(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083503
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】高炉の原料装入方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20220530BHJP
【FI】
C21B5/00 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194844
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 泰志
(72)【発明者】
【氏名】柏原 佑介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
(72)【発明者】
【氏名】若井 造
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012BC07
4K012BC08
(57)【要約】
【課題】鉱石原料とコークスの混合装入を行う高炉の原料装入方法において、原料の装入形態を適切に制御することで高い還元率を得る。
【解決手段】ベルレス型装入装置を有するベルレス高炉において鉱石原料とコークスの混合装入を行う原料装入方法であり、1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料(a)のみを装入することにより鉱石原料単独層yを形成した後、鉱石原料(a)と混合装入用のコークス(b)を混合装入することにより、鉱石原料単独層yの上層に、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xを形成する。CO
2分圧が高くなる上層部に高い質量比率でコークスを存在させることができるため、コークスのソリューションロス反応が促進されてCOガスの発生量が増加し、COガスによる鉱石原料の還元が促進されることで、鉱石原料の還元効率を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルレス型装入装置を有するベルレス高炉において鉱石原料とコークスの混合装入を行う原料装入方法であって、
1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料(a)のみを装入することにより鉱石原料単独層(y)を形成した後、鉱石原料(a)と混合装入用のコークス(b)を混合装入することにより、鉱石原料単独層(y)の上層に、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層(x)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【請求項2】
鉱石原料(a)のみの装入と、鉱石原料(a)およびコークス(b)の混合装入を交互にそれぞれ複数回行うことにより、鉱石原料単独層(y)と混合層(x)を上下方向で交互にそれぞれ複数層形成することを特徴とする請求項1に記載の高炉の原料装入方法。
【請求項3】
さらに、混合層(x)(但し、混合層(x)が上下方向で複数層形成される場合は最上層の混合層(x))の上に鉱石原料(a)のみを装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(yt)を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の高炉の原料装入方法。
【請求項4】
鉱石原料単独層(y)(但し、鉱石原料単独層(y)が上下方向で複数層形成される場合は最下層の鉱石原料単独層(y))の鉱石原料(a)は塊鉱石(aL)であり、その他の層の鉱石原料(a)は焼結鉱(aS)であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項5】
鉱石原料(a)とコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより鉱石原料単独層(y)(但し、鉱石原料単独層(yt)の場合を含む。)を形成し、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層(x)を形成することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項6】
1チャージ当たり鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する回数nに対し、炉頂バンカー数がn+2以上であることを特徴とする請求項5に記載の高炉の原料装入方法。
【請求項7】
混合層(x)とその上層の鉱石原料単独層(yt)または鉱石原料単独層(y)(但し、鉱石原料単独層(y)が上下方向で複数層形成される場合の2層目以降の鉱石原料単独層(y))を、1バッチで形成する場合、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することにより混合層(x)を形成するとともに、1バッチで装入する全鉱石原料量の90質量%を装入するまでにコークス(b)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a)を混合層(x)の上に装入することにより鉱石原料単独層(yt)または鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする請求項5または6に記載の高炉の原料装入方法。
【請求項8】
1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチまたは3バッチで装入するに際し、第1バッチでは鉱石原料(a)のみを装入し、第2バッチまたは第2バッチと第3バッチでは、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項9】
3基の炉頂バンカー(1)~(3)を用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(aS)とコークス(b)を、焼結鉱(aS-1)および焼結鉱(aS-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された塊鉱石(aL)を排出して装入することにより、鉱石原料単独層(y)を形成し、
第2バッチでは、炉頂バンカー(2)に混合状態で貯留された焼結鉱(aS-1)とコークス(b-1)を排出して装入することにより、鉱石原料単独層(y)の上層に混合層(x)の一部を形成し、
第3バッチでは、炉頂バンカー(3)に混合状態で貯留された焼結鉱(aS-2)とコークス(b-2)を排出して装入することにより、混合層(x)の残部を形成することを特徴とする請求項1、4、5のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項10】
3基の炉頂バンカー(1)~(3)を用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(aS)を焼結鉱(aS-1)および焼結鉱(aS-2)に2分割し、
第1バッチでは、炉頂バンカー1に貯留された塊鉱石(aL)を排出して装入することにより、鉱石原料単独層(y)を形成し、
第2バッチでは、炉頂バンカー(2)に貯留された焼結鉱(aS-1)と炉頂バンカー(3)に貯留されたコークス(b)を同時に排出して混合装入し、焼結鉱(aS-1)の装入終了とともにコークス(b)の装入を終了させることにより、鉱石原料単独層(y)の上層に混合層(x)を形成し、
第3バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された焼結鉱(aS-2)を排出して装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(yt)を形成することを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項11】
3基の炉頂バンカー(1)~(3)を用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(aS)とコークス(b)を、焼結鉱(aS-1)および焼結鉱(aS-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された塊鉱石(aL)を排出して装入することにより、第1の鉱石原料単独層(y1)を形成し、
第2バッチでは、炉頂バンカー(2)に貯留された焼結鉱(aS-1)と炉頂バンカー(3)に貯留されたコークス(b-1)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層(y1)の上層に第1の混合層(x1)を形成するとともに、所定量の焼結鉱(aS-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(aS-1)を装入することにより、混合層(x1)の上層に第2の鉱石原料単独層(y2)を形成し、
第3バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された焼結鉱(aS-2)と炉頂バンカー(2)に貯留されたコークス(b-2)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層(y2)の上層に第2の混合層(x2)を形成するとともに、所定量の焼結鉱(aS-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(aS-2)を装入することにより、混合層(x2)の上層に鉱石原料単独層(yt)を形成することを特徴とする請求項3~5、7のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項12】
4基の炉頂バンカー(1)~(4)を用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(aS)とコークス(b)を、焼結鉱(aS-1)および焼結鉱(aS-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された塊鉱石(aL)を排出して装入することにより、第1の鉱石原料単独層(y1)を形成し、
