(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086623
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】認知的リソースシミュレーション装置、認知的リソースシミュレーション方法、プログラムおよびゲーム装置
(51)【国際特許分類】
G16H 50/50 20180101AFI20220602BHJP
【FI】
G16H50/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198741
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】仲田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸川 剛
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザの認知機能の特性に基づいて、日常生活における様々なタスクを遂行することにより消費される認知的リソースをシミュレートし、ユーザが生活場面で感じる疲労を定量化する認知的リソースシミュレーション装置、認知的リソースシミュレーション方法、プログラム及びゲーム装置を提供する。
【解決手段】認知的リソースシミュレーション装置1は、ユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得する認知的情報取得部10と、認知的特性に関する情報を基に、ユーザの複数の認知的特性値を算出する認知的特性値算出部20と、ユーザに対して生活場面における複数のタスクを順次1つずつ提示し、当該提示された各タスクに対してユーザが取る行動を取得し、認知的特性値を基に各タスクにおけるユーザの認知的リソースの消費量を算出するシミュレーション実行部30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得する認知的情報取得部と、
前記認知的特性に関する情報を基に、前記ユーザの複数の認知的特性値を算出する認知的特性値算出部と、
前記ユーザに対して生活場面における複数のタスクを順次1つずつ提示し、当該提示された各タスクに対して前記ユーザが取る行動を取得し、前記認知的特性値を基に前記各タスクにおける前記ユーザの認知的リソースの消費量を算出するシミュレーション実行部と、
を備えることを特徴とする認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項2】
前記シミュレーション実行部は、前記ユーザが前記各タスクを実行するのに必要な時間を算出することを特徴とする請求項1に記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項3】
前記認知的特性値は、前記認知的特性に関する情報の1次関数であることを特徴とする請求項1または2に記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項4】
前記認知的リソースの消費量は、前記認知的特性値の1次関数であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項5】
前記認知的特性値は、認知的情報と認知的特性値とを学習データとして機械学習することにより作成された学習モデルを用いて求められることを特徴とする請求項1または2に記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項6】
前記認知的リソースの消費量は、認知的特性値と認知的リソースの消費量とを学習データとして機械学習することにより作成された学習モデルを用いて求められることを特徴とする請求項1、2、5のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項7】
前記シミュレーション実行部は、特定のタスクについては、前記ユーザの認知的特性値に応じた確率で、当該タスクにおける前記ユーザの認知的リソースの消費量を算出することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項8】
前記タスクが提示されているときにユーザからの解説表示要求を受信すると、そのとき提示されているタスクに関する解説を表示する解説表示部を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項9】
ユーザが提示されたタスクに対して取るべき行動を選択した後に、前記ユーザからの巻き戻し要求を受信すると、前記ユーザに対して前記タスクを再度提示する巻き戻し部を更に備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項10】
ユーザが過去に行ったシミュレーション結果を記憶する記憶部を更に備えることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項11】
過去に実行されたシミュレーションの進行を前記シミュレーション実行部に予め設定するためのプリセット部を更に備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項12】
表示部と、ユーザの入力を受け付ける入力部と、を更に備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項13】
複数のユーザのユーザ情報が登録され、当該複数のユーザからネットワーク経由でアクセス可能であることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の認知的リソースシミュレーション装置。
【請求項14】
認知的情報取得部を用いてユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得するステップと、
認知的特性値算出部を用いて、前記認知的特性に関する情報を基に、前記ユーザの複数の認知的特性値を算出するステップと、
シミュレーション実行部を用いて、前記ユーザに対して生活場面における複数のタスクを順次1つずつ提示し、当該提示された各タスクに対して前記ユーザが取る行動を取得し、前記認知的特性値を基に前記各タスクにおける前記ユーザの認知的リソースの消費量を算出するステップと、
を備えることを特徴とする認知的リソースシミュレーション方法。
【請求項15】
認知的情報取得部を用いてユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得するステップと、
認知的特性値算出部を用いて、前記認知的特性に関する情報を基に、前記ユーザの複数の認知的特性値を算出するステップと、
