(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088015
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】物性予測システム、物性予測装置、及び物性予測方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20120101AFI20220607BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20220607BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06F17/50 638
G06F17/50 610A
B60C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200225
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寛太
【テーマコード(参考)】
3D131
5B046
5B146
5L049
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA02
3D131BA03
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BC55
3D131LA34
5B046HA05
5B046JA01
5B146AA10
5B146DG00
5B146DG02
5L049AA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の素材で構成された組成物の物性を予測するだけでなく、前記組成物に含まれる特定素材の特徴量と予測値とを関連付けて表示することが可能な物性予測システム、物性予測装置及び物性予測方法を提供する。
【解決手段】予測システムは、予測装置10と、情報端末20と、データベース30と、を備える。予測装置10の性能予測部111は、被予測ゴムを構成する複数の素材に関する素材情報に基づいて被予測ゴムの物性の値を予測する。情報端末20の表示処理部は、性能予測部111によって予測された予測値と、複数の素材のうちの特定素材の特徴量とを関連付けて表示部に表示させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素材で構成された組成物の物性を予測する物性予測システムであって、
前記複数の素材に関する素材情報であって、前記複数の素材のうちの特定素材の特徴量を含む素材情報を記憶する素材情報記憶部と、
前記素材情報記憶部に記憶される前記素材情報に基づいて前記物性の値を予測する予測部と、
前記予測部によって予測された予測値と、前記素材情報記憶部に記憶される前記特徴量とを関連付けて表示させる表示処理部と、を備える物性予測システム。
【請求項2】
前記表示処理部によって所定の表示部に表示された前記特徴量を変更する特徴量変更部を更に備え、
前記予測部は、前記特徴量変更部によって前記特徴量が変更された場合に、変更後の前記特徴量を含む前記素材情報に基づいて前記物性の値を再予測する、請求項1に記載の物性予測システム。
【請求項3】
前記表示処理部に前記予測値を表示させる前記物性を選定する第1選定部を更に備え、
前記表示処理部は、前記第1選定部によって選定された前記物性の前記予測値と、前記特徴量とを関連付けて表示させる、請求項1又は2に記載の物性予測システム。
【請求項4】
前記表示処理部に前記特徴量を表示させる前記特定素材を選定する第2選定部を更に備え、
前記表示処理部は、前記予測部によって予測された前記予測値と、前記第2選定部によって選定された前記特定素材の前記特徴量とを関連付けて表示させる、請求項1から3のいずれかに記載の物性予測システム。
【請求項5】
前記表示処理部は、前記第2選定部によって選定された前記特定素材の前記特徴量の取り得る量的範囲に対応する前記予測値を示す特性グラフを所定の表示部に表示させる、請求項4に記載の物性予測システム。
【請求項6】
前記第2選定部によって選定された前記特定素材の前記特徴量の取り得る前記量的範囲を変更する範囲変更部を更に備え、
前記表示処理部は、前記範囲変更部によって変更された前記量的範囲に対応する前記特性グラフを所定の表示部に表示させる、請求項5に記載の物性予測システム。
【請求項7】
前記表示処理部は、複数種類の前記組成物それぞれの前記物性の値が前記予測部によって予測された場合に、各組成物に対応する前記予測値と、各予測値それぞれに対応する前記特定素材の前記特徴量とを関連付けて表示させる、請求項1から6のいずれかに記載の物性予測システム。
【請求項8】
前記予測部による予測対象である前記組成物の前記素材情報の入力を受け付ける入力受付部を更に備え、
前記予測部は、複数の他の組成物それぞれに関する複数の素材情報の特徴量及び前記複数の他の組成物それぞれに関する前記物性の値を含む教師データに基づく予測モデルと、前記入力受付部によって受け付けられた前記素材情報とに基づいて、前記組成物の前記物性の値を予測する、請求項1から7のいずれかに記載の物性予測システム。
【請求項9】
前記特徴量は、前記特定素材の配合量、又は前記特定素材における所定の物性の物性値の少なくともいずれかを含む、請求項1から8のいずれかに記載の物性予測システム。
【請求項10】
前記物性は、硬度、低温および高温における動的粘弾性、引張強度、破断時伸び、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300)、トルエン膨潤度、ガラス転移温度、耐摩耗性能、加硫特性値、スコーチタイム、及びムーニー粘度の少なくとも一つを含む、請求項1から9のいずれかに記載の物性予測システム。
【請求項11】
前記組成物は、少なくともポリマー及び添加剤を含むものであり、
前記素材情報は、前記ポリマー及び前記添加剤の分子に関する情報であって、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、及び、分子鎖の分岐度の少なくとも一つを含む、請求項1から10のいずれかに記載の物性予測システム。
【請求項12】
前記素材情報は、前記ポリマーのシス型の比率、トランス型の比率、油展量、ガラス転移温度、溶解性パラメータ、スチレン量、ビニル量、ブタジエンゴム量、及び、粘弾性特性の少なくとも一つを含む、請求項11に記載の物性予測システム。
【請求項13】
前記添加剤は、フィラーを含み、
前記素材情報は、前記フィラーの粒子径、CTAB吸着比表面積、BET吸着比表面積、及び、表面極性の少なくとも一つを含む、請求項11又は12に記載の物性予測システム。
【請求項14】
複数の素材で構成された組成物の物性を予測する物性予測装置であって、
前記複数の素材に関する素材情報であって、前記複数の素材のうちの特定素材の特徴量を含む素材情報を記憶する素材情報記憶部と、
前記素材情報記憶部に記憶される前記素材情報に基づいて前記物性の値を予測する予測部と、
前記予測部によって予測された予測値と、前記素材情報記憶部に記憶される前記特徴量とを関連付けて表示させる表示処理部と、を備える物性予測装置。
【請求項15】
複数の素材で構成された組成物の物性の値を予測する物性予測方法であって、
前記複数の素材に関する素材情報に基づいて前記物性の値を予測する予測ステップと、
前記予測ステップにおいて予測された予測値と、前記複数の素材のうちの特定素材の特徴量とを関連付けて表示させる表示処理ステップと、を含む物性予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の素材で構成された組成物の物性を予測する物性予測システム、物性予測装置、及び物性予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に装着されるタイヤなどの材料であるゴム状弾性体に関する特定の性能を求める予測方法が知られている(特許文献1参照)。前記予測方法は、複数のポリマー及び複数の添加剤を含む個々の材料についての分子に関する情報(第1データ)と、加硫後の複数種類のゴム状弾性体の材料配合割合(第2データ)と、加硫条件(第3データ)と、予測したい第1性能の情報(第4データ)と、の関係を示す関係式を用いて、前記ゴム状弾性体に関する特定の性能(第1性能)を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の予測方法によれば、予測対象のゴム状弾性体に関する各種情報から当該ゴム状弾性体の特定の性能の予測値を事前に得ることができる。そのため、ゴム状弾性体の開発者は、ゴム状弾性体を構成する複数の素材の組み合わせや配分量などを含む組成情報を入力して予測値を求める作業を繰り返し行うことにより、ゴム状弾性体を実際に製造しなくても、所望する性能値を有するゴム状弾性体の組成を得ることができる。これにより、ゴム状弾性体の開発スピードをアップさせ、開発コストを低減させることができる。しかしながら、従来の予測方法では、予測対象のゴム状弾性体におけるいずれかの素材の特性値と、前記予測値との関係性を把握することはできない。このような関係性を開発者が把握することができれば、開発者は、前記関係性を取っ掛かりとして、所望する性能値を有するゴム状弾性体の組成をより早期に見出すことができ、ゴム状弾性体の開発に貢献できると考えられる。
