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  • 特開-レーシングカート用タイヤ 図1
  • 特開-レーシングカート用タイヤ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083206
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】レーシングカート用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20220527BHJP
   B60C 9/06 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C11/00 B
B60C9/06 E
B60C11/00 F
B60C11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194508
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】大小瀬 求
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB09
3D131BC05
3D131BC13
3D131BC31
3D131BC34
3D131BC38
3D131BC39
3D131CA03
3D131DA03
3D131DA09
3D131DA13
3D131EA02U
3D131EA08X
3D131EA10U
(57)【要約】      (修正有)
【課題】走行性能を維持しつつ耐久性能を向上させたレーシングカート用タイヤを提供する。
【解決手段】レーシングカート用タイヤ1である。トレッドゴム10のベースゴム部11の80~120℃におけるゴム硬度は、トレッドゴム10のキャップゴム部12の80~120℃におけるゴム硬度の90%~110%である。ベースゴム部11の100℃における損失正接tanδbは、キャップゴム部12の100℃における損失正接tanδcよりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーシングカート用タイヤであって、
一対のビード部の間をトロイド状に延びるバイアス構造のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴムとを具え、
前記トレッドゴムは、ベースゴム部と、前記ベースゴム部のタイヤ半径方向の外側に配されてトレッド接地面を構成するキャップゴム部とを含み、
前記ベースゴム部の80~120℃におけるゴム硬度は、前記キャップゴム部の80~120℃におけるゴム硬度の90%~110%であり、
前記ベースゴム部の100℃における損失正接tanδbは、前記キャップゴム部の100℃における損失正接tanδcよりも小さい、
レーシングカート用タイヤ。
【請求項2】
トレッド部のキャンバー量が6mm以上である、請求項1に記載のレーシングカート用タイヤ。
【請求項3】
前記ベースゴム部は、そのタイヤ半径方向の厚さがタイヤ軸方向の両外側に向かって小さくなり、かつ、両側の接地端よりもタイヤ軸方向の内側で途切れる、請求項1又は2に記載のレーシングカート用タイヤ。
【請求項4】
前記ベースゴム部のタイヤ軸方向の長さは、タイヤ断面幅の15%~60%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレーシングカート用タイヤ。
【請求項5】
前記ベースゴム部は、前記ベースゴム部のタイヤ半径方向の厚さがタイヤ軸方向の両側に向かって連続的に小さくなるテーパ端部を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーシングカート用タイヤ。
【請求項6】
前記テーパ端部のタイヤ軸方向の長さは、タイヤ断面幅の5%以上である、請求項5に記載のレーシングカート用タイヤ。
【請求項7】
前記ベースゴム部は、タイヤ半径方向の厚さが最大となる最大厚さ部を含み、
前記最大厚さ部は、タイヤ赤道を含んでタイヤ軸方向に延びる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレーシングカート用タイヤ。
【請求項8】
前記最大厚さ部のタイヤ軸方向の長さは、タイヤ断面幅の10%~40%である、請求項7に記載のレーシングカート用タイヤ。
【請求項9】
前記最大厚さ部のタイヤ半径方向の厚さは、前記トレッドゴムのタイヤ半径方向の全厚さの20%~50%である、請求項7又は8に記載のレーシングカート用タイヤ。
【請求項10】
