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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083207
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/13 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194509
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】河越 義史
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
(72)【発明者】
【氏名】兼松 義明
(72)【発明者】
【氏名】山岡 宏
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131CB06
3D131EA08X
3D131EB05U
3D131EB33X
3D131EB99X
(57)【要約】
【課題】トレッド部が摩耗してもドライ性能とウェット性能とのバランスを維持できるタイヤを提供することを主たる課題としている。
【解決手段】トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、第1ショルダー陸部11を含む。第1ショルダー陸部11には、ショルダー横溝16及びショルダーサイプ17が設けられている。ショルダー横溝16は、接地面11sとショルダー横溝16の溝底との間の途中に、ショルダー横溝16の溝幅が極小となる極小部20を含む。ショルダーサイプ17の幅は、1.5mm以下である。ショルダーサイプ17のタイヤ半径方向の内方には、ショルダーサイプ17の幅よりも大きい溝幅を有する内部溝22が連通している。内部溝22は、極小部20よりもタイヤ半径方向内側、かつ、ショルダー横溝16の溝底よりもタイヤ半径方向外側に配されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、前記第1トレッド端を含む陸部である第1ショルダー陸部とを含み、
前記第1ショルダー陸部には、前記第1ショルダー陸部の接地面をタイヤ軸方向に延びるショルダー横溝及びショルダーサイプが設けられ、
前記ショルダー横溝は、前記接地面と前記ショルダー横溝の溝底との間の途中に、前記ショルダー横溝の溝幅が極小となる極小部を含み、
前記ショルダーサイプの幅は、1.5mm以下であり、
前記ショルダーサイプのタイヤ半径方向の内方には、前記ショルダーサイプの前記幅よりも大きい溝幅を有する内部溝が連通しており、
前記内部溝は、前記極小部よりもタイヤ半径方向内側、かつ、前記ショルダー横溝の前記溝底よりもタイヤ半径方向外側に配されている、
タイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー横溝は、前記第1トレッド端を横切っている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ショルダーサイプは、前記第1トレッド端を横切っている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ショルダー横溝は、前記極小部よりもタイヤ半径方向内側の本体部を含み、
前記本体部の最大溝幅は、前記接地面における前記ショルダー横溝の溝幅よりも小さい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1ショルダー陸部の前記接地面において、前記ショルダー横溝のエッジから前記ショルダーサイプのエッジまでのタイヤ周方向の距離は、前記ショルダー横溝の溝幅の1.3~2.7倍である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されており、
前記第1ショルダー陸部は、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に配される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド面にタイヤ軸方向に延びる溝が設けられたタイヤが提案されている。特許文献1の前記溝は、トレッド面に形成された開口部よりもタイヤ半径方向内側で局部的に溝幅が最も小さい極小部を含む。特許文献1のタイヤは、前記溝により、耐偏摩耗性能とグリップ性能とをバランスよく向上させることを期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-188850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、トレッド部が摩耗すると、トレッド部に設けられた溝の容積や接地面に現れる溝幅が減少し、ひいてはドライ性能とウェット性能とのバランスがタイヤ新品時と比較して悪化する傾向がある。したがって、従来から、トレッド部が摩耗した状態でも、前記バランスを維持することが求められている。
【0005】
