(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087015
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
C23C14/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169001
(22)【出願日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2020198682
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂川 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功康
(72)【発明者】
【氏名】相澤 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】合田 晃宏
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DA10
4K029DB11
4K029KA01
(57)【要約】
【課題】防着板のメンテナンス時のアクセス性を向上すること。
【解決手段】基板を搬送しながら基板に対して成膜を行うインライン式の成膜装置は、基板を搬送する搬送ユニットと、蒸着源を含み、搬送ユニットの下方の第1位置と、第1位置に対して横方向に変位した第2位置とに移動可能な蒸着ユニットと、蒸着源から放出された蒸着物質が基板に付着することを許容しつつ、蒸着ユニットの内壁に付着することを防止する防着板を備える。防着板は、蒸着ユニットに支持され、蒸着ユニットとともに第1位置と第2位置とに移動可能である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する搬送ユニットと、
蒸着源を含み、前記搬送ユニットの下方の第1位置と、前記第1位置に対して横方向に変位した第2位置とに移動可能な成膜源ユニットと、
前記蒸着源から放出された蒸着物質が基板に付着することを許容しつつ、前記成膜源ユニットの内壁に付着することを防止する防着板を備え、
基板を搬送しながら基板に対して成膜を行うインライン式の成膜装置であって、
前記防着板は、前記成膜源ユニットに支持され、前記成膜源ユニットとともに前記第1位置と前記第2位置とに移動可能である、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記防着板は、前記成膜源ユニットに対して上下に移動可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記防着板は、前記成膜源ユニットに固定される下側部分と、前記成膜源ユニットに対して上下に移動可能な上側部分とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記成膜源ユニットは、前記第1位置の上方であって前記搬送ユニットの下部に接続する第3位置にも移動可能であり、
前記成膜源ユニットが前記第3位置から前記第1位置へ移動するのに連動して、前記防着板は、前記成膜源ユニットに対して下方に移動する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記防着板は、前記成膜源ユニットが前記第1位置から前記第2位置に移動する際に前記搬送ユニットとの接触を回避可能な位置まで、前記成膜源ユニットに対して下方に移動する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記防着板は、
前記蒸着源の周囲を覆う側壁と、
前記蒸着源から放出された前記蒸着物質が通過する、基板に対向する開口と、を含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記成膜源ユニットが前記搬送ユニットの下部に接続する第3位置にある場合には、前記防着板は、前記防着板の上端が前記搬送ユニットの下端よりも上方に位置するように配置される、ことを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記成膜源ユニットが前記第3位置にある場合における、前記搬送ユニットの前記下端から前記防着板の前記上端までの距離は、前記成膜源ユニットの前記第3位置から前記第1位置までの移動距離よりも大きい、ことを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
