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特開2022-81025タイヤ用モールド、タイヤの製造方法及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081025
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】タイヤ用モールド、タイヤの製造方法及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192298
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 怜奈
(72)【発明者】
【氏名】早苗 隆平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA18
3D131BC13
3D131BC33
3D131EA08V
3D131EA08X
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131LA28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接地面形状及び接地圧分布の適正化を図ることが可能なタイヤ用モールドを提供する。
【解決手段】モールドは、トレッド面を形づける、トレッド形成面64を備える。トレッド形成面64は、周方向溝を形成する凸条74と、陸面を形成する陸面形成部76とを備える。軸方向において凸条74を挟んで並ぶ、3面の陸面形成部76のうち、2本の凸条74の間に位置する陸面形成部76が湾曲陸面形成部76Bである。湾曲陸面形成部76Bの輪郭が1又は複数の円弧で表される。凸条74の基準側面80aと湾曲陸面形成部76Bとの境界が基準境界点BBmであり、基準境界点BBmがトレッド形成面64の基準形成面FBLよりも内側に位置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備え、少なくとも2本の周方向溝を前記トレッドに刻むことで、少なくとも3本の陸部が前記トレッドに構成され、前記トレッド面が、前記少なくとも2本の周方向溝と、前記少なくとも3本の陸部の外面である、少なくとも3面の陸面とを含む、タイヤの製造に用いられるモールドであって、
前記トレッド面を形づける、トレッド形成面を備え、
前記トレッド形成面が、前記周方向溝を形成する凸条と、前記陸面を形成する陸面形成部とを備え、
少なくとも一の円弧で表される輪郭を有し、軸方向において前記凸条を挟んで並ぶ、3面の前記陸面形成部と接する面が、前記トレッド形成面の基準形成面であり、
3面の前記陸面形成部のうち、2本の前記凸条の間に位置する陸面形成部が湾曲陸面形成部であり、
前記凸条が、前記陸面形成部側の側面である基準側面と、前記基準側面の裏側に位置する側面である裏側面とを備え、
前記湾曲陸面形成部と前記基準形成面との接点が基準接点であり、
前記基準側面と前記湾曲陸面形成部との境界が基準境界点であり、
前記基準境界点から前記基準形成面に向かって延びる前記基準側面の仮想線と、前記基準形成面との交点が基準仮想交点であり、
前記湾曲陸面形成部の輪郭が1又は複数の円弧で表され、
前記基準境界点が前記基準形成面よりも内側に位置し、
一方の凸条が小さな断面積を有し、他方の凸条が大きな断面積を有するとき、
一方の凸条側における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離が短く、他方の凸条側における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離が長い、
タイヤ用モールド。
【請求項2】
一方の前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離をXw1m、一方の前記基準仮想交点から他方の前記基準仮想交点までの距離をWcm、一方の前記凸条の断面積をSam、及び他方の前記凸条の断面積をSbmとしたとき、下記式(1)を満たすように、一方の前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離Xw1mが設定される、
請求項1に記載のタイヤ用モールド。
Sam/(Sam+Sbm)×100-10≦Xw1m/Wcm×100≦Sam/(Sam+Sbm)×100+10・・・(1)
【請求項3】
前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離の、前記凸条の断面積に対する比が、0.0008以上0.0040以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤ用モールド。
【請求項4】
前記湾曲陸面形成部の輪郭のうち、前記基準接点から前記基準境界点までの輪郭が、前記基準境界点を通り前記基準接点において前記基準形成面に接する円弧で表される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ用モールド。
【請求項5】
前記トレッド形成面に含まれる陸面形成部のうち、軸方向において外側に位置する陸面形成部がショルダー陸面形成部であり、
3面の前記陸面形成部のうち、前記湾曲陸面形成部の隣に位置する陸面形成部が前記ショルダー陸面形成部であり、
前記ショルダー陸面形成部と前記湾曲陸面形成部との間に位置する凸条の、前記湾曲陸面形成部側の側面が前記基準側面であり、前記ショルダー側陸面形成部側の側面が前記裏側面であり、
前記ショルダー陸面形成部の前記基準形成面との接点がショルダー基準接点であり、
前記裏側面と、前記ショルダー陸面形成部との境界がショルダー基準境界点であり、
前記ショルダー基準境界点から前記基準形成面に向かって延びる前記裏側面の仮想線と前記基準形成面との交点がショルダー基準仮想交点であり、
前記裏側面における前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー基準境界点までの距離が、前記基準側面における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離と同じであり、
前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー基準接点までの距離が、前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離と同じであり、
前記ショルダー陸面形成部の輪郭のうち、前記ショルダー基準接点から前記ショルダー基準境界点までの輪郭が、前記ショルダー基準境界点を通り前記ショルダー基準接点において前記基準形成面に接する円弧で表される、
請求項4に記載のタイヤ用モールド。
【請求項6】
前記基準側面の仮想線上であって前記基準境界点と前記基準仮想交点との間の任意の位置が、縦点であり、
前記縦点を通り、前記基準接点において前記基準形成面に接する円弧が、接点側円弧であり、
前記基準形成面上であって前記基準接点と前記基準仮想交点との間の任意の位置が、横点であり、
前記横点を通る前記基準形成面の法線と前記接点側円弧との交点が中間境界点であり、
前記基準境界点を通り、前記中間境界点において前記接点側円弧に接する円弧が、境界側円弧であり、
前記湾曲陸面形成部の輪郭のうち、前記基準接点から前記中間境界点までの輪郭が前記接点側円弧で表され、前記中間境界点から前記基準境界点までの輪郭が前記境界側円弧で表される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ用モールド。
【請求項7】
前記基準仮想交点から前記縦点までの距離の、前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離に対する比が0.40以上0.60以下であり、
前記基準仮想交点から前記横点までの距離の、前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離に対する比が0.40以上0.60以下である、
請求項6に記載のタイヤ用モールド。
【請求項8】
前記トレッド形成面に含まれる陸面形成部のうち、軸方向において外側に位置する陸面形成部がショルダー陸面形成部であり、
3面の前記陸面形成部のうち、前記湾曲陸面形成部の隣に位置する陸面形成部が前記ショルダー陸面形成部であり、
前記ショルダー陸面形成部と前記湾曲陸面形成部との間に位置する凸条の、前記湾曲陸面形成部側の側面が前記基準側面であり、前記ショルダー側陸面形成部側の側面が前記裏側面であり、
前記ショルダー陸面形成部の前記基準形成面との接点がショルダー基準接点であり、
前記裏側面と、前記ショルダー陸面形成部との境界がショルダー基準境界点であり、
前記ショルダー基準境界点から前記基準形成面に向かって延びる前記裏側面の仮想線と前記基準形成面との交点がショルダー基準仮想交点であり、
前記裏側面における前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー基準境界点までの距離が、前記基準側面における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離と同じであり、
前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー基準接点までの距離が、前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離と同じであり、
前記裏側面の仮想線上であって前記ショルダー基準境界点と前記ショルダー基準仮想交点との間の任意の位置がショルダー縦点であり、
前記ショルダー縦点を通り、前記ショルダー基準接点において前記基準形成面に接する円弧が、ショルダー接点側円弧であり、
前記基準形成面上であって前記ショルダー基準接点と前記ショルダー基準仮想交点との間の任意の位置がショルダー横点であり、
前記ショルダー横点を通る前記基準形成面の法線と、前記ショルダー接点側円弧との交点がショルダー中間境界点であり、
前記ショルダー基準境界点を通り、前記ショルダー中間境界点において前記ショルダー境界側円弧に接する円弧が、ショルダー境界側円弧であり、
前記ショルダー陸面形成部の輪郭のうち、前記ショルダー基準接点から前記ショルダー中間境界点までの輪郭が前記ショルダー接点側円弧で表され、前記ショルダー中間境界点から前記ショルダー基準境界点までの輪郭が前記ショルダー境界側円弧で表され、
前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー縦点までの距離が、前記基準仮想交点から前記縦点までの距離と同じであり、
前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー横点までの距離が、前記基準仮想交点から前記横点までの距離と同じである、
請求項6又は7に記載のタイヤ用モールド。
【請求項9】
前記トレッドが前記トレッド面を含むキャップ部を備え、
前記キャップ部のための未加硫ゴムのムーニー粘度が80以上である、
請求項1から8のいずれか一項に記載のタイヤ用モールド。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のタイヤ用モールドを用いて生タイヤを加圧及び加熱する工程を含む、
タイヤの製造方法。
【請求項11】
路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備え、少なくとも2本の周方向溝を前記トレッドに刻むことで、少なくとも3本の陸部が前記トレッドに構成され、前記トレッド面が、前記少なくとも2本の周方向溝と、前記少なくとも3本の陸部の外面である、少なくとも3面の陸面とを含む、タイヤであって、
少なくとも一の円弧で表される輪郭を有し、軸方向において前記周方向溝を挟んで並ぶ、3面の前記陸面と接する面が、前記トレッド面の基準面であり、
3面の前記陸面のうち、2本の前記周方向溝の間に位置する陸面が湾曲陸面であり、
前記周方向溝が、前記湾曲陸面側の壁である基準壁と、前記基準壁に対向する壁である対向壁とを備え、
前記湾曲陸面と前記基準面との接点が基準接点であり、
前記基準壁と前記湾曲陸面との境界が基準境界点であり、
前記基準境界点から前記基準面に向かって延びる前記基準壁の仮想線と、前記基準面との交点が基準仮想交点であり、
前記湾曲陸面の輪郭が1又は複数の円弧で表され、
前記基準境界点が前記基準面よりも内側に位置し、
一方の周方向溝が小さな溝断面積を有し、他方の周方向溝が大きな溝断面積を有するとき、
一方の周方向溝側における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離が短く、他方の周方向溝側における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離が長い、
タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用モールド、タイヤの製造方法及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
未架橋状態のタイヤ(以下、生タイヤ)をモールド内で加圧及び加熱することでタイヤは得られる。タイヤのトレッドには、軸方向に並列した複数の周方向溝が刻まれ、陸部が構成される。モールドのトレッド形成面には、周方向溝を形成するために、この周方向溝に対応する凸条が設けられる。生タイヤをこの凸条に押し付けることで、トレッドに周方向溝が形成される。
【0003】
タイヤは、トレッドの径方向内側に、例えば、並列した多数のコードを含むベルトを備える。生タイヤを凸条に押し付けることで、ベルトが波打つことがないよう、タイヤの製造では、様々な対策が施されている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-61602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生タイヤに凸条を押し付けると、凸条によって押し付けられた未加硫状態のゴム組成物(以下、未加硫ゴム)の一部は陸部を形成する部分に流れ込む。このとき、未加硫ゴムが流れにくいと、トレッドの内面形状に乱れが生じ、ベルトに波打ちが生じることが懸念される。特に、9mm以上の溝幅を有し、45mm以上の大きな溝断面積を有する周方向溝をトレッドに形成する場合においては、凸条が押し付ける未加硫ゴムのボリュームが大きいため、この凸条に押し退けられた未加硫ゴムが、陸部を形成する部分に流れ込む未加硫ゴム全体の流れを乱すことが懸念される。この場合、モールドの陸部を形成する部分の形状が反映された陸部を形成するのは難しく、中央部分において薄く、縁の部分において厚い陸部、言い換えれば、内向きに凸な形状で構成された陸面を有する陸部が形成される恐れがある。
