(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086586
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】搬送装置、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20220602BHJP
B65G 13/02 20060101ALN20220602BHJP
【FI】
C23C14/56 G
B65G13/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198684
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 孝史
【テーマコード(参考)】
3F033
4K029
【Fターム(参考)】
3F033BB13
4K029AA24
4K029CA01
4K029DA10
4K029DB14
4K029HA01
4K029KA02
4K029KA03
(57)【要約】
【課題】成膜不良や搬送ローラの動作不良を防ぐ効果が高い、インライン型の成膜装置の搬送ローラに設けられる集塵カバーを提供すること。
【解決手段】
基板を搬送しながら成膜するインライン型の成膜装置の搬送装置は、載置された基板を搬送する複数の搬送ローラと、複数の搬送ローラ毎に設けられ、搬送ローラを囲む集塵カバーと、を備え、集塵カバーは、搬送ローラの軸方向で、搬送ローラの基板側の側面を覆う前面部と、搬送ローラの上側を覆う上面部と、を含み、上面部は、搬送ローラの上方周面を露出させる開口部を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送しながら成膜するインライン型の成膜装置の搬送装置であって、
載置された基板を搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラごとに設けられ、前記搬送ローラを囲むカバーと、を備え、
前記カバーは、
前記搬送ローラの回転軸方向で、前記搬送ローラの前記基板側の側面を覆う前面部と、
鉛直方向で、前記搬送ローラの周面の上側を覆う上面部と、を含み、
前記上面部は、前記搬送ローラの前記周面の一部を露出させる開口を有する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記上面部は、基板の搬送方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記上面部は、前記搬送方向に沿って並ぶ第1の傾斜部と第2の傾斜部とを含み、
前記第1の傾斜部と前記第2の傾斜部の間に前記開口があり、
前記第1の傾斜部と前記第2の傾斜部とのそれぞれは、前記開口の側の端が、前記搬送方向において前記開口とは反対側の端よりも、前記鉛直方向において高くなるように傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記回転軸方向に垂直で、かつ、前記鉛直方向に垂直な方向で、前記搬送ローラの前記周面を覆う側面部を備え、
前記前面部は、前記側面部から着脱可能であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記上面部は、前記側面部に連結されていることを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記上面部は、前記前面部に連結されていることを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記カバーは、
前記搬送ローラの前記回転軸方向で、前記搬送ローラのシャフト側の側面を覆う背面部と、
前記搬送ローラの前記回転軸方向に垂直で、かつ、前記鉛直方向に垂直な方向で、前記搬送ローラの前記周面を覆う側面部と、
を備え、
前記側面部は、前記背面部に対して着脱可能であり、
前記前面部は前記側面部と連結されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記カバーは、前記搬送ローラの下方周面を覆うトレイを備え、
前記トレイは、前記前面部に連結されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記トレイの下方にマグネットが配置されることを特徴とする請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