シミュレーション実行部を用いて、前記ユーザに対して生活場面における複数のタスクを順次1つずつ提示し、当該提示された各タスクに対して前記ユーザが取る行動を取得し、前記認知的特性値を基に前記各タスクにおける前記ユーザの認知的リソースの消費量を算出するステップと、を備える方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを備えることを特徴とするゲーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知的リソースシミュレーション装置、認知的リソースシミュレーション方法、プログラムおよびゲーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
認知機能に障害を持つ人(例えば、発達障害者、認知症当事者など)に関し、物の見え方や聞こえ方あるいはその行動パターンなどをシミュレートする技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019‐534061
【特許文献2】特表2019‐533215
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「認知的リソース」とは、注意、集中、自制といった行動の決定や遂行のために必要とされる脳活動のリソース(資源)のことをいう。これは、脳活動を行う上での「脳の余裕」に相当する。こうした認知的リソースは、日常生活のタスクを遂行することにより、徐々に消費され減少する。その結果、人は疲労感を覚える。このとき、認知的リソースの消費量は、タスクの種類や性質の他、個人の認知機能にも依存する。例えば、難易度の高い作業や高度な思考などといったタスクは、多くの認知的リソースを必要とする。一方、高次脳機能の障害・疾患といった認知機能の障害は、認知的リソースを多く消費させ、これによる疲労の蓄積を引き起こすことが知られている。逆に、例えばワーキングメモリの容量の大きい人は、小さい人に比べ、同じ量のタスクをこなしても認知的リソースの消費は少ない。
【0005】
一般に、発達障害など高次脳機能に障害や疾患をもつ患者が、社会の多数派である健常者と円滑に共同生活を行うことは難しいとされている。こうした人がより円滑に共同生活を送るためには、健常者が身近にいる患者の認知的リソースの消費状況をシミュレートできることが望ましい。更に障害の有無に関わらず、複数の人物が共同生活を良好に送るためには、障害者・健常者のカテゴリーを超えて、各人が双方向的に相手の認知的事情を理解できることが望ましい。こうしたことから、個人が持つ認知機能の特性に応じて、当該個人の認知的リソースが日常生活の中でどのように消費され、疲労がどのように蓄積されていくかをシミュレートできることが求められる。
【0006】
特許文献1には、個人の生理学的測定を実行する生理学的コンポーネントに接続され、生理学的コンポーネントの測定に基づく生理学的プロファイルを示すデータから、当該個人の認知スキルの定量子を生成する装置が記載されている。また特許文献2には、喚起要素(すなわち、情動的または情緒的要素)への個人の応答を示すデータを測定し、当該データを解析して、情動的負荷の下での個人の認知能力を含むパフォーマンスメトリックを計算する装置が記載されている。しかしながらこれらの文献には、個人が持つ認知機能の特性に応じて、当該個人の認知的リソースが日常生活の中でどのように消費され、疲労がどのように蓄積されていくかをシミュレートする技術は記載されていない。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザの認知機能の特性に基づいて、日常生活における様々なタスクを遂行することで消費される認知的リソースをシミュレートし、当該ユーザが生活場面で感じる疲労を定量化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の認知的リソースシミュレーション装置は、ユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得する認知的情報取得部と、認知的特性に関する情報を基に、ユーザの複数の認知的特性値を算出する認知的特性値算出部と、ユーザに対して生活場面における複数のタスクを順次1つずつ提示し、当該提示された各タスクに対してユーザが取る行動を取得し、認知的特性値を基に各タスクにおけるユーザの認知的リソースの消費量を算出するシミュレーション実行部と、を備える。
【0009】
シミュレーション実行部は、ユーザが各タスクを実行するのに必要な時間を算出してもよい。
【0010】
認知的特性値は、認知的特性に関する情報の1次関数であってもよい。
【0011】
認知的リソースの消費量は、認知的特性値の1次関数であってもよい。
【0012】
認知的特性値は、認知的情報と認知的特性値とを学習データとして機械学習することにより作成された学習モデルを用いて求められてもよい。
【0013】
認知的リソースの消費量は、認知的特性値と認知的リソースの消費量とを学習データとして機械学習することにより作成された学習モデルを用いて求められてもよい。
【0014】
シミュレーション実行部は、特定のタスクについては、ユーザの認知的特性値に応じた確率で、当該タスクにおけるユーザの認知的リソースの消費量を算出してもよい。
【0015】
認知的リソースシミュレーション装置は、タスクが提示されているときにユーザからの解説表示要求を受信すると、そのとき提示されているタスクに関する解説を表示する解説表示部を更に備えてもよい。
【0016】
認知的リソースシミュレーション装置は、ユーザが提示されたタスクに対して取るべき行動を選択した後に、ユーザからの巻き戻し要求を受信すると、ユーザに対してタスクを再度提示する巻き戻し部を更に備えてもよい。
【0017】
認知的リソースシミュレーション装置は、ユーザが過去に行ったシミュレーション結果を記憶する記憶部を更に備えてもよい。
【0018】
認知的リソースシミュレーション装置は、過去に実行されたシミュレーションの進行をシミュレーション実行部に予め設定するためのプリセット部を更に備えてもよい。
【0019】
認知的リソースシミュレーション装置は、表示部と、ユーザの入力を受け付ける入力部と、を更に備えてもよい。
【0020】
認知的リソースシミュレーション装置は、複数のユーザのユーザ情報が登録され、当該複数のユーザからネットワーク経由でアクセス可能であってもよい。
【0021】
本発明の別の態様は、認知的リソースシミュレーション方法である。この方法は、認知的情報取得部を用いてユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得するステップと、認知的特性値算出部を用いて、認知的特性に関する情報を基に、ユーザの複数の認知的特性値を算出するステップと、シミュレーション実行部を用いて、ユーザに対して生活場面における複数のタスクを順次1つずつ提示し、当該提示された各タスクに対してユーザが取る行動を取得し、認知的特性値を基に各タスクにおけるユーザの認知的リソースの消費量を算出するステップと、を備える。
