(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086556
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】受電装置および電力制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20220602BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220602BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20220602BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20220602BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H02J7/10 H
H02J7/00 301D
H02J50/12
H02J7/04 A
B63C11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198635
(22)【出願日】2020-11-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度「(海中移動体へ大電力を送る革新的ワイヤレス給電に関する研究)」の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 達雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 修一郎
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA02
5G503CA10
5G503DA16
5G503DA19
5G503GB03
5G503GB08
5G503GD03
(57)【要約】
【課題】筐体の外周を磁性体で包囲した場合でも、水中において受電装置における磁気飽和の発生を抑制し、送電装置からの電力の伝送効率を向上する。
【解決手段】受電装置は、水中を移動可能であり、外周が磁性体で包囲された筐体を有する。受電装置は、送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部と、蓄電池を有し、受電部で受電された電力に基づいて蓄電池を充電する電源部と、電源部の動作中の電力値を繰り返して検出する電力検出部と、電力検出部により検出された電力値と、前回に電力検出部により検出された電力値との比較結果に基づいて、電源部を作動させる制御電流値を決定し、決定された制御電流値に基づく電源部の作動を制御する受電側プロセッサと、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を移動可能であり、外周が磁性体で包囲された筐体を有する受電装置であって、
送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部と、
蓄電池を有し、前記受電部で受電された電力に基づいて前記蓄電池を充電する電源部と、
前記電源部の動作中の電力値を繰り返して検出する電力検出部と、
前記電力検出部により検出された電力値と、前回に前記電力検出部により検出された電力値との比較結果に基づいて、前記電源部を作動させる制御電流値を決定し、決定された前記制御電流値に基づく前記電源部の作動を制御する受電側プロセッサと、を備える、
受電装置。
【請求項2】
前記電力検出部は、前記電源部の動作中の電力値を周期的に検出し、
前回に前記電力検出部により検出された電力値は、所定周期の1周期前に検出された電力値である、
請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記電源部の動作中の電流値を繰り返して検出する電流検出部、をさらに備え、
前記受電側プロセッサは、前記電流検出部により検出された電流値を基準として前記制御電流値を増減させる、
請求項1に記載の受電装置。
【請求項4】
前記受電側プロセッサは、前回の前記制御電流値を増加させかつ前記電力検出部により検出された電力値が前回検出された電力値より大きい場合に、前記電流検出部により検出された電流値を所定量ほど増加させる、
請求項3に記載の受電装置。
【請求項5】
前記受電側プロセッサは、前回の前記制御電流値を増加させかつ前記電力検出部により検出された電力値が前回検出された電力値より小さい場合に、前記電流検出部により検出された電流値を所定量ほど減少させる、
請求項3に記載の受電装置。
【請求項6】
前記受電側プロセッサは、前回の前記制御電流値を減少させかつ前記電力検出部により検出された電力値が前回検出された電力値より大きい場合に、前記電流検出部により検出された電流値を所定量ほど減少させる、
請求項3に記載の受電装置。
【請求項7】
前記受電側プロセッサは、前回の前記制御電流値を減少させかつ前記電力検出部により検出された電力値が前回検出された電力値より小さい場合に、前記電流検出部により検出された電流値を所定量ほど増加させる、
請求項3に記載の受電装置。
【請求項8】
水中を移動可能であり、外周が磁性体で包囲された筐体を有する受電装置が行う電力制御方法であって、
送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電し、
蓄電池を有する電源部において受電された電力に基づいて前記蓄電池を充電し、
前記電源部の動作中の電力値を繰り返して検出し、
検出された電力値と、前回検出された電力値との比較結果に基づいて、前記電源部を作動させる制御電流値を決定し、