基板を搬送しながら成膜するインライン型の成膜装置であって、
基板を搬送する搬送ユニットと、
前記搬送ユニットの下方に配置され、前記搬送ユニットによって搬送される基板に蒸着材料を放出する蒸着ユニットと、
を備え、
前記搬送ユニットは、
載置された基板を搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラごとに設けられ、前記搬送ローラを囲むカバーと、を備え、
前記カバーは、
前記搬送ローラの回転軸方向で、前記搬送ローラの前記基板側の側面を覆う前面部と、
鉛直方向で、前記搬送ローラの周面の上側を覆う上面部と、を含み、
前記上面部は、前記搬送ローラの前記周面の一部を露出させる開口を有する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の搬送装置によって前記基板を搬送する搬送工程と、
搬送される前記基板に蒸着材料を放出する蒸着工程と、を有する
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の搬送装置によって前記基板を搬送する搬送工程と、
搬送される前記基板に蒸着材料を放出する蒸着工程と、を有する
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の搬送装置、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、マスクを用いて基板上に蒸着物質を成膜するインライン型の成膜装置が知られている。引用文献1には、成膜のためのチャンバ内で基板を搬送しながら成膜を行う成膜装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-173170号公報
【特許文献2】特開2010-147256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、搬送装置に設けられた搬送ローラと搬送される基板との接触によって生じた粉塵などが、搬送ローラの回転や蒸着源から放出される蒸着材料によって生じる気流によって舞い上がり、基板上や成膜装置の駆動部に付着し、成膜不良や搬送ローラの動作不良が生じることがある。これを防ぐために、搬送ローラにはカバーが設けられることがある(引用文献2)。
【0005】
本発明は、成膜不良や搬送ローラの動作不良を防ぐ効果が高い、インライン型の成膜装置の搬送ローラに設けられるカバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、基板を搬送しながら成膜するインライン型の成膜装置の搬送装置であって、
載置された基板を搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラ毎に設けられ、前記搬送ローラを囲む集塵カバーと、を備え、
前記集塵カバーは、
前記搬送ローラの軸方向で、前記搬送ローラの前記基板側の側面を覆う前面部と、
前記搬送ローラの上側を覆う上面部と、を含み、
前記上面部は、前記搬送ローラの上方周面を露出させる開口部を有する、
ことを特徴とする搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成膜不良や搬送ローラの動作不良を防ぐ効果が高い、インライン型の成膜装置の搬送ローラに設けられるカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】搬送ユニットと蒸着ユニットの分離を示す図。
【
図7】搬送ローラおよび集塵カバーの構成の一例を示す図。
【
図8】搬送ローラおよび集塵カバーの構成の一例を示す図。
【
図9】搬送ローラおよび集塵カバーの構成の一例を示す図。
【
図10】搬送ローラおよび集塵カバーの構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<成膜装置の概要>
図1(A)および
図1(B)は、本実施形態に係る成膜装置を示す概略図である。
図1(A)および
図1(B)に示す本実施形態に係る成膜装置1は、基板を搬送しながら製膜するインライン型の成膜装置である。本実施形態に係る成膜装置1は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルなどの電子デバイスの製造ラインに適用される。成膜装置1は、搬送ユニット2、蒸着ユニット3、フレーム4を含む。