【0006】
図9には、凸条に押し退けられた未加硫ゴムの流れを考慮せずに製造した、従来タイヤ(サイズ=205/55R16)の接地面形状が示される。この図9には、接地面に含まれる各陸部Lの輪郭が示されている。図10には、このタイヤの接地圧分布が示される。図10において、右側がショルダー陸部Lsの接地圧分布であり、左側がミドル陸部Lmの接地圧分布である。
【0007】
図9に示されるように、接地面形状において、各陸部Lの周方向外縁は内向きに凸な形状を呈している。図10に示されるように、各陸部Lの縁において、接地圧が局所的に高まることが確認されている。具体的には、ミドル陸部Lm内で200kPa程度の接地圧差、ショルダー陸部Ls内で250kPa程度の接地圧差が確認されている。さらにこのタイヤにおいては、トレッドの内面形状に乱れが生じていることも確認されている。
【0008】
モールド内での未加硫ゴムの流れは、タイヤの接地面形状及び接地圧分布に影響する。言い換えれば、モールド内での未加硫ゴムの流れをコントロールすることで、タイヤをより十分に路面と接触させることができ、操縦安定性のさらなる向上を図れる見込みがある。この場合、局所的な接地圧の高まりも抑えられるので、耐摩耗性の向上も図れる見込みがある。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、接地面形状及び接地圧分布の適正化を図ることができる、タイヤ用モールド及びタイヤの製造方法を提供するとともに、接地面形状及び接地圧分布の適正化が図られた、タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るタイヤ用モールドは、路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備え、少なくとも2本の周方向溝を前記トレッドに刻むことで、少なくとも3本の陸部が前記トレッドに構成され、前記トレッド面が、前記少なくとも2本の周方向溝と、前記少なくとも3本の陸部の外面である、少なくとも3面の陸面とを含む、タイヤの製造に用いられるモールドである。このタイヤ用モールドは、前記トレッド面を形づける、トレッド形成面を備える。前記トレッド形成面は、前記周方向溝を形成する凸条と、前記陸面を形成する陸面形成部とを備える。少なくとも一の円弧で表される輪郭を有し、軸方向において前記凸条を挟んで並ぶ、3面の前記陸面形成部と接する面が、前記トレッド形成面の基準形成面である。3面の前記陸面形成部のうち、2本の前記凸条の間に位置する陸面形成部が湾曲陸面形成部である。前記凸条は、前記陸面形成部側の側面である基準側面と、前記基準側面の裏側に位置する側面である裏側面とを備える。前記湾曲陸面形成部と前記基準形成面との接点が基準接点である。前記基準側面と前記湾曲陸面形成部との境界が基準境界点である。前記基準境界点から前記基準形成面に向かって延びる前記基準側面の仮想線と、前記基準形成面との交点が基準仮想交点である。前記湾曲陸面形成部の輪郭が1又は複数の円弧で表される。前記基準境界点が前記基準形成面よりも内側に位置する。一方の凸条が小さな断面積を有し、他方の凸条が大きな断面積を有するとき、一方の凸条側における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離が短く、他方の凸条側における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離が長い。
【0011】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、一方の前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離をXw1m、一方の前記基準仮想交点から他方の前記基準仮想交点までの距離をWcm、一方の前記凸条の断面積をSam、及び他方の前記凸条の断面積をSbmとしたとき、下記式(1)を満たすように、一方の前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離Xw1mが設定される。
Sam/(Sam+Sbm)×100-10≦Xw1m/Wcm×100≦Sam/(Sam+Sbm)×100+10・・・(1)
【0012】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離の、前記凸条の断面積に対する比が、0.0008以上0.0040以下である。
【0013】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、前記湾曲陸面形成部の輪郭のうち、前記基準接点から前記基準境界点までの輪郭は、前記基準境界点を通り前記基準接点において前記基準形成面に接する円弧で表される。
【0014】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、前記トレッド形成面に含まれる陸面形成部のうち、軸方向において外側に位置する陸面形成部がショルダー陸面形成部である。3面の前記陸面形成部のうち、前記湾曲陸面形成部の隣に位置する陸面形成部が前記ショルダー陸面形成部である。前記ショルダー陸面形成部と前記湾曲陸面形成部との間に位置する凸条の、前記湾曲陸面形成部側の側面が前記基準側面であり、前記ショルダー側陸面形成部側の側面が前記裏側面である。前記ショルダー陸面形成部の前記基準形成面との接点がショルダー基準接点である。前記裏側面と、前記ショルダー陸面形成部との境界がショルダー基準境界点である。前記ショルダー基準境界点から前記基準形成面に向かって延びる前記裏側面の仮想線と前記基準形成面との交点がショルダー基準仮想交点である。前記裏側面における前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー基準境界点までの距離が、前記基準側面における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離と同じである。前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー基準接点までの距離が、前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離と同じである。前記ショルダー陸面形成部の輪郭のうち、前記ショルダー基準接点から前記ショルダー基準境界点までの輪郭が、前記ショルダー基準境界点を通り前記ショルダー基準接点において前記基準形成面に接する円弧で表される。
【0015】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、 前記基準側面の仮想線上であって前記基準境界点と前記基準仮想交点との間の任意の位置が、縦点である。前記縦点を通り、前記基準接点において前記基準形成面に接する円弧が、接点側円弧である。前記基準形成面上であって前記基準接点と前記基準仮想交点との間の任意の位置が、横点である。前記横点を通る前記基準形成面の法線と前記接点側円弧との交点が中間境界点である。前記基準境界点を通り、前記中間境界点において前記接点側円弧に接する円弧が、境界側円弧である。前記湾曲陸面形成部の輪郭のうち、前記基準接点から前記中間境界点までの輪郭が前記接点側円弧で表され、前記中間境界点から前記基準境界点までの輪郭が前記境界側円弧で表される。
【0016】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、前記基準仮想交点から前記縦点までの距離の、前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離に対する比が0.40以上0.60以下である。前記基準仮想交点から前記横点までの距離の、前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離に対する比が0.40以上0.60以下である。
【0017】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、前記トレッド形成面に含まれる陸面形成部のうち、軸方向において外側に位置する陸面形成部がショルダー陸面形成部である。3面の前記陸面形成部のうち、前記湾曲陸面形成部の隣に位置する陸面形成部が前記ショルダー陸面形成部である。前記ショルダー陸面形成部と前記湾曲陸面形成部との間に位置する凸条の、前記湾曲陸面形成部側の側面が前記基準側面であり、前記ショルダー側陸面形成部側の側面が前記裏側面である。前記ショルダー陸面形成部の前記基準形成面との接点がショルダー基準接点である。前記裏側面と、前記ショルダー陸面形成部との境界がショルダー基準境界点である。前記ショルダー基準境界点から前記基準形成面に向かって延びる前記裏側面の仮想線と前記基準形成面との交点がショルダー基準仮想交点である。前記裏側面における前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー基準境界点までの距離が、前記基準側面における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離と同じである。前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー基準接点までの距離が、前記基準仮想交点から前記基準接点までの距離と同じである。前記裏側面の仮想線上であって前記ショルダー基準境界点と前記ショルダー基準仮想交点との間の任意の位置がショルダー縦点である。前記ショルダー縦点を通り、前記ショルダー基準接点において前記基準形成面に接する円弧が、ショルダー接点側円弧である。前記基準形成面上であって前記ショルダー基準接点と前記ショルダー基準仮想交点との間の任意の位置がショルダー横点である。前記ショルダー横点を通る前記基準形成面の法線と、前記ショルダー接点側円弧との交点がショルダー中間境界点である。前記ショルダー基準境界点を通り、前記ショルダー中間境界点において前記ショルダー境界側円弧に接する円弧が、ショルダー境界側円弧である。前記ショルダー陸面形成部の輪郭のうち、前記ショルダー基準接点から前記ショルダー中間境界点までの輪郭が前記ショルダー接点側円弧で表され、前記ショルダー中間境界点から前記ショルダー基準境界点までの輪郭が前記ショルダー境界側円弧で表される。前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー縦点までの距離が、前記基準仮想交点から前記縦点までの距離と同じである。前記ショルダー基準仮想交点から前記ショルダー横点までの距離が、前記基準仮想交点から前記横点までの距離と同じである。
【0018】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、前記トレッドは前記トレッド面を含むキャップ部を備え、前記キャップ部のための未加硫ゴムのムーニー粘度は80以上である。
【0019】
本発明の一態様に係るタイヤの製造方法は、前述したいずれかのタイヤ用モールドを用いて生タイヤを加圧及び加熱する工程を含む。
【0020】
本発明の一態様に係るタイヤは、路面と接地するトレッド面を有するトレッドを備え、少なくとも2本の周方向溝を前記トレッドに刻むことで、少なくとも3本の陸部が前記トレッドに構成され、前記トレッド面が、前記少なくとも2本の周方向溝と、前記少なくとも3本の陸部の外面である、少なくとも3面の陸面とを含む、タイヤである。このタイヤでは、少なくとも一の円弧で表される輪郭を有し、軸方向において前記周方向溝を挟んで並ぶ、3面の前記陸面と接する面が、前記トレッド面の基準面である。3面の前記陸面のうち、2本の前記周方向溝の間に位置する陸面が湾曲陸面である。前記周方向溝が、前記湾曲陸面側の壁である基準壁と、前記基準壁に対向する壁である対向壁とを備える。前記湾曲陸面と前記基準面との接点が基準接点である。前記基準壁と前記湾曲陸面との境界が基準境界点である。前記基準境界点から前記基準面に向かって延びる前記基準壁の仮想線と、前記基準面との交点が基準仮想交点である。前記湾曲陸面の輪郭が1又は複数の円弧で表される。前記基準境界点が前記基準面よりも内側に位置する。一方の周方向溝が小さな溝断面積を有し、他方の周方向溝が大きな溝断面積を有するとき、一方の周方向溝側における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離が短く、他方の周方向溝側における前記基準仮想交点から前記基準境界点までの距離が長い。
【発明の効果】
【0021】
本発明のタイヤ用モールド及びタイヤの製造方法によれば、タイヤの接地面形状及び接地圧分布の適正化を図ることができる。そして、このタイヤ用モールド及びタイヤの製造方法によって得られるタイヤは、適正な接地面形状及び接地圧分布が得られるので、操縦安定性や耐摩耗性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
図2図2は、図1のタイヤの一部を示す断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るタイヤ用モールドの一部を示す断面図である。
図4図4は、図3のモールドの一部を示す断面図である。
図5図5は、図4に示された構成を有するモールドで製造したタイヤの接地面形状の一例を示す模式図である。
図6図6は、図4に示された構成を有するモールドで製造したタイヤの接地圧分布の一例を示すグラフである。
図7図7は、図2に示されたトレッド面の変形例を示す断面図である。
図8図8は、図4に示されたトレッド形成面の変形例を示す断面図である。
図9図9は、従来のモールドで製造したタイヤの接地面形状の一例を示す模式図である。
図10図10は、従来のモールドで製造したタイヤの接地圧分布の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0024】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤの各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0025】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0026】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの正規内圧は、例えば、180kPaである。
