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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084369
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20220531BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20220531BHJP
【FI】
A63B53/04 B
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196210
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】端 智裕
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH06
2C002LL01
2C002MM04
2C002PP02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】重量物をソール部に鋳包みするに際し、重量物周辺での鋳造不良を抑制する。
【解決手段】鋳型の底面図において、湯口21の重心を原点O、該原点Oと重量物10の重心G2を通る直線をy軸、該y軸と直交する直線をx軸、及び、該y軸及び該x軸にともに直交する直線をz軸とする直交座標を定義する。該z軸の任意の位置における該重量物10の輪郭形状は、該原点Oの最も近くに位置する第1点P1と、該原点Oから最も離れて位置する第2点P2とを含む。該第1点P1及び該第2点P2は、該y軸上に位置するか、又は、該y軸から、該重量物10の輪郭形状の該x軸の方向の最大寸法Wの20%以内の範囲に位置する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料からなるソール部に、第2の材料からなる重量物が固着されたゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
前記ソール部を鋳造成型するためのキャビティと、前記キャビティに溶湯を供給するための湯口とを画定する鋳型の前記キャビティ内に、前記重量物を固定する工程と、
前記重量物が前記キャビティに固定された後、前記湯口から前記キャビティに前記第1の材料の前記溶湯を供給して、前記重量物の周囲に前記溶湯を充填する工程とを含み、
前記ソール部の底面図に対応する前記鋳型の底面図において、前記湯口の重心を原点、前記原点と前記重量物の重心を通る直線をy軸、前記y軸と直交する直線をx軸、及び、前記y軸及び前記x軸にともに直交する直線をz軸とする直交座標を定義したときに、
前記z軸の任意の位置における前記重量物の輪郭形状は、前記原点の最も近くに位置する第1点と、前記原点から最も離れて位置する第2点とを含み、
前記第1点及び前記第2点は、前記y軸上に位置するか、又は、前記y軸から、前記重量物の前記輪郭形状の前記x軸の方向の最大寸法Wの20%以内の範囲に位置する、
ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記重量物は、前記ソール部の外面に露出するように固定されている、請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記重量物の前記輪郭形状において、前記y軸の方向の最大寸法Lは、前記x軸の方向の最大寸法Wよりも大きい、請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記重量物の前記輪郭形状において、前記x軸の方向の寸法は、前記第1点から前記重量物の前記重心に向かって漸増する部分を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記重量物の前記輪郭形状において、前記x軸の方向の寸法は、前記第2点に向かって漸減する部分を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記重量物の前記輪郭形状が、前記第1点及び前記第2点を結ぶ直線に対して線対称形状である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記重量物の前記輪郭形状は、多角形状である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記重量物の前記輪郭形状は、円形状又は楕円形状である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ヘッド本体のソール部分に、前記ヘッド本体よりも比重が大きい重量物が溶接固着されたゴルフクラブヘッドが記載されている。このゴルフクラブヘッドは、低重心化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-48829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッド本体と重量物との比重差が大きくなると、両部材を十分な強度で溶接できない場合がある。また、他の様々な理由から、溶接以外の方法でヘッド本体と重量物とを固着したいというニーズもある。