【0005】
本発明の目的は、複数の素材で構成された組成物の物性を予測するだけでなく、前記組成物に含まれる特定素材の特徴量と予測値とを関連付けて表示することが可能な物性予測システム、物性予測装置、及び物性予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の一の局面に係る物性予測システムは、複数の素材で構成された組成物の物性を予測する物性予測システムである。前記物性予測システムは、前記複数の素材に関する素材情報であって、前記複数の素材のうちの特定素材の特徴量を含む素材情報を記憶する素材情報記憶部と、前記素材情報記憶部に記憶される前記素材情報に基づいて前記物性の値を予測する予測部と、前記予測部によって予測された予測値と、前記素材情報記憶部に記憶される前記特徴量とを関連付けて表示させる表示処理部と、を備える。
【0007】
このように構成されているため、前記表示処理部によって、前記組成物の物性の予測値が所定の表示部に表示させることが可能となる。これにより、例えば、ユーザが前記組成物の開発者である場合、ユーザは、前記組成物を構成する前記特定素材の特徴量と、前記組成物の物性の予測値との関係性を一見して容易に把握することができる。その結果、ユーザは、前記関係性を取っ掛かりとして、所望する物性値を有する前記組成物の組成をより早期に見出すことができ、前記組成物の開発に大きく貢献することができる。なお、前記組成物の一例として、複数の素材で構成されたポリマーを含むポリマー組成物や、前記ポリマー組成物からなるゴム材料などが挙げられる。
【0008】
(2) 本発明の物性予測システムは、前記表示処理部によって所定の表示部に表示された前記特徴量を変更する特徴量変更部を更に備える。前記予測部は、前記特徴量変更部によって前記特徴量が変更された場合に、変更後の前記特徴量を含む前記素材情報に基づいて前記物性の値を再予測する。
【0009】
この構成によれば、変更後の前記特徴量を含む前記素材情報に基づいて前記組成物の物性値が再予測されて、再予測による予測値が所定の表示部に表示される。これにより、ユーザは、変更された前記特徴量と再予測後の予測値との関係性を容易に把握することができる。
【0010】
(3) 本発明の物性予測システムは、前記表示処理部に前記予測値を表示させる前記物性を選定する第1選定部を更に備える。この場合、前記表示処理部は、前記第1選定部によって選定された前記物性の前記予測値と、前記特徴量とを関連付けて表示させる。
【0011】
この構成によれば、前記予測部に予測させる物性をユーザが所望する任意の物性に指定することができる。
【0012】
(4) 本発明の物性予測システムは、前記表示処理部に前記特徴量を表示させる前記特定素材を選定する第2選定部を更に備える。この場合、前記表示処理部は、前記予測部によって予測された前記予測値と、前記第2選定部によって選定された前記特定素材の前記特徴量とを関連付けて表示させる。
【0013】
この構成によれば、ユーザは、前記予測値と関連付けて表示させる前記特定素材を任意の素材に指定することができる。
【0014】
(5) 前記表示処理部は、前記第2選定部によって選定された前記特定素材の前記特徴量の取り得る量的範囲に対応する前記予測値を示す特性グラフを所定の表示部に表示させる。
【0015】
この構成によれば、ユーザは、前記量的範囲における前記予測値の変化傾向を一見して容易に把握することができる。
【0016】
(6) 本発明の物性予測システムは、前記第2選定部によって選定された前記特定素材の前記特徴量の取り得る前記量的範囲を変更する範囲変更部を更に備える。この場合、前記表示処理部は、前記範囲変更部によって変更された前記量的範囲に対応する前記特性グラフを所定の表示部に表示させる。
【0017】
この構成によれば、ユーザは、前記表示処理部によって再表示された前記特性グラフによって、前記量的範囲の変化に対する前記予測値の変化傾向を容易に把握することができる。
【0018】
(7) 前記表示処理部は、複数種類の前記組成物それぞれの前記物性の値が前記予測部によって予測された場合に、各組成物に対応する前記予測値と、各予測値それぞれに対応する前記特定素材の前記特徴量とを関連付けて表示させる。
【0019】
この構成によれば、ユーザは、種類の異なる前記組成物それぞれの予測値と前記特徴量との関係性を一見して容易に把握することができる。
【0020】
(8) 本発明の物性予測システムは、前記予測部による予測対象である前記組成物の前記素材情報の入力を受け付ける入力受付部を更に備える。この場合、前記予測部は、複数の他の組成物それぞれに関する複数の素材情報の特徴量及び前記複数の他の組成物それぞれに関する前記物性の値を含む教師データに基づく予測モデルと、前記入力受付部によって受け付けられた前記素材情報とに基づいて、前記組成物の前記物性の値を予測する。
【0021】
(9) 前記特徴量は、前記特定素材の配合量、又は前記特定素材における所定の物性の物性値の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0022】
(10) 前記物性は、硬度、低温および高温における動的粘弾性、引張強度、破断時伸び、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300)、トルエン膨潤度、ガラス転移温度、耐摩耗性能、加硫特性値、スコーチタイム、及びムーニー粘度の少なくとも一つを含むことが好ましい。なお、前記動的粘弾性は、複素弾性率E*、貯蔵弾性率E′、損失弾性率E″、損失正接tanδ、複素せん断弾性率G*、貯蔵せん断弾性率G′、損失せん断弾性率G″などが考えられる。
【0023】
(11) 前記組成物は、少なくともポリマー及び添加剤を含むものであることが好ましい。この場合、前記素材情報は、前記ポリマー及び前記添加剤の分子に関する情報であって、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、及び、分子鎖の分岐度の少なくとも一つを含むものであることが好ましい。
【0024】
(12) 前記素材情報は、前記ポリマーのシス型の比率、トランス型の比率、油展量、ガラス転移温度、溶解性パラメータ、スチレン量、ビニル量、ブタジエンゴム量、及び、粘弾性特性の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0025】
(13) 前記添加剤は、フィラーを含み、前記素材情報は、前記フィラーの粒子径、CTAB吸着比表面積、BET吸着比表面積、及び、表面極性の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0026】
(14) 本発明の他の局面に係る物性予測装置は、複数の素材で構成された組成物の物性を予測する物性予測装置である。前記物性予測装置は、前記複数の素材に関する素材情報であって、前記複数の素材のうちの特定素材の特徴量を含む素材情報を記憶する素材情報記憶部と、前記素材情報記憶部に記憶される前記素材情報に基づいて前記物性の値を予測する予測部と、前記予測部によって予測された予測値と、前記素材情報記憶部に記憶される前記特徴量とを関連付けて表示させる表示処理部と、を備える。
【0027】
(15) 本発明のその他の局面に係る物性予測方法は、複数の素材で構成された組成物の物性の値を予測する物性予測方法である。前記物性値予測方法は、前記複数の素材に関する素材情報に基づいて前記物性の値を予測する予測ステップと、前記予測ステップにおいて予測された予測値と、前記複数の素材のうちの特定素材の特徴量とを関連付けて表示させる表示処理ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の素材で構成された組成物の物性を予測するだけでなく、前記組成物に含まれる特定素材の特徴量と予測値とを関連付けて表示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るゴム性能予測システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ゴム性能予測システムが備える予測装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ゴム性能予測システムが備える情報端末の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、ユーザが利用する情報端末に表示される入力画面の一例(配合割合入力画面)を示す図である。
