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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088957
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20220608BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20220608BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20220608BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220608BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B60C15/06 B
B60C11/00 F
B60C13/00 E
B60C11/03 100B
B60C9/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201105
(22)【出願日】2020-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌智
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA37
3D131AA44
3D131BA05
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC19
3D131BC39
3D131BC47
3D131DA54
3D131EA02U
3D131EA10V
3D131EA10X
3D131EA10Y
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB24V
3D131EB24W
3D131EB24X
3D131EB31X
3D131EB46X
3D131GA19
3D131HA14
3D131HA38
(57)【要約】
【課題】操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2では、最大幅位置PWにおける基準厚さは2.5mm以上3.0mm以下である。基準厚さの、赤道面での第一厚さに対する比は0.30以上0.33以下である。ビードベースラインからの径方向距離が断面高さの0.77倍を示す外面上の位置PBにおける第二厚さの、基準厚さに対する比は1.3以上1.6以下である。このタイヤ2の基準状態において、ビード10のコア32の軸方向内端からエイペックス34の径方向外端PAまでの軸方向距離の、基準幅に対する比は、3.0以上3.4以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッドと、
前記トレッドの端に連なり、径方向において前記トレッドの内側に位置する、一対のサイドウォールと、
径方向において、前記サイドウォールの内側に位置する一対のビードと、
前記トレッドと、前記一対のサイドウォールとの内側において、一方のビードと他方のビードとの間を架け渡す、カーカスと、
径方向において前記トレッドと前記カーカスとの間に位置し、螺旋状に巻かれたバンドコードを含む、バンドと
を備え、
前記ビードが、コアと、径方向において前記コアの外側に位置するエイペックスとを備え、
前記バンドから外面までの厚さにおいて、赤道面での厚さが第一厚さであり、
前記カーカスから外面までの厚さにおいて、最大幅位置における厚さが基準厚さであり、ビードベースラインからの径方向距離が断面高さの0.77倍を示す外面上の位置における厚さが第二厚さであり、
前記基準厚さが2.5mm以上3.0mm以下であり、
前記基準厚さの、前記第一厚さに対する比が0.30以上0.33以下であり、
前記第二厚さの、前記基準厚さに対する比が1.3以上1.6以下であり、
タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を230kPaに調整し、タイヤに荷重をかけない状態である、タイヤの基準状態において、
前記コアの軸方向内端から軸方向外端までの軸方向距離が前記コアの基準幅であり、
前記コアの軸方向内端から前記エイペックスの径方向外端までの軸方向距離の、前記基準幅に対する比が、3.0以上3.4以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記バンドから外面までの厚さにおいて、接地端での厚さが第三厚さであり、
前記第三厚さの、前記第一厚さに対する比が0.72以上0.75以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝を刻み、少なくとも4本の陸部が構成され、
それぞれの周方向溝の溝深さの、前記第一厚さに対する比が0.75以上0.79以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記少なくとも3本の周方向溝のうち、軸方向において、外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、前記少なくとも4本の陸部のうち、軸方向において前記ショルダー周方向溝の外側に位置し前記接地端を含む陸部がショルダー陸部であり、
前記ショルダー陸部に、前記ショルダー陸部内に端を有する横溝が刻まれ、
前記横溝が、前記端から前記接地端に向かって延び、
一方側のショルダー陸部における、前記接地端から前記横溝の端までの軸方向距離と、他方側のショルダー陸部における、前記接地端から前記横溝の端までの軸方向距離との合計の、接地幅に対する比率が15%以上20%以下である、
請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
ロードインデックスが100以上であり、