第2バッチでは、炉頂バンカー(2)に貯留された焼結鉱(aS-1)と炉頂バンカー(3)に貯留されたコークス(b-1)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層(y1)の上層に第1の混合層(x1)を形成するとともに、所定量の焼結鉱(aS-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(aS-1)を装入することにより、混合層(x1)の上層に第2の鉱石原料単独層(y2)を形成し、
第3バッチでは、炉頂バンカー(4)に貯留された焼結鉱(aS-2)と炉頂バンカー(1)に貯留されたコークス(b-2)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層(y2)の上層に第2の混合層(x2)を形成するとともに、所定量の焼結鉱(aS-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(aS-2)を装入することにより、混合層(x2)の上層に鉱石原料単独層(yt)を形成することを特徴とする請求項3~5、7のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【請求項13】
コークス(b)は、高炉装入用の塊コークスを得るためにコークスを分級した際の篩下コークスであることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の高炉の原料装入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルレス型装入装置を備えた高炉における原料装入方法であって、詳細には、鉱石原料にコークスを混合して装入する、いわゆるコークス混合装入を行う原料装入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉では、炉頂から鉄鉱石や副原料等の鉱石原料とコークスを交互に装入し、層状構造を有する装入層(充填層)を形成する。この鉱石原料層、コークス層の一層分の量をそれぞれ1チャージの鉱石原料、コークスと呼ぶ。これら1チャージ分の鉱石原料、コークスは必ずしもそれぞれ一度の装入で炉内へ装入されるわけではなく、1チャージ分の鉱石原料、コークスをそれぞれ複数回に分割して高炉内へ装入することも行われている。この分割された鉱石原料、コークスをそれぞれ1バッチの鉱石原料、コークスと呼ぶ。
【0003】
高炉の操業では、炉下部から熱風と微粉炭等の補助還元材が炉内に吹き込まれ、補助還元材やコークスの燃焼により発生するCOガスで鉱石原料が還元及び溶融する。これにより鉱石原料中の鉄分が溶銑となり、出銑孔から排出される。溶銑1トン製造するために必要となるコークス、補助還元材の量が還元材比であり、CO2削減のために還元材比を削減するためには、還元効率を高める必要がある。
鉱石原料層内にコークスを一部混合することにより還元効率を高めることができることが知られている。これは、鉱石の還元によって生じるCO2ガスが高濃度で存在する鉱石近傍にコークスを混在させることにより、コークスのソルーションロス反応(C+CO2→2CO)が促進されて、還元ガスであるCOガスが高濃度に維持され、鉱石の還元効率を向上させるからである。
【0004】
従来、鉱石原料とコークスを混合装入する技術に関して、以下のような方法が知られている。
特許文献1には、炉頂バンカーに鉱石とコークスを混合して装入するに際し、ベルトコンベア上でのコークスの重ね位置を調整することで、炉頂バンカーから排出されるコークス混合率を制御する原料装入方法が示されている。
また、特許文献2には、鉱石とコークスを別々の炉頂バンカーに貯留しておき、炉頂バンカーからのコークスの排出を開始した後に鉱石の排出を開始することで、コークスと鉱石を混合装入する原料装入方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-150642号公報
【特許文献2】特開2004-107794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来技術には、以下のような問題がある。
特許文献1の方法では、鉱石とコークスとを混合して炉頂バンカーに投入するため、炉頂バンカー内でコークスの偏析を生じることが避けられない。このため、炉内での鉱石とコークスの混合状態の制御には限界があり、想定した位置で想定した鉱石とコークスの混合状態を得ることが難しいという問題がある。
また、特許文献2の方法は、鉱石とコークスとを別々の炉頂バンカーに貯留し、鉱石とコークスとを同時に排出することが可能であるため、コークス混合率の制御性は向上する。この方法では、1バッチの中でコークスを炉中心から装入し始めて、その後に鉱石を混合して鉱石・コークスの混合層を形成するため、混合層を形成するコークスとしては、中心コークスを形成するために使用される大塊のコークスが使用される。そのため、混合層中のコークスの表面積は相対的に小さくなり、鉱石・コークスの混合層において期待されるソリューションロス反応が進みにくく、還元効率の向上が不十分であるという問題がある。
【0007】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、ベルレス型装入装置により鉱石原料とコークスの混合装入を行う高炉の原料装入方法において、原料の装入形態を適切に制御することで高い還元率が得られる原料装入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]ベルレス型装入装置を有するベルレス高炉において鉱石原料とコークスの混合装入を行う原料装入方法であって、
1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料(a)のみを装入することにより鉱石原料単独層(y)を形成した後、鉱石原料(a)と混合装入用のコークス(b)を混合装入することにより、鉱石原料単独層(y)の上層に、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層(x)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
[2]上記[1]の原料装入方法において、鉱石原料(a)のみの装入と、鉱石原料(a)およびコークス(b)の混合装入を交互にそれぞれ複数回行うことにより、鉱石原料単独層(y)と混合層(x)を上下方向で交互にそれぞれ複数層形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0009】
[3]上記[1]または[2]の原料装入方法において、さらに、混合層(x)(但し、混合層(x)が上下方向で複数層形成される場合は最上層の混合層(x))の上に鉱石原料(a)のみを装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(yt)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの原料装入方法において、鉱石原料単独層(y)(但し、鉱石原料単独層(y)が上下方向で複数層形成される場合は最下層の鉱石原料単独層(y))の鉱石原料(a)は塊鉱石(aL)であり、その他の層の鉱石原料(a)は焼結鉱(aS)であることを特徴とする高炉の原料装入方法。
[5]上記[1]~[4]のいずれかの原料装入方法において、鉱石原料(a)とコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより鉱石原料単独層(y)(但し、鉱石原料単独層(yt)の場合を含む。)を形成し、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層(x)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0010】
[6]上記[5]の原料装入方法において、1チャージ当たり鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する回数nに対し、炉頂バンカー数がn+2以上であることを特徴とする高炉の原料装入方法。
[7]上記[5]または[6]の原料装入方法において、混合層(x)とその上層の鉱石原料単独層(yt)または鉱石原料単独層(y)(但し、鉱石原料単独層(y)が上下方向で複数層形成される場合の2層目以降の鉱石原料単独層(y))を、1バッチで形成する場合、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することにより混合層(x)を形成するとともに、1バッチで装入する全鉱石原料量の90質量%を装入するまでにコークス(b)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a)を混合層(x)の上に装入することにより鉱石原料単独層(yt)または鉱石原料単独層(y)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
[8]上記[1]~[7]のいずれかの原料装入方法において、1チャージ分の鉱石原料(a)を2バッチまたは3バッチで装入するに際し、第1バッチでは鉱石原料(a)のみを装入し、第2バッチまたは第2バッチと第3バッチでは、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0011】
[9]上記[1]、[4]、[5]のいずれかの原料装入方法において、3基の炉頂バンカー(1)~(3)を用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(aS)とコークス(b)を、焼結鉱(aS-1)および焼結鉱(aS-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された塊鉱石(aL)を排出して装入することにより、鉱石原料単独層(y)を形成し、
第2バッチでは、炉頂バンカー(2)に混合状態で貯留された焼結鉱(aS-1)とコークス(b-1)を排出して装入することにより、鉱石原料単独層(y)の上層に混合層(x)の一部を形成し、
第3バッチでは、炉頂バンカー(3)に混合状態で貯留された焼結鉱(aS-2)とコークス(b-2)を排出して装入することにより、混合層(x)の残部を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0012】
[10]上記[3]~[5]のいずれかの原料装入方法において、3基の炉頂バンカー(1)~(3)を用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(aS)を焼結鉱(aS-1)および焼結鉱(aS-2)に2分割し、
