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特開2022-84325薬液塗布具包装体の製造方法とその包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084325
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】薬液塗布具包装体の製造方法とその包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/08 20060101AFI20220531BHJP
   B65D 77/12 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
B65D77/08 A
B65D77/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196121
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】391057889
【氏名又は名称】株式会社アグリス
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕之
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA14
3E067AB81
3E067AB83
3E067AC05
3E067BA12A
3E067BA34A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA11
3E067EB22
3E067EC07
3E067EC14
3E067FB02
(57)【要約】
【課題】塗布具と薬液を一つの容器に包装した包装体において、薬液が充填された部分のシール強度を適正に設定し、使用の際には薬液を塗布具の持ち手部分に付着させることなく塗布部材に確実に含浸させるようにする。
【解決手段】薬液塗布具包装体のシート本体にフィルムをヒートシールする処理する際に、第1のシール工程で薬液の充填凹所の輪郭を囲いつつ、切れ目部を有する輪郭包囲線上に沿ってヒートシールすることで前記凹所内の圧力の上昇を抑制し、第2のシール工程で、前記輪郭包囲線上を含む凹所周辺をヒートシールする。薬液の充填凹所と塗布具の充填凹所間には薬液流通経路の緩衝部となる帯状のシール部を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体の上面内に第1の凹所と第2の凹所が隣接して設けられ、第1の凹所に薬液、第2の凹所に薬液塗布具がそれぞれ充填され、シート本体の上面にフィルムがヒートシールされてなる薬液塗布具包装体の製造方法において、
前記シート本体にフィルムをヒートシールする処理には、
前記第1の凹所の輪郭を囲う線であって当該線上に一つ以上の切れ目部を有する輪郭包囲線上に沿ってヒートシールする第1のシール工程と、
この第1のシール工程の後に、前記輪郭包囲線の前記第2の凹所に面した一部分を除いて、当該輪郭包囲線上及び輪郭包囲線の周辺に沿ってヒートシールする第2のシール工程と、
が含まれることを特徴とする薬液塗布具包装体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の凹所の輪郭を囲う輪郭包囲線の切れ目部は、当該第1の凹所の、第2の凹所と対面する側とは反対側の輪郭を囲う部分に設けられることを特徴とする請求項1に記載の薬液塗布具包装体の製造方法。
【請求項3】
前記第2のシール工程においてヒートシールされない輪郭包囲線の第2の凹所に面した部分は、当該輪郭包囲線が第1の凹所に向けて略アーチ状に湾曲乃至屈曲した部分であることを特徴とする請求項1又は2に記載に薬液塗布具包装体の製造方法。
【請求項4】
前記第2のシール工程において、前記第1のシール工程でヒートシールされた輪郭包囲線と第2の凹所との間に、少なくとも一つの点状乃至帯状のヒートシール部が設けられることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の薬液塗布具包装体の製造方法。
【請求項5】
シート本体の上面内に第1の凹所と第2の凹所が隣接して設けられ、第1の凹所に薬液、第2の凹所に薬液塗布具がそれぞれ充填され、シート本体の上面にフィルムがヒートシールされてなる薬液塗布具包装体の製造方法において、
シート本体の全周辺のうち、第2の凹所が設けられた側の周辺をヒートシールする工程と、
前記シール工程でヒートシールされたシール部位に連ねて、シート本体の第1の凹所が設けられた側の周辺をヒートシールする工程と、
が含まれることを特徴とする薬液塗布具包装体の製造方法。
【請求項6】
第2の凹所の周辺部のシール強度は、塗布具の軸部側の周辺をヒートシールするときよりも、塗布部材側の周辺をヒートシールするときの方が、シール強度が大きいことを特徴とする請求項5に記載の薬液塗布具包装体の製造方法。
【請求項7】
シート本体の上面内に第1の凹所と第2の凹所が隣接して設けられ、第1の凹所に薬液、第2の凹所に薬液塗布具がそれぞれ充填され、シート本体の上面にフィルムをヒートシールしてなる薬液塗布具包装体において、
