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特開2022-88731ウェブ部材の巻き付け装置及び巻き付け方法
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  • 特開-ウェブ部材の巻き付け装置及び巻き付け方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088731
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ウェブ部材の巻き付け装置及び巻き付け方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/22 20060101AFI20220608BHJP
   B29D 30/38 20060101ALI20220608BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220608BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B65H19/22
B29D30/38
B29C70/16
B29C70/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200704
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠 英大
(72)【発明者】
【氏名】下川 和成
【テーマコード(参考)】
3F064
4F205
4F215
【Fターム(参考)】
3F064AA08
3F064CA03
3F064CA05
3F064EB13
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH20
4F205AJ08
4F205HA02
4F205HA37
4F205HB01
4F205HK22
4F205HK25
4F205HL02
4F205HT22
4F215AH20
4F215VA12
4F215VD10
4F215VD22
4F215VM04
4F215VP34
4F215VP35
(57)【要約】
【課題】対象ローラに対してウェブ部材の端部を巻き付けることを可能にする巻き付け装置及び巻き付け方法を提供する。
【解決手段】巻き付け装置1は、回動軸23と、半円環状の部材で構成され一端部21aが回動軸23に固定されるローラ支持部材21と、ローラ支持部材21における回動軸23の軸心上の位置で回転可能に支持される第1従動ローラ20Aと、を備え、ローラ支持部材21が、回動軸23の軸心に当該ローラ支持部材21の径方向が直交する姿勢で回動軸23に固定され、第1従動ローラ20Aが、回動軸23が軸心方向に直交する方向かつ巻き取りローラ54に接近する方向へ変位して、ローラ面54aとの間でライナー55を挟むことが可能な位置に変位し、ローラ支持部材21が、第1従動ローラ20Aとローラ面54aの間でライナー55を挟んでいる状態で、ローラ面54aの周囲に内周部27を配置する巻き付け位置P2に回動可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ部材を対象ローラに巻き付けるための巻き付け装置であって、
前記対象ローラの軸心に対して平行な軸心を有する回動軸と、
半円環状の部材で構成され、周方向の一端部が前記回動軸に固定されているローラ支持部材と、
前記ローラ支持部材における前記回動軸の軸心上の位置で回転可能に支持されている第1従動ローラと、を備え、
前記ローラ支持部材が、前記回動軸の軸心に当該ローラ支持部材の径方向が直交する姿勢で前記回動軸に固定されており、
前記ローラ支持部材の内周部が、前記対象ローラのローラ半径に比べて大きい曲率半径を有し、
前記第1従動ローラが、前記回動軸が当該回動軸の軸心方向に直交する方向で、かつ、前記対象ローラに接近する方向へ変位することに伴って、前記対象ローラのローラ面との間で前記ウェブ部材を挟むことが可能な位置に変位し、
前記ローラ支持部材が、前記第1従動ローラと前記ローラ面の間で前記ウェブ部材を挟んでいる状態で、前記ローラ面の周囲に前記内周部を配置する巻き付け位置に回動可能である、ウェブ部材の巻き付け装置。