特許文献1の前記溝は、トレッド部の摩耗によって前記極小部が露出したあと、前記摩耗に伴って、接地面の溝幅が拡大するような形状を具えているため、前記バランスの維持について、ある程度の改善効果を期待できる。しかしながら、近年では、タイヤの各種性能について要求水準が高まっており、前記バランスの維持についても、より一層の改善が求められている。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、トレッド部が摩耗してもドライ性能とウェット性能とのバランスを維持できるタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端と、前記第1トレッド端を含む陸部である第1ショルダー陸部とを含み、前記第1ショルダー陸部には、前記第1ショルダー陸部の接地面をタイヤ軸方向に延びるショルダー横溝及びショルダーサイプが設けられ、前記ショルダー横溝は、前記接地面と前記ショルダー横溝の溝底との間の途中に、前記ショルダー横溝の溝幅が極小となる極小部を含み、前記ショルダーサイプの幅は、1.5mm以下であり、前記ショルダーサイプのタイヤ半径方向の内方には、前記ショルダーサイプの前記幅よりも大きい溝幅を有する内部溝が連通しており、前記内部溝は、前記極小部よりもタイヤ半径方向内側、かつ、前記ショルダー横溝の前記溝底よりもタイヤ半径方向外側に配されている。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー横溝は、前記第1トレッド端を横切っているのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダーサイプは、前記第1トレッド端を横切っているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー横溝は、前記極小部よりもタイヤ半径方向内側の本体部を含み、前記本体部の最大溝幅は、前記接地面における前記ショルダー横溝の溝幅よりも小さいのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ショルダー陸部の前記接地面において、前記ショルダー横溝のエッジから前記ショルダーサイプのエッジまでのタイヤ周方向の距離は、前記ショルダー横溝の溝幅の1.3~2.7倍であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定されており、前記第1ショルダー陸部は、車両装着時にタイヤ赤道よりも車両内側に配されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、トレッド部が摩耗してもドライ性能とウェット性能とのバランスを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の第1ショルダー陸部の拡大図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB-B線断面図である。
図5】比較例のショルダー横溝の横断面図である。
図6】比較例のショルダーサイプの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、オールシーズン用の乗用車用の空気入りタイヤとして用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部等に文字やマークで表示されている(図示省略)。また、トレッド部2は、例えば、非対称パターン(トレッドパターンがタイヤ赤道Cに対して線対称ではないことを指す)に構成されている。
【0017】
トレッド部2は、車両装着時に車両内側となる第1トレッド端T1と、車両装着時に車両外側となる第2トレッド端T2とを含む。第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0018】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0019】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0020】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0021】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0022】
トレッド部2は、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3に区分された複数の陸部を含む。本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が4本の周方向溝3に区分された5つの陸部を含む所謂5リブタイヤとして構成されている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、トレッド部2が3本の周方向溝3と4つの陸部とで構成された所謂4リブタイヤでも良い。
【0023】
周方向溝3は、例えば、第1クラウン周方向溝4、第2クラウン周方向溝5、第1ショルダー周方向溝6及び第2ショルダー周方向溝7を含む。第1クラウン周方向溝4は、タイヤ赤道Cと第1トレッド端T1との間に設けられている。第2クラウン周方向溝5は、タイヤ赤道Cと第2トレッド端T2との間に設けられている。第1ショルダー周方向溝6は、第1クラウン周方向溝4と第1トレッド端T1との間に設けられている。第2ショルダー周方向溝7は、第2クラウン周方向溝5と第2トレッド端T2との間に設けられている。
