(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084383
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】ゴム組成物、導電性ローラおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20220531BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20220531BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20220531BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20220531BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220531BHJP
C08G 18/70 20060101ALI20220531BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K3/06
C08K5/3492
C08K5/29
C08K3/04
C08G18/70
G03G15/08 221
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196229
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 啓
【テーマコード(参考)】
2H077
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
2H077AD06
2H077FA16
2H077FA22
2H077FA25
4J002CK021
4J002CK031
4J002CK041
4J002DA038
4J002DA046
4J002ER007
4J002EU186
4J002FD118
4J002FD146
4J002FD157
4J002GQ00
4J002GQ02
4J034DN03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034MA02
4J034QB07
4J034QC10
4J034RA14
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性に優れたミラブルウレタンゴムを含み、オープン架橋法による架橋が可能で、しかも現像ローラや帯電ローラ等として適した、圧縮永久ひずみの小さいローラ本体を形成できるゴム組成物と、当該ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含む導電性ローラと、そのコスト安価な製造方法とを提供する。
【解決手段】ゴム組成物は、ミラブルウレタンゴム、硫黄系架橋剤、および前記ミラブルウレタンゴム100質量部あたり1質量部以上、3質量部以下のトリアジン系架橋剤を含み、導電性ローラ1は、かかるゴム組成物の架橋物からなるローラ本体2を含み、かつ導電性ローラの製造方法は、未架橋のゴム組成物を押出成形して、ローラ本体のもとになる筒状体を形成したのちオープン架橋法によって架橋させてローラ本体を形成する工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラブルウレタンゴム、硫黄系架橋剤、および前記ミラブルウレタンゴム100質量部あたり1質量部以上、3質量部以下のトリアジン系架橋剤を含むゴム組成物。
【請求項2】
前記硫黄系架橋剤を、前記ミラブルウレタンゴム100質量部あたり0.5質量部以上、3質量部以下の割合で含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
さらに、架橋促進剤を含む請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記架橋促進剤は、少なくともイソシアネート系促進剤を含む請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
さらにイオン導電剤、およびカーボンブラックからなる群より選ばれた少なくとも1種の導電剤を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含む導電性ローラ。
【請求項7】
前記ローラ本体の外周面を被覆する酸化膜を含む請求項6に記載の導電性ローラ。
【請求項8】
前記請求項6または7に記載の導電性ローラの製造方法であって、未架橋の前記ゴム組成物を押出成形して、ローラ本体のもとになる筒状体を形成する工程、および前記筒状体をオープン架橋法によって架橋させて、前記ローラ本体を形成する工程を含む導電性ローラの製造方法。
【請求項9】
さらに、前記ローラ本体の外周面を研磨したのち紫外線を照射して、当該ローラ本体の外周面を被覆する酸化膜を形成する工程を含む請求項8に記載の導電性ローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばレーザープリンタなどの画像形成装置において、現像ローラや帯電ローラ等として用いられる導電性ローラのローラ本体を形成するゴム組成物と、当該ゴム組成物からなるローラ本体を含む導電性ローラと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミラブルウレタンゴムの架橋物は、耐摩耗性に優れることが知られており、画像形成装置においては、たとえば現像ブレードやクリーニングブレード、あるいは搬送ベルトなどの形成材料として用いられている(特許文献1~3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-143363号公報