前記トレッドゴムのタイヤ半径方向の全厚さは、9.0mm以下である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のレーシングカート用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーシングカート用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、優れたハンドル応答性を維持しつつ、ハンドルの効き、ブレーキ性能、及び、耐摩耗性能を向上することを目的としたレーシングカート用空気入りタイヤが記載されている。この空気入りタイヤにおいては、トレッド部のセンター部の幅と、センター部及びトレッド部のショルダー部のトレッドラジアスと、タイヤ外径とショルダー部端部とのタイヤ径方向の差と、が規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-42711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、レーシングカートには、走行時の衝撃を吸収するためのサスペンションが設けられていない。このため、トレッド部のキャンバー量を相対的に大きくすることで、接地圧分布を均一にし、かつ、その荷重依存性を小さくして、走行性能を高めることが知られている。
【0005】
他方、バイアス構造のカーカスを有するレーシングカート用タイヤにおいて、上述のようにトレッド部のキャンバー量を大きくすると、タイヤ赤道付近において、トレッドゴムの歪が大きくなる。これにより、タイヤ赤道付近のトレッドゴムの温度が過度に大きくなり、トレッドゴムが剥がれる等の損傷が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、走行性能を維持しつつ耐久性能を向上させたレーシングカート用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、レーシングカート用タイヤであって、一対のビード部の間をトロイド状に延びるバイアス構造のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴムとを具え、前記トレッドゴムは、ベースゴム部と、前記ベースゴム部のタイヤ半径方向の外側に配されてトレッド接地面を構成するキャップゴム部とを含み、前記ベースゴム部の80~120℃におけるゴム硬度は、前記キャップゴム部の80~120℃におけるゴム硬度の90%~110%であり、前記ベースゴム部の100℃における損失正接tanδbは、前記キャップゴム部の100℃における損失正接tanδcよりも小さい。
【0008】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、トレッド部のキャンバー量が6mm以上である、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、前記ベースゴム部は、そのタイヤ半径方向の厚さがタイヤ軸方向の両外側に向かって小さくなり、かつ、両側の接地端よりもタイヤ軸方向の内側で途切れる、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、前記ベースゴム部のタイヤ軸方向の長さが、タイヤ断面幅の15%~60%である、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、前記ベースゴム部が、前記ベースゴム部のタイヤ半径方向の厚さがタイヤ軸方向の両側に向かって連続的に小さくなるテーパ端部を含む、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、前記テーパ端部のタイヤ軸方向の長さが、タイヤ断面幅の5%以上である、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、前記ベースゴム部が、タイヤ半径方向の厚さが最大となる最大厚さ部を含み、前記最大厚さ部は、タイヤ赤道を含んでタイヤ軸方向に延びる、のが望ましい。
【0014】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、前記最大厚さ部のタイヤ軸方向の長さが、タイヤ断面幅の10%~40%である、のが望ましい。
【0015】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、前記最大厚さ部のタイヤ半径方向の厚さが、前記トレッドゴムのタイヤ半径方向の全厚さの20%~50%である、のが望ましい。
【0016】