【0011】
搬送ユニット2は、基板上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクなどのマスクによってマスクされた基板が配置されたマスクトレイを搬入口5から搬出口6まで搬送するための装置である。また、搬送ユニット2の底面には、蒸着ユニット3の蒸着源から放出された蒸着材料がマスクトレイに配置された基板に蒸着されるよう、開口が配置される。
【0012】
蒸着ユニット3は、後述する蒸着源を有し、蒸着ユニット3の天面側には搬送ユニット2によって搬送される基板に蒸着材料を放出するための開口を有する。また、蒸着ユニット3またはフレーム4に配置された昇降機構41およびスライド機構42によって、後述する搬送ユニット2と蒸着ユニット3との分離が行われる。
【0013】
フレーム4は、搬送ユニット2と蒸着ユニット3とを支持するための構造である。本実施形態では、フレーム4が昇降機構41およびスライド機構42を備えるものとして説明を行うが、昇降機構およびスライド機構の少なくとも一つが蒸着ユニット3に備えられてもよい。
【0014】
また、
図1(B)に示すように、本実施形態では、成膜装置1は3つの蒸着ユニット3A~3C(総称して蒸着ユニット3とする)を備え、搬送される基板に1種類以上の蒸着材料を連続して蒸着することができる。なお、
図1(B)の例では、昇降機構41は省略して示されている。蒸着ユニット3の数、およびそれぞれの蒸着ユニット3が放出する蒸着材料の種類は任意に変更可能である。また、昇降機構41およびスライド機構42は、複数の蒸着ユニット3をまとめて昇降またはスライドさせてもよいし、別個に昇降またはスライドさせてもよい。
【0015】
図2(A)~
図2(D)は、本実施形態に係る成膜装置1の成膜処理を示す。ここで、
図1(A)の成膜装置1の面XZでの断面図を示す。なお、
図2(A)~
図2(D)では、フレーム4は省略して示されている。
【0016】
図2(A)は、基板が配置されたマスクトレイ201が搬入口5から搬入された状態の成膜装置1を示す。搬送ユニット2はそれぞれの蒸着ユニット3に対応する開口21A~21C(総称して開口21とする)を備える。蒸着ユニット3はそれぞれに対応する蒸着源31A~31C(総称して蒸着源31とする)を備える。
図2(A)において、搬入されたマスクトレイ201は、搬送ユニット2が備える複数の搬送ローラ22によって、搬送ユニット2の開口21上に搬送される。
【0017】
図2(B)は、マスクトレイ201が開口21A上に搬送され、蒸着ユニット3Aの蒸着源31Aから蒸着材料を放出している状態の成膜装置1を示す。
図2(B)では、基板が搬送されている状態で、蒸着源31Aから上方に向かって蒸着材料が放出されている。これによって、マスクパターンに従って基板上に蒸着材料が蒸着される。本実施形態に係る成膜装置1は、マスクトレイ201が移動している状態で蒸着を行うものとして説明するが、マスクトレイ201が開口21上に位置する状態で移動を一時停止または減速するようマスクトレイ201の搬送速度を制御してもよい。これによって、成膜装置1は基板上に適切な厚みの蒸着材料が蒸着するよう制御することができる。
【0018】
図2(C)は、蒸着された基板が搬送ユニット2によって搬送され、次の蒸着ユニット3Bに対応する開口21B上にマスクトレイ201が搬送されている状態を示す。ここで、蒸着ユニット3Bの蒸着源31Bから蒸着材料が放出される。そして成膜装置1はマスクトレイ201の搬送を進めて次の蒸着ユニット3Cによって次の蒸着を行い、
図2(D)に示すように、蒸着が完了したマスクトレイ201が、搬出口6から搬出される。このように、搬送ユニット2の搬送ローラ22によって搬入口5から搬出口6まで搬送されるまでに複数の蒸着ユニット3から蒸着を行うことができる。
【0019】
続いて、
図3(A)および
図3(B)を参照して、搬送ユニット2と蒸着ユニット3との分離について説明する。蒸着ユニット3の蒸着源31から放出された蒸着材料が搬送ユニット2の側壁や天面に付着し、落下して搬送中の基板に付着することで、蒸着処理が失敗する場合がある。また、搬送ユニット2の側壁や天面に付着した蒸着材料が落下して搬送ローラ22に付着することで搬送している基板が汚損したり、搬送ローラ22の動作不良が生じる場合がある。このため、搬送ユニット2の側壁や天面には防着板が設けられ、防着板を定期的に洗浄または交換するメンテナンスが必要になる。
