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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081957
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】断熱パネルの固定用金具及び固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20220525BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
E04B1/80 100A
E04F13/08 101T
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193225
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】511133897
【氏名又は名称】株式会社MXエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】湊 洋一
(72)【発明者】
【氏名】夛田 勉
【テーマコード(参考)】
2E001
2E110
【Fターム(参考)】
2E001FA04
2E001GA13
2E001HB01
2E001LA01
2E110AA02
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB22
2E110CC04
2E110CC14
2E110DA17
2E110DC12
2E110GA33Z
2E110GB01Z
2E110GB02Z
(57)【要約】
【課題】実用に耐え得る熱性能を有する断熱パネルの固定用金具及びこれを用いた固定方法を提供する。
【解決手段】矩形の金属板の両端を略90度折り曲げて1つの平板部と2つの折曲部を形成した断熱パネルの固定用金具であって、前記平板部は、略中央に1つの大径の孔を有し、当該大径の孔の周囲に複数の小径の孔を有しており、第1の折曲部は、長手方向略中心線上に2つの中径の孔を有しており、第2の折曲部は、複数の小径の孔を有しており、前記第2の折曲部の複数の小径の孔少なくとも一部は、ビス止めのための孔として機能する断熱パネルの固定用金具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の金属板の両端を略90度折り曲げて1つの平板部と2つの折曲部を形成した断熱パネルの固定用金具であって、
前記各折曲部の板面は、前記平板部の板面の面積に比して、略38%の面積を有しており、
前記平板部は、その板面が略正方形であり、その面積の26.544%以上を占める1又は複数の開口部を有しており、
第1の折曲部は、その面積の14.952%以上を占める1又は複数の開口部を有しており、
第2の折曲部は、1又は複数の開口部を有しており、
前記第2の折曲部の開口部のうち少なくとも一部は、ビス止めのための孔として機能する
断熱パネルの固定用金具。
【請求項2】
前記平板部の開口部は、前記平板部の略中央に形成された1つの大径の孔と、当該大径の孔の周囲に形成された複数の小径の孔とからなることを特徴とする請求項1に記載の断熱パネルの固定用金具。
【請求項3】
前記第1の折曲部の開口部は、前記前記第1の折曲部の長手方向略中心線上に配置される2つ以上の中径の孔からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱パネルの固定用金具。
【請求項4】
前記中径の孔は、前記第1の折曲部の各短辺端から略5mm離隔しており、
前記小径の孔は、前記平板部に8つ、前記第2の折曲部に6つ、互いに略6mm以上離隔して形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の断熱パネルの固定用金具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の断熱パネルの固定用金具を用いて建物の内壁に対して断熱パネルを固定する方法であって、
使用する断熱パネルの厚みに略等しい平板部の縦横寸法を有する固定用金具を用意し、
前記固定用金具が前記断熱パネルの寸法に応じた縦横間隔で配列されるよう、前記固定用金具の第2の折曲部の小径の孔を通じて施工面にビス止めし、
前記断熱パネルの1の水平端を前記固定用金具が形成するコの字部分に嵌合し、
前記断熱パネルの他の水平端を水平方向隣接する前記固定用金具の平板部に当接させて、前記断熱パネルが左右の前記固定用金具の間に隙間無く嵌まりこむようにして、固定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁にパネル状の断熱材を取り付ける際に使用する固定用金具及びこれを用いた固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅の断熱工法としては、柱の間に断熱材を設置する内断熱工法と、柱、内壁の外側に断熱材を設置する外断熱工法とがある。従来、外断熱工法は、北海道、東北地方などの寒冷地域で内断熱工法と併用されることが多かったが、断熱性の他に気密性、防湿性が高いことなどから、全国的に利用されるようになってきた。
【0003】