【請求項2】
前記回動軸の軸心に対して平行な軸心を有し、前記ローラ支持部材の周方向における途中部において回転可能に支持される第2従動ローラをさらに備え、
前記第2従動ローラが、
前記ローラ支持部材が前記巻き付け位置に回動している状態で、前記ローラ面との間で前記ウェブ部材を挟むことが可能な位置に配置される、請求項1に記載のウェブ部材の巻き付け装置。
【請求項3】
前記第2従動ローラが、複数の従動ローラにより構成され、
前記第1従動ローラと前記複数の従動ローラが、
各ローラ径が同じであって、各軸心が同一円周上で周方向に等間隔で配置されている、請求項2に記載のウェブ部材の巻き付け装置。
【請求項4】
前記回動軸の軸心に対して平行な軸心を有し、前記ローラ支持部材の周方向の他端部において回転可能に支持される他の従動ローラをさらに備え、
前記他の従動ローラが、
前記ローラ支持部材が前記巻き付け位置に回動している状態で、前記ローラ面から離間する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のウェブ部材の巻き付け装置。
【請求項5】
前記回動軸の軸心方向に直交する方向で、かつ、前記対象ローラに接近する方向へ当該回動軸を変位させる変位部をさらに備える、請求項1から請求項4の何れか一項に記載のウェブ部材の巻き付け装置。
【請求項6】
前記ローラ支持部材が前記巻き付け位置に回動している状態で、前記他の従動ローラを駆動する駆動部をさらに備える、請求項4又は請求項5に記載のウェブ部材の巻き付け装置。
【請求項7】
ウェブ部材を対象ローラに巻き付けるための巻き付け方法であって、
前記対象ローラの軸心に対して平行な軸心を有する回動軸と、
半円環状の部材で構成され、周方向の一端部が前記回動軸に固定されているローラ支持部材と、
前記ローラ支持部材における前記回動軸の軸心上の位置で回転可能に支持されている第1従動ローラと、を備え、
前記ローラ支持部材の前記内周部が、前記対象ローラのローラ半径に比べて大きい曲率半径を有し、前記ローラ支持部材が、前記回動軸の軸心に当該ローラ支持部材の径方向が直交する姿勢で前記回動軸に固定された巻き付け装置を用いて、
前記回動軸が当該回動軸の軸心方向に直交する方向で、かつ、前記対象ローラに接近する方向へ前記第1従動ローラを変位させて、前記第1従動ローラと前記対象ローラのローラ面との間で前記ウェブ部材を挟む第1工程と、
前記第1従動ローラと前記ローラ面の間で前記ウェブ部材を挟んでいる状態で、前記ローラ面の周囲に前記内周部を配置する巻き付け位置に前記ローラ支持部材を回動する第2工程と、を有する、ウェブ部材の巻き付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ部材の巻き付け装置及び巻き付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造では、インナーライナーやカーカスプライ等の部品を得るために、長さ方向に連続するシート状のウェブ部材が準備される。このウェブ部材を製造する途中において、ウェブ部材を巻き付ける工程がある。このような工程では、送り出しローラから送り出したウェブ部材を巻き取りローラで巻き取る巻き取り装置が用いられる。このような巻き取り装置では、巻き取り作業を開始する前に、ウェブ部材の端部を巻き取りローラのローラ面に巻き付けておく必要がある。
【0003】
従来、円筒状部材に対して長さ方向に連続する部材を巻き付けるための巻き付け装置としては、下記の特許文献1に開示されたものがある。この巻き付け装置では、円筒状部材への繊維束の巻き付けを開始する際には、まず、オペレータがウェブ部材(繊維束)の端部を円筒状部材にテープ等で固定する必要がある。つまり、従来の巻き付け装置では、円筒状部材に対して長さ方向に連続する部材の端部を手作業で巻き付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-144407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記巻き付け装置では、長さ方向に連続する部材の端部の固定等を自動化するための装置を設けることが提案されている。