【0027】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。乗用車用タイヤの正規荷重は、例えば、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0028】
図1は、本開示の一実施形態に係る空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0029】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0030】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、コード補強層14、一対のチェーファー16、インナーライナー18及び一対のゴム補強層20を備える。
【0031】
トレッド4の外面はトレッド面22である。トレッド4はトレッド面22において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面22を有する。トレッド4は、径方向において、コード補強層14の外側に位置する。
【0032】
トレッド4は、ベース部24と、キャップ部26とを備える。ベース部24は、トレッド4の径方向内側部分を構成する。ベース部24は、発熱性が考慮された架橋ゴムからなる。キャップ部26は、ベース部24の径方向外側に位置する。このタイヤ2では、キャップ部26が路面と接地する。キャップ部26の外面が前述のトレッド面22である。キャップ部26は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。トレッド4がキャップ部26のみで構成されてもよい。
【0033】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端からカーカス12に沿って径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0034】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。図示されないが、クリンチ8はリム(図示されず)と接触する。クリンチ8は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0035】
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10は、コア28と、エイペックス30とを備える。コア28はスチール製のワイヤーを含む。エイペックス30は、コア28の径方向外側に位置する。エイペックス30は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。図1に示されるように、このエイペックス30のサイズは、従来のエイペックスのサイズよりも小さい。
【0036】
図示されないが、コア28が、軸方向に並列した2つのコアで構成されてもよい。この場合、後述するカーカスプライはコア28の周りで折り返されるのではなく、このカーカスプライの端部がこの2つのコアで挟まれる。
【0037】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10とを架け渡す。カーカス12は、ラジアル構造を有する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ32を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ32で構成される。カーカスプライ32は、それぞれのビード10のコア28の周りにて折り返される。図示されないが、カーカスプライ32は並列された多数のコードを含む。
【0038】
コード補強層14は、ベルト34とバンド36とを備える。ベルト34がコード補強層14の内側部分を構成し、バンド36がこのコード補強層14の外側部分を構成する。このコード補強層14が、ベルト34のみで構成されてもよく、バンド36のみで構成されてもよい。
【0039】
ベルト34は、トレッド4の径方向内側において、カーカス12と積層される。ベルト34は径方向に積層された少なくとも2層のベルトプライ38で構成される。このタイヤ2のベルト34は、2層のベルトプライ38からなる。図示されないが、2層のベルトプライ38はそれぞれ、並列された多数のコードを含む。これらコードは赤道面に対して傾斜する。コードの材質はスチールである。
【0040】
バンド36は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。バンド36は、径方向においてトレッド4とベルト34との間に位置する。このタイヤ2のバンド36は、フルバンド36fと、このフルバンド36fの外側に位置する一対のエッジバンド36eとで構成される。このバンド36がフルバンド36fのみで構成されてもよく、一対のエッジバンド36eのみで構成されてもよい。
【0041】
図示されないが、バンド36はコードを含む。フルバンド36f及びエッジバンド36eのそれぞれにおいて、コードは周方向に螺旋状に巻かれる。有機繊維からなるコードがバンド36のコードとして用いられる。
【0042】
それぞれのチェーファー16は、ビード10の径方向内側に位置する。図示されないが、チェーファー16はリムと接触する。チェーファー16は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー16が、架橋ゴムからなる部材で構成されてもよい。
【0043】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー18は、気体透過性の低い架橋ゴムからなる。
【0044】
それぞれのゴム補強層20は、軸方向において、エイペックス30の外側に位置する。ゴム補強層20は、カーカス12とクリンチ8との間に位置する。ゴム補強層20は架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、ゴム補強層20の材質はエイペックス30の材質と同じである。タイヤ2においては、このゴム補強層20が設けられなくてもよい。この場合、従来サイズのエイペックスが採用される。
【0045】
図1に示されるように、このタイヤ2のトレッド4(詳細にはキャップ部26)には溝40が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。図1に示されたタイヤ2の溝42は、トレッドパターンを構成する溝40の一部である。この溝42は、周方向に延びる。この溝42は、周方向溝である。タイヤ2の仕様に応じて適宜設定されるが、周方向溝42は、9mm以上20mm以下の溝幅を有する。周方向溝42は、5mm以上15mm以下の溝深さを有する。溝幅は、溝40の一方の縁から他方の縁までの距離で表される。溝深さは、縁から底までの距離で表される。縁が丸められている場合には、縁が丸められていないと仮定して得られる仮想縁に基づいて、溝幅及び溝深さが特定される。
【0046】
図1は、トレッド4に刻まれた複数の周方向溝42が赤道面に対して対称に配置された例を示す。これら周方向溝42が赤道面に対して非対称に配置されてもよい。
【0047】
このタイヤ2のトレッド4には、少なくとも2本の周方向溝42が刻まれる。これにより、少なくとも3本の陸部44がトレッド4に構成される。このタイヤ2において、周方向溝42はトレッド面22の一部である。このトレッド面22は、少なくとも2本の周方向溝42と、少なくとも3本の陸部44の外面である、少なくとも3面の陸面46と、を含む。このトレッド面22では、軸方向において、少なくとも3面の陸面46が周方向溝42を挟んで並ぶ。
【0048】
図1に示されたトレッド4には3本の周方向溝42が刻まれる。3本の周方向溝42のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝42はショルダー周方向溝42sである。ショルダー周方向溝42sの隣に位置する周方向溝42は、ミドル周方向溝42mである。このタイヤ2では、ミドル周方向溝42mは赤道上に位置する。ミドル周方向溝42mは、クラウン周方向溝とも称される。
【0049】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝42sはミドル周方向溝42mの溝深さと同程度の深さを有する。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝42sがミドル周方向溝42mよりも浅くてもよいし、ミドル周方向溝42mがショルダー周方向溝42sよりも浅くてもよい。対比する2つの周方向溝42において、一方の周方向溝42の溝深さの、他方の周方向溝42の溝深さに対する比が0.9以上1.1以下である場合に、2つの周方向溝42は同等の溝深さを有すると判断される。
【0050】
このタイヤ2では、軸方向に並列した3本の周方向溝42がトレッド4に刻まれることにより、4本の陸部44が構成される。これら陸部44のうち、軸方向において外側に位置する陸部44がショルダー陸部44sである。軸方向において、このショルダー陸部44sの内側に位置する陸部44がミドル陸部44mである。ミドル陸部44mは、トレッド4の中央部分に位置するので、クラウン陸部とも称される。このタイヤ2では、トレッド4に構成された4本の陸部44は、一対のミドル陸部44mと、一対のショルダー陸部44sとで構成される。
【0051】
図2は、図1に示されたトレッド4の一部を示す。図2において、左右方向はタイヤ2の径方向であり、上下方向はタイヤ2の軸方向である。紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図2には、トレッド面22の輪郭が模式的に表されている。
【0052】
このタイヤ2の陸部44には、陸面46が丸みを帯びた形状を有する陸部44が含まれる。この図2においては、説明の便宜のために、陸面46の丸みを帯びた形状が誇張して表されている。
【0053】
このタイヤ2では、ショルダー陸部44sの陸面46s(以下、ショルダー陸面)と、ミドル陸部44mの陸面46m(以下、ミドル陸面)との間がショルダー周方向溝42sである。左右のミドル陸面46mの間の周方向溝42がミドル周方向溝42mである。この図2の紙面において左側に位置する陸面46がミドル陸面46mである。このミドル陸面46mの隣に、ミドル周方向溝42mが位置する。ミドル周方向溝42mの隣に、もう一つのミドル陸面46mが位置する。このミドル陸面46mの隣に、ショルダー周方向溝42sが位置する。このショルダー周方向溝42sの隣に、ショルダー陸面46sが位置する。つまり、軸方向において、3面の陸面46が周方向溝42を挟んで並んでいる。
【0054】
図2において、周方向溝42を挟んで軸方向に並ぶ3面の陸面46のうち、2本の周方向溝42の間に位置する陸面46、すなわち、ミドル陸面46mは外向きに凸な形状を有する。このミドル陸面46mは湾曲陸面46Bとも称される。ミドル周方向溝42mを挟んでこの湾曲陸面46Bの隣に位置する陸面46、すなわち他方のミドル陸面46mは第一陸面46fとも称される。この場合、ミドル周方向溝42mは第一周方向溝42fとも称される。ショルダー周方向溝42sを挟んでこの湾曲陸面46Bの隣に位置する陸面46、すなわちショルダー陸面46sは、第二陸面46nとも称される。この場合、ショルダー周方向溝42sは第二周方向溝42nとも称される。
【0055】
このタイヤ2では、第一周方向溝42fの溝断面積は第二周方向溝42nの溝断面積よりも小さい。第一周方向溝42fは小さな溝断面積を有し、第二周方向溝42nは、大きな溝断面積を有する。このタイヤ2では、第一周方向溝42fの溝断面積が第二周方向溝42nの溝断面積よりも大きくてもよいし、第一周方向溝42fの溝断面積が第二周方向溝42nの溝断面積と同じであってもよい。
【0056】
このタイヤ2では、隣り合う2本の周方向溝42において、片方の周方向溝42の溝断面積に対する、他方の周方向溝42の溝断面積の比が、0.95以上1.05以下である場合に、隣り合う2本の周方向溝42は同等の溝断面積を有すると判断される。溝断面積の求め方は、後述する。
【0057】
図2において、二点鎖線TBLはトレッド面22の基準面である。このトレッド面22の基準面TBLは、トレッド4に溝40がないと仮定して得られる仮想トレッド面を表す。このタイヤ2では、少なくとも一の円弧で表される輪郭を有し、軸方向において周方向溝42を挟んで並ぶ、3面の陸面46と接する面が、トレッド面22の基準面TBLである。図2において、トレッド面22の基準面TBLは、第一陸面46f、湾曲陸面46B、及び第二陸面46nと接する。
【0058】
図示されないが、基準面TBLの輪郭が軸方向に並列した複数の円弧で表される場合、一の円弧とこの一の円弧の隣に位置する他の円弧とは両円弧の境界において接し、軸方向において、内側に位置する円弧が外側に位置する円弧の半径よりも大きな半径を有するように、この基準面TBLの輪郭は構成される。この場合、一の円弧と他の円弧とが両円弧に接する直線でつなげられてもよい。
【0059】
タイヤ2を正規リムに組み、タイヤ2の内圧を正規内圧の5%に調整し、このタイヤ2に荷重をかけない状態は、基準状態と称される。このタイヤ2のトレッド面22の輪郭は、基準状態のトレッド面22の輪郭、又は後述するモールドのトレッド形成面の輪郭により表される。なお、トレッド面22の輪郭構成が明らかでない場合には、例えば、X線を用いたコンピュータ断層撮影法(以下、X線CT法)により撮影された、基準状態のタイヤ2の断面画像データ、又は、レーザー変位計を有するプロファイル測定装置(図示されず)を用いて計測された、基準状態のタイヤ2のトレッド面22の形状データを解析することにより得られる、トレッド面22の輪郭に基づいて、トレッド面22の基準面TBLの輪郭が特定されてもよい。この場合、軸方向に並列した3つの陸面46に接する単一の円弧によって、このトレッド面22の基準面TBLの輪郭が表される。
【0060】
周方向溝42は、底48と一対の壁50とを備える。図2において、符号Btは壁50と陸面46との境界である。この境界Btは境界点とも称される。二点鎖線Ltは、境界点Btから基準面TBLに向かって延び、この境界点Btにおいて壁50の輪郭線に接する直線である。この直線Ltは壁50の仮想線である。符号Vtは、仮想線Ltと基準面TBLとの交点である。交点Vtは仮想交点とも称される。