【
図5】
図5は、情報端末の配合割合入力画面における素材カテゴリーの入力操作を示す図である。
【
図6】
図6は、情報端末の配合割合入力画面における素材の入力操作を示す図である。
【
図7】
図7は、情報端末の配合割合入力画面における配合割合の入力操作を示す図である。
【
図8】
図8は、情報端末の配合割合入力画面から素材特性入力画面に移行するための入力操作を示す図である。
【
図9】
図9は、情報端末の素材特性入力画面における素材特性の入力操作を示す図である。
【
図10】
図10は、情報端末の素材特性入力画面における素材特性の入力操作を示す図である。
【
図11】
図11は、ユーザが利用する情報端末に表示される出力設定画面を示す図である。
【
図12】
図12は、情報端末の出力設定画面における予測性能の入力操作を示す図である。
【
図13】
図13は、情報端末の出力設定画面における予測実行操作を示す図である。
【
図14】
図14は、ユーザが利用する情報端末に表示される予測結果表示画面の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、情報端末の予測結果表示画面における特性値変更操作を示す図である。
【
図16】
図16は、情報端末の予測結果表示画面における再予測後の予測結果表示画面の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、予測装置の制御部によって実行される性能予測処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、予測グラフが表示された予測結果表示画面を例示する図である。
【
図19】
図19は、予測グラフ上の座標点が選択された予測結果表示画面を例示する図である。
【
図20】
図20は、三次元座標系が表示された表示枠を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係るゴム性能予測システム100(以下、単に予測システム100と称する。)の構成を示す図である。本実施形態の予測システム100は、予測装置10と、情報端末20と、データベース30とによって構成されている。なお、予測システム100は、本発明の物性予測システムの一例である。また、予測装置10は、本発明の物性予測装置の一例である。
【0032】
予測システム100は、少なくともポリマー及び添加剤を含む複数の素材で構成されたポリマー組成物からなるゴム状弾性体(本発明の組成物の一例)の特定性能を予測するシステムである。前記ゴム状弾性体は、前記ポリマー組成物を加硫して得られるものであり、具体的には、自動車などの車両に装着される空気入りタイヤなどのタイヤ製品の製造に用いられるゴム材料である。つまり、本実施形態の予測システム100は、タイヤ製品を構成するゴム状弾性体の特性を示す特定の性能を予測する。予測システム100による予測結果(予測値)は、前記タイヤ製品の開発に用いられる。
【0033】
なお、本実施形態では、前記ゴム状弾性体の一例として前記タイヤ製品の製造に用いられるゴム材料を例示するが、例えば、前記ゴム状弾性体は、前記タイヤ製品そのものであってもよい。この場合、予測システム100は、前記タイヤ製品が有する複数のタイヤ性能のうちの特定の性能を予測する。また、前記ゴム状弾性体は、防振ゴムなどの産業用ゴム製品そのもの、或いは、産業用ゴム製品の製造に用いられるゴム材料であってもよい。また、本実施形態では、前記ポリマー組成物を加硫したゴム製品を例示するが、後述するように、加硫していない状態のポリマー組成物(つまり、未加硫ゴム)の特定性能を予測するものであってもよい。この場合、未加硫状態のポリマー組成物(未加硫ゴム)が本発明の組成物の一例である。
【0034】
前記ポリマー組成物は、一つ又は複数のポリマー、及び一つ又は複数の添加剤を含む複数の素材を混錬した未加硫ゴムである。前記ゴム状弾性体は、前記ポリマー組成物を加硫したものである。
【0035】
前記ポリマーは、例えば、前記ポリマー組成物に配合される未加硫の原料ゴムである。前記原料ゴムの一例として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
【0036】
前記添加剤は、例えば、カーボンブラックやシリカ等のフィラー(充填剤)、老化防止剤、加硫促進剤、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄、加工助剤等である。
【0037】
[予測システム100の構成]
図1に示すように、予測システム100は、予測装置10と、情報端末20と、データベース30とを備えており、これらがネットワークN1によって互いに通信可能に接続されている。ネットワークN1は、例えば、LANなどで接続された有線通信網、あるいは、専用回線や公衆回線等の無線通信網である。
【0038】
なお、本実施形態では、ネットワークN1にデータベース30が接続された構成を例示するが、例えば、データベース30は、予測装置10又は情報端末20に備えられていてもよい。また、本実施形態では、ネットワークN1に情報端末20が接続された構成を例示するが、情報端末20が備える各構成要素や各種機能が予測装置10に搭載されていてもよい。
【0039】
予測装置10は、予測システム100を構成する一要素である。予測装置10は、情報端末20から送信された入力情報や、予め構築された後述の予測モデル123(
図2参照)を用いて、予測対象である前記ゴム状弾性体(以下、予測対象であるゴム状弾性体を被予測ゴムと称する場合がある。)の特定性能を予測し、その予測結果を情報端末20に出力する。予測装置10は、各種演算処理を実行可能な情報処理装置であり、例えば、ネットワークN1に接続されたサーバコンピュータ、クラウドサーバー、或いはパーソナルコンピュータである。なお、予測装置10は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステム、或いはクラウドコンピューティングシステムであってもよい。また、予測装置10で実行される各種の処理は、一つ又は複数のプロセッサによって分散して実行されてもよい。予測装置10には、予測システム100を稼働するためのプログラム或いはコンピュータソフトウェアがインストールされている。
【0040】
予測装置10は、データベース30に格納された教師データに基づいて予測モデル123(
図2参照)を構築し、その予測モデル123を用いて予測対象である前記被予測ゴムの特定性能を予測する。本実施形態では、予測装置10は、前記タイヤ製品に用いられる前記ゴム状弾性体の前記特定性能を予測するものであり、その予測結果が前記被予測ゴムの前記特定性能の予測値と評価され、又は、前記タイヤ製品の前記特定性能の予測値と評価される。なお、予測装置10及び予測モデル123については後述する。
【0041】
情報端末20は、ユーザが使用する情報処理装置や端末装置である。情報端末20は、いわゆるデスクトップパソコンやノートパソコン、或いは、携帯して持ち運び可能なスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末である。ユーザは、前記被予測ゴムに関する各種情報を情報端末20から入力する。また、情報端末20は、予測装置10から送信された予測結果を表示画面に表示する。したがって、情報端末20には、予測システム100と連携して予測装置10に前記各種情報を送信したり、前記予測結果を表示画面に表示したりするためのプログラム或いはコンピュータソフトウェアがインストールされている。
【0042】
データベース30は、予測システム100において取り扱われる各種データが所定のデータ管理方式に基づいて記憶媒体に格納されたデータ群である。データベース30は、ネットワークN1に通信可能に接続された記憶装置、情報処理装置、クラウドサーバー、データサーバーなど、種々の形態で管理される。データベース30は、予測装置10による予測処理に用いられる予測モデル123(
図2参照)を生成するための教師データを含む。
【0043】