【特許文献2】特開2000-155512号公報
【特許文献3】特開2004-123297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、画像形成装置のトナーカートリッジが大容量化されるのに伴い、現像ローラや帯電ローラ等のローラ本体の、長期使用による摩耗に伴う画質の低下が問題化しつつある。
たとえば現像ローラのローラ本体の端部はシール部材でシールされるのが一般的であるが、シール部材との摺接による摩耗と、それに伴うトナーの漏れとを生じやすく、漏れたトナーが画像形成装置の内部を汚して、形成画像の画質を低下させる場合がある。
【0005】
そこで、導電性ローラのローラ本体を、上記のように耐摩耗性に優れたミラブルウレタンゴムの架橋物によって形成することが検討されている。
ミラブルウレタンゴムの架橋剤としては、一般に過酸化物架橋剤が用いられる。
またミラブルウレタンゴムと、過酸化物架橋剤とを含むゴム組成物を用いてローラ本体を形成する方法としては、当該ゴム組成物を金型内に充填してプレス架橋する方法(以下「プレス架橋法」と略記する場合がある)が一般的に採用される。
【0006】
これは押出成形と、加硫缶による架橋や、あるいはオーブンによる連続架橋などの、開放空間での架橋(以下「オープン架橋法」と略記する場合がある)とを組み合わせた通常の成形、架橋方法では、過酸化物架橋剤による架橋が大気中の酸素によって阻害されて、ゴム組成物を良好に架橋させることができないためである。
これに対しプレス架橋法では、ゴム組成物を金型内に充填して、大気中の酸素から遮断した状態とすることができるため、ゴム組成物を良好に成形、架橋させることができる。
【0007】
ところがプレス架橋法では、ローラ本体の形状に対応した金型を必要とする分、オープン架橋法に比べてイニシャルコストが高くつくうえ、成形、架橋の作業効率がオープン架橋法に比べて低いため、ランニングコストも高くついてしまうという課題がある。
ミラブルウレタンゴムの架橋剤として、硫黄等の硫黄系架橋剤を用いたゴム組成物は、プレス架橋法だけでなくオープン架橋法でも架橋できるため、導電性ローラの製造コストを削減できることが期待される。
【0008】
しかし、架橋剤として硫黄系架橋剤のみを用いた架橋物は、過酸化物架橋剤を用いた架橋物に比べて圧縮永久ひずみが大きくなってヘタリを生じやすくなる傾向がある。
そのため、画像形成時に繰り返し圧縮変形を受ける現像ローラや帯電ローラ等のローラ本体としては適していない。
本発明の目的は、耐摩耗性に優れたミラブルウレタンゴムを含み、オープン架橋法による架橋が可能で、しかも現像ローラや帯電ローラ等として適した、圧縮永久ひずみの小さいローラ本体を形成できるゴム組成物を提供することにある。
【0009】
また本発明の目的は、上記ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含む導電性ローラと、そのコスト安価な製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ミラブルウレタンゴム、硫黄系架橋剤、および前記ミラブルウレタンゴム100質量部あたり1質量部以上、3質量部以下のトリアジン系架橋剤を含むゴム組成物である。
また本発明は、かかるゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含む導電性ローラである。
【0011】
さらに本発明は、未架橋の前記ゴム組成物を押出成形して、ローラ本体のもとになる筒状体を形成する工程、および前記筒状体をオーブン架橋法によって架橋させて、前記ローラ本体を形成する工程を含む導電性ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゴムとして、耐摩耗性に優れたミラブルウレタンゴムを含み、オープン架橋法による架橋が可能で、しかも導電性ローラとして適した、圧縮永久ひずみの小さいローラ本体を形成できるゴム組成物を提供することができる。
また本発明によれば、上記ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含む導電性ローラと、そのコスト安価な製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】導電性ローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述したように、本発明のゴム組成物は、ミラブルウレタンゴム、硫黄系架橋剤、およびミラブルウレタンゴム100質量部あたり1質量部以上、3質量部以下のトリアジン系架橋剤を含むことを特徴とするものである。
また本発明の導電性ローラは、かかるゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含むことを特徴とするものである。
【0015】
さらに本発明の導電性ローラの製造方法は、未架橋の上記ゴム組成物を押出成形して、ローラ本体のもとになる筒状体を形成する工程、および筒状体をオーブン架橋させて、前記ローラ本体を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、架橋剤として、オープン架橋法による架橋が可能な硫黄系架橋剤とともに、上記所定の割合でトリアジン系架橋剤を併用することにより、架橋物としてのローラ本体の圧縮永久ひずみを、現状よりも小さくすることができる。