【0061】
このタイヤ2では、周方向溝42の溝断面積は、一方の壁50、底48、他方の壁50、他方の壁50の仮想線Lt、基準面TBL、及び一方の壁50の仮想線Ltによって囲まれる領域の面積で表される。
【0062】
前述したように、湾曲陸面46Bは2本の周方向溝42の間に位置する。この湾曲陸面46Bの隣に位置する周方向溝42においては、湾曲陸面46B側に位置する壁50は基準壁50aとも称される。この基準壁50aに対向する壁50が、対向壁50bとも称される。湾曲陸面46Bの隣に位置する周方向溝42は、湾曲陸面46B側の壁50である基準壁50aと、この基準壁50aに対向する壁50である対向壁50bとを備える。
【0063】
図2において、符号BB1tは、第一周方向溝42fの基準壁50a(以下、第一基準壁)と、湾曲陸面46Bとの境界である。境界BB1tは基準境界点(以下、第一基準境界点)である。二点鎖線BL1tは第一基準壁50aの仮想線である。符号BV1tは、第一基準壁50aの仮想線BL1tと、基準面TBLとの交点で表される仮想交点である。仮想交点BV1tは基準仮想交点(以下、第一基準仮想交点)である。両矢印Xd1tは、第一基準仮想交点BV1tから第一基準境界点BB1tまでの距離である。この距離Xd1tは、第一基準壁50aの仮想線BL1tに沿って計測される。
【0064】
図2において、符号BB2tは、第二周方向溝42nの基準壁50a(以下、第二基準壁)と、湾曲陸面46Bとの境界である。境界BB2tは基準境界点(以下、第二基準境界点)である。二点鎖線BL2tは第二基準壁50aの仮想線である。符号BV2tは、第二基準壁50aの仮想線BL2tと、基準面TBLとの交点で表される仮想交点である。仮想交点BV2tは基準仮想交点(以下、第二基準仮想交点)である。両矢印Xd2tは、第二基準仮想交点BV2tから第二基準境界点BB2tまでの距離である。この距離Xd2tは、第二基準壁50aの仮想線BL2tに沿って計測される。
【0065】
以上説明したタイヤ2は、次のようにして製造される。詳述しないが、このタイヤ2の製造では、トレッド4、サイドウォール6、ビード10等の、タイヤ2を構成する要素のための、未加硫状態のゴム組成物(以下、未加硫ゴムとも称される。)が準備される。未加硫ゴムは、バンバリーミキサー等の混錬機(図示されず)を用いて基材ゴム及び薬品を混合して得られる。
【0066】
基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。詳述しないが、基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、このゴムが適用される構成要素の仕様に応じて、適宜決められる。
【0067】
このタイヤ2の製造では、押出機等のゴム成形機(図示されず)において、未加硫ゴムの形状を整えて、タイヤ構成要素の予備成形体が準備される。タイヤ成形機(図示されず)において、トレッド4、サイドウォール6、ビード10等の予備成形体を組み合わせて、未加硫状態のタイヤ2(以下、生タイヤとも称される。)が準備される。
【0068】
このタイヤ2の製造では、生タイヤは、加硫機(図示されず)のモールドに投入される。生タイヤをモールド内で加圧及び加熱し、タイヤ2が得られる。タイヤ2は、生タイヤの加硫成形物である。
【0069】
このタイヤ2の製造方法は、生タイヤを準備する工程、及びモールドを用いて生タイヤを加圧及び加熱する工程を含む。なお、詳述しないが、このタイヤ2の製造では、温度、圧力、時間等の加硫条件に特に制限はなく、一般的な加硫条件が採用される。
【0070】
図3には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ用モールド56の断面の一部が示される。このモールド56は図1に示されたタイヤ2の製造に用いられる。図3において、左右方向はタイヤ2の径方向であり、上下方向はタイヤ2の軸方向である。この紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面である。説明の便宜を図るために、以下、モールド56の次元はタイヤ2の次元により表される。
【0071】
このモールド56は、トレッドリング58と、一対のサイドプレート60と、一対のビードリング62とを備える。このモールド56は、割モールドである。図3において、モールド56は、トレッドリング58、一対のサイドプレート60及び一対のビードリング62が組み合わされた状態、すなわち閉じられた状態にある。
【0072】
トレッドリング58は、モールド56の径方向外側部分を構成する。トレッドリング58は、その内面に、トレッド形成面64を備える。トレッド形成面64は、生タイヤ2rの外面にタイヤ2のトレッド面22を形づける。このモールド56のトレッドリング58は、多数のセグメント66により構成される。これらセグメント66は、リング状に配置される。
【0073】
それぞれのサイドプレート60は、トレッドリング58の径方向内側に位置する。サイドプレート60は、トレッドリング58の端に連なる。サイドプレート60は、その内面に、サイドウォール形成面68を備える。サイドウォール形成面68は、生タイヤ2rの外面にタイヤ2のサイド面を形づける。
【0074】
それぞれのビードリング62は、サイドプレート60の径方向内側に位置する。ビードリング62は、サイドプレート60の端に連なる。ビードリング62は、その内面に、ビード形成面70を備える。ビード形成面70は、生タイヤ2rの外面に、タイヤ2のビード10の部分、具体的には、リムに嵌め合わされる部分を形づける。
【0075】
このモールド56では、多数のセグメント66、一対のサイドプレート60及び一対のビードリング62が組み合わされることにより、タイヤ2の外面を形づけるキャビティ面72が構成される。キャビティ面72は、トレッド形成面64、一対のサイドウォール形成面68及び一対のビード形成面70から構成される。
【0076】
図示されないが、加圧及び加熱工程において、生タイヤ2rは、剛性中子又は膨張したブラダーによってモールド56のキャビティ面72に押し付けられる。これにより、タイヤ2の外面が形づけられる。
【0077】
図4には、図3に示されたモールド56の一部をなすトレッドリング58の断面が示される。図4には、トレッド面22を形づけるトレッド形成面64の輪郭が模式的に表されている。図4において、左右方向はタイヤ2の径方向であり、上下方向はタイヤ2の軸方向である。この紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0078】
前述したように、このタイヤ2のトレッド面22は、少なくとも2本の周方向溝42と、少なくとも3本の陸部44の外面である、少なくとも3面の陸面46とを含む。したがって、モールド56において、このトレッド面22を形づけるトレッド形成面64は、少なくとも2本の周方向溝42を形成する、少なくとも2本の凸条74と、少なくとも3面の陸面46を形成する、少なくとも3面の陸面形成部76とを備える。
【0079】
このモールド56では、少なくとも2本の凸条74のうち、第一周方向溝42fを形づける凸条74が第一凸条74fである。第二周方向溝42nを形づける凸条74が第二凸条74nである。
【0080】
前述したように、このモールド56では、第一周方向溝42fの溝断面積は第二周方向溝42nの溝断面積よりも小さい。第一凸条74fの断面積は第二凸条74nの断面積よりも小さい。第一凸条74fは小さな断面積を有し、第二凸条74nは大きな溝断面積を有する。
【0081】
このモールド56では、少なくとも3面の陸面形成部76のうち、湾曲陸面46Bを形づける陸面形成部76が湾曲陸面形成部76Bである。第一陸面46fを形づける陸面形成部76が第一陸面形成部76fである。第二陸面46nを形づける陸面形成部76が第二陸面形成部76nである。
【0082】
図4の紙面においては、第一陸面形成部76fの隣に第一凸条74fが位置する。第一凸条74fの隣に、湾曲陸面形成部76Bが位置する。この湾曲陸面形成部76Bの隣に、第二凸条74nが位置する。この第二凸条74nの隣に、第二陸面76nが位置する。つまり、軸方向において、3面の陸面形成部76が凸条74を挟んで並んでいる。3面の陸面形成部76のうち、2本の凸条74の間に位置する陸面形成部76が湾曲陸面形成部76Bである。湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する2面の陸面形成部76は、第一陸面形成部76f、及び第二陸面形成部76nである。
【0083】
トレッド形成面64に含まれる陸面形成部76のうち、軸方向において外側に位置する陸面形成部76はショルダー陸面46sを形づけるショルダー陸面形成部76sである。このモールド56では、前述した、軸方向において凸条74を挟んで並ぶ、3面の陸面形成部76のうち、湾曲陸面形成部76Bが、一方のミドル陸面46mを形づけるミドル陸面形成部76mである。この湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する第一陸面形成部76fが、他方のミドル陸面46mを形づけるミドル陸面形成部76mである。第一陸面形成部76fと湾曲陸面形成部76Bとの間に位置する第一凸条74fがミドル周方向溝42mを形づけるミドル凸条74mである。湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する第二陸面形成部76nがショルダー陸面形成部76sである。第二陸面形成部76nと湾曲陸面形成部76Bとの間に位置する第二凸条74nが、ショルダー陸面46sを形づけるショルダー凸条74sである。
【0084】
図4において、二点鎖線FBLはトレッド形成面64の基準形成面である。このトレッド形成面64の基準形成面FBLは、前述のトレッド面22の基準面TBLに対応する。このモールド56においては、少なくとも一の円弧で表される輪郭を有し、軸方向において凸条74を挟んで並ぶ、3面の陸面形成部76と接する面が、トレッド形成面64の基準形成面FBLである。図4において、トレッド形成面64の基準形成面FBLは、その紙面の左側から、第一陸面形成部76f、湾曲陸面形成部76B、及び第二陸面形成部76nと接する。
【0085】
図示されないが、この基準形成面FBLの輪郭が軸方向に並列した複数の円弧で表される場合、一の円弧とこの一の円弧の隣に位置する他の円弧とは両円弧の境界において接し、軸方向において内側に位置する円弧が外側に位置する円弧の半径よりも大きな半径を有するように、この基準形成面FBLの輪郭は構成される。
【0086】
凸条74は、頂面78と一対の側面80とを備える。図4において、符号Bmは側面80と陸面形成部76との境界である。この境界Bmは境界点とも称される。二点鎖線Lmは、境界点Bmから基準形成面FBLに向かって延び、この境界点Bmにおいて側面80の輪郭線に接する直線である。この直線Lmは側面80の仮想線である。符号Vmは、仮想線Lmと基準形成面FBLとの交点である。交点Vmは仮想交点とも称される。
【0087】
このモールド56では、凸条74の断面積は、一方の側面80、頂面78、他方の側面80、他方の側面80の仮想線Lm、基準形成面FBL、及び一方の側面80の仮想線Lmによって囲まれる領域の面積で表される。
【0088】
前述したように、湾曲陸面形成部76Bは2本の凸条74の間に位置する。この湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する凸条74においては、湾曲陸面形成部76B側に位置する側面80は基準側面80aとも称される。この基準側面80aの裏側に位置する側面80が裏側面80bとも称される。湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する凸条74は、湾曲陸面形成部76B側の側面80である基準側面80aと、この基準側面80aの裏側に位置する側面80である裏側面80bとを備える。
【0089】
図4において、符号BB1mは、第一凸条74fの基準側面80a(以下、第一基準側面)と、湾曲陸面形成部76Bとの境界である。境界BB1mは基準境界点(以下、第一基準境界点)である。二点鎖線BL1mは第一基準側面80aの仮想線である。符号BV1mは、第一基準側面80aの仮想線BL1mと、基準形成面FBLとの交点で表される仮想交点である。仮想交点BV1mは基準仮想交点(以下、第一基準仮想交点)である。両矢印Xd1mは、第一基準仮想交点BV1mから第一基準境界点BB1mまでの距離である。この距離Xd1mは、第一基準側面80aの仮想線BL1mに沿って測定される。
【0090】
図4において、符号BB2mは、第二凸条74nの基準側面80a(以下、第二基準側面)と、湾曲陸面形成部76Bとの境界である。境界BB2mは基準境界点(以下、第二基準境界点)である。二点鎖線BL2mは第二基準側面80aの仮想線である。符号BV2mは、第二基準側面80aの仮想線BL2mと、基準形成面FBLとの交点で表される仮想交点である。仮想交点BV2mは基準仮想交点(以下、第二基準仮想交点)である。両矢印Xd2mは、第二基準仮想交点BV2mから第二基準境界点BB2mまでの距離である。この距離Xd2mは、第二基準側面80aの仮想線BL2mに沿って測定される。
【0091】
このモールド56では、陸面形成部76の形状によって、生タイヤ2rに凸条74を押し付けることで生じる未加硫ゴムの流れがコントロールされる。前述したように、周方向溝42はトレッド4のキャップ部26に刻まれる。トレッド形成面64の凸条74はこのキャップ部26を押し付ける。このモールド56では、生タイヤ2rに凸条74を押し付けることで生じる、キャップ部26のための未加硫ゴムの流れが、陸面形成部76の形状によって、コントロールされる。以下に、この陸面形成部76の形状について説明する。
【0092】
[湾曲陸面形成部76Bの輪郭]
2本の凸条74の間に位置する湾曲陸面形成部76Bの輪郭が、説明される。前述したように、トレッド形成面64の基準形成面FBLは、トレッド形成面64に含まれる第一陸面形成部76f、湾曲陸面形成部76B、及び第二陸面形成部76nと接する。図4において、符号T1mは湾曲陸面形成部76Bと基準形成面FBLとの接点である。このモールド56では、接点Tmは基準接点である。
【0093】
