特開 2022-86258 タイヤの製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022086258

(43)【公開日】2022-06-09

(54)【発明の名称】タイヤの製造方法

(51)【国際特許分類】

   B29D 30/38 20060101AFI20220602BHJP

   B29C 43/24 20060101ALI20220602BHJP

【ＦＩ】

B29D30/38

B29C43/24

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2020198169

(22)【出願日】2020-11-30

(71)【出願人】

【識別番号】000183233

【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000556

【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】緒方 賢一郎

【テーマコード（参考）】

4F204

4F215

【Ｆターム（参考）】

4F204AA45

4F204AC05

4F204AD03

4F204AD15

4F204AG01

4F204AH20

4F204AM35

4F204FA06

4F204FB02

4F204FB20

4F204FF05

4F204FF23

4F204FQ35

4F204FW41

4F215AH20

4F215VD07

4F215VD17

4F215VD19

(57)【要約】

【課題】簡易に帯状材料の反りを抑制する、タイヤの製造方法の提供。
【解決手段】このタイヤの製造方法は、（Ａ）残留トーションが第一公差を満たすコード２４を幅方向センター領域に並べ、残留トーションが第一公差より狭い第二公差を満たすコード２４を幅方向サイド領域に並べ、多数のコード２４が幅方向に並べられたコード群２８を得る工程、及び（Ｂ）コード群２８をゴム組成物で覆い、タイヤ用帯状材料２６を得る工程を含む。好ましくは、この製造方法は、前記工程（Ａ）に先立って、（Ｃ）多数のコード２４から残留トーションが第二公差を満たすコード２４を取り分ける工程を含む。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

（Ａ）残留トーションが第一公差を満たすコードを幅方向センター領域に並べ、残留トーションが前記第一公差より狭い第二公差を満たすコードを幅方向サイド領域に並べ、多数のコードが幅方向に並べられたコード群を得る工程
及び
（Ｂ）前記コード群をゴム組成物で覆い、タイヤ用帯状材料を得る工程
を含む、タイヤの製造方法。

【請求項2】

前記工程（Ａ）に先立って、
（Ｃ）多数のコードから残留トーションが前記第二公差を満たすコードを取り分ける工程
を含む、請求項１に記載のタイヤの製造方法。

【請求項3】

（Ｄ）前記帯状材料を加工し帯状部材を得る工程
（Ｅ）前記帯状部材と他のゴム部材とを組み合わせてローカバーを得る工程
及び
（Ｆ）前記ローカバーを加熱及び加圧し前記ローカバーからタイヤを得る工程
を含む、請求項１又は２に記載のタイヤの製造方法。

【請求項4】

（Ｇ）幅方向センター領域に並べられるコードの残留トーションの平均値より、幅方向サイド領域に並べられるコードの残留トーションの平均値が小さくなる様に多数のコードを幅方向に並べ、コード群を得る工程
及び
（Ｈ）前記コード群をゴム組成物で覆い、タイヤ用帯状材料を得る工程
を含む、タイヤの製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、タイヤの製造方法に関する。

【背景技術】

【0002】

図４には、タイヤ材料としての帯状材料２の一例が示されている。帯状材料２は、並列に並べられた多数のコード４とこれらのコード４を覆うトッピングゴム６とを備える。この帯状材料２が加工され、帯状材料２からタイヤ用帯状部材が得られる。

【0003】

図４の帯状材料２の切断部には、厚さ方向に起き上がる反り２Ａが生じている。この反り２Ａは俗にカールとも称される。この様な反り２Ａは、タイヤ用帯状部材への加工を阻害する。この反り２Ａは、タイヤの生産性を阻害する。

【0004】

特許文献１（特開２０１６－１４１０７５公報）には、反り２Ａの発生が抑制された帯状材料の製造方法が開示されている。この製造方法では、コードの引き出しテンションが設定範囲を外れたときに、引き出しテンションが調整される。この引き出しテンションを調整することで、反りの発生が抑制される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２０１６－１４１０７５公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

この製造方法は、引き出しテンションの監視が必要とされる。この引き出しテンションの調整が必要とされる。本発明の目的は、簡易にタイヤ用帯状材料の反りを抑制できる、タイヤの製造方法の提供にある。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明に係るタイヤの製造方法は、
（Ａ）残留トーションが第一公差を満たすコードを幅方向センター領域に並べ、残留トーションが前記第一公差より狭い第二公差を満たすコードを幅方向サイド領域に並べ、多数のコードが幅方向に並べられたコード群を得る工程
及び
（Ｂ）前記コード群をゴム組成物で覆い、タイヤ用帯状材料を得る工程
を含む。