【0020】
また、搬送ローラ22とマスクトレイ201との接触によって生じる粉塵が、搬送ローラの回転や蒸着材料の放出によって生じる気流によって舞い上がり、基板や成膜装置1の駆動構造に付着し、成膜処理の失敗や搬送ユニット2の動作不良が生じる場合がある。このため、搬送ローラ22には、生じた粉塵が散らばることを防ぐための集塵カバーが設けられ、集塵カバーの交換または清掃などのメンテナンスを定期的に行うことがある。
【0021】
このような場合、搬送ユニット2と蒸着ユニット3とを分離し、搬送ユニット2の底面側の開口21から搬送ユニット2内の搬送空間にアクセスすることで、メンテナンスの際の作業の利便性が向上する。搬送ユニット2と蒸着ユニット3との分離では、
図3(A)に示すように、フレーム4が備える昇降機構41によって、蒸着ユニット3が搬送ユニット2に対して相対的に下方に移動する。なお、本実施形態に係る蒸着ユニット3は、後述するように、搬送ユニット2と接続された場合に開口21よりもZ軸上方に進入する部分を備えるため、昇降機構41による蒸着ユニット3の降下が必要となる。これによって、搬送ユニット2に対して水平方向に蒸着ユニット3が移動することが可能となる。
【0022】
続いて、
図3(B)に示すように、フレーム4が備えるスライド機構42によって、蒸着ユニット3が搬送ユニット2に対して相対的に水平に移動する。これによって、フレーム4に保持された搬送ユニット2の下方から搬送ユニット2内部の搬送空間にアクセスすることができ、メンテナンスの利便性を向上することができる。また、蒸着ユニット3の上方から蒸着ユニット3内にアクセスすることができるため、蒸着ユニット3のメンテナンスの利便性も向上することができる。
【0023】
続いて、
図4に、搬送ユニット2の構造を示す。搬送ユニット2は、底面の開口21、複数の搬送ローラ22、天面防着部23、側壁防着部24、筐体25、天面蓋26を含む。なお、
図4において側壁防着部24は一部のみが図示されている。
【0024】
天面防着部23は、搬送ユニット2内の搬送路の天面側に蒸着する蒸着材料の除去などのメンテナンスを容易にするように、筐体25から取り外し可能に配置される。本実施形態では、天面蓋26に天面防着部23が配置され、筐体25から天面蓋26を取り外すと、天面蓋26とともに天面防着部23も筐体25から取り外される。また、天面防着部23は複数の防着板(天面防着板)によって形成され、それぞれの天面防着板は別個に筐体25または天面蓋26から取り外すことができる。天面蓋26が複数の天面防着板を支持する構造については
図5および
図6を参照して後述する。また、筐体25、天面蓋26、および天面防着部23の詳細な構造については
図5および
図6を参照して後述する。
【0025】
側壁防着部24は、搬送ユニット2内の筐体25の側壁から脱着可能な防着板を含み、筐体25の内側の側壁に蒸着材料が蒸着することを防ぐ。メンテナンスの際には、側壁防着部24を筐体25から取り外し、交換又は洗浄することでメンテナンス作業を容易に行うことができる。なお、本実施形態に係る側壁防着部24も複数の側壁防着板によって形成され、それぞれの側壁防着板も別個に筐体25から取り外すことができる。
【0026】
天面蓋26は、筐体25の天面側に配置され、天面蓋26を上方に持ち上げることで筐体25から天面蓋26を取り外すことができる。これによって、筐体25の天面側から搬送空間にアクセスすることができる。すなわち、天面蓋26は搬送ユニット2の内部の搬送空間の天井を形成する天井部であり、筐体25は搬送空間の側壁を形成する側壁部である。また、天面防着部23は搬送空間の天井部を覆う防着部であり、側壁防着部24は搬送空間の側壁部を覆う防着部である。
【0027】
続いて、
図5を参照して搬送ユニット2の詳細な構造について説明する。
図5は、
図4の面401での搬送ユニット2の断面図である。また、
図5では、蒸着ユニット3も図示されている。
【0028】
図5では、天面蓋26にはガイドローラ27が配置され、天面防着板501~504は、ガイドローラ27によって支持される。すなわち、ガイドローラ27と、天面防着板501~504のガイドローラ27に当接する部分が、天面蓋26に沿って防着板を移動可能に支持するスライド構造(着脱構造)として機能する。本実施形態では、ガイドローラ27の移動方向は、基板の搬送方向と交差する方向であり、
図5ではY軸方向である。なお、