【0024】
周方向溝3は、タイヤ周方向に直線状に延びるものや、ジグザグ状に延びるもの等、種々の態様を採用し得る。
【0025】
第1クラウン周方向溝4又は第2クラウン周方向溝5の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%である。第1ショルダー周方向溝6又は第2ショルダー周方向溝7の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%である。但し、本発明は、このような寸法に限定されるものではない。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0026】
周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。望ましい態様では、周方向溝3の溝幅W1は、トレッド幅TWの3.0%~7.0%である。
【0027】
陸部は、少なくとも、第1ショルダー陸部11を含む。第1ショルダー陸部11は、第1ショルダー周方向溝6のタイヤ軸方向外側に区分されており、第1トレッド端T1を含む。
【0028】
本実施形態の陸部は、第1ショルダー陸部11に加え、第2ショルダー陸部12、第1ミドル陸部13、第2ミドル陸部14及びクラウン陸部15を含む。第2ショルダー陸部12は、第2ショルダー周方向溝7のタイヤ軸方向外側に区分されており、第2トレッド端T2を含む。第1ミドル陸部13は、第1ショルダー周方向溝6と第1クラウン周方向溝4との間に区分されている。第2ミドル陸部14は、第2ショルダー周方向溝7と第2クラウン周方向溝5との間に区分されている。クラウン陸部15は、第1クラウン周方向溝4と第2クラウン周方向溝5との間に区分されている。
【0029】
図2には、第1ショルダー陸部11の拡大図が示されている。図2に示されるように、第1ショルダー陸部11には、第1ショルダー陸部11の接地面11sをタイヤ軸方向に延びるショルダー横溝16及びショルダーサイプ17が設けられている。
【0030】
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合う2つの内壁の間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.3~1.0mmである。サイプの開口部には、幅が1.5mmを超える面取り部が連なっても良い。
【0031】
本実施形態のショルダー横溝16及びショルダーサイプ17は、それぞれ、第1ショルダー周方向溝6に連通し、第1トレッド端T1を横切っている。但し、このような態様に限定されるものではなく、ショルダー横溝16及びショルダーサイプ17は、第1ショルダー陸部11の接地面内に途切れ端を有するものでも良い。
【0032】
本実施形態において、ショルダー横溝16のタイヤ軸方向に対する角度、及び、ショルダーサイプ17のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、45°以下であり、望ましくは25°以下、より望ましくは15°以下である。また、ショルダー横溝16とショルダーサイプ17とは、互いの角度差が5°以下が望ましく、本実施形態ではこれらが平行に配置されている。
【0033】
図3には、図2のA-A線断面図が示されている。図3に示されるように、ショルダー横溝16は、第1ショルダー陸部11の接地面11sとショルダー横溝16の溝底との間の途中に、ショルダー横溝16の溝幅が極小となる極小部20を含む。
【0034】
図4には、図2のB-B線断面図が示されている。図4に示されるように、ショルダーサイプ17の幅W2は、1.5mm以下である。また、ショルダーサイプ17のタイヤ半径方向の内方には、ショルダーサイプ17の前記幅W2よりも大きい溝幅を有する内部溝22が連通している。
【0035】
内部溝22は、極小部20よりもタイヤ半径方向内側、かつ、ショルダー横溝16の溝底16d(図3に示す)よりもタイヤ半径方向外側に配されている。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、トレッド部2が摩耗してもドライ性能とウェット性能とのバランスを維持することができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0036】
本発明のタイヤ1では、トレッド部2が摩耗して極小部20が露出したあと、前記摩耗に伴って、接地面11sにおけるショルダー横溝16の溝幅が拡大するため、ウェット性能を長期に亘って確保できる。また、ショルダーサイプ17が接地面11sに露出している間は、第1ショルダー陸部11の剛性が維持され、ドライ性能の低下を抑制できる。
【0037】
トレッド部2の摩耗が進行し、内部溝22と接地面との距離が小さくなると、内部溝22が排水性を補って、ウェット性能の過度な低下を抑制することができる。また、本発明では、内部溝22が極小部20よりもタイヤ半径方向内側、かつ、ショルダー横溝16の溝底16dよりもタイヤ半径方向外側に配されていることにより、極小部20が露出したあと、ショルダー横溝16が摩耗によって消失する前に内部溝22が接地面に露出するため、ウェット性能の低下を確実に抑制することができる。本発明では、このようなメカニズムにより、トレッド部2が摩耗してもドライ性能とウェット性能とのバランスを維持することができると推察される。