【0005】
近年、ヘッド本体に重量物を鋳包みによって固着することが検討されている。この方法では、まず、重量物が予め鋳型のキャビティ内に固定される。次に、ヘッド本体を鋳造成型するための溶湯が、湯口から前記キャビティ内に供給され、重量物の周囲へと充填される。溶湯が固化することにより、ヘッド本体と重量物とが一体成型される。
【0006】
しかしながら、重量物は、キャビティ内での溶湯の流れを妨げることから、重量物の周囲、特に、重量物の湯口とは反対側の位置で溶湯が十分に行き渡らない鋳造不良等が生じやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、重量物をソール部に鋳包みするに際し、重量物周辺での鋳造不良を抑制することができるゴルフクラブヘッドの製造方法を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の材料からなるソール部に、第2の材料からなる重量物が固着されたゴルフクラブヘッドの製造方法であって、前記ソール部を鋳造成型するためのキャビティと、前記キャビティに溶湯を供給するための湯口とを画定する鋳型の前記キャビティ内に、前記重量物を固定する工程と、前記重量物が前記キャビティに固定された後、前記湯口から前記キャビティに前記第1の材料の溶湯を供給して、前記重量物の周囲に前記溶湯を充填する工程とを含み、前記ソール部の底面図に対応する前記鋳型の底面図において、前記湯口の重心を原点、前記原点と前記重量物の重心を通る直線をy軸、前記y軸と直交する直線をx軸、及び、前記y軸及び前記x軸にともに直交する直線をz軸とする直交座標を定義したときに、前記z軸の任意の位置における前記重量物の輪郭形状は、前記原点の最も近くに位置する第1点と、前記原点から最も離れて位置する第2点とを含み、前記第1点及び前記第2点は、前記y軸上に位置するか、又は、前記y軸から、前記重量物の前記輪郭形状の前記x軸の方向の最大寸法Wの20%以内の範囲に位置する、ゴルフクラブヘッドの製造方法である。
【0009】
本発明の他の態様では、前記重量物は、前記ソール部の外面に露出するように固定されていても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記重量物の前記輪郭形状において、前記y軸の方向の最大寸法Lは、前記x軸の最大寸法Wよりも大きくても良い。
【0011】
本発明の他の態様では、前記重量物の前記輪郭形状において、前記x軸の方向の寸法は、前記第1点から前記重量物の前記重心に向かって漸増する部分を含むものでも良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記重量物の前記輪郭形状において、前記x軸の方向の寸法は、前記第2点に向かって漸減する部分を含むものでも良い。
【0013】
本発明の他の態様では、前記重量物の前記輪郭形状が、前記第1点及び前記第2点を結ぶ直線に対して線対称形状であっても良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記重量物の前記輪郭形状は、多角形状、円形状又は楕円形状であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴルフクラブヘッドの製造方法では、上記の工程を採用したことにより、鋳型のキャビティ内において重量物周辺での湯流れが改善し、鋳造不良を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の製造方法により製造されたゴルフクラブヘッドの斜視図である。
図2図1のゴルフクラブヘッドの底面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】鋳型の底面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】重量物と湯口との関係を説明する図5の部分拡大図である。
図7】他の実施形態の重量物と湯口との関係を説明する鋳型の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本明細書において、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略されている。
【0018】
図1は、本実施形態の製造方法により製造されたゴルフクラブヘッド1の斜視図、図2はその底面図、図3図2のIII-III線断面図である。
【0019】
[基準状態等]