このモールド56では、湾曲陸面形成部76Bの輪郭は1又は複数の円弧で表される。前述の第一基準境界点BB1mは、湾曲陸面形成部76Bの第一凸条74f側の端でもある。前述の第三基準境界点BB2mは、この湾曲陸面形成部76Bの第二凸条74n側の端でもある。図4に示されるように、湾曲陸面形成部76Bの第一凸条74f側の端BB1mは、径方向において、トレッド形成面64の基準形成面FBLよりも内側に位置する。湾曲陸面形成部76Bの第二凸条74n側の端BB2mも、径方向において、基準形成面FBLよりも内側に位置する。
【0094】
タイヤ2の製造において、キャップ部26が凸条74に押し付けられることで、キャップ部26の未加硫ゴムは、2本の凸条74の間の部分、すなわち湾曲陸面形成部76Bに向かって流れる。このモールド56では、湾曲陸面形成部76Bの端BB1m及びBB2mが基準形成面FBLよりも内側に位置するように湾曲陸面形成部76Bの輪郭が構成される。湾曲陸面形成部76Bに流れ込む、未加硫ゴムのボリュームが制限されるので、凸条74に押し付けられる未加硫ゴムの流れに乱れが生じることが抑えられる。
【0095】
このモールド56では、前述したように、第一凸条74fは小さな断面積を有し、第二凸条74nは大きな溝断面積を有する。第二凸条74nに押し付けられる未加硫ゴムのボリュームは、第一凸条74fに押し付けられる未加硫ゴムのボリュームよりも大きい。第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れに違いが生じることが懸念される。
【0096】
しかしこのモールド56では、第二凸条74n側における、第二基準仮想交点BV2mから第二基準境界点BB2mまでの距離Xd2mが、第一凸条74f側における、第一基準仮想交点BV1mから第一基準境界点BB1mまでの距離Xd1mよりも長い。言い換えれば、第一凸条74f側における、第一基準仮想交点BV1mから第一基準境界点BB1mまでの距離Xd1mが短く、第二凸条74n側における、第二基準仮想交点BV2mから第二基準境界点BB2mまでの距離Xd2mが長い。このモールド56では、大きな断面積を有する第二凸条74n側において、湾曲陸面形成部76Bに流れ込む未加硫ゴムのボリュームが効果的に制限される。第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとが、バランスよくコントロールされるので、未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくい。このモールド56では、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。トレッド4の内面形状の乱れも抑えられるので、このトレッド4の内面が適正な形状で構成される。
【0097】
図5には、このモールド56を用いて製造したタイヤ2(サイズ=205/55R16)の接地面形状の一例が示される。図5において、左右方向はタイヤ2の軸方向に対応する。上下方向は、タイヤ2の周方向に対応する。
【0098】
この接地面形状は、タイヤ接地形状測定装置(図示されず)を用いて、正規状態のタイヤ2に正規荷重の荷重をかけて、路面にこのタイヤ2を押し付けることにより得られる接地面において、各陸部44の輪郭をトレースすることで得られる。接地面を得るにあたってタイヤ2は、その軸方向が路面に対して平行となるように配置され、このタイヤ2には、路面に対して垂直な向きに前述の荷重がかけられる。この測定装置において、路面は平面で構成される。接地面の測定では、タイヤ2は平らな路面に押し付けられる。図9に示された、従来のモールドで製造したタイヤの接地面形状も同様にして得られている。
【0099】
図5に示されるように、このモールド56で製造したタイヤ2の接地面形状においては、ショルダー周方向溝42sとミドル周方向溝42mとの間に位置するミドル陸部44mの周方向外縁は、図9に示された、従来のモールドで製造したタイヤで確認されたミドル陸部の周方向外縁のように、内向きに凸な形状を呈するのではなく、外向きに膨らむような形状を呈している。接地面の面積は明らかに増加しており、このタイヤ2は、従来のモールドで製造したタイヤに比べて、より十分に路面と接触できる。このモールド56によれば、タイヤ2の操縦安定性のさらなる向上を図ることができる。
【0100】
図6には、このモールド56を用いて製造したタイヤ2(サイズ=205/55R16)の接地圧分布の一例が示される。縦軸は接地圧を表し、横軸は接地面の接地幅方向の位置を表す。図6において、左側がミドル陸部44mの接地圧分布であり、右側がショルダー陸部44sの接地圧分布である。
【0101】
この接地圧分布は、タイヤ接地圧測定装置(図示されず)を用いて、正規状態のタイヤ2に正規荷重の荷重をかけて、路面にこのタイヤ2を押し付けることにより得られる。この接地面を得るにあたって、このタイヤ2はその軸方向が路面に対して平行となるように配置され、このタイヤ2には、路面に対して垂直な向きに前述の荷重がかけられる。この測定装置において、路面は平面で構成される。この接地圧分布の測定では、タイヤ2は平らな路面に押し付けられる。図10に示された、従来のモールドで製造したタイヤの接地圧分布も同様にして得られている。なお、この図6において、点線で示された接地圧分布は、この従来のモールドで製造したタイヤの接地圧分布である。
【0102】
図6に示されるように、このモールド56で製造したタイヤ2の接地圧分布においては、ミドル陸部44mの縁における接地圧の高まりが、図10に示された、従来のモールドで製造したタイヤで確認されたミドル陸部の縁における接地圧の高まりよりも抑えられている。この図6に示した例では、ミドル陸部44m内での接地圧差は55kPa程度に抑えられている。局所的な接地圧の高まりは明らかに抑えられており、このモールド56によれば、タイヤ2の耐摩耗性のさらなる向上を図ることができる。
【0103】
このモールド56及びこのモールド56を用いたタイヤ2の製造方法によれば、タイヤ2の接地面形状及び接地圧分布の適正化を図り、タイヤ2の操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0104】
図4において、両矢印Wcmは、第一基準仮想交点BV1mから第二基準仮想交点BV2mまでの距離である。距離Wcmは、第一基準仮想交点BV1mと第二基準仮想交点BV2mとを結ぶ線分の長さで表される。両矢印Xw1mは、第一基準仮想交点BV1mから基準接点Tmまでの距離である。距離Xw1mは、第一基準仮想交点BV1mと基準接点Tmとを結ぶ線分の長さで表される。両矢印Xw2mは、第二基準仮想交点BV2mから基準接点Tmまでの距離である。距離Xw2mは、第二基準仮想交点BV2mと基準接点Tmとを結ぶ線分の長さで表される。
【0105】
このモールド56では、湾曲陸面形成部76Bと基準形成面FBLとの接点である基準接点Tmの位置は、好ましくは、湾曲陸面形成部76Bの両側に位置する凸条74の断面積に基づいて決められる。具体的には、第一凸条74fの断面積をSam、第二凸条74nの断面積をSbmとしたとき、距離Xw1m、距離Wcm、断面積Sam、及び断面積Sbmを用いて表される、下記式(1)を満たすように、距離Xw1mが設定されるのが好ましい。
Sam/(Sam+Sbm)×100-10≦Xw1m/Wcm×100≦Sam/(Sam+Sbm)×100+10・・・(1)
【0106】
このモールド56では、第一凸条74fの断面積Samが第二凸条74nの断面積Sbmよりも小さいので、基準接点Tmは第一基準境界点BB1m側に設定される。このモールド56では、小さな断面積を有する第一凸条74f側への未加硫ゴムの流れが促される。このモールド56では、第一凸条74fの断面積Samが第二凸条74nの断面積Sbmよりも大きい場合、基準接点Tmは第二基準境界点BB2m側に設定される。この場合、第二凸条74n側への未加硫ゴムの流れが促される。
【0107】
このモールド56では、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとが、バランスよくコントロールされる。未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくいので、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。このモールド56及びこのモールド56を用いたタイヤ2の製造方法によれば、タイヤ2の接地面形状及び接地圧分布の適正化を図り、タイヤ2の操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0108】
このモールド56では、湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する凸条74の断面積をSmとしたとき、基準仮想交点BVmから基準境界点BBmまでの距離Xdmの、凸条74の断面積Smに対する比(Xdm/Sm)は、0.0008以上が好ましく、0.0040以下が好ましい。
【0109】
比(Xdm/Sm)が0.0008以上に設定されることにより、陸面形成部76Bの形状が凸条74によって押し付けられた未加硫ゴムの流れの制限に効果的に寄与する。陸面形成部76Bの両側に位置する凸条74の断面積に違いがあっても、未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくい。このモールド56では、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。この観点から、この比(Xdm/Sm)は0.0014以上がより好ましく、0.0020以上がさらに好ましい。
【0110】
比(Xdm/Sm)が0.0040以下に設定されることにより、凸条74によって押し付けられた未加硫ゴムの流れが適切に維持される。この場合においても、陸面形成部76Bの両側に位置する凸条74の断面積に違いがあっても、未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくい。このモールド56では、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。この観点から、この比(Xdm/Sm)は0.0034以下がより好ましく、0.0028以下がさらに好ましい。
【0111】
前述したように、このモールド56では、第一凸条74fの断面積Samは第二凸条74nの断面積Sbmよりも小さい。第一凸条74fの断面積Samと第二凸条74nの断面積Sbmと異なる場合において、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとを、バランスよくコントロールでき、未加硫ゴムの流れに乱れが生じることが効果的に抑えられる観点から、第一凸条74f側において、第一基準仮想交点BV1mから第一基準境界点BB1mまでの距離Xd1mの、第一凸条74fの断面積Samに対する比(Xd1m/Sam)が0.0008以上0.0040以下が好ましく、第二凸条74n側において、第二基準仮想交点BV2mから第二基準境界点BB2mまでの距離Xd2mの、第二凸条74nの断面積Sbmに対する比(Xd2m/Sbm)が0.0008以上が好ましく、0.0040以下が好ましい。この場合、比(Xd1m/Sam)と比(Xd2m/Sbm)とは同じ値で設定される。
【0112】
前述したように、湾曲陸面形成部76Bの輪郭は1又は複数の円弧で表される。この湾曲陸面形成部76Bの輪郭は、基準境界点BBmを通り基準接点Tmにおいて基準形成面FBLに接する円弧で表されるのが好ましい。具体的には、第一基準境界点BB1mを通り基準接点Tmにおいて基準形成面FBLに接する円弧と、第二基準境界点BB2mを通り基準接点Tmにおいて基準形成面FBLに接する円弧とで表されるのが好ましい。これにより、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとが、バランスよくコントロールされる。未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくいので、このモールド56では、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。このモールド56及びこのモールド56を用いたタイヤ2の製造方法によれば、タイヤ2の接地面形状及び接地圧分布の適正化を図り、タイヤ2の操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。なお、第一凸条74fの断面積と第二凸条74nの断面積とが等しい場合、この湾曲陸面形成部76Bの輪郭は、1の円弧で表される。
【0113】
[湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する凸条74がショルダー凸条74sである場合]
湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する凸条74がショルダー凸条74sである場合について、第二凸条74nが軸方向においてが最も外側に位置する凸条74である場合を例に説明する。第二凸条74nが軸方向においてが最も外側に位置する凸条74である場合、図4における第二陸面形成部76nによって、タイヤ2のショルダー陸面46sが形成される。以下に、この図4を用いて、このショルダー陸面46sを形成する第二陸面形成部76n、すなわちショルダー陸面形成部76sの輪郭が説明される。
【0114】
このモールド56では、第二凸条74nがショルダー陸面形成部76sと湾曲陸面形成部76Bとの間に位置する。この第二凸条74nにおいて、湾曲陸面形成部76B側の側面80が基準側面80aであり、ショルダー陸面形成部76s側の側面80が裏側面80bである。
【0115】
図4において、符号Tsmはショルダー陸面形成部76sと基準形成面FBLとの接点である。接点Tsmはショルダー基準接点である。ショルダー陸面形成部76sと基準形成面FBLとが点ではなく線で接している場合には、ショルダー陸面形成部76sと基準形成面FBLとの接線の内端によってショルダー基準接点Tsmが特定される。
【0116】
図4において、符号BBsmは、第二凸条74nの裏側面80bと、ショルダー陸面形成部76sとの境界である。境界BBsmはショルダー基準境界点である。二点鎖線BLsmは裏側面80bの仮想線である。符号BVsmは、裏側面80bの仮想線BLsmと、基準形成面FBLとの交点で表される仮想交点である。仮想交点BVsmはショルダー基準仮想交点である。両矢印Xdsmは、ショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー基準境界点BBsmまでの距離である。この距離Xdsmは、裏側面80bの仮想線BLsmに沿って測定される。両矢印Xwsmは、ショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー基準接点Tsmまでの距離である。距離Xwsmは、ショルダー基準仮想交点BVsmとショルダー基準接点Tsmとを結ぶ線分の長さで表される。