しかしながら、長さ方向に連続する部材の端部を円筒状部材に対して巻き付けるための装置が従来提供されておらず、このような作業の自動化は進んでいない。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、対象ローラに対してウェブ部材の端部を巻き付けることを可能にする巻き付け装置及び巻き付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るウェブ部材の巻き付け装置は、ウェブ部材を対象ローラに巻き付けるための巻き付け装置であって、前記対象ローラの軸心に対して平行な軸心を有する回動軸と、半円環状の部材で構成され、周方向の一端部が前記回動軸に固定されているローラ支持部材と、前記ローラ支持部材における前記回動軸の軸心上の位置で回転可能に支持されている第1従動ローラと、を備え、前記ローラ支持部材が、前記回動軸の軸心に当該ローラ支持部材の径方向が直交する姿勢で前記回動軸に固定されており、前記ローラ支持部材の内周部が、前記対象ローラのローラ半径に比べて大きい曲率半径を有し、前記第1従動ローラが、前記回動軸が当該回動軸の軸心方向に直交する方向で、かつ、前記対象ローラに接近する方向へ変位することに伴って、前記対象ローラのローラ面との間で前記ウェブ部材を挟むことが可能な位置に変位し、前記ローラ支持部材が、前記第1従動ローラと前記ローラ面の間で前記ウェブ部材を挟んでいる状態で、前記ローラ面の周囲に前記内周部を配置する巻き付け位置に回動可能である。
【0008】
好ましくは、このウェブ部材の巻き付け装置は、前記回動軸の軸心に対して平行な軸心を有し、前記ローラ支持部材の周方向における途中部において回転可能に支持される第2従動ローラをさらに備え、前記第2従動ローラが、前記ローラ支持部材が前記巻き付け位置に回動している状態で、前記ローラ面との間で前記ウェブ部材を挟むことが可能な位置に配置される。
【0009】
好ましくは、このウェブ部材の巻き付け装置の前記第2従動ローラが、複数の従動ローラにより構成され、前記第1従動ローラと前記複数の従動ローラが、各ローラ径が同じであって、各軸心が同一円周上で周方向に等間隔で配置されている。
【0010】
好ましくは、このウェブ部材の巻き付け装置は、前記回動軸の軸心に対して平行な軸心を有し、前記ローラ支持部材の周方向の他端部において回転可能に支持される他の従動ローラをさらに備え、前記他の従動ローラが、前記ローラ支持部材が前記巻き付け位置に回動している状態で、前記ローラ面から離間する。
【0011】
好ましくは、このウェブ部材の巻き付け装置は、前記回動軸の軸心方向に直交する方向で、かつ、前記対象ローラに接近する方向へ当該回動軸を変位させる変位部をさらに備える。
【0012】
好ましくは、このウェブ部材の巻き付け装置は、前記ローラ支持部材が前記巻き付け位置に回動している状態で、前記他の従動ローラを駆動する駆動部をさらに備える。
【0013】
本発明の一態様に係るウェブ部材の巻き付け方法は、ウェブ部材を対象ローラに巻き付けるための巻き付け方法であって、前記対象ローラの軸心に対して平行な軸心を有する回動軸と、半円環状の部材で構成され、周方向の一端部が前記回動軸に固定されているローラ支持部材と、前記ローラ支持部材における前記回動軸の軸心上の位置で回転可能に支持されている第1従動ローラと、を備え、前記ローラ支持部材の前記内周部が、前記対象ローラのローラ半径に比べて大きい曲率半径を有し、前記ローラ支持部材が、前記回動軸の軸心に当該ローラ支持部材の径方向が直交する姿勢で前記回動軸に固定された巻き付け装置を用いて、前記回動軸が当該回動軸の軸心方向に直交する方向で、かつ、前記対象ローラに接近する方向へ前記第1従動ローラを変位させて、前記第1従動ローラと前記対象ローラのローラ面との間で前記ウェブ部材を挟む第1工程と、前記第1従動ローラと前記ローラ面の間で前記ウェブ部材を挟んでいる状態で、前記ローラ面の周囲に前記内周部を配置する巻き付け位置に前記ローラ支持部材を回動する第2工程と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のウェブ部材の巻き付け装置及び巻き付け方法によれば、巻き取りローラに対してウェブ部材の端部を巻き付けることができる。これにより、巻き付け装置を用いることで、巻き取りローラに対してウェブ部材を巻き付ける作業を自動化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ライナー巻取装置を示す側面模式図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る巻き付け装置を示す模式図である。