図1~3において、ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある)1は基準状態に置かれている。ヘッド1の基準状態とは、ヘッド1が、当該ヘッド1に定められたライ角及びロフト角で水平面HPに置かれた状態である。また、図2に示されるように、基準状態では、ヘッド1のシャフト軸中心線CLが、水平面HPと直角な基準垂直面VP内に配された状態で、ヘッド1がライ角及びロフト角に保持されている。本明細書において特に言及されていない場合、ヘッド1は、基準状態にあるものとして説明されている。
【0020】
ヘッド1の基準状態において、基準垂直面VPに直交する方向が、ヘッド前後方向として定義され、フェース部2の側が前側であり、その反対側が後側である。また、基準垂直面VP及び水平面HPにともに平行な方向がトウ・ヒール方向として定義される。さらに、水平面HPに直交する方向が、ヘッド上下方向として定義される。
【0021】
図1~3に示されるように、本実施形態のヘッド1は、例えば、内部が中空とされたウッド型ヘッドとして構成されている。ヘッド1は、例えば、全体が金属材料で形成されている。他の実施形態では、ヘッド1の一部が繊維強化樹脂等の非金属材料で構成されても良い。また、他の実施形態として、ヘッド1は、アイアン型、ユーティリティ型又はパター型で構成されても良い。
【0022】
[ヘッドの基本構造]
ヘッド1は、例えば、フェース部2、クラウン部3、ソール部4及びネック部5を含む。
【0023】
フェース部2は、ヘッド1の前側に形成されており、ボールを打撃する打撃面2aを構成している。クラウン部3は、ヘッド上面を形成するように、フェース部2からヘッド後方に延びている。ソール部4は、ヘッド底面を形成するように、フェース部2からヘッド後方に延びている。
【0024】
ネック部5は、クラウン部3のヒール側に形成されている。ネック部5は、クラウン部3からヘッド上方に斜めに突出している。ネック部5は、シャフト(図示省略)を差し込むためのシャフト差込孔5aを備えた円筒状である。なお、ヘッド1を基準状態とする場合、このシャフト差込孔5aの中心線が、シャフト軸中心線CLとして用いられる。
【0025】
図2及び図3に示されるように、本実施形態のヘッド1において、ソール部4は、第1の材料から形成されている。第1の材料は、鋳造可能な金属材料である。第1の材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等が挙げられる。
【0026】
また、ソール部4には、重量物10が固着されている。重量物10は、第2の材料からなる。第2の材料は、例えば、第1の材料よりも比重が大きい材料である。このような重量物10は、ヘッド1を低重心化するのに役立つ。第2の材料は、例えば、タングステンを含む合金が好適である。
【0027】
第2の材料は、より高比重化されることで、例えば、第1の材料とは溶接が困難になることがある。ここで、「溶接が困難」な材料とは、溶接では、第1の材料からなるソール部4との間に、ヘッド1の使用状況で求められる接合強度が得られない材料を意味する。例えば、第2の材料の化学成分中、タングステンの添加量が増えると、第1の材料との溶接が困難な傾向がある。このような第1の材料と第2の材料との組み合わせが選択されたときに、本発明のヘッド1の製造方法は特に好適である。
【0028】
本実施形態の重量物10は、例えば、ソール部4の外面4aに露出するように固定されている。すなわち、ヘッド1の底面視において、重量物10は、肉眼で視認可能に配置されている。このような重量物10は、ソール部4のより低い位置に重量を配分することができ、ヘッド1の低重心化をさらに促進できる点で好ましい。
【0029】
重量物10は、例えば、ソール部4の外面4aの露出する外面10Aと、その反対側に位置する内面10Bと、外面10Aと内面10Bとの間を延びる側面10Cとを含み、例えば、プレート状に形成されている。
【0030】
また、本実施形態の重量物10は、内面10Bが、ソール部4の内部に埋設されているが、その一部又は全部が、ヘッド1の中空部i側で露出するものでも良い。さらに、本実施形態の重量物10は、側面10Cに、突片状の張出し部が形成されており、この張出し部がソール部4の第1の材料の部分で保持されることで、ソール部4の外面4a側及び中空部i側に脱落しないように保持されている。
【0031】
重量物10の側面10Cは、本実施形態のような突片状の張出し部に変えて、例えば、外面10Aに向かってテーパー状とされても良い。
【0032】
[ヘッドの製造方法]
次に、上述のヘッド1の製造方法が説明される。本実施形態の製造方法では、重量物10が、ソール部4の第1の材料で鋳包みされることで固着される。
【0033】
図4は、ソール部4(ヘッド1)を成型するための鋳型Mの底面図であり、図5は、図4のV-V線断面図である。また、図4の鋳型Mの底面図は、ヘッド1の底面図(図2)の姿勢と対応している。
【0034】
鋳型Mは、ソール部4を鋳造成型するためのキャビティ20と、キャビティ20に溶湯を供給するための湯口21とを画定する。湯口21は、キャビティ20に連なる開口である。また、湯口21には、いわゆるランナー22の内部に形成された流路23を介して、溶湯が供給される。