前記教師データは、予測モデル123を生成するために用いられる情報である。具体的には、前記教師データは、各種性能が既知の多数の前記ゴム状弾性体からなる多数のサンプルゴムTk(k=1,2,・・・,n)の素材情報と、各サンプルゴムTkが有する各種性能の物性値(所謂教師情報)とを含む。前記サンプルゴムTkは、これまでに製品として製造されたゴム製品(タイヤ製品や産業用ゴム製品等)、前記ゴム製品の開発のための研究の際に製造された試作ゴム製品、或いは前記研究の際に製造された前記ゴム状弾性体からなる試験片であり、多数のサンプルゴムTkそれぞれの前記素材情報と前記物性値とを含むデータセットが前記教師データとしてデータベース30に格納されている。なお、前記サンプルゴムTkは、本発明における複数の他の組成物の一例である。
【0044】
前記素材情報は、例えば、前記サンプルゴムTkを構成するポリマーPk(k=1,2,・・・,n)や添加剤などの各素材の特性に関する情報(以下、素材特性情報と称する。)、前記サンプルゴムTkにおける各素材の配合割合などを含む。
【0045】
ここで、前記ポリマーの前記素材特性情報は、例えば、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(M w / M n)、分子鎖の分岐度(ポリマーリニアリティ)、又はピークトップ分子量(Mp)の少なくとも一つであることが好ましい。また、前記ポリマーの素材特性情報に、イソプレンゴム量、スチレン量、ビニル量、ブタジエンゴム量、トランス型ブタジエンゴム量の比率、又はシス型ブタジエンゴム量の比率の少なくとも一つが含まれていてもよい。本実施形態では、前記ポリマーの前記素材特性情報として例示した上述の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(M w / M n)、イソプレンゴム量、スチレン量、ビニル量、トランス型ブタジエンゴムの比率、及びシス型ブタジエンゴムの比率が前記教師データに含まれている。表1に、前記教師データに含まれる各種ポリマーPk(k=1,2,・・・,n)の前記素材特性情報の一例を示す。なお、前記ポリマーPkの前記素材特性情報に、油展量、ガラス転移温度、溶解性パラメータ、粘弾性特性、変性基の種類、及び粘度の少なくとも一つが含まれていてもよい。
【0046】
【0047】
また、前記添加剤の前記素材特性情報としては、例えば、前記添加剤がカーボンブラックやシリカ等のフィラーである場合は、前記フィラーの種類(カーボンブラック、シリカ等)、粒子径(一次粒子径)、CTAB吸着比表面積、BET吸着比表面積、又は表面極性の少なくとも一つであることが好ましい。
【0048】
また、前記サンプルゴムTk(T1,T2,・・・,Tn)における各素材の配合割合の一例を表2に示す。表2では、各サンプルゴムTkそれぞれにおける素材(ポリマーや添加剤等)の配合割合を質量部で表しており、各添加剤Ak(k=1,2,・・・,n)については、各ポリマーの合計値を100質量部とした場合の配合割合を示している。
【0049】
【0050】
また、前記サンプルゴムTkが有する各種性能(物性)としては、例えば、硬度、低温および高温における動的粘弾性、引張強度、破断時伸び、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300)、トルエン膨潤度、ガラス転移温度、耐摩耗性能、加硫特性値、スコーチタイム、及びムーニー粘度の少なくとも一つを含むことが好ましい。なお、前記加硫特性値は、所定の加硫試験機(キュラストメーター)により測定されるものであり、例えば、誘導時間tC(10)、50%加硫時間tC(50)、及び90%加硫時間tC(90)などである。また、前記スコーチタイム及び前記ムーニー粘度は、所定のムーニー粘度計によって測定されるものである。また、前記動的粘弾性は、複素弾性率E*、貯蔵弾性率E′、損失弾性率E″、損失正接tanδ、複素せん断弾性率G*、貯蔵せん断弾性率G′、損失せん断弾性率G″である。本実施形態では、前記サンプルゴムTkの各種性能として例示した上記全ての性能の物性値が前記教師データに含まれている。表3に、前記サンプルゴムTk(T1,T2,・・・,Tn)それぞれの各種性能の物性値(実測値)の例を示す。
【0051】
【0052】
なお、前記教師データに含まれる前記素材特性情報(表1参照)や、前記サンプルゴムTkが有する各種性能の物性値の情報(表3参照)、及びこれらの情報の測定方法などは従来周知の事項であり、また、上述した先行文献情報(特開2018-147460号公報)にも詳しいため、ここでの説明は省略する。
【0053】
本実施形態では、上述したように、前記素材情報及び前記物性値を含む前記教師データを例示するが、前記教師データは本実施形態で例示したものに限られない。例えば、前記素材情報として、前記ポリマー組成物を混錬する場合の混錬条件が含まれていてもよい。前記混錬条件が前記被予測ゴムの物性値に影響する場合があるためである。前記混錬条件としては、例えば、混練機のチャンバーの容積、混練時のポリマー組成物の充填量、混練時間、混練後のポリマー組成物の排出温度の少なくとも一つを含んでいる。また、前記素材情報として、前記ポリマー組成物を加硫する場合の加硫条件などが含まれていてもよい。前記加硫条件が前記被予測ゴムの物性値に影響する場合があるためである。前記加硫条件は、例えば、各サンプルゴムTkの加硫前の前記ポリマー組成物について設定される加硫温度条件等である。なお、前記混錬条件や、前記加硫条件については、従来周知の事項であり、また、上述した先行文献情報(特開2018-147460号公報)にも詳しいため、ここでの説明は省略する。
【0054】
[予測装置10]
以下、
図2を参照して、予測装置10の構成について説明する。ここで、
図2は、予測装置10の構成を示すブロック図である。
【0055】
予測装置10は、本実施形態の予測システム100を実現するためのものであり、
図2に示すように、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15と、を備える。
【0056】
通信部13は、予測装置10をネットワークN1に接続して、所定の通信プロトコルに従って、ネットワークN1に接続された各デバイスとの間でデータ通信を実行するための通信インターフェースである。具体的には、通信部13は、ネットワークN1を通じて情報端末20やデータベース30との間でデータ通信を実行する。
【0057】
記憶部12は、各種の情報やデータを記憶するHDD、SSD、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶部12には、制御プログラム121、及び、予測モデル123が記憶されている。なお、予測モデル123は、当該予測モデル123が格納されたメモリを備える電子回路として実現されていてもよい。
【0058】
制御プログラム121は、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、予測装置10に電気的に接続されるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)によって前記記録媒体から読み取られて記憶部12に複製されたものであってもよい。また、制御プログラム121は、ネットワークN1に接続された外部ストレージから読み出されて通信部13を通じて入力され、記憶部12に複製されたものであってもよい。
【0059】
制御プログラム121は、予測モデル123を用いて、後述の予測処理(
図17参照)を制御部11に実行させるためのプログラムである。
【0060】
予測モデル123は、後述の予測処理(
図17参照)に用いられる学習済みモデルであり、予測対象である前記ゴム状弾性体(被予測ゴム)の特定性能の物性値の予測値を算出する。本実施形態では、予測モデル123は、予測対象の前記ゴム状弾性体の素材の配合割合、及び各素材の特性の物性値が入力部に入力されると、前記ゴム状弾性体の前記特定性能の物性値を予測して、その予測値を出力部から出力する。なお、予測モデル123は、入力値(入力データ)に対して予測値(出力データ)を返す周知の関数(予測関数)を含むものであってもよい。
【0061】
予測モデル123は、データベース30に格納されている前記教師データと、所定のアルゴリズムとに基づいて、制御部11による機械学習によって生成される。なお、制御部11は、前記教師データの内容が更新されると、その都度、予測モデル123を更新する。なお、予測モデル123は、制御部11以外の制御部によって学習、生成されたものが外部から転送されて、記憶部12に格納されたものであってもよい。
【0062】