図2B図2Aの矢印X方向からみた巻き付け部の部分模式図である。
図3】ローラ支持部材が巻き付け位置に回動している状態の巻き付け装置を示す模式図である。
図4】巻き付け装置の制御ブロック図である。
図5】巻き付け装置によるライナーの巻き付け手順(変位部の変位前)を示す模式図である。
図6】巻き付け装置によるライナーの巻き付け手順(変位部の変位後)を示す模式図である。
図7】巻き付け装置によるライナーの巻き付け手順(回動軸の回動途中)を示す模式図である。
図8】巻き付け装置によるライナーの巻き付け手順(回動軸の回動完了時)を示す模式図である。
図9】巻き付け装置によるライナーの巻き付け手順(巻き付け完了時)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[ウェブ搬送装置の全体構成]
図1には、タイヤの製造設備を構成するチェーファーアッセンブル装置の一部であるライナー巻取装置50を示している。ライナー巻取装置50は、送り出しローラ51と、ピンチローラ52と、搬送ローラ53と、巻き取りローラ54とを備えている。送り出しローラ51は、架台56によって床から支持されている。巻き取りローラ54は、架台57によって床から支持されている。送り出しローラ51には、ウェブ部材(長さ方向に延びるシート状の部材)の一例であるライナー55が巻き付けられている。ライナー55は、タイヤの内周面の形成に用いられる部材である。ライナー巻取装置50は、ライナー55を、送り出しローラ51から送り出して搬送ローラ53を介して搬送し、巻き取りローラ54で巻き取る装置である。そして、ライナー巻取装置50は、巻き付け装置1を備えている。
【0017】
[巻き付け装置]
図1に示す巻き付け装置1は、本開示に係るウェブ部材の巻き付け装置の一実施形態であり、巻き取りローラ54に対して、ライナー55を巻き付けるための装置である。巻き付け装置1は、巻き付け部2と駆動部3とを備えている。
【0018】
[巻き付け部]
巻き付け部2は、複数の従動ローラ20と、各従動ローラ20を回転可能に支持するローラ支持部材21とを備えている。ローラ支持部材21は、半円環形状の板材で構成されており、径方向内側に内周部27を有している。内周部27は、中心角が180度以上の円弧状である。また、ローラ支持部材21の内周部27は、巻き取りローラ54のローラ半径に比べて大きい曲率半径を有している(図3参照)。そして、ローラ支持部材21は、回動軸23の軸心に当該ローラ支持部材21の径方向が直交する姿勢で、周方向の一端部21aが回動軸23に固定されている。
【0019】
ローラ支持部材21には、複数の支持軸22が設けられている。各支持軸22は、各軸心を互いに平行としてローラ支持部材21に対して固定されている。従動ローラ20は、支持軸22によって回転可能に支持されている。従動ローラ20と支持軸22の間には図示しない軸受が設けられている。このため、従動ローラ20は、支持軸22回りに従動回転する。
【0020】
[従動ローラの詳細な構成]
図2Aに示すように、巻き付け装置1は、4個の従動ローラ20を備えている。本説明では、巻き付け装置1における4個の各従動ローラ20を、それぞれ周方向の並び位置に応じて、第1従動ローラ20A、第2従動ローラ20B、第3従動ローラ20C、第4従動ローラ20Dと称して区別する。なお、本説明で単に「従動ローラ20」という場合には、従動ローラ20の並び位置を考慮せずに、各従動ローラ20A~20Dに共通する構成を説明している。
【0021】
ローラ支持部材21の周方向の一端部21aには、第1従動ローラ20Aが配置されている。図2Bに示すように、第1従動ローラ20Aは、ローラ支持部材21における回動軸23の軸心上の位置で回転可能に支持されている。