【0022】
本発明の更に別の態様は、プログラムである。このプログラムは、認知的情報取得部を用いてユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得するステップと、認知的特性値算出部を用いて、認知的特性に関する情報を基に、ユーザの複数の認知的特性値を算出するステップと、シミュレーション実行部を用いて、ユーザに対して生活場面における複数のタスクを順次1つずつ提示し、当該提示された各タスクに対してユーザが取る行動を取得し、認知的特性値を基に各タスクにおけるユーザの認知的リソースの消費量を算出するステップと、を備える方法をコンピュータに実行させる。
【0023】
本発明の更に別の態様は、ゲーム装置である。このゲーム装置は、前述のプログラムを備える。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ユーザの認知機能の特性に基づいて、日常生活における様々なタスクを遂行することにより消費される認知的リソースをシミュレートし、当該ユーザが生活場面で感じる疲労を定量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置の機能ブロック図である。
【
図3】認知的特性値を算出する処理のフローを示す図である。
【
図6】表示装置に表示される画面の例である。(a)は、健常者に対して表示される画面である。(b)は、「作業記憶」に関する認知的特性値が低い者に対して表示される画面である。
【
図8】ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置の機能ブロック図である。
【
図9】解説表示部が表示した「解説ボタン」と解説の例である。
【
図10】ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置の機能ブロック図である。
【
図12】ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置の機能ブロック図である。
【
図13】ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置の機能ブロック図である。
【
図14】ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置の機能ブロック図である。
【
図15】ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置の利用シーンの模式図である。
【
図16】第2の実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション方法の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略する。
【0028】
[第1の実施の形態]
図1に、第1の実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置1の機能ブロックを示す。認知的リソースシミュレーション装置1は、ユーザの入力を基に当該ユーザの認知的リソースの消費をシミュレートし、当該ユーザの疲労を定量化する。認知的リソースシミュレーション装置1は、認知的情報取得部10と、認知的特性値計算部20と、シミュレーション実行部30と、を備える。認知的リソースシミュレーション装置1は、外部の表示装置200および入力装置300に接続される。表示装置200は、認知的リソースシミュレーション装置1からの画像を表示するためのディスプレイであり、例えば液晶ディスプレイ、ビデオプロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイなどの任意の好適なディスプレイであってよい。入力装置300は、ユーザが認知的リソースシミュレーション装置1に情報を入力するための入力インターフェースであり、例えばタッチパネル、マウス、キーボード、ジョイスティック、ゲームパッドなどの任意の好適な入力インターフェースであってよい。
【0029】
認知的情報取得部10は、以下のように、ユーザの入力を基に、当該ユーザの認知的特性に関する情報(以下、「認知的情報」という)を取得する。ここで「認知的特性」とは、例えば、「朝起きたときの認知能力(朝型)」、「注意力」、「実行機能」、「作業記憶」などといった、認知的リソースのタイプを表す特徴のことをいう。認知的情報取得部10は、先ず表示装置200に、ユーザの認知的情報を取得するための質問を表示する。例えば、朝型かどうかに関する認知的情報を得る場合は、「朝早く起きるのは苦痛か?」という質問を表示する。次に認知的情報取得部10は、当該質問への回答候補を、次の5つの選択肢「1.全く当てはまらない」「2.余り当てはまらない」「3.どちらでもない」「4.少し当てはまる」「5.とても当てはまる」で表示する。ユーザは、この中から自分に当てはまる回答を選択し、入力装置300を用いてこれを入力する。
図2に、表示装置200に表示された質問の例を示す。
【0030】
別の質問の例としては、注意力に関する認知的特性を得るための質問「よく忘れ物をしてしまうか?」、実行機能に関する認知的特性を得るための質問「何かをするとき、作業を順序立てて行うのが難しいことがあるか?」、作業記憶に関する認知的特性を得るための質問「直前に作業した内容を思い出せないことがあるか?」等がある。また前述の「よく忘れ物をしてしまうか?」という質問は、注意力の他に、作業記憶に関する認知的特性を得るために使われてもよい。すなわち同じ質問に対する回答が、異なる複数の認知的特性に関する情報を取得するために使われてもよい。逆に異なる複数の質問に対する回答が、同じ認知的特性に関する情報を取得するために使われてもよい。なお、上記の例では回答は5つの選択肢の中から選択するものであったが、これに限定されず、選択肢の数は5以外の任意の数であってもよい。
【0031】
認知的情報取得部10は、1つの質問を表示してその回答を得ると次の質問に移ることを繰り返して、所定の数の質問を出すことにより、目的とするユーザの認知的情報を取得する。
【0032】
認知的特性値計算部20は、認知的情報取得部10によって得られた認知的情報を基に、ユーザの認知的特性値を算出する。
図3に、認知的特性値を算出する処理のフローを示す。ここで「認知的特性値」とは、認知的リソースシミュレーションを実行するのに必要な、認知的特性ごとのユーザの認知能力を示す値のことをいう。この例では、認知的情報取得部10は、以下の5つの質問を出して、ユーザの認知的情報を得る。
Q1:朝早く起きるのは苦手か?