【0008】

好ましくは、このタイヤの製造方法は、前記工程（Ａ）に先立って、
（Ｃ）多数のコードから残留トーションが前記第二公差を満たすコードを取り分ける工程
を含む。

【0009】

好ましくは、このタイヤの製造方法は、
（Ｄ）前記帯状材料を加工し帯状部材を得る工程
（Ｅ）前記帯状部材と他のゴム部材とを組み合わせてローカバーを得る工程
及び
（Ｆ）前記ローカバーを加熱及び加圧し前記ローカバーからタイヤを得る工程
を含む。

【0010】

本発明に係る他のタイヤの製造方法は、
（Ｇ）幅方向センター領域に並べられるコードの残留トーションの平均値より、幅方向サイド領域に並べられるコードの残留トーションの平均値が小さくなる様に多数のコードを幅方向に並べ、コード群を得る工程
及び
（Ｈ）前記コード群をゴム組成物で覆い、タイヤ用帯状材料を得る工程
を含む。

【発明の効果】

【0011】

本発明に係るタイヤの製造方法では、帯状材料のサイド領域におけるコードの、残留トーションのばらつきが小さい。この帯状材料では、反りの発生が抑制されている。この製造方法は、簡易にタイヤの生産性を向上しうる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】図１は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法のための製造設備が示された概念図である。

【図2】図２は、図１の矢印IIの向きに見られたコード群が示された平面図である。

【図3】図３は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法の説明図である。

【図4】図４は、従来の帯状材料の反りが示された説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。

【0014】

図１に示された製造設備１０は、支持台１２、整列ロール１４、ロール１６、カレンダー１８及びロール２０を備える。図１には、製造設備１０と共に、多数のスプール２２、多数のコード２４及び帯状材料２６が示されている。このコード２４は、例えば、スチールコードである。このコード２４は撚り線であってもよいし、単線であってもよい。図１の矢印Ｘは製造設備１０の前後方向前向きを表し、矢印Ｙは前後方向右向きを表し、矢印Ｚは上下方向上向きを表している。

【0015】

図１では、整列ロール１４とカレンダー１８との間で、多数のコード２４が並列に並べられている。多数のコード２４は、前後方向を長手方向にし、左右方向を幅方向にして並べられている。この様に、並列に並べられた多数のコード２４は、コード群２８とも称される。このコード群２８では、多数のコード２４は幅方向において等間隔に並べられている。

【0016】

支持台１２は、スプール２２を保持する、多数の支持１２Ｃと多数の支持１２Ｓとを備える。図１では、支持１２Ｃ及び支持１２Ｓは、スプール２２を回転可能な状態で位置決めする機能を備える。

【0017】

整列ロール１４は、支持台１２とロール１６との間に位置している。整列ロール１４は、図示されないが、その外周面に複数の溝を備える。整列ロール１４はその軸線周りに回転可能である。ロール１６は、整列ロール１４とカレンダー１８との間に位置している。ロール１６は、その軸線周りに回転可能である。ロール２０は、カレンダー１８をロール１６との間にして位置している。ロール２０は、その軸線周りに回転可能である。

【0018】

カレンダー１８は、図示されないが、カレンダーロールを備える。このカレンダー１８は、コード群２８をゴム組成物で覆う機能を備える。

【0019】

図１の支持台１２では、支持１２Ｃは、整列ロール１４の軸方向内側にコード２４を供給できる様に、スプール２２を位置決めしている。支持１２Ｓは、整列ロール１４の軸方向外側にコード２４を供給できる様に、スプール２２を位置決めしている。

【0020】

図２には、図１の矢印IIの向きに見たコード群２８が示されている。図２の符号Ｃは、コード群２８のセンター領域を表す。図２の符号Ｓは、コード群２８の一対のサイド領域を表す。センター領域Ｃは、コード群２８の幅方向中央に位置する。それぞれのサイド領域Ｓは、幅方向においてセンター領域Ｃの外側に位置する。

【0021】

図３には、帯状材料２６からベルトプライを得る説明図が示されている。図３には、帯状材料２６から得られる二次材料３０と、多数の二次材料３０から得られる三次帯状材料３２とが示されている。三次帯状材料３２は、図示されないが、長手方向に傾斜して伸びる多数のコードを備える。図示されないが、この三次帯状材料３２から、ベルトプライが得られる。

【0022】

この製造設備１０を用いて、タイヤの製造方法が説明される。この製造方法では、スプール２２に巻回された多数のコード２４とゴム組成物が準備される（ＳＴＥＰ１）。多数のコード２４には、残留トーションが表示されている。それぞれの残留トーションは、第一公差を満たしている。

【0023】

多数のコード２４から、残留トーションが第一公差より狭い第二公差を満たすコード２４が取り分けられる（ＳＴＥＰ２）。

【0024】

図１に示される様に、支持台１２の支持１２Ｃに、残留トーションが第一公差を満たすコード２４が巻回されたスプール２２を取り付ける。支持１２Ｓに、残留トーションが第二公差を満たすコード２４が巻回されたスプール２２を取り付ける（ＳＴＥＰ３）。

