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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086316
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/08 20060101AFI20220602BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
B60C5/08 A
B60C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198257
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】松波 翔
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA03
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC24
3D131CB11
3D131LA13
(57)【要約】
【課題】タイヤ内腔面にシーラント材が配された空気入りタイヤにおいて、ショルダー部やサイドウォール部において十分なエアシール効果を発揮させる。
【解決手段】空気入りタイヤであって、タイヤ内腔面1sに自己修復型のシーラント材10が配されている。タイヤ子午線断面において、タイヤ内腔面1sは、タイヤ軸方向に延びるトレッド内面2sと、サイドウォール内面3sとを含む。サイドウォール内面3sには、タイヤ走行時の遠心力に伴うシーラント材10のタイヤ半径方向外側への移動を妨げる収容空間16を備えた少なくとも一つのポケット部15が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
タイヤ内腔面に自己修復型のシーラント材が配されており、
タイヤ子午線断面において、前記タイヤ内腔面は、タイヤ軸方向に延びるトレッド内面と、前記トレッド内面からタイヤ半径方向内側に延びるサイドウォール内面とを含み、
前記サイドウォール内面には、タイヤ走行時の遠心力に伴う前記シーラント材のタイヤ半径方向外側への移動を妨げる収容空間を備えた少なくとも一つのポケット部が設けられている、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記収容空間には、予め前記シーラント材が配されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ポケット部は、タイヤ周方向に沿って延びている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ポケット部は、タイヤ全周に亘って延びている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ポケット部は、前記サイドウォール内面においてタイヤ回転軸を中心に渦巻状に配されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ポケット部は、前記タイヤ内腔面から延びるポケット壁を備え、
前記ポケット壁は、タイヤ半径方向内側を向いた開口部と、前記開口部からタイヤ半径方向外側に延びる前記収容空間とを規定する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ポケット壁を通るタイヤ子午線断面において、前記ポケット壁は、前記タイヤ内腔面からタイヤ軸方向内側に向かってタイヤ半径方向内側に傾斜している、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ポケット壁を通るタイヤ子午線断面において、前記ポケット壁の長さは、5~15mmである、請求項6又は7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記タイヤ内腔面と前記ポケット壁との間の角度は、15~60°である、請求項6ないし8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記ポケット壁の厚さは、0.5~3.0mmである、請求項6ないし9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記ポケット壁の複素弾性率E*は、2.0~6.0MPaである、請求項6ないし10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ポケット壁の複素弾性率E*は、前記タイヤ内腔面の複素弾性率E*と同じである、請求項6ないし11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記ポケット部は、タイヤ周方向に沿って延び、かつ、仕切り壁でタイヤ周方向に区分された複数の前記収容空間を含む、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ内腔面に自己修復型のシーラント材が配された空気入りタイヤが種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。前記シーラント材は、例えば、トレッド部に釘等の異物が刺さって穿孔が発生した場合に、これを塞ぐように固まり、タイヤから空気が抜けるのを防ぐことができる(以下、このような効果を「エアシール効果」という場合がある。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-018800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、タイヤ走行時においては、タイヤのトレッド部のみならず、ショルダー部やサイドウォール部にも釘等の異物が刺さるおそれがある。このため、ショルダー部及びサイドウォール部においても、シーラント材によってエアシール効果が発揮されるのが望ましい。したがって、シーラント材は、トレッド部の内腔面だけでなく、ショルダー部やサイドウォール部の内腔面にも配されているのが望ましい。