基板を搬送する搬送ユニットと、
蒸着源を含み、前記搬送ユニットの下方の第1位置と、前記第1位置に対して横方向に変位した第2位置とに移動可能な成膜源ユニットと、
前記蒸着源から放出された蒸着物質が基板に付着することを許容しつつ、前記成膜源ユニットの内壁に付着することを防止する防着板と、を備え、
基板を搬送しながら基板に対して成膜を行うインライン式の成膜装置であって、
前記防着板は、前記成膜源ユニットに支持され、前記成膜源ユニットとともに前記第1位置と前記第2位置とに移動可能であり、
前記成膜源ユニットは、前記第1位置の上方であって前記搬送ユニットの下部に接続する第3位置にも移動可能であり、
前記成膜装置は、前記成膜源ユニットの傾きに関する値を検出する検出手段を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
前記成膜源ユニットの前記第1位置と前記第3位置との間の昇降動作において、前記検出手段により検出された前記傾きに関する値が所定条件を満たさない場合に前記昇降動作を停止する停止手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を搬送しながら基板に対して処理を行うインライン式の装置が知られている。特許文献1には、インライン式の基板処理装置において、成膜源を真空チャンバ内の成膜位置から真空チャンバ外のメンテナンス位置に移動可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような成膜装置では、真空チャンバ等の基板以外の部材への蒸着物質の付着を抑制するために防着板が設けられることがある。上記従来技術では、成膜源をメンテナンス位置に移動した場合に防着板が基板搬送側の真空チャンバ内に留まるので、防着板のメンテナンス時に防着板にアクセスしにくいことがある。
【0005】
本発明は、防着板のメンテナンス時のアクセス性を向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、
基板を搬送する搬送ユニットと、
蒸着源を含み、前記搬送ユニットの下方の第1位置と、前記第1位置に対して横方向に変位した第2位置とに移動可能な成膜源ユニットと、
前記蒸着源から放出された蒸着物質が基板に付着することを許容しつつ、前記成膜源ユニットの内壁に付着することを防止する防着板を備え、
基板を搬送しながら基板に対して成膜を行うインライン式の成膜装置であって、
前記防着板は、前記成膜源ユニットに支持され、前記成膜源ユニットとともに前記第1位置と前記第2位置とに移動可能である、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防着板のメンテナンス時のアクセス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る成膜装置を模式的に示す正面図。
【
図3】
図1の成膜装置の内部構造を模式的に示す図。
【
図4】移動ユニットによる蒸着源ユニットの移動動作を説明する図。
【
図7】(A)~(C)は、防着板の搬送ユニットに対する配置を模式的に示す図。
【
図9】一実施形態に係る成膜装置を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、各図において、X方向は基板の搬送方向、Y方向は基板の幅方向、Z方向は上下方向を示す。
【0011】
<第1実施形態>
<成膜装置の概要>
図1は、一実施形態に係る成膜装置1を模式的に示す正面図である。
図2は、
図1の成膜装置1の側面図である。
図3は、
図1の成膜装置1の内部構造を模式的に示す図である。
【0012】
成膜装置1は、基板を搬送しながら基板に対して蒸着を行うインライン式の成膜装置である。成膜装置1は、例えばスマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられ、複数台並んで配置されてその製造ラインを構成し得る。
【0013】