Q2:普段気が散ることが多いか?
Q3:よく忘れ物をしてしまうか?
Q4:料理をするのは得意か?
Q5:片付けは得意か?
先ず認知的特性値計算部20は、これらの質問への各回答に対し、所定の得点を与える。ここで、各質問Qn(n=1,2,…、5)に対する得点を[An]で表す。例えば、各回答与えられる得点は以下のようになる。
[A1]=2
[A2]=4
[A3]=3
[A4]=3
[A5]=4
【0033】
次に認知的特性値計算部20は、前述の得点と所定の係数とを用いて、認知的特性値を計算する。この例では、以下の4種類の認知的特性を対象とする。
特性1:朝型
特性2:注意力
特性3:作業記憶
特性4:実行機能
ここで、各特性n(n=1,2,…、4)に関する認知的特性値を[Fn]で表す。例えば、各認知的特性値の計算に以下の得点と係数を使う。
[F1]の計算には、得点[A1]と係数aを使う。
[F2]の計算には、得点[A2]と係数b、得点[A3]と係数cを使う。
[F3]の計算には、得点[A3]と係数dを使う。
[F4]の計算には、得点[A3]を係数e、得点[A4]を係数fを使う。
例えば、各認知的特性値は得点の1次関数であるとして、以下のように算出される。
[F1]=a[A1]
[F2]=b[A2]+c[A3]
[F3]=d[A3]
[F4]=e[A4]+f[A5]
前述で得られた得点により、各認知的特性値は以下のように求まる。
[F1]=2a
[F2]=4b+3c
[F3]=3d
[F4]=3e+4f
【0034】
前述の例では、各認知的特性値は得点の1次関数であるとした。しかしこれに限定されず、各認知的特性値は、得点の任意の好適な関数(例えば、冪関数、指数関数、対数関数など)であってもよい。
【0035】
シミュレーション実行部30は、認知的特性値計算部20によって計算された認知的特性値を基に、ユーザの認知的リソースの消費に関するシミュレーションを実行する。
図4に、シミュレーションのフローを示す。シミュレーションは、前述の認知的情報の取得と同様に、ユーザへの質問とそれに対する回答を繰り返すことにより実行される。
【0036】
認知的リソースの消費に関するシミュレーションは、日常生活のある生活場面について実行される。ここでいう生活場面とは、例えば「朝起きてから通勤・通学のために家を出るまでの場面」、「学校に着いてから午前中の授業が終わるまでの場面」、「職場で特定の業務を開始してから終了するまでの場面」「映画を見るために家を出てから見終わるまでの場面」などである。このうち、例えば「朝起きてから通勤・通学のために家を出るまでの場面」の中には、「起床する」、「朝食を取る」、「身支度をする」、「忘れ物がないか確認する」、「家を出る」などといったタスクがある。シミュレーション実行部30は、表示装置200に、これらのタスクについての質問を順次表示する。ユーザは、質問に対し、自分ならこうするであろう行動を選んで答えることによって、これらのタスクを仮想的にこなしていく。シミュレーション実行部30は、ユーザが各タスクをこなすたびに、当該ユーザの認知的リソースの消費量と、当該タスクをこなすのに必要な時間(以下、「タスク時間」という)を算出する。各タスクにおける認知的リソースの消費量とタスク時間は、当該タスクの特徴と、当該ユーザが持つ認知的特性値とに応じて、予め定めておく。例えば、難しいタスクであればあるほど、あるいは当該ユーザの認知的特性値が低ければ低いほど、認知的リソースの消費量は多く、タスク時間は長いように定められる。場合によっては、ユーザがうまくタスクをこなすことができず、認知的リソースと時間だけが消費されることもある。
【0037】
シミュレーション実行部30は、認知的特性値と所定の係数とを用いて、認知的リソースの消費量およびタスク時間を計算する。例えば、認知的リソース消費量およびタスク時間は、それぞれ認知的特性値[F1]、[F2]、…、[Fn]の1次関数であるとして、以下のように算出される。
認知的リソース消費量=s1[F1]+s2[F2]+…+sn[Fn]
タスク時間=t1[F1]+t2[F2]+…+tn[Fn]
ここで、s1、…、snおよびt1、…、tnは定数であり、タスクごとに異なる。
【0038】
前述の例では、認知的リソース消費量およびタスク時間は認知的特性値の1次関数であるとした。しかしこれに限定されず、認知的リソース消費量およびタスク時間は、認知的特性値の任意の好適な関数(例えば、冪関数、指数関数、対数関数など)であってもよい。
【0039】
シミュレーション実行部30は、ユーザに対し、特定の生活場面における複数のタスクを、表示装置200に順次1つずつ表示し、各タスクに対してどのような行動を取るかを入力させる。シミュレーション実行部30は、ユーザが各タスクに対する行動を入力するごとに、当該ユーザの認知的リソースの消費量とタスク時間とを算出する。表示装置200に表示されるタスクは、それより前に表示されたタスクに対してユーザが取った行動と、ユーザが持つ認知的特性値とによって決まる。全てのタスクが終了すると、シミュレーション結果として、各タスクにおいてユーザが取った行動、認知的リソースの消費量、全体の経過時間(タスク時間の合計)などが提示される。
【0040】
図4に、「朝起きてから通勤・通学のために家を出るまでの場面」において「起床する」というタスクをこなすときのシミュレーションのフローを示す。このフローは、S1~S14の処理ステップを含む。以下、このフローについてステップごとに説明する。
【0041】
ステップS1:最初にユーザに対し、「起きますか?」という質問が出される。
【0042】