【0022】
図2A及び図3に示すように、ローラ支持部材21の周方向の他端部21bには、第4従動ローラ20Dが配置されている。また、ローラ支持部材21の周方向における一端部21aと他端部21bの間の途中部には、第2従動ローラ20Bと第3従動ローラ20Cが配置されている。
【0023】
各従動ローラ20A~20Dは、ローラ径が同一である。第1~第3の各従動ローラ20A,20B,20Cの軸心(各支持軸22の軸心)は、同一の円Q上に位置しており、かつ、円Qの周方向に等間隔で配置されている。つまり、第1~第3の各従動ローラ20A,20B,20Cの軸心(各支持軸22の軸心)は、ローラ支持部材21の内周部27の曲率中心からの距離が同じである。また、第4従動ローラ20Dの軸心(支持軸22の軸心)は、ローラ支持部材21の内周部27の曲率中心からの距離が、その他の各従動ローラ20A~20Dにおける前記距離に比べて大きくなっている。
【0024】
[回動軸と変位部]
図2A及び図2Bに示すように、巻き付け部2は、さらに回動軸23と変位部24とを備えている。回動軸23は、ローラ支持部材21を回動可能に支持する軸であり、変位部24によって支持されている。回動軸23は、変位部24に設けた図示しないモータに連結されており、当該モータの作動により回動する。回動軸23は、2方向(図2Aにおける時計回りと反時計回りの各方向)に回動することができる。
【0025】
変位部24は、回動軸23及びローラ支持部材21を変位可能に支持する部位であり、巻き取りローラ54に接近する側と巻き取りローラ54から離間する側へ、直線状のレール25に沿って変位可能となっている。なお、レール25は、床に設置した架台26に固定されている(図1参照)。変位部24を直線状に変位させる機構としては、例えばボールねじを用いた機構等が採用できる。
【0026】
変位部24がレール25に沿って変位することで、ローラ支持部材21が、巻き取りローラ54に接近する側と巻き取りローラ54から離間する側に変位される。ローラ支持部材21の変位方向は、軸方向視において、巻き取りローラ54の径方向のうちの位置Rを通過する径方向に一致している。第1従動ローラ20Aの支持軸22と回動軸23は、軸方向視において、レール25と重なる位置に配置されている。そして、ローラ支持部材21上の第1従動ローラ20Aは、回動軸23が当該回動軸23の軸心方向に直交し、かつ、巻き取りローラ54に接近する方向へ変位することに伴って、ローラ面54aとの間でライナー55を挟むことが可能な位置に変位される。
【0027】
第1従動ローラ20Aは、ローラ支持部材21が巻き取りローラ54に接近する側へ所定位置まで変位すると、ローラ面54aの位置Rに接触するように構成されている。このとき、ローラ面54aの位置Rにライナー55が存在している状態であれば、第1従動ローラ20Aは、ローラ面54aの位置Rとの間でライナー55を挟むことができる。
【0028】
図3に示すように、ローラ支持部材21は、ローラ面54aの位置Rと第1従動ローラ20Aでライナー55を挟むことができる状態で、回動軸23回りに回動することができる。ローラ支持部材21は、準備位置P1と巻き付け位置P2の間で、回動軸23回りに回動することができる。
【0029】
ローラ支持部材21が準備位置P1に位置している状態では、内周部27がローラ面54aの周囲から離れた位置に配置される。また、ローラ支持部材21が巻き付け位置P2に位置している状態では、内周部27がローラ面54aの周囲に配置される。そして、ローラ支持部材21が巻き付け位置P2に回動されている状態では、第2従動ローラ20Bと第3従動ローラ20Cが、ローラ面54aとの間でライナー55を挟むことができる位置に配置される。
【0030】
つまり、巻き付け部2では、ローラ面54aの位置Rと第1従動ローラ20Aでライナー55を挟んでいる状態で、ローラ支持部材21を回動軸23回りに巻き付け位置P2まで回動させることで、第2、第3の各従動ローラ20B,20Cとローラ面54aでライナー55を挟むことができる。そして巻き付け部2では、第1~第3の各従動ローラ20A,20B,20Cによって、巻き取りローラ54に対してライナー55を周方向について一様に押し付けることができる。なお、本実施形態の巻き付け装置1では、第1従動ローラ20Aと第4従動ローラ20Dの間に、第2従動ローラ20Bと第3従動ローラ20Cを設けているが、第1従動ローラ20Aと第4従動ローラ20Dの間に配置する従動ローラ20は、1個以上あればよい。