本実施形態では、成膜装置1には基板保持トレイ100に保持された基板が順次搬送され、成膜装置1は搬送されてきた基板に対して有機ELの蒸着を行う。基板は、例えば成膜装置1に搬送されるよりも上流の工程でマスクと重ね合わされた状態で基板保持トレイ100に保持されて成膜装置1に搬送される。したがって、成膜装置1ではマスクにより所定のパターンの蒸着物質の薄膜が基板上に形成される。成膜装置1で蒸着が行われる基板の材質としては、ガラス、樹脂、金属等を適宜選択可能であり、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板に成膜を行う例について説明するが、成膜方法の態様はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。
【0014】
成膜装置1は、搬送ユニット2と、蒸着源ユニット3と、防着板6と、移動ユニット7と、フレーム部101とを含む。
【0015】
フレーム部101は、成膜装置1の搬送ユニット2等の構成要素を支持可能に設けられる。
図1の例では、フレーム部101は、柱及び梁を含み、搬送ユニット2及び真空ポンプ102を支持している。また、フレーム部101には、作業用のクレーンや作業者がメンテナンスを行うための通路等が設けられてもよい。
【0016】
搬送ユニット2は、基板を搬送する。本実施形態では、搬送ユニット2は、基板を保持した状態の基板保持トレイ100を搬送することにより、基板の搬送を行う。搬送ユニット2は、搬送チャンバ21と、搬送ローラ22と、を含む。
【0017】
搬送ユニット2は、基板を搬送する。本実施形態では、搬送ユニット2は、基板を保持した状態の基板保持トレイ100を搬送することにより、基板の搬送を行う。搬送ユニット2は、搬送チャンバ21と、搬送ローラ22と、を含む。
【0018】
搬送チャンバ21は、内部を真空に保持可能な箱型のチャンバである。搬送チャンバ21の内部空間210は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、搬送チャンバ21は真空ポンプ102に接続されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。
【0019】
搬送チャンバ21には、基板保持トレイ100が搬入される搬入開口211及び基板保持トレイ100が搬出される搬出開口212が形成されている。また、搬送チャンバ21の下部には、内部空間210と蒸着源チャンバ31の内部空間310とを連通するための連通開口213が形成されている。なお、搬入開口211及び搬出開口212には、内部空間210を真空に保持するために不図示のゲートバルブ等が設けられてもよい。
【0020】
搬送ローラ22は、基板を保持した基板保持トレイ100を搬送する。搬送ローラ22は、搬送チャンバ21の内部空間210に設けられる。搬送ローラ22は、例えば金属材料で形成された、回転可能に支持される円筒形状の部材である。搬送ローラ22は、例えば搬送チャンバ21の外部に設けられた不図示の電動モータにより駆動する。
【0021】
また、本実施形態では、搬送ユニット2の下部には、補強用のリブ23が設けられている。
【0022】
蒸着源ユニット3は、基板に対して蒸着物質を放出する蒸着源32(成膜源)を有するユニット(成膜源ユニット)である。本実施形態では、1つの搬送ユニット2に対して3つの蒸着源ユニット3が基板の搬送方向(X方向)に並んで配置されている。しかしながら、蒸着源ユニット3の数は適宜設定可能であり、2つ以下或いは4つ以上であってもよい。また、蒸着源ユニット3は、蒸着処理の実行時には搬送ユニット2の下方に位置し搬送ユニット2の下部に接続する。蒸着源ユニット3は、蒸着源チャンバ31と、蒸着源32と、を含む。
【0023】
蒸着源チャンバ31は、内部を真空に保持可能な箱型のチャンバである。蒸着源チャンバ31の内部空間310は、搬送チャンバ21の上部に設けられた連通開口311を介して搬送チャンバ21の内部空間210と連通可能である。内部空間310は、稼働時には内部空間210と同様、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。
【0024】
蒸着源32は、搬送ユニット2により搬送される基板に対する成膜のために蒸着物質を放出する。例えば、蒸着源32はY方向に並んで配置された複数のノズル(不図示)を含み、それぞれのノズルから蒸着物質が放出される。また例えば、蒸着源32は蒸着物質を貯留する貯留部及び貯留部に貯留された蒸着物質を加熱するヒータ(いずれも不図示)を含む。貯留部に貯留された蒸着物質がヒータによって加熱されて気化することにより、蒸着源32から蒸着物質が放出される。
【0025】