第1バッチでは、炉頂バンカー1に貯留された塊鉱石(aL)を排出して装入することにより、鉱石原料単独層(y)を形成し、
第2バッチでは、炉頂バンカー(2)に貯留された焼結鉱(aS-1)と炉頂バンカー(3)に貯留されたコークス(b)を同時に排出して混合装入し、焼結鉱(aS-1)の装入終了とともにコークス(b)の装入を終了させることにより、鉱石原料単独層(y)の上層に混合層(x)を形成し、
第3バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された焼結鉱(aS-2)を排出して装入することにより、混合層(x)の上層に鉱石原料単独層(yt)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0013】
[11]上記[3]~[5]、[7]のいずれかの原料装入方法において、3基の炉頂バンカー(1)~(3)を用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(aS)とコークス(b)を、焼結鉱(aS-1)および焼結鉱(aS-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された塊鉱石(aL)を排出して装入することにより、第1の鉱石原料単独層(y1)を形成し、
第2バッチでは、炉頂バンカー(2)に貯留された焼結鉱(aS-1)と炉頂バンカー(3)に貯留されたコークス(b-1)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層(y1)の上層に第1の混合層(x1)を形成するとともに、所定量の焼結鉱(aS-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(aS-1)を装入することにより、混合層(x1)の上層に第2の鉱石原料単独層(y2)を形成し、
第3バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された焼結鉱(aS-2)と炉頂バンカー(2)に貯留されたコークス(b-2)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層(y2)の上層に第2の混合層(x2)を形成するとともに、所定量の焼結鉱(aS-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(aS-2)を装入することにより、混合層(x2)の上層に鉱石原料単独層(yt)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
【0014】
[12]上記[3]~[5]、[7]のいずれかの原料装入方法において、4基の炉頂バンカー(1)~(4)を用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(aS)とコークス(b)を、焼結鉱(aS-1)および焼結鉱(aS-2)とコークス(b-1)およびコークス(b-2)に、それぞれ2分割し、
第1バッチでは、炉頂バンカー(1)に貯留された塊鉱石(aL)を排出して装入することにより、第1の鉱石原料単独層(y1)を形成し、
第2バッチでは、炉頂バンカー(2)に貯留された焼結鉱(aS-1)と炉頂バンカー(3)に貯留されたコークス(b-1)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層(y1)の上層に第1の混合層(x1)を形成するとともに、所定量の焼結鉱(aS-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(aS-1)を装入することにより、混合層(x1)の上層に第2の鉱石原料単独層(y2)を形成し、
第3バッチでは、炉頂バンカー(4)に貯留された焼結鉱(aS-2)と炉頂バンカー(1)に貯留されたコークス(b-2)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層(y2)の上層に第2の混合層(x2)を形成するとともに、所定量の焼結鉱(aS-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(aS-2)を装入することにより、混合層(x2)の上層に鉱石原料単独層(yt)を形成することを特徴とする高炉の原料装入方法。
[13]上記[1]~[12]のいずれかの原料装入方法において、コークス(b)は、高炉装入用の塊コークスを得るためにコークスを分級した際の篩下コークスであることを特徴とする高炉の原料装入方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベルレス型装入装置により鉱石原料とコークスの混合装入を行う高炉の原料装入方法において、原料の装入形態を適切に制御することで高い還元率を得ることができる。具体的には、鉱石原料単独層yを形成し、その上層に鉱石原料とコークスの混合層xを形成することにより、CO2分圧が高くなる上層部側に高い質量比率でコークスを存在させることができるため、コークスのソリューションロス反応が促進されてCOガスの発生量が増加し、これにより、COガスによる鉱石原料の還元が促進され、鉱石原料の還元効率を向上させることができる。
また、混合層xの上層にさらに鉱石原料単独層ytを形成した場合には、混合層xでのコークスのソルーションロス反応で発生したCOガスを上層の鉱石原料単独層ytの還元に利用することができるため、その分、鉱石原料の還元効率を向上させることができる。
また、鉱石原料単独層yの鉱石原料を塊鉱石とし、混合層xやその上層の鉱石原料単独層ytの鉱石原料を焼結鉱とした場合には、鉱石原料単独層yの下層に堆積したコークス層から上がってくるCOガス分率の高いガスにより被還元性の低い塊鉱石の還元を促進させることができるため、鉱石原料層全体としての還元率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の原料装入方法で形成された炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の一例を模式的に示す説明図
【
図2】本発明の原料装入方法で形成された炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の他の例を模式的に示す説明図
【
図3】本発明の原料装入方法で形成された炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の他の例を模式的に示す説明図
【
図4】本発明の原料装入方法で形成された炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の他の例を模式的に示す説明図
【
図5】鉱石原料単独層および鉱石原料とコークスの混合層を種々の形態(試験条件)で設けて実施した還元試験において、各試験条件での鉱石原料の還元率を示すグラフ
【
図6】鉱石原料単独層および鉱石原料とコークスの混合層を種々の形態(試験条件)で設けて実施した還元試験において、各試験条件でのコークス反応率を示すグラフ
【
図7】本発明の原料装入方法の実施形態において、鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を示す説明図
【
図8】本発明の原料装入方法において、鉱石原料単独層yとその上層の混合層xを2バッチで形成する場合の一実施形態を示す説明図
【
図9】本発明の原料装入方法において、鉱石原料単独層yと、その上層の混合層xと、その上層の鉱石原料単独層y
tを3バッチで形成する場合の一実施形態を示す説明図
【
図10】各実施例(発明例、比較例)において、鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ベルレス型装入装置(旋回シュートなど)を有するベルレス高炉において、鉱石原料とコークスの混合装入を行う原料装入方法である。高炉内には、塊コークスからなるコークス層と鉱石原料層が上下方向で交互に積層した状態に装入(充填)されるが、鉱石原料層において鉱石原料(a)とコークス(b)(混合装入用のコークス)を混合装入する場合、コークス(b)のソリューションロス反応を促進するには、鉱石原料層におけるCO2分圧の高い位置にコークス(b)を配置することが望ましい。この点を考慮して本発明者らは、鉱石原料層高さ方向におけるコークス(b)の配置形態について鋭意検討を重ね、鉱石原料層の上層部側に鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層を配置することで、CO2分圧が高い鉱石原料層の上層部側(下方からCO2リッチなガスが上昇してくるのでCO2分圧が高い)に高い質量比率でコークスを存在させることができ、これにより、コークス(b)のソルーションロス反応を促進させ、発生したCOガスにより鉱石原料層の還元反応を促進させることができるとの着想を得た。
【0018】
このような着想に基づき検討を進めた結果、鉱石原料層において、下層側を鉱石原料単独層とし、その上層に鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層を配置することにより、鉱石原料の還元効率が効果的に向上することが判った。また、その混合層の上層に、さらに鉱石原料単独層を配置することにより、鉱石原料の還元効率がより向上することが判った。このような知見に基づき、本発明では、1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料(a)のみを装入することにより鉱石原料単独層yを形成した後、鉱石原料(a)と混合装入用のコークス(b)を混合装入することにより、鉱石原料単独層yの上層に鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xを形成し、好ましくは、さらに、混合層xの上に鉱石原料(a)のみを装入することにより、混合層xの上層に鉱石原料単独層ytを形成するものである。
【0019】
ここで、鉱石原料(a)は、焼結鉱、塊鉱石、ペレットなどの1種以上からなり、さらに、スラグの成分調整などを目的とした副原料(例えば、石灰石、珪石、蛇紋岩など)を含むことがある。また、以下の説明において、焼結鉱(aS)、塊鉱石(aL)という場合も、同様に副原料やペレットなどを含むことがある。
