(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086089
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】金属板の切断装置及び切断方法、並びに、製品金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 7/00 20060101AFI20220602BHJP
B23K 10/00 20060101ALI20220602BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20220602BHJP
【FI】
B23K7/00 501C
B23K10/00 501A
B23K26/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197909
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】福地 良太
【テーマコード(参考)】
4E001
4E168
【Fターム(参考)】
4E001AA01
4E001BA04
4E001CA01
4E168AD07
4E168CA07
4E168CA13
4E168JA02
4E168KA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】厚鋼板などの金属板をガス切断やプラズマ切断などの熱切断によって指定された寸法に切断する際に、製品金属板を傷つけることなく、金属板の長手方向の切断と同時に、長手方向の切断によって生じる金属板の耳くずを搬送可能な寸法に切断する方法を提供する。
【解決手段】金属板11の切断装置1は、金属板11を製品金属板12と耳くず13とに切り分けながら、前記耳くず13を熱切断する金属板11の切断装置1であって、金属板11を長手方向に熱切断して切断溝15を形成し、金属板11を製品金属板12と耳くず13とに切り分ける主切断トーチ3と、耳くず13を幅端部11a側から前記切断溝15の方向に向かって熱切断する耳切りトーチ4と、耳切りトーチ4の位置を検出する耳切りトーチ位置検出センサー6と、耳切りトーチ4を幅端部11a側から前記切断溝15の方向に向かって移動させる耳切りトーチ移動手段10と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の幅端部から金属板の中心側に離れた位置を熱切断して、前記金属板を製品金属板と耳くずとに切り分けながら、前記耳くずを熱切断する金属板の切断装置であって、
前記金属板を長手方向に熱切断して前記金属板に切断溝を形成し、前記金属板を前記製品金属板と前記耳くずとに切り分ける主切断トーチと、
前記耳くずを前記金属板の幅端部側から前記切断溝の方向に向かって熱切断する耳切りトーチと、
前記耳切りトーチの位置を検出する耳切りトーチ位置検出センサーと、
前記耳切りトーチを前記金属板の幅端部側から前記切断溝の方向に向かって移動させる耳切りトーチ移動手段と、
を備える金属板の切断装置。
【請求項2】
前記主切断トーチ及び前記耳切りトーチは、前記長手方向に移動する台車に取り付けられている、請求項1に記載の金属板の切断装置。
【請求項3】
前記主切断トーチ及び前記耳切りトーチは、ガス切断トーチ、プラズマ切断トーチ、レーザー切断トーチのうちのいずれかである、請求項1または請求項2に記載の金属板の切断装置。
【請求項4】
前記耳切りトーチ位置検出センサーは、光または音波を用いて前記金属板の幅端部と前記耳切りトーチとの距離を測定するセンサーである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金属板の切断装置。
【請求項5】
更に、前記主切断トーチの位置を検出する主切断トーチ位置検出センサーを備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金属板の切断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金属板の切断装置を用い、主切断トーチを金属板の長手方向に移動させる、または、金属板を主切断トーチに対して金属板の長手方向に移動させて、前記主切断トーチで前記金属板を長手方向に熱切断して前記金属板を製品金属板と耳くずとに切り分けながら、耳切りトーチ位置検出センサーで耳切りトーチの位置を検出しつつ、前記耳切りトーチを前記金属板の幅端部側から切断溝の方向に向かって移動させて前記耳くずを熱切断する、金属板の切断方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