決定された前記制御電流値に基づく前記電源部の作動を制御する、
電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受電装置および電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中において、受電装置(例えば水中航走体)との間で磁気共鳴方式を用いて非接触で電力を伝送する送電装置(例えば水中基地局)が開示されている。この送電装置は、送電用共鳴コイルと、風船と、風船制御機構とを備える。送電用共鳴コイルは、磁界共鳴方式により受電装置の受電用共鳴コイルに非接触で電力を伝送する。風船は、送電用共鳴コイルを内包する。風船制御機構は、風船を電力伝送時に膨張させることにより、送電用共鳴コイルと受電用共鳴コイルとの間の水を排除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、水中での送電装置から受電装置へ電力を伝送することを想定した場合、一般的に自立型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)等の水中航走体(つまり受電装置)の筐体には、弱磁性体(非磁性体)であるアルミニウムが使用される。この筐体の側面に線材を巻き付けて受電コイルを成形した場合、弱磁性体であるアルミニウムの有する導電性によってインダクタンスが低下し、Q値が低下する。この問題を解決するため、強磁性材料で形成された磁性体で受電装置の筐体の外周を包囲する構成により、渦電流損を軽減し電力伝送効率を高めることが可能となる。
【0005】
しかし、上述した構成を採用する場合、受電装置の受電電力が増加すると磁性体の磁気飽和の現象によって渦電流損の軽減効果が阻害されてしまい、結果的に受電装置への電力伝送効率が低下するという課題があった。特に水中(例えば海中)での受電装置へのワイヤレス給電においては受電装置に搭載される充電電池のインピーダンス、もしくは移動体としての受電装置のポジションフリーに基づくコイル結合係数の変動等により、受電装置における電源のインピーダンスが変動し易くなるため上述した磁気飽和を起こさない条件を求めること自体が困難であった。
【0006】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、筐体の外周を磁性体で包囲した場合でも、水中において受電装置における磁気飽和の発生を抑制し、送電装置からの電力の伝送効率を向上する受電装置および電力制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、水中を移動可能であり、外周が磁性体で包囲された筐体を有する受電装置であって、送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部と、蓄電池を有し、前記受電部で受電された電力に基づいて前記蓄電池を充電する電源部と、前記電源部の動作中の電力値を繰り返して検出する電力検出部と、前記電力検出部により検出された電力値と、前回に前記電力検出部により検出された電力値との比較結果に基づいて、前記電源部を作動させる制御電流値を決定し、決定された前記制御電流値に基づく前記電源部の作動を制御する受電側プロセッサと、を備える、受電装置を提供する。
【0008】
また、本開示は、水中を移動可能であり、外周が磁性体で包囲された筐体を有する受電装置が行う電力制御方法であって、送電装置からワイヤレスで伝送された電力を受電し、蓄電池を有する電源部において受電された電力に基づいて前記蓄電池を充電し、前記電源部の動作中の電力値を繰り返して検出し、検出された電力値と、前回検出された電力値との比較結果に基づいて、前記電源部を作動させる制御電流値を決定し、決定された前記制御電流値に基づく前記電源部の作動を制御する、電力制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、筐体の外周を磁性体で包囲した場合でも、水中において受電装置における磁気飽和の発生を抑制でき、送電装置からの電力の伝送効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る水中給電システムが設置される使用環境例を模式的に示す図
【
図2A】水中航走体の外観の一例を模式的に示す斜視図
【
図2B】
図2Aの矢印F-F方向から見た水中航走体の断面およびその一部の拡大部分を示す図
【
図2C】
図2Aの矢印G-G方向から見た水中航走体の断面およびその一部の拡大部分を示す図
【
図3】実施の形態1に係る水中給電システムのハードウェア構成例を示す図
【
図4】受電側プロセッサの機能構成例を示すブロック図
【
図5】受電装置における負荷電流に対するインピーダンスの推移を示す特性の一例を示すグラフ
【
図6】受電装置におけるインピーダンスに対するコイル電流の推移を示す特性の一例を示すグラフ
【
図7】受電装置における負荷電流に対する負荷電力の推移を示す特性の一例を示すグラフ
【
図8】実施の形態1に係る受電装置の電力制御の動作手順例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る受電装置および電力制御方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る水中給電システム1000が設置される使用環境例を模式的に示す図である。水中給電システム1000は、送電装置100と、受電装置200と、複数のコイルCLとを有する(
図3参照)。送電装置100は、受電装置200に対して、複数のコイルCLを介して、磁気共鳴方式に従ってワイヤレス(つまり無接点)で電力を伝送する。配置されるコイルCLの数は、n(n:2以上の整数)個であり、任意である。