前記第1の凹所の輪郭を環状に囲う線であって当該線上に一つ以上の切れ目部を有する輪郭包囲線線上に沿ったヒートシール部を備えることを特徴とする薬液塗布具包装体。
【請求項8】
前記輪郭包囲線上に沿ったヒートシール部と第2の凹所との間に、少なくとも一つの点状乃至帯状のヒートシール部を備えることを特徴とする請求項7に記載の薬液塗布具包装体。
【請求項9】
第1の凹所の底部であって、第2の凹所の側とは反対側となる位置の前記底部の表面に、押圧誘導部位となる傾斜面部が設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の薬液塗布具包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒液その他液状の薬剤や化粧剤などの薬液を体に塗布する際に用いられる薬液塗布具包装体(以下、単に「包装体」ともいう。)に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷の消毒や外皮消毒などの際に、消毒剤と医薬品用の塗布具を別々に準備する手間を省いたり、消毒剤の無駄な使用を防いだりするために、薬液と塗布具を個別に充填する凹所を備えた包装容器に包装した薬液塗布具包装体が知られている。
【0003】
図12は薬液塗布具包装体の一例を示している。同図に示されるように、この包装体100は、軸部101aの一端に塗布部材101bが設けられた塗布具101と薬液102を、包装容器であるシート本体103内に形成された凹所103a,103bにそれぞれ充填し、シート本体103の上面にフィルム104を被せてヒートシールし、前記凹所103a,103b内を密封することにより形成されている。
そして、使用の際に利用者が、薬液102が充填された凹所103bの部分を手指で押圧することで、両凹所103a,103bの間のフィルム104のシール部分である隔壁シール部104aが破損して両凹所間を連絡し、塗布具101が充填された凹所103aの側へ薬液102が放出されて、塗布具101の塗布部材101bに含浸させることができるようになっている。
【0004】
このような包装体100はその使用の際に次のような問題があった。
第一に、薬液102が充填された部分を強く押圧して隔壁シール部104aを破損したときに、薬液102が必要以上の勢いで塗布具101が充填された凹所103a内に放出されることがある。
薬液102が塗布具101の側へ勢いよく放出されると、薬液102が塗布部材101bを飛び越えて塗布具101の軸部101aの表面に付着し、利用者が塗布具101を持ったときに手指が薬液102で濡れたり、塗布操作の際に薬液102が垂れたり、さらには塗布具101を持った利用者の手指を介して薬液102の塗布操作を受けた者の薬液102の塗布が不要な部分にまで薬液102を付着させてしまったりする。
第二に、塗布具101を取り出すための開封操作で、フィルム104をシート本体103から剥がそうとしたときに、フィルム104が勢いよく剥がれて凹所103aが一気に開口することがある。このとき、塗布具101が凹所103aから外れてシート本体103の外側に脱落したり、脱落を防ぐために手を添えたときに薬液102が染み込んだ塗布部材101bに手指に触れたりすることがあった。
【0005】
前記第一の、薬液102が勢いよく放出されることに伴う不具合を防ぐ手段として、例えば包装体100のフィルム104の上面であって、塗布具101の軸部101aの中間部分が位置する部分に押さえマークの表示(図10(A)中の破線円形部)を付し、塗布具100の使用にあたって薬液102が充填された部分を押圧操作する際に、押さえマークを指で押さえておくことにより、塗布具101の軸部101aへの薬液102の付着の抑制を図ったものが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、前記第二の不具合を防ぐ手段として、図13に示されるように、フィルム104の凹所103aの周辺に沿ったシール部の幅を、塗布具101の軸部101a側のシール部104bは細く、塗布部材101b側のシール部104cでは太くして塗布部材101b側の方がシール強度が大きくなるように設定し、太いシール部104cに沿ってフィルム104を剥がすときの抵抗力が大きくなることで、開封操作の途中でフィルム104が剥がれにくくなるように企図したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-292041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記第一の手段によれば薬液102の付着抑制をある程度は可能であるが、使用の際に、押さえマークの表示に気づかずに指でマークを押さえないまま薬液102が充填された部分を押圧したり、押さえマークをしっかり押さえていなかったりすると、薬液100が押さえマークが付された部分を越えて、塗布具101の軸部101aの端である持ち手部分に到達し、薬液102が付着した部分を利用者が把持せざるをえない事態が生じることは避けられない。