金属板の切断装置を用い、主切断トーチを金属板の長手方向に移動させる、または、金属板を主切断トーチに対して金属板の長手方向に移動させて、前記主切断トーチで前記金属板を長手方向に熱切断して前記金属板を製品金属板と耳くずとに切り分けながら、耳切りトーチ位置検出センサーで耳切りトーチの位置を検出しつつ、前記耳切りトーチを前記金属板の幅端部側から切断溝の方向に向かって移動させて前記耳くずを熱切断して、金属板から製品金属板を製造する、製品金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚鋼板などの金属板の縁を長手方向に切断し、金属板を指定された寸法に切断する際に、金属板の長手方向の切断と同時に、金属板の長手方向の切断で生じる耳くずを搬送可能な寸法に切断することのできる金属板の切断装置及び切断方法、並びに、この切断装置を用いた製品金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の厚鋼板製造工程などにおいては、圧延後の厚鋼板を指定された所定の製品厚鋼板寸法に仕上げるために、厚鋼板両側の幅端部から中心側に所定距離離れた位置、つまり、厚鋼板の長手方向の両サイド(両縁)を、厚鋼板の長手方向に切断している。この長手方向の切断によって厚鋼板から切り離された部位を、「耳くず」と称しており、この耳くずは鉄スクラップとして再利用されている。厚鋼板の長手方向の切断方法としては、ガス切断、レーザー切断またはプラズマ切断が採用されており、切断作業自体は門型の数値制御切断機や、自走式切断機を使用しており、自動化が進んでいる。
【0003】
ガス切断、レーザー切断及びプラズマ切断などは、「熱切断」と呼ばれている。熱切断とは、切断部を溶融(または蒸発)し、この溶融(または蒸発)した部分をガスによって吹き飛ばして切断する方法である。これに対して、刃物(シャー、はさみ、鋸など)を用いて切断する方法は機械切断と呼ばれている。厚鋼板は、長手方向の長さが長いうえに厚みも大きく、機械切断では切断が容易でないので、通常、熱切断が採用されている。
【0004】
製品厚鋼板の長さは10~20mの長尺であり、厚鋼板の両サイドの長手方向切断によって生じる耳くずも製品厚鋼板と同じ長さとなる。そのため、耳くずをスクラップシュートなどで運搬する際には、運搬しやすいサイズ及び重量に小切りする必要がある。
【0005】
従来、厚鋼板の両サイドの長手方向切断によって生じた耳くずを運搬しやすいサイズ及び重量に小切りする手段は自動化が進んでおらず、ハンドトーチなどを使用して人手作業によって耳くずの小切りを実施している。人手による作業は、作業工程の増加をもたらすのみならず、切断時の溶融滓の飛散などによる作業者の負傷の恐れがある危険作業でもある。
【0006】
この問題を解決するために、近年、耳くずを自動で運搬しやすいサイズ及び重量に小切りする手段が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、切断トーチで、厚鋼板の長手方向の両サイドを長手方向に所定長さ切断する長手方向切断と、この長手方向切断によって形成された切断溝から厚鋼板の幅端部に向けて切断する幅方向切断と、を繰り返して行い、耳くずを所定長さに小切りする耳くず処理方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、厚鋼板をその長手方向に沿って搬送する加工ライン上に、罫書き線に沿いながら厚鋼板の長手方向両縁を切断する大板切断火口を有する長手切断機を配設し、この長手切断機の設置位置よりやや下手側に、厚鋼板の搬送方向と交わる方向に一定のサイクルにしたがって往復移動し、且つ、長手切断機の動きと連動する廃材切断火口を有する廃材切断機を配設した厚鋼板の加工装置が提案されている。特許文献2は、大板切断火口(主切断トーチ)によって厚鋼板を長手方向に切断し、切断によって生じた廃材(耳くず)を廃材切断火口(耳切りトーチ)によって所定の長さに切断するという技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-123738号公報
【特許文献2】実開平5-84466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
【0011】
即ち、特許文献1では、1本の切断トーチを厚鋼板の幅方向に移動させたり、厚鋼板の長手方向に移動させたりして耳くずを小切りにするので、耳くずを小切りにするための余分の切断時間が必要であり、切断時間が長くなるという問題が生じる。また、切断が一方向に進まないので、失火して切断が進行不能になるという問題もある。