【0031】
また、巻き付け部2では、ローラ面54aの位置Rと第1従動ローラ20Aでライナー55を挟んでいる状態で、ローラ支持部材21を回動軸23回りに巻き付け位置P2まで回動させたとき、第4従動ローラ20Dは、巻き取りローラ54から離間している。
【0032】
[駆動部]
図1に示す駆動部3は、第4従動ローラ20Dを回転駆動するための部位である。図2Aに示すように、駆動部3は、駆動ローラ30と、駆動軸31と、変位部32とを備えている。
【0033】
駆動ローラ30は駆動軸31上に固定されているローラである。駆動軸31は、変位部32に内蔵された図示しないモータに連結されており、当該モータが作動することにより回転する。駆動ローラ30は、当該モータが作動されたときに駆動軸31とともに回転する。駆動軸31は、1方向(図2Aにおける反時計回りの方向)に回転することができる。
【0034】
変位部32は、駆動軸31を変位可能に支持する部位であり、直線状のレール33に沿って、巻き取りローラ54に接近する側と巻き取りローラ54から離間する側へ変位可能となっている。変位部32を直線状に変位させる機構としては、例えばボールねじを用いた機構等が採用できる。駆動軸31及び駆動ローラ30は、変位部32がレール33に沿って変位することで、巻き取りローラ54に接近する側と巻き取りローラ54から離間する側に変位される。駆動ローラ30は、ローラ支持部材21が巻き付け位置P2に回動されている状態で、巻き取りローラ54に接近する側の所定位置まで変位されたときに、第4従動ローラ20Dに接触する。なお、レール33は、床に設置した架台34に固定されている(図1参照)。
【0035】
[制御部]
巻き付け装置1は、図4に示す制御部4をさらに備えている。制御部4は、巻き付け装置1の動作を制御する装置であり、コンピュータ装置により構成されている。制御部4は、巻き付け部2の変位部24と、駆動部3の変位部32とに接続されている。変位部24は、制御部4から送られる指令信号に応じて、レール25に沿って変位するとともに、回動軸23を回動させる。変位部32は、制御部4から送られる指令信号に応じて、レール33に沿って変位するとともに、駆動軸31を回転させる。
【0036】
[ピンチローラ]
図1に示すピンチローラ52は、搬送ローラ53に対して平行な軸心を有するローラであり、搬送ローラ53に接触する位置と接触しない位置の間で変位可能とされている。ピンチローラ52は、搬送ローラ53と接触する位置に配置された状態では、搬送ローラ53とピンチローラ52の間でライナー55を挟むことができる。そして、長さ方向に分断されている2枚のライナー55は、一側の後端部と他側の前端部を重ねて搬送ローラ53とピンチローラ52で挟むことによってつながれる。ライナー巻取装置50では、このようなピンチローラ52を備えることによって、新しい送り出しローラ51から送り出されたライナー55の前端部と、交換前の送り出しローラ51から送り出されたライナー55の後端部とを、ピンチローラ52によって自動的につなぐことが可能となる。
【0037】
[巻き付け装置1の使用手順]
ここでは、ライナー巻取装置50(図1参照)において、図2図4に示す巻き付け装置1を用いて、巻き取りローラ54にライナー55を巻き付ける手順を説明する。
【0038】
図1に示すライナー巻取装置50では、送り出しローラ51から送りだされたライナー55が、搬送ローラ53を経て巻き取りローラ54に供給される。図5に示すように、ライナー55は、ローラ面54aの位置Rにおける接線方向(図1における位置Rの直上)から巻き取りローラ54に供給される。このとき、ライナー55は、端部55aが位置Rを通り過ぎた位置に配置されるように送り出しローラ51(図1参照)から送り出される。このときのライナー55の位置Rから端部55aまでの部分が、巻き付け装置1によって巻き取りローラ54に巻き付けられる。
【0039】