本発明に係るレーシングカート用タイヤは、前記トレッドゴムのタイヤ半径方向の全厚さが、9.0mm以下である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレーシングカート用タイヤは、上記の構成を採用することで、走行性能を維持しつつ耐久性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のレーシングカート用タイヤの一実施形態の断面図である。
図2図1の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のレーシングカート用タイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がる。)1のタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。図1には、CIK規定のリム(図示省略)にリム組みされかつ100kPaの内圧が充填された無負荷の標準状態におけるタイヤ1が示される。CIK規定のリムは、本明細書では、国際カート委員会(Commission Internationale de Karting)がレーシングカート用に規定したリムのことである。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法は、前記標準状態での値である。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、一対のビード部4の間をトロイド状に延びるバイアス構造のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム10とを具えている。
【0021】
トレッドゴム10は、ベースゴム部11と、ベースゴム部11のタイヤ半径方向の外側に配されるキャップゴム部12とを含んでいる。
【0022】
ベースゴム部11の80~120℃におけるゴム硬度hbは、キャップゴム部12の80~120℃におけるゴム硬度hcの90%~110%とされている。このようなトレッドゴム10は、レーシング走行中に高温となるトレッドゴム10のベースゴム部11とキャップゴム部12との間での剛性(硬度)変化を小さくし、走行性能をさらに向上させる。ゴム硬度は、本明細書では、JIS-K6253に準拠して80~120℃の環境下でデュロメータータイプAにより測定されたデュロメータA硬さである。なお、ベースゴム部11及びキャップゴム部12のゴム硬度は、上記の温度範囲内であれば、両者の温度が異なる場合でも、上記比率の90%~110%を充足する。
【0023】
ベースゴム部11の100℃における損失正接tanδbは、キャップゴム部12の100℃における損失正接tanδcよりも小さくされている。このようなトレッドゴム10では、レーシング走行中、放熱されにくいタイヤ内部のトレッドゴム10の温度上昇を抑えることができ、その損傷を抑制することができる。また、ベースゴム部11は、トレッド部2の剛性変化を小さくする。損失正接tanδは、本明細書では、JIS-K6394の規定に準じて、次に示される条件で(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて測定された値が採用されている。
初期歪:5%
振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:100℃
【0024】
タイヤ1は、本実施形態では、トレッド部2のキャンバー量σが6mm以上であるのが望ましい。このようなタイヤ1は、レーシング走行時の接地圧分布が均一化されるので、走行性能が高く維持される。キャンバー量σは、本明細書では、トレッド接地面(踏面)2a上のタイヤ赤道C位置と接地端Teとの間のタイヤ半径方向の距離である。接地端Teは、前記標準状態のタイヤ1に、荷重0.5kNを負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた時のタイヤ軸方向の外端である。また、タイヤ赤道C上に溝等の凹部が設けられる場合は、前記凹部を埋めて得られる仮想のトレッド接地面(図示省略)上のタイヤ赤道C位置が適用される。
【0025】
キャンバー量σが過度に大きい場合、トレッド接地面2aの面積が小さくなり、走行性能が低下するおそれがある。このような観点より、キャンバー量σは、8mm以上が望ましく、12mm以下が望ましく、10mm以下がさらに望ましい。
【0026】
タイヤ1は、本実施形態では、カーカス6の半径方向外側に、所謂ブレーカ層及びバンド層などのトレッド補強コード層を具えておらず、カーカス6の半径方向外側に、トレッドゴム10が隣接している。このようなタイヤ1は、質量を小さく抑えることができるので、走行性能をより高く維持する。
【0027】