また、混合装入用のコークス(b)としては、室炉コークス、成形コークス、フェロコークスなどの1種以上を用いることができる。また、室炉コークスのなかでも粒径が小さいコークス、いわゆる小塊コークスを使用した場合には、低粒径による比表面積の増加によりソリューションロス反応によるガス化が促進され、還元効率をより高めることができる。通常、この小塊コークスとしては、高炉装入用の塊コークスを得るために室炉コークスを分級した際の篩下コークスが用いられる。
【0020】
図1は、本発明の原料装入方法により形成された炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の一例を模式的に示す説明図である。図において、Aは1チャージ分の鉱石原料層、Bは同じく塊コークスからなるコークス層であり、これら鉱石原料層Aとコークス層Bが上下方向で交互に積層した状態に装入(充填)される。
鉱石原料層Aは、下層側に鉱石原料単独層yが形成され、この鉱石原料単独層
yの上層に、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xが形成されている。上述したように本発明では、鉱石原料層Aを形成するために1チャージ分の鉱石原料を装入する際に、鉱石原料(a)のみを装入することにより鉱石原料単独層yを形成した後、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することにより、鉱石原料単独層yの上層に鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xを形成する。また、この実施形態では、通気性を確保するため、炉中心部領域eには混合層xを設けず、炉中心部領域eは鉱石原料(a)のみで構成されている。
鉱石原料層Aは上層部側ほどCO
2分圧が高く、この上層部側に鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xを設け、高い質量比率でコークスを存在させることにより、コークス(b)のソリューションロス反応を促進することができ、これにより、鉱石の還元効率を向上させることができる。一方、下層側に配置された鉱石原料単独層yは、下方のコークス層BからCOが供給されるのでCO分圧が高く、鉱石原料(a)の還元が効率的になされる。
【0021】
本発明では、さらに、混合層xの上に鉱石原料(a)のみを装入することで、混合層xの上層に鉱石原料単独層y
tを形成することが好ましく、これにより、混合層x内でコークス(b)のソルーションロス反応で発生したCOガスを、上層の鉱石原料単独層yの還元に利用することができるため、鉱石の還元効率をさらに向上させることができる。
図2は、そのような場合の炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の一例を模式的に示す説明図であり、混合層xの上層に鉱石原料単独層y
tが形成されている。また、この実施形態でも、通気性を確保するため、炉中心部領域eには混合層xを設けず、炉中心部領域eは鉱石原料(a)のみで構成されている。
混合層xにおけるコークス(b)の混合割合は特に限定しないが、一般には、鉱石原料(a)に対して7質量%以下程度の割合で混合するのが好ましい。これは、コークス(b)の混合割合が多すぎると、鉱石が昇温して溶融するまでにコークス(b)がガス化(ソリューションロス反応によるガス化)しきれずに小粒のコークスとして炉下部に残留してしまい、炉下部の通気性を阻害する恐れがあるためである。コークス(b)の混合割合が少なくても、鉱石原料(a)中に混合されるコークス(b)があれば、上記したガス化反応により鉱石の還元の促進に寄与するため、コークス混合装入の効果を得ることができる。コークス(b)の混合割合は、鉱石原料(a)に対して好ましくは2質量%以上あればよい。
【0022】
本発明において鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入して混合層xを形成する方法としては、(i)1つの炉頂バンカーに鉱石原料(a)とコークス(b)を混合した状態で貯留しておき(例えば、ベルトコンベア上に切り出された鉱石原料(a)の上にコークス(b)を切り出し、サージホッパーで事前に混合してから炉頂バンカーに投入する)、この炉頂バンカーから鉱石原料(a)とコークス(b)を排出して混合装入する方法、(ii)鉱石原料(a)とコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出することで鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入する方法、があるが、(ii)の方法は、サージホッパーおよび炉頂バンカー内でのコークス(b)の偏析を防ぐことができるのでより好ましい。また、(ii)の方法は、コークス(b)の装入のタイミングや装入時間を調整する(例えば、1バッチの装入において、鉱石原料(a)の装入時間に対してコークス(b)の装入時間を短く設定する)ことで、任意の混合範囲、混合濃度でコークス(b)の混合装入を行うことができ、(i)の方法に較べて混合層xのコークス混合率を高めることが容易であるなどの利点もある。
したがって、本発明では、複数の炉頂バンカーを用い、鉱石原料(a)とコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出することで、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することが好ましい。
また、本発明では、ベルレス型装入装置(旋回シュートなど)を用いて混合装入するため、混合層xの形成位置や範囲についても任意に選択することができる。
【0023】
本発明の原料装入方法では、鉱石原料単独層yと混合層xを上下方向で複数層設けることができる。すなわち、鉱石原料(a)単独の装入と、鉱石原料(a)およびコークス(b)の混合装入を交互にそれぞれ複数回行うことにより、鉱石原料単独層yと混合層xを上下方向で交互にそれぞれ複数層形成することができる。
図3は、そのような場合の炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内原料装入層の縦断面)の一例を模式的に示す説明図であり、鉱石原料層Aは、鉱石原料単独層yとその上層の混合層xが上下方向で交互に積層し、それぞれ複数層形成されている。この実施形態では、上下方向で各2層の鉱石原料単独層y
1,y
2と混合層x
1,x
2とが交互に積層し、鉱石原料層Aを構成している。また、この実施形態でも、通気性を確保するため、炉中心部領域eには混合層xを設けず、炉中心部領域eは鉱石原料のみで構成されている。
【0024】
また、このような多層構造の鉱石原料層Aにおいても、さらに、最上層の混合層xの上に鉱石原料(a)のみを装入することにより、その混合層xの上層に鉱石原料単独層y
tを形成することが好ましく、これにより、混合層x
1,x
2内でコークス(b)のソルーションロス反応で発生したCOガスを、上層の鉱石原料単独層y
tの還元に利用することができるため、鉱石の還元効率をさらに向上させることができる。
図4は、そのような場合の炉内原料装入層の最上部の堆積状態(炉半径方向での炉内装入物の縦断面)の一例を模式的に示す説明図であり、最上層の混合層x
2の上層に鉱石原料単独層y
tが形成されている。また、この実施形態でも、通気性を確保するため、炉中心部領域eには混合層xを設けず、炉中心部領域eは鉱石原料のみで構成されている。
【0025】
本発明では、鉱石原料単独層y(但し、
図3、
図4のように鉱石原料単独層yが上下方向で複数層形成される場合は、最下層の鉱石原料単独層y)の鉱石原料(a)を塊鉱石(a
L)とし、それ以外の層(すなわち混合層xやその上層の鉱石原料単独層y
t)の鉱石原料(a)を焼結鉱(a
S)とすることが好ましい。これは、CO分圧が相対的に高い鉱石原料単独層yに被還元性の劣る塊鉱石(a
L)を配置し、CO分圧が相対的に低い混合層xやその上層の鉱石原料単独層y
tに被還元性の高い焼結鉱(a
S)を配置することにより、鉱石原料層Aの上下方向各部位の還元率の差が縮小し、鉱石原料層A全体での鉱石原料の還元率が高くなるからである。
【0026】
鉱石原料層の還元率について評価するために、内径70mmの坩堝にCOおよびCO2ガスを導入できる電気炉を用いて実験を行った。高炉内の雰囲気を想定して、温度は1100℃とし、CO=40%、CO2=5%、N2=55%の混合ガス15NL/minの雰囲気下で3時間保持して還元試験を行った。
粒径15-20mmの塊鉱石を500g、粒径15-20mmの焼結鉱を1000g、粒径15-20mmのコークスを37.5g準備し、試験材に供した。試験材の層厚は約210mmであり、電気炉の均熱帯よりも長くなったため、試験材を層厚方向に3分割して各70mmとし、下層試験材の排ガスデータから上層試験材のガス条件を算出した上で試験を行った。
【0027】
試験条件1では、すべての試験材を均一に混合し、第1層から第3層までの試験材とした。試験条件2では、塊鉱石と焼結鉱を均一に混合したもののうちの500gを第1層の試験材として用い、塊鉱石と焼結鉱を均一に混合したもののうちの500gとコークス18.25gを均一に混合したものを第2層および第3層の試験材として用いた。試験条件3では、第1層に塊鉱石500gを試験材として用い、焼結鉱500gとコークス18.25gを均一に混合したものを第2層および第3層の試験材として用いた。試験条件4では、第1層に塊鉱石500gを試験材として用い、焼結鉱500gとコークス37.5gを均一に混合したものを第2層の試験材として用い、焼結鉱500gを第3層の試験材として用いた。試験条件5では、第1層にコークスを混合しない塊鉱石を試験材として用い、焼結鉱250gとコークス18.25gを均一に混合したものを下層とし、その上層に焼結鉱250gを配置したものを第2層および第3層の試験材として用いた。
【0028】
各試験条件において、鉱石原料(焼結鉱および塊鉱石)の還元率とコークス反応率を調べた結果を
図5および
図6に示す。
ここで、鉱石原料(焼結鉱および塊鉱石)の還元率は、3分割した試験材それぞれの還元率の平均値であり、この還元率は、それぞれの試験材で混合された鉱石原料の実験前後の質量を測定し、質量減少分が還元により除去された酸素量であるとして算出した。また、コークス反応率は、3分割した試験材それぞれのコークス反応率の平均値であり、このコークス反応率は、それぞれの試験材で混合されたコークスの実験前後の質量を測定し、質量減少分がコークスの反応量であるとして算出した。
なお、実験後の鉱石原料およびコークスの質量は、それぞれを分離してから測定した。