外断熱工法として一般的なものには、断熱材を充填した断熱パネルを柱、内壁の外側に隙間なく並べて設置する方法がある。断熱材は、グラスウール、ロックウール等の無機繊維系断熱材、発泡プラスチック系断熱材、セルロースファイバー等の木質繊維系断熱材などである。
【0004】
特許文献1には、断熱パネルの縁に係合するコの字型の取付金具を用い、この金具と外壁及び躯体側材とを固定する方法が提案されている(図9図14等)。これにより、断熱パネルの外壁側から長いビスを打ち込んで躯体側材に固定する従来の方法に比べて、作業性が向上するとされている。また、取付金具の形状は、コの字型に限らず、L字型、乙字型のものも提案されている(図22図23)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-021351号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】湊洋一著「どうして、日本の家は夏暑いのか?」アスペクト,2011年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に提案されている取付金具を用いた断熱パネルの施工は、従来の張り巡らせた木枠内に断熱材を充填する工法に比べれば、作業性は著しく向上し、また、木枠を用いない分、施工費用も低減される。しかしながら、金具(鉄製)は熱伝導性が高いという大きな問題がある。鉄、木材、グラスウールの熱伝導率は、それぞれ、およそ10W/mK、0.07W/mK、0.034W/mKであることが知られている。
【0008】
特許文献1の工法では、取付金具を躯体側材にビス止めしているが、この取付金具、ビス共に、熱伝導媒体となるため、外壁と躯体側材の間にサーマルブリッジ(熱橋)ができてしまうことになる。そうすると、いくら熱伝導性の低い断熱材を用いても、熱橋となっている取付金具が高い熱伝導性を発揮するため、全体として断熱性能が大幅に下がる。このような問題から、特許文献1に提案されているような、断熱パネルを固定金具で固定する工法は、ほとんど実用化されていない。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、実用に耐え得る熱性能を有する断熱パネルの固定用金具及びこれを用いた固定方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、断熱パネル固定用金具の大部分を必要強度を失わない程度に切り欠くことにより、熱伝導性を大幅に低下させた、実用に耐え得る熱性能を有する固定用金具を作製することに成功し、本発明を成すに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、矩形の金属板の両端を略90度折り曲げて1つの平板部と2つの折曲部を形成した断熱パネルの固定用金具であって、前記各折曲部の板面は、前記平板部の板面の面積に比して、略38%の面積を有しており、前記平板部は、その板面が略正方形であり、その面積の26.544%以上を占める1又は複数の開口部を有しており、第1の折曲部は、その面積の14.952%以上を占める1又は複数の開口部を有しており、第2の折曲部は、1又は複数の開口部を有しており、前記第2の折曲部の開口部のうち少なくとも一部は、ビス止めのための孔として機能する断熱パネルの固定用金具を提供するものである。
【0012】
本発明の断熱パネルの固定用金具において、前記平板部の開口部は、前記平板部の略中央に形成された1つの大径の孔と、当該大径の孔の周囲に形成された複数の小径の孔とからなることを特徴とする。
【0013】
本発明の断熱パネルの固定用金具において、前記第1の折曲部の開口部は、前記前記第1の折曲部の長手方向略中心線上に配置される2つ以上の中径の孔からなることを特徴とする。
【0014】
本発明の断熱パネルの固定用金具において、前記中径の孔は、前記第1の折曲部の各短辺端から略5mm離隔しており、前記小径の孔は、前記平板部に8つ、前記第2の折曲部に6つ、互いに略6mm以上離隔して形成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の断熱パネルの固定用金具を用いて建物の内壁に対して断熱パネルを固定する方法であって、使用する断熱パネルの厚みに略等しい平板部の縦横寸法を有する固定用金具を用意し、前記固定用金具が前記断熱パネルの寸法に応じた縦横間隔で配列されるよう、前記固定用金具の第2の折曲部の小径の孔を通じて施工面にビス止めし、前記断熱パネルの1の水平端を前記固定用金具が形成するコの字部分に嵌合し、前記断熱パネルの他の水平端を水平方向隣接する前記固定用金具の平板部に当接させて、前記断熱パネルが左右の前記固定用金具の間に隙間無く嵌まりこむようにして、固定する方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明の断熱パネルの固定用金具及び固定方法によれば、断熱パネル施工部分の全体として必要な断熱性能を維持しつつ、固定用金具を用いた作業性の高い断熱パネルの取付を行うことが可能となる。また、木枠を用いないため、施工費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の断熱パネル固定用金具の全体概観を示す図である。(a)、(b)にそれぞれ異なる方向からの斜視図を示している。
図2】本発明の断熱パネル固定用金具の6面図である。
図3】本発明の断熱パネル固定用金具が内壁に固定された状態を示す図である。