カーカス6は、本実施形態では、タイヤ半径方向の内外に配される2枚のカーカスプライ6A、6Bで形成されている。各カーカスプライ6A、6Bは、例えば、両側のビード部4に埋設されたビードコア5間を延びる本体部6aと、本体部6aに連なりビードコア5の回りで折り返される折返し部6bとを含んでいる。カーカスプライ6A、6Bは、それぞれ、タイヤ赤道Cに対して20~45度の角度で配列された複数本のカーカスコードをトッピングゴム(図示省略)で被覆することにより形成されている。内のカーカスプライ6Aのカーカスコードは、外のカーカスプライ6Bのカーカスコードとタイヤ赤道Cに対して逆向きに傾斜している。前記カーカスコード及び前記トッピングゴムには、周知の材料が採用される。
【0028】
内のカーカスプライ6Aのタイヤ半径方向の外端7aは、本実施形態では、タイヤ最大幅位置Mよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。外のカーカスプライ6Bのタイヤ半径方向の外端7bは、本実施形態では、タイヤ最大幅位置Mよりもタイヤ半径方向の内側に位置している。外のカーカスプライ6Bの外端7bと内のカーカスプライ6Aの外端7aとの間のタイヤ半径方向の距離Laは、タイヤ断面高さH1の15%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、35%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。タイヤ最大幅位置Mは、本明細書では、サイドウォール部3の外面3aがタイヤ軸方向外側に最も張り出す位置である。外面3aは、本明細書では、部分的に形成される凹凸(例えば、装飾用のセレーション、標章表示用のリブ、及び、サイドプロテクトタなど)を排除して特定される滑らかな曲線である。また、図中のBLは、前記リムのリム径を規定するビードベースラインである。
【0029】
ベースゴム部11のゴム硬度hb、及び、キャップゴム部12のゴム硬度hcは、例えば、15以上が望ましく、20以上がさらに望ましく、35以下が望ましく、30以下がさらに望ましい。また、本実施形態では、ベースゴム部11のゴム硬度hbが、キャップゴム部12のゴム硬度hcよりも大きくなされている。
【0030】
ベースゴム部11の損失正接tanδbとキャップゴム部12の損失正接tanδcとの差(tanδc-tanδb)が過度に大きい場合、トレッドゴム10の剛性変化が大きくなり、グリップ力がタイヤ軸方向で変化するので、走行性能が低下するおそれがある。また、このようなタイヤ1は、耐偏摩耗性能が小さくなる。このため、前記差(tanδc-tanδb)は、0.10以上が望ましく、0.15以上がさらに望ましく、0.30以下が望ましく、0.25以下がさらに望ましい。ベースゴム部11の損失正接tanδbは、0.10以上が望ましく、0.15以上がさらに望ましく、0.30以下が望ましく、0.25以下がさらに望ましい。
【0031】
ベースゴム部11のタイヤ軸方向の長さWは、タイヤ断面幅WTの15%~60%であるのが望ましい。ベースゴム部11の長さWがタイヤ断面幅WTの15%以上であるので、相対的に高温となりやすいタイヤ赤道C近傍のトレッドゴム10の温度を小さく維持することができる。ベースゴム部11の長さWがタイヤ断面幅WTの60%以下であるので、接地端Teに近い位置でのトレッドゴム10の剛性変化を小さくし、旋回走行時のグリップ力の低下を抑えることができる。このような観点より、ベースゴム部11の長さWは、タイヤ断面幅WTの25%以上がより望ましく、30%以上が一層望ましく、45%以下がより望ましく、50%以下が一層望ましい。タイヤ断面幅WTは、本明細書では、タイヤ最大幅位置M、M間のタイヤ軸方向の距離である。
【0032】
本実施形態のベースゴム部11は、そのタイヤ半径方向の厚さh1がタイヤ軸方向の両外側に向かって小さくなり、かつ、両側の接地端Teよりもタイヤ軸方向の内側で途切れている。これにより、レーシング走行中、とりわけ高温となりやすいタイヤ赤道C近傍のトレッドゴム10の温度上昇を小さくし、トレッドゴム10の損傷を抑制することができる。
【0033】
ベースゴム部11は、例えば、ベースゴム部11のタイヤ半径方向の厚さtがタイヤ軸方向の両側に向かって連続的に小さくなるテーパ端部11Aを含んでいる。このようなテーパ端部11Aは、ベースゴム部11とキャップゴム部12との境界部分のトレッドゴム10の剛性変化をより小さくするので、走行性能を高く維持する。また、このようなテーパ端部11Aは、偏摩耗の発生を抑制する。
【0034】
上述の作用を効果的に発揮させるために、テーパ端部11Aのタイヤ軸方向の長さW1は、タイヤ断面幅WTの5%以上であるのが望ましく、10%以上であるのがさらに望ましく、30%以下であるのが望ましく、20%以下であるのがさらに望ましい。