また、前記第二の手段では、細いシール部104bと太いシール部104cを配置したとしても、シート本体104の外周部分を一つのヒートシール金型でシールしているため、シール部の太さが異なる部分でシール強度の差を発現するには限界があった。
【0008】
塗布具101が充填された凹所103aと薬液102が充填された凹所103bの間を閉鎖する隔壁シール部104aは、包装体100の輸送や保管中に、予期せぬ衝撃が加わっても破損せず、尚且つ包装体100の使用時には手指による薬液102が充填された凹所103bへの適宜な強度の押圧操作により破損して、前記両凹所103a,103bを連絡させることができるシール強度に設けられている必要がある。
【0009】
また、塗布具101に薬液102を含浸させる操作は、図14に示されるように、包装体100のフィルム104でシールした部分を下側に向けた状態で、上方へ膨出した凹所103bを指で押しつぶすことにより行われる。この際、図15に示されるように、凹所103bの上向きの底部を指で真下に押してつぶしたときに、凹所103bの陥没した部分の周辺にリング状の隙間ができ、その隙間の中に薬液102が残ることがある。その場合、利用者は、つぶれた凹所103bの周辺部分を何度も押圧して、残った薬液102を凹所103a内に流入させるようにしていた。
薬液102が多く残ってしまうと、塗布具101で消毒するなどの施術に必要な量が確保出来ない。そのため、シート本体103の成形材料は手指で容易に押しつぶせるような軟らかな材料が用いられているが、それでも薬液102が残ってしまうことがある。塗布具101に十分な量の薬液102を含浸させるためにも、凹所103bをつぶして薬液102を放出させたときの残存量ができる限り少なくなるようにすることが好ましい。
【0010】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、塗布具と薬液を一つの容器に包装した包装体において、薬液が充填された部分のシール強度を適正に設定し、使用の際にはこの部分を押圧して隔壁シール部を破損させることができるよう適宜なシール強度を発現させるようにするとともに、塗布具へ放出した薬液を塗布具の持ち手部分に付着させることなく、塗布部材に確実に含浸させることができるようにすることを課題とする。また、本発明は、開封操作によりフィルムがシート本体から一気に剥がれることによって塗布具が脱落するなどの不具合の発生を防止することを課題する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
塗布具と薬液を一つの容器に包装したこの種の包装体は、深絞り包装機を用いて包装体の成形と内容物の包装が行われる。すなわち、熱成形可能な平坦な巻取状のボトム材を深絞り包装機に繰り出して、加熱し軟化させて金型にて圧空成形し、塗布具と薬液が充填される凹所を上面に有するシート本体を成形し、両凹所にそれぞれ塗布具と薬液を充填した後、トップ材であるフィルムをシート本体の上面に重ねてヒートシールし、両凹所内を密封することにより包装体が形成される。
本発明は前記課題の解決にあたり、上記深絞り包装機の成形工程において、シート本体に二つの凹所を成形し、両凹所内に薬液と塗布具を充填した後のフィルムのヒートシールを二回に分けて行うことで、隔壁シール部や凹所を囲うシール部位に適正なシール強度が発現されるようにしたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、シート本体の上面内に第1の凹所と第2の凹所が隣接して設けられ、第1の凹所に薬液、第2の凹所に薬液塗布具がそれぞれ充填され、シート本体の上面にフィルムをヒートシールしてなる薬液塗布具包装体の製造方法であり、
前記シート本体にフィルムをヒートシールする処理に、
前記第1の凹所の輪郭を囲う線であって当該線上に一つ以上の切れ目部を有する輪郭包囲線上に沿ってヒートシールする第1のシール工程と、
この第1のシール工程の後に、前記輪郭包囲線の前記第2の凹所に面した一部分を除いて、当該輪郭包囲線上及び輪郭包囲線の周辺に沿ってヒートシールする第2のシール工程と、
が含まれることを特徴とする。
【0013】
前記深絞り包装機のシート本体の成形工程後において、凹所に薬液が充填されたシート本体は、同機内のヒートシール装置に移送されるが、その際の振動で薬液が凹所の外側に飛散することを防ぐために、凹所は充填される薬液の体積よりも大きな容積で設計され、ここに薬液を充填後、凹所上をフィルムで覆ってヒートシールするときには、当該凹所には必ず一定の空気層が形成されることになる。
このヒートシールの際に、ヒートシール金型と、前記凹所内の薬液及びヘッドスペースを構成する空気層とは、フィルムを挟んで近接した位置関係となり(図4中の符号AL参照)、ヒートシール金型の熱(概ね150~250℃)により凹所内の空気が熱せられて膨張する。また、薬液の物性によっては揮発が発生して、空気の膨張がさらに大きくなる場合もある。薬液が充填された凹所の全周にフィルムを重ねてヒートシールしたときには、前記空気の熱膨張により、前記凹所に面するフィルム及びシート本体のそれぞれの樹脂が冷え、固化する前の状態のときに、シール部を凹所の内側から外側に向けて開こうとする力が発生する。この力により、シール部が細くなる現象(シール後退)が発生したり、場合によってはシール不良が発生したりすることがある。