【0029】
試験条件2は、鉱石原料単独層(焼結鉱+塊鉱石)である第1層の上に鉱石原料(焼結鉱+塊鉱石)とコークスの混合層である第2層および第3層を設けたものである。この試験条件2は、試験条件1に較べてコークス反応率が増加し、かつ鉱石原料の還元率が高くなった。これは、試験条件2は第1層よりもCO2分圧が高くなる第2層および第3層におけるコークス質量比率が試験条件1よりも高くなり、その結果、コークスのソリューションロス反応が促進され、発生したCOガスにより鉱石原料の還元が促進されたためであると考えられる。
【0030】
試験条件3は、試験条件2と同じく鉱石原料単独層である第1層の上に鉱石原料とコークスの混合層である第2層および第3層を設けたものであるが、第1層の鉱石原料を塊鉱石、第2層および第3層の鉱石原料を焼結鉱としたものである。この試験条件3は、試験条件2に較べてコークス反応率は同等であったが、鉱石原料の還元率が高くなった。これは、試験条件3はCO分圧が第2層および第3層よりも高い第1層に被還元性の劣る塊鉱石を配置し、CO分圧が第1層よりも低い第2層および第3層に被還元性の高い焼結鉱を配置したため、塊鉱石の還元が促進されることで、第1層から第3層までの還元率の差が縮小し、結果として平均還元率が高くなったためであると考えられる。
【0031】
試験条件4は、試験条件3と同じく鉱石原料単独層である第1層の鉱石原料を塊鉱石とし、混合層である第2層の鉱石原料を焼結鉱としたものであるが、第3層を焼結鉱からなる鉱石原料単独層としたものである。この試験条件4は、試験条件3に較べてコークス反応率は低位であったが、鉱石原料の還元率は同等であった。これは、試験条件4ではCO2分圧が第3層よりも低い第2層にのみコークスを配置したため、第3層にもコークスを配置した試験条件3よりもコークスの反応率は低下したが、第2層のコークスのソリューションロス反応で生じたCOガスが第3層の還元に有効に利用されたため、鉱石の還元率は試験条件3と同等となったものと考えられる。
【0032】
試験条件5は、試験条件3,4と同じく鉱石原料単独層である第1層の鉱石原料を塊鉱石としたものであるが、第2層および第3層については、それらの下層側のみを焼結鉱とコークスの混合層とし、上層側は第3層と同様の焼結鉱からなる鉱石原料単独層としたものである。この試験条件5は、コークス反応率は試験条件3と試験条件4との中間であったが、鉱石原料の還元率は最大となった。これは、試験条件5では第2層下層と第3層下層にのみコークスを配置したため、第2層および第3層全体にコークスを配置した試験条件3と比較して、CO2分圧の低い領域でのコークスの質量比率が高くなり、コークス反応率は低下したが、第2層下層のコークスのソリューションロス反応で生じたCOガスが第2層上層の鉱石原料の還元に有効に利用され、かつ第3層下層のコークスのソリューションロス反応で生じたCOガスが第3層上層の鉱石原料の還元に有効に利用されたため、鉱石原料の還元率は試験条件3よりも高位となったものと考えられる。
【0033】
上記試験の結果から、例えば、1チャージ分の鉱石原料を3バッチに分割して炉内装入する場合、第1バッチではコークスを混合しない鉱石原料単独層を形成し、第2バッチまたは第2バッチと第3バッチでは鉱石原料とコークスを混合装入する原料層(以下、混合層という)を形成することが望ましく、この場合には、CO2分圧が高くなる第2層または第2層と第3層に高い質量比率でコークスを存在させることができるため、コークスのソリューションロス反応が促進され、発生したCOガスにより鉱石原料の還元が促進されることになり、鉱石原料の還元効率が向上する。なお、第1バッチと第2バッチで鉱石原料単独層を形成し、第3バッチで混合層を形成してもよいが、この場合には、コークス反応率は高くなるものの、発生したCOガスが鉱石原料の還元反応に寄与しにくくなる不利がある。
【0034】
また、第1バッチで鉱石原料単独層を形成し、第2バッチで混合層を形成し、第3バッチで鉱石原料単独層を形成すると、CO2分圧が高くなる第2層に高い質量比率でコークスを存在させることができので、コークスのソリューションロス反応が促進されるとともに、第2層のコークスのソリューションロス反応で生じたCOガスが第3層の還元に有効に利用され、鉱石原料の還元効率が向上する。
また、第1層(鉱石原料単独層)の鉱石原料を塊鉱石(被還元性が低い鉱石原料)とし、第2層(混合層)および第3層(混合層または鉱石原料単独層)の鉱石原料を焼結鉱(被還元性の高い鉱石原料)とすることにより、第1層から第3層までの還元率の差が縮小し、全体として還元率が高くすることができる。
また、試験条件5からして、鉱石原料単独層とその上層の混合層を交互に2層以上設けることにより、鉱石原料の還元効率が向上する。
【0035】
鉱石原料(a)とコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入することにより混合層xを形成した後、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、その混合層xの上層に鉱石原料単独層y(鉱石原料単独層yt、または鉱石原料単独層yを複数層設ける場合の2層目以降の鉱石原料単独層y)を形成する場合において、その混合層xと鉱石原料単独層yを1バッチで形成する場合、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することにより混合層xを形成するとともに、1バッチで装入する全鉱石原料量の90質量%を装入するまでにコークス(b)の装入を終了させ、引き続き、残りの鉱石原料(a)を混合層xの上に装入することにより鉱石原料単独層yを形成することが好ましい。混合層xの上に装入する鉱石原料量が1バッチで装入する全鉱石原料量の10質量%未満となると、混合層xで発生したCOガスが鉱石原料単独層yの鉱石原料の還元に寄与しにくくなるからである。ここで、1バッチ内で混合層xを形成し、さらにその上層に鉱石原料単独層yを形成する場合、例えば、鉱石原料(a)とコークス(b)を同時排出する期間に旋回シュートの傾動角を変更していた方向に対して、コークス(b)の同時排出を終了した時点以降は逆の方向に旋回シュートの傾動角を変更するようにすることで、鉱石原料(a)とコークス(b)の混合層xの上層に鉱石原料単独層yを形成することができる。
【0036】
本発明において、複数の炉頂バンカーを用い、鉱石原料(a)とコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出することで、鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入する場合、1チャージ当たり鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する回数nに対し、炉頂バンカー数がn+2以上であることが好ましい。したがって、炉頂バンカー数は、n=1(混合層xが1層)の場合には3基以上、n=2(混合層xが2層)の場合には4基以上とすることが好ましい。これにより、炉頂バンカーに原料を補充するための待ち時間(炉内装入の待ち時間)を無くすことができるため、原料を連続的に装入することが可能となり、出銑量を落とすことなく本発明法を実施することができる。
【0037】
炉頂バンカーの大きさは、装入する鉱石原料(a)やコークス(b)の量に応じて決められる。炉頂バンカーは、鉱石原料(a)の貯留とコークス(b)の貯留を兼用できるものでもよいし、鉱石原料(a)の貯留専用とコークス(b)の貯留専用のものでもよいが、前者の方が炉頂バンカー数を少なくできるので好ましい。
なお、コークス(b)を炉頂バンカーに装入して貯留するには、炉頂バンカーに原料を搬送するためのベルトコンベア上に切出しホッパーを設置し、この切出しホッパーからベルトコンベア上にコークス(b)が切り出されるようにすることが望ましい。
【0038】
以下、本発明において、鉱石原料層Aを形成するための原料装入方法の具体例について説明する。
鉱石原料層Aを構成する1チャージ分の原料は、1バッチ、複数バッチ(例えば、2バッチまたは3バッチ)のいずれで装入してもよい。
鉱石原料(a)とコークス(b)は、ベルレス型装入装置を構成する旋回シュートを通じて装入され、旋回シュートの傾動角を調整(変更)することにより、炉半径方向で炉中心部側から炉壁側に向けて、若しくは炉壁側から炉中心部側に向けて原料が順次装入される。
【0039】
図7(A)~(D)は、鉱石原料層Aを3バッチで形成する実施形態について、各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を示している。これらのうち、
図7(A)、(B)は混合層xを1層設ける実施形態、
図7(C),(D)は混合層xを2層設ける実施形態を示している。なお、
図7(およびこれに関する以下の説明)は、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域に対する原料装入に関するものであり、通常、
図1~
図4に示すように炉中心部領域eに対しては鉱石原料(a)のみを装入するものである。すなわち、鉱石原料(a)の一部は、図示しないタイミングで炉中心部領域eに装入されることになる。
鉱石原料(a)としては、焼結鉱(a
S)と塊鉱石(a
L)が用いられており、下層の鉱石原料単独層yには塊鉱石(a
L)が用いられ、その上層の混合層xや鉱石原料単独層y
tには焼結鉱(a
S)が用いられる。
【0040】
図7(A)の実施形態では、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(a
S)を焼結鉱(a
S-1)および焼結鉱(a
S-2)に2分割し、同じくコークス(b)をコークス(b-1)とコークス(b-2)に2分割する。第1バッチでは、炉頂バンカー1に貯留された塊鉱石(a
L)を排出して装入し、鉱石原料単独層yを形成する。続く第2バッチでは、炉頂バンカー2に混合状態で貯留された焼結鉱(a
S-1)とコークス(b-1)を排出して混合装入し、混合層xの一部(下層部)を形成する。続く第3バッチでは、炉頂バンカー3に混合状態で貯留された焼結鉱(a
S-2)とコークス(b-2)を排出して混合装入し、混合層xの残部(上層部)を形成する。
【0041】
図7(B)の実施形態では、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(a
S)を焼結鉱(a
S-1)および焼結鉱(a
S-2)に2分割する。第1バッチでは、炉頂バンカー1に貯留された塊鉱石(a