前記バンドが、赤道面を挟んで両端が相対するフルバンドからなる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。詳細には、本発明は、乗用車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの操縦安定性を向上させるには、剛性アップが検討される。例えば、厚いサイドウォールの採用や、補強プライの追加は、剛性アップに貢献する。この場合、タイヤの質量が増加する。質量の増加は転がり抵抗の増加を招くことから、質量増加を抑えながら剛性の向上を図る技術について検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-85046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境への配慮から、低い転がり抵抗を有するタイヤの開発が進められている。転がり抵抗の低減に関する要求レベルは高い。このレベルは、低発熱性のゴムの採用だけでなく、タイヤの構造を簡素化して質量の低減も図らなければ達成できないレベルにある。構造の簡素化はタイヤの剛性に影響する。単に構造を簡素化するだけでは、タイヤの剛性低下を招き、操縦安定性が低下することが懸念される。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの端に連なり、径方向において前記トレッドの内側に位置する、一対のサイドウォールと、径方向において、前記サイドウォールの内側に位置する一対のビードと、前記トレッドと、前記一対のサイドウォールとの内側において、一方のビードと他方のビードとの間を架け渡す、カーカスと、径方向において前記トレッドと前記カーカスとの間に位置し、螺旋状に巻かれたバンドコードを含む、バンドとを備える。前記ビードは、コアと、径方向において前記コアの外側に位置するエイペックスとを備える。前記バンドから外面までの厚さにおいて、赤道面での厚さが第一厚さである。前記カーカスから外面までの厚さにおいて、最大幅位置における厚さが基準厚さであり、ビードベースラインからの径方向距離が断面高さの0.77倍を示す外面上の位置における厚さが第二厚さである。前記基準厚さは2.5mm以上3.0mm以下である。前記基準厚さの、前記第一厚さに対する比は0.30以上0.33以下である。前記第二厚さの、前記基準厚さに対する比は1.3以上1.6以下である。タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を230kPaに調整し、タイヤに荷重をかけない状態である、タイヤの基準状態において、前記コアの軸方向内端から軸方向外端までの軸方向距離が前記コアの基準幅であり、前記コアの軸方向内端から前記エイペックスの径方向外端までの軸方向距離の、前記基準幅に対する比は、3.0以上3.4以下である。
【0007】
好ましくは、このタイヤでは、前記バンドから外面までの厚さにおいて、接地端での厚さが第三厚さである。前記第三厚さの、前記第一厚さに対する比は0.72以上0.75以下である。
【0008】
好ましくは、このタイヤでは、前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝を刻み、少なくとも4本の陸部が構成される。それぞれの周方向溝の溝深さの、前記第一厚さに対する比は0.75以上0.79以下である。
【0009】
好ましくは、このタイヤでは、前記少なくとも3本の周方向溝のうち、軸方向において、外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、前記少なくとも4本の陸部のうち、軸方向において前記ショルダー周方向溝の外側に位置し前記接地端を含む陸部がショルダー陸部であり、前記ショルダー陸部に、前記ショルダー陸部内に端を有する横溝が刻まれ、前記横溝が、前記端から前記接地端に向かって延びる。一方側のショルダー陸部における、前記接地端から前記横溝の端までの軸方向距離と、他方側のショルダー陸部における、前記接地端から前記横溝の端までの軸方向距離との合計の、接地幅に対する比率は15%以上20%以下である。
【0010】
好ましくは、このタイヤでは、ロードインデックスは100以上である。前記バンドは、赤道面を挟んで両端が相対するフルバンドからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
図2図2は、図1に示されたタイヤの一部を示す断面図である。
図3図3は、図1に示されたタイヤのトレッド面の一部を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0014】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を230kPaに調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、基準状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤの各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0015】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における適用リムに含まれる「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0016】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0017】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0018】
本開示において、ロードインデックス(LI)とは、例えば、JATMA規格において規定され、規定の条件下でタイヤに負荷することが許される最大の質量、すなわち最大負荷能力を指数で表す指標である。
【0019】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の温度30℃での損失正接(tanδとも称される。)は、JIS K6394の規定に準拠し、粘弾性スペクトロメータ((株)岩本製作所製の「VES」)を用いて下記の条件にて測定される。
初期歪み=10%
動歪み=2%
周波数=10Hz
変形モード=引張
この測定では、試験片はタイヤからサンプリングされる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
【0020】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータを用いて測定される。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車用タイヤである。図1において、タイヤ2はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整されている。
【0022】