【0038】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0039】
図2に示されるように、ショルダー横溝16とショルダーサイプ17とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。ショルダー横溝16のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1、及び、ショルダーサイプ17のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2は、それぞれ、例えば、第1ショルダー陸部11のタイヤ軸方向の幅W3の70%~100%である。
【0040】
第1ショルダー陸部11の接地面11sにおいて、ショルダー横溝16のエッジからショルダーサイプ17のエッジまでのタイヤ周方向の距離L3は、ショルダー横溝16の接地面11sにおける溝幅W5の望ましくは1.3倍以上、より望ましくは1.5倍以上、さらに望ましくは1.7倍以上であり、望ましくは2.7倍以下、より望ましくは2.5倍以下、さらに望ましくは2.3倍以下である。このようなショルダー横溝16及びショルダーサイプ17の配置は、ドライ性能とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0041】
図3に示されるように、第1ショルダー陸部11の接地面において、ショルダー横溝16の溝幅W5は、例えば、第1ショルダー周方向溝6の溝幅W4(図2に示す)の50%~70%である。
【0042】
ショルダー横溝16の最大の深さd1は、例えば、第1ショルダー周方向溝6の最大の深さの70%~90%である。但し、ショルダー横溝16は、このような態様に限定されるものではない。
【0043】
接地面11sから極小部20までの深さd2は、例えば、ショルダー横溝16の最大の深さd1の50%よりも小さい。極小部20の深さd2は、望ましくは前記深さd1の40%以下、より望ましくは30%以下であり、望ましくは5%以上、より望ましくは10%以上である。これにより、トレッド部2の摩耗が適度に進行した段階で極小部20が接地面11sに露出し、その後のトレッド部の摩耗に伴うウェット性能の低下を抑制することができる。
【0044】
極小部20の溝幅W6は、例えば、ショルダー横溝16の接地面11sにおける溝幅W5の30%~60%であり、望ましくは40%~50%である。このような極小部20は、ドライ性能とウェット性能とのバランスを維持するのに役立つ。
【0045】
接地面11sから極小部20までの領域において、ショルダー横溝16の溝壁のタイヤ法線に対する角度θ1は、例えば、40~60°である。これにより、タイヤ使用開始時、極小部20よりもタイヤ半径方向外側の溝壁が、接地圧の増加に応じて適度に接地する。換言すれば、極小部20よりもタイヤ半径方向外側の溝壁が、面取り部の役割を発揮でき、ひいてはトラクション性能やブレーキ性能の向上が期待できる。また、このようなショルダー横溝16が配された第1ショルダー陸部11は、制動時の接地圧をより均一化できるため、耐偏摩耗性能の向上及び摩耗したときのパターンノイズの低減を期待できる。
【0046】
ショルダー横溝16は、極小部20よりもタイヤ半径方向内側の本体部25を含む。本体部25の最大溝幅W7は、ショルダー横溝16の接地面11sにおける溝幅W5と同一、又は、前記溝幅W5よりも小さい。本体部25の最大溝幅W7は、例えば、ショルダー横溝16の接地面11sにおける溝幅W5の50%~100%であり、望ましくは70%~100%とされる。これにより、最大溝幅W7付近が露出する程度にトレッド部2が摩耗した状態において、十分なウェット性能が発揮される。
【0047】
また、本体部25の最大溝幅W7は、例えば、極小部20の溝幅W6の300%以下であり、望ましくは150%~250%である。これにより、加硫成形時の成形不良を抑制しつつ、十分なウェット性能を発揮することができる。
【0048】
接地面11sから本体部25の最大溝幅W7の位置までの深さd3は、例えば、ショルダー横溝16の最大の深さd1の80%~90%である。
【0049】
本体部25は、タイヤ半径方向内側に向かって溝幅が拡大する領域を含んでいる。この領域の溝壁のタイヤ法線に対する角度θ2は、前記角度θ1よりも小さく、例えば、15~25°である。
【0050】
図4に示されるように、接地面11sから内部溝22の底までの深さd4は、例えば、ショルダー横溝16の最大の深さd1よりも小さく、望ましくは前記深さd1の70%~90%である。
【0051】
ショルダーサイプ17は、例えば、接地面に連なりタイヤ半径方向に平行に延びるサイプ壁を有している。ショルダーサイプ17の深さd5は、例えば、接地面11sから極小部20までの深さd2よりも大きく、かつ、前記深さd2の300%以下とされる。具体的には、ショルダーサイプ17の深さd5は、前記深さd2の望ましくは150%以上、より望ましくは180%以上であり、望ましくは250%以下、より望ましくは220%以下である。これにより、ショルダー横溝16の極小部20が露出したあと、ある程度摩耗が進行した状態で内部溝22が露出するため、トレッド部が摩耗してもドライ性能とウェット性能とのバランスを維持することができる。