【0016】
そのため本発明によれば、ゴムとして、耐摩耗性に優れたミラブルウレタンゴムを含み、オープン架橋法による架橋が可能で、しかも導電性ローラとして適した、圧縮永久ひずみの小さいローラ本体を形成できるゴム組成物を提供することが可能となる。
また本発明によれば、上記ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含む導電性ローラと、そのコスト安価な製造方法とを提供することが可能となる。
これらのことは、後述する実施例、比較例の結果からも明らかである。
【0017】
《ゴム組成物》
〈ミラブルウレタンゴム〉
ミラブルウレタンゴムとしては、分子中にウレタン結合を有し、かつ硬化前の性状が通常の未架橋のゴムに類似して、ロールミルやニーダーで可塑化させて混練したり、押出成形したりできる、いわゆるミラブル型の、種々のウレタンゴムが使用可能である。
【0018】
かかるミラブルウレタンゴムは、たとえばポリオール成分、イソシアネート成分、および必要に応じて連鎖移動剤を反応させて合成される。
このうちポリオール成分としては、たとえばポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系等が挙げられる。
かかるミラブルウレタンゴムの具体例としては、これに限定されないが、たとえばTSEインダストリーズ社製のミラセン(Millathane、登録商標)76、ミラセンHT、ミラセンCM、ミラセンE34、ミラセンE40等の1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
〈トリアジン系架橋剤〉
トリアジン系架橋剤としては、分子中にトリアジン構造を有し、ミラブルウレタンゴムの架橋剤として機能しうる種々のトリアジン化合物が使用可能である。
トリアジン系架橋剤としては、たとえば2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0020】
トリアジン系架橋剤の具体例としては、これに限定されないが、たとえば三協化成(株)製のジスネット(登録商標)DB〔2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン〕、ジスネットF(TTCA)〔2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン〕等の少なくとも1種を用いることができる。
トリアジン系架橋剤の割合は、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり1質量部以上、3質量部以下に限定される。
【0021】
トリアジン系架橋剤の割合がこの範囲未満、あるいはこの範囲を超える場合には、このいずれにおいても、硫黄系架橋剤を併用しているにも拘らず、ミラブルウレタンゴムの架橋が不十分になる場合がある。
そして、ミラブルウレタンゴムを架橋させることができなかったり、架橋できたとしても、ローラ本体の圧縮永久ひずみが大きくなってヘタリを生じやすくなったりする場合がある。
これに対し、トリアジン系架橋剤の割合を上記の範囲とすることにより、ミラブルウレタンゴムを良好に架橋させて、導電性ローラとして適した、圧縮永久ひずみの小さいローラ本体を形成することができる。
【0022】
〈硫黄系架橋剤〉
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、オイル入り粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄や、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N-ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物などが挙げられ、とくに硫黄が好ましい。
【0023】
硫黄の割合は任意に設定できるものの、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
なお硫黄として、たとえばオイル入り粉末硫黄、分散性硫黄等を用いる場合、上記の割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
また、架橋剤として有機含硫黄化合物を使用する場合、その割合は、分子中に含まれる硫黄の、ミラブルウレタンゴム100質量部あたりの割合が上記の範囲となるように調整するのが好ましい。
【0024】
〈架橋促進剤〉
ミラブルウレタンゴムの、硫黄による架橋を促進するための架橋促進剤としては、たとえばイソシアネート系促進剤が挙げられる。
イソシアネート系促進剤としては、たとえばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート等のポリイソシアネート類の1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
イソシアネート系促進剤の具体例としては、これに限定されないが、たとえばTSEインダストリーズ社製のセンキュア(Thanecure)ZM、センキュアT9等の少なくとも1種が挙げられる。
また架橋促進剤としては、イソシアネート系促進剤とともに、たとえばチウラム系促進剤、チアゾール系促進剤、チオウレア系促進剤、グアニジン系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等を併用してもよい。