【0035】
本実施形態において、湯口21は、重量物10よりもヒール側に位置している。湯口21付近は、溶湯が勢いよくキャビティ20に流れ込む場所であることから、空気の巻き込みによる引け巣が生じやすい。したがって、湯口21及びその周辺付近のキャビティ20の厚さt(図5に示す)は、ソール部4の他の部分の厚さよりも大きく形成されるのが望ましい。これは、鋳造されたソール部4では、ヒール側により多くの重量が配分されることになり、ひいては、ヘッド重心がヒール側に寄る。このようなヘッド1は、スイング中に打撃面2aが返りやすくなるため、スライスを防止するのに役立つ。
【0036】
鋳型Mは、ソール部4を成型するためのキャビティ20を有していれば良い。好ましい態様では、鋳型Mのキャビティ20は、ソール部4に加え、フェース部2、クラウン部3及びネック部5の少なくとも1つを一体に成型可能なものとされても良い。
【0037】
本実施形態の鋳型Mは、例えば、ロストワックス精密鋳造法で用いられる鋳型である。すなわち、鋳型Mは、金型を用いてヘッド1(又はソール部4を含むヘッド主要部)の基本形状と一致するワックスモデル(図示省略)を成型する工程と、このワックスモデルの表面を耐火材等でコーティングする工程と、その後、コーティングされた耐火材の内部からワックスを溶かして排出する工程と、前記耐火材を焼成する工程とを得て製造される。したがって、鋳型Mには、排出されるまでのワックスが占めていた空間が、キャビティ20として残存する。
【0038】
[キャビティ内への重量物の配置]
本実施形態のヘッド1の製造方法では、まず、鋳型Mのキャビティ20内の所定の位置に重量物10を固定する工程が行われる。
【0039】
図5に示されるように、鋳型Mのソール部4を成型する部分は、ソール部4の外表面を成型する外殻部Moと、ソール部4の内表面(ヘッド1の中空部側を向く面)を成型する内殻部Miとを含む。
【0040】
重量物10は、例えば、キャビティ20の内部かつ外殻部Moに固定されている。重量物10をこのように配置するためには、例えば、ワックスモデルを成型する工程時、重量物10を、予めワックスモデルのソール部の外表面に露出するように一体成型しておき、このワックスモデルに耐火材をコーティングして固化させた後、ワックスを排出する。これにより、重量物10が鋳型M側に固着される。より具体的には、重量物10は、鋳型Mの外殻部Moに固着された状態で、キャビティ20の所定の位置に配置され得る。したがって、本実施形態では、鋳型Mの完成と同時に、そのキャビティ20内の所定の位置に重量物10を固定することができる。
【0041】
[溶湯の供給]
次に、重量物10がキャビティ20に固定された後、図4に示されるように、湯口21からキャビティ20に第1の材料の溶湯を供給して、重量物10の周囲に溶湯を充填する工程が行われる。なお、図4には、湯口21から溶湯が供給されたときの溶湯の流れのイメージ図である。
【0042】
図6は、図4の鋳型Mの底面図の要部拡大図を示す。本実施形態では、図6に示されるように、湯口21の重心G1を原点O、この原点Oと重量物10の重心G2を通る直線をy軸、(底面の平面方向で)y軸と直交する直線をx軸、及び、y軸及びx軸にともに直交する直線をz軸とする直交座標を定義したときに、z軸の任意の位置における重量物10の輪郭形状が、湯口21と関連付けられている。具体的には、重量物10の前記輪郭形状は、原点Oの最も近くに位置する第1点P1と、原点Oから最も離れて位置する第2点P2とを含み、第1点P1及び第2点P2は、y軸上に位置するか、又は、y軸から、重量物10の輪郭形状のx軸の方向の最大寸法Wの20%以内の範囲に位置する。
【0043】
本実施形態のヘッド1の製造方法では、上記の工程を採用し、湯口21の重心G1と重量物10の重心G2とを結ぶ直線G1-G2上又はその近傍に、重量物10の両端である第1点P1及び第2点P2を位置させることができる。このようなレイアウトは、キャビティ20内において、重量物10の周辺での湯流れが改善し、鋳造不良を効果的に抑制することができる。
【0044】
とりわけ、本実施形態の製造方法によれば、図4に示されるように、湯口21から供給された第1の材料の溶湯は、重量物10の第1点P1で左右両側に分岐した後、重量物10の第2点P2付近でスムーズに合流することができる。したがって、これまで重量物10の第2点P2の付近で発生しがちであった鋳造不良が効果的に抑制される。
【0045】
より好ましい態様では、第1点P1及び第2点P2は、y軸上に位置するか、又は、y軸から、重量物10の輪郭形状のx軸の方向の最大寸法Wの10%以内の範囲、より好ましくは5%以内に位置することが望ましい。
【0046】
次に、キャビティ20内で第1の材料の溶湯が固化すると、鋳型Mを破壊し、キャビティ20で鋳造されたヘッド1を取り出す工程が行われる。このヘッド1は、図2及び図3に示したように、ソール部4に重量物10が一体に固着されることになる。その後、ソール部4から湯口21等で形成された不要な部分等を除去することで、ヘッド1を製造することができる。