【0013】
コイルCLは、例えば環状に形成され、樹脂のカバーにより被覆されることで絶縁される。コイルCLは、例えばキャブタイヤケーブル、ヘリカルコイル、あるいはスパイラルコイルにより形成される。ヘリカルコイルは、同一平面内ではなく、磁気共鳴方式による電力の伝送方向に沿って、螺旋状に巻回された環状のコイルである。スパイラルコイルは、同一平面内においてスパイラル形状に形成された環状のコイルである。スパイラルコイルの採用により、コイルCLの薄型化が可能となる。ヘリカルコイルの採用により、巻回されたコイルCLの内部の空間を広く確保できる。なお、
図1ではスパイラルコイルの例が図示されている。
【0014】
電力伝送に使用されるコイルCLは、送電コイルCLAおよび受電コイルCLBを含む。送電コイルCLAは、一次コイル(Primary Coil)である。受電コイルCLBは、二次コイル(Secondary Coil)である。コイルCLは、送電コイルCLAと受電コイルCLBとの間に配置された少なくとも1つの中継コイルCLC(Booster Coil)を含んでよい。中継コイルCLCは、送電コイルの一例である。中継コイルCLCが複数ある場合には、それぞれの中継コイルCLC同士は略平行に配置され、中継コイルCLCにより形成される開口面の半分以上が重なる。複数の中継コイルCLC間の間隔は、例えば中継コイルCLCの半径以上確保される。中継コイルCLCは、送電コイルCLAによる電力伝送を補助する。
【0015】
送電コイルCLAは、送電装置100に設けられる(
図3参照)。受電コイルCLBは、受電装置200に設けられる(
図3参照)。中継コイルCLCは、送電装置100に設けられても、受電装置200に設けられても、送電装置100および受電装置200とは別に設けられてもよい。中継コイルCLCは、一部が送電装置100に設けられ、他の一部が受電装置200に設けられてもよい。
【0016】
送電装置100は、その一部が船舶50に設置されてもよいし、その他の箇所(例えば陸上に設置された給電設備1200)に配置されてよい。受電装置200は、移動可能な水中航走体70(例えば潜水艇、水底掘削機)に設定されてよいし、固定的に設置される水中設備(例えば地震計、監視カメラ、地熱発電機)に設置されてもよい。
図1では、水中航走体70の一例として潜水艇が図示されている。各コイルCLは、水中(例えば海中)に配置されている。
【0017】
水中航走体70は、例えば遠隔操作無人探査機(ROV:Remotely Operated Vehicle)、無人潜水艇(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)、あるいは自立型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)でよい。
【0018】
船舶50の一部は、水面90(例えば海面)より上部つまり水上に存在し、船舶50の他の一部は、水面90よりも下部つまり水中(例えば海中)に存在する。船舶50は、水上(例えば海上)で移動可能であり、例えばデータ取得場所の水上(例えば海上)へ自由に移動可能である。船舶50に設置された送電装置100と送電コイルCLAとの間は、電力ケーブル280により接続される。電力ケーブル280は、水上のコネクタを介して、送電装置100内のドライバ151(
図3参照)と接続される。
【0019】
水中航走体70は、水中を潜行し、船舶50からの指示に基づいて所定のデータ取得ポイントへ自由に移動可能である。船舶50からの指示は、各コイルCLを介した通信により伝送されてもよいし、その他の通信方法により伝送されてもよい。
【0020】
各コイルCLは、例えば等間隔に配置される。隣り合うコイルCL間の距離(コイル間隔)は、例えば5mである。コイル間隔は、例えばコイルCLの直径の半分程度の長さである。伝送周波数は、水中(例えば海中)での磁界強度の減衰量を考慮すると、例えば40kHz以下であり10kHz未満とされることが好ましい。また、10kHz以上の送信周波数で電力伝送する場合には、電波法の規定に基づいて所定のシミュレーションを行う必要があり、10kHz未満の場合にはこの作業を省略できる。なお、伝送周波数が低周波であるほど、電力伝送距離が長くなり、コイルCLが大きくなり、コイル間隔が長くなる。なお、伝送周波数は、例えば通信信号が重畳される場合、40kHzよりも高い周波数でもよい。
【0021】
伝送周波数は、コイルCLのインダクタンス、コイルCLの直径、コイルのCLの巻き数等のコイル特性に基づき定まる。コイルCLの直径は、例えば数m~数10mである。また、コイルCLの太さが太い程、つまりコイルCLの線径が大きい程、コイルCLでの電気抵抗が減り、電力損失が小さくなる。また、コイルCLを介して伝送される電力は、例えば50W以上であり、kWオーダーでもよい。
【0022】
また、送電装置100は、コイルの線材が巻かれる、1つ以上のボビンbnを備えてよい。ボビンbnの材料は、非導電性あるいは弱磁性の材料(例えばポリ塩化ビニル、アクリル、ポリエステル等の樹脂)が用いられる。なお、ボビンbnの材料は、誘電性を有してもよい。例えば、ボビンbnの材料としてポリ塩化ビニルを用いると、安価で入手し易く、加工し易くなる。ボビンbnが非導電性を有することで、送電装置100は、コイルCLに流れる交流電流に起因して発生する磁界が、ボビンbnに吸収されることを抑制できる。
図1では、水中給電(例えば海中給電)を行うために、水中に浮遊するボビンbn10を含む給電スタンドと、海底に配置されたボビンbn11を含む給電スタンドとが設置されている。
【0023】