【0026】
中でもチアゾール系促進剤が好ましく、チアゾール系促進剤としては、たとえばジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(4′-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
とくにジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドと2-メルカプトベンゾチアゾールとを併用するのが好ましい。
イソシアネート系促進剤と、上記2種のチアゾール系促進剤との併用系において、イソシアネート系促進剤の割合は、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
【0028】
またジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドの割合は、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり2質量部以上であるのが好ましく、6質量部以下であるのが好ましい。
さらに、2-メルカプトベンゾチアゾールの割合は、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
【0029】
〈導電剤〉
ゴム組成物には、導電性ローラに、たとえば現像ローラや帯電ローラ等として適した導電性を付与するために、導電剤を配合してもよい。
導電剤としてはイオン導電剤、および/または電子導電性を有するカーボンブラックが挙げられる。
【0030】
(イオン導電剤)
イオン導電剤としては、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンと、陽イオンとの塩(イオン塩)が好ましい。
イオン塩を構成する、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとしては、たとえば、フルオロアルキルスルホン酸イオン、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン等の1種または2種以上が挙げられる。
このうちフルオロアルキルスルホン酸イオンとしては、たとえば、CF3SO3
-、C4F9SO3
-等の1種または2種以上が挙げられる。
【0031】
またビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオンとしては、たとえば、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C4F9SO2)(CF3SO2)N-、(FSO2C6F4)(CF3SO2)N-、(C8F17SO2)(CF3SO2)N-、(CF3CH2OSO2)2N-、(CF3CF2CH2OSO2)2N-、(HCF2CF2CH2OSO2)2N-、[(CF3)2CHOSO2]2N-等の1種または2種以上が挙げられる。
【0032】
さらにトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオンとしては、たとえば、(CF3SO2)3C-、(CF3CH2OSO2)3C-等の1種または2種以上が挙げられる。
また陽イオンとしては、たとえば、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属のイオン、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の第2族元素のイオン、遷移元素のイオン、両性元素の陽イオン、第4級アンモニウムイオン、イミダゾリウム陽イオン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0033】
イオン塩としては、とくに陽イオンとしてリチウムイオンを用いたリチウム塩、またはカリウムイオンを用いたカリウム塩が好ましい。
中でも、ゴム組成物のイオン導電性を向上して、ローラ本体のローラ抵抗値を低下させる効果の点で、(CF3SO2)2NLi〔リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕、および/または(CF3SO2)2NK〔カリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕が好ましい。
イオン塩等のイオン導電剤の割合は、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
【0034】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、種々のカーボンブラックを用いることができる。
カーボンブラックとしては、たとえば、電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)、ライオン(株)製のケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラックSAF、ISAF、HAF等の1種または2種以上を用いることができる。
カーボンブラックの割合は、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
【0035】