リムRに組まれたタイヤ2は、タイヤ-リム複合体とも称される。タイヤ-リム複合体は、リムRと、このリムRに組まれたタイヤ2とを備える。
【0023】
図1には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部が示される。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0024】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0025】
図1において、符号PWはタイヤ2の軸方向外端である。外端PWは、基準状態のタイヤ2の外面の輪郭に基づいて特定される。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面の輪郭に基づいて特定される。
【0026】
一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、このタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。この外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。
【0027】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、一対のチェーファー18、及び、インナーライナー20を備える。
【0028】
トレッド4は、その外面、すなわちトレッド面22において路面と接地する。トレッド4は、径方向において、バンド16の外側に位置する。このタイヤ2のトレッド4には溝24が刻まれる。
【0029】
トレッド4は、ベース層26と、キャップ層28とを有する。ベース層26は、バンド16全体を覆う。ベース層26は、低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ層28は、ベース層26の径方向外側に位置する。キャップ層28は、ベース層26全体を覆う。キャップ層28の外面が、前述のトレッド面22である。キャップ層28は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
【0030】
図1において、符号PCはタイヤ2の赤道である。赤道PCは、トレッド面22と赤道面との交点により表される。図1において、両矢印HSで表される長さはタイヤ2の断面高さ(JATMA等参照)である。断面高さHSは、ビードベースラインから赤道PCまでの径方向距離で表される。このタイヤ2では、断面高さHSは基準状態において測定される。
【0031】
図1において、符号PEで示される位置は、タイヤ2の外面(詳細には、トレッド面22)上の位置である。位置PEは、タイヤ2の、路面との接地面の軸方向外端に対応する。このタイヤ2では、位置PEが接地端である。接地端PEは、タイヤ2の、路面との接地面の軸方向外端に対応する、タイヤ2の外面上の位置である。
【0032】
接地端PEを特定するための接地面は、例えば、接地面形状測定装置(図示されず)を用いて得られる。この接地面は、この装置において、タイヤ2をリムRに組み、タイヤ2の内圧を230kPaに調整し、このタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、縦荷重として、ロードインデックスで表される質量の70%に相当する荷重を、このタイヤ2に負荷して、このタイヤ2を平らな路面に接触させて得られる。
【0033】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。サイドウォール6は、トレッド4の端からクリンチ8に向かってカーカス12に沿って延びる。サイドウォール6は耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。サイドウォール6の外面と、後述するクリンチ8の外面とが、タイヤ2の外面の一部をなす側面30を構成する。側面30はトレッド面22に連なる。
【0034】
それぞれのクリンチ8は、径方向において、サイドウォール6の内側に位置する。クリンチ8はリムRと接触する。クリンチ8は耐摩耗性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0035】
それぞれのビード10は、軸方向においてクリンチ8の内側に位置する。ビード10は径方向においてサイドウォール6の内側に位置する。ビード10は、コア32と、エイペックス34とを備える。図示されないが、コア32はスチール製のワイヤを含む。
【0036】
エイペックス34は、径方向においてコア32の外側に位置する。エイペックス34は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。エイペックス34の硬さは85以上95以下である。エイペックス34は外向きに先細りである。符号PAは、エイペックス34の径方向外端である。
【0037】
図1において、符号PMは、エイペックス34の、コア32との接触面の、軸方向幅の中心である。両矢印LAは、幅中心PMからエイペックス34の径方向外端PAまでの長さである。このタイヤ2では、長さLA、言い換えれば、エイペックス34の長さLAは25mm以上50mm以下である。
【0038】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡す。このカーカス12はラジアル構造を有する。
【0039】
カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ36を含む。このタイヤ2のカーカス12は、2枚のカーカスプライ36からなる。トレッド4の内側において径方向内側に位置するカーカスプライ36が第一カーカスプライ38であり、この第一カーカスプライ38の外側に位置するカーカスプライ36が第二カーカスプライ40である。
【0040】
第一カーカスプライ38は、一方のコア32と他方のコア32との間を架け渡す第一プライ本体38aと、この第一プライ本体38aに連なりそれぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の第一折り返し部38bとを含む。このタイヤ2では、第一折り返し部38bの端は、径方向において、最大幅位置PWよりも外側に位置する。
【0041】