【0012】
特許文献2では、作動杆に取り付けられた作用片によって廃材切断火口(耳切りトーチ)の位置を設定するとともに、厚鋼板の罫書き線(切断溝)から厚鋼板の幅端部へ向かって廃材切断火口(耳切りトーチ)を移動させながら廃材(耳くず)を切断している。このため、罫書き線(切断溝)上における廃材切断火口(耳切りトーチ)の位置精度が低く、また、廃材切断火口(耳切りトーチ)は、罫書き線(切断溝)上で廃材(耳くず)を予熱することになり、廃材(耳くず)切断後の製品厚鋼板の切断面に疵がついたり溶融滓が付着したりするという問題が生じる。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、厚鋼板などの金属板をガス切断やプラズマ切断などの熱切断によって指定された寸法に切断する際に、金属板の幅端部から中心側に所定距離離れた位置を長手方向に熱切断する主切断トーチの他に、長手方向の熱切断によって生じる耳くずを熱切断する耳切りトーチを配置し、製品金属板の切断面を傷つけることなく、金属板の長手方向の切断と同時に、金属板の耳くずを搬送可能な寸法に切断することのできる金属板の切断装置及び切断方法を提供することである。また、この切断装置を用いた製品金属板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
【0015】
[1]金属板の幅端部から金属板の中心側に離れた位置を熱切断して、前記金属板を製品金属板と耳くずとに切り分けながら、前記耳くずを熱切断する金属板の切断装置であって、
前記金属板を長手方向に熱切断して前記金属板に切断溝を形成し、前記金属板を前記製品金属板と前記耳くずとに切り分ける主切断トーチと、
前記耳くずを前記金属板の幅端部側から前記切断溝の方向に向かって熱切断する耳切りトーチと、
前記耳切りトーチの位置を検出する耳切りトーチ位置検出センサーと、
前記耳切りトーチを前記金属板の幅端部側から前記切断溝の方向に向かって移動させる耳切りトーチ移動手段と、
を備える金属板の切断装置。
【0016】
[2]前記主切断トーチ及び前記耳切りトーチは、前記長手方向に移動する台車に取り付けられている、上記[1]に記載の金属板の切断装置。
【0017】
[3]前記主切断トーチ及び前記耳切りトーチは、ガス切断トーチ、プラズマ切断トーチ、レーザー切断トーチのうちのいずれかである、上記[1]または上記[2]に記載の金属板の切断装置。
【0018】
[4]前記耳切りトーチ位置検出センサーは、光または音波を用いて前記金属板の幅端部と前記耳切りトーチとの距離を測定するセンサーである、上記[1]から上記[3]のいずれかに記載の金属板の切断装置。
【0019】
[5]更に、前記主切断トーチの位置を検出する主切断トーチ位置検出センサーを備える、上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の金属板の切断装置。
【0020】
[6]上記[1]から上記[5]のいずれかに記載の金属板の切断装置を用い、主切断トーチを金属板の長手方向に移動させる、または、金属板を主切断トーチに対して金属板の長手方向に移動させて、前記主切断トーチで前記金属板を長手方向に熱切断して前記金属板を製品金属板と耳くずとに切り分けながら、耳切りトーチ位置検出センサーで耳切りトーチの位置を検出しつつ、前記耳切りトーチを前記金属板の幅端部側から切断溝の方向に向かって移動させて前記耳くずを熱切断する、金属板の切断方法。
【0021】
[7]上記[1]から上記[5]のいずれかに記載の金属板の切断装置を用い、主切断トーチを金属板の長手方向に移動させる、または、金属板を主切断トーチに対して金属板の長手方向に移動させて、前記主切断トーチで前記金属板を長手方向に熱切断して前記金属板を製品金属板と耳くずとに切り分けながら、耳切りトーチ位置検出センサーで耳切りトーチの位置を検出しつつ、前記耳切りトーチを前記金属板の幅端部側から切断溝の方向に向かって移動させて前記耳くずを熱切断して、金属板から製品金属板を製造する、製品金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る金属板の切断装置によれば、主切断トーチと耳切りトーチとの2本のトーチを備えることにより、金属板の長手方向の切断と同時に、耳くずの自動小切りが可能になり、手作業による耳くずの小切りが不要になる。また、金属板の長手方向の切断と耳くずの小切りとを同時に実施するので、耳くずを小切りするための切断時間によって切断時間全体が延長されることはなく、効率的に耳くずの小切りを達成できる。更に、耳くずの切断に際して、金属板の幅端部を予熱し、その後、金属板の幅端部側から長手方向切断の切断溝の方向に向かって耳くずを切断するので、長手方向切断の切断溝を予熱した後に長手方向切断の切断溝側から金属板の幅端部に向かって耳くずを切断する方法に比べて、製品金属板の切断面を傷つけることなく切断可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る金属板の切断装置の一例の切断装置の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る金属板の切断装置の一例を三方向から見た概略図である。