ボビンbn10を含む給電スタンドでは、筒状のボビンbn10の外周には、送電コイルCLA11および中継コイルCLC11が巻回されて配置されている。送電コイルCLA11には、電力ケーブル280が接続されており、海上に係留している船舶50から電力ケーブル280を介して電力が供給される。電力ケーブル280は、この給電スタンドを海中で浮遊状態に支持する。浮遊状態では、筒状のボビンbn10の両側の開口は、水平方向を向いてよい。水中航走体70は、浮遊状態にある給電スタンドの出入口に対し、水平方向に進入し、ボビンbn10の内部に留まって受電してよい。
【0024】
ボビンbn11を含む給電スタンドは、海底910に埋め込まれた2本の支柱1101の上部に固定される。この給電スタンドの出入口は、水平方向を向いてよい。給電スタンドでは、筒状のボビンbn11に送電コイルCLA12が巻回されて配置されているが、中継コイルCLCは配置されていない。送電コイルCLA12には、例えば海底910に這わされた電力ケーブル280Aが接続され、給電設備1200から電力ケーブル280Aを介して電力が供給されてよい。水中航走体70は、海底910に設置された給電スタンドの出入口に対し、水平方向に進入し、ボビンbn11の内部に留まって受電してよい。
【0025】
ここで、実施の形態1に係る水中航走体70の筐体の外周には、その外周全域を覆うように磁性体(後述参照)が設けられている。これは、水中航走体70(言い換えると受電装置200)における渦電流損を軽減して送電装置100からの電力伝送効率を高めるためである。
【0026】
次に、
図2A~
図2Cを参照して、水中航走体70と磁性体との位置関係について説明する。
図2Aは、水中航走体70の外観の一例を模式的に示す斜視図である。
図2Bは、
図2Aの矢印F-F方向から見た水中航走体70の断面およびその一部の拡大部分を示す図である。
図2Cは、
図2Aの矢印G-G方向から見た水中航走体70の断面およびその一部の拡大部分を示す図である。
【0027】
水中航走体70は、透磁率の高い磁性体(つまり強磁性体)であるコア850と、コア850を巻回するように配置された受電コイルCLBとを含む構造を有する。コア850は、水中航走体70の筐体(例えばアルミニウム等の弱磁性体851)とその筐体の周囲に巻回される磁性体(例えばフェライト852)とにより構成されてよい。コア850は、水中航走体70の筐体を模した円柱状の弱磁性体の側面に磁性材料を貼ることで成形されてよい。なお、磁性体は、円柱状の弱磁性体の側面に沿うように筒状に成形されてよいし、弱磁性体の側面に貼られるようにシート状に成形されてもよい。また、磁性体は、円柱状の弱磁性体の側面(例えば水中航走体70の筐体の側面)に限らず、その前面(例えば水中航走体70の筐体の前面)と背面(例えば水中航走体70の筐体の背面)に貼られてもよい。円柱状の弱磁性体には、例えば、軽くて錆びにくく切削し易いアルミニウムが用いられる。なお、弱磁性体としては、アルミニウムに限らず、ステンレス、チタン、樹脂等が用いられてもよい。また、磁性材料の一例として、実施の形態1では厚さ2mmのフェライト852が用いられる。フェライトは、電気を通しにくいので、磁界が発生しても発熱が少なく、錆びないので取り扱い易い。なお、磁性材料(強磁性材料)として、フェライトに限らず、ケイ素鋼板あるいはパーマロイ等を用いることも可能である。なお、強磁性材料は、弱磁性材料よりも透磁率が高いことを示す。
【0028】
受電コイルCLBの内側にコア850を設けた場合、送電コイルCLAあるいは中継コイルCLCで発生する磁界は、コア850を形成するフェライト852の内部に集中するとともに、発生した磁界によって、フェライト852の内部に磁束を生じさせる。これにより、水中航走体70では、受電コイルCLBの内側に多くの磁力線が集まり、送電装置100からの電力伝送効率の低下を抑えている。
【0029】
中継コイルCLCの内側に水中航走体70が進入し、中継コイルCLCと受電コイルCLBとが略同一平面上で対向した位置に到達すると、水中において無線給電が開始される。なお、中継コイルCLCでなく、送電コイルCLA側からの送電コイルCLAの内側に水中航走体70が進入した場合も同様であり、送電コイルCLAと受電コイルCLBとが略同一平面上で対向した位置に到達すると、水中において無線給電が開始される。
【0030】
受電コイルCLBは、例えば10回巻きの電線856を被覆材855で密閉することで成形される。被覆材855は、絶縁性、弾力性、耐候性を有する材料であればよく、ここではゴムが用いられてよい。水中航走体70は、コア850の外周に、成形された受電コイルCLBを装着することで一体化される。コア850の外周と受電コイルCLBの被覆材855との接触面には、これらが分離しないように接着材が塗布されてよい。なお、接着剤による接着以外の方法で、コア850と受電コイルCLBとの一体化が行われてもよい。
【0031】
図3は、実施の形態1に係る水中給電システム1000のハードウェア構成例を示す図である。前述したように、水中給電システム1000は、送電装置100と、受電装置200と、複数のコイルCLとを有する。
【0032】
送電装置100は、AC電源110と、ADC(AC/DC Converter)120と、送電側プロセッサ130と、送電回路150とを備える。
【0033】
ADC120は、送電用電源の一例としてのAC電源110から供給される交流電力を直流電力に変換する。変換された直流電力は、送電回路150へ送られる。
【0034】
送電側プロセッサ130は、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いて構成され、送電装置100の各部(例えばAC電源110、ADC120、送電回路150)の動作を統括して制御する。