L)を排出して装入し、鉱石原料単独層yを形成する。続く第2バッチでは、炉頂バンカー2に貯留された焼結鉱(a
S-1)と炉頂バンカー3に貯留されたコークス(b)を同時に排出して混合装入し、焼結鉱(a
S-1)の装入終了とともにコークス(b)の装入を終了させることにより鉱石原料単独層yの上層に混合層xを形成する。続く第3バッチでは、炉頂バンカー1に貯留された焼結鉱(a
S-2)を排出して装入し、混合層xの上層に鉱石原料単独層y
tを形成する。
【0042】
図7(C)の実施形態では、3基の炉頂バンカーを用いて、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(a
S)を焼結鉱(a
S-1)および焼結鉱(a
S-2)に2分割し、同じくコークス(b)をコークス(b-1)とコークス(b-2)に2分割する。第1バッチでは、炉頂バンカー1に貯留された塊鉱石(a
L)を排出して装入し、第1の鉱石原料単独層y
1を形成する。続く第2バッチでは、炉頂バンカー2に貯留された焼結鉱(a
S-1)と炉頂バンカー3に貯留されたコークス(b-1)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層y
1の上層に第1の混合層x
1を形成するとともに、所定量(好ましくは1バッチで装入する全鉱石原料量の90質量%以下)の焼結鉱(a
S-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(a
S-1)を装入することにより、混合層x
1の上層に第2の鉱石原料単独層y
2を形成する。続く第3バッチでは、炉頂バンカー1に貯留された焼結鉱(a
S-2)と炉頂バンカー2に貯留されたコークス(b-2)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層y
2の上層に第2の混合層x
2を形成するとともに、所定量(好ましくは1バッチで装入する全鉱石原料量の90質量%以下)の焼結鉱(a
S-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(a
S-2)を装入することにより、混合層x
2の上層に鉱石原料単独層y
tを形成する。
【0043】
図7(D)の実施形態では、4基の炉頂バンカーを用いて、
図7(C)と同様の形態の原料装入を行うものであり、1チャージ分の鉱石原料(a)を3バッチで装入するに際し、1チャージ分の焼結鉱(a
S)を焼結鉱(a
S-1)および焼結鉱(a
S-2)に2分割し、同じくコークス(b)をコークス(b-1)とコークス(b-2)に2分割する。第1バッチでは、炉頂バンカー1に貯留された塊鉱石(a
L)を排出して装入し、第1の鉱石原料単独層y
1を形成する。続く第2バッチでは、炉頂バンカー2に貯留された焼結鉱(a
S-1)と炉頂バンカー3に貯留されたコークス(b-1)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層y
1の上層に第1の混合層x
1を形成するとともに、所定量(好ましくは1バッチで装入する全鉱石原料量の90質量%以下)の焼結鉱(a
S-1)を装入した時点でコークス(b-1)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(a
S-1)を装入することにより、混合層x
1の上層に第2の鉱石原料単独層y
2を形成する。続く第3バッチでは、炉頂バンカー4に貯留された焼結鉱(a
S-2)と炉頂バンカー1に貯留されたコークス(b-2)を同時に排出して混合装入することにより、鉱石原料単独層y
2の上層に第2の混合層x
2を形成するとともに、所定量(好ましくは1バッチで装入する全鉱石原料量の90質量%以下)の焼結鉱(a
S-2)を装入した時点でコークス(b-2)の装入を終了させ、引き続き、残りの焼結鉱(a
S-2)を装入することにより、混合層x
2の上層に鉱石原料単独層y
tを形成する。
【0044】
なお、
図7(C)、(D)の本実施形態のように、1つのバッチ(第2バッチ、第3バッチ)において、混合層x(混合層x
1、混合層x
2)を形成し、さらにその上層に鉱石原料(a)を装入して鉱石原料単独層y(鉱石原料単独層y
2、鉱石原料単独層y
t)を形成する場合、上述したように、混合層xを形成した後、旋回シュートをそれまでとは逆向きに傾動させて鉱石原料(a)を装入すればよい。
【0045】
ここで、
図7(C)と
図7(D)の実施形態を較べると、3基の炉頂バンカーを用いる
図7(C)の実施形態では、1層目の混合層x
1と2層目の鉱石原料単独層y
2を形成するための原料装入で空になった炉頂バンカー(炉頂バンカー2)に原料(コークス(b-2))を再投入(貯留)してから、2層目の混合層x
2と鉱石原料単独層y
tを形成するための原料装入を行うため、1チャージ分の鉱石原料の装入時間が長くなり、その分出銑量が低下する。これに対して4基の炉頂バンカーを用いる
図7(D)の実施形態では、1層目の混合層x
1と2層目の鉱石原料単独層y
2を形成するための原料装入中に別の炉頂バンカー(炉頂バンカー4)に原料を投入して貯留し、2層目の混合層x
2と鉱石原料単独層y
tを形成するために使用できるため、炉頂バンカーに原料を補充する際の装入待ち時間がなくなり、出銑量を低下させることなく実施することができる。
【0046】
次に、炉半径方向における炉中心部領域eへの原料装入を含めた原料装入方法の具体例について説明する。
なお、以下の具体例において、例えば、1つバッチ内で混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを形成し、或いは鉱石原料単独層yとその上層の混合層xを形成するには、旋回シュートによる原料装入中に、旋回シュートの傾動の向きや、炉半径方向での旋回シュートの装入方向を適宜変えればよい。
まず、
図1に示すように鉱石原料単独層yと混合層xをそれぞれ1層設ける場合であって、鉱石原料単独層yとその上層の混合層xを2バッチで形成する場合について説明する。
図8はその一実施形態を示すものであり、第1バッチでは、
図8(ア)に示すように、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層を形成する。続く第2バッチでは、
図8(イ)に示すように、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xを形成する。なお、この第2バッチの初期または後期に、炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入するようにしてもよい。
【0047】
また、
図8の実施形態以外の他の実施形態としては、第1バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層を形成し、引き続き、その鉱石原料単独層yの上層に鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xの一部を形成する。続く第2バッチでは、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xの残部を形成する。なお、この第2バッチの初期または後期に、炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入するようにしてもよい。
【0048】
同じく他の実施形態としては、第1バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yの一部を形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の一部を形成する。続く第2バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yの残部を形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の残部を形成し、引き続き、その鉱石原料単独層yの上層に鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xを形成する。
【0049】
次に、
図2に示すように鉱石原料単独層yと混合層xをそれぞれ1層設け、且つ混合層xの上層に鉱石原料単独層y
tを設ける場合であって、鉱石原料単独層yと、その上層の混合層xと、その上層の鉱石原料単独層y
tを3バッチで形成する場合について説明する。
図9はその一実施形態を示すものであり、第1バッチでは、
図9(ア)に示すように、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の一部を形成する。続く第2バッチでは、
図9(イ)に示すように、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xを形成する。なお、この第2バッチの初期または後期に、炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入するようにしてもよい。続く第3バッチでは、
図9(ウ)に示すように、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層y
tを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の残部を形成する。
【0050】
また、
図9の実施形態以外の他の実施形態としては、第1バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の一部を形成し、引き続き、その鉱石原料単独層yの上層に鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xの一部を形成する。続く第2バッチでは、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xの残部を形成する。なお、この第2バッチの初期または後期に、炉中心部領域eに対して鉱石原料(a)のみを装入するようにしてもよい。続く第3バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層y
tを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の残部を形成する。
【0051】