【
図4】耳切りトーチの切断開始点(耳切り開始点)の検出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0025】
図1及び
図2に、本発明の実施形態に係る金属板の切断装置の一例の概略図を示す。
図1は、金属板の切断装置の斜視図である。
図2は、金属板の切断装置を三方向から見た概略図であって、
図2-(A)は、切断装置を切断装置の移動方向と直交する方向から見た図(正面図)、
図2-(B)は、切断装置を切断装置の移動方向と平行する方向から見た図(側面図)、
図2-(C)は、切断装置を鉛直方向上方から見た図(平面図)である。本発明に係る金属板の切断装置は、例えば、製品金属板として製品厚鋼板を製造する製鉄所の厚鋼板精製工程において用いられる。
【0026】
先ず、本発明の実施形態に係る金属板の切断装置について説明する。
【0027】
本発明に係る金属板の切断装置1は、主切断トーチ3と、耳切りトーチ4と、耳切りトーチ位置検出センサー6と、を具備している。主切断トーチ3は、吹管3a及び火口3bを備え、耳切りトーチ4は、吹管4a及び火口4bを備えている。
【0028】
主切断トーチ3は、主切断トーチ支持軸9を介して主切断トーチ基台7に取り付けられており、この主切断トーチ基台7は、台車2に固定されて設置されている。同様に、耳切りトーチ4は、耳切りトーチ支持軸10を介して耳切りトーチ基台8に取り付けられており、この耳切りトーチ基台8は、台車2に固定されて設置されている。
【0029】
厚鋼板11の上には、厚鋼板11の長手方向全長に亘ってレール(後述する
図3を参照)が設置されており、台車2は、レール上を走行することで厚鋼板11の長手方向に沿って移動可能となっている。
【0030】
主切断トーチ支持軸9には、主切断トーチ移動手段として伸縮アクチュエータ(図示せず)が設けられており、同様に、耳切りトーチ支持軸10には、耳切りトーチ移動手段として、伸縮アクチュエータ(図示せず)が設けられている。これにより、主切断トーチ3及び耳切りトーチ4は、それぞれ独立して、台車2を基点として、主切断トーチ基台7及び耳切りトーチ基台8から厚鋼板(金属板)11の幅方向に伸縮自在になっている。尚、主切断トーチ支持軸9には、必ずしも伸縮アクチュエータを設ける必要はなく、主切断トーチ3は、台車2に固定させて設置してもよい。
【0031】
耳切りトーチ位置検出センサー6は、耳切りトーチ4に取り付けられており、耳切りトーチ4とともに台車2に対して厚鋼板11の幅方向に移動可能となっている。耳切りトーチ位置検出センサー6は、光または音波を用いて厚鋼板11の幅端部11aと耳切りトーチ4との距離を測定するセンサーである。
【0032】
厚鋼板11の長手方向(台車移動方向)をx方向、厚鋼板11の幅方向をy方向、厚鋼板11の鉛直方向をz方向とすると、耳切りトーチ位置検出センサー6のy方向座標は、耳切りトーチ4のy方向座標に一致させてある。本実施形態では、耳切りトーチ位置検出センサー6は、例えば、レーザーセンサーであり、レーザー光を用いて厚鋼板11の幅端部11aと耳切りトーチ4との距離(y方向の距離)を測定することにより、耳切りトーチ4の位置(y方向座標)を検出するように構成されている。つまり、耳切りトーチ位置検出センサー6はエッジ検出センサーである。ここで、厚鋼板11は、熱間圧延によって製造されたもので、厚鋼板11の幅は熱間圧延時の幅であり、製品厚鋼板(製品金属板)12の幅よりも大きく設定されている。
【0033】
本実施形態では、主切断トーチ3にも主切断トーチ位置検出センサー5が備え付けられている。主切断トーチ位置検出センサー5のx方向座標は、主切断トーチ3のx方向座標に一致させてある。主切断トーチ位置検出センサー5は、一例としてレーザーセンサーであり、レーザー光を用いて厚鋼板11の長手方向端部11bと主切断トーチ3との距離(x方向の距離)を測定することにより、主切断トーチ3の位置(x方向座標)を検出するように構成されている。
【0034】