【0035】
送電回路150は、ドライバ151、共振回路152、整合回路153を含む。ドライバ151は、ADC120からの直流電力を所定の周波数の交流電圧(例えばパルス波形)に変換する。共振回路152は、コンデンサCAと送電コイルCLAとを含んで構成され、ドライバ151からのパルス波形の交流電圧から正弦波波形の交流電圧を生成する。送電コイルCLAは、ドライバ151から印加される交流電圧に応じて、所定の共振周波数で共振する。なお、送電コイルCLAは、整合回路153により、送電装置100の出力インピーダンスにインピーダンス整合される。
【0036】
なお、ドライバ151が変換することで得られる交流電圧の周波数は、送電装置100と受電装置200との間での電力伝送の伝送周波数に相当し、共振周波数に相当する。伝送周波数は、例えば、各コイルCLのQ値に基づき設定されてよい。
【0037】
なお、
図3には図示を省略しているが、送電装置100は、データ通信用の通信デバイス(図示略)をさらに備えてもよい。この通信デバイスは、例えばPLC(Power Line Communication)通信に対応したPLCアダプタと、受電装置200との間で通信される通信データを変調あるいは復調するための変復調回路とを有する。この変復調回路はPLCアダプタ内に設けられてもよい。通信デバイスは、例えば送電装置100から受電装置200への制御情報を、PLCアダプタ(図示略)およびコイルCLを介して送信する。通信デバイスは、例えば受電装置200から送電装置100へのデータを、コイルCLおよびPLCアダプタを介して受信する。このデータには、例えば水中航走体70により水中探査もしくは水底探査された探査結果のデータが含まれる。通信デバイスは、水中航走体70がデータ収集等の作業を行いながら、水中航走体70(言い換えると、受電装置200)との間で迅速にデータ通信できる。
【0038】
受電装置200は、受電回路210と、電源回路220と、受電側プロセッサ230と、電力センサ240と、電流センサ250とを備える。
【0039】
受電回路210は、整流回路211、共振回路212、整合回路213を含む。整流回路211は、受電コイルCLBに誘起された交流電力を直流電力に変換する。共振回路212は、コンデンサCBと受電コイルCLBとを含んで構成され、送電コイルCLAから送電された交流電力を受電する。なお、受電コイルCLBは、整合回路213により、受電装置200の入力インピーダンスにインピーダンス整合される。
【0040】
電源回路220は、DC/DC電源回路221、定電流回路222、蓄電池の一例としての二次電池223を含む。DC/DC電源回路221は、水中給電システム1000での二次電池223への充電用電源として、1つ以上の汎用的な回路部品(例えばDC/DCコンバータ)が使用された電源回路を構成し、受電側プロセッサ230からの制御信号に基づいて受電回路210からの直流電力を昇圧、降圧等して定電流回路222に供給する。定電流回路222は、DC/DC電源回路221から供給される電源電圧に基づいて、二次電池223の種別に応じた一定の充電電流を二次電池223に供給して二次電池223の充電もしくは放電を制御する。二次電池223は、送電装置100から伝送された電力を蓄電する。二次電池223は、例えばリチウムイオン電池である。
【0041】
受電側プロセッサ230は、例えばCPUを用いて構成され、受電装置200の各部(例えば受電回路210、電源回路220、電力センサ240、電流センサ250)の動作を統括する。受電側プロセッサ230は、定電流回路222から二次電池223への充電電流を周期的に制御するための周期割込み処理を実行する(
図5~
図8参照)。周期割込み処理は、例えば10msごとに実行される。受電側プロセッサ230の詳細は
図4を参照して後述する。
【0042】
電力センサ240は、電源回路220の定電流回路222がDC/DC電源回路221から供給されている電源電圧に対応する電力を、上述した周期割込み処理のタイミングと同期して検出して受電側プロセッサ230に送る。
【0043】
電流センサ250は、電源回路220の定電流回路222が二次電池223に供給している電流(つまり充電電流)を、上述した周期割込み処理のタイミングと同期して検出して受電側プロセッサ230に送る。
【0044】
なお、
図3には図示を省略しているが、受電装置200は、データ通信用の通信デバイス(図示略)をさらに備えてもよい。この通信デバイスは、例えばPLC通信に対応したPLCアダプタと、送電装置100との間で通信される通信データを変調あるいは復調するための変復調回路とを有する。この変復調回路はPLCアダプタ内に設けられてもよい。通信デバイスは、例えば送電装置100から受電装置200への制御情報を、コイルCLおよびPLCアダプタを介して受信する。通信デバイスは、例えば受電装置200から送電装置100へのデータを、PLCアダプタおよびコイルCLを介して送信する。このデータには、例えば水中航走体70により水中探査もしくは水底探査された探査結果のデータが含まれる。通信デバイスは、水中航走体70がデータ収集等の作業を行いながら、船舶50(言い換えると、送電装置100)との間で迅速にデータ通信できる。
【0045】
なお、中継コイルCLCは、送電コイルCLAおよび受電コイルCLBと同様に、コンデンサCCとともに共振回路を構成する。つまり、本実施の形態では、共振回路が水中において多段に配置されることで、磁気共鳴方式により電力が伝送される。
【0046】
ここで、
図3を参照して、送電装置100から受電装置200への電力伝送について簡単に説明する。
【0047】