また、蒸着源ユニット3は、蒸着源32の不使用時に蒸着源32を遮蔽するシャッタ又は蒸着源32による蒸着物質の蒸発量を監視する蒸発レートモニタ等(いずれも不図示)を含んでもよい。
【0026】
なお、本実施形態では、詳しくは
図4に示すように、蒸着源32は、移動ユニット7により移動可能に構成される。
【0027】
防着板6は、蒸着源32から放出された蒸着物質が蒸着源チャンバ31又は搬送チャンバ21の内壁等に付着することを防止する。例えば、防着板6は蒸着源チャンバ31に支持される。本実施形態では、防着板6は、蒸着源32を覆うように内部空間310から内部空間210に渡って位置するとともに、上部には開口が形成されている。このような構成により、蒸着物質の一部は開口を介して基板へと付着する一方、残りの蒸着物質は防着板6に付着する。このように、防着板6は、蒸着物質が基板に付着することを許容しつつ、蒸着物質が蒸着源チャンバ31又は搬送チャンバ21の内壁等に付着することを防止する。防着板6の具体的な構成については後述する。
【0028】
なお、搬送チャンバ21又は蒸着源チャンバ31には、防着板6以外にも防着板が設けられてもよい。例えば、搬送チャンバ21の内部の天面又は側面等に防着板が設けられてもよい。
【0029】
移動ユニット7は、蒸着源ユニット3を搬送ユニット2に対して移動させるユニットである。本実施形態では、移動ユニット7は蒸着源ユニット3の下方に設けられ、蒸着源ユニット3を支持しつつ蒸着源ユニット3を上下方向(Z方向)又は横方向(Y方向)に移動させる。移動ユニット7は、横方向移動部71と昇降部72とを含む。
【0030】
横方向移動部71は、蒸着源ユニット3を横方向(Y方向)に移動させる。本実施形態では、横方向移動部71は蒸着源ユニット3を基板の搬送方向(X方向)に交差する基板の幅方向(Y方向)に移動させる。横方向移動部71は、床面に設けられたガイド部711と、ガイド部711沿って蒸着源ユニット3を移動させるための駆動部712とを含む。駆動部712としては周知の技術を適宜採用可能であるが、例えば、ガイド部711としてのレール上を走行可能な駆動輪を、モータ等により回転させてもよい。
【0031】
昇降部72は、蒸着源ユニット3を昇降させる。本実施形態では、昇降部72は、蒸着源ユニット3を上下方向(Z方向)に昇降させる。昇降部72は、蒸着源ユニット3を支持する蒸着源ユニット支持部721と、蒸着源ユニット支持部721を昇降させる駆動部722とを含む。駆動部722としては周知の技術を採用可能であるが、例えば電動シリンダ等により蒸着源ユニット支持部721を昇降させてもよい。
【0032】
図4は、移動ユニット7による蒸着源ユニット3の移動動作を説明する図である。
【0033】
状態ST1は、蒸着源ユニット3が搬送ユニット2と接続する接続位置POS1(第3位置)に位置している状態である。状態ST1は成膜装置1が基板に対する蒸着を行う際の状態である。状態ST1では、蒸着源ユニット3が搬送ユニット2の下方に位置し、搬送ユニット2の下部と蒸着源ユニット3の上部とが接続している。
【0034】
状態ST2は、蒸着源ユニット3が接続位置POS1からその下方の接続解除位置POS2(第1位置)に移動した状態である。蒸着源ユニット3は、移動ユニット7の昇降部72により接続位置POS1から接続解除位置POS2にーZ方向に移動する。
【0035】
状態ST3は、蒸着源ユニット3が接続解除位置POS2から横方向への移動が完了した状態である。状態ST3において、蒸着源ユニット3は、搬送ユニット2又は蒸着源ユニット3のメンテンスが実行されるメンテナンス位置POS3(第2位置)に位置している。例えば、搬送ユニット2のメンテンスを行う場合には、作業者は、蒸着源ユニット3が横方向に移動したことにより生じた搬送ユニット2の下方のスペースから搬送チャンバ21の内部にアクセスすることができる。また例えば、蒸着源ユニット3のメンテナンスを行う場合には、対象の蒸着源ユニット3をメンテナンス位置POS3まで移動させることにより、作業者は蒸着源チャンバ31の長手方向の側面から蒸着源チャンバ31の内部にアクセスすることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、移動ユニット7は、複数の蒸着源ユニット3に対してそれぞれ設けられる。したがって、本実施形態の成膜装置1は、複数の蒸着源ユニット3をそれぞれ独立に移動させることができる。なお、複数の移動ユニット7を同期させて、複数の蒸着源ユニット3をまとめて移動させてもよい。また、蒸着源ユニット3よりも少ない数の移動ユニット7が設けられ、1つの移動ユニット7で複数の蒸着源ユニット3を移動させてもよい。