【0005】
しかしながら、ショルダー部やサイドウォール部の内腔面に配されたシーラント材は、タイヤ走行時の遠心力によってタイヤ半径方向外側に移動してしまい、ショルダー部やサイドウォール部において十分なエアシール効果が発揮されないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、タイヤ内腔面にシーラント材が配された空気入りタイヤにおいて、ショルダー部やサイドウォール部において十分なエアシール効果を発揮させることを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空気入りタイヤであって、タイヤ内腔面に自己修復型のシーラント材が配されており、タイヤ子午線断面において、前記タイヤ内腔面は、タイヤ軸方向に延びるトレッド内面と、前記トレッド内面からタイヤ半径方向内側に延びるサイドウォール内面とを含み、前記サイドウォール内面には、タイヤ走行時の遠心力に伴う前記シーラント材のタイヤ半径方向外側への移動を妨げる収容空間を備えた少なくとも一つのポケット部が設けられている。
【0008】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記収容空間には、予め前記シーラント材が配されているのが望ましい。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット部は、タイヤ周方向に沿って延びているのが望ましい。
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット部は、タイヤ全周に亘って延びているのが望ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット部は、前記サイドウォール内面においてタイヤ回転軸を中心に渦巻状に配されているのが望ましい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット部は、前記タイヤ内腔面から延びるポケット壁を備え、前記ポケット壁は、タイヤ半径方向内側を向いた開口部と、前記開口部からタイヤ半径方向外側に延びる前記収容空間とを規定するのが望ましい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット壁を通るタイヤ子午線断面において、前記ポケット壁は、前記タイヤ内腔面からタイヤ軸方向内側に向かってタイヤ半径方向内側に傾斜しているのが望ましい。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット壁を通るタイヤ子午線断面において、前記ポケット壁の長さは、5~15mmであるのが望ましい。
【0015】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記タイヤ内腔面と前記ポケット壁との間の角度は、15~60°であるのが望ましい。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット壁の厚さは、0.5~3.0mmであるのが望ましい。
【0017】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット壁の複素弾性率E*は、2.0~6.0MPaであるのが望ましい。
【0018】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット壁の複素弾性率E*は、前記タイヤ内腔面の複素弾性率E*と同じであるのが望ましい。
【0019】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ポケット部は、タイヤ周方向に沿って延び、かつ、仕切り壁でタイヤ周方向に区分された複数の前記収容空間を含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ショルダー部やサイドウォール部において十分なエアシール効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示すタイヤ子午線断面図である。
図2図1のサイドウォール内面の拡大斜視図である。
図3図1のサイドウォール内面を平面視した概略図である。
図4図1のポケット部の拡大断面図である。
図5】本発明の他の実施形態のポケット部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある。)1の正規状態におけるタイヤ子午線断面図である。本実施形態では、好ましい態様として、乗用車用の空気入りタイヤ1が示される。但し、本発明は、例えば、自動二輪車用や重荷重用の空気入りタイヤ1として採用されても良い。
【0023】
前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0024】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0025】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0026】
本実施形態のタイヤ1の内部には、カーカス6、ベルト層7及び空気非透過性のゴム材からなるインナーライナ9等のタイヤ構成部材が配されている。カーカス6は、一方側のビード部4から、一方側のサイドウォール部3、トレッド部2、他方側のサイドウォール部3を経て、他方側のビード部4に至る。カーカス6は、サイドウォール部3とトレッド部2との間の曲がった領域であるショルダー部5を通るのは言うまでもない。これらタイヤ構成部材には、公知の態様が適宜採用される。