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに必要に応じて、各種の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、たとえば、架橋助剤、加工助剤等が挙げられる。
このうち架橋助剤としては、たとえば、酸化亜鉛(亜鉛華)等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋助剤の1種または2種以上が挙げられる。
架橋助剤の割合は、個別に、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
【0036】
加工助剤としては、たとえば、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩などが挙げられる。
加工助剤の割合は、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり3質量部以下であるのが好ましい。
また添加剤としては、さらに劣化防止剤、スコーチ防止剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等の各種添加剤を、任意の割合で配合してもよい。
【0037】
《導電性ローラ》
図1は、本発明の導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の導電性ローラ1は、上記各成分を含むゴム組成物からなる、非多孔質でかつ単層の筒状に形成されたローラ本体2を備えるとともに、当該ローラ本体2の中心の通孔3にシャフト4が挿通されて固定されたものである。
【0038】
シャフト4は、良導電性の材料、たとえば、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属などによって一体に形成されている。
シャフト4は、たとえば、導電性を有する接着剤を介してローラ本体2と電気的に接合され、かつ機械的に固定されるか、あるいは通孔3の内径よりも外径の大きいものを通孔3に圧入することで、ローラ本体2と電気的に接合され、かつ機械的に固定される。
【0039】
また、この両法を併用して、シャフト4を、ローラ本体2と電気的に接合し、かつ機械的に固定してもよい。
ローラ本体2の外周面5には、図中に拡大して示すように、酸化膜6を形成してもよい。
酸化膜6を形成すると、当該酸化膜6が誘電層として機能して、導電性ローラ1の誘電正接を低減することができる。
【0040】
また、酸化膜6が低摩擦層となることで、たとえば、現像ローラや帯電ローラ等として使用した際にトナーの付着を抑制することもできる。
しかも酸化膜6は、たとえばローラ本体2の外周面5に紫外線を照射等するだけで簡単に形成できるため、導電性ローラ1の生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを抑制することもできる。
【0041】
ただし、酸化膜6は形成しなくてもよい。
なお、ローラ本体2の「単層構造」とは、ゴム等からなる層の数が単層であることを指し、紫外線の照射等によって形成される酸化膜6は、層数に含まないこととする。
導電性ローラのローラ抵抗値R(Ω)は、当該導電性ローラの用途に応じて、その用途に適した範囲に設定することができる。
たとえば現像ローラの場合は、温度23℃、相対湿度55%の環境下、下記の測定方法によって測定したローラ抵抗値R(Ω)が、常用対数値logRで表して4以上であるのが好ましく、6以下であるのが好ましい。
【0042】
〈ローラ抵抗値の測定〉
図2は、導電性ローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
図1、
図2を参照して、この測定方法では、一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム7を用意し、用意したアルミニウムドラム7の外周面8に、上方から、ローラ抵抗値を測定する導電性ローラ1の、ローラ本体2の外周面5を接触させる。
また、導電性ローラ1のシャフト4とアルミニウムドラム7との間に直流電源9、および抵抗10を直列に接続して計測回路11を構成する。
【0043】
直流電源9は、(-)側をシャフト4、(+)側を抵抗10と接続する。
抵抗10の抵抗値rは100Ωとする。
次いで、シャフト4の両端部にそれぞれ4.9N(≒500gf)の荷重Fをかけてローラ本体2をアルミニウムドラム7に圧接させた状態で、アルミニウムドラム7を40rpmで回転させる。
【0044】
そして回転を続けながら、導電性ローラ1とアルミニウムドラム7との間に、直流電源9から直流100Vの印加電圧Eを印加した際に、抵抗10にかかる検出電圧Vを計測する。
計測した検出電圧Vと印加電圧E(=100V)とから、導電性ローラ1のローラ抵抗値Rは、基本的に式(1):
R=r×E/V-r (1)
によって求められる。
ただし式(1)中の-rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(1a):
R=r×E/V (1a)
によって求めた値でもって、導電性ローラ1のローラ抵抗値とすることとする。
【0045】
〈ローラ本体のゴム硬さ〉
現像ローラの場合、ローラ本体のゴム硬さは、タイプAデュロメータ硬さで表して60°以下であるのが好ましい。
タイプAデュロメータ硬さがこの範囲を超える場合には、ローラ本体2が硬くなりすぎて、たとえば導電性ローラを現像ローラとして使用した際に、画像耐久性が低下する場合がある。