【0014】
本発明によれば、シート本体に形成された二つの凹所に薬液と塗布具を充填した後、シート本体上面にフィルムをヒートシールする工程を二回に分け、第1のシール工程で、薬液が充填された凹所の輪郭を囲う線であって当該線上に一つ以上の切れ目部を有する輪郭包囲線上に沿ってヒートシールし、その後の第2のシール工程で、前記輪郭包囲線上を含む前記両凹所の周辺をヒートシールして両凹所が密封されるようにしている。
前記第1のシール工程で、薬液が充填された凹所の輪郭を囲うようにヒートシールする金型の一部に間隙を設けて、ヒートシール部である輪郭包囲線上に切れ目部を設けることにより、熱膨張した空気や薬液の揮発成分が未シールの切れ目部から外部へと排出され、当該凹所のシール部を内側から外側に向けて開こうとする力が発生せず、安定したヒートシール状態が保持できて、期待するヒートシール強度を得ることが可能である。
【0015】
この第1のシール工程で前記凹所間の隔壁シール部を含む薬液が充填された凹所の周囲をヒートシールするが、使用の際に当該凹所を押圧することでシールが破損されるようなイージーピール性を発現するヒートシール条件でシールするのが好ましい。
一方、前記第2のシール工程では、第1のシール工程でのヒートシール条件よりも、より強いヒートシール強度が得られる条件でヒートシールを行うことが好ましい。この第2のシール工程のヒートシール金型の形状は、前記二つの凹所間の隔壁シール部に相当する部分を除き、前記第1のシール工程における輪郭包囲線上の切れ目部を含む、両凹所の周辺部をヒートシールする態様のものとなる。
【0016】
前記第1のシール工程の、薬液が充填された凹所の輪郭を囲うシール部である輪郭包囲線上の切れ目部の幅(図5中の符号D)は、例えば3mmから10mmに設定することができる。切れ目部の幅が3mmを下回ると、ヒートシール金型の熱により、本来は未シールとなる部分に疑似接着が発生して切れ目となる空間が確保できなくなりやすい。使用するヒートシール金型のサイズや形状、包装体に充填される薬液の特性などに応じて10mmを超えてもよい。
なお、切れ目部の幅が大きすぎると、第2のシール工程前にシート本体を移送したときに大きく開いた切れ目部から薬液が外部へ飛散して、第2のシール工程で実施されるヒートシール部に飛散した薬液が付着してシール不良が発生する可能性がある。この現象は、前記切れ目部の幅が大きければ大きいほど発生する可能性が高くなるため、前記切れ目部の幅は、薬液が充填された凹所内の空気層の膨張や薬液の揮発による内圧の上昇を抑制することができる最小限の幅で設定することが好ましい。
【0017】
前記構成の包装体の製造方法において、第1の凹所の輪郭を囲う輪郭包囲線の切れ目部は、当該第1の凹所の、第2の凹所と対面する側とは反対側の輪郭を囲う部分に設けることができる。
第2の凹所とは反対側に切れ目部を配置することにより、使用の際に第1の凹所を手指で押圧して両凹所を連絡させたときに、第1の凹所内の薬液が切れ目部から漏出することを防止することができ、また、第1の凹所と第2の凹所の間の隔壁シール部のヒートシール強度を適正に保持することが可能である。
この場合、前記使用の際の切れ目部からの薬液の漏出を確実に防ぐため、前記第1の凹所の輪郭を囲う輪郭包囲線上で、第2の凹所とは反対側に位置する中央部分央に切れ目部を設けるよりも、当該輪郭包囲線上の任意な点とその点を通る法線が包装体(シート本体)の縁部に交差する点との間の距離が最大となる位置、具体的には前記法線が包袋の角部を通る輪郭包囲線上の位置、例えば略矩形包囲線上のコーナー部に設けることが望ましい。
【0018】
また、第2のシール工程においてヒートシールされない輪郭包囲線の第2の凹所に面した部分は、当該輪郭包囲線が第1の凹所に向けて略アーチ状に湾曲乃至屈曲した部分であることが好ましい。
例えば輪郭包囲線の第2の凹所に面した部分は、第1の凹所に向けて「Ω字形」に湾曲したり「逆U字形」に屈曲したりする形状に設けることができる。このような形状とすることで、包装体の不使用時には隔壁シール部で薬液が充填された第1の凹所と塗布具が充填された第2の凹所間を確実に分離する一方、使用の際に第1の凹所を手指で押圧し、このときにかかる圧力で前記略アーチ状に湾曲乃至屈曲した部分がスムーズに破損して両凹所を連絡せしめ、薬液を第2の凹所の側に確実に放出することが可能である。
【0019】
前記構成の包装体の製造方法において、第2のシール工程で、前記第1のシール工程でヒートシールされた輪郭包囲線と第2の凹所との間に、少なくとも一つの点状乃至帯状のヒートシール部を設けることが好ましい。
前記のような独立したヒートシール部が設けられていれば、使用の際に第1の凹所を手指で押圧して両凹所を連絡させたときに、第1の凹所から放出した薬液は、先ずこの独立したヒートシール部に衝突し、ヒートシール部に沿って左右に分流しつつ当該シール部の両側に回り込む。これにより、放出時の勢いが削がれた状態で塗布具が充填された第2の凹所内へと流れこむので、第2の凹所内に侵入した薬液が塗布具の軸部である持ち手部分に到達するようなことはなくなり、塗布具の持ち手部分に薬液が付着しにくくなり、塗布具を持つ利用者の手指が汚れることを防止することができる。
