(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086979
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20220602BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20220602BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20220602BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20220602BHJP
C08F 8/00 20060101ALN20220602BHJP
【FI】
C08F220/10
C08L33/14
C09J133/04
C09D133/04
C08F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084088
(22)【出願日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2020198559
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤石 良一
(72)【発明者】
【氏名】松野 真佳
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG071
4J002ER006
4J002FD146
4J002GH00
4J002GJ00
4J002GJ01
4J038CG041
4J038CG141
4J038CG172
4J038FA072
4J038GA11
4J038KA03
4J038PB07
4J040DF031
4J040DF061
4J040DF102
4J040GA20
4J040JB09
4J040KA16
4J040NA15
4J100AL03P
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL09P
4J100AL62R
4J100AL66R
4J100AM21S
4J100AM24R
4J100BA02R
4J100BA03Q
4J100BA03S
4J100BA05P
4J100BA15Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC43S
4J100BC53P
4J100CA05
4J100CA23
4J100CA31
4J100DA47
4J100HA53
4J100HC51
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA05
(57)【要約】
【課題】多様な種類の材質の表面に強固に結合する硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】モノマーAとモノマーBを含有する硬化性樹脂組成物であって、モノマーAが、式(I)[式中、R
1は、水素原子またはメチルを表し;L
1は、単結合、-O-等を表し;W
1は、単結合、またはC
1-20アルキレンを表し;R
2は、ヒドロキシル等を表す]で表される1以上の化合物であり、モノマーBが、式(II)[式中、R
3は、水素原子またはメチルを表し;W
2は、単結合または置換されていてもよいC
1-20アルキレンを表し;L
2は、単結合等を表し;W
3は、単結合等を表し;R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子またはヒドロキシルを表す]で表される1以上の化合物である硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーAとモノマーBを含有する硬化性樹脂組成物であって、
モノマーAが、式(I):
【化1】
[式中、R
1は、水素原子またはメチルを表し;
L
1は、単結合、-O-、-NH-、-NR
6-、-NHC(O)O-、または-NHC(O)NH-を表し;
W
1は、単結合、またはC
1-20アルキレンを表し;
R
2は、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC
1-6アルコキシ、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフェノキシ、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基、または(メタ)アクリロイルオキシを表し;
R
6は、置換されていてもよいC
1-8アルキルを表す]で表される1以上の化合物であり、
モノマーBが、式(II):
【化2】
[式中、R
3は、水素原子またはメチルを表し;
W
2は、単結合、または置換されていてもよいC
1-20アルキレンを表し;
L
2は、単結合、-O-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;
W
3は、単結合、C
1-6アルキレン、C
2-6アルケニレンを表し;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;
ここにおいて、R
4およびR
5がいずれも水素原子であることはない]で表される1以上の化合物である硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
L1が、単結合または-O-である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
R2が、
(1)メチル、
(2)ヒドロキシル、
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ、
(4)置換されていてもよい3員~8員の飽和ヘテロ環基、または
(5)置換されていてもよいフェニル
である請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
W1が、単結合またはC1-6アルキレンであり、W2がヒドロキシルで置換されていてもよいC1-6アルキレンである請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
L2が-OC(O)-である請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
W3が、単結合、またはC2-6アルケニレンである請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
モノマーBが、R4およびR5がヒドロキシルである化合物を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
組成物中のモノマーBの含有量が10.0質量%超かつ50.0質量%未満である請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
架橋性モノマーをさらに含有する請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
架橋性モノマーが、多官能(メタ)アクリレートおよび/または多官能イソシアネートである請求項9記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
モノマーAおよびモノマーBを構成単位として含むポリマーを含有する粘接着剤または表面コート剤であって、
モノマーAが、式(I):
【化3】
[式中、R
1は、水素原子またはメチルを表し;
L
1は、単結合、-O-、-NH-、-NR
6-、-NHC(O)O-、または-NHC(O)NH-を表し;
W
1は、単結合、またはC
1-20アルキレンを表し;
R
2は、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC
1-6アルコキシ、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフェノキシ、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基、または(メタ)アクリロイルオキシを表し;
R
6は、置換されていてもよいC
1-8アルキルを表す]で表される1以上の化合物であり、
モノマーBが、式(II):
【化4】
[式中、R
3は、水素原子またはメチルを表し;
W
2は、単結合、または置換されていてもよいC
1-20アルキレンを表し;
L
2は、単結合、-O-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;
W
3は、単結合、C
1-6アルキレン、またはC
2-6アルケニレンを表し;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;
ここにおいて、R
4およびR
5がいずれも水素原子であることはない]で表される1以上の化合物である粘接着剤または表面コート剤。
【請求項12】
W3が、単結合、またはC2-6アルケニレンである請求項11記載の粘接着剤または表面コート剤。
【請求項13】
式(IIa):
【化5】
[式中、R
3aは、水素原子またはメチルを表し;
W
2aは、単結合、または置換されていてもよいC
3-20アルキレンを表し;
L
2aは、単結合、-O-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;
W
3aは、C
2-6アルケニレンを表し;
R
4aおよびR
5aは、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;
ここにおいて、R
4aおよびR
5aがいずれも水素原子であることはない]で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸誘導体をモノマー成分として含有する硬化性樹脂組成物、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを構成単位として含むポリマーを含有する粘接着剤、および(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを構成単位として含むポリマーを含有する表面コート剤に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や航空機等の軽量化を代表例として、複数の異なる材質の材料を併用する、いわゆるマルチマテリアル化が進んでいる。マルチマテリアル化では、例えば、鉄とアルミニウム合金、金属と樹脂、金属とCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)等、異なる材質の材料同士を接合(以下、異種材料の接合という)することで、軽量化や単一の材料では達成しにくい機能の付与等が可能となる。異種材料の接合においては、溶接による接合が適用できない場合があるため、多様な種類の材質の接合が可能な接着技術が検討されている。