【0025】

それぞれのスプール２２からコード２４が引き出されて、整列ロール１４の溝に案内されて、並列に並べられる（ＳＴＥＰ４）。図２に示される様に、コード群２８のセンター領域Ｃに、残留トーションが第一公差を満たすコード２４が並べられる。コード群２８のサイド領域Ｓに、残留トーションが第二公差を満たすコード２４が並べられる。図１に示される様に、このコード群２８は、ロール１６を経て、カレンダー１８に送られる。

【0026】

カレンダー１８で、コード群２８がゴム組成物で覆われる。コード群２８とゴム組成物とから帯状材料２６が得られる（ＳＴＥＰ５）。帯状材料２６は、ロール２０を経て次工程に送られる。

【0027】

図３に示される様に、帯状材料２６は、その長手方向に斜めに切断され、帯状材料２６から二次材料３０が得られる（ＳＴＥＰ６）。複数の二次材料３０が接合され、三次帯状材料３２が得られる（ＳＴＥＰ７）。

【0028】

図示されないが、三次帯状材料３２が所定の長さに切断され、帯状部材としてのベルトプライが得られる（ＳＴＥＰ８）。このベルトプライと他のゴム部材とが組み合わされて、ローカバーが形成される（ＳＴＥＰ９）。ローカバーが加熱及び加圧され、ローカバーからタイヤが得られる（ＳＴＥＰ１０）。このタイヤでは、ベルトプライからタイヤのベルトが形成される。ベルトは、タイヤの半径方向において、トレッドとカーカスとの間に位置してカーカスを補強する。

【0029】

帯状材料２６の軸方向端部は、軸方向中央部に比べて変形に対する拘束力が弱い。帯状材料２６の切断部においても、軸方向端部で反りが生じ易い。この製造方法では、残留トーションが第二公差を満たすコード２４がコード群２８のサイド領域Ｓに並べられている。帯状材料２６の軸方向端部におけるコード２４の残留トーションのばらつきが小さい。工程（ＳＴＥＰ７）において、この帯状材料２６の切断端で、軸方向端部での反りの発生が抑制される。接合される二次材料３０の反りが抑制される。この二次材料３０は容易に接合できる。二次材料３０から三次帯状材料３２が容易に得られる。

【0030】

それぞれのサイド領域Ｓに属すコード２４の本数は特に限定されないが、このコード２４の本数が多い帯状材料２６では軸方向端部での反りが抑制される。この反りを抑制する観点から、サイド領域Ｓに属すコード２４の本数は、好ましくは幅方向端から２本以上の複数本であり、更に好ましくは３本以上であり、特に好ましくは４本以上である。

【0031】

一方で、サイド領域Ｓに属すコード２４の本数が多いコード群２８では、残留トーションが第二公差を満たすコード２４を確保することが容易でない。例えば、コード群２８のコード２４の本数に対する、それぞれのサイド領域Ｓに属すコード２４の本数の比が１５％であるとき、一対のサイド領域Ｓにコード群２８の全数の３０％のコード２４が並べられる。この比が小さいほど、第二公差を満たすコード２４が容易に準備できる。この観点から、コード群２８のコード２４の本数に対するそれぞれのサイド領域Ｓに属すコード２４の本数の比は、好ましくは１５％以下であり、更に好ましくは１０％以下であり、特に好ましくは５％以下である。

【0032】

この残留トーションは、コード２４の一端をフリーにした際のコード２４が有する単位長さ当たりの回転量である。この残留トーションの測定では、スプール２２に巻回されたコード２４の先端が折り曲げられる。折り曲げられた先端を回転不可の状態に保持しつつ、先端の折り曲げ点から単位長さのコード２４が、スプール２２から引き出される。引き出した後に先端を開放し、この先端の回転方向と回転量とが求められる。この単位長さは、５ｍである。先端側からスプール２２に向かって見て、時計回りの回転方向がプラスであり、反時計回りの回転方向がマイナスである。

【0033】

この製造方法では、多数のコード２４から、残留トーションが第二公差を満たすコード２４が取り分けられる。この取り分けられたコード２４が、サイド領域Ｓに並べられる。この製造方法では、同じ多数のコード２４を用いて、従来の製造方法に比べて、反りが抑制された帯状材料２６が安定的に得られる。この製造方法は、残留トーションが小さい特別なコード２４を別に準備しなくてもよい。