前記ヒートシール部は、第1の凹所から放出した薬液が衝突することで勢いを削ぐ緩衝部として機能し、放出された薬液が確実に衝突する帯状に設けることが好ましいが、緩衝部として機能するのであれば、点状やその他の形状に設けることができ、適宜な間隔を開けて複数が配置されていてもよい。
【0020】
また、前述のとおり、使用の際、第1の凹所に充填された薬液を第2の凹所内に流入させて塗布具の塗布部材に十分に含浸させた後、フィルムを剥がして開封された包装体から塗布具を取り出すが、塗布具が充填された第2の凹所を塞いだフィルムの引き剥がしを適切な位置で止めないと、第2の凹所が広く開口し過ぎて塗布具が包装体から落下したり、露出した塗布部材に誤って手指が触れてしまったりする可能性がある。
そこで、塗布具が充填された第2の凹所の周辺のシールを塗布具の軸側と第1の凹所の側との二回に分けて行い、包装体を開封する始点は弱い力でフィルムを剥がすことができ、剥がす操作途中の適宜な位置から強い力が必要となってフィルムの引き剥がしが適切な位置で止められるようにした。
【0021】
すなわち、本発明は薬液塗布具包装体の製造方法において、
シート本体の全周辺のうち、第2の凹所が設けられた側の周辺をヒートシールする工程と、前記シール工程でヒートシールされたシール部位に連ねて、シート本体の第1の凹所が設けられた側の周辺をヒートシールする工程と、が含まれることを特徴とする。
また、前記第2の凹所の周辺部のシール強度は、塗布具の軸部側の周辺をヒートシールするときよりも、塗布部材側の周辺をヒートシールするときの方が、シール強度が大きいことを特徴とする。
【0022】
これによれば、シート本体をフィルムでシールする工程、特に開封操作の開始端側となる塗布具が充填された第2の凹所の周辺にフィルムをシールする工程をヒートシール温度、時間若しくは圧力のいずれか、又はすべてが異なる条件で二回に分けて行うことにより、開封操作の際にシール強度の差を発現することができる。かかるシール強度の差の発現により、包装体の端からフィルムを剥がすときに、最初は弱い力で剥がれ、ある程度の幅まで剥がすと強い力が必要となるようにシール強度を調整することで、フィルムが一気に剥がれて開口した第2の凹所から塗布具が脱落するなどの不具合の発生防止が可能である。
すなわち、包装体の開封は、塗布具が充填された第2の凹所側のシート本体端部のフィルムを摘まみ、フィルムをシート本体から剥がす操作により行われるが、最初は弱い力でフィルムが剥がれるが、引き剥がし操作がシール強度の大きな部位に移行する際に、開封強度が大きく増加するため、最初の開封操作の力では開封に及ばず、開封操作を停止するか、或いは利用者に必要な開封作業が終了したことを認識させるため、フィルムが一気に剥がれることはない。
【0023】
前記ヒートシール工程のうち、第2の凹所が設けられた側の周辺をヒートシールする工程で、包装体の開封端側となる第2の凹所の端部、つまり第2の凹所内に充填された状態で塗布具の軸部の端部が面する側から、塗布具の軸部と塗布部材の境界が略位置する長さに亘って、第2の凹所の周辺を線状にシールし、その後の、シート本体の第1の凹所が設けられた側の周辺をヒートシールする工程では、前記のヒートシール工程よりも強いヒートシール強度が得られるヒートシール条件で、第1の凹所の外周部と第2の凹所の外周部の未シール部分をシールして、第1、第2の両凹所をフィルムで密封する。
最初のシール強度を小さく、後のシール強度を大きくする手段としては、最初の第2の凹所の周辺を線状にシールするときのシール幅を狭く、この最初の線状にシールした部位に連ねて後にシールするときのシール幅を広く設定することが挙げられる。後のシール工程では、第2の凹所の周辺の未シール部分を、前記最初のシール工程の線状シールの端部に重ねて、且つ当該線状シールの幅よりも少なくとも2倍以上の大きさのシール幅でシールすることが好ましい。なお、シール幅については、包装体の輸送及び保管時において予期せぬ開封が発生しない最小限の幅で設計することが望ましい。
包装体の幅を必要以上に大きくすることなく、前記最初と後の二回のシール工程のシール幅の差をできる限り大きくするために、塗布具が充填される第2の凹所内の長手両側辺に沿った部分に幅広となる平坦部を形成しておき、最初のシール工程で包装体の開封端側となる第2の凹所の端部から前記平端部の手前に亘る第2の凹所の周辺を線状にシールし、後のシールで、最初の線状のシール部の端部に重ねて、前記平坦部を含む第2の凹所周辺の未シール部と第1の凹所の外周部をシールするようにしてもよい。
【0024】
上記の製造方法によって形成される本発明の包装体の形態上の特徴は、第1の凹所の輪郭を環状に囲う線であって当該上に一つ以上の切れ目部を有する輪郭包囲線線上に沿ったヒートシール部を備えたものとなる。
また、前記輪郭包囲線上に沿ったヒートシール部と第2の凹所との間に、少なくとも一つの点状乃至帯状のヒートシール部を備えたものとなる。
さらに、薬液が充填された凹所を押圧して塗布具が充填された側の凹所内に薬液を流入させる際の残液の極小化を達成するため、第1の凹所の底部であって、第2の凹所の側とは反対側となる位置の前記底部の表面に、押圧誘導部位となる傾斜面部が設けられていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態の包装体の平面図である。