送電装置100の共振回路152では、送電装置100の送電コイルCLAに電流が流れると送電コイルCLAの周囲に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、共振回路152での共振周波数と同一の周波数で共振する中継コイルCLCを含む共振回路に伝達される。
【0048】
中継コイルCLCを含む共振回路では、磁場の振動により中継コイルCLCに電流が励起され、電流が流れ、中継コイルCLCの周囲に更に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、共振回路152での共振周波数と同一の周波数で共振する他の中継コイルCLCを含む共振回路、受電コイルCLBを含む共振回路212に伝達される。
【0049】
受電装置200の共振回路212では、中継コイルCLCの磁場の振動により、受電コイルCLBに交流電流が誘起される。誘起された交流電流が整流回路211により整流され、電源回路220において所定の電圧に変換されて充電電流が流れることで、二次電池223が充電される。
【0050】
次に、受電側プロセッサ230の構成例について、
図4を参照して説明する。
図4は、受電側プロセッサ230の機能構成例を示すブロック図である。受電側プロセッサ230は、メモリ231、電力比較部232、AD変換部233,234、制御電流値決定部235、電流制御部236、電流フラグ決定部237を含む。
【0051】
メモリ231は、受電側プロセッサ230が実行する処理中に参照するデータもしくはプログラムを記憶したり、受電側プロセッサ230が実行する処理中に生成するデータを一時的に記憶したりしている。メモリ231は、例えばAD変換部233により変換された電力値を記憶している。
【0052】
電力比較部232は、メモリ231に記憶されている1サンプル前の電力値(例えば前回の周期割込み処理の時に検出された電力値)と、AD変換部233により変換された現在の(最新の)電力値とを比較する。電力比較部232は、比較結果と電流フラグ決定部237からの電流フラグ(つまり前回の周期割込み処理中に判定された電流フラグ、後述参照)とを制御電流値決定部235に送る。
【0053】
AD変換部233は、周期割込み処理の度に電力センサ240により検出された現在の電力値をデジタル値に変換し、デジタル値の電力値をメモリ231に記憶するとともに電力比較部232に送る。
【0054】
AD変換部234は、周期割込み処理の度に電流センサ250により検出された現在の電流値をデジタル値に変換し、デジタル値の電流値を制御電流値決定部235に送る。
【0055】
制御電流値決定部235は、電力比較部232からの出力とAD変換部234により変換された現在の電流値とに基づいて、定電流回路222から二次電池223に供給させるべき一定の充電電流を制御電流値として決定して電流制御部236および電流フラグ決定部237のそれぞれに送る。この制御電流値の決定の詳細については、
図8を参照して後述する。
【0056】
電流制御部236は、制御電流値決定部235からの出力(つまり制御電流値)に基づいて、定電流回路222からの一定の充電電流を二次電池223に供給させるための制御信号を生成して電源回路220の定電流回路222に送る。
【0057】
電流フラグ決定部237は、制御電流値決定部235からの出力(つまり制御電流値)に基づいて、1サンプル前の電流値(つまり前回の周期割込み処理時に決定された制御電流値)よりも制御電流値を増加させることを示す電流フラグ(正の電流フラグ)、あるいは、1サンプル前の電流値(つまり前回の周期割込み処理時に決定された制御電流値)よりも制御電流値を減少させることを示す電流フラグ(負の電流フラグ)を決定する。電流フラグ決定部237は、電流フラグの決定結果を電力比較部232に送る。
【0058】
次に、実施の形態1に係る受電装置200における電力制御の周期的制御の動作手順例について、
図5~
図8を参照して説明する。
図5は、受電装置における負荷電流に対するインピーダンスの推移を示す特性の一例を示すグラフである。
図6は、受電装置におけるインピーダンスに対するコイル電流の推移を示す特性の一例を示すグラフである。
図7は、受電装置における負荷電流に対する負荷電力の推移を示す特性の一例を示すグラフである。
図8は、実施の形態1に係る受電装置200の電力制御の動作手順例を示すフローチャートである。
図8の処理は、主に受電側プロセッサ230により所定の周期(Xミリ秒)ごとに実行される。Xは例えば10である。
【0059】
実施の形態1に係る水中航走体70のように筐体の外周が磁性体(
図2A~
図2C参照)により覆われる構成を採る場合、
図5に示すように、受電装置200の負荷電流Iと受電装置200のインピーダンスZとの間に示す特性PTY1が得られる。つまり、負荷電流Iが増えると、インピーダンスZが減少する。負荷電流Iは、DC/DC電源回路221から定電流回路222に供給される電源電圧に対応する電流である。インピーダンスZは、受電回路210のインピーダンスである。
【0060】
また、実施の形態1に係る水中航走体70のように筐体の外周が磁性体(
図2A~
図2C参照)により覆われる構成を採る場合、
図6に示すように、受電装置200のインピーダンスZ(上述参照)と受電装置200のコイル電流Icとの間に示す特性PTY2が得られる。つまり、負荷電流Iを増加させてインピーダンスZが減少すると、コイル電流Ic(つまり受電回路210の受電コイルCLBを流れる電流)が増加し、あるインピーダンスZaより低くなると磁気飽和が発生してコイル電流Icが減少に転じる。
【0061】
したがって、実施の形態1に係る水中航走体70のように筐体の外周が磁性体(