【0037】
<防着板の構成>
図5は、防着板6の構成を示す斜視図であり、蒸着源ユニット3が搬送ユニット2と接続しているときの状態を示している。すなわち、蒸着源ユニット3が接続位置POS1に位置しているときの防着板6の状態が示されている。本実施形態では、防着板6は、上側部分61と下側部分62とを含む。
【0038】
上側部分61は、その側壁を形成する複数の側壁部材611~618を含む。また、上側部分61の上部には開口619が形成されている。開口619は、蒸着処理の実行時に搬送ユニット2により搬送される基板に対向するように設けられている(
図3参照)。蒸着源32から放出された蒸着物質は、この開口619を通過して基板に付着する。また、上側部分61は、蒸着源チャンバ31と接続するための接続部6110を含む。接続部6110は、例えば上側部分61を取り囲むように設けられるフレームに取り付けられ、このフレームが蒸着源チャンバ31に支持されることにより蒸着源チャンバ31と接続する。
【0039】
下側部分62は、その側壁を形成する複数の側壁部材621~628を含む。また、上側部分61は、蒸着源チャンバ31と接続するための接続部6210を含む。接続部6210は、例えば下側部分62を取り囲むように設けられるフレームに取り付けられ、このフレームが蒸着源チャンバ31に支持されることにより蒸着源チャンバ31と接続する。
【0040】
本実施形態では、上側部分61は、例えば接続部6110が取り付けられるフレームが蒸着源チャンバ31に対して上下方向に移動可能に支持されることにより、蒸着源チャンバ31に対して上下方向に移動可能に設けられる。一方で、下側部分62は、例えば接続部6210が取り付けられるフレームが蒸着源チャンバ31に固定されることにより、蒸着源チャンバ31に対して上下方向の移動を規制された状態で設けられる。つまり、上側部分61は、下側部分62に対して相対移動可能に設けられている。
【0041】
図6は、防着板6の構成を示す斜視図であり、上側部分61が下側部分62に対して相対的に下方に移動した状態を示している。例えば、防着板6は、蒸着源ユニット3と搬送ユニット2との接続が解除されているとき、すなわち、蒸着源ユニット3が接続解除位置POS2、メンテナンス位置POS3又はこれらの間に位置しているときに
図6に示す状態となる。
【0042】
図7(A)~
図7(C)は、搬送ユニット2に対する防着板6の配置を模式的に示す図である。
図7(A)は、蒸着源ユニット3が接続位置POS1にある状態での防着板6の配置を示している。この状態では、上側部分61の上端は、基板保持トレイ100の搬送経路に近接している。基板保持トレイ100と上側部分61の上端が近づくことにより、基板に付着しない蒸着物質が蒸着源チャンバ31又は搬送チャンバ21の内壁等に付着することをより効果的に防止することができる。なお、この状態では、搬送ユニット2の下端から防着板6の上端までの距離は距離ΔZ1となっている。
【0043】
図7(B)は、本実施形態と異なる態様として、防着板6の上側部分61と下側部分62との相対位置関係が変わらない構成で、蒸着源ユニット3が接続解除位置POS2にある状態を示している。ここで、防着板6を蒸着源ユニット3とともに接続解除位置POS2からメンテナンス位置POS3に移動させる際には、搬送ユニット2と防着板6との接触を回避する必要がある。
図7(B)で示す構成の場合、搬送ユニット2と防着板6との接触を回避するためには、接続位置POS1から接続解除位置POS2までの蒸着源ユニット3の移動距離ΔZ2を距離ΔZ1より大きくする必要がある。
【0044】
図7(C)は、防着板6の上側部分61が下側部分62に対して下方に移動する構成で、蒸着源ユニット3が接続解除位置POS2にある状態を示している。
図7(C)で示す構成の場合、搬送ユニット2と防着板6との接触を回避するために必要な接続位置POS1から接続解除位置POS2までの蒸着源ユニット3の移動距離ΔZ3は、距離ΔZ1よりも小さくなる。すなわち、