【0003】
特許文献1には、多様な種類の材質の表面に強固に結合する硬化性樹脂組成物、粘接着剤および表面コート剤として、(メタ)アクリル酸誘導体であるベースモノマーと、架橋剤と、重合開始剤と、ベンゼン環状にヒドロキシルまたはB(OH)2を有する(メタ)アクリルアミド誘導体である粘接着性モノマーと、を構成要素とする硬化性樹脂組成物、ならびに上記ベースモノマーと粘接着性モノマーとを構成単位として含むポリマーを含有する粘接着剤および表面コート剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された粘接着性モノマーであるドーパミンアクリルアミドはベースモノマーに対する溶解性が高いものではなく、改善の余地がある。
【0006】
したがって、本発明は、多様な種類の材質に、強固に結合するさらなる硬化性樹脂組成物、粘接着剤、および表面コート剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明においては、例えば、以下の〔1〕~〔15〕等が提供される。
【0008】
〔1〕モノマーAとモノマーBを含有する硬化性樹脂組成物であって、
モノマーAが、式(I):
【化1】
[式中、R
1は、水素原子またはメチルを表し;
L
1は、単結合、-O-、-NH-、-NR
6-、-NHC(O)O-、または-NHC(O)NH-を表し;
W
1は、単結合、またはC
1-20アルキレンを表し;
R
2は、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC
1-6アルコキシ、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフェノキシ、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基、または(メタ)アクリロイルオキシを表し;
R
6は、置換されていてもよいC
1-8アルキルを表す]で表される1以上の化合物であり、
モノマーBが、式(II):
【化2】
[式中、R
3は、水素原子またはメチルを表し;
W
2は、単結合、または置換されていてもよいC
1-20アルキレンを表し;
L
2は、単結合、-O-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;
W
3は、単結合、C
1-6アルキレン、C
2-6アルケニレンを表し;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;
ここにおいて、R
4およびR
5がいずれも水素原子であることはない]で表される1以上の化合物である硬化性樹脂組成物。
【0009】
〔2〕L1が、単結合または-O-である上記〔1〕記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
〔3〕R2が、
(1)メチル、
(2)ヒドロキシル、
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ、
(4)置換されていてもよい3員~8員の飽和ヘテロ環基、または
(5)置換されていてもよいフェニル
である上記〔1〕または〔2〕記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
〔4〕W1が、単結合またはC1-6アルキレンであり、W2がヒドロキシルで置換されていてもよいC1-6アルキレンである上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
〔5〕L2が-OC(O)-である上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0013】
〔6〕W3が、単結合、またはC2-6アルケニレンである上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0014】
〔7〕モノマーBが、R4およびR5がヒドロキシルである化合物を含む上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0015】
〔8〕組成物中のモノマーBの含有量が10.0質量%超かつ50.0質量%未満である上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0016】
〔9〕架橋性モノマーをさらに含有する上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0017】
〔10〕架橋性モノマーが、多官能(メタ)アクリレートおよび/または多官能イソシアネートである上記〔9〕記載の硬化性樹脂組成物。
【0018】
〔11〕モノマーAおよびモノマーBを構成単位として含むポリマーを含有する粘接着剤であって、
モノマーAが、式(I):
【化3】
[式中、R
1は、水素原子またはメチルを表し;
L
1は、単結合、-O-、-NH-、-NR
6-、-NHC(O)O-、または-NHC(O)NH-を表し;
W
1は、単結合、またはC
1-20アルキレンを表し;
R
2は、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC
1-6アルコキシ、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフェノキシ、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基、または(メタ)アクリロイルオキシを表し;
R
6は、置換されていてもよいC
1-8アルキルを表す]で表される1以上の化合物であり、
モノマーBが、式(II):
【化4】
[式中、R
3は、水素原子またはメチルを表し;
W
2は、単結合、または置換されていてもよいC
1-20アルキレンを表し;
L
2は、単結合、-O-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;
W
3は、単結合、C
1-6アルキレン、またはC
2-6アルケニレンを表し;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;
ここにおいて、R
4およびR
5がいずれも水素原子であることはない]で表される1以上の化合物である粘接着剤。
【0019】
〔12〕W3が、単結合、またはC2-6アルケニレンである上記〔11〕記載の粘接着剤。
【0020】
〔13〕モノマーAおよびモノマーBを構成単位として含むポリマーを含有する表面コート剤であって、
モノマーAが、式(I):
【化5】
[式中、R
1は、水素原子またはメチルを表し;
L
1は、単結合、-O-、-NH-、-NR
6-、-NHC(O)O-、または-NHC(O)NH-を表し;
W
1は、単結合、またはC
1-20アルキレンを表し;
R
2は、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC
1-6アルコキシ、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフェノキシ、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基、または(メタ)アクリロイルオキシを表し;
R
6は、置換されていてもよいC
1-8アルキルを表す]で表される1以上の化合物であり、
モノマーBが、式(II):
【化6】
[式中、R
3は、水素原子またはメチルを表し;
W
2は、単結合、または置換されていてもよいC
1-20アルキレンを表し;
L
2は、単結合、-O-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;
W
3は、単結合、C
1-6アルキレン、またはC
2-6アルケニレンを表し;
R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;
ここにおいて、R
4およびR
5がいずれも水素原子であることはない]で表される1以上の化合物である表面コート剤。
【0021】
〔14〕W3が、単結合、またはC2-6アルケニレンである上記〔13〕記載の表面コート剤。
【0022】
〔15〕式(IIa):
【化7】
[式中、R
3aは、水素原子またはメチルを表し;
W
2aは、単結合、または置換されていてもよいC
3-20アルキレンを表し;
L
2aは、単結合、-O-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;
W
3aは、C
2-6アルケニレンを表し;
R
4aおよびR
5aは、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;
ここにおいて、R
4aおよびR