画像耐久性とは、現像ローラが、画像形成を繰り返した際のトナーの劣化を抑制して、形成される画像の画質を、どれだけ多くの画像形成回数に亘って良好に維持できるかを示す指標である。
【0046】
1回の画像形成には、トナーカートリッジ内に収容されたトナーのごく一部しか用いられず、残りの大部分のトナーは、トナーカートリッジ内を繰り返し循環する。
そのため、トナーカートリッジ内に設けられてトナーと繰り返し接触する現像ローラのローラ本体が、循環するトナーにどれだけのダメージを与えるか、あるいは与えないかが、現像ローラの画像耐久性を向上する上での大きな鍵となる。
【0047】
すなわちローラ本体が硬くなると、トナーにダメージを与えやすくなり、画像形成を繰り返した際に、形成される画像の画質が早期に低下して、良好な画像耐久性が得られない傾向がある。
ローラ本体のタイプAデュロメータ硬さは、温度23℃、相対湿度55%の環境下、日本工業規格JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」の規定に準拠したタイプAデュロメータを用いて、下記の測定方法に則って測定した値でもって表すこととする。
【0048】
すなわち、ローラ本体の両端から突出したシャフトの両端部を支持台に固定した状態で、当該ローラ本体の幅方向の中央部に、上方から上記タイプAデュロメータの押し針を当てて、加圧面に加える質量:1kg、測定時間:3秒(加硫ゴムの標準測定時間)の条件で、タイプAデュロメータ硬さを求める。
【0049】
〈導電性ローラの製造〉
導電性ローラ1を製造するには、まず、前述した各成分からなるゴム組成物を、押出機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして、加硫缶内で加圧、加熱して架橋させる。
【0050】
次いで架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させたのち冷却し、さらに所定の外径となるように研磨してローラ本体2を形成する。
シャフト4は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で通孔3に挿通して固定できる。
ただし、カット後、まず通孔3にシャフト4を挿通した状態で二次架橋および研磨をするのが好ましい。
【0051】
これにより、二次架橋時の膨張収縮による筒状体の反りや変形等を抑制できる。
また、シャフト4を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面5のフレを抑制できる。
シャフト4は、先に説明したように、導電性を有する接着剤、特に導電性の熱硬化性接着剤を介して二次架橋前の筒状体の通孔3に挿通したのち二次架橋させるか、あるいは通孔3の内径より外径の大きいものを通孔3に圧入すればよい。
【0052】
前者の場合は、オーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト4がローラ本体2に電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
また後者の場合は、圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
また、前述したように、この両法を併用して、シャフト4を、ローラ本体2と電気的に接合し、かつ機械的に固定してもよい。
【0053】
酸化膜6は、先に説明したように、ローラ本体2の外周面5に紫外線を照射して形成するのが好ましい。
すなわち、ローラ本体2の外周面5に所定波長の紫外線を所定時間に亘って照射して、当該外周面5の近傍を構成するゴム組成物中のミラブルウレタンゴムを酸化させることによって、酸化膜6を形成することができる。
【0054】
そのため、酸化膜6の形成工程が簡単で効率的であって、導電性ローラ1の生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを抑制することができる。
しかも、紫外線の照射によって形成される酸化膜6は、たとえば塗剤を塗布して形成されるコーティング膜のような問題を生じることがない上、厚みの均一性やローラ本体2との密着性等にも優れている。
【0055】
照射する紫外線の波長は、ゴム組成物中のジエン系ゴムを効率よく酸化させて、前述した機能に優れた酸化膜6を形成することを考慮すると、185nm近辺と254nm近辺の混合波長であるのが好ましい。
また照射の時間は30秒間以上、とくに1分間以上であるのが好ましく、30分間以下、とくに20分間以下であるのが好ましい。
【0056】
ただし、酸化膜6は他の方法で形成してもよいし、形成しなくてもよい。
図1の実施形態においては、ローラ本体2を、前述した各成分を含む本発明のゴム組成物の架橋物からなる単層構造としていたが、ローラ本体は、2層以上の積層構造としてもよい。
その場合には、積層構造を構成する最外層を、前述した各成分を含む本発明のゴム組成物の架橋物によって形成すればよい。
【0057】
本発明の導電性ローラは、たとえばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置において、現像ローラとして好適に用いることができる。
また、たとえば帯電ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ等として用いることもできる。
【0058】
また導電性ローラの製造方法では、当該導電性ローラをコスト安価に製造するために、ローラ本体を、オープン架橋法によって形成する場合について説明したが、当該ローラ本体を、プレス架橋法その他、各種の方法で形成してもよいことは、言うまでもない。