【0117】
このモールド56では、ショルダー陸面形成部76sの輪郭のうち、ショルダー基準境界点BBsmからショルダー基準接点Tsmまでの輪郭は、湾曲陸面形成部76Bの、第二基準境界点BB2mから基準接点Tmまでの輪郭と同様にして構成される。具体的には、ショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー基準境界点BBsmまでの距離Xdsmは、第二基準仮想交点BV2mから第二基準境界点BB2mまでの距離Xd2mと同じである。ショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー基準接点Tsmまでの距離Xwsmは、第二基準仮想交点BV2mから基準接点Tmまでの距離Xw2mと同じである。そして、ショルダー陸面形成部76sの、ショルダー基準境界点BBsmからショルダー基準接点Tsmまでの輪郭は、湾曲陸面形成部76Bの、第二基準境界点BB2mから基準接点Tmまでの輪郭と同じように、ショルダー基準境界点BBsmを通りショルダー基準接点Tsmにおいて基準形成面FBLに接する円弧で表される。
【0118】
このモールド56では、ショルダー基準境界点BBsmは、ショルダー陸面形成部76sの第二凸条74n側の端でもある。図4に示されるように、ショルダー陸面形成部76sの第二凸条74n側の端BBsmは、径方向において、トレッド形成面64の基準形成面FBLよりも内側に位置する。
【0119】
タイヤ2の製造において、キャップ部26が凸条74に押し付けられることで、キャップ部26の未加硫ゴムは、第二凸条74nの軸方向外側部分、すなわちショルダー陸部44sを形成する部分に向かって流れる。このモールド56では、ショルダー陸面形成部76sの端BBsmがトレッド形成面64の基準面FBLよりも内側に位置するようにショルダー陸面形成部76sの輪郭が構成される。ショルダー陸部44sを形成する部分に流れ込む未加硫ゴムのボリュームが制限されるので、第二凸条74nに押し付けられる未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくい。このモールド56では、ショルダー陸面形成部76sの形状が反映されたショルダー陸面46sが形成される。トレッド4の内面形状の乱れも抑えられるので、このトレッド4の内面が適正な形状で構成される。
【0120】
図5に示されるように、このモールド56で製造したタイヤ2の接地面形状においては、ショルダー陸部44sの周方向外縁は、図9に示された、従来のモールドで製造したタイヤで確認されたショルダー陸部の周方向外縁のように、内向きに凸な形状を呈するのではなく、外向きに膨らむような形状を呈している。接地面面積は明らかに増加しており、このタイヤ2は、従来のモールドで製造したタイヤに比べて、より十分に路面と接触できる。このモールド56によれば、タイヤ2の操縦安定性のさらなる向上を図ることができる。
【0121】
図6に示されるように、このモールド56で製造したタイヤ2の接地圧分布においては、ショルダー陸部44sの縁における接地圧の高まりが、図10に示された、従来のモールドで製造したタイヤで確認されたショルダー陸部の縁における接地圧の高まりよりも抑えられている。この図6に示した例では、ショルダー陸部44s内での接地圧差は70kPa程度に抑えられている。局所的な接地圧の高まりは明らかに抑えられており、このモールド56によれば、タイヤ2の耐摩耗性のさらなる向上を図ることができる。
【0122】
図1に示されたタイヤ2は、以上説明した、トレッド形成面64を有するモールド56を用いて製造される。次に、このトレッド形成面64によって形づけられたトレッド面22の輪郭について説明する。
【0123】
[湾曲陸面46Bの輪郭]
2本の周方向溝42の間に位置する湾曲陸面46Bの輪郭について、図2に示されたミドル陸面46mの輪郭に基づいて説明する。前述したように、ミドル陸面46mは、ミドル周方向溝42mとしての第一周方向溝42fと、ショルダー周方向溝42sとしての第二周方向溝42nとの間に位置する湾曲陸面46Bである。
【0124】
前述したように、このタイヤ2では、トレッド面22の基準面TBLは、少なくとも一の円弧で表される輪郭を有し、湾曲陸面46B、第一陸面46f、及び第二陸面46nと接する。図2において、符号T1tは湾曲陸面46Bと基準面TBLとの接点である。このタイヤ2では、この接点T1tが第一基準接点である。
【0125】
このタイヤ2では、湾曲陸面46Bの輪郭は1又は複数の円弧で表される。前述の第一基準境界点BB1tは、湾曲陸面46Bの第一周方向溝42f側の端でもある。前述の第二基準境界点BB2tは、この湾曲陸面46Bの第二周方向溝42n側の端でもある。図2に示されるように、湾曲陸面46Bの第一周方向溝42n側の端BB1tは、径方向において、トレッド面22の基準面TBLよりも内側に位置する。湾曲陸面46Bの第二周方向溝42n側の端BB2tも、トレッド面22の基準面TBLよりも径方向内側に位置する。
【0126】
タイヤ2の製造において、キャップ部26が第一凸条74f及び第二凸条74nに押し付けられることで、キャップ部26の未加硫ゴムは、第一凸条74fと第二凸条74nとの間の部分、すなわち湾曲陸面形成部76Bに向かって流れる。このタイヤ2では、湾曲陸面46Bの端BB1t及びBB2tが基準面TBLよりも内側に位置するように湾曲陸面46Bの輪郭が構成される。湾曲陸面形成部76Bに流れ込む、未加硫ゴムのボリュームが制限されるので、第一凸条74f及び第二凸条74nに押し付けられる未加硫ゴムの流れに乱れが生じることが抑えられる。
【0127】
前述したように、このタイヤ2のモールド56では、第二凸条74nに押し付けられる未加硫ゴムのボリュームは、第一凸条74fに押し付けられる未加硫ゴムのボリュームよりも大きい。第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れに違いが生じることが懸念される。
【0128】
しかしこのタイヤ2では、第二周方向溝42n側における、第二基準仮想交点BV2tから第二基準境界点BB2tまでの距離Xd2tが、第一周方向溝42f側における、第一基準仮想交点BV1tから第一基準境界点BB1tまでの距離Xd1tよりも長い。言い換えれば、第一周方向溝42f側における、第一基準仮想交点BV1tから第一基準境界点BB1tまでの距離Xd1tが短く、第二周方向溝42n側における、第二基準仮想交点BV2tから第二基準境界点BB2tまでの距離Xd2tが長い。このタイヤ2の製造では、第二凸条74n側において、湾曲陸面形成部76Bに流れ込む未加硫ゴムのボリュームが効果的に制限される。第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとが、バランスよくコントロールされるので、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。トレッド4の内面形状の乱れも抑えられるので、このトレッド4の内面が適正な形状で構成される。
【0129】
前述したように、図5に示された、タイヤ2の接地面形状においては、ショルダー周方向溝42sとミドル周方向溝42mとの間に位置するミドル陸部44mの周方向外縁は、図9に示された、従来のモールドで製造したタイヤで確認されたミドル陸部の周方向外縁のように、内向きに凸な形状を呈するのではなく、外向きに膨らむような形状を呈している。接地面の面積は明らかに増加しており、このタイヤ2は、従来のモールドで製造したタイヤに比べて、より十分に路面と接触できる。このタイヤ2は、操縦安定性のさらなる向上を図ることができる。
【0130】
前述したように、図6に示された、タイヤ2の接地圧分布においては、ミドル陸部44mの縁における接地圧の高まりが、図10に示された、従来のモールドで製造したタイヤで確認されたミドル陸部の縁における接地圧の高まりよりも抑えられている。局所的な接地圧の高まりは明らかに抑えられており、このタイヤ2は耐摩耗性のさらなる向上を図ることができる。
【0131】
このタイヤ2では、適正な接地面形状及び接地圧分布が得られる。このタイヤ2は、操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0132】
図2において、両矢印Wctは第一基準仮想交点BV1tから第二基準仮想交点BV2tまでの距離である。両矢印Xw1tは、第一基準仮想交点BV1tから基準接点Ttまでの距離である。両矢印Xw2tは、第二基準仮想交点BV2tから基準接点Ttまでの距離である。
【0133】
このタイヤ2では、湾曲陸面46Bと基準面TBLとの接点である基準接点Ttの位置は、好ましくは、湾曲陸面46Bの両側に位置する周方向溝42の断面積に基づいて決められる。具体的には、第一周方向溝42fの溝断面積をSat、第二周方向溝42nの溝断面積をSbtとしたとき、距離Xw1t、距離Wct、溝断面積Sat、及び溝断面積Sbtを用いて表される、下記式(2)を満たすように、距離Xw1tが設定されるのが好ましい。
Sat/(Sat+Sbt)×100-10≦Xw1t/Wct×100≦Sat/(Sat+Sbt)×100+10・・・(2)
【0134】
このタイヤモールド56では、第一周方向溝42fの溝断面積Satが第二周方向溝42nの溝断面積Sbtよりも小さいので、基準接点Ttは第一基準境界点BB1t側に設定される。このタイヤ2の製造では、小さな断面積を有する第一凸条74f側への未加硫ゴムの流れが促される。このタイヤ2では、第一周方向溝42fの溝断面積Satが第二周方向溝42nの溝断面積Sbtよりも大きい場合、基準接点Tmは第二基準境界点BB2t側に設定される。この場合、第二凸条74n側への未加硫ゴムの流れが促される。
【0135】
このタイヤ2の製造では、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとが、バランスよくコントロールされるので、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。このタイヤ2では、適正な接地面形状及び接地圧分布が得られる。このタイヤ2は、操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0136】
このタイヤ2では、接地面形状及び接地圧分布の適正化を図る観点から、基準仮想交点BVtから基準境界点BBtまでの距離Xdtの、周方向溝42の溝断面積Stに対する比(Xdt/St)は、0.0008以上が好ましく、0.0014以上がより好ましく、0.0020以上がさらに好ましい。この比(Xdt/St)は、0.0040以下が好ましく、0.0034以下がより好ましく、0.0028以下がさらに好ましい。
【0137】
前述したように、このタイヤ2では、第一周方向溝42fの溝断面積Satは第二周方向溝42nの溝断面積Sbtよりも小さい。第一周方向溝42fの溝断面積Satと第二周方向溝42nの溝断面積Sbtと異なる場合において、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとを、バランスよくコントロールでき、未加硫ゴムの流れに乱れが生じることが効果的に抑えられる観点から、第一周方向溝42f側において、第一基準仮想交点BV1tから第一基準境界点BB1tまでの距離Xd1tの、第一周方向溝42fの断面積Satに対する比(Xd1t/Sat)が0.0008以上0.0040以下が好ましく、第二周方向溝42n側において、第二基準仮想交点BV2tから第二基準境界点BB2tまでの距離Xd2tの、第二周方向溝42nの溝断面積Sbtに対する比(Xd2t/Sbt)が0.0008以上が好ましく、0.0040以下が好ましい。この場合、比(Xd1t/Sat)と比(Xd2t/Sbt)とは同じ値で設定される。
【0138】
前述したように、湾曲陸面46Bの輪郭は1又は複数の円弧で表される。このタイヤ2では、接地面形状及び接地圧分布の適正化を図る観点から、湾曲陸面46Bの輪郭は、第一基準境界点BB1tを通り基準接点Ttにおいて基準面TBLに接する円弧と、第二基準境界点BB2tを通り基準接点Ttにおいて基準面TBLに接する円弧とで表されるのがより好ましい。
【0139】
[湾曲陸面46Bの隣に位置する周方向溝42がショルダー周方向溝42sである場合]
第二周方向溝42nが軸方向においてが最も外側に位置するショルダー周方向溝42sである場合、図2における第二陸面46nが、タイヤ2のショルダー陸面46sをなす。以下に、この図2を用いて、このショルダー陸面46sの輪郭が説明される。
【0140】
このタイヤ2では、第二周方向溝42nがショルダー陸面46sと湾曲陸面46Bとの間に位置する。この第二周方向溝42nにおいて、湾曲陸面46B側の壁50が基準壁50aであり、ショルダー陸面形成46s側の壁50が対向壁50bである。
【0141】
図2において、符号Tstはショルダー陸面46sと基準面TBLとの接点である。接点Tstはショルダー基準接点である。
【0142】
図2において、符号BBstは、第二周方向溝42nの対向壁50bと、ショルダー陸面46sとの境界である。境界BBstはショルダー基準境界点である。二点鎖線BLtsは対向壁50bの仮想線である。符号BVstは、対向壁50bの仮想線BLstと、基準面TBLとの交点で表される仮想交点である。仮想交点BVstはショルダー基準仮想交点である。両矢印Xdstは、ショルダー基準仮想交点BVstからショルダー基準境界点BBstまでの距離である。この距離Xdstは、対向壁50bの仮想線BLstに沿って測定される。両矢印Xwstは、ショルダー基準仮想交点BVstからショルダー基準接点Tstまでの距離である。距離Xwstは、ショルダー基準仮想交点BVstとショルダー基準接点Tstとを結ぶ線分の長さで表される。
【0143】