図6に示すように、ユーザーが巻き付け装置1の使用を開始すると、制御部4からの指令信号に基づいて、まず巻き付け部2が作動する。具体的には、制御部4からの指令信号に基づいて、変位部24がレール25に沿って巻き取りローラ54に接近する側へ変位する。このとき、ライナー55は、ローラ面54aと第1従動ローラ20Aの間で挟まれる。なおこのとき、ローラ支持部材21の回動位置は、準備位置P1となっている。
【0040】
以上説明したように、巻き付け装置1は、ローラ支持部材21を位置Rに変位させる変位部24を備えている。このような巻き付け装置1によれば、位置Rにおいて、ローラ面54aと第1従動ローラ20Aの間で、ライナー55を挟むことができる。
【0041】
そして、巻き付け装置1を用いたライナー55の巻き付け方法では、第1従動ローラ20Aを、回動軸23が当該回動軸23の軸心方向に直交する方向で、かつ、巻き取りローラ54に接近する方向へ変位させて、巻き取りローラ54のローラ面54aとの間でライナー55を挟む工程を有している。
【0042】
次に、図7に示すように、ローラ面54aの位置Rと第1従動ローラ20Aによってライナー55を挟んでいる状態で、制御部4からの指令信号に基づいて回動軸23及びローラ支持部材21が回動する。このとき、ライナー55は、位置Rから端部55aまでの部分が、第4従動ローラ20Dと接しながらローラ支持部材21で巻き取りローラ54側に手繰り寄せられる。そして、ローラ支持部材21の回動位置が準備位置P1から巻き付け位置P2へ近づくにつれて、ライナー55がローラ面54aに沿って曲げられる。
【0043】
次に、図8に示すように、制御部4からの指令信号に基づいて回動軸23が回動し、ローラ支持部材21が巻き付け位置P2まで回動する。このとき、内周部27が、ローラ面54aの径方向外側の周囲に配置され、内周部27とローラ面54aの間に軸方向視で半円弧状の隙間が形成される。前記隙間は、巻き取りローラ54の軸心位置を中心としてローラ面54aの周方向に180度以上の範囲に形成されている。ライナー55は、この半円弧状の隙間に沿ってUターン状に曲げられる。
【0044】
このように、巻き付け装置1を用いたライナー55の巻き付け方法では、第1従動ローラ20Aとローラ面54aの間でライナー55を挟んでいる状態で、ローラ面54aの周囲に内周部27を配置する巻き付け位置P2にローラ支持部材21を回動する工程を有している。
【0045】
また、ローラ支持部材21が巻き付け位置P2に位置しているとき、第2従動ローラ20Bと第3従動ローラ20Cは、ローラ面54aとの間でライナー55を挟むことができる位置に配置される。そして、半円弧状の隙間に位置しているライナー55が、ローラ面54aと第2従動ローラ20B及び第3従動ローラ20Cの間で挟まれる。このとき、ライナー55は、第2従動ローラ20Bと第3従動ローラ20Cによって巻き取りローラ54に対して押圧される。そして、ライナー55が巻き取りローラ54に対して密着される。
【0046】
このようにして、ライナー55は、ローラ面54aと第1~第3の各従動ローラ20A,20B,20Cの間で挟まれ、かつ、ローラ面54aに沿って曲げられ、巻き取りローラ54に対して巻き付けられる。
【0047】
以上説明したように、巻き付け装置1は、回動軸23の軸心に対して平行な回転軸心を有し、ローラ支持部材21の周方向における途中部において回転可能に支持される第2従動ローラ20B及び第3従動ローラ20Cをさらに備えている。そして、第2従動ローラ20B及び第3従動ローラ20Cは、ローラ支持部材21が巻き付け位置P2に回動している状態で、ローラ面54aとの間でライナー55を挟むことが可能な位置に配置される。このような巻き付け装置1によれば、位置Rより端部55a側に位置するライナー55を、ローラ面54aに対して巻き付けることができる。
【0048】
また、巻き付け装置1では、第1従動ローラ20A以外に、複数の第2従動ローラ20B及び第3従動ローラ20Cを備えている。そして、第1従動ローラ20Aと第2従動ローラ20B及び第3従動ローラ20Cは、各ローラ径が同じであって、各軸心が同一円Q上で、周方向に等間隔で配置されている。このような巻き付け装置1によれば、ライナー55を巻き取りローラ54の周方向について一様に密着させることができる。
