(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080996
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20220524BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220524BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220524BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220524BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20220524BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H05B33/14 A
G09F9/30 309
G09F9/30 348A
H01L29/78 618B
H01L29/78 619Z
H01L29/78 623Z
H05B33/04
H01L27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192247
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞名垣 暢人
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107EE04
3K107EE46
3K107EE48
3K107EE49
3K107FF15
5C094AA37
5C094AA42
5C094BA03
5C094BA27
5C094DA07
5C094FB01
5C094FB02
5C094FB14
5C094FB15
5F110AA14
5F110BB01
5F110CC01
5F110DD11
5F110GG01
5F110NN03
5F110NN05
5F110NN12
5F110NN14
5F110NN15
5F110NN22
5F110NN27
5F110NN34
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体への還元剤の拡散低減を目的とする。
【解決手段】表示装置は、酸化物半導体を使用した薄膜トランジスタ26と、薄膜トランジスタ26によって制御される表示素子46と、水素をトラップ可能なダングリングボンドが存在する材料からなる少なくとも1層のトラップ層48と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体を使用した薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタによって制御される表示素子と、
水素をトラップ可能なダングリングボンドが存在する材料からなる少なくとも1層のトラップ層と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置において、
前記材料は、アモルファスシリコンであることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載された表示装置において、
前記アモルファスシリコンには、ボロン、リン及びカーボンのいずれかがドープされていることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記表示素子を封止する封止膜をさらに有し、
前記少なくとも1層のトラップ層は、前記封止膜と前記薄膜トランジスタの間に位置することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載された表示装置において、
前記封止膜は、有機膜及びシリコン窒化膜の少なくとも一方を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記薄膜トランジスタを覆う無機膜をさらに有し、
前記少なくとも1層のトラップ層は、前記無機膜の上にある第1トラップ層を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載された表示装置において、
前記無機膜は、積層された一対の無機膜の一方であり、
前記第1トラップ層は、前記一対の無機膜の間に介在することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記薄膜トランジスタを覆う樹脂層をさらに有し、
前記少なくとも1層のトラップ層は、前記樹脂層の上にある第2トラップ層を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載された表示装置において、
前記第2トラップ層は、前記表示素子とは非接触であることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記表示素子に含まれる画素電極の端部を覆う絶縁層をさらに有し、
前記少なくとも1層のトラップ層は、前記絶縁層の上にある第3トラップ層を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載された表示装置において、