尚、主切断トーチ3には、必ずしも主切断トーチ位置検出センサー5は取り付けられていなくてもよい。主切断トーチ位置検出センサー5が取り付けられていない場合であっても、厚鋼板11の切断を開始する際に、手動にて主切断トーチ3の位置合わせを行うことで、主切断トーチ3を長手方向端部11bの位置(x方向座標)に定めることができる。
【0035】
図1及び
図2に示す主切断トーチ3及び耳切りトーチ4は、ガス切断トーチである。ガス切断トーチとは、予熱用ガス(プロパンガス、天然ガスなど)を用いてトーチ先端の火口3b及び4bから、予熱炎を噴射して厚鋼板11を予熱するとともに、予熱された厚鋼板11に切断用酸素気流を吹き付けて、厚鋼板11を切断するトーチである。火口3b及び火口4bの水平方向断面構造は、中心に切断用酸素気流を噴射する1個のノズルが配置され、その周囲に複数個の予熱用ガスを噴射するノズルが配置された構造である。
【0036】
主切断トーチ3は、厚鋼板11の幅端部11aから厚鋼板11の中心側に離れた所定位置に固定されている。つまり、主切断トーチ3は、台車2に対してy方向座標を或る一定値に固定されており、台車2とともに厚鋼板11の長手方向(x方向)に移動し、厚鋼板11を、厚鋼板11に描かれた罫書き線14に沿って熱切断する。主切断トーチ3によって厚鋼板11を熱切断することで、厚鋼板11には切断溝15が形成され、厚鋼板11が製品厚鋼板(製品金属板)12と耳くず13とに切り分けられる。
【0037】
耳切りトーチ4は、伸縮アクチュエータが設けられた耳切りトーチ支持軸10により、厚鋼板11の幅方向(y方向)に伸縮可能となっている。伸縮アクチュエータを縮めることにより、耳切りトーチ4は、厚鋼板11の幅端部側から切断溝15の方向に向かって耳くず13を熱切断する。
図1では、耳切りトーチ4による熱切断によって形成された部位を切断溝16で示している。耳切りトーチ4も主切断トーチ3と同様に台車2とともにx方向に移動するので、耳切りトーチ4による切断溝16は、厚鋼板11においてx方向及びy方向に対して傾斜して形成される。主切断トーチ3及び耳切りトーチ4の移動速度は、一例として200~400mm/minの範囲に設定する。
【0038】
尚、主切断トーチ3及び耳切りトーチ4は、ガス切断トーチに限ることはなく、プラズマ切断トーチまたはレーザー切断トーチであってもよい。プラズマ切断トーチとは、プラズマを放射することで厚鋼板11を切断するトーチであり、予熱が不要である。また、レーザー切断トーチとは、レーザーを照射することで厚鋼板11を切断するトーチである。
【0039】
また、上記説明は、台車2に取り付けられた主切断トーチ3及び耳切りトーチ4を、台車2とともに厚鋼板11に対して移動させることによって厚鋼板11を熱切断しているが、主切断トーチ3及び耳切りトーチ4を固定された基台に取り付け、厚鋼板移動手段(金属板移動手段)を用いて、厚鋼板(金属板)11を、基台に取り付けられた主切断トーチ3及び耳切りトーチ4に対して厚鋼板(金属板)11の長手方向に移動させることによって、厚鋼板(金属板)11を熱切断する構成とすることも可能である。
【0040】
ここで、厚鋼板とは、厚みが6mm以上の炭素鋼鋼板及び低合金鋼鋼板である。また、上記説明は金属板として厚鋼板を例として説明したが、金属板としては、厚鋼板以外に、ステンレス鋼鋼板、ニッケル基金属板、アルミニウム基金属板、銅基金属板などがあり、いずれも本発明を適用して熱切断が可能である。
【0041】
次に、本発明に係る金属板の切断方法及び製品金属板の製造方法について説明する。
【0042】
耳くずの自動小切り方法の模式図を
図3に示す。耳くずの自動小切り手順は、以下のとおりである。
【0043】
工程1;先ず、厚鋼板11の表面の全長に亘って切断位置となる罫書き線14を描く。この罫書き線14は、製品厚鋼板12の幅寸法に基づいて決定される。そして、主切断トーチ3の位置合わせを行う。具体的には、厚鋼板11の長手方向端部11bにおいて、厚鋼板11の幅端部11aから所定の間隔離れた位置に主切断トーチ3を設置する。つまり、罫書き線14の位置に主切断トーチ3を設置する。
【0044】
工程2;主切断トーチ3が所定位置に設置されたなら、主切断トーチ3の火口3bから予熱炎を吹き出して厚鋼板11の長手方向端部11bの切断開始面を予熱する。一定時間加熱して、厚鋼板11の長手方向端部11bが切断開始温度(厚鋼板の場合は800℃以上)に達したら、主切断トーチ3で厚鋼板11を長手方向に切断する。具体的には、レール17の上で台車2を走行させ、主切断トーチ3を厚鋼板11に対して長手方向に移動させながら主切断トーチ3で厚鋼板11を切断する。これにより、厚鋼板11を製品厚鋼板12と耳くず13とに切り分ける(
図3-(1)を参照)。
【0045】