第二カーカスプライ40は、一方のコア32と他方のコア32との間を架け渡す第二プライ本体40aと、この第二プライ本体40aに連なりそれぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の第二折り返し部40bとを含む。このタイヤ2では、第二折り返し部40bの端は、径方向において、エイペックス34の外端PAとコア32との間に位置する。軸方向において、第二折り返し部40bの端は、エイペックス34と第一折り返し部38bとの間に位置する。
【0042】
図示されないが、カーカスプライ36は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。カーカスコードは有機繊維からなるコードである。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0043】
ベルト14は、径方向において、トレッド4の内側に位置する。ベルト14はカーカス12とバンド16との間に位置する。ベルト14はカーカス12に積層される。このタイヤ2のベルト14の幅は、タイヤ2の断面幅(JATMA等参照)の70%以上85%以下である。
【0044】
ベルト14は、径方向に積層された少なくとも2つの層42で構成される。このタイヤ2のベルト14は、径方向に積層された2つの層42からなる。2つの層42のうち、内側に位置する層42が内側層44であり、外側に位置する層42が外側層46である。図1に示されるように、内側層44は外側層46の幅よりも広い幅を有する。軸方向において、内側層44の端は外側層46の端よりも外側に位置する。外側層46の端から内側層44の端までの距離は3mm以上10mm以下である。
【0045】
図示されないが、内側層44及び外側層46はそれぞれ、並列された多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0046】
バンド16は、径方向において、トレッド4とカーカス12との間に位置する。詳細には、このバンド16は、径方向において、トレッド4とベルト14との間に位置する。バンド16はベルト14に積層される。軸方向において、バンド16の端はベルト14の端よりも外側に位置する。ベルト14の端からバンド16の端までの距離は3mm以上7mm以下である。
【0047】
図示されないが、バンド16は、螺旋状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードは実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。このバンド16はジョイントレス構造を有する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。
【0048】
このタイヤ2のバンド16は、赤道面を挟んで両端が相対するフルバンド48からなる。フルバンド48はベルト14全体を覆う。フルバンド48はベルト14全体を拘束する。このタイヤ2のバンド16には、軸方向において離間して配置され、ベルト14の端及びフルバンド48の端を拘束する一対のエッジバンドは含まれない。
【0049】
それぞれのチェーファー18は、ビード10の径方向内側に位置する。チェーファー18はリムRと接触する。このタイヤ2のチェーファー18は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
【0050】
インナーライナー20はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー20は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー20は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0051】
図1において、符号PBは、タイヤ2の外面上の、特定の位置である。両矢印HBは、ビードベースラインから特定位置PBまでの径方向距離である。このタイヤ2では、径方向距離HBは断面高さHSの0.77倍に設定される。特定位置PBは、基準状態において、ビードベースラインからの径方向距離が断面高さの0.77倍を示す外面上の位置である。
【0052】
図1において、両矢印T1は、赤道面での、バンド16からタイヤ2の外面までの厚さ(以下、第一厚さとも称される。)である。第一厚さT1は、赤道面に沿って計測されるバンド16の外面からトレッド面22までの距離により表される。両矢印T3は、接地端PEでの、バンド16からタイヤ2の外面までの厚さ(以下、第三厚さとも称される。)である。第三厚さT3は、接地端PEを通るバンド16の外面の法線に沿って計測される、バンド16の外面からトレッド面22までの距離により表される。
【0053】
図1において、両矢印T2は、特定位置PBでの、カーカス12からタイヤ2の外面までの厚さ(以下、第二厚さとも称される。)である。第二厚さT2は、特定位置PBを通るカーカス12の外面の法線に沿って計測される、カーカス12の外面から側面30までの距離により表される。両矢印TBは、最大幅位置PWでの、カーカス12からタイヤ2の外面までの厚さ(以下、基準厚さとも称される。)である。基準厚さTBは、最大幅位置PWを通り軸方向に延びる直線に沿って計測される、カーカス12の外面から側面30までの距離により表される。
【0054】
このタイヤ2では、第一厚さT1、第二厚さT2、第三厚さT3、及び基準厚さTBは、基準状態において計測される。この計測が不能な場合、第一厚さT1、第二厚さT2、第三厚さT3、及び基準厚さTBは、次のようにして計測される。基準状態のタイヤ2において、赤道PC、接地端PE、特定位置PB及び最大幅位置PWが特定される。タイヤ2の回転軸を含む平面に沿ってタイヤ2を切断して、切断面が得られる。この切断面において、第一厚さT1、第二厚さT2、第三厚さT3、及び基準厚さTBが計測される。
【0055】
この計測において、バンド16の外面を特定することが困難な場合は、バンド16の断面に含まれるバンドコードの断面(図示されず)を外接する線で表される輪郭線を、バンド16の外面として、第一厚さT1及び第三厚さT3が計測される。
【0056】
この計測において、カーカス12の外面を特定することが困難な場合は、カーカス12の断面に含まれるカーカスコードの断面(図示されず)を外接する線で表される輪郭線を、カーカス12の外面として、第二厚さT2及び基準厚さTBが計測される。
【0057】