本実施形態では、予測モデル123は、種々の方法で構築することができる。例えば、予測モデル123の構築に必要なアルゴリズムとして、重回帰、一般化線形回帰、主成分回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰、カーネル回帰、ランダムフォレスト回帰、ガウス過程回帰、多層ニューラルネットワーク、クラスタリング、サポートベクターマシン、動径基底関数で定義されるRBFネットワークなどが好適に用いられる。また、予測モデル123は、ニューラルネットワークの中間層を多層化する深層学習(ディープラーニング)によって構築されてもよい。なお、予測モデル123は、上述の各アルゴリズムのうちの一つを用いたものであってもよく、或いは、複数のアルゴリズムを用いたものであってもよい。本実施形態では、精度とコストとのバランスに優れた前記一般化線形回帰が予測モデル123のアルゴリズムとして用いられる。
【0063】
本実施形態では、予測モデル123に対する入力値(設計変数)は、前記サンプルゴムTk有する各素材(ポリマー、添加剤)の素材情報であり、出力値(目的変数)は、前記サンプルゴムTkが有する各種性能の物性値である。
【0064】
このような予測モデル123は、市販のコンピュータソフトウェア(例えば、The MathWorks社製のMATLAB(登録商標)や、ESTECO社製のmodeFRONTIER等)を用いることによって構築することができる。
【0065】
表示部14は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示装置である。操作部15は、操作者の操作を受け付けるマウス、キーボード、又はタッチパネルなどの入力装置である。
【0066】
制御部11は、予測装置10の各部の動作を制御する。制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUが実行することにより予測装置10を制御する。
【0067】
図2に示すように、制御部11は、性能予測部111(本発明の予測部の一例)等の各種の処理部を含む。制御部11は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって性能予測部111として機能する。制御部11又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、性能予測部111の一部又は全部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサを性能予測部111として機能させるためのプログラムであってもよい。また、前記制御プログラムは、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)を性能予測部111として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0068】
性能予測部111は、予測対象である前記被予測ゴムを構成する複数の素材(ポリマー、添加剤等)に関する素材情報に基づいて前記被予測ゴムが有する特定の性能(特定性能)を予測する。予測される前記特定性能は、前記被予測ゴムが有する各種性能、例えば、硬度、低温および高温における動的粘弾性、引張強度、破断時伸び、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300)、トルエン膨潤度、ガラス転移温度、耐摩耗性能、加硫特性値、スコーチタイム、及びムーニー粘度などである。なお、前記加硫特性値は、所定の加硫試験機(キュラストメーター)により測定されるものであり、例えば、誘導時間tC(10)、50%加硫時間tC(50)、及び90%加硫時間tC(90)などである。また、前記スコーチタイム及び前記ムーニー粘度は、所定のムーニー粘度計によって測定されるものである。また、前記動的粘弾性は、複素弾性率E*、貯蔵弾性率E′、損失弾性率E″、損失正接tanδ、複素せん断弾性率G*、貯蔵せん断弾性率G′、損失せん断弾性率G″である。
【0069】
前記素材情報は、情報端末20においてユーザによって入力され、その入力された情報がネットワークN1を通じて予測装置10に転送される。前記被予測ゴムの前記素材情報は、前記被予測ゴムの素材(ポリマー、添加剤等)の配合割合、前記被予測ゴムを構成するポリマーや添加剤等の前記素材特性情報などである。予測装置10に転送された前記素材情報は、予測装置10の制御部11内のRAM、或いは、記憶部12に記憶される。この場合において、前記RAM或いは記憶部12は、本発明の素材情報記憶部の一例である。
【0070】
性能予測部111は、情報端末20から前記被予測ゴムの前記素材情報を取得すると、予測モデル123、及び取得した前記素材情報を用いて、前記被予測ゴムに関する前記特定性能を予測する。具体的には、性能予測部111は、前記素材情報を予測モデル123の入力部に入力して、予測モデル123に前記被予測ゴムの特定性能を予測させ、予測モデル123の出力部から出力される前記特定性能を示す物理量を予測結果(予測値)として取得する。
【0071】
性能予測部111によって予測された予測値は、情報端末20の表示部23に表示させるために、通信部13によって情報端末20に転送される。
【0072】
本実施形態では、性能予測部111によって予測される前記特定性能は、情報端末20の後述の第1選定処理部212によって選定される。第1選定処理部212によって選定された前記特定性能に関する選定情報は、情報端末20から予測装置10に転送される。制御部11は、前記選定情報を受信すると、その選定情報が示す性能を、性能予測部111による予測対象に設定する。この場合、性能予測部111は、第1選定処理部212によって選定された前記特定性能を予測する。
【0073】
性能予測部111は、第1選定処理部212によって選定された性能のみを予測するものに限られず、例えば、前記被予測ゴムが有する各種性能(硬度、低温および高温における動的粘弾性、引張強度、破断時伸び、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300)、トルエン膨潤度、ガラス転移温度、耐摩耗性能、加硫特性値、スコーチタイム、及びムーニー粘度)のうちの複数、又は全部を予測するものであってもよい。
【0074】
予測モデル123が前記予測関数を利用して予測するものである場合、例えば、前記素材情報をxとし、前記特定性能の予測値をyとした場合に、前記予測関数は、y=f(x)によって表される。前記予測関数は、n個のサンプルゴムTkそれぞれの素材情報xと特定性能yが教師データとして存在する場合、下記式で表されるn個のペアデータDから推定することができる。
D = {(x1,y1),(x2,y2),…,(xN,yN)}
【0075】
[情報端末20]
以下、
図3を参照して、情報端末20の構成について説明する。ここで、
図3は、情報端末20の構成を示すブロック図である。
【0076】
図3に示すように、情報端末20は、制御部21、記憶部22、表示部23、操作部24、通信部25などを備える。情報端末20は、ユーザが使用する情報処理装置や端末装置である。ユーザは、予測装置10による予測処理に必要な前記被予測ゴムに関する各種情報を情報端末20から入力する。
【0077】
通信部25は、情報端末20をネットワークN1に接続し、ネットワークN1を通じて予測装置10との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0078】
記憶部22は、各種の情報を記憶するフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶部22には、制御部21に各種演算処理を実行させるための制御プログラム221や、各種演算処理に用いられるデータなどが記憶されている。
【0079】
表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示装置である。操作部24は、ユーザによる入力操作を受け付けるマウス、キーボード、又はタッチパネルなどの入力装置である。
【0080】
本実施形態では、予測装置10の性能予測部111によって予測された予測値と、予め選定された特定素材の特性値(以下、素材特性値と称する。)とが表示部23に表示される。具体的には、表示部23に表示される予測結果表示画面234(
図14参照)における表示枠65に、前記素材特性値と前記予測値との関係を示す座標点が表示される。なお、前記素材特性値は、本発明の特徴量の一例である。
【0081】
制御部21は、情報端末20の各部の動作を制御する。制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶された不揮発性の記憶媒体である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、前記CPUが実行する各種の演算処理の一時記憶メモリ(作業領域)として使用される。そして、制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより情報端末20を制御する。