5aがいずれも水素原子であることはない]で表される化合物。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、多様な種類の材質に強固に結合する硬化性樹脂組成物、粘接着剤、および表面コート剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の硬化性樹脂組成物は、上述の通り、モノマーAとモノマーBをモノマー成分として含むものであるが、このうち、所定の構造を有するモノマーBは、粘接着性に優れているのみならず、ベースモノマーへの溶解性も向上されたものである。本発明者らは、これまで、ベンゼン環状にヒドロキシルまたはB(OH)2を有する(メタ)アクリルアミド誘導体を粘接着性モノマーとして検討してきたが、例えばその代表的なモノマーであるドーパミンアクリルアミド(N-(3,4-ジヒドロキシフェネチル)アクリルアミド)は、ベースモノマーに対する溶解性があまり高いものではなく、組成物中の濃度を上げることが困難であった。これに対し、本開示にかかるモノマーBの一例である2-(アクリロイルオキシ)エチル 3,4-ジヒドロキシベンゾエート(DHBA-HEA)は、種々のベースモノマーに対する溶解性が、ドーパミンアクリルアミドと比較して総じて高いことを見出した。この溶解性の違いについて、ドーパミンアクリルアミドとDHBA-HEAのX線結晶構造解析を行い比較したところ、ドーパミンアクリルアミドでは、カテコール-OHの水素とアミド基COの酸素との間の水素結合が2種類(1.71Å)、カテコールOHの酸素とアミド基NHの水素との間の水素結合が2種類(2.08Å)、2つのカテコール基同士の水素結合が2種類(2.08Å)の合計6種類の水素結合が確認された。一方、DHBA-HEAでは、カテコール-OHの水素と安息香酸COの酸素との間の水素結合が2種類(1.88Å)、2つのカテコール基同士の水素結合が2種類(2.04Å)の合計4種類の水素結合が確認され、アクリル酸エステル部分のカルボニル基には水素結合は確認されなかった。ここで、両化合物間で最短の水素結合の距離を比較すると、ドーパミンアクリルアミドで1.71Å、DHBA-HEAで1.88ÅとDHBA-HEAの距離がやや長いものであった。さらに、1分子当たりの水素結合数もDHBA-HEAの方が少ない。これらのことから、本開示のモノマーBは、アクリルアミド基を有さず、(メタ)アクリル酸エステル構造としたことによりベースモノマーに対する溶解性が向上しているものと推認される。
【0025】
本明細書において「置換基」の定義における炭素の数を、例えば、「C1-6」等と表記する場合もある。具体的には、「C1-6アルキル」なる表記は、炭素数1から6のアルキル基と同義である。
【0026】
「C1-20アルキレン」は、炭素数1~20個を有する直鎖状もしくは分枝状の二価の飽和炭化水素基を意味する。好ましくは、「C3-20アルキレン」であり、より好ましくは、「C1-8アルキレン」であり、さらに好ましくは、「C1-6アルキレン」であり、最も好ましくは、「C1-4アルキレン」である。「C1-20アルキレン」の具体例としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、1-メチルメチレン、1-エチルメチレン、1-プロピルメチレン、1-メチルエチレン、2-メチルエチレン、1-エチルエチレン等が挙げられる。
【0027】
「C2-6アルケニレン」は、炭素数2~6個を有する直鎖状もしくは分枝状の二重結合を有する二価の炭化水素基を意味する。好ましくは、「C2-4アルキレン」である。「C2-6アルケニレン」の具体例としては、例えば、エチレニレン、プロピレニレン、ブチレニレン、ペンタレニレン、ヘキサレニレン、1-メチルエチニレニン、2-メチルエチニレニン、1-メチルプロピニレン等が挙げられる。
【0028】
「C1-8アルキル」は、炭素数1~8個を有する直鎖状もしくは分枝状の飽和炭化水素基を意味する。好ましくは、「C1-6アルキル」であり、より好ましくは、「C1-4アルキル」である。「C1-8アルキル」の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
【0029】
「C1-6アルコキシ」は、酸素原子にC1-6アルキルが結合した置換基を意味し、酸素原子により親分子と結合するものである。「C1-6アルコキシ」の「C1-6アルキル」部分は、前記「C1-6アルキル」と同義である。好ましくは、「C1-4アルコキシ」である。「C1-6アルコキシ」の具体例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0030】
「5員もしくは6員のヘテロアリール」としては、例えば、5員もしくは6員の単環式の芳香族ヘテロ環基等が挙げられ、該基は、環を構成する原子として、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選択される同種または異種のヘテロ原子を1個以上(例えば1~4個)含有する。「5員もしくは6員のヘテロアリール」の具体例としては、ピリジル、ピリミジル、ピラジル、ピリダジル、トリアジル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾイル、テトラゾイル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル等が挙げられる。
【0031】
「3員~8員の飽和または部分不飽和の炭化水素基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル等が挙げられる。
【0032】
「3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基」としては、例えば、環を構成する原子として、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同種または異種のヘテロ原子を1~3個含有する3員~8員の単環式の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基等が挙げられる。好ましくは4員~6員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基であり、より好ましくは、環を構成する原子として酸素原子を1~2個含む4員~6員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基であり、さらに好ましくは環を構成する原子として酸素原子を1~2個含む4員~6員の飽和ヘテロ環基である。「3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基」の具体例としては、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロフリル、ピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、オキサゾリジニル、オキセパニル、オキセカニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、アゼカニル、モルホリニル、チオモルホリニル等が挙げられ、オキセタニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、およびジオキソラニルが好ましく、テトラヒドロフリルおよびジオキソラニルがより好ましい。該基の結合手は、環を構成する炭素原子および窒素原子のいずれであってもよい。
【0033】
「3員~8員の含酸素飽和ヘテロ環基」としては、例えば、酸素原子を1~2個含み、任意に窒素原子および硫黄原子から選択される同種または異種の原子を1~2個有する3員~8員の単環式の飽和ヘテロ環基等が挙げられる。前記酸素原子、窒素原子および硫黄原子はいずれも環を構成する原子である。4員~6員の含酸素飽和ヘテロ環基が好ましい。具体的には、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、オキサゾリジニル、オキセパニル、オキセカニル、モルホリニル等が挙げられ;オキセタニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、およびジオキソラニルが好ましく;オキセタニルおよびテトラヒドロフリルがより好ましい。
【0034】
「置換されていてもよいC1-8アルキル」、「置換されていてもよいC1-6アルコキシ」、および「置換されていてもよいC1-20アルキレン」または「置換されていてもよいC3-20アルキレン」における置換基としては、ヒドロキシル、ハロゲン原子、C1-6アルコキシ等が挙げられる。
【0035】
「置換されていてもよいフェニル」、「置換されていてもよいフェノキシ」、「置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール」、「置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基」、および「置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基」における置換基としては、例えば、ヒドロキシル、アミノ、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ等が挙げられる。
【0036】
「ハロゲン原子」の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。
【0037】
本明細書において「(メタ)アクリロイルオキシ」は、メタクリロイルオキシ基およびアクリロイルオキシ基を含むものとする。
【0038】
本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0039】
<モノマー成分>
本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、硬化することで基材に結合する組成物である。本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、第1のモノマー(モノマーA)と第2のモノマー(モノマーB)とを含有することを特徴とする。
【0040】
(モノマーA)
本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、第1のモノマー(モノマーA)として、下記式(I):
【化8】
[式中、R
1は、水素原子またはメチルを表し;L
1は、単結合、-O-、-NH-、-NR
6-、-NHC(O)O-、または-NHC(O)NH-を表し;W
1は、単結合、またはC
1-20アルキレンを表し;R
2は、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC
1-6アルコキシ、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフェノキシ、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基、または(メタ)アクリロイルオキシを表し;R
6は、置換されていてもよいC
1-8アルキルを表す]で表される1以上の化合物を含有する。
【0041】