ステップS2:ステップS1でユーザが「イエス」と回答すると、処理はステップS2に移る。ステップ2で、ユーザは「起きる」という行動を取る。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。
【0043】
ステップS3:ステップS1でユーザが「ノー」と回答すると、処理はステップS3に移る。ステップS3で、ユーザは「あと10分寝る」という状態となる。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。
【0044】
ステップS4:ステップS2の後、処理はステップS4に移る。ステップS4で、ユーザの朝型に関する認知的特性値[F1]が値5と比較される。
【0045】
ステップS5:ステップS4で[F1]≧5であった場合、処理はステップS5に移る。ステップS5で、ユーザは「起きられた」という状態となる。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。処理は、次のタスクに関する質問に移る。
【0046】
ステップS6:ステップS4で[F1]<5であった場合、処理はステップS6に移る。ステップS6で、ユーザは「身体がうまく動かない」という状態となる。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。
【0047】
ステップS7:ステップS6の後、処理はステップS7に移る。ステップS7で、ユーザの朝型に関する認知的特性値[F1]が値3と比較される。
【0048】
ステップS8:ステップS7で[F1]≧3であった場合、処理はステップS8に移る。ステップS8で、ユーザに対し、「それでも起きますか?」という質問が出される。
【0049】
ステップS9:ステップS8でユーザが「イエス」と回答すると、処理はステップS9に移る。ステップ9で、ユーザは「起きる」という行動を取る。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。処理は、次のタスクに関する質問に移る。
【0050】
ステップS10:ステップS8でユーザが「ノー」と回答すると、処理はステップS10に移る。ステップS10で、ユーザは「あと10分寝る」という状態となる。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。処理は、次のタスクに関する質問に移る。
【0051】
ステップS11:ステップS3の後、処理はステップS11に移る。ステップS11で、ユーザの朝型に関する認知的特性値[F1]が値3と比較される。
【0052】
ステップS12:ステップS11で[F1]≧3であった場合、処理はステップS12に移る。ステップS12で、ユーザは「10分後に起床した」という状態となる。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。処理は、次のタスクに関する質問に移る。
【0053】
ステップS13:ステップS11で[F1]<3であった場合、処理はステップS13に移る。ステップS13で、ユーザは「寝坊した」という状態となる。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。処理は、次のタスクに関する質問に移る。
【0054】
ステップS14:ステップS7で[F1]<3であった場合、処理はステップS14に移る。ステップS14で、ユーザは「寝坊した」という状態となる。このとき消費された認知的リソースとタスク時間とが算出される。処理は、次のタスクに関する質問に移る。
【0055】
図5に、シミュレーションの実行画面の一例として、ステップS8で表示される画面を示す。
図5の画面には「まだ眠いですね。それでも起きますか?」という質問が表示され、ユーザは「選択肢1:起きる」か「選択肢2:あと10分寝る」のいずれかを選択して回答する。
図5の画面上部には、ユーザの認知的リソース初期値(100)と、ユーザの認知的リソースの残余値(90)と、家を出るまでの残り時間(80分)と、が表示される。
【0056】
この実施の形態によれば、ユーザの認知機能の特性に基づいて、日常生活における様々なタスクを遂行することにより消費される認知的リソースをシミュレートし、当該ユーザが生活場面で感じる疲労を定量化することができる。
【0057】
前述の実施の形態では、ユーザが質問に対し、自分ならこうするであろう行動を選んでタスクをこなす例を説明した。これによりユーザは、自分の認知的リソースの消費について知ることができた。しかし本認知的リソースシミュレーション装置の使い方はこれに限られない。例えば健常者が障害者の立場に立ってシミュレーションを実行することにより、日常生活の中で障害者がどのような困難を経験しているかを理解することができる。逆に障害者が健常者の立場に立ってシミュレーションを実行することにより、自身が持つ特異的な感覚を超えて健常者を理解することができる。このような使い方により、様々な立場の人が共同生活を送る上で、障害者・健常者のカテゴリーを超えて各人が双方向的に相手の事情を理解し合うことができる。
【0058】
単身で仕事をこなしたり日常生活を送ったりする場合も、過度の疲労を避けるためには、自分がどのタスクをどの程度遂行できるかを推測できることが望ましい。本認知的リソースシミュレーション装置によれば、自分の認知的特性に合わせて認知的リソースをシミュレートできるだけでなく、日常の中でどのような行動を選択すれば認知的リソースを節約できるかを予めシミュレートしておくこともできる。
【0059】