工程3;また、上記工程2の主切断トーチ3による切断と同時に、耳切りトーチ4及び耳切りトーチ位置検出センサー6を、伸縮アクチュエータを備えた耳切りトーチ支持軸10によって厚鋼板11の幅端部11aに向かう方向(y方向)に走査させ、耳切りトーチ4の切断開始点(耳切り開始点)の座標を検出する(
図3-(1)を参照)。
【0046】
図4に、耳切りトーチ4の切断開始点(耳切り開始点)の検出方法を示す。先ず、耳切りトーチ位置検出センサー6の走査開始位置y
0から幅端部11aに向かう方向(y方向)に、耳切りトーチ位置検出センサー6を走査させる。この時、耳切りトーチ位置検出センサー6は、厚鋼板11と耳切りトーチ位置検出センサー6との間の距離d
1を検出する。更に、y方向に耳切りトーチ位置検出センサー6を走査させると、厚鋼板11の幅端部11aの位置、つまり、位置y
1を通過した以降は、耳切りトーチ位置検出センサー6は床面18と耳切りトーチ位置検出センサー6との間の距離d
2を検出する。耳切りトーチ位置検出センサー6により計測される距離計測値が、距離d
1から距離d
2に変化した際の位置y
1を切断開始点として記録する。
図4において、符号19は、厚鋼板を置くための設置台である。
【0047】
工程4;検出した切断開始面の座標において、耳切りトーチ4の火口4bから予熱炎を吹き出して切断開始面を予熱する(
図3-(2)を参照)。一定時間加熱して、厚鋼板11の幅端部11aが切断開始温度(厚鋼板の場合は800℃以上)に達したら、耳切りトーチ4の火口4bから切断用酸素気流を吹き付けて耳くず13の小切りを開始する。予熱炎による予熱時間は、一例として10秒程度とする。
【0048】
工程5;主切断トーチ3による切断を続けつつ、耳切りトーチ4を、伸縮アクチュエータを備えた耳切りトーチ支持軸10によって幅端部11aの側から主切断トーチ3による切断溝15の方向へ向けて移動させて、耳くず13の切断を実行する(
図3-(3)を参照)。
【0049】
工程6;耳切りトーチ4が、主切断トーチ3と同じy軸座標まで到達したなら、つまり、切断溝15まで到達したなら、耳切りトーチ4からの切断用酸素気流の吹き付けを停止して、耳くず13の切断を終了する(
図3-(4)を参照)。
【0050】
工程7;台車2がx方向に一定距離走行後に、工程1に戻り、耳くず13の切断を繰り返して実施する。主切断トーチ3による厚鋼板11の長手方向の切断が完了すると、厚鋼板11は製品厚鋼板12と耳くず13とに切り分けられる。
【0051】
以上説明したように、本発明に係る金属板の切断装置1によれば、主切断トーチ3と耳切りトーチ4との2本のトーチを備えることにより、厚鋼板(金属板)11の長手方向の切断と同時に、耳くず13の自動小切りが可能になり、手作業による耳くず13の小切りが不要になる。
【0052】
また、厚鋼板(金属板)11の長手方向の切断と耳くず13の小切りとを同時に実施するので、耳くず13を小切りするための切断時間によって切断時間全体が延長されることはなく、効率的に耳くず13の小切りを達成できる。
【0053】
また、耳くず13の切断に際して、耳切りトーチ位置検出センサー6によって耳切りトーチ4の位置を検出するので、厚鋼板(金属板)11の幅端部11a上、及び、切断溝15上における耳切りトーチ4の位置精度を高めることができる。これにより、耳切りトーチ4による耳くず13の切断精度を高めることができ、製品厚鋼板(製品金属板)12の切断面を傷つけることなく、耳くず13を切断することができる。
【0054】
更に、耳くず13の切断に際して、厚鋼板(金属板)11の幅端部11aを予熱し、その後、厚鋼板(金属板)11の幅端部11a側から切断溝15の方向に向かって耳くず13を切断するので、つまり、長手方向切断の切断溝15上で予熱を行わないので、長手方向切断の切断溝15を予熱した後に長手方向切断の切断溝15側から厚鋼板(金属板)11の幅端部11aに向かって耳くずを切断する方法に比べて、製品厚鋼板(製品金属板)12の切断面を傷つけることなく切断可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 切断装置
2 台車
3 主切断トーチ
3a 吹管
3b 火口
4 耳切りトーチ
4a 吹管
4b 火口
5 主切断トーチ位置検出センサー
6 耳切りトーチ位置検出センサー
7 主切断トーチ基台
8 耳切りトーチ基台
9 主切断トーチ支持軸
10 耳切りトーチ支持軸
11 厚鋼板(金属板)
11a 幅端部
11b 長手方向端部
12 製品厚鋼板(製品金属板)
13 耳くず
14 罫書き線
15 主切断トーチによる切断溝
16 耳切りトーチによる切断溝
17 レール
18 床面
19 設置台