L1として好ましくは、単結合、または-O-であり;より好ましくは-O-である。L1が-O-である式(I)の化合物は、本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物が含み得る後述するモノマーBとの相溶性が良いので好ましい。
【0042】
W1として好ましくは、単結合、またはC1-6アルキレンであり;より好ましくは、単結合、またはC1-4アルキレンである。また、W1の別の態様として、C1-8アルキレン、C1-6アルキレン、C2-6アルキレン、C1-4アルキレン、C2-4アルキレン等が挙げられる。
【0043】
R2として好ましくは、
(1)メチル、
(2)ヒドロキシル、
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ、例えば、ヒドロキシルまたはC1-6アルコキシで置換されていてもよいC1-6アルコキシ、
(4)置換されていてもよい3員~8員の飽和ヘテロ環基、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル、C1-6アルキル、およびC1-6アルコキシからなる群から選択される同種または異種の1~4個の基で置換されていてもよい4員~7員の含酸素飽和ヘテロ環基(例えば、オキセタニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、オキサゾリジニル、オキセパニル、モルホリニル等)、
(5)置換されていてもよいフェニル、または
(6)(メタ)アクリロイルオキシであり;
より好ましくは、
(1)メチル、
(2)ヒドロキシル、
(3)C1-4アルコキシ、
(4)1~4個のC1-6アルキルで置換されていてもよい4員~7員の含酸素飽和ヘテロ環基、または
(5)置換されていてもよいフェニルであり;
さらに好ましくは、C1-4アルコキシ、1~4個のC1-6アルキルで置換されていてもよい4員~6員の含酸素飽和ヘテロ環基、またはフェニルである。
【0044】
密着性の観点からは、ターゲットとする基材の材質に合わせて使用するモノマーAを選択することも可能であり、有機系基材には、R2が置換されていてもよい3員~8員の含酸素飽和ヘテロ環基であるモノマーAを用いることが好ましい。無機系基材にはR2がヒドロキシルであるモノマーAを用いることにより、モノマーBの添加の効果がより得られやすい傾向がある。
【0045】
R2がヒドロキシルであるモノマーAと、R2が置換されていてもよいC1-6アルコキシ、または置換されていてもよいフェニルであるモノマーAとを併用する場合、モノマーA中のR2がヒドロキシルであるモノマーAとR2が置換されていてもよいC1-6アルコキシ、または置換されていてもよいフェニルであるモノマーAの質量割合[R2がヒドロキシルであるモノマーA:R2が置換されていてもよいC1-6アルコキシ、または置換されていてもよいフェニルであるモノマーA]は、R2が置換されていてもよいC1-6アルコキシ、または置換されていてもよいフェニルであるモノマーAの特性が密着性、粘着性、接着性において発現されるという観点から0.5:99.5~20:80が好ましく、1:99~10:90がより好ましい。
【0046】
モノマーBの良好な溶解性という観点からは、式(I)中、L1が-O-であり、R2が、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC1-6アルコキシ、置換されていてもよい4員~7員の含酸素飽和ヘテロ環基、または置換されていてもよいフェニルであるモノマーAを用いることが好ましい。また、接着性モノマーとしてのモノマーBと組み合わせることによる接着性モノマーの溶解性向上効果という観点からはL1が-O-であり、R2が、メチル、置換されていてもよいC1-6アルコキシ、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基、または置換されていてもよいフェニルであるモノマーAを用いることが好ましい。
【0047】
モノマーAの別の態様としては、式(I)におけるL1およびW1が単結合であり、R2がヒドロキシルであるか、L1が-O-であり、W1がC2-20アルキレンであり、R2が、ヒドロキシル、置換されていてもよいC1-6アルコキシであるか、L1が-O-であり、W1がC1-8アルキレンであり、R2が、置換されていてもよい3員~8員の飽和または部分不飽和のヘテロ環基、または置換されていてもよいフェニルであるか、L1が-O-であり、W1が単結合、またはC1-6アルキレンであり、R2がメチルである1以上の化合物を含むことが好ましく;L1が-O-であり、W1がC2-8アルキレンであり、R2が、ヒドロキシル、置換されていてもよいC1-4アルコキシであるか、L1が-O-であり、W1がC1-4アルキレンであり、R2が、置換されていてもよい4員~6員の含酸素飽和ヘテロ環基、または置換されていてもよいフェニルであるか、L1が-O-であり、W1が単結合、またはC1-4アルキレンであり、R2がメチルである1以上の化合物を含むことがより好ましい。
【0048】
さらに、モノマーAの別の態様としては、式(I)中、[R1は、水素原子またはメチルを表し;L1は、単結合、-O-、-NH-、-NR6-、-NHC(O)O-、または-NHC(O)NH-を表し;W1は、単結合、またはC1-20アルキレンを表し;R2は、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC1-6アルコキシ、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフェノキシ、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基、または置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基を表し;R6は、置換されていてもよいC1-8アルキルを表し;ここにおいて、R2がメチルのときは、W1が単結合、またはC1-8アルキレンである]で表される化合物を含む。
【0049】
また別の態様においては、モノマーAは式(I)中、[R1は、水素原子またはメチルを表し;L1は、単結合、-O-、-NH-、-NR6-、-NHC(O)O-、または-NHC(O)NH-を表し;W1は、単結合、またはC1-20アルキレンを表し;R2は、メチル、ヒドロキシル、置換されていてもよいC1-6アルコキシ、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフェノキシ、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロアリール、置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和の炭化水素環基、または置換されていてもよい3員~8員の飽和もしくは部分不飽和のヘテロ環基を表し;R6は、置換されていてもよいC1-8アルキルを表し;ここにおいて、R2がヒドロキシル、置換されていてもよいC1-6アルコキシ、または置換されていてもよいフェノキシの場合は、W1がC2-20アルキレンである]で表される化合物を含む。
【0050】
モノマーの合計量に対するモノマーAの含有量は特に制限されず、後記のモノマーB、架橋性モノマー、およびその他のモノマーを除いた残部をその含有量とすることができるが、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また、硬化性樹脂組成物を希釈することなく粘接着剤や表面コート剤に使用する場合には、モノマーAの含有量は、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましい。モノマーAの含有量を75質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、93質量%以上とすることで、モノマーAの特性を発揮させることができる。モノマーの合計量に対するモノマーAの含有量の上限は、モノマーBの含有量を確保するためには、90質量%未満が好ましく、80%以下がより好ましい。また、硬化性樹脂組成物を希釈することなく粘接着剤や表面コート剤に使用する場合には、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下がさらに好ましい。モノマーAの特性の一例としては、柔軟性、絶縁性等が挙げられる。
【0051】
モノマーAは、公知化合物と公知の合成方法を組み合わせた方法により合成される。また、モノマーAとして市販品を使用してもよい。
【0052】
(モノマーB)
本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、第2のモノマー(モノマーB)として、式(II):
【化9】
[式中、R
3は、水素原子またはメチルを表し;W
2は、単結合、または置換されていてもよいC
1-20アルキレンを表し;L
2は、単結合、-O-、-CH(OH)-、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;W
3は、単結合、C
1-6アルキレン、またはC
2-6アルケニレンを表し;R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;ここにおいて、R
4およびR
5がいずれも水素原子であることはない]で表される1以上の化合物を含有する。
【0053】
モノマーBは、上記のように、ベンゼン環に、ヒドロキシル置換基を有している。本開示の一実施形態である硬化性樹脂組成物および後述の粘接着剤および表面コート剤は、このベンゼン環に存在するヒドロキシル置換基が接着表面に配向することにより、より多くの種類の材料に対してより強固に結合できる一つの要因となっていると考えられる。
【0054】
W2として好ましくは、置換されていてもよいC1-8アルキレンであり;より好ましくは、置換されていてもよいC1-6アルキレンであり;さらに好ましくは、ヒドロキシルで置換されていてもよいC2-6アルキレンであり;最も好ましくはヒドロキシルで置換されていてもよいC2-4アルキレンである。また、W2がヒドロキシルで置換されたC1-20アルキレンである場合、このヒドロキシル置換基も粘着性や接着性の向上に寄与する傾向があり、特に、水酸基を有さないモノマーAを用いた場合にその効果が大きくなる傾向があるため好ましい。
【0055】
L2として好ましくは、-O-、-C(O)O-、または-OC(O)-であり;より好ましくは-OC(O)-である。