更に本認知的リソースシミュレーション装置によって得られるユーザの行動パターンや認知的リソースの消費に関する情報は、当該ユーザの就労や就学の際のマッチングや支援要請の援助にも使うこともできる。
【0060】
(変形例1:タスク時間を算出しないもの)
前述の実施の形態では、シミュレーション実行部30は、認知的リソースの消費に加えて、タスク時間も算出してシミュレートした。しかし実施の形態によっては、このタスク時間は必ずしも算出されなくてもよい。すなわちある実施の形態では、シミュレーション実行部は、タスクを実行することにより消費される認知的リソースは算出するが、タスクをこなすのに必要なタスク時間は算出しない。この実施の形態によれば、よりシンプルかつ安価な認知的リソースシミュレーション装置を実現することができる。
【0061】
(変形例2:認知的特性値を機械学習により求めるもの)
前述の実施の形態では、認知的情報と認知的特性値との関係は、予め定められたものであった。具体的には、前述の例では、認知的特性値は、認知的情報の1次関数であった。このような場合、認知的情報と認知的特性値との関係は、一般に知能検査や認知機能検査の結果を基に定められる。しかしながらある実施の形態では、上記に代えて、認知的特性値は、認知的情報と認知的特性値とを学習データとして機械学習することにより作成された学習モデルを用いて求められてもよい。認知的特性値は、「朝型」、「注意力」、「実行機能」、「作業記憶」といった認知的特性に応じた認知的情報と大きな相関を持つ。したがって、これらの認知的情報を学習データとして機械学習を行うことにより、認知的特性値を高い精度で求めることができる。
【0062】
(変形例3:認知的リソースの消費量を機械学習により求めるもの)
前述の実施の形態では、認知的特性値と認知的リソースの消費量との関係は、予め定められたものであった。具体的には、前述の例では、認知的リソースの消費量は、認知的特性値の1次関数であった。このような場合、認知的特性値と認知的リソースの消費量との関係は、一般に臨床的知見や先行研究の結果を基に定められる。上記に代えて、ある実施の形態では、認知的リソースの消費量は、認知的特性値と認知的リソースの消費量とを学習データとして機械学習することにより作成された学習モデルを用いて求められてもよい。各タスクにおける認知的リソースの消費量は、「朝型」、「注意力」、「実行機能」、「作業記憶」といった認知的特性に応じた認知的特性値と大きな相関を持つ。したがって、これらの認知的特性値を学習データとして機械学習を行うことにより、認知的リソースの消費量を高い精度で求めることができる。
【0063】
(変形例4:ユーザの認知的特性値に応じた確率で、認知的リソースの消費量を算出するもの)
前述の実施の形態では、シミュレーションを実行するとき、あるステップから次のステップへの遷移は、一義的に決まるものであった。しかしこれに限定されず、あるステップから次のステップへの遷移は、確率的なものであってもよい。実際、日常生活においても偶発的・確率的に発生するイベントがある。例えば「朝起きてから通勤・通学のために家を出るまでの場面」において、「鍵をどこに置いたか思い出せない」といったことは、こうしたイベントの例である。このようなイベントは偶発的なものではあるが、その発生確率は個人の特定の認知能力に依存する。例えば上記の「鍵をどこに置いたか思い出せない」というイベントは、個人の認知的特性のうち特に「作業記憶」に関する認知的特性値が低いほど発生しやすくなる。
【0064】
このとき、「鍵を見つける」というタスクにおける認知的リソースの消費量は、ユーザが自分の取る行動を回答することに代えて、ユーザの「作業記憶」に関する認知的特性値に応じた確率を基に、シミュレーション実行部30が自動的に計算してもよい。
図6に、このような実施の形態において、表示装置200に表示される画面の例を示す。この画面には、「鍵をどこに置きましたか?」という質問とともに「ルーレット」の絵が示される。ルーレットは10個のパネルに分割され、各パネルに「思い出す」「忘れている」のいずれかが表示される。処理ステップが進むとルーレットが回転した後、いずれかのパネルの位置で止まる。止まった位置のパネルに表示された「思い出す」「忘れている」のいずれかに応じて、認知的リソースの消費量が計算される。
【0065】
図6(a)は、健常者に対して表示される画面である。この例では、10枚のパネルのうち5枚が「思い出す」であり、5枚が「忘れている」である。すなわちこの場合、「思い出す」となる確率と、「忘れている」となる確率は等しい。
【0066】
図6(b)は、「作業記憶」に関する認知的特性値が低い者に対して表示される画面である。10枚のパネルのうち5-r[F3]枚が「思い出す」であり、5+r[F3]枚が「忘れている」である。rは予め定められた定数である。[F3]は短期記憶に関する認知的特性値である。5-r[F3]および5+r[F3]は整数値となるよう四捨五入が行われる。
【0067】
図7に、
図6(b)の画面の遷移を示す。
図6(a)および(b)から明らかなように、「作業記憶」に関する認知的特性値が低い者は、健常者に比べて「忘れている」となる確率が高い。その結果、「忘れている」場合の認知的リソースの消費量が算出される確率が高くなる。
【0068】
以上述べたように、この実施の形態では、シミュレーション実行部30は、ユーザの認知的特性値に応じた確率で、特定のタスクにおける当該ユーザの認知的リソースの消費量を算出する。これにより、日常生活で経験される偶発的なイベントをシミュレーションに反映することができる。
【0069】
(変形例5:解説表示機能を備えるもの)