【0049】
次に、制御部4からの指令信号に基づいて駆動部3が作動する。具体的には、制御部4からの指令信号に基づいて変位部32がレール33に沿って巻き取りローラ54に接近する側へ変位する。これにより、駆動ローラ30が第4従動ローラ20Dとライナー55に接触する。
【0050】
次に、制御部4からの指令信号に基づいて駆動ローラ30が回転する。すると、駆動ローラ30に接している第4従動ローラ20Dが回転されるとともに、駆動ローラ30に接しているライナー55の端部55aが、搬送ローラ53側へ引き上げられる。このときの第4従動ローラ20Dの回転方向は、ライナー55を搬送ローラ53側へ引き上げる方向とは逆方向となっている。しかしながら、第4従動ローラ20Dは、巻き取りローラ54から離間しているため、この第4従動ローラ20Dの逆回転が、ライナー55の搬送を妨げることはない。
【0051】
このように、巻き付け装置1では、ローラ支持部材21が巻き付け位置P2に回動している状態で、第4従動ローラ20Dを駆動する駆動部3を備えている。このような巻き付け装置1によれば、駆動部3によって、ライナー55の端部55aを搬送ローラ53側へ引き上げることができる。
【0052】
そして、以上に示した手順を経て、図9に示すように、ライナー55が、巻き付け装置1によって、巻き取りローラ54に対してUターン状に巻き付けられる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の巻き付け装置1は、ライナー55を巻き取りローラ54に巻き付けるための装置である。巻き付け装置1は、巻き取りローラ54の軸心に対して平行な軸心を有する回動軸23と、半円環状の部材で構成され、周方向の一端部21aが回動軸23に固定されているローラ支持部材21と、ローラ支持部材21における回動軸23の軸心上の位置で回転可能に支持されている第1従動ローラ20Aと、を備えている。ローラ支持部材21は、回動軸23の軸心に当該ローラ支持部材21の径方向が直交する姿勢で回動軸23に固定されている。ローラ支持部材21の内周部27が、巻き取りローラ54のローラ半径に比べて大きい曲率半径を有している。第1従動ローラ20Aは、回動軸23が当該回動軸23の軸心方向に直交する方向で、かつ、巻き取りローラ54に接近する方向へ変位することに伴って、巻き取りローラ54のローラ面54aとの間でライナー55を挟むことが可能な位置に変位する。そして、ローラ支持部材21は、第1従動ローラ20Aとローラ面54aの間でライナー55を挟んでいる状態で、ローラ面54aの周囲に内周部27を配置する巻き付け位置P2に回動可能となっている。
【0054】
このような構成の巻き付け装置1によれば、巻き取りローラ54に対してライナー55を巻き付けることができる。そして、巻き付け装置1を用いることで、巻き取りローラ54に対してライナー55を巻き付ける作業を自動化することが可能となる。
【0055】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の巻き付け装置及び巻き付け方法は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明された巻き付け装置及び巻き付け方法は、タイヤの製造設備を構成する巻き取りローラにライナーを巻き付ける用途だけでなく、長さ方向に延びるシート状の部材であるウェブ部材を対象ローラに巻き付ける用途に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・巻き付け装置
2・・・巻き付け部
3・・・駆動部
20・・・従動ローラ
20A・・・第1従動ローラ
20B・・・第2従動ローラ(第2従動ローラ)
20C・・・第3従動ローラ(第2従動ローラ)
20D・・・第4従動ローラ(他の従動ローラ)
21・・・ローラ支持部材
23・・・回動軸
24・・・変位部
27・・・内周部
54・・・巻き取りローラ(対象ローラ)
55・・・ライナー(ウェブ部材)
P2・・・巻き付け位置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9