【0056】
W2として好ましくは、単結合、またはC2-6アルケニレンであり;より好ましくは、単結合、またはC2-4アルケニレンである。
【0057】
R4およびR5は、いずれもヒドロキシルであることが好ましい。
【0058】
モノマーBの別の態様としては、式(II)中、W2が置換されていてもよいC2-6アルキレンであり、L2が-OC(O)-であり、W3が、単結合、またはC2-4アルケニレンであり、R4およびR5がいずれもヒドロキシルである1以上の化合物を含むことが好ましく、また後述する式(IIa)で表される1以上の化合物を含むことがより好ましい。
【0059】
モノマーBは、公知化合物と公知の合成方法を組み合わせた方法により合成される。また、モノマーBとして市販品を使用してもよい。
【0060】
モノマーBのうち、式(IIa):
【化10】
[式中、R
3aは、水素原子またはメチルを表し;W
2aは、単結合、または置換されていてもよいC
3-20アルキレンを表し;L
2aは、-C(O)O-、-OC(O)-、または-OC(O)O-を表し;W
3aは、C
2-6アルケニレンを表し;R
4aおよびR
5aは、それぞれ独立して、水素原子、またはヒドロキシルを表し;ここにおいて、R
4aおよびR
5aがいずれも水素原子であることはない]で表される化合物は新規な化合物であり、例えば次の方法により合成することができる。
【0061】
1.カテコール基含有カルボン酸化合物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの脱水縮合反応
この反応は、例えば、式(IIa)においてW2aが置換されていないアルキレンである場合などに適用することができ、具体的には(E)-4-((3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリロイル)オキシ)ブチルアクリレートを、(E)-((3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリル酸と4-ヒドロキシブチルアクリレートとの脱水縮合反応により合成する方法が挙げられる。脱水縮合による合成方法は、比較的温和な条件で目的物を合成可能なので、作業性が良い。脱水縮合の方法は特に限定されることはない。
【0062】
2.カテコール基含有カルボン酸化合物によるグリシジル基含有(メタ)アクリレートの開環反応
この反応は、例えば、式(IIa)においてW2aがヒドロキシル基で置換されたアルキレンである場合などに適用することができ、具体的には(E)-3-((3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリロイル)オキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートを、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリル酸によるグリシジルメタクリレートの開環反応により合成する方法が挙げられる。この開環反応では、グリシジル基がカテコール基のいずれかのヒドロキシル基と反応して得られる化合物などの複数の副生成物が生成され得るが、得られるモノマーBをその特性を発揮することのできる量で含有させることができる限り、特別に精製、単離することなく副生成物との混合物の状態で使用することもできる。開環反応による合成方法は、他の方法と比べて比較的安価に目的物を合成可能なので、生産性が良い。開環反応の方法は特に限定されることはない。
【0063】
3.カテコール基含有脂肪族アルコール化合物によるカルボン酸基含有(メタ)アクリレートとの縮合反応
この反応は、例えば、式(IIa)においてW2aがカルボン酸基で置換されたアルキレンである場合などに適用することができ、具体的には、2-((3,4-ジヒドロキシベンジル)オキシ)-2-オキシエチルメタクリレートを、メタクリル酸ナトリウムなどとモモノクロロ酢酸の置換反応で得られるヒドロキシカルボニルメチルメタクリレートと3,4-ジヒドロキシベンジルアルコールとの脱水縮合により合成する方法が挙げられる。
【0064】
4.塩基性条件下におけるカテコール基含有カルボン酸化合物と脱離基を有するアルキル(メタ)アクリレートとの置換反応
さらに別の例としては、(E)-4-((3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリロイル)オキシ)ブチルアクリレートを、トリエチルアミン存在下で、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリル酸と4-ブロモブチル(メタ)アクリレートとの置換反応により合成する方法が挙げられる。置換反応の方法は特に限定されることはない。
【0065】
なお、式(II)や式(IIa)で表されるモノマーBを製造する際、上述した通り副生成物が生じる場合があるが、モノマーBの特性を発揮することのできる量でモノマーBを含有させることができる限り、モノマーBを精製、単離することなく副生成物との混合物の状態で使用することもできる。
【0066】
W2aとして好ましくは、置換されていてもよいC3-8アルキレンであり;より好ましくは、置換されていてもよいC3-6アルキレンであり;さらに好ましくは、置換されていないC3-4アルキレン、またはヒドロキシル基で置換されたC3-4アルキレンである。
【0067】
L2aとして好ましくは、-O-、-C(O)O-、または-OC(O)-であり;より好ましくは-OC(O)-である。
【0068】
W2aとして好ましくは、C2-4アルケニレンであり;より好ましくはエテニルである。
【0069】
R3aおよびR4aは、いずれもヒドロキシルであることが好ましい。
【0070】
組成物中のモノマーBの含有量は、特に限定されるものではないが、5.0質量%超かつ70.0質量%未満が好ましく、10.0~50質量%がより好ましい。組成物中のモノマーBの含有量を10.0質量%超とすることで、モノマーBの含有量を高めた硬化性樹脂組成物を流通させることができ、適宜用途に応じて希釈して使用することが可能となる。組成物中のモノマーBの含有量の上限は、モノマーBのモノマーAへの溶解性によるところが大きいため、特に制限されるものではないが、50.0質量%未満、40.0質量%以下が好ましい。また、硬化性樹脂組成物を希釈することなく使用する場合には、モノマーBの機能の発揮とコストの両面から、組成物中のモノマーBの含有量は、0.1~10質量%が好ましく、0.3~5質量%がより好ましい。組成物中のモノマーBの含有量を0.5質量%以上とすることで、多様な種類の材料に、強固に結合する硬化性樹脂組成物、粘接着剤、および表面コート剤とすることができる。
【0071】
さらに、別の実施態様において、モノマーAとモノマーBの合計量に対するモノマーBの含有量は、5.0質量%超かつ50.0質量%未満が好ましく、6.5~45質量%がより好ましい。また、全モノマー量に対するモノマーAとモノマーBの合計の含有量は、55.0質量%超かつ95.0質量%未満が好ましく、65.0~90質量未満がより好ましい。
【0072】
(架橋性モノマー)
本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で架橋性モノマーを配合してもよい。架橋性モノマーは、少なくとも2つの重合性官能基を有するモノマーである。架橋性モノマーとしては、例えば、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド等の(メタ)アクリロイル基を2個以上(好ましくは2個)有する多官能(メタ)アクリルアミド;エチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上(好ましくは2個または3個)有する多官能(メタ)アクリレート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、リシントリイソシアネート、メチリジントリフェニレントリイソシアネート等のイソシアネート基を2個以上(好ましくは2個または3個)有する多官能イソシアネート;ジアリルアミン、トリアリルアミン等の炭素-炭素二重結合を2個以上(好ましくは2個または3個)有する多官能アミン;ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン等の炭素-炭素二重結合を2個以上(好ましくは2個または3個)有する芳香族化合物等の多官能モノマーが挙げられる。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
モノマーの合計量に対する架橋性モノマーの含有量は、0.10~20質量%が好ましく、0.50~15質量%がより好ましく、1.0~10質量%がさらに好ましい。モノマーの合計量に対する架橋性モノマーの含有量を0.10質量%以上、0.50質量%以上、1.0質量%以上とすることで、多様な種類の材料に、より強固に結合する硬化性樹脂組成物、粘接着剤、および表面コート剤とすることができる。また、モノマーの合計量に対する架橋性モノマーの含有量を20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下とすることで、多様な種類の材質へ強固に結合する硬化性樹脂組成物、粘接着剤、および表面コート剤とすることができる。
【0074】
(その他のモノマー)
本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物には、本開示の目的を阻害しない範囲内で、上述したモノマーA、モノマーB、および架橋性モノマー以外のその他のモノマーを配合してもよい。他のモノマーの一例としては、上記式(I)および式(II)に含まれないアクリレートやメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物に用いるモノマーとしては、ただし、炭素数10以上、特に15以上のアルキル-(メタ)アクリレートは本発明の目的を阻害する可能性があるため、含有しないことが好ましい。なお、本明細書において「炭素数10以上のアルキル-(メタ)アクリレート」とは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであって、アルキルエステル部分を構成するアルキル基が、炭素数10以上の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であるアルキル-(メタ)アクリレートを意味する。すなわち、前記の炭素数に、(メタ)アクリル酸部分を構成する炭素は含まれない。炭素数15以上のアルキル-(メタ)クリレートも同様である。