【0052】
内部溝22の最大溝幅W8は、例えば、ショルダーサイプ17の幅W2の500%以下である。具体的には、内部溝22の最大溝幅W8は、ショルダーサイプ17の幅W2の望ましくは200%以上、より望ましくは250%以上であり、望ましくは400%以下、より望ましくは350%以下である。このような内部溝22は、加硫成形不良を抑制しつつ、上述の効果を発揮できる。
【0053】
内部溝22の断面積は、ショルダー横溝16の本体部25の断面積の10%~50%であるのが望ましい。これにより、内部溝22がショルダー横溝16の排水性を十分に補うことができる。
【0054】
図1に示されるように、本実施形態では、少なくとも、上述のショルダー横溝16及びショルダーサイプ17が、車両装着時にタイヤ赤道Cよりも車両内側に配される第1ショルダー陸部11に設けられている。さらに望ましい態様では、上述のショルダー横溝16及びショルダーサイプ17が、第2ショルダー陸部12にも設けられている。これにより、上述の効果がさらに確実に発揮される。
【0055】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0056】
図1のパターンを有するサイズ275/40ZR20のタイヤが、表1及び2の仕様に基づき試作された。比較例として、図5に示される横断面形状を有するショルダー横溝aと、図6に示される横断面形状を有するショルダーサイプbとを有するタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上記の事項を除き、図1で示されるタイヤと実質的に同じ構成を有している。各テストタイヤについて、使用初期のドライ性能及びウェット性能、摩耗時のウェット性能、並びに、摩耗時におけるドライ性能とウェット性能とのバランスがテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:20×9.5J
タイヤ内圧:全輪220kPa
テスト車両:排気量3500cc、後輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0057】
<使用初期のドライ性能及びウェット性能>
上記テスト車両が用いられ、タイヤの使用初期にドライ路面またはウェット路面を走行したときの性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記性能を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ性能又はウェット性能が優れていることを示す。
【0058】
<摩耗時のウェット性能>
上記テスト車両が用いられ、ショルダー横溝の溝深さがタイヤ新品時の50%まで摩耗した状態でウェット路面を走行したときの性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記性能を100とする評点であり、数値が大きい程、摩耗時のウェット性能が優れていることを示す。
【0059】
<摩耗時におけるドライ性能とウェット性能とのバランス>
上記テスト車両が用いられ、ショルダー横溝の溝深さがタイヤ新品時の50%まで摩耗した状態でドライ路面及びウェット路面を走行し、ドライ性能とウェット性能とのバランスが評価された。結果は、比較例の前記バランスを100とする指数であり、数値が大きい程、前記バランスが優れていることを示す。
テストの結果が表1及び2に示される。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1及び2に示されるように、実施例のタイヤは、「摩耗時におけるドライ性能とウェット性能とのバランス」について、高い評点を示している。すなわち、本発明では、前記バランスが維持されていることが確認できた。
【0063】
具体的には、表1及び2から、以下のことが確認できる。すなわち、各実施例は、「使用初期のドライ性能」の評点が97~102ポイントとなっている。また、各実施例は、「使用初期のウェット性能」の評点が101~107ポイントとなっている。これに対し、各実施例は、「摩耗時のウェット性能」が105~113ポイントとなっており、比較例に対し、摩耗時のウェット性能が格段に維持されていることが理解できる。以上の通り、従来では、タイヤの摩耗に伴ってウェット性能が低下し、ひいてはドライ性能とウェット性能とのバランスが悪化するところ、各実施例のタイヤは、摩耗によってもウェット性能の低下が小さく、摩耗時におけるドライ性能とウェット性能とのバランスが維持されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0064】
2 トレッド部
11 第1ショルダー陸部
11s 接地面
16 ショルダー横溝
17 ショルダーサイプ
20 極小部
22 内部溝
T1 第1トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6