図5の例では、天面蓋26にガイドローラ27が配置され、天面防着板501~504は、ガイドローラ27が転動する転動面を含むものとして図示している。しかしながら別の例では、天面蓋26にレールが配置され、当該レールに沿って転動するローラが天面防着板501~504に配置されてもよい。また、天面蓋26が天面防着板501~504を着脱可能に支持する着脱構造としては、スライド構造以外にもフック型の留め部材などの任意の構造を用いてもよい。
【0029】
また、円506~508に示すように、天面防着板と水平な面においてスライド方向と交差する方向で隣り合う天面防着板はラビリンス構造を形成する。ここでラビリンス構造とは、防着板が覆う面に対して垂直な方向、すなわち上下方向で隣接する防着板が重なり合うことを意味する。天面防着板501~504では、上下(Z軸)方向で隣接する防着板が重なり合う。これによって、隣接する天面防着板501~504の位置が多少変化しても、天面防着板501~504が搬送空間の天井の内面を覆うことができ、ガイドローラ27、天面蓋26、および筐体25に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。
【0030】
また、円509に示すように、筐体25の側面に取りつけられ、搬送空間の側面を覆う側壁防着部24は、側壁防着部24に隣接する天面防着板501とラビリンス構造を形成する。これによって、天面防着板501の位置が多少変化しても、ガイドローラ27、天面蓋26、および筐体25に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。
【0031】
また、本実施形態に係る天面蓋26は、筐体25との係合構造を有し、筐体25と天面蓋26との係合を解除することで筐体25から取り外すことができる。筐体25から天面蓋26を取り外す際には、天面蓋26に設けられたフック穴505にクレーンのフックを取りつけることで、クレーンを用いて天面蓋26を取り外すことができる。
【0032】
続いて、
図6を参照して搬送ユニット2の詳細な構造について説明する。
図6では、
図4の面402での搬送ユニット2の断面図である。また、
図6では蒸着ユニット3も図示されている。
【0033】
図6では、ガイドローラ27のスライド方向上の一方では搬送ユニット2の筐体25または天面蓋26に設けられたストッパ606に当たる。また、スライド方向上の他方ではカバー28に当たる。カバー28は、ガイドローラ27によって天面防着板601~605を取り外し可能にするか否かを切り替え可能な係止構造である。
図6の例では、カバー28は天面防着板601~605を天面蓋26から個別に取り外すことはできない閉状態である。一方、
図8を参照して後述するように、カバー28を開状態に切り替えることで、閉状態でカバー28が覆っていた筐体25の開口から天面防着板601~605をガイドローラ27に沿って個別に取り外すことができる。また、筐体25の開口から個別にガイドローラ27に沿って天面防着板を取りつけて、ストッパ606または既に取りつけられた他の天面防着板に当接するまでスライドさせることで、天面防着板をスライド方向で位置合わせすることなく取りつけることができる。このように、脱着構造としてスライド構造を採用することで、天面防着板を着脱する際の作業の効率が向上する。
【0034】
また、円607~610に示すように、スライド方向で隣り合う防着板同士も、ラビリンス構造を形成する。これによって、スライド方向で前後の隣接する天面防着板601~605の位置が多少変化しても、ガイドローラ27、天面蓋26、および筐体25に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。
【0035】
また、スライド方向で同一列の天面防着板601~605は、同じ形状を有する。これによって、防着板を設置する順序を考慮する必要がなく、天面防着板を着脱する作業が容易になる。
【0036】
また、円611~612に示すように、筐体25の側面に取りつけられ、搬送空間の側面を覆う側壁防着部24は、側壁防着部24に隣接する天面防着板601、605とラビリンス構造を形成する。これによって、天面防着板601、605の位置が多少変化しても、ガイドローラ27、天面蓋26、および筐体25に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。
【0037】