図8に、ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置2の機能ブロック図を示す。認知的リソースシミュレーション装置2は、認知的情報取得部10と、認知的特性値計算部20と、シミュレーション実行部30と、解説表示部40と、を備える。すなわち認知的リソースシミュレーション装置2は、
図1の認知的リソースシミュレーション装置1の構成に追加して、解説表示部40を備える。認知的リソースシミュレーション装置2のその他の構成は、認知的リソースシミュレーション装置1と共通する。以下、認知的リソースシミュレーション装置1との相違点について説明し、重複した説明は省略する。
【0070】
解説表示部40は、シミュレーション実行部30によりあるタスクが提示されているときにユーザからの解説表示要求を受け付ける。具体的には、例えばタスクの表示画面に、クリック可能な「解説ボタン」を表示する。ユーザが「解説ボタン」をクリックすると、解説表示部40は、そのとき表示されているタスクに関する解説を、画面にオーバーラップして表示する。
【0071】
例えば発達障害者の場合、感覚過敏等の発達障害に特有の症状に関わるイベントが発生する場合がある。また定型発達者の場合、発達障害者等が生活上経験しないイベントが発生する場合もある。このようなとき、当該イベントに関する解説を表示することにより、ユーザの理解が促進する。
図9に、解説表示部40が表示した「解説ボタン」と当該イベントに関する解説の例を示す。
【0072】
この実施の形態によれば、ユーザは現在表示されているタスクの解説を読むことができるので、利便性が向上する。
【0073】
(変形例5:巻き戻し機能を備えるもの)
図10に、ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置3の機能ブロック図を示す。認知的リソースシミュレーション装置2は、認知的情報取得部10と、認知的特性値計算部20と、シミュレーション実行部30と、巻き戻し部50と、を備える。すなわち認知的リソースシミュレーション装置3は、
図1の認知的リソースシミュレーション装置1の構成に追加して、巻き戻し部50を備える。認知的リソースシミュレーション装置3のその他の構成は、認知的リソースシミュレーション装置1と共通する。以下、認知的リソースシミュレーション装置1との相違点について説明し、重複した説明は省略する。
【0074】
巻き戻し部50は、ユーザが提示されたあるタスクに対して取るべき行動を選択した後に、このユーザからの巻き戻し要求を受信すると、このタスクを再度提示する。これによりユーザは、このタスクに対する行動の選択をやり直すことができる。
【0075】
図11に、こうした巻き戻しのフローの例を示す。図示されるタスクに対し、ユーザが先ず選択肢1を選んだとする。これにより、当該ユーザの認知的リソースは3単位消費され、時間は5単位経過した。ここでユーザが巻き戻し要求をすると、巻き戻し部50は当該タスクを再度提示する。これによりユーザは、当該タスクに対する行動を選び直すことができる。ここでユーザは選択肢2を選ぶとする。これにより、当該ユーザの認知的リソースは1単位消費され、時間は3単位経過する。すなわちユーザは、行動を選び直すことにより、自分にとってよりよい(すなわち、認知的リソースを節約できる)行動を知ることができる。
【0076】
この実施の形態によれば、ユーザは、生活場面でどのような行動を選択すれば効果的に認知的リソースを節約し、過度の疲労を防げるかについて試行錯誤することができる。
【0077】
(変形例6:過去に行ったシミュレーション結果を記憶できるもの)
図12に、ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置4の機能ブロック図を示す。認知的リソースシミュレーション装置4は、認知的情報取得部10と、認知的特性値計算部20と、シミュレーション実行部30と、記憶部60と、を備える。すなわち認知的リソースシミュレーション装置4は、
図1の認知的リソースシミュレーション装置1の構成に追加して、記憶部60を備える。認知的リソースシミュレーション装置4のその他の構成は、認知的リソースシミュレーション装置1と共通する。以下、認知的リソースシミュレーション装置1との相違点について説明し、重複した説明は省略する。
【0078】
記憶部60は、ユーザが過去に行ったシミュレーション結果を記憶する。これによりユーザは、加齢や疾患の進行に伴う認知能力の悪化、あるいは治癒に伴う認知能力の改善などを継時的にシミュレートすることができる。
【0079】
(変形例7:プリセット機能を備えるもの)
図13に、ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置5の機能ブロック図を示す。認知的リソースシミュレーション装置5は、認知的情報取得部10と、認知的特性値計算部20と、シミュレーション実行部30と、プリセット部70と、を備える。すなわち認知的リソースシミュレーション装置5は、
図1の認知的リソースシミュレーション装置1の構成に追加して、プリセット部70を備える。認知的リソースシミュレーション装置5のその他の構成は、認知的リソースシミュレーション装置1と共通する。以下、認知的リソースシミュレーション装置1との相違点について説明し、重複した説明は省略する。
【0080】
プリセット部70は、過去に実行されたシミュレーションの進行をシミュレーション実行部30に設定する。これにより、特定の病気や障害などの典型例について過去に実行されたシミュレーションを自動的に再現することができる。
【0081】
(変形例8:表示部と入力部を備えるもの)