【0082】
図3に示すように、制御部21は、入力受付部211(本発明の入力受付部の一例)と、第1選定処理部212(本発明の第1選定部の一例)と、第2選定処理部213(本発明の第2選定部の一例)と、特性値変更部214(本発明の特徴量変更部の一例)と、範囲変更部215(本発明の範囲変更部の一例)と、表示処理部216(本発明の表示処理部の一例)等の各種の処理部を含む。制御部21は、前記CPUが前記制御プログラムに従った各種の演算処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。制御部21又は前記CPUが、前記制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。なお、制御部21に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。また、前記制御プログラムは、複数のプロセッサを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0083】
入力受付部211は、予測装置10の性能予測部111による予測対象である前記被予測ゴムの前記素材情報の入力を受け付ける処理を行う。具体的には、入力受付部211は、表示部23に複数の入力画面231,232を表示させて、操作部24によって各入力画面231,232に入力された情報を取得する。そして、取得した情報は、通信部25によって予測装置10に送信される。
【0084】
図4乃至
図8は、情報端末20の表示部23に表示される配合割合入力画面231(入力画面の一例)を示す図である。配合割合入力画面231は、前記被予測ゴムを構成するすべての素材の配合割合を入力するための入力画面である。
【0085】
図4に示すように、配合割合入力画面231は、素材カテゴリーを入力するための入力枠41と、素材を入力するための入力枠42と、配合割合を入力するための入力枠43と、配合割合を表示する表示枠44とを含む。また、配合割合入力画面231には、表示内容を前の画面に戻す戻るキー31と、入力内容を決定するための登録キー32と、表示内容を次の画面に移行させる次キー33とが設けられている。入力枠41~43には、ユーザが操作部24を操作することによって任意の情報を入力することができる。
【0086】
入力枠41は、前記被予測ゴムを構成する素材のカテゴリーを入力するためのものである。入力枠41には、プルダウンキー41Aが設けられており、操作部24によってプルダウンキー41Aが押されると、予め登録されている複数項目のカテゴリー情報を含むプルダウンメニュー41B(
図5参照)が表示される。
【0087】
図5は、プルダウンキー41Aが押されてプルダウンメニュー41Bが開かれた状態を示す図である。
図5に示すように、プルダウンメニュー41Bには、前記カテゴリー情報として、「ポリマー」、「フィラー」、「加硫促進剤」、「カップリング剤」、「その他」の項目が含まれている。これらの中から前記被予測ゴムを構成する素材のカテゴリーが選択されると、選択されたカテゴリーが入力枠41に表示される。例えば、プルダウンキー41Aが押された後に、プルダウンメニュー41Bから「ポリマー」が選択されると、入力枠41に「ポリマー」が表示される。
【0088】
入力枠42は、所定のカテゴリーに属する具体的な素材を入力するためのものである。入力枠41においてカテゴリーの入力が終了すると、入力枠42において素材の入力が可能となる。例えば、入力枠41において「ポリマー」が入力された場合、入力枠42では、前記ゴム状弾性体の素材として適用されうる複数のポリマーの入力が可能となる。入力枠42には、プルダウンキー42Aが設けられており、操作部24によってプルダウンキー42Aが押されると、予め登録されている複数のポリマーPk(P1,P2,・・・,Pn)を含むプルダウンメニュー42B(
図6参照)が表示される。
【0089】
図6は、プルダウンキー42Aが押されてプルダウンメニュー42Bが開かれた状態を示す図である。
図6に示すように、プルダウンメニュー42Bに表示される複数のポリマーから前記被予測ゴムを構成する具体的なポリマーが選択されると、選択されたポリマーが入力枠42に表示される。例えば、プルダウンキー42Aが押された後に、プルダウンメニュー42Bから「ポリマーP1」が選択されると、入力枠42に「ポリマーP1」が表示される(
図7参照)。
【0090】
入力枠43は、入力枠42で入力された素材の配合割合を入力するためのものである。
図7に示すように、操作部24によって入力枠43が選択されると、その下側にテンキー入力パネル45が表示される。このテンキー入力パネル45によって、前記被予測ゴムを構成する素材の配合割合の数値を入力することができる。
図7では、入力枠42に「ポリマーP1」が入力された場合に、そのポリマーP1の配合割合として、「20phr」が入力枠43に入力された例が示されている。入力枠43に配合割合が入力された後に、登録キー32が押されると、前記被予測ゴムを構成する特定の素材の配合割合が登録され、その情報が表示枠44に表示される。
【0091】
前記被予測ゴムを構成するすべての素材それぞれについて上述の入力操作が行われることにより、すべての素材の配合割合の登録が完了する。
図8には、予測対象の一例である被予測ゴムTxの各素材の配合割合が入力されて、表示枠44に表示された状態が示されている。ここで、被予測ゴムTxの各素材の配合割合を表4に示す。
【0092】
【0093】
図8において、各カテゴリーそれぞれに属する各素材ごとに配合割合が入力された後に、次キー33が押されると、登録されたすべての配合割合が記憶部22に記憶されるとともに、登録された配合割合の情報が通信部25によって予測装置10に送信される。また、表示部23に表示される画面が素材特性入力画面232(
図9及び
図10参照)に移行する。
【0094】
図9及び
図10は、情報端末20の表示部23に表示される素材特性入力画面232(入力画面の一例)を示す図である。素材特性入力画面232は、配合割合入力画面231で入力されたポリマー又は添加剤の前記素材特性情報を入力するための入力画面である。
【0095】
図9に示すように、素材特性入力画面232は、素材を入力するための入力枠51と、素材特性を入力するための入力枠52と、素材特性の特性値(素材特性値、本発明の特徴量の一例)を入力するための入力枠53と、入力された素材特性値を表示する表示枠54とを含む。また、素材特性入力画面232にも、戻るキー31、登録キー32、次キー33が設けられている。入力枠51~53には、ユーザが操作部24を操作することによって任意の情報を入力することができる。
【0096】
入力枠51は、前記被予測ゴムを構成するポリマー又は添加剤を入力するためのものである。入力枠51のプルダウンキー51Aが操作部24によって押されると、予め登録されている登録済みの素材(被予測ゴムTxの場合は、ポリマーP1,P4,P6、各添加剤)を含むプルダウンメニュー(図示省略)が表示され、これらのいずれかを選択することにより入力枠51に素材特性値の入力対象が入力される。
図9には、入力枠51に「ポリマーP1」が入力された状態が示されている。
【0097】
入力枠52は、特性値が入力される具体的な素材特性を入力するためのものである。入力枠51において素材の入力が終了すると、入力枠52において、その素材が有する素材特性の入力が可能となる。例えば、入力枠51において「ポリマーP1」が入力された場合、入力枠52では、ポリマーP1が有する複数の素材特性の入力が可能となる。入力枠52には、プルダウンキー52Aが設けられており、操作部24によってプルダウンキー52Aが押されると、予め登録されている複数の素材特性を含むプルダウンメニュー52B(
図9参照)が表示される。
【0098】
図9に示すように、プルダウンメニュー52Bに表示される複数の素材特性からいずれかの素材特性が選択されると、選択された素材特性が入力枠52に表示され、その後、入力枠53に素材特性値を入力することが可能となる。入力枠53に素材特性値が入力された後に、登録キー32が押されると、前記被予測ゴムを構成する特定の素材の素材特性の特性値が登録され、その情報が表示枠54に表示される。
図9には、表5に示す被予測ゴムTxが有するポリマーP1,P4の素材特性値が入力されて、表示枠54に表示された状態が示されている。
【0099】
【0100】
なお、フィラーなどの添加剤についての素材特性の特性値を入力する場合は、