【0027】
本発明のタイヤ1は、タイヤ内腔面1sに、自己修復型のシーラント材10が配されている。シーラント材10は、トレッド部2に発生した穿孔を埋めるための粘着性を有している。シーラント材10は、例えば、トレッド部2に釘等の異物が刺さって穿孔が発生した場合に、これを塞ぐように固まり、タイヤから空気が抜けるのを防ぐことができる。シーラント材10には、公知の材料が用いられ、ここでの説明は省略される。
【0028】
また、タイヤ子午線断面において、タイヤ内腔面1sは、タイヤ軸方向に延びるトレッド内面2sと、トレッド内面2sからタイヤ半径方向内側に延びるサイドウォール内面3sとを含む。本発明のタイヤ1は、サイドウォール内面3sにシーラント材10が配されている。また、本実施形態のタイヤ1は、従来と同様、トレッド内面2sにもシーラント材10が配されている。
【0029】
図2には、サイドウォール内面3sの拡大斜視図が示されている。図2では矢印aがタイヤ半径方向に相当し、矢印bがタイヤ周方向に相当する。また、図2で示されるサイドウォール内面3sは、図1とは上下を逆転して示されている。すなわち、図2の上側がタイヤ半径方向内側に相当し、図2の下側がタイヤ半径方向外側に相当する。また、発明を理解し易いように、図2において、シーラント材10の外面はドットで着色されている。図2に示されるように、サイドウォール内面3sには、タイヤ走行時の遠心力に伴うシーラント材10のタイヤ半径方向外側への移動を妨げる収容空間16を備えた少なくとも一つのポケット部15が設けられている。上記の構成を採用したことによって、ショルダー部5やサイドウォール部3(図1に示され、以下、同様である。)において十分なエアシール効果を発揮させることができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0030】
ショルダー部5やサイドウォール部3で十分にエアシール効果を発揮させるためには、これらの内腔面にシーラント材が配されている必要がある。しかしながら、従来のタイヤにおいて、ショルダー部やサイドウォール部の内腔面に配されたシーラント材は、タイヤ走行時の遠心力によってタイヤ半径方向外側に移動してしまう傾向がある。本発明では、サイドウォール内面3sにポケット部15が設けられることにより、シーラント材10のタイヤ半径方向外側への移動が妨げられ、ショルダー部5及びサイドウォール部3において十分なエアシール効果が発揮されると考えられる。
【0031】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。なお、以下で説明されるポケット部15の各寸法は、タイヤがリム組みされず、かつ、2つのビードコア間の距離が前記正規状態と同じとされ、しかも、無負荷の状態における寸法を指すものとする。
【0032】
図1に示されるように、収容空間16には、予めシーラント材10が配されているのが望ましい。これにより、シーラント材10のタイヤ半径方向外側への移動が確実に妨げられ、ショルダー部5及びサイドウォール部3において優れたエアシール効果が発揮される。
【0033】
サイドウォール部3及びショルダー部5で確実にエアシール効果を発揮させるため、ポケット部15は、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向内側にまで配されているのが望ましい。また、ポケット部15は、少なくとも、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側にまで配されているのが望ましい。
【0034】
図3には、サイドウォール内面3sを平面視した概略図が示されている。図3では、ドットで着色された領域がポケット部15を示している。図3に示されるように、ポケット部15は、タイヤ周方向に沿って延びており、望ましい態様ではタイヤ全周に亘って延びている。これにより、シーラント材10が収容空間16からタイヤ周方向にこぼれることを防ぐことができる。
【0035】
さらに望ましい態様として、本実施形態のポケット部15は、サイドウォール内面3sにおいてタイヤ回転軸1cを中心に渦巻状に配されている。このようなポケット部15は、サイドウォール内面3sの全体においてエアシール効果を向上させる。また、ポケット部15が渦巻状に配された場合、シーラント材10の塗布工程において、シーラント材10を収容空間16に連続的に塗布することができ、タイヤの生産性が向上する。
【0036】
タイヤ半径方向で隣り合うポケット部15の間隔は、要求されるエアシール効果やシーラント材10の粘度(遠心力による移動のし難さ)、タイヤの製造コスト等を考慮の上、適宜決定される。本実施形態において、前記間隔は、例えば、1列のポケット部15のタイヤ半径方向の長さよりも小さく設定されている。
【0037】
図1に示されるように、望ましい態様では、タイヤ1の両側のサイドウォール内面3sに、互いに同一の配列でポケット部15が配されるのが望ましい。これにより、タイヤのユニフォミティが維持される。
【0038】
図4には、ポケット部15の拡大断面図が示されている。なお、図4において、シーラント材10は省略されている。図4に示されるように、ポケット部15は、タイヤ内腔面1sから延びるポケット壁20を備えている。ポケット壁20は、タイヤ内腔面1sからタイヤ軸方向内側に向かってタイヤ半径方向内側に傾斜している。これにより、ポケット壁20は、タイヤ半径方向内側を向いた開口部21と、開口部21からタイヤ半径方向外側に延びる収容空間16とを規定している。
【0039】