図14に、ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置6の機能ブロック図を示す。認知的リソースシミュレーション装置6は、認知的情報取得部10と、認知的特性値計算部20と、シミュレーション実行部30と、表示部80と、入力部90と、を備える。すなわち認知的リソースシミュレーション装置6は、
図1の認知的リソースシミュレーション装置1の構成に追加して、表示部80と、入力部90と、を備える。認知的リソースシミュレーション装置6のその他の構成は、認知的リソースシミュレーション装置1と共通する。以下、認知的リソースシミュレーション装置1との相違点について説明し、重複した説明は省略する。
【0082】
認知的リソースシミュレーション装置1は、ユーザ対する質問やシミュレーション結果を外部の表示装置200に表示した。また認知的リソースシミュレーション装置1は、ユーザからの回答や要求を外部の入力装置300から入力した。認知的リソースシミュレーション装置6は、外部の表示装置200および入力装置300に代えて、表示部80および入力部90を一体として備えている点で、認知的リソースシミュレーション装置1と異なる。この実施の形態によれば、外部の表示装置や入力装置を必要とすることなく、単体でシミュレーションを実行することができる。
【0083】
(変形例9:複数ユーザのユーザ情報が登録され、当該複数ユーザからネットワーク経由でアクセス可能なもの)
図15に、ある実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション装置7の利用シーンを模式的に示す。認知的リソースシミュレーション装置7は、複数のユーザのユーザ情報が登録され、当該複数のユーザからネットワーク経由でアクセス可能である点で
図1の認知的リソースシミュレーション装置1と異なる。
図15の例では、認知的リソースシミュレーション装置7にはユーザA、BおよびCのユーザ情報が登録され、これらのユーザからのネットワーク経由でアクセス可能である。この実施の形態によれば、認知的リソースシミュレーション装置7上にユーザ個人のアカウントを登録することにより、シミュレーション環境が変わってもユーザ自身のシミュレーション結果(リザルト)の変化を参照することができる。また遠隔地であっても、家族や同僚間でリザルトを共有することができるので、相互理解を促進することができる。
【0084】
[第2の実施の形態]
図16に、第2の実施の形態に係る認知的リソースシミュレーション方法の処理のフローチャートを示す。ステップS100で本方法は、認知的情報取得部を用いてユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得する。ステップS200で本方法は、認知的特性値算出部を用いて、認知的特性に関する情報を基に、ユーザの複数の認知的特性値を算出する。ステップS300で本方法は、シミュレーション実行部を用いて、ユーザに対して生活場面における複数のタスクを順次1つずつ提示し、当該提示された各タスクに対してユーザが取る行動を取得し、認知的特性値を基に各タスクにおけるユーザの認知的リソースの消費量を算出する。
【0085】
この実施の形態によれば、ユーザの認知機能の特性に基づいて、日常生活における様々なタスクを遂行することにより消費される認知的リソースをシミュレートし、当該ユーザが生活場面で感じる疲労を定量化することができる。
【0086】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態はプログラムである。このプログラムは、前述の第2の実施の形態に係る方法をコンピュータに実行させる。この実施の形態によれば、ユーザの認知機能の特性に基づいて、日常生活における様々なタスクを遂行することにより消費される認知的リソースをシミュレートし、当該ユーザが生活場面で感じる疲労を定量化することを、Webアプリ、スマホアプリ、パーソナルコンピューターや家庭用ゲーム機等のソフトウェアとして実現することができる。
【0087】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態はゲーム装置である。このゲーム装置は、前述の第3の形態のプログラムを備える。このゲーム機は、キャラクター、動画、音声、音楽などを備えてもよい。この実施の形態によれば、ユーザの認知機能の特性に基づいて、日常生活における様々なタスクを遂行することにより消費される認知的リソースをシミュレートし、当該ユーザが生活場面で感じる疲労を定量化することを、ゲームを楽しみながら体験することができる。
【0088】
以上、本発明を実施例を基に説明した。これらの実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0089】
1・・認知的リソースシミュレーション装置
2・・認知的リソースシミュレーション装置
3・・認知的リソースシミュレーション装置
4・・認知的リソースシミュレーション装置
5・・認知的リソースシミュレーション装置
6・・認知的リソースシミュレーション装置
7・・認知的リソースシミュレーション装置
10・・認知的情報取得部
20・・認知的特性値計算部
30・・シミュレーション実行部
40・・解説表示部
50・・巻き戻し部
60・・記憶部
70・・プリセット部
80・・表示部
90・・入力部
200・・表示装置
300・・入力装置
S100・・ユーザの複数の認知的特性に関する情報を取得するステップ
S200・・ユーザの複数の認知的特性値を算出するステップ
S300・・ユーザの認知的リソースの消費量を算出するステップ