図7(C)で示す構成の場合、蒸着源ユニット3の移動距離と、上側部分61が下側部分62に対して下方に移動する距離との合計が距離ΔZ1よりも大きくなればよい。よって、蒸着源ユニット3の移動距離ΔZ3は、距離ΔZ1よりも小さくなり、結果として移動距離ΔZ2よりも小さくなる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、防着板6は、蒸着源ユニット3とともに接続解除位置POS2とメンテナンス位置POS3との間を移動可能である。これにより、防着板6を蒸着源ユニット3と一緒に引き出せるので、防着板6のメンテナンス時のアクセス性が向上する。よって、防着板6の取り出し又は防着板6に対する作業をより容易に実行することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、防着板6を蒸着源ユニット3と一緒に引き出す際に、防着板6は蒸着源ユニット3に対して下方に移動可能である。さらに言えば、防着板6の上側部分61は、下側部分62及び蒸着源ユニット3に対して下方に移動可能である。これにより、蒸着源ユニット3を防着板6とともに接続解除位置POS2からメンテナンス位置POS3に移動する際に搬送ユニット2と防着板6の接触を回避することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、搬送ユニット2と防着板6との接触を回避するために必要な接続位置POS1から接続解除位置POS2までの蒸着源ユニット3の移動距離ΔZ3は、搬送ユニット2の下端から防着板6の上端までの距離ΔZ1よりも小さい。よって、
図7(B)で示すような防着板6の上側部分61と下側部分62との相対位置関係が変わらない構成と比較して蒸着源ユニット3の移動距離を低減することができる。また、別の観点から見れば、防着板6が蒸着源ユニット3に対して下方に移動可能な構成により、蒸着源ユニット3の移動時に搬送ユニット2と防着板6との接触を回避するのに必要な蒸着源ユニット3の移動距離ΔZ3を低減しつつ、蒸着処理の実行時には防着板6を基板により近づけることができる。
【0048】
<防着板の動作説明>
本実施形態では、蒸着源ユニット3の搬送ユニット2に対する下方への移動に連動して、防着板6の上側部分61が下側部分62に対して下方に移動する。以下、蒸着源ユニット3と防着板6との連動動作について説明する。
図8は、防着板6の動作説明図である。具体的には、蒸着源ユニット3が接続位置POS1から接続解除位置POS2に移動するのに連動して、上側部分61が下側部分62に対して相対的に下方に移動する動作を示している。
【0049】
図8には、上側部分61を下側部分62に対して移動させるための移動機構5が示されている。移動機構5は、可動板51と、レバー52と、ガイド53とを含む。可動板51は、上側部分61に接続され、上側部分61とともに上下方向に移動する。レバー52は、蒸着源チャンバ31に設けられた軸部材521に回動可能に支持される。レバー52の一端には可動板51に形成されたガイド溝511に沿って移動可能なローラ522が設けられる。レバー52のローラ522が設けられる端部と反対側の端部には、ガイド53に沿って移動可能なローラ523が設けられる。ガイド53は、搬送チャンバ21の内部に設けられ、ローラ523と当接する上側当接部531及び下側当接部532を含む。
【0050】
蒸着源ユニット3が接続位置POS1にある状態(状態ST11)では、防着板6の上側部分61が下側部分62に対して下方に移動していない状態(
図5参照)となっている。このとき、レバー52のローラ523の位置は、ガイド53により軸部材521よりも下方に位置するように規定されている。よって、レバー52のローラ523が設けられる端部と反対側の端部に設けられるローラ522は、軸部材521よりも上方の位置で、上側部分61に接続する可動板51のガイド溝511に係合している。つまり、上側部分61は、レバー52によって持ち上げられた状態となっている。
【0051】
蒸着源ユニット3が接続位置POS1から下降している状態(状態ST12)では、レバー52はガイド53により図示の方向で右回りに回動する。この回動は、レバー52は、上側部分61の自重により可動板51を介してローラ522に加わる力、又はガイド53の下側当接部532からローラ523に加わる力により生じる。この回動により、上側部分61が下側部分62対して下方に移動する。
【0052】
最終的に、蒸着源ユニット3が接続解除位置POS2に位置した状態(状態ST13)では、上側部分61が下側部分62に対して下方へ所定距離移動している。この所定距離は、例えば
図7(C)で示すような、搬送ユニット2と防着板6との接触を回避するのに必要な距離であってもよい。