図2A~
図2C参照)により覆われる構成を採る場合、
図7に示すように、磁気飽和(上述参照)が発生する直前もしくは磁気飽和(上述参照)が発生した直後に負荷電力(言い換えると、定電流回路222に供給される電力)が最大になる特定PTY3が得られる。実施の形態1に係る受電装置200は、この特性を利用して、負荷電力が最大となるように受電側プロセッサ230において負荷電流Iを監視しながら制御する。
【0062】
具体的には、受電側プロセッサ230は、負荷電流IがIm未満となる特性(言い換えると、負荷電流Iが増えると負荷電力が増える特性が得られる領域A)の場合には、負荷電流を徐々に増加するように制御する。また、受電側プロセッサ230は、負荷電流IがIm以上となる特性(言い換えると、負荷電流Iが増えると負荷電力が減る特性が得られる領域B)の場合には、負荷電流を徐々に減少するように制御する。
【0063】
図8において、受電側プロセッサ230は、現在の電力値を電力センサ240から取得するとともに(St1)、現在の電流値を電流センサ250から取得する(St2)。受電側プロセッサ230は、電流フラグ決定部237からの出力に基づいて、前回の周期割込み処理時に決定された電流フラグが正であるか否かを判定する(St3)。
【0064】
受電側プロセッサ230は、電流フラグが正であると判定した場合(St3、YES)、前回の周期割込み処理時に制御電流値を増加させたことになるので、現在の状態が領域AであるとみなしてステップSt4の処理を行う。
【0065】
つまり、受電側プロセッサ230は、ステップSt1で取得された現在の電力値が1サンプル前の電力値よりも大きいか否かを判定する(St4)。受電側プロセッサ230は、ステップSt1で取得された現在の電力値が1サンプル前の電力値よりも大きいと判定した場合(St4、YES)、ステップSt2で取得された現在の電流値に所定値δ(例えば10mA程度の微小値)をプラスした値を制御電流値として決定するとともに(St5)、今回の周期割込み処理に対応する電流フラグを正の電流フラグとして決定する(St6)。これは、前回の周期割込み処理において電流フラグが正であると決定されたことで領域Aにおいて、ステップSt4の判定結果から現在の負荷電力の極性が反転していない(言い換えると負荷電力が極大値を通過していない)と判断可能であるためである。
【0066】
一方、受電側プロセッサ230は、ステップSt1で取得された現在の電力値が1サンプル前の電力値よりも小さいと判定した場合(St4、NO)、ステップSt2で取得された現在の電流値から所定値δ(例えば10mA程度の微小値)をマイナスした値を制御電流値として決定するとともに(St7)、今回の周期割込み処理に対応する電流フラグを負の電流フラグとして決定する(St8)。これは、前回の周期割込み処理において電流フラグが正であると決定されたことで領域Aにおいて、ステップSt4の判定結果から現在の負荷電力の極性が反転した(言い換えると負荷電力が極大値を通過して減少に転じた)と判断可能であるためである。
【0067】
受電側プロセッサ230は、電流フラグが負であると判定した場合(St3、NO)、前回の周期割込み処理時に制御電流値を減少させたことになるので、現在の状態が領域BであるとみなしてステップSt9の処理を行う。
【0068】
受電側プロセッサ230は、ステップSt1で取得された現在の電力値が1サンプル前の電力値よりも大きいか否かを判定する(St9)。受電側プロセッサ230は、ステップSt1で取得された現在の電力値が1サンプル前の電力値よりも大きいと判定した場合(St10、YES)、ステップSt2で取得された現在の電流値から所定値δ(例えば10mA程度の微小値)をマイナスした値を制御電流値として決定するとともに(St10)、今回の周期割込み処理に対応する電流フラグを負の電流フラグとして決定する(St11)。これは、前回の周期割込み処理において電流フラグが負であると決定されたことで領域Bにおいて、ステップSt9の判定結果から現在の負荷電力の極性が反転していない(言い換えると負荷電力が極大値を通過していない)と判断可能であるためである。
【0069】
一方、受電側プロセッサ230は、ステップSt1で取得された現在の電力値が1サンプル前の電力値よりも小さいと判定した場合(St9、NO)、ステップSt2で取得された現在の電流値に所定値δをプラスした値を制御電流値として決定するとともに(St12)、今回の周期割込み処理に対応する電流フラグを正の電流フラグとして決定する(St13)。これは、前回の周期割込み処理において電流フラグが負であると決定されたことで領域Bにおいて、ステップSt9の判定結果から現在の負荷電力の極性が反転した(言い換えると負荷電力が極大値を通過して減少に転じた)と判断可能であるためである。
【0070】
以上により、実施の形態1に係る水中給電システム1000では、受電装置200は、水中を移動可能であり、外周が磁性体(例えばコア850)で包囲された筐体を有する。受電装置200、送電装置100からワイヤレスで伝送された電力を受電する受電部(例えば受電回路210)と、蓄電池(例えば二次電池223)を有し、受電部で受電された電力に基づいて蓄電池を充電する電源部(例えば電源回路)と、電源部の動作中の電力値を繰り返して検出する電力検出部(例えば電力センサ240)と、電力検出部により検出された電力値と、前回に電力検出部により検出された電力値との比較結果に基づいて、電源部を作動させる制御電流値を決定し、決定された制御電流値に基づく電源部の作動を制御する受電側プロセッサ230と、を備える。
【0071】