【0035】
ベースゴム部11は、例えば、タイヤ半径方向の厚さtが最大となる最大厚さ部11Bとを含んでいる。最大厚さ部11Bは、タイヤ赤道Cを含んでタイヤ軸方向に延びている。このような最大厚さ部11Bは、とりわけ高温となりやすいタイヤ赤道C近傍のトレッドゴム10の温度上昇を抑制する。このような観点より、最大厚さ部11Bの長さW2は、タイヤ断面幅WTの10%以上が望ましく、15%以上がさらに望ましく、40%以下が望ましく、35%以下がさらに望ましい。本実施形態のベースゴム部11は、テーパ端部11Aと最大厚さ部11Bとか形成されている。
【0036】
走行性能を維持しつつ耐久性能を高めるために、最大厚さ部11Bのタイヤ半径方向の厚さt1は、トレッドゴム10のタイヤ半径方向の全厚さtaの20%%以上が望ましく、25%以上がさらに望ましく、50%以下が望ましく、45%以下がさらに望ましい。
【0037】
本実施形態のキャップゴム部12は、両接地端Te、Teのタイヤ軸方向の外側に延びている。また、キャップゴム部12は、トレッド接地面2aを構成している。
【0038】
トレッドゴム10の全厚さtaは、9.0mm以下であるのが望ましい。これによりタイヤ1の質量が小さく維持される。安定したレーシング走行を確保するために、トレッドゴム10の全厚さtaは、3.0mm以上であるのが望ましい。
【0039】
図2は、タイヤ1の右半分の拡大図である。図2に示されるように、タイヤ1は、例えば、サイドウォールゴム15をさらに含んでいる。サイドウォールゴム15は、本実施形態では、内のカーカスプライ6Aの折返し部6bのタイヤ軸方向の外側に配されている。サイドウォールゴム15は、例えば、サイドウォール部3の外面3aを形成している。
【0040】
サイドウォールゴム15の100℃における損失正接tanδsは、本実施形態では、ベースゴム部11の100℃における損失正接tanδb以下である。また、サイドウォールゴム15の80~120℃におけるゴム硬度hsは、本実施形態では、ベースゴム部11の80~120℃におけるゴム硬度hb以下である。このようなサイドウォールゴム15は、トレッドゴムの不要な発熱を避けるという効果を発揮する。
【0041】
サイドウォールゴム15のタイヤ半径方向の内端15iは、例えば、外のカーカスプライ6Bの折返し部6bの外端7bよりもタイヤ半径方向の外側に配されている。サイドウォールゴム15のタイヤ半径方向の外端(タイヤ軸方向の内端)15eは、例えば、内のカーカスプライ6Aの折返し部6bの外端7aよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。このようなサイドウォールゴム15は、サイドウォール部3の剛性の変化を小さくする。サイドウォールゴム15の外端15eは、本実施形態では、接地端Teよりもタイヤ軸方向の内側に位置している。サイドウォールゴム15の外端15eは、本実施形態では、外のカーカスプライ6Bの本体部6aのタイヤ半径方向の外側に隣接している。
【0042】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0043】
図1の基本構造を有するスリックタイプのレーシングカート用タイヤが製造され、その走行性能及び耐久性能についてテストが行われた。比較例1及び2は、トレッドゴムが、キャップゴム部のゴム材料のみで形成されている。
【0044】
<走行性能>
各試供タイヤが、排気量125ccのレーシングカートの全輪に装着された。そして、テストドライバーが、上記車両を乾燥アスファルト路面のテストコースを複数周回、走行させた。結果は、最速ラップタイプで表示されている。数値が小さいほど走行性能が良好である。
タイヤサイズ:10×4.50-5(前輪)、11×7.10-5(後輪)
リム:4.5(前輪)、8.0(後輪)
内圧:70kPa(全輪)
テストコース:952m(1周)×10LAP
tanδc:0.42
【0045】
<耐久性能>
上記走行性能のテスト後、各試供タイヤのトレッド接地面がテスターの目視により確認され、ブロー(トレッドゴムの剥がれ)の発生状態、及び、偏摩耗の発生状態について評価された。結果は、比較例1の発生状態を100とする評点で示される。数値が大きい程、良好である。
テストの結果が表1に示される。
【0046】
【表1】
【0047】
表に示すように、実施例のタイヤは、走行性能が維持されつつ高い耐久性能を有する。
【符号の説明】
【0048】
1 レーシングカート用タイヤ
2 トレッド部
10 トレッドゴム
11 ベースゴム部
12 キャップゴム部
Te 接地端
図1
図2