【0053】
なお、蒸着源ユニット3が接続解除位置POS2から接続位置POS1に移動する際には、上記説明と逆の動作によって、上側部分61が下側部分62に対して上方に移動する。概略を述べると、蒸着源ユニット3が接続解除位置POS2から上昇し始めると、ある高さでローラ523がガイド53に当接する。すると、ローラ523がガイド53の上側当接部531から受ける力により、レバー52は左回りに回動する。この回動により、可動板51のガイド溝511にローラ522からの上方向の力が加わり、可動板51及びこれに接続した上側部分61が下側部分62に対して上方向に移動する。
【0054】
本実施形態によれば、蒸着源ユニット3の上下方向の移動と防着板6の蒸着源ユニット3に対する相対的な移動が連動するので、より容易に防着板6を蒸着源ユニット3とともに移動させることができる。
【0055】
<他の実施形態>
上記実施形態では、防着板6を蒸着源ユニット3に対して相対的に上下に移動させるが、防着板6が蒸着源ユニット3に対して上下に移動しない構成も採用可能である。ただし、上記実施形態のように防着板6が蒸着源ユニット3に対して相対的に移動することにより、防着板6と搬送チャンバ21との干渉を回避するために必要な蒸着源ユニット3の下降量を低減することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、防着板6は、上側部分61と下側部分62とに分割されているが、上下に分割されない構成も採用可能である。すなわち、上側部分61を下側部分62及び蒸着源ユニット3に対して移動させるのではなく、防着板6全体を蒸着源ユニット3に対して上下に移動させてもよい。ただし、上記実施形態では、防着板6が上側部分61と下側部分62とに別れていることにより、防着板6と搬送チャンバ21との干渉を回避するために必要な蒸着源ユニット3の下降量を低減することができる。
【0057】
詳細には、防着板6は、蒸着物質の蒸着源チャンバ31の内壁への付着を抑制するため、その下端は蒸着源チャンバ31の底に比較的近接して設けられることがある。よって、防着板6全体を蒸着源ユニット3に対して下げる場合、防着板6の下げ幅を大きく取ることができず、蒸着源ユニット3の下降量が大きくなってしまうことがある。これに対し、上側部分61を下側部分62に対して下げる場合には、上側部分61の下端から蒸着源チャンバ31の底までの距離が比較的大きいので、上側部分61の下げ幅を大きく取ることができる。よって、蒸着源ユニット3の下降量をそれほど大きくする必要がない。よって、防着板6を上下に分割することにより、防着板6と搬送チャンバ21との干渉を回避するために必要な蒸着源ユニット3の下降量を低減することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、蒸着源ユニット3の上下方向の移動に連動して、上側部分61が下側部分62に対して上下方向に相対的に移動するが、蒸着源ユニット3の移動と上側部分61の移動とが連動しない構成も採用可能である。例えば、
図7(B)で示す状態から、作業者が手動で上側部分61を下側部分62に対して移動させてもよいし、モータ等を用いて上側部分61を下側部分62に対して移動させてもよい。
【0059】
また、蒸着源ユニット3の移動と上側部分61の移動との連動の態様は、上記実施形態のようにリンク等を用いた機械的な機構で連動するものに限られない。例えば、成膜装置1が上側部分61を下側部分62に対して移動させるモータを備えてもよい。そして、成膜装置1の制御装置は、昇降部72による蒸着源ユニット3の昇降を開始したのに基づいて、上側部分61を移動させるモータを駆動させてもよい。すなわち、蒸着源ユニット3の移動と上側部分61の移動とが制御的に連動していてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、防着板6は、基板保持トレイ100の搬送経路の下方に配置されているが、防着板6が基板保持トレイ100の上側まで延びていてもよい。すなわち、防着板6は、上記実施形態のように蒸着物質が通過する開口619に代えて、基板保持トレイ100が通過可能な開口を、基板の搬送方向に交差する側面の上部に有していてもよい。
【0061】
また、成膜装置1は、蒸着源ユニット3の傾きに関する値を検出するセンサを備えていてもよい。そして、成膜装置1は、このセンサにより検出された蒸着源ユニット3の傾きに関する値が所定条件を満たさない場合に蒸着源ユニット3の昇降動作、すなわち、接続位置POS1ー接続解除位置POS2間の移動動作を停止してもよい。