このタイヤ2は、トレッド4及びサイドウォール6の機能、並びに外観品質を損なわない範囲で、トレッド部Tにおいてはバンド16からトレッド面22までの架橋ゴムで構成される部分(以下、クラウンゴム)が、そしてサイド部Sにおいてはカーカス12から側面30までの架橋ゴムで構成される部分(以下、サイドゴム)が薄い厚さを有するように構成される。具体的には、基準厚さTBが2.5mm以上3.0mm以下であり、基準厚さTBの、第一厚さT1に対する比(TB/T1)が0.30以上0.33以下であり、そして、第二厚さT2の、基準厚さTBに対する比(T2/TB)が1.3以上1.6以下である。
【0058】
このタイヤ2では、基準厚さTBが2.5mm以上であり、比(TB/T1)が0.33以下であり、そして比(T2/TB)が1.3以上であるので、クラウンゴム及びサイドゴムにおいて必要な厚さが確保され、良好な外観品質を有するタイヤ2が得られる。そして、基準厚さTBが3.0mm以下であり、比(TB/T1)が0.30以上であり、そして比(T2/TB)が1.6以下であるので、薄いクラウンゴム及びサイドゴムが構成される。タイヤ2の発熱への関与が大きいとされる、赤道面から最大幅位置PWまでの領域に含まれるゴムボリュームの低減が図られるので、このタイヤ2では発熱が効果的に抑えられる。このタイヤ2は低い転がり抵抗を有する。
【0059】
このタイヤ2では、良好な外観品質の観点から、基準厚さTBは2.6mm以上が好ましい。転がり抵抗の低減の観点から、基準厚さTBは2.9mm以下が好ましい。
【0060】
このタイヤ2では、良好な外観品質の観点から、比(TB/T1)は0.32以下が好ましい。転がり抵抗の低減の観点から、比(TB/T1)は0.31以上が好ましい。
【0061】
このタイヤ2では、良好な外観品質の観点から、比(T2/TB)は1.4以上が好ましい。転がり抵抗の低減の観点から、比(T2/TB)は1.5以下が好ましい。
【0062】
図2には、図1に示されたタイヤ2の一部、具体的にはビード10の部分が示される。図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。この図2のタイヤ2は、基準状態にある。
【0063】
図2において、符号PUはコア32の軸方向内端である。符号PSはコア32の軸方向外端である。両矢印Cは、軸方向内端PUから軸方向外端PSまでの軸方向距離である。このタイヤ2では、この軸方向距離Cがコア32の基準幅である。両矢印Aは、コア32の軸方向内端PUからエイペックス34の径方向外端PAまでの軸方向距離である。
【0064】
このタイヤ2では、軸方向距離Aの、コア32の基準幅Cに対する比(A/C)は、エイペックス34の倒れの程度を表す指標であり、エイペックス34の倒れ量とも称される。比(A/C)が小さいほど、エイペックス34は立っており、エイペックス34による剛性への関与が大きいことを表す。比(A/C)が大きいほど、エイペックス34は倒れており、エイペックス34による剛性への関与が小さいことを表す。
【0065】
このタイヤ2では、赤道面から最大幅位置PWまでの領域に含まれるゴムボリュームを低減することで転がり抵抗の低減が図れられる。その一方で、このゴムボリュームの低減がタイヤ2の剛性低下を招き、操縦安定性が低下することが懸念される。
【0066】
本発明者は、赤道面から最大幅位置PWまでの領域に含まれるゴムボリュームを低減した場合の、タイヤ2の剛性コントロールについて検討し、後述するように、比(A/C)によってエイペックス34の倒れの程度をコントロールすることで、ゴムボリュームを低減しても、必要な横剛性が確保できるという、新たな知見を得ている。以下に説明するように、本発明は、この新たな知見に基づいて完成に至っている。
【0067】
このタイヤ2では、基準状態において、コア32の軸方向内端PUからエイペックス34の径方向外端PAまでの軸方向距離Aの、基準幅Cに対する比(A/C)は3.0以上3.4以下である。
【0068】
比(A/C)が3.4以下であるので、赤道面から最大幅位置PWまでの領域に含まれるゴムボリュームを低減したタイヤ2において、エイペックス34が剛性の確保に効果的に貢献する。このタイヤ2では、良好な操縦安定性が得られる。この観点から、比(A/C)は3.3以下が好ましい。比(A/C)が3.0以上であるので、タイヤ2として必要な撓みが確保され、タイヤ2に作用する力が効果的に分散される。このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。この観点から、比(A/C)は3.1以上が好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、赤道面から最大幅位置PWまでの領域に含まれるゴムボリュームの低減を図ることで発熱が抑えられ、エイペックス34の倒れ量を調整することで操縦安定性の発揮に必要な剛性が確保される。このタイヤ2は、操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0070】
このタイヤ2では、基準厚さTBが2.5mm以上3.0mm以下であり、基準厚さTBの、第一厚さT1に対する比(TB/T1)が0.30以上0.33以下であり、そして、第二厚さT2の、基準厚さTBに対する比(T2/TB)が1.3以上1.6以下であることに加え、第三厚さT3の、第一厚さT1に対する比(T3/T1)が0.72以上0.75以下であるのが好ましい。
【0071】
比(T3/T1)が0.75以下に設定されることにより、トレッド4とサイドウォール6との境界部分(以下、バットレス部B)に含まれるゴムボリュームが効果的に低減される。バットレス部Bは走行時において活発に動く部分であり、この動きによる発熱が効果的に抑えられる。エイペックス34の倒れ量の調整により必要な剛性が確保されているので、このタイヤ2は、操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。この観点から、この比(T3/T1)は0.74以下がより好ましい。この比(T3/T1)が0.72以上に設定されることにより、バットレス部Bの構成に必要なゴムボリュームが確保されるので、ゴムボリューム低減による外観品質への影響が効果的に抑えられる。このタイヤ2は良好な外観品質を有する。この観点から、この比(T3/T1)は0.73以上がより好ましい。
【0072】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4は、ベース層26と、キャップ層28とを備える。このタイヤ2は、ベース層26及びキャップ層28の30℃での損失正接を考慮することで、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。
【0073】