前記第3トラップ層は、前記表示素子に含まれる発光層とは非接触であることを特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項10に記載された表示装置において、
前記第3トラップ層の膜厚は、前記第1トラップ層及び前記第2トラップ層のそれぞれの膜厚よりも小さいことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温ポリシリコンを使用した薄膜トランジスタ(TFT)は、駆動能力が高く、キャリア移動度が高いが、オフ電流が高く、リーク電流の抑制が困難である。そこで、酸化物半導体を使用したTFTが開発されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-100521号公報
【特許文献2】特開2012-104639号公報
【特許文献3】特開2010-165922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化物半導体は、水素などの還元剤が拡散することにより、脱酸素が進み、電圧電流特性が変化する。その結果、特性が仕様の範囲を超えて不均一になり、歩留まりが低下する。特許文献3には、保護膜が開示されているが、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜は、還元剤の拡散を防止する機能が不十分である。
【0005】
本発明は、酸化物半導体への還元剤の拡散低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表示装置は、酸化物半導体を使用した薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタによって制御される表示素子と、水素をトラップ可能なダングリングボンドが存在する材料からなる少なくとも1層のトラップ層と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、トラップ層によって、酸化物半導体への還元剤の拡散を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図2に示す表示装置のIII-III線断面の概略図である。
【
図4】
図1に示す表示装置のIV-IV線断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0011】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0012】
図1は、実施形態に係る表示装置の平面図である。なお、表示装置は、実際には、折り曲げて使用する。したがって、
図1は、表示装置を折り曲げる前の展開図である。
図2は、表示装置の使用状態を示す概略図である。
【0013】
表示装置は、例えば、有機エレクトロルミネセンス表示装置である。表示装置は、画像が表示される表示領域DAを有する。表示領域DAでは、例えば、赤、緑及び青からなる複数色の単位画素(サブピクセル)を組み合わせて、フルカラーの画素を形成し、フルカラーの画像が表示される。表示装置は、ディスプレイ100を含む。
【0014】
ディスプレイ100には、周辺領域PAで、第1フレキシブルプリント基板FP1が接続されている。第1フレキシブルプリント基板FP1には、画像を表示するための素子を駆動するための集積回路チップCPが搭載されている。さらに、第1フレキシブルプリント基板FP1には第2フレキシブルプリント基板FP2が接続されている。
【0015】
図3は、
図2に示す表示装置のIII-III線断面の概略図である。屈曲の内側にはスペーサ102が配置されて、ディスプレイ100の曲がりすぎを防いでいる。ディスプレイ100は、可撓性を有し、表示領域DAの外側(周辺領域PA)で折り曲げられている。
【0016】
図4は、
図1に示す表示装置のIV-IV線断面拡大図である。第1基板10には、不純物に対するバリアとなるアンダーコート12が形成され、その上に半導体層14が形成されている。半導体層14にソース電極16及びドレイン電極18が電気的に接続し、半導体層14を覆って第1無機膜20(例えばゲート絶縁膜)が形成されている。第1無機膜20の上にはゲート電極22が形成され、ゲート電極22を覆って第2無機膜24(例えば層間絶縁膜)が形成されている。ソース電極16及びドレイン電極18は、第1無機膜20及び第2無機膜24を貫通している。半導体層14、ソース電極16、ドレイン電極18及びゲート電極22によって薄膜トランジスタ26が構成される。薄膜トランジスタ26を覆うように第3無機膜28(例えばパッシベーション膜)が設けられている。
【0017】
薄膜トランジスタ26は、半導体層14に酸化物半導体を使用している。酸化物半導体は、例えばインジウム・ガリウム・亜鉛・酸素(IGZO)である。このような薄膜トランジスタ26は、オフ電流が低い特性を有する。薄膜トランジスタ26は、第1無機膜20、第2無機膜24及び第3無機膜28に覆われている。
【0018】
第3無機膜28の上には、樹脂層30(例えば平坦化層)が設けられている。樹脂層30の上には、複数のサブ画素それぞれに対応するように構成された複数の画素電極32(例えば陽極)が設けられている。樹脂層30は、少なくとも画素電極32が設けられる面が平坦になるように形成される。画素電極32は、樹脂層30及び第3無機膜28を貫通するコンタクトホール34によって、半導体層14上のソース電極16及びドレイン電極18の一方に電気的に接続している。樹脂層30は、薄膜トランジスタ26を覆う。