図2図1の包装体を構成するシート本体の平面図(A)と横断面図(B)である。
図3図1の包装体の製造に用いられる深絞り包装機の一例の構成を示す図である。
図4図1の包装体の第1のシール工程を説明するための概略横断面図である。
図5図1の包装体をヒートシールする工程を説明するための図であって第1のシール工程のヒートシール部を示した図である。
図6図1の包装体をヒートシールする工程を説明するための図であって第2のシール工程のヒートシール部を示した図である。
図7図1の包装体の使用時の薬液が放出される経路を示した図である。
図8】(A)から(C)は実施例における薬液が充填された凹所のヒートシール部の形状を示した図である。
図9】実施例の包装体の(A)は平面図、(B)は評価方法を説明するための図である。
図10】薬液が充填される凹所の形状を改良した包装体の要部外観図(A)と概略側面図(B)である。
図11図10の包装体の薬液が充填された凹所をつぶした状態の概略側面図である。
図12】従来の包装体の平面図(A)と側面図(B)である。
図13】従来の包装体の他の例の平面図である。
図14】従来の包装体の薬液が充填された凹所部分の概略側面図である。
図15図14の包装体の薬液が充填された凹所をつぶした状態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好適な一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態の包装体を示している。この包装体1は、適宜な量の薬液2と、軸部3aの一端に塗布部材3bが設けられた塗布具3とを、包装容器であるシート本体4内に形成された凹所4a,4bにそれぞれ充填し、シート本体4の上面にフィルム5を被せてヒートシールし、前記凹所4a,4b内を密封することにより形成されている。
【0027】
シート本体4の形状について、詳しくは図2に示されるように、その上面内にシート面を下方へ凹ませて形成された、薬液2が充填される第1の凹所4aと塗布具3が充填される第2の凹所4bとを隣接位置に設けて形成してある。
第1の凹所4aはその開口面が略々楕円形を呈する形状、第2の凹所4bはその開口面が略々矩形状を呈して塗布具4全体が没入して充填される形状に形成してある。第2の凹所4b内には第1の凹所4a側に寄った位置に当該凹所の幅を狭くし、且つ凹所外側の幅を広くした平坦部分4b1,4b1が設けてある。
【0028】
図3は、本形態の包装体1の製造に用いられる深絞り包装機6の概略構成を示しており、図中、符号BMはシート本体4の素材であるボトム材、TMはフィルム5の素材であるトップ材、61はボトム材TMをシート本体4に熱成形する成形装置、62は薬液2及び塗布具3をシート本体4内に充填する充填装置、63は第1のヒートシール装置、64は第2のヒートシール装置、65は横カッター、66は縦カッターである。
本形態の包装体1は、図示した深絞り包装機6を用い、凹所成形工程、内容物充填工程、ヒートシール工程及び切断工程の各工程を経て、包装体の成形と内容物の包装が行われることにより製造される。
【0029】
凹所成形工程は、前記図2に示されたシート本体4を成形する工程であり、熱成形可能な平坦な巻取状のボトム材BMを深絞り包装機6に繰り出し、加熱し軟化させて成形装置61の金型にて圧空成形し、前記第1の凹所4aと第2の凹所4bを上面に有するシート本体4を得る。
【0030】
内容物充填工程は、充填装置62で、前記シート本体4の第1の凹所4aに薬液2を充填し、また、第2の凹所4bに塗布具3を充填する工程である。塗布具3は、塗布部材3bが第1の凹所4a側となる向きに充填される。
【0031】
ヒートシール工程は、前記両凹所4a,4b内に薬液2と塗布具3が充填されたシート本体4の上面にフィルム5を重ねた状態で、ヒートシール金型を前記フィルム5の上面に当接させて両凹所4a,4bを密封する工程であり、第1のヒートシール装置63でフィルム5をシールする第1のシール工程と、その後の、第2のヒートシール装置64でフィルム5をシールする第2のシール工程の二段階でシール処理が行われる。
【0032】
図4は、第1のヒートシール工程において、前記充填装置62から第1のヒートシール装置63に搬送されたシート本体4にフィルム5を重ね、ヒートシール金型をフィルム5の上面に当接させてヒートシールする態様を示している。
【0033】
図5は、第1のシール工程でヒートシールする部分を示した図である。同図に示されるように、第1のシール工程では、第1の凹所4aの輪郭を囲う線であって当該線上に切れ目部7aを有する輪郭包囲線7上に沿ってヒートシールがされる。
輪郭包囲線7上に設ける切れ目部7aは、第2の凹所4bとは反対側の角部に配置され、適宜な幅(D)でヒートシールされない隙間部分ができるように形成される。また、第1の凹所4aと第2の凹所4bの間で隔壁シール部を構成する輪郭包囲線7の第2の凹所4bに面した部分7bは、第1の凹所4aの側に「Ω字形」に湾曲した形状でヒートシールがされる。
【0034】