このタイヤ2では、転がり抵抗の低減の観点から、30℃でのベース層26の損失正接は0.10以下が好ましく、0.09以下がより好ましく、0.08以下がさらに好ましい。同様の観点から、30℃でのキャップ層28の損失正接は0.25以下が好ましく、0.24以下がより好ましく、0.23以下がさらに好ましい。30℃での損失正接が低いほど、ゴムが低発熱性であることを表すので、転がり抵抗の低減の観点において、30℃での損失正接の好ましい下限は設定されない。
【0074】
前述したように、キャップ層28の外面はトレッド面22である。このタイヤ2は、キャップ層28の0℃での損失正接を考慮することで、濡れた路面でのグリップ性能(以下、WETグリップ性能とも称される。)の向上を図ることができる。
【0075】
このタイヤ2では、WETグリップ性能の向上の観点から、0℃でのキャップ層28の損失正接は0.68以上が好ましく、0.69以上がより好ましく、0.70以上がさらに好ましい。0℃での損失正接が高いほど、ゴムがWETグリップ性能の向上に貢献できることを表すので、WETグリップ性能の向上の観点において、0℃での損失正接の好ましい上限は設定されない。
【0076】
図1において、両矢印T1bはベース層26の厚さである。両矢印T1cは、キャップ層28の厚さである。このタイヤ2では、ベース層26の厚さT1b、及びキャップ層28の厚さT1cは、赤道面に沿って計測される。
【0077】
このタイヤ2では、良好なWETグリップ性能の確保の観点から、キャップ層28の厚さT1cの、ベース層26の厚さT1bとの比(T1c/T1b)は、60/40以上が好ましく、65/35以上がより好ましい。転がり抵抗の低減の観点から、この比(T1c/T1b)は、80/20以下が好ましく、75/25以下がより好ましい。
【0078】
前述したように、このタイヤ2のバンド16は、軸方向において離間して配置され、ベルト14の端及びフルバンド48の端を拘束する一対のエッジバンドを含まない。バンド16は、フルバンド及び一対のエッジバンドからなるバンド(以下、フルスペックバンド)に比べて軽い。このバンド16は、軽量化及び転がり抵抗の低減に貢献する。
【0079】
このタイヤ2のバンド16剛性は、フルスペックバンドの剛性に比べて低い。前述したように、このタイヤ2では、赤道面から最大幅位置PWまでの領域に含まれるゴムボリュームの低減が図られている。このバンド16の採用により、トレッド部Tの軸方向外側部分の剛性が低下し、操縦安定性等の性能が低下することが懸念される。しかし前述したように、エイペックス34の倒れ量を調整することで操縦安定性の発揮に必要な剛性が確保される。このタイヤ2は、操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0080】
前述したように、このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。この有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。拘束力の発揮の観点から、バンドコードとしては、ナイロン繊維からなるコード、又は、ナイロン繊維のストランドと、アラミド繊維のストランドとを撚合わせたハイブリッドコードが好ましい。耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる観点から、バンドコードとしては、ハイブリッドコードがより好ましい。
【0081】
図3は、トレッド面22の展開図を示す。図3には、トレッド面22の一部が示される。図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。この図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
【0082】
図3において、両矢印TWはトレッド4の接地幅である。この接地幅TWは、一方の接地端PEから他方の接地端PEまでの軸方向距離により表される。接地幅TWは、接地端PEを特定するための接地面において計測される。
【0083】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4には溝24が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。このトレッドパターンを構成する溝24のうち、1.5mm以下の溝幅を有する溝24はサイプと称される。
【0084】
このタイヤ2のトレッド4には、トレッドパターンを構成する溝24として、周方向に延びる、少なくとも3本の周方向溝50が刻まれる。これにより、このトレッド4には、少なくとも4本の陸部52が構成される。このタイヤ2では、4本の周方向溝50をトレッド4に刻み、5本の陸部52がこのトレッド4に構成される。周方向溝50は、少なくとも3.0mm以上の溝幅を有する。
【0085】
このタイヤ2では、4本の周方向溝50のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝50がショルダー周方向溝50sである。このショルダー周方向溝50sの内側に位置する周方向溝50が、ミドル周方向溝50mである。このタイヤ2では、4本の周方向溝50は、赤道面を挟んで配置される一対のミドル周方向溝50mと、それぞれがミドル周方向溝50mの外側に位置する一対のショルダー周方向溝50sとを含む。
【0086】
図1において、両矢印DMはミドル周方向溝50mの溝深さである。両矢印DSは、ショルダー周方向溝50sの溝深さである。溝深さDM及び溝深さDSは、基準状態のタイヤ2において計測される。
【0087】
このタイヤ2では、ミドル周方向溝50mの溝深さDMの、第一厚さT1に対する比(DM/T1)は、0.75以上が好ましく、0.79以下が好ましい。ショルダー周方向溝50sの溝深さDSの、第一厚さT1に対する比(DS/T1)は、0.75以上が好ましく、0.79以下が好ましい。言い換えれば、トレッド4に刻まれた、少なくとも3本の周方向溝50それぞれの溝深さDの、第一厚さT1に対する比(D/T1)は、0.75以上が好ましく、0.79以下が好ましい。
【0088】
比(D/T1)が0.75以上に設定されることにより、トレッド4がほどよく軟質化し、乗り心地及びロードノイズの向上が図られる。この観点から、この比(D/T1)は0.76以上がより好ましい。比(D/T1)が0.79以下に設定されることにより、トレッド4がほどよく硬質化し、耐摩耗性の向上が図られる。この観点から、この比(D/T1)は0.78以下がより好ましい。