同じく他の実施形態としては、第1バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yの一部を形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の一部を形成する。続く第2バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yの残部を形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の一部を形成し、引き続き、その鉱石原料単独層yの上層に鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xを形成する。続く第3バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層ytを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の残部を形成する。
【0052】
同じく他の実施形態としては、第1バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の一部を形成する。続く第2バッチでは、炉半径方向における炉中心部領域e以外の領域に対して鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層xを形成し、引き続き、その混合層xの上層を含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層ytの一部を形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の一部を形成する。続く第3バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層ytの残部を形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の残部を形成する。
【0053】
また、
図3に示すように鉱石原料単独層yと混合層xをそれぞれ2層設ける場合であって、鉱石原料単独層y
1,y
2とそれらの上層の混合層x
1,x
2を2バッチで形成する場合の一実施形態としては、例えば、第1バッチでは、炉中心部領域eを含む炉半径方向における全部の領域に対して鉱石原料(a)のみを装入することで、鉱石原料単独層y
1を形成するとともに、炉中心部領域eの鉱石原料層の一部を形成し、引き続き、鉱石原料単独層yの上層に鉱石原料(a)とコークス(b)を混合装入することで混合層x
1を形成する。第2バッチでは、以上のような原料装入を再度行うことで、鉱石原料単独層y
2とその上層の混合層x
2を形成するとともに、炉中心部領域の鉱石原料層の残部を形成する。
なお、
図3に示すように鉱石原料単独層yと混合層xをそれぞれ2層設ける場合、混合層x
1,x
2とそれらの上層の鉱石原料単独層y
1,y
2を、それぞれ別々のバッチ(計4バッチ)で形成するようにしてもよい。
【0054】
また、本発明では、以下のように鉱石原料単独層yとその上層の混合層xを1バッチで形成することもできる。
その一実施形態としては、旋回シュートにより、炉半径方向で炉壁側から炉中心部側に向けて原料装入を行った後、折り返して炉中心部側から炉壁側に向けて原料装入を行うことにより、鉱石原料単独層yとその上層の混合層xを1バッチで形成するに当たり、炉壁側から炉中心部側に向けて行う原料装入では、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eに鉱石原料層を形成する。続く炉中心部側から炉壁側に向けて行う原料装入では、炉半径方向における炉中心部領域eに対して、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入した後、それ以降は、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入し、鉱石原料単独層yの上層に混合層xを形成する。
【0055】
また、他の実施形態としては、旋回シュートにより、炉半径方向で炉中心部側から炉壁側に向けて原料装入を行った後、折り返して炉壁側から炉中心部側に向けて原料装入を行うことにより、鉱石原料単独層yとその上層の混合層xを1バッチで形成するに当たり、炉中心部側から炉壁側に向けて行う原料装入では、鉱石原料(a)のみを炉頂バンカーから排出して装入することにより、鉱石原料単独層yを形成するとともに、炉中心部領域eに鉱石原料層を形成する。続く炉壁側から炉中心部側に向けて行う原料装入では、鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入し、鉱石原料単独層yの上層に混合層xを形成する。
また、以上のような各実施形態(混合層xとその上層の鉱石原料単独層yを1バッチで形成する実施形態)の原料装入を2回繰り返すこと(2バッチ)により、
図2に示すような混合層xと鉱石原料単独層yをそれぞれ2層設けた層構造とすることもできる。
【実施例0056】
並列した複数基の炉頂バンカーとベルレス型装入装置(旋回シュートなど)を備えたベルレス高炉(炉口径11.4m)において、塊コークスからなるコークス層Bと、一部または全部が鉱石原料とコークスの混合層からなる鉱石原料層Aが交互に形成されるように原料装入を行った。なお、以下の説明において、コークス(b),(b-1),(b-2)は混合装入用の小塊コークスを指す。
図10(ア)~(オ)は、各実施例(発明例、比較例)において鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を示している。なお、
図10(ア)~(オ)(およびこれに関する以下の説明)は、炉径方向における炉中心部領域以外の領域に対する原料装入に関するものであり、炉中心部領域に対しては鉱石原料(a)のみを装入した(
図1~
図4参照)。すなわち、鉱石原料(a)の一部を、図示しないタイミングで炉中心部領域eに装入した。
【0057】
比較例1では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成した。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を
図10(ア)に示す。塊コークスの高炉内への装入が終了するまでに、貯鉱槽から全塊鉱石量の半量の塊鉱石(a
L-1)を貯鉱槽下のベルトコンベア上に切出し、別の貯鉱槽から全焼結鉱量の半量の焼結鉱(a
S-1)をベルトコンベア上の塊鉱石(a
L-1)の後ろに切出し、貯骸槽から全コークス量の半量のコークス(b-1)をベルトコンベア上の塊鉱石(a
L-1)および焼結鉱(a
S-1)の上に切出し、これらをサージホッパーを経由して炉頂バンカー1に投入(貯留)した。塊コークスの高炉内への装入後に、第1バッチとして、炉頂バンカー1から原料(塊鉱石(a
L-1)+焼結鉱(a
S-1)+コークス(b-1))を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて装入を行った。炉頂バンカー1からの原料装入が終了するまでに、貯鉱槽から全塊鉱石量の残りの半量の塊鉱石(a
L-2)を貯鉱槽下のベルトコンベア上に切出し、別の貯鉱槽から全焼結鉱量の残りの半量の焼結鉱(a
S-2)をベルトコンベア上の塊鉱石(a
L-2)の後ろに切出し、貯骸槽から全コークス量の残りの半量のコークス(b-2)をベルトコンベア上の塊鉱石(a
L-2)および焼結鉱(a
S-2)の上に切出し、これらをサージホッパーを経由して炉頂バンカー2に投入(貯留)した。炉頂バンカー1からの原料装入が終了した後、第2バッチとして、炉頂バンカー2から原料(塊鉱石(a
L-2)+焼結鉱(a
S-2)+コークス(b-2))を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて装入を行った。
【0058】
発明例1では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、
図1に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を
図10(イ)に示す。塊コークスの高炉内への装入が終了するまでに、貯鉱槽から塊鉱石(a
L)をベルトコンベアに切出した後、サージホッパーを経由して炉頂バンカー1に投入(貯留)した。塊コークスの高炉内への装入終了後、第1バッチとして、炉頂バンカー1から塊鉱石(a
L)を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて装入を行った(鉱石原料単独層yを形成)。この炉頂バンカー1からの原料装入が終了するまでに、貯鉱槽から全焼結鉱量の半量の焼結鉱(a
S-1)をベルトコンベア上に切出し、貯骸槽から全コークス量の半量のコークス(b-1)をベルトコンベア上の焼結鉱(a
S-1)の上に切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー2に投入(貯留)した。炉頂バンカー1からの塊鉱石(a
L)の装入が終了した後、第2バッチとして、炉頂バンカー2から焼結鉱(a
S-1)およびコークス(b-1)を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて混合装入を行った(混合層xの一部を形成)。この炉頂バンカー2からの装入が終了するまでに、貯鉱槽から全焼結鉱量の残りの半量の焼結鉱(a
S-2)をベルトコンベア上に切出し、貯骸槽から全コークス量の残りの半量のコークス(b-2)をベルトコンベア上の焼結鉱(a
S-2)の上に切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー3に投入(貯留)した。炉頂バンカー2からの焼結鉱(a
S-1)およびコークス(b-1)の装入が終了した後、第3バッチとして、炉頂バンカー3から焼結鉱(a
S-2)およびコークス(b-2)を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて混合装入を行った(混合層xの残部を形成)。炉頂バンカー3から鉱石原料を装入後の鉱石層のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0059】
発明例2では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、
図2に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を