【0062】
例えば、センサは、振り子式又はフロート式の傾斜センサのように蒸着源ユニット3の傾きを直接的に検出するものであってもよいし、加速度センサのように傾きを間接的に検出するものであってもよい。また例えば、センサは、両側の駆動部722の駆動負荷に関する値(例えば駆動電流値)又は両側の蒸着源ユニット支持部721にかかる蒸着源ユニット3の荷重等、蒸着源ユニット3に傾きが生じていることを把握することのできる値を検出するものであってもよい。
【0063】
また例えば、成膜装置1は、センサにより検出した蒸着源ユニット3の傾きが閾値以上である場合に、蒸着源ユニット3の昇降動作を停止してもよい。或いは、成膜装置1は、両側の駆動部722の駆動電流値や、蒸着源ユニット支持部721にかかる蒸着源ユニット3の荷重の差が閾値以上である場合に、蒸着源ユニット3の昇降動作を停止してもよい。
【0064】
<第2実施形態>
図9は、第3実施形態に係る成膜装置13を模式的に示す正面図である。また、
図10は、
図9の成膜装置13の平面図であって、中央の蒸着源ユニット3がメンテナンス位置POS3に位置した状態を示している。本実施形態は、成膜装置13が取り出しユニット50を含んでいる点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0065】
取り出しユニット50は、メンテナンス位置POS3に位置する蒸着源ユニット3の上方から所定の部品を取り出す。所定の部品としては、例えば、蒸着源ユニット3の蒸着源チャンバ31に収容されている蒸着源チャンバ31及び防着板6等が挙げられる。取り出しユニット50は、蒸着源ユニット3の上方を移動可能なようにフレーム部101に支持される。取り出しユニット50は、保持部501と、鉛直移動部502と、水平移動部503とを含む。
【0066】
保持部501は、所定の部品を保持する。例えば、保持部501は、その先端部分が水平方向等の所定の方向に移動することで所定の部品を把持してもよい。或いは、保持部501には、玉掛け用のワイヤを引っ掛けるためのフックが設けられており、所定の部品をワイヤで吊ることにより保持してもよい。なお、保持部501については、大きさの異なるものに対応可能なように、折りたたみ可能に構成されてもよい。
【0067】
鉛直移動部502は、保持部501を鉛直方向に移動する。鉛直移動部502としては公知の技術を適宜採用可能であるが、例えばボールねじ機構を有する電動シリンダや空圧式のバランスシリンダ等が用いられてもよい。
【0068】
水平移動部503は、保持部501を水平方向に移動する。詳細には、水平移動部503は、鉛直移動部502を水平方向に移動することにより、保持部501を水平方向に移動する。例えば、水平移動部503は、鉛直移動部502をX方向に移動するX方向移動部5031と、鉛直移動部502をY方向に移動するY方向移動部5032とを含む。本実施形態では、Y方向移動部5032が鉛直移動部502をY方向に移動し、X方向移動部5031がY方向移動部5032をX方向に移動する。X方向移動部5031及びY方向移動部5032としては公知の技術を適宜採用可能であるが、例えばラックピニオン機構及びそのピニオンを回転させる電動モータを含んで構成されてもよい。また、滑車式の機構を用いて、駆動源は持たずX方向及びY方向のうちの少なくとも一方の移動は作業者による人力で行っても良い。
【0069】
例えば、取り出しユニット50は、メンテナンス位置POS3に位置する蒸着源ユニット3から所定の部品を取り出すと、取り出した部品を不図示のメンテナンス用の台等に載置する。これにより、メンテナンス対象の部品が蒸着源チャンバ31内にある場合よりも作業者によるメンテナンスが行いやすくなる。
【0070】
なお、取り出しユニット50が複数設けられる構成も採用可能である。この場合、両外側の蒸着源ユニット3がメンテナンス位置POS3に引き出されている場合に、各蒸着源ユニット3からの部品の取り出しを並行して行うことができる。また、取り出しユニット50が複数設けられる場合、例えばX方向移動部5031のレール部分等が共用となっていてもよい。
【0071】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 成膜装置、2 搬送ユニット、3 蒸着源ユニット、6 防着板