また、第1のシール工程では、第2の凹所4bの、第1の凹所4aの側とは反対側の端部の周囲から前記幅広な平坦部分4b1,4b1(図2参照)に至る部分に亘って、つまり第2の凹所4bの片半周に沿った線上8をヒートシールする。この第2の凹所4bの端部周囲から当該凹所の両側部周辺を囲うヒートシールは、第2の凹所4bの前記片半周の外周辺に沿って線状で細幅なシール部81を形成することにより行われる。
なお、第1のシール工程は、包装体1の使用の際に、薬液2が充填された第1の凹所4aを押圧することでシールが破損されるようなイージーピール性を発現するヒートシール条件でシールする。
【0035】
この第1のシール工程では、薬液2が充填された第1の凹所4aの輪郭を囲う輪郭包囲線7に沿ってヒートシールするが、同線上に切れ面部7aを設けてあるので、第1の凹所4a内の熱膨張した空気や薬液2の揮発成分が未シールの切れ目部7aから外部へと排出されるので、第1の凹所4aのシール部を内側から外側に向けて開こうとする力が発生せず、安定したヒートシール状態を保持して所望のヒートシール強度を得ることができる。
【0036】
前記第1のヒートシール装置62で第1のヒートシールがされた後、前記シート本体4は第2のヒートシール装置63に移送され、当該装置で第2のヒートシールが行われる。
図6は、第2のシール工程でヒートシールする部分を示した図である。同図に示されるように、第2のシール工程では、前記輪郭包囲線7の「Ω字形」に湾曲した形状にシールした、第2の凹所に面した部分7bを除いて、前記切れ目部7aを含む輪郭包囲線7上から輪郭包囲線7の周辺に沿って、さらには前記第2の凹所4bの片半周に沿ったヒートシールの線上8に重なって当該第2の凹所4bの両側を覆う領域9に亘ってヒートシールする。
【0037】
図6に示されるように、領域9のうち、前記第1のヒートシール工程における、第2の凹所4bの片半周に沿った線状で細幅なシール部81の端部には、シール部81の幅よりも2倍程度幅広な線状のシール部91が重なってヒートシールがされている。
同図に示されるように領域9をヒートシールすることにより、前記両凹所4a,4bは密封される。
【0038】
また、第2のシール工程では、前記領域9のヒートシールに加えて、第1のシール工程でヒートシールされた前記輪郭包囲線7と第2の凹所4bとの間に、独立した帯状のシール部10をヒートシールする。この帯状のシール部10は、後述するように、薬液2が第2の凹所4b内に放出される際に勢いを削ぐ緩衝部として機能する。
なお、第2のシール工程では、第1のシール工程でのヒートシール条件よりも、より強いヒートシール強度が得られる条件でヒートシールする。
【0039】
前記ヒートシール工程でシート本体4の上面がフィルム5で密封シールされたならば、縦カッター65と横カッター66による切断工程で、シート本体4及びフィルム5を個々の包装体1に切断することで、包装体1の製造が完了する。
【0040】
このように形成された本形態の包装体1は、使用の際に利用者が、薬液2が充填された第1の凹所4aの部分を手指で押圧すれば、両凹所4a,4bの間の隔壁シール部を形成する、前記輪郭包囲線7の「Ω字形」に湾曲した形状にシールした部分7bが破損して両凹所4a,4b間を連絡し、薬液2を塗布具3が充填された第2の凹所4b内に放出させ、塗布具3の塗布部材3bに含浸させることができる。
この際、第1の凹所4aから放出した薬液2は、図7中の矢印で示すように、前記帯状のシール部10に衝突し、当該シール部10に沿って左右に分流しつつ両側に回り込むため、放出時の勢いが削がれた状態で第2の凹所4b内へと流れこみ、薬液2が塗布具3の軸部3aである持ち手部分に到達するようなことはなく、塗布具3の持ち手部分に薬液2が付着することを効果的に抑制することが可能である。軸部3aへの薬液2の付着を防ぐため、軸部3aと塗布部材3bの中間部分で第2の凹所4bの表面を指で押さえておくような操作は不要である。
【0041】
そして、フィルム5をシート本体4から剥がし、塗布具3を取り出すことで、薬液2が含浸した塗布部材3bを患部に当てて塗布する処置が可能となる。
この包装体1の開封の際には、塗布具3が充填された第2の凹所4b側のシート本体4端部のフィルム5を摘まみ、フィルム5をシート本体4から剥がす操作により行われるが、第2の凹所4bの周辺のヒートシールは、第1のヒートシール工程で、細幅で線状のシール部81とし、第2のヒートシール工程でこれよりも太幅で線状のシール部91として、シール部91のシール強度を大きく設定してあるので、最初は弱い力でフィルムが剥がれるが、引き剥がし操作がシール強度の大きなシール部91の側に移行する際に、開封強度が大きく増加するため、最初の開封操作の力では開封に及ばず、利用者は必要な開封作業が終了したこと判断して開封操作を停止する。よって、フィルム5を一気に剥がしてしまい、塗布具3が包装体1から脱落したり脱落を防ぐため塗布部材3bに手指が触れたりするようなことはない。
【実施例0042】
深絞り包装機を用い、前記包装体1と略同形状であり、第1のシール工程における第1の凹所4aのヒートシールの仕方が異なる包装体を成形して評価した。
【0043】