タイヤ内腔面1sとポケット壁20との間の角度θ1は、例えば、10~70°であり、望ましくは15~60°である。このようなポケット壁20は、十分な収容空間16を確保でき、かつ、タイヤの遠心力によるタイヤ軸方向内側への倒れ込みを抑制できる。なお、前記角度θ1は、ポケット壁20の長さ方向の中心位置よりも先端20a側の内壁面20iと、タイヤ内腔面1sとの間の角度を意味する。
【0040】
本実施形態のポケット壁20は、例えば、根元20bから延びる第1部分26と、タイヤ半径方向に対する角度が第1部分26よりも小さい第2部分27とを含んでいる。第1部分26と第2部分27との間の角度は、例えば、150~170°である。このようなポケット壁20は、タイヤの遠心力によっても変形し難くなる。
【0041】
同様の観点から、ポケット壁20を通るタイヤ子午線断面において、ポケット壁20の長さL1は、例えば、3~20mmであり、望ましくは5~15mmである。なお、前記長さは、ポケット壁20の根元20bからタイヤ半径方向内側の先端20aまでの、ポケット壁20の厚さを2等分する中心線20cに沿った所謂ペリフェリ長さを意味する。
【0042】
ポケット壁20の厚さは、前記根元20bから先端20aに向かって連続的に小さくなっているのが望ましい。これにより、タイヤの遠心力によるポケット壁20の変形が抑制される。また、ポケット壁20は、その根元20bにおいて最大の厚さt1が形成されている。前記厚さt1が小さいと、ポケット壁20が変形し易くなり、シーラント材10が収容空間16から排出される場合がある。逆に、前記厚さt1が大きいと、ポケット壁20の剛性が過度に高められ、釘等の異物が刺さったときに、前記異物に付着したシーラント材10に悪影響を与え、エアシール効果を損ねる場合がある。また、前記厚さt1が大きいと、タイヤ重量を過度に増加させるおそれがある。このような観点から、前記厚さt1は、例えば、0.5~4.0mmであり、望ましくは0.5~3.0mmである。
【0043】
ポケット壁20は、例えば、タイヤ内腔面1sを構成するインナーライナ9(図1に示す)と同じゴムで構成されている。したがって、ポケット壁20の複素弾性率E*は、タイヤ内腔面1sの複素弾性率E*と同じである。これにより、タイヤ内腔面1sからポケット壁20が剥がれるのを防ぐことができ、かつ、タイヤの生産性が向上し得る。なお、前記複素弾性率E*は、JIS-K6394の規定に準じて、次に示される条件で、株式会社岩本製作所製の「粘弾性スペクトロメータ」を用いて測定した値である。
初期歪み:10%
振幅:±1%
周波数:8Hz
変形モード:伸張
測定温度:80℃
【0044】
図5には、他の実施形態のポケット部15の拡大斜視図が示されている。図5は、図2と同様、矢印aがタイヤ半径方向に相当し、矢印bがタイヤ周方向に相当する。また、図5で示されるサイドウォール内面3sは、図1とは上下を逆転して示されている。また、図5において、シーラント材10の外面はドットで着色されている。図5に示されるように、この実施形態のポケット部15は、タイヤ周方向に沿って延び、かつ、仕切り壁28でタイヤ周方向に区分された複数の収容空間16を含む。このような仕切り壁28は、ポケット部15の剛性を高めてその変形を抑制し、かつ、シーラント材10の流動を抑制することができる。
【0045】
仕切り壁28のタイヤ周方向の配置ピッチは、特に限定されるものではないが、ポケット部15の剛性を確実に高める観点から、ポケット部15の開口幅の1.0~3.0倍とされるのが望ましい。
【0046】
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、例えば、通常の方法でタイヤを製造し、そのサイドウォール内面3sにポケット部15を貼り付け、収容空間16にシーラント材10を配することで製造できる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0048】
図1の基本構造を有しかつ表1~2の仕様に基づいたサイズ215/55R17の空気入りタイヤが製造され、また、比較例として、サイドウォール内面にポケット部を有しないタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上記の事項を除き、実施例のタイヤと実質的に同じである。また、サイドウォール内面に塗布されたシーラント材の平均厚さは、いずれのテストタイヤも3.0mmである。これらのテストタイヤについて、エアシール性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:17×7.5J
タイヤ内圧:250kPa
【0049】
<エアシール性能>
テストタイヤをドラム上で縦荷重4.6kN負荷させて200km/hの速度で1時間走行させた。その後、ショルダー部及びサイドウォール部に釘(長さ50mm、直径3.05mm)が20本打ち込まれた後、釘が除去され、シーラント材によるエアシール効果が発揮された箇所(空気漏れが止まった箇所)の数が測定された。結果は、前記数が大きい程、ショルダー部及びサイドウォール部において優れたエアシール性能が発揮されていることを示す。
テストの結果が表1~2に示される。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1~2に示されるように、実施例のタイヤは、ショルダー部及びサイドウォール部において十分なエアシール効果を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0053】
1s タイヤ内腔面
2s トレッド内面
3s サイドウォール内面
10 シーラント材
15 ポケット部
16 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5