【0075】
モノマーの合計量に対するその他のモノマーの含有量は特に制限されず、モノマーA
モノマーB、および架橋性モノマーを除いた残部をその含有量とすることができる。
【0076】
上述したモノマー成分(モノマーA、モノマーB、架橋性モノマー、およびその他のモノマー)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
本開示の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、本開示の目的を阻害しない範囲内で、上述したモノマー成分(モノマーA、モノマーB、架橋性モノマー、およびその他のモノマー)以外に、さらに溶媒や、粘着剤または接着剤に一般的に添加される添加剤を含有していてもよい。前記の添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、架橋剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、接着付与剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、および充填剤等が挙げられる。なかでも、後記の重合開始剤を含有することが好ましい。
【0078】
<粘接着剤およびその製造方法>
本開示の一実施形態に係る粘接着剤は、一方の基材と他方の基材との両方に結合し、一方の基材が他方の基材に対して相対的に移動することを防止する材料をいう。一方の基材に対して他方の基材が相対的に移動することを防止するとは、一方の基材が他方の基材からみて完全に動かない場合だけではなく、一方の基材が他方の基材に対して一定の範囲で移動することを許容するように固定することも含む。換言すれば、本開示の一実施形態に係る粘接着剤は、完全に硬化している必要はない。一定の範囲は、両基材の配置される場所や利用目的等によって決定すればよい。いわば、粘接着剤は、剥がれ難い接着性を有する粘着剤、あるいは粘着剤に似た柔らかさを有する接着剤といえる場合がある。粘接着剤は、強度が要求されない接合などにおいて、軽量化や作業の簡素化等の観点から、ボルトによる締結や溶接といった接合方法に変えて用いられることがある。また、柔らかさを有する粘接着剤は、耐振性等が求められる用途に好適に用いられる。
【0079】
本実施形態に係る粘接着剤は、モノマーAおよびモノマーBを構成単位として含むポリマー(共重合体)を含有するものであり、さらに架橋性モノマーを構成単位として含むことが好ましい。また、必要に応じて、さらに溶媒や、シランカップリング剤、架橋剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、接着付与剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、および充填剤等の、粘着剤または接着剤に一般的に添加される添加剤を含んでいてもよい。
【0080】
本開示の一実施形態に係る粘接着剤は、多様な材質の基材に対して強固な粘接着性を有する。本開示の一実施形態に係る粘接着剤により接合可能な基材の材質としては、例えば、ガラス、ハイドロキシアパタイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化インジウムスズ(ITO)、モリブデン-アルミニウム-モリブデンの積層構造(MAM)のような無機材料;アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、金(Pt)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、チタン(Ti)およびこれらの合金等の金属材料;ポリ塩化ビニル(PVC)、:ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、繊維強化プラスチック(FRP)等の有機材料等が挙げられる。また、本開示の一実施形態に係る粘接着剤は、多様な材質の基材に対して良好な粘接着性を有するため、異なる材質の基材同士を接合する粘接着剤として好適である。もちろん、本開示の一実施形態に係る粘接着剤は、同一の材質の基材同士を接合するために用いてもよい。
【0081】
さらに、本開示の一実施形態に係る粘接着剤は、いわゆる下塗り塗料や中塗り塗料、プライマー等の、塗料等の表面コート剤と基材とを接合させる目的での使用も意図される。
【0082】
本開示の一実施形態に係る粘接着剤が固定する基材同士の形状も特に限定されない。基材の形状の一例としては、一方および他方の形状が、板状、シート状、および棒状等から選ばれる形状のいずれかであることが挙げられる。
【0083】
粘接着剤に含まれるポリマーは、モノマーA、モノマーB、および架橋性モノマーを重合させることによって得ることができる。重合方法としては、特に限定されないが、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。特に、製造性や取扱い性等の観点から、塊状重合法および溶液重合法が好ましく、塊状重合法がより好ましい。
【0084】
モノマー成分を溶液重合法によって重合させる際の溶媒としては、製造性や取扱い性等の観点から、非水系有機溶媒が好ましい。非水系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィン等の炭化水素系有機溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩化物系有機溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、通常、モノマー成分100質量部あたり、100~1000質量部程度であるが、この範囲に限定されるものではない。
【0085】
モノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤等が挙げられる。なかでも、粘接着剤に熱履歴を残さないようにする観点から、光重合開始剤が好ましい。
【0086】
光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,1’-ビイミダゾール、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシフェニルビニル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ジ-tert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-2-オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド(TPO)、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス〔2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニルチタニウム〕等の光ラジカル重合開始剤;2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシフェニルビニル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4’-ジ-tert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン開環重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
熱重合開始剤としては、例えば、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
重合開始剤の添加量は、モノマー成分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましく、0.5~10質量部がさらに好ましい。
【0089】
各モノマーを重合して粘接着剤を製造する際の各モノマーを配合する順番は、特に限定されない。一例としては、モノマーA、モノマーB、および架橋性モノマーを配合した後に各モノマーを重合させて粘接着剤を製造することが挙げられる。他の一例としては、モノマーA、モノマーBを配合した後に両モノマーを重合させて第1のポリマーを製造し、その後、第1のポリマーと架橋性モノマーとを配合し、第1のポリマーが架橋性モノマーにより架橋した第2のポリマー(粘接着剤)を製造してもよい。
【0090】
<表面コート剤>
本開示の一実施形態に係る表面コート剤は、基材に結合して硬化し、基材の表面を保護する材料をいう。表面コート剤の一例としては、塗料が挙げられる。また、基材には、上述した各材料のほかに、下塗り塗料や中塗り塗料、プライマー等も含まれる。
【0091】
本開示の一実施形態に係る表面コート剤は、上述した本開示の一実施形態に係る粘接着剤と同様に、モノマーAおよびモノマーBを構成単位として含むポリマー(共重合体)を含有するものであり、さらに架橋性モノマーを構成単位として含むことが好ましい。いわば、本開示の一実施形態である硬化性樹脂組成物が、基材の表面で硬化した硬化物であって、この硬化物の基材側の面が基材と結合し、他の面(代表的には基材の対向面)が露出する態様である。したがって、基本的な構成や製造方法は上述した発明の一実施形態に係る粘接着剤と同様であるので、記載を省略する。
【0092】
以上説明した、本開示の一実施形態に係る粘接着剤および表面コート剤は、多様な種類の材質に対して、密着性、粘着性、および接着性の少なくとも一つを発揮することで、より強固に基材に結合すると考えられる。密着性、粘着性、および接着性は、一般的には、粘接着剤の使用される用途や目的に応じて、後述の実施例に掲げるような試験方法で各性能を評価することができる。したがって、いずれの性能も、本開示の一実施形態に係る粘接着剤および表面コート剤の基材に対する結合の強さを評価する性能である。
【0093】
密着性(密着力の大きさ)とは、基材と粘接着剤や硬化した表面コート剤(塗料)の界面との付着力を示すものであり、一般的には分子間力、イオン結合、水素結合が、基材と粘接着剤との付着力の大きさに関与する。また、基材の凹凸と粘接着性樹脂とのアンカー効果なども密着性の向上に寄与する。従って、密着性の向上により、例えば、塗料と基材との剥離を抑制することができる。