詳しくは、図8に示されるように、第1の凹所4aの輪郭全周をヒートシールした包装体A(同図(A))、5mm幅の切れ目部7aを有する輪郭包囲線7に沿ってヒートシールした包装体B(同図(B))、第2の凹所4bが面する側のみを部分的にヒートシールした包装体C(同図(C))の三つの包装体を成形した。なお、何れの包装体も第2のシール工程では、第1の凹所4aの外周を完全にヒートシールした。
【0044】
前記各包装体について、ポビドンヨード10%水溶液を薬液2に用いて第1の凹所4aに充填するとともに、図9(A)に示されるように、第1の凹所4aと第2の凹所4bの間の隔壁シール部分Cを幅15mmでカットして(同図中の破線部分)、同図(B)に示されるように、包装体を第1の凹所4aの側から開封する(同図中の矢付方向に引っ張り操作する)際の隔壁シール部分Cのヒートシール強度を測定して評価した。
結果としては、包装体Aの検体のシール強度の平均値が、包装体B及び包装体Cの平均値を下回る結果となった。
【0045】
また、前記ポビドンヨード10%水溶液に代えて、薬液2として80%エタノール含有製剤を充填して包装体A,B,Cを成形し、前記と同様にヒートシール強度を測定した結果も同じ傾向であったが、下回る幅がさらに大きくなった。
【0046】
この結果から、包装体Aにおいては膨張したヘッドスペースの空気及びアルコール蒸気によるシール後退が発生していることが判明した。
また、包装体Cにあっては、第2のシール工程で、シール部に複数個のシール不良が観察された。シール不良発生の原因は、シール部に薬液2が付着したために発生したと考えられる。第1の凹所4aに薬液2を充填する際には、薬液2が前記凹所4aの外側に跳ね飛ぶことがないことが、観察により確認されており、第1のシール工程から第2のシール工程までの間で、シート本体がヒートシール装置間を移送されるときの振動や揺れで、薬液2が前記凹所4aの外側に跳ね飛び、シール部へ付着したものと推察される。
本実施形態と同形状である包装体Bでは、シール不良の発生は皆無であった。
【0047】
また、図1に示された包装体1のフィルム5を剥がすときのシール強度の差の発現の程度を、図11に示された包装体100とで比較評価した。
包装体100は、その細いシール部104bの幅を2.25mm、太いシール部104cを3.75mmに設定して成形した。
この包装体100のフィルムの開封強度を測定したところ、幅が狭い細いシール部104bで概ね2N程度であり、幅が広い太いシール部104cでは3~3.5N程度であり、シール強度の差は1.5~1.75倍であった。
一方、シート本体4にフィルム5を二回のヒートシール工程でヒートシールする本発明の包装体1においては、前記図3に示された深絞り包装機6を用い、前記図6に示される、細いシール部81と太いシール部91の幅をそれぞれ2.75mm、5.8mmに設定して成形し、フィルムの開封強度を測定したところ、細いシール部81で2N程度であるのに対し、太いシール部91では6Nであり、3倍を超えるシール強度の差を確認することができた。
【0048】
図10は、薬液が充填される凹所の形状を改良した形態を示している。
図示した形態は前記構成の包装体1に適用することができるものであり、薬液2が充填される第1の凹所4aの底部に、押圧誘導部位となる傾斜面部4a1を設けたものである。
詳しくは、傾斜面部4a1は、第1の凹所4aの底部であって、第1の凹所4aに隣接する第2の凹所4bの側とは反対側となる位置の底部表面に、当該底部の角部を平坦な面で切り欠いた形状に形成してある。
【0049】
このように形成された包袋体1にあっては、薬液2を塗布具1に含浸させる際に、図10(B)に示されるように、包装体1のフィルム5でシールした部分を下側に向けた状態で、上方へ膨出した第1の凹所4aの底部に形成された傾斜面部4a1を指で押せば、第1の凹所4a内の薬液2は第2の凹所4bの側へ押し込まれて隔壁シール部に達し、同シール部内を突き破って第2の凹所4b内へと流入し、塗布具3の塗布部材3bに浸潤する。
【0050】
指で押されてつぶれた第1の凹所4aは、図11に示されるように、傾斜面部4a1が形成された側が隙間なくつぶれ、これとは反対側にできた僅かな隙間にしか薬液2が残らず、残液を極少化することが可能である。
第1の凹所4aを押圧する方向を利用者に指し示す方法としては、第1の凹所4aの底部表面に押す位置や方向を印刷で表示する方法も考えられるが、底部の曲面に表示することになるため、利用者に理解されなかったり見落とされたりする虞がある。前記のとおり、第1の凹所4aの底部の、塗布具1が充填された第2の凹所4bの側とは反対側の部分の形状を傾斜面部4a1とすることで、より直感的に押圧の方向を利用者が理解することが可能である。
【0051】
なお、図示した包装体1の形態は一例であり、本発明はこの形態に限定されず、他の適宜な形態で構成することが可能である。図示した形態では、輪郭包囲線7上に切れ目部7aを一か所設けたが切れ目部を複数設けた態様も可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 薬液塗布具包装体(包装体)、2 薬液、3 塗布具、4 シート本体、4a 第1の凹所、4b 第2の凹所、5 フィルム、6 深絞り包装機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15