【0019】
樹脂層30及び画素電極32上に、絶縁層36が形成されている。絶縁層36は、画素電極32の端部(周縁部)を覆い、画素電極32の一部(例えば中央部)を露出させるように形成されている。画素電極32は、絶縁層36からの露出領域を有する。絶縁層36によって、画素電極32の一部を囲むバンクが形成される。画素電極32には、キャリア注入輸送層である正孔注入輸送層38が設けられている。正孔注入輸送層38は、複数の画素電極32に連続的に載るように形成されている。
【0020】
複数の画素電極32の上方(正孔注入輸送層38の上)には、それぞれに対応する複数の発光層40が配置されている。発光層40には、他のキャリア注入輸送層である電子注入輸送層42が設けられている。電子注入輸送層42は、複数の発光層40に(複数の画素電極32の上方に)、連続的に載るように形成されている。複数の発光層40の上方(電子注入輸送層42の上)に共通電極44(例えば陰極)が配置されている。共通電極44は、バンクとなる絶縁層36の上方に載るように形成する。発光層40は、画素電極32及び共通電極44に挟まれ、両者間を流れる電流によって輝度が制御されて発光する。表示装置は、薄膜トランジスタ26によって制御される表示素子46を有する。表示素子46は画素電極32及び発光層40を含む。
【0021】
表示装置は、水素をトラップ可能なダングリングボンドが存在する材料からなる少なくとも1層のトラップ層48を有する。材料は、例えばアモルファスシリコンである。アモルファスシリコンには、ボロン、リン及びカーボンのいずれかがドープされていても良い。
【0022】
第2無機膜24の上には第1トラップ層48Aがある。第1トラップ層48Aは、積層された第2無機膜24及び第3無機層の間に介在する。樹脂層30の上には第2トラップ層48Bがある。第2トラップ層48Bは、表示素子46(例えば画素電極32)とは非接触である。絶縁層36の上には第3トラップ層48Cがある。第3トラップ層48Cは、エレクトロルミネッセンス層(少なくとも発光層40)とは非接触である。本実施形態によれば、トラップ層48によって、酸化物半導体への還元剤の拡散を低減することができる。
【0023】
第1トラップ層48A乃至第3トラップ層48Cの形成条件としては、G6サイズのガラス基板を成膜対象とし、個体ソースのSiターゲットを用い、投入電力10~15kW、圧力3Paとした。不純物としてボロンを選択し、同時スパッタリングにて膜中に添加した。
【0024】
樹脂層30より下層に設けられる第1トラップ層48A、及び絶縁層36の下に設けられる第2トラップ層48Bの膜厚は、50nm乃至100nm程度が好ましいが、それより厚く形成されたとしても、樹脂層30や絶縁層36によって被覆、平坦化されるため問題無い。一方、絶縁層36の上に設けられる第3トラップ層48Cについては、後に形成される共通電極44が第3トラップ層48Cの端部に生ずる段差によって離断しないよう、正孔注入輸送層38や電子注入輸送層42によってある程度被覆される程度、具体的には30nm乃至50nm程度と、第1トラップ層48Aや第2トラップ層48Bよりも薄く形成されることが好ましい。
【0025】
このようにして形成される第1トラップ層48A乃至第3トラップ層48Cは、近傍の層から脱離する水素をトラップし、酸化物半導体のチャネル領域への水素侵入を好適に抑制することができる。
【0026】
第1トラップ層48A乃至第3トラップ層48Cは、他の配線、電極等と短絡しないようにパターニングされ、島状に形成される。その水素吸収効果は高く、1×1019~1×1020/cm3、あるいはそれ以上である。ただし、第1トラップ層48A乃至第3トラップ層48Cにおける水素含有量が1×1022/cm3を上回ると、膜の脆化が生ずる可能性があるため、前述の膜厚と絡めて、ある程度トラップ層自体の体積を確保できるように、パターン面積は大きいことが好ましい。
【0027】
表示装置は、表示素子46を封止する封止膜50を有する。表示素子46は、封止膜50によって覆われることで封止されて、水分から遮断される。封止膜50と薄膜トランジスタ26の間に、少なくとも1層のトラップ層48が位置する。封止膜50は、有機膜52及びシリコン窒化膜54の少なくとも一方を含む。封止膜50には、図示しない粘着層を介して、第2基板56が貼り付けられている。
【0028】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 第1基板、12 アンダーコート、14 半導体層、16 ソース電極、18 ドレイン電極、20 第1無機膜、22 ゲート電極、24 第2無機膜、26 薄膜トランジスタ、28 第3無機膜、30 樹脂層、32 画素電極、34 コンタクトホール、36 絶縁層、38 正孔注入輸送層、40 発光層、42 電子注入輸送層、44 共通電極、46 表示素子、48 トラップ層、48A 第1トラップ層、48B 第2トラップ層、48C 第3トラップ層、50 封止膜、52 有機膜、54 シリコン窒化膜、56 第2基板、100 ディスプレイ、102 スペーサ、CP 集積回路チップ、DA 表示領域、FP1 第1フレキシブルプリント基板、FP2 第2フレキシブルプリント基板、PA 周辺領域。