【0094】
粘着性(粘着力の大きさ)とは、例えば、粘接着剤により張り付けた2つの基材を剥がす力を示すものであり、基材と粘接着剤との密着性、および粘接着剤自体の粘弾性および靱性を合わせた力となる。粘接着剤である樹脂の粘弾性および靱性のそれぞれの大きさは、一般的には、樹脂の分子量や立体構造とともに、密着性と同様、分子間力、イオン結合、水素結合が関与する。一例として、密着性が抑制される一方で、粘弾性や靱性に優れた粘接着剤とすると、剥離可能な粘着テープなどを作製することができる。また、粘接着剤の密着性、粘弾性、靱性を向上させると、例えば比較的長期間の接合を保証できる粘着テープなどを作製することができる。
【0095】
接着性(接着力の大きさ)とは、例えば、粘接着剤により接合した2つの基材において、粘接着剤と基材との界面剥離(密着性)と、粘接着剤である樹脂の破壊を起こす際に必要な力(靱性)を合わせた力である。一般的に、接着性を測定する場合には、粘接着剤が破断したり、基材と粘接着剤と結合が切断したりすることで、2つの基材同士の接合が崩壊する。接着性と粘着性との違いは、一般的には、粘着性が易接着や易剥離の指標であり、接着性は2つの基材の接合の強さの指標となる。強固な接合が可能な粘接着剤は、耐久性や耐熱性が必要な建築分野や自動車分野等、強度が求められる分野で粘接着剤として使用することができる。また、粘弾性を有する接着剤は、建築分野や自動車分野における基材と内装材との接合などに用いることができる。
【0096】
本開示の一実施形態に係る粘接着剤が、より多くの種類の基材により強固に結合する理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。粘接着剤により一方の基材を他方の基材に対して接合した場合、基材同士の間に粘接着剤が介在し、代表的には、基材同士の間に粘接着剤の硬化した硬化物が形成される。同様に、表面コート剤は、硬化性樹脂組成物後硬化した硬化物が基材に接合した硬化物といえる。これらの硬化物には、基材の設置場所や用途等によっては、直接または間接的に振動や衝撃等の応力が加わることにより、硬化物が破壊されたり、基材の表面と硬化物表面との結合が破壊されたりすることがある。すなわち、粘接着剤においては基材同士の接合(いわば、基材同士の相対的な位置関係)を、表面コート剤においては表面コート剤と基材との接合を維持できなくなるおそれがある。本開示の実施形態に係る粘接着剤および表面コート剤は、密着性、粘着性、および接着性の少なくとも一つに優れるため、硬化物に直接または間接的に応力が加わった場合でも基材との接合を維持することができると考えられる。
【0097】
また、本開示の一実施形態に係る粘接着剤および表面コート剤を構成するモノマーBは、ヒドロキシルを有している。この基が基材の表面側に配向することにより、本開示の一実施形態に係る粘接着剤および表面コート剤が多様な種類の材質に対して強固に結合できる一つの要因となっていると考えられる。
【実施例0098】
以下に本開示を、実施例および比較例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において示された化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。
【0099】
本実施例において使用する薬品を以下に略語とともに示す。
<モノマーA>
モノマーA1:4-ヒドロキシブチルアクリレート(商品名:4-HBA、大阪有機化学工業(株)製)
モノマーA2:テトラヒドロフルフリルアクリレート(商品名:THFA、大阪有機化学工業(株)製)
モノマーA3:2-ヒドロキシエチルアクリレート(商品名:HEA、大阪有機化学工業(株)製)
モノマーA4:2-メトキシエチルアクリレート(商品名:2-MTA、大阪有機化学工業(株)製)
モノマーA5:(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(MEDOL-10)(商品名:MEDOL-10、大阪有機化学工業(株)製)
モノマーA6:メチルアクリレート(MA)(東京化成工業(株)製)
モノマーA7:ベンジルアクリレート(商品名:ビスコート#160(略称BZA)、大阪有機化学工業(株)製)
<モノマーB>
モノマーB1:2-(アクリロイルオキシ)エチル 3,4-ジヒドロキシベンゾエート(DHBA-HEA)(後述の合成例1により製造)
モノマーB2:(E)-3-((3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリロイル)オキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(DHCA-GMA)(後述の実施例1により製造)
モノマーB3:2-ヒドロキシ-3-(メタクリロイルオキシ)プロピル 3,4-ジヒドロキシベンゾエート(DHBA-GMA)(後述の合成例2により製造)
<その他の接着性モノマー>
接着性モノマー(DA):N-(3,4-ジヒドロキシフェネチル)アクリルアミド
<架橋性モノマー>
架橋性モノマー1:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP3A)
架橋性モノマー2:トルエンジイソシアネート(TDI)(商品名:コロネートT-80、東ソー(株)製(2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート=80:20の混合物))
<重合開始剤>
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド(東京化成工業(株)製)
<基材>
PVC:ポリ塩化ビニル
PC:ポリカーボネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
PP:ポリプロピレン
PE:ポリエチレン
ABS:アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂
Cu:銅
Al:アルミニウム
ITO:酸化インジウムスズ(ガラス上にコーティングされたもの)
【0100】
合成例1:DHBA-HEA(モノマーB1)の合成
3,4-ジヒドロキシ安息香酸12.33g(80.0mmol)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)60.0g(461.0mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)23.01g(120mmol)、およびN、N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.49g(4.0mmol)を容器に入れ、氷水浴中で7時間撹拌した。その後、さらに酢酸エチル20.0gを加えて希釈し、水50.0gで3回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮することで得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製、濃縮することにより、DHBA-HEA(12.0g、収率59%、HPLC純度100%/UV254nm)を得た。
【0101】
合成例2:DHBA-GMA(モノマーB3)の合成
3,4-ジヒドロキシ安息香酸8.00g(51.9mmol)、グリシジルメタクリレート(GMA)14.8g(103.8mmol)、および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.44g(3.6mmol)を容器中のシクロペンタノン(72.0g)に溶かし、80℃に維持した湯浴中で21時間攪拌した。その後、容器内に水を加え、酢酸エチルを添加すると共に、3N HClで洗浄することでDMAPを除去し、得られた有機層を減圧濃縮することで油状物を得、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製、濃縮することにより、DHBA-GMA(4.61g、収率30%)を得た。
【0102】
実施例1:DHCA-GMA(モノマーB2)の合成
カフェイン酸8.0g(44.4mmol)、グリシジルメタクリレート(GMA)12.7g(88.8mmol)、および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.38g(3.1mmol)を容器中のシクロペンタノン(160g)に溶かし、80℃に維持した湯浴中で15時間攪拌した。その後、容器内に水を加え、酢酸エチルを添加すると共に、3N HClで洗浄することでDMAPを除去し、得られた有機層を減圧濃縮することでDHCA-GMAを油状物として得た(HPLC純度89%/UV210nm)。この油状物には、1H-NMR測定により、目的とするDHCA-GMAとともにカフェイン酸のカテコールの2つの水酸基にGMAが反応した化合物が含まれていることを確認したが、さらに精製することなく実施例に用いた。
【0103】
実施例2~6:硬化性樹脂組成物の調製
表1の組成に従い、モノマーA、モノマーB、架橋性モノマーを配合した配合物に、重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド(TPO)を、各配合物に含まれるモノマーの総量100質量部に対して10質量部加え、よく混合して各硬化性樹脂組成物(以下、モノマー溶液ともいう)を調製した。
【0104】
比較例1および3
表1の組成に従い、モノマーA、架橋性モノマーを配合した配合物に、重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド(TPO)を、各配合物に含まれるモノマーの総量100質量部に対して10質量部加え、よく混合して硬化性樹脂組成物(以下、モノマー溶液ともいう)を調製した。
【0105】
比較例2および4
モノマーBの代わりに接着性モノマー(N-(3,4-ジヒドロキシフェネチル)アクリルアミド(DA))を用いた以外はそれぞれ実施例2および5と同様にしてモノマー溶液を調製した。
【0106】
試験例1:密着性試験
≪試験片の作製≫
実施例2~6ならびに比較例1~4で調製した各モノマー溶液を、バーコーターNo.10を用いて表1に記載の各材質で形成された試験板上に塗布した。次に、UV露光機を用いて、露光量3000mJ/cm2のUVを照射して塗膜を完全に硬化させて各試験片を作製し、室温で24時間静置した(膜厚22.90μm)。