【実施例0059】
以下に本発明を、実施例、比較例、従来例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(ゴム組成物の調製)
ミラブルウレタンゴムとしては、前出のTSEインダストリーズ社製のミラセンE34を用いた。
そして、上記ミラブルウレタンゴム100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、まず下記表1に示す各成分を加えて混練した。
【0060】
【0061】
表1中の各成分は下記のとおり。なお表1中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
イオン導電剤(イオン塩):カリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〔三菱マテリアル電子化成(株)製のEF-N112〕
カーボンブラック:導電性カーボンブラック〔アセチレンブラック、電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)、粒状〕
次いで混練を続けながら、下記の架橋成分を配合してさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0062】
【0063】
表2中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
硫黄系架橋剤:分散性硫黄〔鶴見化学工業(株)製の商品名サルファックス(登録商標)PMC、硫黄分97.5%〕
トリアジン系架橋剤:2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン〔三協化成(株)製のジスネットDB〕
促進剤ZM:イソシアネート系促進剤〔TSEインダストリーズ社製のセンキュアZM〕
促進剤DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DM-P、チアゾール系促進剤〕
促進剤MP:2-メルカプトベンゾチアゾール〔大内新興化学工業(株)製のノクセラーM-P、チアゾール系促進剤〕
【0064】
(導電性ローラの製造)
調製したゴム組成物を押出成形機に供給して、外径φ20.5mm、内径φ6.5mmの筒状に押出成形した後、所定の長さにカットして架橋用の仮のシャフトに装着した。
【0065】
次いで、加硫缶中で155℃×60分間の加熱をすると、筒状体を架橋させることができた。架橋状態は良好(○)と評価した。
次いで、架橋させた筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ7.5mmのシャフトに装着し直して、オーブン中で160℃に加熱して二次架橋させるとともに、熱硬化性接着剤を硬化させてシャフトと電気的に接合し、かつ機械的に固定した。
【0066】
そして筒状体の両端を整形したのち、その外周面を、円筒研削盤を用いてトラバース研削し、次いで仕上げ研磨として鏡面研磨することで外径をφ20.00mm(公差±0.05mm)に仕上げた。
そして、研磨後の外周面をアルコール拭きしたのちUV処理装置にセットし、回転させながら、波長184.9nmと253.7nmの紫外線を照射することで上記外周面に酸化膜を形成してローラ本体を形成し、導電性ローラを製造した。
【0067】
〈実施例2、3〉
トリアジン系架橋剤の割合を、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり3質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した(実施例2)。架橋状態は良好(○)と評価した。
また導電性ローラの製造工程のうち紫外線の照射による酸化膜の形成を省略したこと以外は実施例2と同様にして導電性ローラを製造した(実施例3)。同じく架橋状態は良好(○)と評価した。
【0068】
〈比較例1〉
トリアジン系架橋剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。架橋状態は良好(○)と評価した。
〈比較例2〉
トリアジン系架橋剤の割合を、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。架橋状態は良好(○)と評価した。
【0069】
〈比較例3〉
トリアジン系架橋剤の割合を、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり4質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造しようとしたが、オープン架橋法では架橋させることができなかった。架橋状態は不良(×)と評価した。
【0070】
〈従来例1〉
硫黄系架橋剤、トリアジン系架橋剤、および3種の架橋促進剤に代えて、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり2質量部の過酸化物架橋剤〔日油(株)製のジクミルペルオキシド〕を配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造しようとしたが、オープン架橋法では架橋させることができなかった。架橋状態は不良(×)と評価した。
【0071】
〈ゴム硬さの測定および評価〉