図10(ウ)に示す。塊コークスの高炉内へ装入が終了するまでに、貯鉱槽から塊鉱石(a
L)をベルトコンベアに切出した後、サージホッパーを経由して炉頂バンカー1に投入(貯留)した。塊コークスの高炉内への装入が終了した後、第1バッチとして、炉頂バンカー1から塊鉱石(a
L)を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて装入を行った(鉱石原料単独層yを形成)。炉頂バンカー1からの装入が終了するまでに、貯鉱槽から全焼結鉱量の半量の焼結鉱(a
S-1)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー2に投入(貯留)し、貯骸槽からコークス(b)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー3に投入(貯留)した。炉頂バンカー1からの原料装入が終了した後、第2バッチとして、炉頂バンカー2および炉頂バンカー3から焼結鉱(a
S-1)とコークス(b)を同時に排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて混合装入を行い、炉頂バンカー2および炉頂バンカー3からの原料の排出を同時に終了した(混合層xを形成)。炉頂バンカー2および炉頂バンカー3からの原料装入が終了するまでに、貯鉱槽から全焼結鉱量の残りの半量の焼結鉱(a
S-2)をベルトコンベアに切出した後、サージホッパーを経由して炉頂バンカー1に投入(貯留)した。炉頂バンカー2および炉頂バンカー3からの原料装入が終了した後、第3バッチとして、炉頂バンカー1から焼結鉱(a
S-2)を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて装入を行った(鉱石原料単独層y
tを形成)。炉頂バンカー1からの原料装入後の鉱石層のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0060】
発明例3では、3基の並列した炉頂バンカー1~3を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、
図4に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を
図10(エ)に示す。塊コークスの高炉内への装入が終了するまでに、貯鉱槽から塊鉱石(a
L)をベルトコンベアに切出した後、サージホッパーを経由して炉頂バンカー1に投入(貯留)した。塊コークスの高炉内への装入が終了した後、第1バッチとして、炉頂バンカー1から塊鉱石(a
L)を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて装入を行った(鉱石原料単独層y
1を形成)。炉頂バンカー1からの原料装入が終了するまでに、貯鉱槽から全焼結鉱量の半量の焼結鉱(a
S-1)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー2に投入(貯留)し、貯骸槽から全コークス量の半量のコークス(b-1)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー3に投入(貯留)した。炉頂バンカー1からの原料装入が終了した後、第2バッチとして、炉頂バンカー2から焼結鉱(a
S-1)を排出すると同時に、炉頂バンカー3からコークス(b-1)を同時に排出して混合装入を行い(混合層x
1を形成)、焼結鉱(a
S-1)の50質量%を排出した時点でコークス(b-1)の排出を終了させ、残りの焼結鉱(a
S-1)が焼結鉱(a
S-1)とコークス(b-1)の混合層の上層となるよう旋回シュートの傾動角を調整して装入を行った(鉱石原料単独層y
2を形成)。炉頂バンカー2からの装入が終了するまでに、全焼結鉱量の残りの半量の焼結鉱(a
S-2)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー1に投入(貯留)した。また、炉頂バンカー2からの装入が終了してから、全コークス量の残りの半量のコークス(b-2)をベルトコンベアに切り出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー2に投入(貯留)した。その後、第3バッチとして、炉頂バンカー1から焼結鉱(a
S-2)を排出すると同時に、炉頂バンカー2からコークス(b-2)を同時に排出して混合装入を行い(混合層x
2を形成)、焼結鉱(a
S-2)の50質量%を排出した時点でコークス(b-2)の排出を終了させ、残りの焼結鉱(a
S-2)が焼結鉱(a
S-2)とコークス(b-2)の混合層の上層となるよう旋回シュートの傾動角を調整して装入を行った(鉱石原料単独層y
tを形成)。鉱石原料装入後の鉱石層のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0061】
発明例4では、4基の並列した炉頂バンカー1~4を用い、塊コークスを炉内装入してコークス層Bを形成した後、その上層に、以下のようにして鉱石原料層Aを形成し、
図4に示すような原料装入層最上部の堆積状態とした。この鉱石原料層Aを形成する際の各炉頂バンカーからの原料装入のタイミングと装入期間を
図10(オ)に示す。塊コークスの高炉内への装入が終了するまでに、貯鉱槽から塊鉱石(a
L)をベルトコンベアに切出した後、サージホッパーを経由して炉頂バンカー1に投入(貯留)した。塊コークスの高炉内への装入が終了した後、第1バッチとして、炉頂バンカー1から塊鉱石(a
L)を排出し、旋回シュートの傾動角を調整して炉壁側から炉中心部側に向けて装入を行った(鉱石原料単独層y
1を形成)。炉頂バンカー1からの原料装入が終了するまでに、貯鉱槽から全焼結鉱量の半量の焼結鉱(a
S-1)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー2に投入(貯留)し、ベルトコンベア上に設けた専用のホッパーから全コークス量の半量のコークス(b-1)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー3に投入(貯留)した。炉頂バンカー1からの原料装入が終了した後、第2バッチとして、炉頂バンカー2から焼結鉱(a
S-1)を排出すると同時に、炉頂バンカー3からコークス(b-1)を同時に排出して混合装入を行い(混合層x
1を形成)、焼結鉱(a
S-1)の50質量%を排出した時点でコークス(b-1)の排出を終了させ、残りの焼結鉱(a
S-1)が焼結鉱(a
S-1)とコークス(b-1)の混合層の上層となるよう旋回シュートの傾動角を調整して装入を行った(鉱石原料単独層y
2を形成)。炉頂バンカー2からの装入が終了するまでに、全焼結鉱量の残りの半量の焼結鉱(a
S-2)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー4に投入(貯留)し、ベルトコンベア上に設けた専用のホッパーから全コークス量の残り半量のコークス(b-2)をベルトコンベアに切出し、サージホッパーを経由して炉頂バンカー1に投入(貯留)した。第3バッチとして、炉頂バンカー4から焼結鉱(a
S-2)を排出すると同時に、炉頂バンカー1からコークス(b-2)を同時に排出して混合装入を行い(混合層x
2を形成)、焼結鉱(a
S-2)の50質量%を排出した時点でコークス(b-2)の排出を終了させ、残りの焼結鉱(a
S-2)が焼結鉱(a
S-2)とコークス(b-2)の混合層の上層となるよう旋回シュートの傾動角を調整して装入を行った(鉱石原料単独層y
tを形成)。鉱石原料装入後の鉱石層のプロフィールは比較例1と同じであった。
【0062】
ここで、発明例1~4および比較例1では、コークス(b)は鉱石原料(a)(塊鉱石(aL)+焼結鉱(aS))の合計量に対して2.5質量%の割合で混合した。塊鉱石(aL)の質量比率は、鉱石原料(a)(塊鉱石(aL)+焼結鉱(aS))に対して20質量%とした。また、鉱石原料(a)(塊鉱石(aL)+焼結鉱(aS))の装入量は出銑比とコークス比に応じて決められ、1チャージ当たり塊鉱石(aL)は20~30t、焼結鉱(aS)は130~140tの範囲となった。
表1に各実施例の操業結果を示す。
【0063】
発明例1は比較例1よりも還元材比が低位となった。これは、鉱石原料単独層yの上層に混合層xを配置したことにより、コークス(b)のソリューションロス反応が促進され、鉱石原料(a)の還元率が増加したことに加えて、鉱石原料単独層yの鉱石原料(a)を被還元性の低い塊鉱石とし、混合層xの鉱石原料(a)を焼結鉱としたことで、鉱石原料層の高さ方向での還元率の差異が減少したことで還元率が増加したためであると考えられる。
発明例2は発明例1よりも還元材比が低位となった。これは、発明例1では、1つの炉頂バンカーに鉱石原料(a)とコークス(b)を混合した状態で貯留しておき、その炉頂バンカーから排出することで混合装入したのに対して、発明例2では、鉱石原料(a)とコークス(b)を別々の炉頂バンカーに貯留しておき、炉頂バンカーから同時に排出することで混合装入したため、発明例1よりもコークス(b)の偏析が改善したためであると考えられる。
【0064】
発明例3、4は、還元材比が発明例1、2より低位となった。これは、鉱石原料単独層yと混合層xを上下方向でそれぞれ2層形成し、且つ最上層の混合層x2の上層に、さらに鉱石原料単独層ytを形成したため、混合層xで発生したCOガスが、その上層の鉱石原料(a)(鉱石原料単独層y、yt)の還元に有効に使用されたため、鉱石原料(a)の還元率が増加したためであると考えられる。
一方、3基の炉頂バンカーを用いた発明例3は、1層目の混合層x1の装入が終了するまで、2層目の混合装入に必要な原料を炉頂バンカーに投入することができないため、その分、原料の装入時間長くなった。これに対して、4基の炉頂バンカーを用いた発明例4は、1層目の混合層x1の装入が終了するまでに、2層目の混合装入に必要な原料を炉頂バンカーに投入することができるため、炉頂バンカーに鉱石原料を補充する待ち時間を無くすことができ、出銑量を維持することができた。このように、1チャージ当たり鉱石原料(a)とコークス(b)を各炉頂バンカーから同時に排出して混合装入する回数n(混合層xの層数)に対し、炉頂バンカー数をn+2以上とすることにより、炉頂バンカーに原料を補充するための待ち時間(炉内装入の待ち時間)を無くすことができ、原料を連続的に炉内装入することが可能となり、生産量の低下を防ぐことが可能となる。
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