【0089】
図3において、両矢印GMaは左側ミドル周方向溝50mの溝幅である。両矢印GMbは、右側ミドル周方向溝50mの溝幅である。両矢印GSaは、左側ショルダー周方向溝50sの溝幅である。両矢印GSbは、右側ショルダー周方向溝50sの溝幅である。溝幅GMa及び溝幅GMb、並びに溝幅GSa及び溝幅GSbは、接地端PEを特定するための接地面において計測される。
【0090】
このタイヤ2では、図3に示されるように、一方の接地端PEと他方の接地端PEとの間に、2本のミドル周方向溝50mと2本のショルダー周方向溝50とが位置する。このタイヤ2では、これら周方向溝50の溝幅の合計(すなわち、溝幅GMa、溝幅GMb、溝幅GSa、及び溝幅GSbの合計)の、接地幅TWに対する比率は、20%以上が好ましく、25%以下が好ましい。この比率が20%以上に設定されることにより、排水性が向上する。この観点から、この比率は21%以上がより好ましく、22%以上がさらに好ましい。この比率が25%以下に設定されることにより、パターンノイズが低減し、静粛性の向上が図られる。この観点から、この比率は24%以下がより好ましく、23%以下がさらに好ましい。
【0091】
このタイヤ2では、5本の陸部52のうち、軸方向において外側に位置する陸部52がショルダー陸部52sである。このショルダー陸部52sの内側に位置する陸部52が、ミドル陸部52mである。このミドル陸部52mの内側に位置する陸部52が、センター陸部52cである。このタイヤ2では、2本のミドル周方向溝50mの間がセンター陸部52cであり、このセンター陸部52cは赤道面上に位置する。ミドル周方向溝50mとショルダー周方向溝50sとの間がミドル陸部52mである。ショルダー陸部52sは、軸方向において、ショルダー周方向溝50sの外側に位置し、接地端PEを含む。5本の陸部52は、センター陸部52cと、一対のミドル陸部52mと、一対のショルダー陸部52sとを含む。
【0092】
ショルダー陸部52sには、トレッドパターンを構成する溝24として、複数の横溝54が刻まれる。これら横溝54は、略軸方向に延び、周方向に間隔をあけて配置される。横溝54は、少なくとも2.0mm以上の溝幅を有する。
【0093】
横溝54は、ショルダー陸部52s内に端を有する。横溝54は、この端から接地端PEに向かって延びる。接地面はトレッド面22内に形成される。この横溝54は、軸方向において接地端PEよりも外側に位置するトレッド4とサイドウォール6との境界に向かってさらに延びる。
【0094】
図3に示されるように、横溝54は端を含み軸方向に対して傾斜する傾斜部56と、この傾斜部56に連なり軸方向に延びる直線部58とを備える。このタイヤ2では、傾斜部56と直線部58との境界が接地端PEの近くに位置し、傾斜部56が軸方向に対してなす角度が赤道面側に向かって漸増するように、この傾斜部56の形状が整えられる。
【0095】
ショルダー陸部52sには、横溝54以外に、トレッドパターンを構成する溝24として、複数の行き止まりサイプ60(以下、第一行き止まりサイプ62)が刻まれる。図2に示されるように、第一行き止まりサイプ62と横溝54とは周方向に交互に配置される。
【0096】
第一行き止まりサイプ62は、1.5mm以下の溝幅を有するサイプである。複数の第一行き止まりサイプ62は周方向に間隔をあけて配置される。それぞれの第一行き止まりサイプ62は、ショルダー陸部52s内に端を有する。第一行き止まりサイプ62は、この端からショルダー周方向溝50sに向かって延在する。第一行き止まりサイプ62は、その端とショルダー周方向溝50sとを繋ぐ。このタイヤ2では、第一行き止まりサイプ62が軸方向に対してなす角度が赤道面側に向かって漸増するように、この第一行き止まりサイプ62の形状は整えられる。
【0097】
図3において、両矢印SWはショルダー周方向溝50の外縁から接地端PEまでの軸方向距離を表す。横溝54の端から第一行き止まりサイプ62の端までの軸方向距離が、軸方向距離SWの5%以内にあれば、軸方向において、第一行き止まりサイプ62の端が横溝54の端の外側に位置していてもよく、第一行き止まりサイプ62の端が横溝54の端の内側に位置していてもよい。
【0098】
ミドル陸部52mには、トレッドパターンを構成する溝24として、複数の行き止まりサイプ60と、周方向サイプ64とが刻まれる。このミドル陸部52mにおいて、行き止まりサイプ60と周方向サイプ64とは交わらない。
【0099】
周方向サイプ64は、ミドル陸部52mの幅方向中心に位置する。周方向サイプ64は周方向に連続して延びる。周方向サイプ64は、1.5mm以下の溝幅を有するサイプである。複数の行き止まりサイプ60は、ミドル陸部52mの外側部分に刻まれる複数の第二行き止まりサイプ66と、このミドル陸部52mの内側部分に刻まれる複数の第三行き止まりサイプ68とを含む。第二行き止まりサイプ66と第三行き止まりサイプ68とは、1.5mm以下の溝幅を有するサイプである。前述の周方向サイプ64は、第二行き止まりサイプ66と第三行き止まりサイプ68との間に位置する。
【0100】
複数の第二行き止まりサイプ66は、周方向に間隔をあけて配置される。それぞれの第二行き止まりサイプ66は、ミドル陸部52m内に端を有する。この端は、軸方向において、前述の周方向サイプ64の外側に位置する。第二行き止まりサイプ66は、この端からショルダー周方向溝50sに向かって延在する。第二行き止まりサイプ66は、その端とショルダー周方向溝50sとを繋ぐ。第二行き止まりサイプ66は、軸方向に対して傾斜する。この第二行き止まりサイプ66の傾斜の向きは、ショルダー陸部52sに刻まれる第二行き止まりサイプ66の傾斜の向きと同じである。
【0101】
複数の第三行き止まりサイプ68は、周方向に間隔をあけて配置される。それぞれの第三行き止まりサイプ68は、ミドル陸部52m内に端を有する。この端は、軸方向において、前述の周方向サイプ64の内側に位置する。第三行き止まりサイプ68は、この端からミドル周方向溝50mに向かって延在する。第三行き止まりサイプ68は、その端とミドル周方向溝50mとを繋ぐ。第三行き止まりサイプ68は、軸方向に対して傾斜する。このタイヤ2では、第二行き止まりサイプ66の傾斜の向きと、第三行き止まりサイプ68の傾斜の向きとは、互いに逆向きである。
【0102】
センター陸部52cには、トレッドパターンを構成する溝24として、複数の行き止まりサイプ60(以下、第四行き止まりサイプ70)が刻まれる。第四行き止まりサイプ70は、1.5mm以下の溝幅を有するサイプである。