図10に示すように、入力枠51に登録済みの添加剤を選択し、入力枠52のプルダウンメニュー52Bから素材特性を選択し、その後に入力枠53に素材特性値を入力すればよい。なお、
図10には、入力枠51に「添加剤A2」が入力された状態が示されている。
【0101】
素材特性入力画面232において全ての素材特性の特性値が入力された後に、次キー33が押されると、登録された全ての素材特性値が記憶部22に記憶されるとともに、登録された配合割合の情報が通信部25によって予測装置10に送信される。また、表示部23に表示される画面が出力設定画面233(
図11参照)に移行する。
【0102】
第1選定処理部212は、性能予測部111によって予測される前記特定性能のうち、表示枠65に前記予測値を表示させる前記予測性能を選定する処理を行う。具体的には、第1選定処理部212は、表示部23に出力設定画面233を表示させて、操作部24によって出力設定画面233に入力された予測性能を取得する。そして、取得した予測性能は、性能予測部111による予測対象となる前記特定性能として設定されて、その設定情報が、通信部25によって予測装置10に送信される。
【0103】
図11乃至
図13は、情報端末20の表示部23に表示される出力設定画面を示す図である。出力設定画面233は、性能予測部111に予測させる前記特定性能、及び、表示枠65に表示させる素材特性を設定するための設定画面である。
【0104】
図11に示すように、出力設定画面233は、前記予測性能を入力するための入力枠61と、予測値を表示するための表示枠62と、を有する。また、出力設定画面233には、表示内容を前の画面に戻す戻るキー31と、予測実行指示を入力するための実行キー34とが設けられている。入力枠61には、ユーザが操作部24を操作することによって任意の情報を入力することができる。
【0105】
入力枠61は、性能予測部111に予測させる対象として前記予測性能を入力するためのものである。入力枠61には、プルダウンキー61Aが設けられており、操作部24によってプルダウンキー61Aが押されると、予め登録されている複数の性能を示す複数の性能項目を含むプルダウンメニュー61B(
図12参照)が表示される。
【0106】
図12は、プルダウンキー61Aが押されてプルダウンメニュー61Bが開かれた状態を示す図である。
図12に示すように、プルダウンメニュー61Bには、前記予測性能として選択可能な複数の性能項目として、硬度、低温および高温での動的粘弾性(複素弾性率E*、貯蔵弾性率E′、損失弾性率E″、損失正接tanδ、複素せん断弾性率G*、貯蔵せん断弾性率G′、損失せん断弾性率G″)、引張強度、破断時伸び、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、300%モジュラス(M300)、トルエン膨潤度、ガラス転移温度、耐摩耗性能、加硫特性値、スコーチタイム及び、ムーニー粘度が含まれている。これらの中からいずれか一つの性能項目が選択されると、選択された性能項目が入力枠61に表示され、その性能項目が前記特定性能に設定される。なお、
図13には、前記予測性能として「低温損失正接tanδ」が選択されて、入力枠61に表示された状態が示されている。
【0107】
第2選定処理部213は、表示枠65に前記素材特性値(特徴量)を表示させる前記特定素材を選定する処理を行う。具体的には、第2選定処理部213は、操作部24によって出力設定画面233に入力された特定素材の素材特性を取得する。そして、取得した素材特性は、表示処理部216による表示対象として設定されて、その設定情報が、通信部25によって予測装置10に送信される。
【0108】
図13に示すように、出力設定画面233は、前記特定素材を入力するための入力枠63と、前記特定素材の特性値を入力するための入力枠64とを有する。入力枠63,64には、ユーザが操作部24を操作することによって任意の情報を入力することができる。
【0109】
入力枠63は、表示枠65に表示される特定素材を入力するためのものであり、入力枠64は、表示枠65に表示される前記特定素材の素材特性を入力するためのものである。入力枠63のプルダウンキー63Aが押されると、複数の特定素材を含むプルダウンメニューが表示され、当該メニューから任意の特定素材を選択可能である。また、入力枠64のプルダウンキー64Aが押されると、複数の素材特性を含むプルダウンメニューが表示され、当該メニューから任意の素材特性を選択可能である。なお、
図13には、前記特定素材として「ポリマーP4」が選択され、前記素材特性として「重量平均分子量(Mw)」が選択された状態が示されている。
【0110】
前記予測性能が選択され、前記素材特性が選択された後に実行キー34が押されると、予測実行指示とともに前記予測性能が通信部25によって予測装置10に送信される。
【0111】
表示処理部216は、予測装置10から送信された前記予測値を受信すると、被予測ゴムを構成する複数の素材から特定された特定素材の素材特性の特性値と、前記予測値とを関連付けて予測結果表示画面234(
図14参照)に表示する処理を行う。
【0112】
本実施形態では、表示処理部216は、前記予測値を受信すると、その予測値を表示枠62に表示する。更に、表示処理部216は、
図14に示すように、前記予測値と、前記第2選定処理部213によって選定された前記特定素材の前記特性値とを関連付けて、表示枠65に表示する。表示枠65には、前記予測値を縦軸とし、前記特性値を横軸とした二次元座標系が示されており、当該座標系において、前記予測値と前記特性値との対応関係である座標点が一見して把握できるように表示されている。なお、
図14には、予測対象である「損失正接tanδ」の予測値が「0.28」であり、前記特定素材「ポリマーP4」の素材特性「重量平均分子量(Mw)」の特性値が「5.0×10
5」である場合に、表示枠65の二次元座標系には、座標点(5.0×10
5,0.28)が表示される。
【0113】
また、表示処理部216は、表示枠65に前記特定素材の前記素材特性値を表示する。例えば、
図14に示すように、表示枠65の二次元座標系の横軸の付近に、前記素材特性値を表示可能な表示窓66が表示され、その表示窓66に前記素材特性値の数値、つまり、横軸の座標を表示する。
【0114】
特性値変更部214は、表示処理部216によって表示枠65の表示窓66に表示された前記素材特性値を変更する処理を行う。表示窓66には、表示窓66に表示される数値を増減可能なキー66A,66Bが設けられている。
図15に示すように、特性値変更部214は、操作部24によって増加キー66Aが押されると、押された時間又は回数に応じて数値を増加させ、減少キー66Bが押されると、押された時間又は回数に応じて数値が減少させる。
【0115】
表示窓66に表示された前記素材特性値の数値が特性値変更部214によって変更され、その後に実行キー34が押されると、予測実行指示とともに変更後の前記素材特性値が通信部25によって予測装置10に送信される。この場合、予測装置10では、性能予測部111は、変更後の前記素材特性値を含む素材情報に基づいて、前記被予測ゴムの前記特定性能の物性値を再び予測し、予測装置10は、その予測値を情報端末20に送信する。
【0116】
例えば、表示枠65に表示される被予測ゴムの重量平均分子量Mwの数値が、当初の「5.0×10
5」から「3.5×10
5」に減少され、その後に実行キー34が押されると(
図15参照)、減少後の数値で再び前記特定性能の物性値が性能予測部111によって予測される。そして、
図16に示すように、その場合の予測値「0.32」が表示枠62に表示されるとともに、表示枠65の二次元座標系に、座標点(3.5×10
5,0.32)が表示される。
【0117】
[予測処理・表示処理]
以下、
図17のフローチャートを参照して、予測システム100において実行される予測処理及び表示処理の手順の一例について説明する。前記予測処理は、予測装置10において制御部11によって実行され、前記表示処理は、情報端末20において制御部21によって実行される。なお、前記予測処理又は前記表示処理に含まれる一又は複数のステップが適宜省略されてもよく、また、各ステップは、同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。
【0118】
まず、ステップS11では、情報端末20の制御部21は、配合割合入力画面231を通じて前記被予測ゴムの配合割合が入力されると、入力された配合割合を予測モデル123に入力する情報として、RAM又は記憶部22に記憶し、更に、当該配合割合を予測装置10に送信する。
【0119】
