵抗素子(68)の抵抗値は10kΩ、第3のオペアンプ(66)の反転入力端子(-)と毒性ガス用作用極(22)との間の抵抗素子(67)の抵抗値は100Ωである。
【0060】
〈比較例1〉
動作制御回路において、フィードバック抵抗を設けなかったこと以外は、実施例1と同様の構成の定電位電解式ガスセンサを作製した。
【0061】
〈参考例1〉
動作制御回路において、参照極における電極触媒層の材質を二酸化イリジウム(IrO2 )に変更したこと以外は、実施例1と同様の構成の定電位電解式ガスセンサを作製した。
【0062】
[試験]
実施例1、比較例1および参考例1に係る定電位電解式ガスセンサについて、第1のオペアンプの非反転入力端子(+)の電位が1.2V、酸素ガス用作用極の印加電圧が0.45V(参照極に対する酸素ガス用作用極21の設定電位が-750mV)、参照極に対する毒性ガス用作用極の設定電位が0Vとなる条件で作動させ、以下の試験1および試験2を行った。
[試験1]
空気雰囲気の試験空間内において、実施例1および比較例1に係る定電位電解式ガスセンサの各々を作動した状態で、試験空間に100ppmの一酸化炭素を含む空気を60秒間供給した後、試験空間に空気を60秒間供給し、さらに試験空間に500ppmの水素ガスを含む空気を60秒間供給した後、試験空間に空気を供給した。そして、この間における一酸化炭素の濃度指示値の変化を調べた。その結果を、実施例1については
図8に、比較例1については
図9にそれぞれ示す。
[試験2]
空気雰囲気の試験空間内において、実施例1および参考例1に係る定電位電解式ガスセンサの各々を作動した状態で、試験空間内の温度を-20℃から60℃まで上昇させた後、60℃から-20℃まで降下させた。そして、この間における毒性ガス用作用極に係る出力値(電流値)の変化を調べた。結果を
図10に示す。
【0063】
図8および
図9の結果から明らかなように、実施例1に係る定電位電解式ガスセンサによれば、毒性ガス用作用極の設定電位が0であっても、被検ガス中の雑ガスによる干渉が十分に抑制されることが確認された。
また、
図10の結果から明らかなように、実施例1に係る定電位電解式ガスセンサによれば、参照極における電極触媒層が、白金黒と二酸化イリジウム(IrO
2 )とを特定の割合で含有する混合物よりなるため、環境温度が上昇しても毒性ガスの濃度指示値のゼロ点が上昇することが抑制されることが確認された。