【0047】
上述の重量物10の輪郭形状は、z軸の任意の位置で満たされておれば、その位置において良好な湯流れを提供することができる。本実施形態では、好ましい態様として、上述の重量物10の輪郭形状は、z軸の全範囲で満たされている態様が示されている。
【0048】
重量物10の前記輪郭形状において、y軸の方向の最大寸法Lは、x軸の最大寸法Wよりも大きいことが望ましい。これにより、キャビティ20内の溶湯は、重量物10の両側に分岐した後、重量物10の第2点P2付近でよりスムーズに合流することができる。より好ましい態様では、比L/Wは、例えば、1.0以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上とされる。
【0049】
重量物10の前記輪郭形状において、x軸の方向の寸法は、第1点P1から重量物10の重心G2に向かって漸増する部分を含むのが望ましい。換言すると、重量物10の輪郭形状は、部分的に、第1点P1に向かってテーパー状とされている。この例では、重量物10の輪郭形状は、重心G2の位置から第1点P1の位置までテーパー状とされている。このような重量物10の輪郭形状は、湯口21から供給された溶湯を、重量物10の第1点P1付近で大きな抵抗を与えずに、スムーズに分岐させることができ、キャビティ20内での良好な湯流れを提供することができる。
【0050】
重量物10の第1点P1側の角度θ1は、例えば90°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下であるのが望ましい。これにより、湯口21から供給された溶湯は、大きな抵抗を受けることなく重量物10の周囲を流れることができる。他方、前記角度θ1が小さすぎると、十分な重量を提供するために重量物10がy軸方向の寸法が大型化するおそれがある。このような観点より、前記角度θ1は、例えば15°以上、好ましくは20°以上、より好ましくは30°以上とされるのが望ましい。
【0051】
また、重量物10の前記輪郭形状において、x軸の方向の寸法は、第2点P2に向かって漸減する部分を含むのが望ましい。換言すると、重量物10の輪郭形状は、部分的に、第2点P2に向かってテーパー状とされている。この例では、重量物10の輪郭形状は、重心G2の位置から第2点P2の位置までテーパー状とされている。このような重量物10の輪郭形状は、重量物10の周りに左右に分岐した流れを第2点P2付近でより一層スムーズに合流させることができ、さらに良好な湯流れを提供することができる。
【0052】
重量物10の第2点P2側の角度θ2も、例えば90°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下とされるのが望ましい。これにより、重量物10の周囲で分岐した溶湯を第2点P2付近でよりスムーズに合流させることができ、重量物10の周囲に良好な湯流れを提供することができる。他方、前記角度θ2が小さすぎると、十分な重量を提供するために重量物10のy軸方向の寸法が大型化するおそれがある。このような観点より、前記角度θ2は、例えば15°以上、好ましくは20°以上、より好ましくは30°以上とされるのが望ましい。
【0053】
重量物10の前記輪郭形状は、上述の規定を満たすものであれば、特に制限されないが、例えば、第1点P1及び第2点P2を結ぶ直線に対して線対称形状であるのが望ましい。このような重量物10は、その左右の両側に対称的な湯流れを提供でき、より一層鋳造不良が抑制される。
【0054】
重量物10のより具体的な輪郭形状としては、本実施形態のような多角形状が挙げられる。本明細書において、「多角形状」には、厳密な意味として、直線のみで輪郭が形成された「多角形」のみならず、その少なくとも1つの頂点が円弧で丸められたような「擬似的な多角形」をも含むものとする。そして、多角形状としては、例えば、本実施形態のような四角形状又は六角形状などが好適である。
【0055】
他の実施形態では、重量物10の輪郭形状は、円形状や楕円形状であっても良い。図7には、楕円形状の重量物10の輪郭形状が示されている。このような輪郭形状も、図6の実施形態と同様に、重量物10の周囲に、良好な湯流れを提供することができる。
【0056】
なお、図7のように、重量物10の輪郭形状が曲線で形成されている場合において、前記角度θ1及びθ2は、重量物10のy軸方向の長さLの10%の長さ(0.1L)を第1点P1、第2点P2からそれぞれy軸方向に隔てた位置に引いた接線に基づいて測定される。
【符号の説明】
【0057】
1 ゴルフクラブヘッド
4 ソール部
4a ソール部の外面
10 重量物
10A 重量物の外面
11 湯口
20 キャビティ
G1 湯口の重心
G2 重量物の重心
M 鋳型
P1 第1点
P2 第2点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7