【0107】
≪試験方法≫
密着性試験は、JIS K 5600-5-6:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)」に準拠して実施した。上記の試験片について、カッターナイフを使用して、塗膜を2×2mmの碁盤目状にクロスカット(25マス)した。続いて、このマス上にニチバン(株)製の24mm幅のセロハンテープを貼り付け、このセロハンテープを試験者の手で押圧することで2分間圧着した。その後、セロハンテープを基盤に対し45°の角度で、0.5秒以内に剥いだ場合と、2秒で剥いだ場合の基盤に残ったマス数をそれぞれ数えて平均をとり、以下の基準で評価した。
【0108】
[評価基準]
0:カットの線が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
1:カットの交差点における小さな剥がれ。
クロスカットの部分で影響を受けるものは5%未満。
2:塗膜がカットの縁に沿って、および/または交差点において剥がれている。
クロスカットの部分で影響を受けるものは5~15%。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大剥がれを生じており、および/または目のいろいろな部分が、部分的または全面的に剥がれている。
クロスカットの部分で影響を受けるものは15~35%。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大剥がれを生じており、および/または数か所の目が、部分的または全面的に剥がれている。
クロスカットの部分で影響を受けるものは35%未満。
5:上記4でも分類できない程度の大きな剥がれ。
【0109】
≪結果≫
結果を表1に示す。なお、数値が小さいほど、基盤との密着性が良好であることを示し、評価が3以下であることが使用の好ましい可能性を示す。実施例2~4と比較例1とを比較すると、モノマーBを含むことで、密着性を発揮する基材の種類が増えることがわかる。また、モノマーBの代わりにDAを用いた比較例2と比較しても、ガラスおよびITOにおいて密着性が向上していることがわかる。さらに、モノマーBとしてDHCA-GMAを用いた実施例6は、試験したすべての材質について優れた密着性を示しており、比較例3および4と比較すると、ガラス、銅、アルミニウム、ITOで密着性が大きく向上していることがわかる。
【0110】
【0111】
実施例7~12:硬化性樹脂組成物の調製
表2の組成に従い、モノマーAおよびモノマーBを配合した各配合物に、重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド(TPO)を、各配合物に含まれるモノマーの総量100質量部に対して10質量部加え、よく混合して実施例7~12の硬化性樹脂組成物(以下、モノマー溶液ともいう)を調製した。
【0112】
比較例5および7
表2の組成に従い、モノマーAに、重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド(TPO)を、モノマーA100質量部に対して10質量部加え、よく混合して硬化性樹脂組成物(以下、モノマー溶液ともいう)を調製した。
【0113】
比較例6および8
モノマーBの代わりに接着性モノマー(N-(3,4-ジヒドロキシフェネチル)アクリルアミド(DA))を用いた以外はそれぞれ実施例7および10と同様にしてモノマー溶液を調製した。
【0114】
試験例2:粘着性試験
≪試料の作製≫
実施例7~12ならびに比較例5~8で調製した各モノマー溶液を、バーコーターNo.10を用いてCu、ガラス、Al、ITOのいずれかで形成された試験板上に塗布した。次に、300mm×24mmにカットしたPETフィルムを塗膜上に載せて圧着し、UV露光機を用いて、露光量3000mJ/cm2のUVを照射して塗膜を完全に硬化させて各試料を作製し、室温で24時間静置した。
【0115】
≪試験方法≫
粘着性試験は、第十七改正日本薬局方6.12に記載の「180°ピール粘着力試験法」に準拠して実施した。上記の各試料において、フィルムの端を把持して180°に折り返して試験板から25mmはがした後、引張試験機の下部チャックに試験板を固定し、上部チャックにフィルムを固定した。引張試験機を、室温、湿度45%の環境下で、剥離速度300mm/秒で動かし測定を開始し、試験板から引き剥がされた50%の長さの粘着力測定値を平均してピール粘着力を測定した。
【0116】
≪結果≫
結果を表2に示す。実施例7~9ならびに比較例5および6の各基材とPETとのあいだのピール粘着力は比較例5のピール粘着力を100として、実施例10~12ならびに比較例7および8の各基材とPETとのあいだのピール粘着力は比較例7のピール粘着力を100として、相対的に表示した。なお、粘着性は、数値が大きいほど粘着力が高いことを示す。実施例7~9は比較例5と比べて試験板(Cu)へのPETフィルムの粘着力が顕著に向上したことがわかる。また、実施例9は比較例5と比べて試験板(ガラスおよびITO)へのPETフィルムの粘着力が顕著に向上したことがわかる。さらに実施例7は比較例1と比べて試験板(CuおよびAl)へのPETフィルムの粘着力が向上していることがわかる。実施例10は比較例7に対してすべての試験版へのPETフィルムの粘着力が小さいが、比較例7の粘着力が比較例5の粘着力の約1.4~14倍であることを考慮すると十分良好な粘着性を示しているといえる。
【0117】
【0118】
実施例13~16
モノマーA、モノマーBを表3に記載のモノマー組成でそれぞれ混合した混合物(表3中モノマーA、BおよびDAの総量)に、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、後添加の架橋性モノマーを加えたモノマーの全量100質量部に対して1質量部加え、85℃で5時間撹拌した。その後、各混合物に、表3の組成に従い架橋性モノマー2を添加し、各混合物を調製した。
【0119】
比較例9および11
表3の組成に従い、モノマーAに重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、後添加の架橋性モノマーを加えたモノマーの全量に対して1質量部加え、85℃で5時間撹拌した。その後、各混合物に、表3に従い架橋性モノマー2を添加し、混合物を調製した。
【0120】
比較例10および12
モノマーBの代わりに接着性モノマー(N-(3,4-ジヒドロキシフェネチル)アクリルアミド(DA))を用いた以外はそれぞれ実施例13および16と同様にして混合物を調製した。
【0121】
試験例3:接着性試験
≪試験片の作製≫
PP-AlおよびAl-Alの組み合わせのそれぞれ2つの試験板(長さ:25mm×幅:10mm)の一方に、長さ方向の一端側から12mmの位置までの全面に実施例13~16および比較例9~12の各混合物を塗布した。他方の試験板の長さ方向の一端が、一方の試験板の一端側から長さ方向に突出し、かつ、他端が一方の試験板の一端の12mmの位置となるように他方の試験板を配置することで、他方の試験板を各混合物に接触させた。なお、両試験板は、一方の試験板が他方の試験板の幅方向がからはみ出さないように接触させた。その後、両試験板を80℃、3時間の条件で温風循環式恒温槽で暴露することで各混合物を硬化させたものを試験片とした。
【0122】
≪試験方法≫
JIS K 6850:1999「接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法」に準拠し、試験片を構成する一方の試験板をその長手方向に引っ張るとともに、他方の試験片を一方の試験板が引っ張られる方向とは逆方向に引張り、各材料間の接着力を測定した。引張り速度は、いずれの試験片も5.0mm/秒とした。
【0123】
≪結果≫
結果を表3に示す。実施例13~15ならびに比較例9および10の接着力は、比較例9の接着力を100として、実施例16ならびに比較例11および12の接着力は、比較例11の接着力を100として、相対的に表した。数値が大きいほど接着力が高いことを示す。表2より、モノマーB1~B3によりPP-AlおよびAl-Alの接着性が顕著に向上することがわかる。また、モノマーB3を用いた実施例16は、接着性モノマー(DA)を用いた比較例12と比較してもPP-AlおよびAl-Alの接着性が顕著に向上していることがわかる。
【0124】
【0125】
試験例5:モノマーAに対する溶解性試験
接着性モノマー(モノマーB1(DHBA-HEA)、モノマーB3(DHBA-GMA)およびDA)の室温でのベースモノマー(モノマーA)への溶解度は、50℃の湯浴中で各接着性モノマー0.20gに対して各ベースモノマーをそれぞれ加えて一部を溶解させ(完全には溶解していない状態)、室温で終夜静置し、上澄みに溶解している接着性モノマーをHPLCにより定量した。なお、50wt%以上溶解した場合には、HPLCで定量することなく≧50と評価した。
<HPLC分析条件>
機器:Agilent 1260 Infinity LC〔アジレント・テクノロジー(株)製〕
カラム:YMC-PacK ODS-AM AM-302 150mm×φ4.6mm、S-5μm・120A
温度:40℃
移動相:アセトニトリル/0.5wt%リン酸=1/1、流量1mL/min
UV254nm
【0126】
≪結果≫
結果を表4に示す。表中、「難溶」は溶解性1.5%以下であり、「-」は試験していないことを示す。モノマーB1は、DAと比較してモノマーA2(THFA)、モノマーA4(2-MTA)、モノマーA5(MEDOL-10)、モノマーA6(AM)などのモノマーAに対して溶解性が向上していることがわかる。モノマーB3は試験したすべてのモノマーA(モノマーA1(4-HBA)、モノマーA2(THFA)、モノマーA3(HEA)、モノマーA7(AZB))に対して50wt%以上の非常に高い溶解性を示し、DAと比較して顕著に溶解性が向上していることがわかる。
【0127】
【0128】
試験例6:溶剤に対する溶解性試験
接着性モノマー(モノマーB3(DHBA-GMA)およびDA)の室温での溶剤への溶解度は、試験例5と同様にして決定した。結果を表5に示す。表中、「難溶」は溶解性1.5%以下であることを示す。モノマーB3は試験したすべての溶剤に対して50wt%以上の非常に高い溶解性を示し、DAと比較して顕著に溶解性が向上していることがわかる。
【0129】