実施例1~3、比較例1、2で製造した導電性ローラのローラ本体の、温度23℃、相対湿度55%の環境下でのタイプAデュロメータ硬さを、先に説明した測定方法に則って測定した。
そして、タイプAデュロメータ硬さが50°以上、60°以下であったものを良好(○)、この範囲を外れたものを不良(×)と評価した。
【0072】
〈ローラ抵抗値の測定および評価〉
実施例1~3、比較例1、2で製造した導電性ローラの、温度23℃、相対湿度55%の環境下でのローラ抵抗値R(Ω)を、先に説明した測定方法に則って測定した。
そして測定したローラ抵抗値R(Ω)が、常用対数値logRで表して3以上、8以下であるものを良好(○)、この範囲を外れたものを不良(×)と評価した。
【0073】
〈圧縮永久ひずみ試験〉
実施例1~3、比較例1、2で調製したゴム組成物を、導電性ローラを製造した時と同条件で架橋させて、日本工業規格JIS K6262:2013「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方」に規定された小型試験片を作製し、この小型試験片を用いて、上記規格に所載の測定方法に則って圧縮永久ひずみ率を求めた。
【0074】
具体的には、小型試験片に、その元の厚みh0(mm)の25%の圧縮ひずみを加えて温度70±1℃で22時間保持したのち、圧縮を解除して室温で30分間静置後の厚みh1(mm)を測定した。
そして式(2):
【0075】
【0076】
によって、圧縮永久ひずみ率Cs(%)を求めた。
圧縮永久ひずみ率Cs(%)は、20%以下のものを良好(○)、20%を超えたものを不良(×)と評価した。
なお、式中のh2(mm)は、圧縮ひずみを加える際に併用したスペーサの厚みを示す。
【0077】
〈セット跡の評価〉
トナーを収容したトナー容器、感光体、および感光体と接触させた現像ローラを備え、レーザープリンタ〔ブラザー工業(株)製のHL-L6400DW〕の本体に着脱自在とされた新品のトナーカートリッジ〔ブラザー工業(株)製のTN-63J〕の、純正の現像ローラに代えて、実施例1~3、比較例1、2で製造した導電性ローラを組み込んだ。
【0078】
次いでトナーカートリッジを、45℃の高温環境下で5日間保管し、次いで室温で24時間静置した後、レーザープリンタに組み込んで画像形成した。
そして形成画像に、導電性ローラに感光体が圧接されていた跡(セット跡)が見られなかったものを良好(○)、セット跡が見られたものを不良(×)と評価した。
【0079】
〈耐摩耗性〉
実施例1~3、比較例1、2で調製したゴム組成物を、導電性ローラを製造した時と同条件で架橋させて、日本工業規格JIS K7204:1999「プラスチック-摩耗輪による摩耗試験方法」に規定された円板状の試験片を作製し、この試験片を用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境下、上記規格に所載の測定方法に則って摩耗量を求めた。
そして摩耗量が0.06g以下のものを良好(○)、0.06gを超えたものを不良(×)と評価した。
【0080】
〈摩擦試験〉
実施例1~3、比較例1、2で製造した導電性ローラの動摩擦係数を、(株)トリニティーラボ製のハンディートライボマスターTL201Tsを用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境下、接触子:ボール接触子、荷重:10g、計測距離:10mm、移動速度:10mm/秒の条件で測定した。
【0081】
〈実機試験〉
トナーを収容したトナー容器、感光体、および感光体と接触させた現像ローラを備え、レーザープリンタの本体に着脱自在とされた新品のトナーカートリッジの、純正の現像ローラに代えて、実施例1~3、比較例1、2で製造した導電性ローラを組み込んだ。
【0082】
(形成画像のムラ評価)
そしてトナーカートリッジをレーザープリンタに組み込んで1万枚、および2万枚の連続画像形成をした後にそれぞれ1枚の画像を形成して、形成画像に、導電性ローラへのトナーの付着によるムラが見られなかったものをムラなし、ムラが見られたものをムラありと評価した。
【0083】
(摩耗の有無評価)
また、2万枚の連続画像形成をした後に導電性ローラをトナーカートリッジから取り出して、当該トナーカートリッジの端部の摩耗の有無を確認し、摩耗が見られなかったものを良好(○)、摩耗が見られたものを不良(×)と評価した。
以上の結果を表3、表4に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
表3、表4の、実施例1~3と従来例1の結果より、架橋剤として硫黄系架橋剤を用いることで、ミラブルウレタンゴムを含むゴム組成物を、オープン架橋法によって架橋して、導電性ローラのローラ本体を形成できることが判った。また形成したローラ本体は、耐摩耗性に優れ、端部の摩耗を生じにくいことが判った。
また実施例1~3、比較例1の結果より、架橋剤として、硫黄系架橋剤とともにトリアジン系架橋剤を併用することで、上記ローラ本体の圧縮永久ひずみ率を小さくし、ヘタリの発生を抑制して、形成画像にセット跡などを生じにくくできることが判った。
【0087】
ただし実施例1~3、比較例2、3の結果より、これらの効果を得るためには、トリアジン系架橋剤の割合を、ミラブルウレタンゴム100質量部あたり1質量部以上、3質量部以下とする必要があることが判った。
さらに実施例2、3の結果より、ローラ本体の外周面を酸化膜で被覆することにより、導電性ローラの動摩擦係数を低減して、より長期に亘って、トナーの付着による形成画像のムラの発生を抑制できることが判った。