また、搬送ローラ22は、シャフト621を介して搬送ローラ駆動部622によって駆動される。
【0038】
<搬送ローラ22と集塵カバーの構成>
続いて、
図7(A)~
図10(B)を参照して、搬送ローラ22と集塵カバーの構成の一例について説明する。なお、なお、
図7(A)~
図10(B)において、同様の構成については同一の参照符号を使用する。本実施形態に係る搬送ユニット2に設けられる複数の搬送ローラ22のそれぞれは集塵カバーを有する。搬送ローラごとに集塵カバーを設けることで、搬送ローラ22とマスクトレイ201との接触などによって生じた粉塵が蒸着ユニット側に落下することを防ぐことができる。
【0039】
図7(A)および
図7(B)において、集塵カバーは、
図7(A)で網掛けおよびハッチングで示す集塵カバーパーツ700および
図7(B)で網掛けおよびハッチングで示す集塵カバーパーツ710を含む。集塵カバーパーツ700は、上面部701、側面部702、取り付け部703、底面部704、逆流防止部705、背面部706を含む。集塵カバーパーツ700および710は、ネジ720によって脱着可能に係合され、搬送ローラ22を囲む。なお、
図7(A)、
図7(B)において、集塵カバーパーツ710は説明を容易にするために透過して図示しているが、集塵カバーパーツ710を構成する材料を限定するものではなく、任意の材料を使用することができる。また、後述する
図8(A)~
図10(B)の集塵カバーパーツについても同様である。一例では、集塵カバーパーツ700および710は非磁性体の材料によって構成される。これによって、マグネットによって集塵カバーが磁化して粉塵が付着することを防ぎ、メンテナンス時に粉塵を取り除くことが容易になる。
【0040】
上面部701は、搬送ローラ22に載置されたマスクトレイ201の搬送を可能にしながら搬送ローラ22の周面の上側の少なくとも一部を覆うように、上方周面を露出させる開口部を備える。上面部701は、鉛直方向(上下方向、Z軸方向)で、搬送ローラ22の周面の上側を覆っている。換言すると、鉛直方向で上方から見た時、搬送ローラ22の周面の一部が、上面部701によって覆い隠されている。これによって、載置された基板の搬送を行いながら、集塵カバー内に溜まった粉塵が集塵カバー外に出ないようにすることができる。
図7(A)に示す上面部701は、搬送ローラ22の回転軸と垂直な面でハの字型の形状をしている。具体的には、搬送方向に沿って並ぶ2つの上面部701の間に開口がある。それぞれの上面部701についてみると、開口側の端が、開口とは反対側の端よりも、鉛直方向において高い位置にある。すなわち、上面部701は、鉛直方向および搬送方向に対してローラ側に傾斜している一対の傾斜部であり、搬送ローラ22の鉛直方向で上方の周面の接線と平行な角度を有する。これによって、集塵カバーの上面部に粉塵が堆積することを防ぐことができる。また、搬送されるマスクトレイ201が自重により撓み、上面部701に当接した際に、マスクトレイ201を搬送ローラ22の上方周面に導くガイドとして動作することができる。
【0041】
側面部702は、背面部706および上面部701と連結され、搬送ローラ22の回転軸と平行な平面のうち、搬送ローラ22の周面に対向する鉛直面を覆う。換言すると、側面部702は、搬送ローラ22の回転軸方向(Y軸方向)に垂直で、かつ、鉛直方向(Z軸方向)に垂直な方向(X軸方向、搬送方向)で、搬送ローラ22の周面を覆っている。すなわち、X軸方向から見ると、搬送ローラ22の周面は側面部702によって覆い隠されている。また、側面部702は、集塵カバーパーツ710を支持する構造を有する。集塵カバーパーツ700は取り付け部703を介して集塵カバーパーツ700を搬送ローラ22のシャフトカバー750に固定される。底面部704には、トレイ712の下方に配置される、マグネット751が配置される。逆流防止部705は、集塵カバーに溜まった粉塵が搬送ローラ22の回転などによって生じた気流によって舞い上がり集塵カバー外に出ることを防ぐ。背面部706は、回転軸方向で、搬送ローラ22のシャフト側の側面を覆い、側面部702、底面部704に連結される。
【0042】
続いて、