図4】内壁に固定された本発明の断熱パネル固定用金具に対して、断熱パネルを嵌め込む方法を示す図である。
図5】本発明の実施例のコンピュータシミュレーションにおいて想定した固定用金具、木枠の配置を示す図である。
図6】本発明の実施例におけるコンピュータシミュレーションに用いた壁面の構造モデルを示す図である。
図7】本発明の実施例におけるコンピュータシミュレーションによる、固定用金具ありの場合のシミュレーション結果を示す図である。
図8】本発明の実施例におけるコンピュータシミュレーションによる、固定用金具なしの場合のシミュレーション結果を示す図である。
図9】本発明の実施例におけるコンピュータシミュレーションに用いた壁面の構造モデルを示す図である。
図10】本発明の実施例におけるコンピュータシミュレーションによる、木枠ありの場合のシミュレーション結果を示す図である。
図11】上記と同様の固定用金具、木枠の配置を想定し、熱貫流率Uおよび熱抵抗値Rを算出したコンピュータシミュレーションの説明図である。
図12】上記と同様の固定用金具、木枠の配置を想定し、熱貫流率Uおよび熱抵抗値Rを算出したコンピュータシミュレーションの説明図である。
図13】上記と同様の固定用金具、木枠の配置を想定し、熱貫流率Uおよび熱抵抗値Rを算出したコンピュータシミュレーションの説明図である。
図14】上記と同様の固定用金具、木枠の配置を想定し、熱貫流率Uおよび熱抵抗値Rを算出したコンピュータシミュレーションの説明図である。
図15】上記と同様の固定用金具、木枠の配置を想定し、熱貫流率Uおよび熱抵抗値Rを算出したコンピュータシミュレーションの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の断熱パネルの固定用金具及び固定方法を実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1図15は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。図2は、本発明の断熱パネル固定用金具の6面図である。
【0019】
(1)断熱パネル固定用金具の構成
図1は、本発明の断熱パネル固定用金具の全体概観を示す図である。(a)、(b)にそれぞれ異なる方向からの斜視図を示している。
図1に示すように、本発明の断熱パネル固定用金具は、金属板の両端を略90度折り曲げたコの字型の形状を有する。金属板は、鋼板が望ましいが、必要な強度と熱性能を保持する他の金属を用いてもよい。図1(a)の右側側面が外壁材に面する部分であり、図1(b)の右側側面が内壁材に面する部分である。
【0020】
図1に示すように、本発明の断熱パネル固定用金具は、平板部分と左右の折り曲げ部分を有しており、平板部分の横幅は、断熱パネルの厚みに相当する。平板部分中央に1つの大径の孔及び8つの小径の孔、一方の折り曲げ部分に2つの中径の孔(a)、他方の折り曲げ部分に6つの小径の孔(b)を有している。これらの孔の位置及び数は、必要な強度と熱性能を保持できる範囲において任意に設計することが可能である。
【0021】
(2)断熱パネル固定用金具を用いた施工方法
まず、図3に示すように、本発明の断熱パネル固定用金具を内壁に固定する。図1(b)の右側側面に示す小径の孔を通じて断熱パネル固定用金具を内壁に対してビス止めすることができる。尚、ビス止めは4つ程度の任意の孔を通して行うが、どの孔を使用するかは、施工状況に応じて適宜選択できる。また、本発明の断熱パネル固定用金具は、施工状況に応じて小径の孔の数、大きさ、配置などを適宜変更できるものである。
【0022】
図3に示すように、本発明の断熱パネル固定用金具が内壁に対して、同じ姿勢で一定間隔で固定される。この配置は、使用する断熱パネルの寸法に合わせたものである。すなわち、断熱パネル固定用金具の横方向の配置間隔は、使用する断熱パネルの横幅に対応しており、縦方向の配置間隔は、使用する断熱パネルの縦幅に対応している。開口部周りなどでは、変則的な配置となることもある。
【0023】
図4は、内壁に固定された本発明の断熱パネル固定用金具に対して、断熱パネルを嵌め込む方法を示す図である。
図3に示すように、断熱パネル固定用金具は全て同じ姿勢で一定間隔で固定されている。そこで、図4における左側の断熱パネル固定用金具のコの字型が内側に向いている部分に対し、断熱パネルの左側縁を係合し、断熱パネルを内壁に向かって押しつけることで、断熱パネルの右側縁が図4における右側の断熱パネル固定用金具の平板部分に当接して、左右の断熱パネル間に収納されることになる。従来の方法に比べて簡易で作業性の高い取付方法である。
【0024】
(3)断熱パネル固定用金具の断熱性能(1)
本発明の断熱パネルの固定用金具の実施例として、図1に示すものと同様の構成で、以下のような固定用金具を作製した。
鋼板厚み:1.5mm
平板部分寸法:105mm×105mm
左右折曲部分寸法:40mm×105mm(左右共通)
折曲角度:90度
大径の孔の直径:60mm
中径の孔の直径:20mm
小径の孔の直径:4mm
大径の孔は、中心が平板部分の中央に位置する。2つの中径の孔は、中心が折曲部分の長手方向中心線上に位置し、かつ、各短辺端から5mm離隔している。小径の孔は、平板部分に8つ、中径の孔を形成しない方の折曲部分に6つ、互いに6mm以上離隔して形成される。
【0025】
固定用金具の開口割合は次のようになる。
平板部分