【0034】

この製造方法は、帯状材料２６の切断端で反りが生じることを抑制しうる。帯状材料２６を切断し帯状材料２６から二次材料３０が得られる。この二次材料３０の反りが抑制されている。この二次材料３０を接合することで、二次材料３０から三次帯状材料３２が得られる。そして、この三次帯状材料３２が所定の長さに切断され、三次帯状材料３２から帯状部材としてのベルトプライが得られる。この製造方法では、帯状材料２６の加工が容易である。この製造方法では、帯状材料２６からベルトプライが容易に得られる。

【0035】

第一公差に対する第二公差の比が小さいコード群２８は、帯状材料２６の反りを小さくする。この観点から、第一公差に対する第二公差の比は、好ましくは８０％以下であり、更に好ましくは５０％以下であり、特に好ましくは３０％以下である。

【0036】

本発明に係るタイヤ用帯状部材は、ベルトプライに限られない。この帯状部材は、多数のコード２４とこれらのコード２４を覆うゴム組成物とを含めばよい。この帯状部材は、例えば、コード２４を含むカーカスプライや補強プライであってもよい。

【0037】

一方で、スチールコード等金属コードを含む帯状材料２６では、特に反りが生じ易い。この観点から、この製造方法は、スチールコード等金属コードを含む、ベルトプライ、カーカスプライ及び補強プライの製造に特に適している。

【0038】

本発明に係るタイヤの製造方法では、必ずしも、第一公差や第二公差を設定する必要はない。コード群２８のサイド領域Ｓに残留トーションが小さいコード２４が並べられればよい。

【0039】

例えば、スプール２２に巻回された多数のコード２４とゴム組成物が準備される（ＳＴＥＰ１－１）。それぞれのコード２４の残留トーションが測定される（ＳＴＥＰ１－２）。それぞれのコード２４に、残留トーションが表示される（ＳＴＥＰ１－３）。

【0040】

センター領域Ｃに並べられる複数のコード２４の残留トーションの平均値より、サイド領域Ｓに並べられる複数のコード２４の残留トーションの平均値が小さくなる様に、多数のコード２４が幅方向に並べられる。この様にして多数のコード２４が幅方向に並べられたコード群２８が得られる（ＳＴＥＰ２’－４’）。

【0041】

この製造方法では、前述の工程（ＳＴＥＰ２）から工程（ＳＴＥＰ４）に代えて、工程（ＳＴＥＰ２’－４’）が実行される。この工程（ＳＴＥＰ２’－４’）で得られたコード群２８でも、帯状材料２６での反りの発生が抑制される。このコード群２８から得られた帯状材料２６でも、加工が容易にできる。

【実施例0042】

以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。

【0043】

［実施例１］
残留トーションの狙い値は、５ｍ当たり＋０．５回転であった。センター領域の残留トーションの下限値は５ｍ当たり－０．５回転であり、その上限値は５ｍ当たり＋１．５回転であった。センター領域の残留トーションの公差は、５ｍ当たりプラスマイナス１．０回転であった。また、サイド領域の残留トーションの下限値は５ｍ当たり＋０．２回転であり、その上限値は５ｍ当たり＋０．８回転であった。サイド領域の残留トーションの公差は、５ｍ当たりプラスマイナス０．３回転であった。この多数のコードから帯状材料が得られた。この帯状材料からベルトプライが得られた。

【0044】

［比較例１］
サイド領域の残留トーションの下限値は５ｍ当たり－０．５回転であり、その上限値は５ｍ当たり＋１．５回転であった。サイド領域の残留トーションの公差は、５ｍ当たりプラスマイナス１．０回転であった。その他は、実施例１と同様して帯状材料が得られた。この帯状材料からベルトプライが得られた。

【0045】

［実施例２］
サイド領域の残留トーションの下限値は５ｍ当たり０回転であり、その上限値は５ｍ当たり＋１．０回転であった。サイド領域の残留トーションの公差は、５ｍ当たりプラスマイナス０．５回転であった。その他は、実施例１と同様して帯状材料が得られた。この帯状材料からベルトプライが得られた。

【0046】

［反り評価］
帯状材料の切断端で反りの大きさが測定された。その平均値が求められた。表１に、その平均値が比較例１を１００とする指数で表されている。この指数が小さいほど、平均値が小さい。この指数が小さいほど、好ましい。

【0047】

［不具合評価］
帯状材料からベルトプライが得られる工程において、接合不良や切断不良の発生率が評価された。表１に、その発生率が比較例１を１００とする指数で表されている。この指数が小さいほど、発生率が小さい。この指数が小さいほど、好ましい。

【0048】

【表1】

【0049】

表１に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。

【産業上の利用可能性】

【0050】

以上説明された方法は、多数のスチールコードとこれらのスチールコードを覆うゴム組成物とからなる帯状材料を用いるタイヤの製造に広く適用されうる。

【符号の説明】

【0051】

２・・・帯状材料
２Ａ・・・反り
１０・・・製造設備
２４・・・コード
２６・・・帯状材料
２８・・・コード群

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】