これにより、受電装置200は、受電装置200が搭載される水中航走体70の筐体の外周を磁性体(例えばフェライト852)で包囲した場合でも、水中において受電装置200における磁気飽和の発生を抑制でき、送電装置100からの電力の伝送効率を向上できる。
【0072】
また、電力検出部は、電源部の動作中の電力値を周期的に検出する。前回に電力検出部により検出された電力値は、所定周期の1周期前(例えば10ミリ秒前)に検出された電力値である。これにより、受電装置200は、電源部(例えば電源回路220)での充電時に供給させるべき一定の充電電流の最大化を実現できているかを周期的に判別できる。
【0073】
また、受電装置200は、電源部の動作中の電流値を繰り返して検出する電流検出部(例えば電流センサ250)をさらに備える。受電側プロセッサ230は、電流検出部により検出された電流値を基準として制御電流値を増減させる。これにより、受電装置200は、磁気飽和を発生させる時の負荷電流の前後の値となるように負荷電流の値を調整できて送電装置100からの電力伝送効率を適応的に向上できる。
【0074】
また、受電側プロセッサ230は、前回の制御電流値を増加させかつ電力検出部により検出された電力値が前回検出された電力値より大きい場合に、電流検出部により検出された電流値を所定量δほど増加させる。これにより、受電装置200は、負荷電流が増加すれば負荷電力が増加するという現在の負荷電流および負荷電力の特性に鑑みて、検出された現在の電力値と前回の周期割込み処理時に検出された電力値との大小関係に基づいて、負荷電力の最大化を効率的に実現できる。
【0075】
また、受電側プロセッサ230は、前回の制御電流値を増加させかつ電力検出部により検出された電力値が前回検出された電力値より小さい場合に、電流検出部により検出された電流値を所定量δほど減少させる。これにより、受電装置200は、負荷電流が増加すれば負荷電力が減少するという現在の負荷電流および負荷電力の特性に鑑みて、検出された現在の電力値と前回の周期割込み処理時に検出された電力値との大小関係に基づいて、負荷電力の最大化を効率的に実現できる。
【0076】
また、受電側プロセッサ230は、前回の制御電流値を減少させかつ電力検出部により検出された電力値が前回検出された電力値より大きい場合に、電流検出部により検出された電流値を所定量δほど減少させる。これにより、受電装置200は、負荷電流が増加すれば負荷電力が減少するという現在の負荷電流および負荷電力の特性に鑑みて、検出された現在の電力値と前回の周期割込み処理時に検出された電力値との大小関係に基づいて、負荷電力の最大化を効率的に実現できる。
【0077】
また、受電側プロセッサ230は、前回の制御電流値を減少させかつ電力検出部により検出された電力値が前回検出された電力値より小さい場合に、電流検出部により検出された電流値を所定量δほど増加させる。これにより、受電装置200は、負荷電流が増加すれば負荷電力が減少するという現在の負荷電流および負荷電力の特性に鑑みて、検出された現在の電力値と前回の周期割込み処理時に検出された電力値との大小関係に基づいて、負荷電力の最大化を効率的に実現できる。
【0078】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0079】
上述した本実施の形態では、受電装置200は、海底に設置された発電機等でもよい。この場合、受電装置200は、水中に固定的に設置される。このように、海底に固定的に設置された構造物であって、構造物を移動させて充電することが困難である場合でも、送電装置100が受電装置200に近付くことで、水中での電力伝送効率を向上して充電できる。
【0080】
上述した本実施の形態では、送電コイルCLAおよび複数の中継コイルCLCの配列方向が海水中で横向き(水平方向)に配置されたが、縦向き(垂直方向)に配置されてもよい。縦向きの場合、送電コイルCLA及び中継コイルCLCの面は、水面と略平行となる。縦向きに配置される場合、AUV800に搭載される受電コイルCLBも磁界方向に合わせるように縦向きに搭載されてもよい。つまり、受電コイルCLBの面が水面と略平行となってよい。また、送電コイルCLAおよび中継コイルCLCが連結体を介して接続される送電コイル構造体の場合、送電コイル構造体が縦向きに配置されても、水中航走体70は、送電コイルに対し水平方向に進入および退出可能でよい。一方、送電コイルCLAおよび中継コイルCLCがボビンbnに巻回されて配置される送電コイルの場合に、送電コイルが縦向きに配置された場合、水中航走体70は、ボビンbnの上端および下端に位置するボビンbnの開口部から送電コイルの内側に進入してよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示は、筐体の外周を磁性体で包囲した場合でも、水中において受電装置における磁気飽和の発生を抑制し、送電装置からの電力の伝送効率を向上する受電装置および電力制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0082】
50 船舶
70 水中航走体
100 送電装置
110 AC電源
120 ADC
130 送電側プロセッサ
150 送電回路
151 ドライバ
152、212 共振回路
153、213 整合回路
200 受電装置
210 受電回路
211 整流回路
220 電源回路
221 DC/DC電源回路
222 定電流回路
223 二次電池
230 受電側プロセッサ
231 メモリ
232 電力比較部
233、234 AD変換部
235 制御電流値決定部
236 電流制御部
237 電流フラグ決定部
240 電力センサ
250 電流センサ
850 コア
1000 水中給電システム
CLA 送電コイル
CLB 受電コイル