表面積11025mm2のうち、大径の孔が900πmm2、小径の孔が32πmm2を占めており、π=3.14とすると、開口部面積は2926.48mm2で、全体の26.544%を占める。
体積16537.5mm3のうち、大径の孔が1350πmm3、小径の孔が48πmm3を占めており、π=3.14とすると、開口部体積は4389.72mm3で、全体の26.544%を占める。
折曲部分(1)
表面積4200mm2のうち、中径の孔が200πmm2を占めており、π=3.14とすると、開口部面積は628mm2で、全体の14.952%を占める。
体積6300mm3のうち、中径の孔が300πmm3を占めており、π=3.14とすると、開口部体積は942mm3で、全体の14.952%を占める。
折曲部分(2)
表面積4200mm2のうち、小径の孔が24πmm2を占めており、π=3.14とすると、開口部面積は75.36mm2で、全体の1.794%を占める。
体積6300mm3のうち、小径の孔が36πmm3を占めており、π=3.14とすると、開口部体積は113.04mm3で、全体の1.794%を占める。
【0026】
上記の固定用金具を木造住宅の内壁に固定し、断熱材を配置した場合における熱伝達について、コンピュータシミュレーションを行った。
設置条件として、
平断面の柱の外側に固定用金具を固定すると想定した(最も条件が悪い)。図5(A)に示すように、固定用金具の配置間隔は、水平方向455mm、垂直方向600mmとし、1繰り返し単位である455mm×600mmの領域をシミュレーション対象とした。
計算条件として、
室温100℃、外気温0℃として温度計算し、内壁側通気層から外壁表面までの水平方向の熱伝達をシミュレーションした。
また、比較対象として、同条件で固定用金具を配置しない場合における熱伝達についても、コンピュータシミュレーションを行った。
図6は、このシミュレーションに用いた壁面の構造モデルを示す図である。
図7は、固定用金具ありの場合のシミュレーション結果、図8は、固定用金具なしの場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0027】
続いて、従来の木枠を用いた断熱工法における熱伝達について、コンピュータシミュレーションを行った。
設置条件として、
平断面の柱の外側に木枠が位置すると想定した(最も条件が悪い)。図5(B)に示すように、木枠は水平方向に延伸する枠材が垂直方向に所定間隔で配置されるものとする。ここでは、木枠の垂直方向配置間隔を600mmとし、上記の固定用金具の場合に合わせ、1繰り返し単位を455mm×600mmとしてこの領域をシミュレーション対象とした。
計算条件として、
室温100℃、外気温0℃として温度計算し、内壁側通気層から外壁表面までの水平方向の熱伝達をシミュレーションした。
図9は、このシミュレーションに用いた壁面の構造モデルを示す図である。
図10は、木枠ありの場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0028】
これらのシミュレーション結果から、1繰り返し単位である455mm×600mmの領域において、
固定金具は、その存在部分にはサーマルブリッジを形成するものの、それ以外の部分(445mmのうち約340mm)には影響を及ぼさないこと(図7
木枠も、その存在部分に満遍なくサーマルブリッジを形成すること(図10)、
が確認された。
各シミュレーションにおける熱貫流率の計算を行うと、木枠ありの場合では熱貫流率が0.462 W/m2K、固定用金具ありの場合では熱貫流率が0.312 W/m2K、木枠、固定金具ともになしの場合では熱貫流率が0.226 W/m2Kと算出された。
すなわち、サーマルブリッジの形成状況からも、数値上からも、本発明の断熱パネル固定用金具を用いた断熱工法は、従来の木枠を用いた断熱工法に比べて、断熱性能が向上することが分かる。
【0029】
(4)断熱パネル固定用金具の断熱性能(2)
図11~15は、上記と同様の固定用金具、木枠の配置を想定し、熱貫流率Uおよび熱抵抗値Rを算出したコンピュータシミュレーションの説明図である。特に、固定用金具の大径の孔及び中径の孔の有無が熱貫流率Uおよび熱抵抗値Rにどの程度影響を及ぼすかを定量した(折り曲げ部における小径の孔の影響は無視した)。
【0030】
これらのシミュレーションによると、断熱材が連続している部分に比べて、孔のない固定用金具がある場合は熱抵抗が16.1%低下し、孔のある固定用金具がある場合は熱抵抗が13.1%低下し、木枠がある場合は熱抵抗が15.4%低下したことが分かる。
【0031】
すなわち、本実施例の固定金具は、孔(少なくとも大径の孔及び中径の孔で本実施例と同じかそれ以上の開口面積)を有することで、本来木枠よりも劣っていた断熱性能を向上させ、木枠を用いるよりも有利となることが明らかとなった。
【0032】
以上、本発明の断熱パネルの固定用金具及び固定方法について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態における固定用金具の構成、特に、材質、寸法、形状、孔の形状寸法、数などについて様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の断熱パネルの固定用金具及び固定方法は、建築材料の製造産業において利用することができるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15