このタイヤ2では、ショルダー陸面46sの輪郭のうち、ショルダー基準境界点BBstからショルダー基準接点Tstまでの輪郭は、湾曲陸面46Bの、第二基準境界点BB2tから基準接点Ttまでの輪郭と同様にして構成される。具体的には、ショルダー基準仮想交点BVstからショルダー基準境界点BBstまでの距離Xdstは、第二基準仮想交点BV2tから第二基準境界点BB2tまでの距離Xd2tと同じである。ショルダー基準仮想交点BVstからショルダー基準接点Tstまでの距離Xwstは、第二基準仮想交点BV2tから基準接点Ttまでの距離Xw2tと同じである。そして、ショルダー陸面46sの、ショルダー基準境界点BBstからショルダー基準接点Tstまでの輪郭は、湾曲陸面46Bの、第二基準境界点BB2tから基準接点Ttまでの輪郭と同じように、ショルダー基準境界点BBstを通りショルダー基準接点Tstにおいて基準面TBLに接する円弧で表される。
【0144】
このタイヤ2では、ショルダー基準境界点BBstは、ショルダー陸面46sの第二周方向溝42n側の端でもある。図2に示されるように、ショルダー陸面46sの第二周方向溝42n側の端BBstは、径方向において、トレッド面22の基準面TBLよりも内側に位置する。
【0145】
タイヤ2の製造において、キャップ部26が凸条74に押し付けられることで、キャップ部26の未加硫ゴムは、第二凸条74nの軸方向外側部分、すなわちショルダー陸部44sを形成する部分に向かって流れる。このタイヤ2では、ショルダー陸面46sの端BBstがトレッド面22の基準面TBLよりも内側に位置するようにショルダー陸面46sの輪郭が構成される。ショルダー陸部44sを形成する部分に流れ込む未加硫ゴムのボリュームが制限されるので、第二凸条74nに押し付けられる未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくい。このタイヤ2では、ショルダー陸面形成部76sの形状が反映されたショルダー陸面46sが形成される。トレッド4の内面形状の乱れも抑えられるので、このトレッド4の内面が適正な形状で構成される。
【0146】
前述したように、図5に示された、タイヤ2の接地面形状においては、ショルダー陸部44sの周方向外縁は、図9に示された、従来のモールドで製造したタイヤで確認されたショルダー陸部の周方向外縁のように、内向きに凸な形状を呈するのではなく、外向きに膨らむような形状を呈している。接地面面積は明らかに増加しており、このタイヤ2は、従来のモールドで製造したタイヤに比べて、より十分に路面と接触できる。このタイヤ2は操縦安定性のさらなる向上を図ることができる。
【0147】
前述したように、図6に示された、タイヤ2の接地圧分布においては、ミドル陸部44mの縁における接地圧の高まりが、図10に示された、従来のモールドで製造したタイヤで確認されたミドル陸部の縁における接地圧の高まりよりも抑えられている。局所的な接地圧の高まりは明らかに抑えられており、このタイヤ2は耐摩耗性のさらなる向上を図ることができる。
【0148】
[第二実施形態]
図7には、本発明の他の実施形態に係るタイヤ92のトレッド94の断面が示される。図7には、トレッド面96の輪郭が模式的に表されている。図7において、左右方向はタイヤ92の径方向であり、上下方向はタイヤ92の軸方向である。この紙面に対して垂直な方向は、タイヤ92の周方向である。
【0149】
図7に示されたトレッド面96の輪郭は、図2に示されたトレッド面22の輪郭の変形例である。図7に示されたトレッド面96の輪郭のうち、図2に示されたトレッド面22の輪郭と同じ内容の部分には、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0150】
図8には、図7に示されたタイヤ92の製造に用いられるモールド98の一部をなすトレッドリング100の断面が示される。図8には、トレッド面96を形づけるトレッド形成面102の輪郭が模式的に表されている。図8において、左右方向はタイヤ92の径方向であり、上下方向はタイヤ92の軸方向である。この紙面に対して垂直な方向は、タイヤ92の周方向である。
【0151】
図8に示されたトレッド形成面102の輪郭は、図4に示されたトレッド形成面64の輪郭の変形例である。図8に示されたトレッド形成面102の輪郭のうち、図4に示されたトレッド形成面64の輪郭と同じ内容の部分には、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0152】
[湾曲陸面形成部76Bの輪郭]
まず、図8に示されたトレッド形成面102に含まれる湾曲陸面形成部76Bの輪郭が説明される。このトレッド形成面102においても、湾曲陸面形成部76Bの輪郭は1又は複数の円弧で表される。より適正な接地面形状及び接地圧分布が得られる観点から、このトレッド形成面102における湾曲陸面形成部76Bの輪郭は以下に示す4つの円弧で表すことができる。
【0153】
図8において、符号K1mは、第一凸条74fの第一基準側面80aの仮想線BL1m上であって第一基準境界点BB1mと第一基準仮想交点BV1mとの間の任意の位置である。この位置K1mは縦点(以下、第一縦点)である。両矢印Xk1mは、第一基準仮想交点BV1mから第一縦点K1mまでの距離である。この距離Xk1mは、第一基準側面80aの仮想線BL1mに沿って測定される。このトレッド形成面102においては、第一縦点K1mを通り基準接点Tmにおいて基準形成面FBLに接する円弧が接点側円弧(以下、第一接点側円弧)である。
【0154】
図8において、符号J1mは、基準形成面FBL上であって基準接点Tmと第一基準仮想交点BV1mとの間の任意の位置である。この位置J1mは横点(以下、第一横点)である。両矢印Xj1mは、第一基準仮想交点V1mから第一横点J1mまでの距離である。この距離Xj1mは、第一基準仮想交点BV1mと第一横点J1mとを結ぶ線分の長さで表される。符号M1mは、第一横点J1mを通る基準形成面FBLの法線と第一接点側円弧との交点である。この交点M1mが中間境界点(以下、第一中間境界点)である。このトレッド形成面102においては、第一基準境界点BB1mを通り第一中間境界点M1mにおいて第一接点側円弧に接する円弧が境界側円弧(以下、第一境界側円弧)である。
【0155】
図8において、符号K2mは、第二凸条74nの第二基準側面80aの仮想線BL2m上であって第二基準境界点BB2mと第二基準仮想交点BV2mとの間の任意の位置である。この位置K2mは縦点(以下、第二縦点)である。両矢印Xk2mは、第二基準仮想交点BV2mから第二縦点K2mまでの距離である。この距離Yk2mは、第二基準側面80aの仮想線BL2mに沿って測定される。このトレッド形成面102においては、第二縦点K2mを通り基準接点Tmにおいて基準形成面FBLに接する円弧が接点側円弧(以下、第二接点側円弧)である。
【0156】
図8において、符号J2mは、基準形成面FBL上であって基準接点Tmと第二基準仮想交点BV2mとの間の任意の位置である。この位置J2mは横展(以下、第二横点)である。両矢印Xj2mは、第二基準仮想交点V2mから第二横点J2mまでの距離である。この距離Xj2mは、第二基準仮想交点BV2mと第二横点J2mとを結ぶ線分の長さで表される。符号M2mは、第二横点J2mを通る基準形成面FBLの法線と第二接点側円弧との交点である。この交点M1mが中間境界点(以下、第二中間境界点)である。このトレッド形成面102においては、第二基準境界点BB2mを通り第二中間境界点M2mにおいて第二接点側円弧に接する円弧が境界側円弧(以下、第二境界側円弧)である。
【0157】
このモールド98では、湾曲陸面形成部76Bの輪郭のうち、基準接点Tmから第一中間境界点M1mまでの輪郭が第一接点側円弧で表される。第一中間境界点M1mから第一基準境界点BB1mまでの輪郭が第一境界側円弧で表される。基準接点Tmから第二中間境界点M2mまでの輪郭が第二接点側円弧で表される。第二中間境界点M2mから第二基準境界点BB2mまでの輪郭が第二境界側円弧で表される。
【0158】
このモールド98においても、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとが、バランスよくコントロールされる。未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくいので、このモールド98では、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。
【0159】
図示されないが、このモールド98で製造したタイヤ92の接地面形状においては、ミドル陸部44mの周方向外縁は、内向きに凸な形状を呈するのではなく、外向きに膨らむような形状を呈していることが確認され、接地圧分布においては、ミドル陸部44m内での接地圧差が45kPa程度に抑えられることが確認されている。このモールド98及びこのモールド98を用いたタイヤ92の製造方法によれば、タイヤ92の接地面形状及び接地圧分布の適正化を図り、タイヤ92の操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0160】
このモールド98では、タイヤ92の接地面形状及び接地圧分布の適正化を図ることができる観点から、基準仮想交点BVmから縦点Kmまでの距離Xkmの、基準仮想点BVmから基準境界点BBmまでの距離Xdmに対する比(Xkm/Xdm)は、0.40以上が好ましく、0.45以上がより好ましい。この比(Xkm/Xdm)は、0.60以下が好ましく、0.55以下がより好ましい。
【0161】
このモールド98では、タイヤ92の接地面形状及び接地圧分布の適正化を図ることができる観点から、基準仮想交点BVmから横点Jmまでの距離Xjmの、基準仮想交点BVmから基準接点Tmまでの距離Xwmに対する比(Xjm/Xwm)は、0.40以上が好ましく、0.45以上がより好ましい。この比(Xjm/Xwm)は、0.60以下が好ましく、0.55以下がより好ましい。
【0162】
このモールド98では、基準仮想交点BVmから縦点Kmまでの距離Xkmの、基準仮想点BVmから基準境界点BBmまでの距離Xdmに対する比(Xkm/Xdm)が0.40以上0.60以下であり、基準仮想交点BVmから横点Jmまでの距離Xjmの、基準仮想交点BVmから基準接点Tmまでの距離Xwmに対する比(Xjm/Xwm)が0.40以上0.60以下であるのがより好ましい。
【0163】
このモールド56では、第一凸条74fの断面積Samは第二凸条74nの断面積Sbmよりも小さい。第一凸条74fの断面積Samと第二凸条74nの断面積Sbmと異なる場合において、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとを、バランスよくコントロールでき、未加硫ゴムの流れに乱れが生じることを効果的に抑え、タイヤ92の接地面形状及び接地圧分布の適正化が図れる観点から、第一基準仮想交点BV1mから第一縦点K1mまでの距離Xk1mの、第一基準仮想点BV1mから第一基準境界点BB1mまでの距離Xd1mに対する比(Xk1m/Xd1m)が0.40以上0.60以下であり、第二基準仮想交点BV2mから第二縦点K2mまでの距離Xk2mの、第二基準仮想点BV2mから第二基準境界点BB2mまでの距離Xd2mに対する比(Xk2m/Xd2m)が0.40以上0.60以下であるのが好ましい。この場合、比(Xk1m/Xd1m)と比(Xk2m/Xd1m)とは同じ値で設定される。
【0164】
同様の観点から、第一基準仮想交点BV1mから第一横点J1mまでの距離Xj1mの、第一基準仮想交点BV1mから基準接点Tmまでの距離Xw1mに対する比(Xj1m/Xw1m)が0.40以上0.60以下であり、第二基準仮想交点BV2mから第二横点J2mまでの距離Xj2mの、第二基準仮想交点BV2mから基準接点Tmまでの距離Xw2mに対する比(Xj2m/Xw2m)が0.40以上0.60以下であるのが好ましい。この場合、比(Xj1m/Xw1m)と比(Xj2m/Xw2m)とは同じ値で設定される。
【0165】
[湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する凸条74がショルダー凸条74sである場合]
湾曲陸面形成部76Bの隣に位置する第二凸条74nがショルダー凸条74sである場合、図8における第二陸面形成部76nが、タイヤ92のショルダー陸面46sを形成するショルダー陸面形成部76sである。このトレッド形成面102におけるショルダー陸面形成部76sの輪郭のうち、ショルダー基準境界点BBsmからショルダー基準接点Tsmまでの輪郭は、より適正な接地面形状及び接地圧分布が得られる観点から、2つの円弧で表すことができる。以下に、この図8を用いて、ショルダー陸面形成部76sの、ショルダー基準境界点BBsmからショルダー基準接点Tsmまでの輪郭が説明される。
【0166】
図8において、符号Ksmは、第二凸条74nの裏側面80bの仮想線BLsm上であってショルダー基準境界点BBsmとショルダー基準仮想交点BVsmとの間の任意の位置である。この位置Ksmがショルダー縦点である。両矢印Xdkmは、ショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー縦点Ksmまでの距離である。この距離Xdkmは、裏側面80bの仮想線BLsmに沿って測定される。このトレッド形成面102においては、ショルダー縦点Ksmを通りショルダー基準接点Tsmにおいて基準形成面FBLに接する円弧がショルダー接点側円弧である。
【0167】
図8において、符号Jsmは、基準形成面FBL上であってショルダー基準接点Tsmとショルダー基準仮想交点Vsmとの間の任意の位置である。この位置Jsmがショルダー横点である。両矢印Xjsmは、ショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー横点Jsmまでの距離である。この距離Xjsmは、ショルダー基準仮想交点BVsmとショルダー横点Jsmとを結ぶ線分の長さで表される。符号Msmは、ショルダー横点Jsmを通る基準形成面FBLの法線と、ショルダー接点側円弧との交点である。この交点Msmがショルダー中間境界点である。このトレッド形成面102においては、ショルダー基準境界点BBsmを通りショルダー中間境界点Msmにおいてショルダー接点側円弧に接する円弧がショルダー境界側円弧である。
【0168】