【0103】
複数の第四行き止まりサイプ70は、周方向に間隔をあけて配置される。それぞれの第四行き止まりサイプ70は、センター陸部52c内に端を有する。この端は、軸方向において、赤道の外側に位置する。第四行き止まりサイプ70は、この端からミドル周方向溝50mに向かって延在する。第四行き止まりサイプ70は、その端とミドル周方向溝50mとを繋ぐ。第四行き止まりサイプ70は、軸方向に対して傾斜する。この第四行き止まりサイプ70の傾斜の向きは、ミドル陸部52mに刻まれる第三行き止まりサイプ68の傾斜の向きと同じである。
【0104】
このタイヤ2では、センター陸部52cの両側の縁の部分に第四行き止まりサイプ70が刻まれる。図3に示されるように、一方の縁の部分に設けられる第四行き止まりサイプ70の傾斜の向きは、他方の縁の部分に設けられる第四行き止まりサイプ70の傾斜の向きと同じである。
【0105】
図3において、両矢印LWaは、左側のショルダー陸部52sにおける、接地端PEから横溝54の端までの軸方向距離である。両矢印LWbは、右側のショルダー陸部52sにおける、接地端PEから横溝54の端までの軸方向距離である。軸方向距離LWa及び軸方向距離LWbは、接地端PEを特定するための接地面において計測される。
【0106】
このタイヤ2では、軸方向距離LWa及び軸方向距離LWbの合計の、接地幅TWに対する比率は、15%以上が好ましく、20%以下が好ましい。この比率が15%以上に設定されることにより、排水性が向上する。この観点から、この比率は16%以上がより好ましく、17%以上がさらに好ましい。この比率が20%以下に設定されることにより、パターンノイズが低減し、静粛性の向上が図られる。この観点から、この比率は19%以下がより好ましく、18%以下がさらに好ましい。
【0107】
横溝54は、バットレス部Bに含まれるゴムボリュームの低減に貢献する。バットレス部Bは走行時において活発に動く部分であり、この動きによる発熱が効果的に抑えられる。この横溝54は、転がり抵抗の低減に貢献する。このタイヤ2では、赤道面から最大幅位置PWまでの領域に含まれるゴムボリュームの低減が図られている。横溝54は、トレッド部Tの軸方向外側部分の剛性を低下させることから、操縦安定性等の性能が低下することが懸念される。しかし前述したように、エイペックス34の倒れ量を調整することで操縦安定性の発揮に必要な剛性が確保される。このタイヤ2は、操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0108】
以上説明したように、本発明によれば、耐久性及び操縦安定性への影響を抑えながら、転がり抵抗の低減を図ることができる、タイヤ2が得られる。本発明は、ロードインデックスが100以上であるタイヤ2において、顕著な効果を奏する。
【実施例0109】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=235/55R19 101V)を得た。
【0111】
この実施例1では、基準厚さTBは2.9mmに設定された。基準厚さTBの、第一厚さT1に対する比(TB/T1)は0.32に設定された。第二厚さT2の、基準厚さTBに対する比(T2/TB)は1.5に設定された。第三厚さT3の、第一厚さT1に対する比(T3/T1)は0.74に設定された。ミドル周方向溝及びショルダー周方向溝それぞれの溝深さDの、第一厚さT1に対する比(D/T1)は0.77に設定された。コアの軸方向内端から前記エイペックスの径方向外端までの軸方向距離Aの、基準幅Cに対する比(A/C)は3.3に設定された。
【0112】
実施例1のバンドはフルバンドからなる。バンドコードには、ナイロン繊維からなるストランド(構成=940dtex/1)と、アラミド繊維からなるストランド(構成=1100dtex/1)とを撚り合わせて構成されたハイブリッドコードが使用された。
【0113】
[比較例1]
比較例1は従来のタイヤ(タイヤサイズ=235/55R19 101V)である。この比較例1では、基準厚さTBは2.5mmであった。比(TB/T1)は0.26であった。比(T2/TB)は2.2であった。比(T3/T1)は0.79であった。比(D/T1)は0.80であった。比(A/C)は3.8であった。
【0114】
比較例1のバンドはフルバンドと一対のエッジバンドとからなる。バンドコードには、ナイロン繊維からなるコード(構成=1400dtex/1)が使用された。
【0115】
[比較例2]
第二厚さT2、第三厚さT3、及び軸方向距離Aを変えて比(T2/TB)、比(T3/T1)、及び比(A/C)を下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
【0116】
[転がり抵抗係数(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。その結果が、下記の表1に指数で示されている。数値が小さいほど、タイヤの転がり抵抗は低い。
リム:8.0J
内圧:230kPa
縦荷重:5.67kN
【0117】
[操縦安定性]
試作タイヤをリム(サイズ=8.0J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を230kPaに調整した。タイヤを試験車両(乗用車)に装着して、ドライアスファルト路面のテストコースでこの試験車両を走行させた。ドライバーに操縦安定性を評価(官能評価)させた。その結果が、下記の表1に指数で示されている。数値が大きいほど、タイヤは操縦安定性に優れる。
【0118】
【表1】
【0119】
表1に示されるように、実施例では、操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗の低減が達成されている。この実施例では、操縦安定性が向上している。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上説明された、操縦安定性の低下を招くことなく、転がり抵抗の低減を達成できる技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0121】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・バンド
22・・・トレッド面
26・・・ベース層
28・・・キャップ層
36・・・カーカスプライ
48・・・フルバンド
50、50s、50m・・・周方向溝
52、52s、52m、52c・・・陸部
54・・・横溝
図1
図2
図3