図7(B)を参照して集塵カバーパーツ710の構成を説明する。集塵カバーパーツ710は、前面部711、トレイ712、および側面部713を含む。前面部711は、搬送ローラ22の回転軸に垂直な面であって、基板側の面を覆う。前面部711は、搬送ローラ22の回転軸方向で、搬送ローラ22の基板側の側面を覆っている。換言すると、搬送ローラ22の回転軸方向において、基板側から見たときに、送ローラ22の基板側の側面が、前面部711によって覆い隠される。トレイ712は、搬送ローラ22の下方に配置される。トレイ712は、上が開放された箱状の形状(凹形状)をしており、上方からの粉塵を効率よく溜めることができる搬送ローラ22の下方周面を覆う。また、トレイ712は前面部711に連結される。側面部713は、集塵カバーパーツ700の側面部702に着脱可能に連結される。
【0043】
これによって、集塵カバーに粉塵が溜まった際には、集塵カバーパーツ710を集塵カバーパーツ700から取り外すことでトレイ712に溜まった粉塵を効率的に除去することができる。また、集塵カバーパーツ710は非磁性体でできており、マグネットは集塵カバーパーツ700側に設けられている。このため、集塵カバーパーツ710を集塵カバーパーツ700から取り外して、集塵カバーパーツ710から粉塵を除去する際には粉塵をトレイ712から取り除きやすい。
【0044】
続いて、
図8(A)および
図8(B)を参照して、搬送ローラ22と集塵カバーの構成の一例について説明する。集塵カバーは、
図8(A)で網掛けおよびハッチングで示す集塵カバーパーツ800および
図8(B)で網掛けおよびハッチングで示す集塵カバーパーツ810を含む。
【0045】
集塵カバーパーツ800は、側面部802、取り付け部803、底面部804、背面部806を含む。また、集塵カバーパーツ810は、上面部801、前面部811、トレイ812、および側面部813を含む。
【0046】
図7(A)および7(B)では、上面部701が背面部706を備える集塵カバーパーツ700に設けられていた。一方、
図8(A)および8(B)に示す集塵カバーパーツ800および810では、上面部801が前面部811を備える集塵カバーパーツ810に設けられている。また、側面部802は
図7(A)に示す側面部702に比べて面積が小さい。このため、集塵カバーパーツ810を集塵カバーパーツ800から取り外した場合に搬送ローラ22のメンテナンスが容易となる。
【0047】
続いて、
図9(A)および
図9(B)を参照して、搬送ローラ22と集塵カバーの構成の一例について説明する。集塵カバーは、
図9(A)で網掛けおよびハッチングで示す集塵カバーパーツ800および
図8(B)で網掛けおよびハッチングで示す集塵カバーパーツ810を含む。
図9(A)および
図9(B)に示す集塵カバーにおいて、集塵カバーパーツ900および910によって上面部が形成される。すなわち、上面部を形成するハの字型の二枚の板は、一方が集塵カバーパーツ900に、他方が集塵カバーパーツ910に設けられる。
【0048】
また、
図10(A)および
図10(B)を参照して、搬送ローラ22と集塵カバーの構成の一例について説明する。集塵カバーは、
図10(A)で網掛けおよびハッチングで示す集塵カバーパーツ1000および
図10(B)で網掛けおよびハッチングで示す集塵カバーパーツ1010を含む。
図10(A)および
図10(B)に示すように、前面部は集塵カバーパーツ1000および1010によって形成され、集塵カバーパーツ1010は集塵カバーパーツ1000に対して着脱可能である。
【0049】
図7(A)~
図10(B)に示す集塵カバーは、搬送ローラ22の大きさ(直径)ごとに異なる集塵カバーが適用されてもよいし、搬送ローラ22が配置される位置によって異なる集塵カバーが適用されてもよい。
【0050】
<他の実施形態>
本実施形態では、搬送ローラ22ごとに集塵カバーが設けられる。これは、搬送ローラ22が搬送方向の異なる間隔で配置されるため、1つの集塵カバーが複数の搬送ローラを囲むようにすると、搬送ローラ22の間隔に応じて異なる寸法の集塵カバーを設計する必要があるためである。しかしながら、1つの集塵カバーは、搬送方向で連続した複数の搬送ローラを囲むように設計されてもよい。例えば、搬送方向で連続した2つの搬送ローラの組が、搬送方向の異なる間隔で配置される場合には、1つの集塵カバーは搬送方向で連続した2つの搬送ローラを囲むように設計されてもよい。
【0051】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0052】
1 成膜装置、2 搬送ユニット、3 蒸着ユニット、22 搬送ローラ、700 集塵カバーパーツ、701 上面部、710 集塵カバーパーツ、751 マグネット