このモールド98では、ショルダー陸面形成部76sの輪郭のうち、ショルダー基準接点Tsmからショルダー中間境界点Msmまでの輪郭がショルダー接点側円弧で表され、ショルダー中間境界点Msmからショルダー基準境界点BBsmまでの輪郭がショルダー境界側円弧で表される。そして、第二凸条74nの裏側面80bにおけるショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー基準境界点BBsmまでの距離Xdsmが、基準側面80a、すなわち第二基準側面80aにおける第二基準仮想交点BV2mから第二基準境界点BB2mまでの距離Xd2mと同じであり、ショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー基準接点Tsmまでの距離が、第二基準仮想交点BV2mから基準接点Tmまでの距離Xw2mと同じである。さらにショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー縦点Ksmまでの距離Xdkmが第二基準仮想交点BV2mから第二縦点K2mまでの距離Xk2mと同じであり、ショルダー基準仮想交点BVsmからショルダー横点Jsmまでの距離Xjsmが第二基準仮想交点BV2mから第二横点J2mまでの距離Xj2mと同じである。
【0169】
このモールド98においても、第二凸条74nに押し付けられる未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくいので、ショルダー陸面形成部76sの形状が反映されたショルダー陸面46sが形成される。
【0170】
図示されないが、このモールド98で製造したタイヤ92の接地面形状においては、ショルダー陸部44sの周方向外縁は、内向きに凸な形状を呈するのではなく、外向きに膨らむような形状を呈していることが確認され、接地圧分布においては、ショルダー陸部44s内での接地圧差が60kPa程度に抑えられることが確認されている。このモールド98及びこのモールド98を用いたタイヤ92の製造方法によれば、タイヤ92の接地面形状及び接地圧分布の適正化を図り、タイヤ92の操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0171】
図7に示されたタイヤ92は、以上説明した、トレッド形成面102を有するモールド98を用いて製造される。次に、このトレッド形成面102によって形づけられたトレッド面96の輪郭について説明する。
【0172】
[湾曲陸面46Bの輪郭]
まず、図7に示されたトレッド面96に含まれる湾曲陸面46Bの輪郭が説明される。このトレッド面96においても、湾曲陸面46Bの輪郭は複数の円弧で表される。より適正な接地面形状及び接地圧分布が得られる観点から、このトレッド面96における湾曲陸面46Bの輪郭は以下に示す4つの円弧で表すことができる。
【0173】
図7において、符号K1tは、第一周方向溝42fの第一基準壁50aの仮想線BL1t上であって第一基準境界点BB1tと第一基準仮想交点BV1tとの間の任意の位置である。この位置K1tは縦点(以下、第一縦点)である。両矢印Xk1tは、第一基準仮想交点BV1tから第一縦点K1tまでの距離である。この距離Xk1tは、第一基準仮想交点BV1tと第一縦点K1tとを結ぶ線分の長さで表される。このトレッド面96においては、第一縦点K1tを通り基準接点Ttにおいて基準面TBLに接する円弧が接点側円弧(以下、第一接点側円弧)である。
【0174】
図7において、符号J1tは、基準面TBL上であって基準接点Ttと第一基準仮想交点BV1tとの間の任意の位置である。この位置J1tが横展(以下、第一横点)である。両矢印Xj1tは、第一基準仮想交点BV1tから第一横点J1tまでの距離である。この距離Xj1tは、第一基準仮想交点BV1tと第一横点J1tとを結ぶ線分の長さで表される。符号M1tは、第一横点J1tを通る基準面TBLの法線と第一接点側円弧との交点である。この交点M1tが中間境界点(以下、第一中間境界点)である。このトレッド面96においては、第一基準境界点BB1tを通り第一中間境界点M1tにおいて第一接点側円弧に接する円弧が境界側円弧(以下、第一境界側円弧)である。
【0175】
図7において、符号K2tは、第二周方向溝42nの第二基準壁50aの仮想線BL2t上であって第二基準境界点BB2tと第二基準仮想交点BV2tとの間の任意の位置である。この位置K2tが縦点(以下、第二縦点)である。両矢印Xk2tは、第二基準仮想交点BV2tから第二縦点K2tまでの距離である。この距離Xk2tは、第二基準仮想交点BV2tと第二縦点K2tとを結ぶ線分の長さで表される。このトレッド面96においては、第二縦点K2tを通り基準接点Ttにおいて基準面TBLに接する円弧が接点側円弧(以下、第二接点側円弧)である。
【0176】
図7において、符号J2tは、基準面TBL上であって基準接点Ttと第二基準仮想交点BV2tとの間の任意の位置である。この位置J2tが横展(以下、第二横点)である。両矢印Xj2tは、第二基準仮想交点BV2tから第二横点J2tまでの距離である。この距離Xj2tは、第二基準仮想交点BV2tと第二横点J2tとを結ぶ線分の長さで表される。符号M2tは、第二横点J2tを通る基準面TBLの法線と第二接点側円弧との交点である。この交点M2tが中間境界点(以下、第二中間境界点)である。このトレッド面96においては、第二基準境界点BB2tを通り第二中間境界点M2tにおいて第二接点側円弧に接する円弧が境界側円弧(以下、第二境界側円弧)である。
【0177】
このタイヤ92では、湾曲陸面46Bの輪郭のうち、基準接点Ttから第一中間境界点M1mまでの輪郭が第一接点側円弧で表される。第一中間境界点M1mから第一基準境界点BB1tまでの輪郭が第一境界側円弧で表される。基準接点Ttから第二中間境界点M2tまでの輪郭が第二接点側円弧で表される。そして、第二中間境界点M2mから第二基準境界点BB2tまでの輪郭が第二境界側円弧で表される。
【0178】
このタイヤ92の製造では、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとが、バランスよくコントロールされるので、湾曲陸面形成部76Bの形状が反映された湾曲陸面46Bが形成される。このタイヤ92では、適正な接地面形状及び接地圧分布が得られる。このタイヤ92は、操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0179】
このタイヤ92では、接地面形状及び接地圧分布の適正化を図ることができる観点から、基準仮想交点BVtから縦点Ktまでの距離Xktの、基準仮想点BVtから基準境界点BBtまでの距離Xdtに対する比(Xkt/Xdt)は、0.40以上が好ましく、0.45以上がより好ましい。この比(Xkt/Xdt)は、0.60以下が好ましく、0.55以下がより好ましい。
【0180】
このタイヤ92では、接地面形状及び接地圧分布の適正化を図ることができる観点から、基準仮想交点BVtから横点Jtまでの距離Xjtの、基準仮想交点BVtから基準接点Ttまでの距離Xwtに対する比(Xjt/Xwt)は、0.40以上が好ましく、0.45以上がより好ましい。この比(Xjt/Xwt)は、0.60以下が好ましく、0.55以下がより好ましい。
【0181】
このタイヤ92では、基準仮想交点BVtから縦点Ktまでの距離Xktの、基準仮想点BVtから基準境界点BBtまでの距離Xdtに対する比(Xkt/Xdt)が0.40以上0.60以下であり、基準仮想交点BVtから横点Jtまでの距離Xjtの、基準仮想交点BVtから基準接点Ttまでの距離Xwtに対する比(Xjt/Xwt)が0.40以上0.60以下であるのがより好ましい。
【0182】
このタイヤ92では、第一周方向溝42fの溝断面積Satは第二周方向溝42nの溝断面積Sbtよりも小さい。第一周方向溝42fの溝断面積Satと第二周方向溝42nの溝断面積Sbtとが異なる場合において、第一凸条74f側における未加硫ゴムの流れと、第二凸条74n側における未加硫ゴムの流れとを、バランスよくコントロールでき、未加硫ゴムの流れに乱れが生じることを効果的に抑え、タイヤ92の接地面形状及び接地圧分布の適正化が図れる観点から、第一基準仮想交点BV1tから第一縦点K1tまでの距離Xk1tの、第一基準仮想点BV1tから第一基準境界点BB1tまでの距離Xd1tに対する比(Xk1t/Xd1t)が0.40以上0.60以下であり、第二基準仮想交点BV2tから第二縦点K2tまでの距離Xk2tの、第二基準仮想点BV2tから第二基準境界点BB2tまでの距離Xd2tに対する比(Xk2t/Xd2t)が0.40以上0.60以下であるのが好ましい。この場合、比(Xk1t/Xd1t)と比(Xk2t/Xd1t)とは同じ値で設定される。
【0183】
同様の観点から、第一基準仮想交点BV1tから第一横点J1tまでの距離Xj1tの、第一基準仮想交点BV1tから基準接点Ttまでの距離Xw1tに対する比(Xj1t/Xw1t)が0.40以上0.60以下であり、第二基準仮想交点BV2tから第二横点J2tまでの距離Xj2tの、第二基準仮想交点BV2tから基準接点Ttまでの距離Xw2tに対する比(Xj2t/Xw2t)が0.40以上0.60以下であるのが好ましい。この場合、比(Xj1t/Xw1t)と比(Xj2t/Xw2t)とは同じ値で設定される。
【0184】
[湾曲陸面46Bの隣に位置する周方向溝42がショルダー周方向溝42sである場合]
第二周方向溝42nが軸方向においてが最も外側に位置するショルダー周方向溝42sである場合、図7における第二陸面46nが、タイヤ2のショルダー陸面46sをなす。より適正な接地面形状及び接地圧分布が得られる観点から、このトレッド面96におけるショルダー陸面46sの輪郭のうち、ショルダー基準境界点BBstからショルダー基準接点Tstまでの輪郭は、以下に示す2つの円弧で表すことができる。以下に、この図7を用いて、ショルダー陸面46sの、ショルダー基準境界点BBstからショルダー基準接点Tstまでの輪郭が説明される。
【0185】
図7において、符号Kstは、第二周方向溝42nの対向壁50bの仮想線BLst上であってショルダー基準境界点BBstとショルダー基準仮想交点BVstとの間の任意の位置である。この位置Kstがショルダー縦点である。両矢印Xdktは、ショルダー基準仮想交点BVstからショルダー縦点Kstまでの距離である。この距離Xdktは、対向壁50bの仮想線BLstに沿って測定される。このトレッド面96においては、ショルダー縦点Kstを通りショルダー基準接点Tstにおいて基準面TBLに接する円弧がショルダー接点側円弧である。
【0186】
図7において、符号Jstは、基準面TBL上であってショルダー基準接点Tstとショルダー基準仮想交点Vstとの間の任意の位置である。この位置Jstがショルダー横点である。両矢印Xjstは、ショルダー基準仮想交点BVstからショルダー横点Jstまでの距離である。この距離Xjstは、ショルダー基準仮想交点BVstとショルダー横点Jstとを結ぶ線分の長さで表される。符号Mstは、ショルダー横点Jstを通る基準面TBLの法線と、ショルダー接点側円弧との交点である。この交点Mstがショルダー中間境界点である。このトレッド面96においては、ショルダー基準境界点BBstを通りショルダー中間境界点Mstにおいてショルダー接点側円弧に接する円弧がショルダー境界側円弧である。
【0187】
このタイヤ92では、ショルダー陸面46sの輪郭のうち、ショルダー基準接点Tstからショルダー中間境界点Mstまでの輪郭がショルダー接点側円弧で表され、ショルダー中間境界点Mstからショルダー基準境界点BBstまでの輪郭がショルダー境界側円弧で表される。そして、第二周方向溝42nの対向壁50bにおけるショルダー基準仮想交点BVstからショルダー基準境界点BBstまでの距離Xdstが、基準壁50a、すなわち第二基準壁50aにおける第二基準仮想交点BV2tから第二基準境界点BB2tまでの距離Xd2tと同じであり、ショルダー基準仮想交点BVstからショルダー基準接点Tstまでの距離が、第二基準仮想交点BV2tから基準接点Ttまでの距離Xw2tと同じである。さらにショルダー基準仮想交点BVstからショルダー縦点Kstまでの距離Xdktが第二基準仮想交点BV2tから第二縦点K2tまでの距離Xk2tと同じであり、ショルダー基準仮想交点BVstからショルダー横点Jstまでの距離Xjstが第二基準仮想交点BV2tから第二横点J2tまでの距離Xj2tと同じである。
【0188】
このタイヤ92の製造においても、第二凸条74nに押し付けられる未加硫ゴムの流れに乱れは生じにくいので、ショルダー陸面形成部76sの形状が反映されたショルダー陸面46sが形成される。このタイヤ92では、適正な接地面形状及び接地圧分布が得られる。このタイヤ92は、操縦安定性及び耐摩耗性の向上を達成することができる。
【0189】
以上説明したように、本発明のタイヤ用モールド及びタイヤの製造方法によれば、タイヤの接地面形状及び接地圧分布の適正化を図ることができる。そして、このタイヤ用モールド及びタイヤの製造方法によって得られるタイヤは、適正な接地面形状及び接地圧分布が得られるので、操縦安定性や耐摩耗性の向上を図ることができる。本発明は、9mm以上の溝幅を有し、45mm以上の大きな溝断面積を有する周方向溝をトレッドに刻む場合において、優れた効果を奏する。
【0190】
前述したように、トレッド形成面の凸条はキャップ部を押し付ける。本発明は、9mm以上の溝幅を有し、45mm以上の大きな溝断面積を有する周方向溝をキャップ部に刻み、このキャップ部のための未加硫ゴムのムーニー粘度が80以上である場合において、顕著な効果を奏する。なお、ムーニー粘度は、ムーニー粘度ML1+4(100℃)を意味し、JIS K6300-1に準じて測定される。
【産業上の利用可能性】
【0191】
以上説明された、タイヤの接地面形状及び接地圧分布の適正化を図る技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0192】
2、92・・・タイヤ
2r・・・生タイヤ
4、94・・・トレッド
14・・・コード補強層
22・・・トレッド面
24、96・・・ベース部
26・・・キャップ部
34・・・ベルト
36・・・バンド
40・・・溝
42、42s、42m、42D、42T・・・周方向溝
44、44s、44m・・・陸部
46、46s、46m、46B、46f、46n・・・陸面
48・・・大周方向溝42Dの底
50、50a、50b・・・大周方向溝42Dの壁
52・・・小周方向溝42Tの底
54、54a、54b・・・小周方向溝42Tの壁
56、98・・・モールド
58、100・・・トレッドリング
64、102・・・トレッド形成面
72・・・キャビティ面
74、74D、74T・・・凸条
76、76B、76f、76n・・・陸面形成部
78・・・大凸条74Dの頂面
80、80a、80b・・・大凸条74Dの側面
82・・・小凸条74Tの頂面
84、84a、84b・・・小凸条74Tの側面
図1
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図10