次のステップS12では、制御部21は、素材特性入力画面232を通じて前記被予測ゴムを構成する各素材の素材特性の物性値が入力されると、入力された各物性値を予測モデル123に入力する情報として、RAM又は記憶部22に記憶し、更に、当該物性値を予測装置10に送信する。
【0120】
その後、出力設定画面233を通じて入力枠61に前記予測性能が入力され、また、入力枠64に前記素材特性が入力されることにより出力設定が行われると(S13)、実行キー34の押下による予測実行指示が入力されたか否かを判定する(S14)。
【0121】
ステップS14において、前記予測実行指示が入力されると、制御部21は、前記予測実行指示とともに前記予測性能を予測装置10に送信して、予測装置10の性能予測部111に予測処理を実行させる。
【0122】
ステップS15では、予測装置10の制御部11は、前記配合割合及び前記素材特性値を予測モデル123の入力部に入力して、予測モデル123に前記被予測ゴムの前記特定性能の物性値を予測させる予測処理を行う。そして、制御部11は、当該予測処理によって予測モデル123から出力された予測値を情報端末20に送信する。なお、ステップS15は、本発明の予測ステップの一例である。
【0123】
ステップS16では、情報端末20の制御部21は、予測装置10から前記予測値を受信すると、その予測値を予測結果表示画面234の表示枠62に表示する。更に、制御部21は、表示枠65に、前記予測値を縦軸とし、ステップS13で設定された前記素材特性の前記特性値を横軸とする二次元座標系を表示するとともに、前記予測値と前記特性値との対応関係である座標点を表示する(S17)。また、制御部21は、表示枠65の表示窓66に、前記特性値の数値を変更可能なように表示する(S18)。なお、ステップS17は、本発明の表示処理ステップの一例である。
【0124】
続いて、ステップS19において、制御部21は、表示窓66の前記特性値が変更されたか否かを判定する。例えば、操作部24の操作によって減少キー66Bが押下された場合は、前記特性値が減少したと判定し、増加キー66Aが押下された場合は、前記特性値が増加したと判定する。
【0125】
前記特性値が変更されず、また、予測終了指示が入力された場合(S20のYes)、一連の処理が終了する。
【0126】
一方、前記特性値が変更されて、再び実行キー34が押されたと判定されると(S19Yes)、制御部21は、予測実行指示とともに変更後の前記素材特性値を予測装置10に送信し、再び、性能予測部111に予測処理を実行させる(S21)。その後、ステップS16以降の処理が繰り返される。
【0127】
以上説明したように、本実施形態では、表示処理部216によって、予測対象である被予測ゴムにおける特定性能の予測値が表示部23に表示される。これにより、例えば、ユーザが前記ゴム状弾性体の開発者である場合、ユーザは、前記ゴム状弾性体を構成する前記特定素材の特徴量と、前記ゴム状弾性体の前記特定性能の予測値との関係性を一見して容易に把握することができる。その結果、ユーザは、前記関係性を取っ掛かりとして、所望する性能値を有するゴム状弾性体の組成をより早期に見出すことができ、前記ゴム状弾性体の開発に大きく貢献することができる。
【0128】
なお、上述の実施形態では、表示枠65に二次元座標系を表示して、前記予測値と前記特性値との座標点を表示する例について説明した 例えば、
図18に示すように、表示枠65に示す二次元座標系に、横軸の前記特性値を変数とする予測グラフL1(本発明の特性グラフの一例)を表示してもよい。この場合、性能予測部111は、前記特性値が取り得る範囲(本発明の量的範囲の一例)に対応する予測グラフL1を予測して、情報端末20に送信し、表示枠65に予測グラフL1を表示してもよい。これにより、ユーザは、前記特性値の取り得る範囲における前記予測値の変化傾向を予測グラフL1によって一見して容易に把握することができる。
【0129】
また、この場合、第2選定処理部213によって選定された前記特定素材の前記特性値の取り得る前記範囲を変更可能なように、前記範囲の下限値を変更するための変更カーソル67と、前記範囲の上限値を変更するための変更カーソル68とが設けられていることが好ましい。ユーザが操作部24を操作することによって変更カーソル67,68が変位される。制御部21の範囲変更部215は、変更カーソル67,68が変位されると、前記範囲を変更カーソル67,68の変位後の位置に対応した範囲に変更する。変更カーソル67によって変更される前記範囲の下限値は、予測結果表示画面234に設けられた表示窓67Aに表示され、前記範囲の上限値は、予測結果表示画面234に設けられた表示窓67Bに表示される。また、表示処理部216は、変更された前記範囲に対応するように、前記予測グラフL1を変更して表示枠65に表示する。これにより、ユーザは、表示処理部216によって表示された変更後の予測グラフL1によって、前記特性値の取り得る範囲の変化に対する前記予測値の変化傾向を容易に把握することができる。
【0130】
また、上述の実施形態では、表示枠65に表示された二次元座標系の横軸に前記被予測対象に対応する前記予測値と前記特性値との座標点を表示することとしたが、本発明はこの構成に限られない。例えば、複数種類の前記被予測対象それぞれに対して性能予測部111による予測処理が行われた場合、表示処理部216は、各被予測対象それぞれに対応する予測値と、各予測値それぞれに対応する前記特定素材それぞれの前記素材特性値(特徴量)とを関連付けて前記表示部に表示させてもよい。例えば、二つ以上の複数の被予測対象それぞれについて前記予測値を性能予測部111が予測する場合は、複数の被予測対象に対応する複数の座標点を前記二次元座標系に表示してもよい。この場合、ユーザは、種類の異なる前記被予測対象それぞれの予測値と前記特徴量との関係性を一見して容易に把握することができる。
【0131】
また、
図19に示すように、表示処理部216は、操作部24が操作されることによって予測グラフL1上の任意の点が選択された場合に、その座標点における縦軸の予測値を表示枠62に表示し、その座標点における横軸の前記特性値を表示窓66に表示してもよい。
【0132】
また、表示枠65に表示される座標は、二次元座標系に限れられず、例えば、
図20に示すように、Z軸を予測値とし、X軸を前記被予測ゴムが有する素材特性の一つである重量平均分子量とし、Y軸を前記被予測ゴムが有する素材特性の一つである数平均分子量として、三次元座標系により各数値の関係性を表示枠65に表示させてもよい。
【0133】
また、上述の実施形態では、予測装置10に性能予測部111が設けられ、情報端末20に表示処理部216が設けられた構成の予測システム100を例示したが、本発明はこの構成に限られない。例えば、情報端末20が備える構成が予測装置10に設けられていてよく、また、予測装置10が備える構成が情報端末20に設けられていてもよい。
【0134】
また、上述の実施形態では、予測結果表示画面234(
図14参照)の表示枠65に表示される特徴量として前記素材特性値を例示したが、本発明の特徴量はこれに限られない。例えば、前記素材特性値に替えて、第2選定処理部213によって選定された前記特定素材配合量が前記予測値とともに表示枠65に表示されてもよい。
【0135】
また、上述の実施形態では、前記ポリマー組成物が未加硫ゴムであり、前記ゴム状弾性体が前記ポリマー組成物を加硫処理したものとして説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、本発明は、加硫していない状態の前記ポリマー組成物(つまり、未加硫ゴム)に対しても、当該ポリマー組成物の特定の性能を予測することが可能である。
【0136】
また、上述の実施形態では、本発明の組成物の一例として、ポリマー組成物からなるゴム状弾性体を例示して説明したが、前記組成物は、ゴム状弾性体に限られず、また、未加硫のポリマー組成物(未加硫ゴム)にも限定されない。本発明の組成物は、複数種類の有機物を主成分とする有機組成物(有機物の合計含有量が10質量%を超える組成物など)であればよく、また、上述したポリマー組成物であればより好適であり、更には複数種類のゴム材料を主成分とするゴム組成物や、複数種類の合成樹脂からなる樹脂組成物などが特に好適である。つまり、本発明は、これらの組成物における特定素材性能の物性値を予測するものとしても適用可能である。
【符号の説明】
【0137】
100 :ゴム性能予測システム、
10 :予測装置
11 :制御部
20 :情報端末
21 :制御部
23 :表示部
30 :データベース
111 :性能予測部
121 :制御プログラム
123 :予測モデル
211 :入力受付部
212 :第1選定処理部
213 :第2選定処理部
214 :特性値変更部
215 :範囲変更部
216 :表示処理部
221 :制御プログラム