(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089776
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】スラグのフォーミングの抑制方法、鎮静剤投射ノズル及び鎮静剤投射装置
(51)【国際特許分類】
C21C 5/28 20060101AFI20220609BHJP
F27D 15/02 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
C21C5/28 B
F27D15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193505
(22)【出願日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2020201735
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】青山 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】森 幹洋
(72)【発明者】
【氏名】神田 純一
【テーマコード(参考)】
4K063
4K070
【Fターム(参考)】
4K063AA03
4K063BA02
4K063CA01
4K063HA03
4K063HA17
4K070AB11
4K070AC17
4K070BC04
4K070BC15
4K070BC17
4K070BD18
4K070EA14
4K070EA16
(57)【要約】
【課題】輸送系統での閉塞リスクを軽減し、設備の大型を抑制しながらも、十分なフォーミング抑制効果を有する、スラグのフォーミングの抑制方法、鎮静剤投射ノズル及び鎮静剤投射装置を提供すること。
【解決手段】精錬処理により発生したスラグ3を精錬容器(例えば、転炉1)から滓鍋2に排出する際に、鎮静剤投射ノズル41の内部で粉体を含むキャリアガスと、水とを混合させ、混合させた粉体を含むキャリアガスと、水とを鎮静剤5として滓鍋2に投射する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精錬処理により発生したスラグを精錬容器から滓鍋に排出する際に、
鎮静剤投射ノズルの内部で粉体を含むキャリアガスと、水とを混合させ、
混合させた前記粉体を含む前記キャリアガスと、前記水とを鎮静剤として前記滓鍋に投射する、スラグのフォーミング抑制方法。
【請求項2】
前記粉体は、粒径が5mm以下のスラグ紛である、請求項1に記載のスラグのフォーミング抑制方法。
【請求項3】
前記鎮静剤は、前記粉体と前記水の質量の和に対する、前記水の質量の比が、0超0.73以下である、請求項1又は2に記載のスラグのフォーミング抑制方法。
【請求項4】
前記キャリアガスは、不活性ガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載のスラグのフォーミング抑制方法。
【請求項5】
精錬処理により発生し、精錬容器から滓鍋に排出されたスラグに鎮静剤を投射する鎮静剤投射ノズルであって、
粉体を含むキャリアガスと、水とを混合させる合流部と、
混合させた前記粉体を含む前記キャリアガスと、前記水とを鎮静剤として前記滓鍋に投射する投射口と、
を備える、鎮静剤投射ノズル。
【請求項6】
前記粉体を含む前記キャリアガスと、前記水とが合流する合流点から、前記投射口までの長さである合流区間長は、1250mm以上2000mm以下である、請求項5に記載の鎮静剤投射ノズル。
【請求項7】
精錬処理により発生し、精錬容器から滓鍋に排出されたスラグに鎮静剤を投射する鎮静剤投射装置であって、
粉体を含むキャリアガスを輸送する粉体輸送管と、
水を輸送する水輸送管と、
前記粉体輸送管と前記水輸送管とに接続され、粉体を含むキャリアガスと、水とを内部で混合し、混合させた前記粉体を含む前記キャリアガスと、前記水とを鎮静剤として前記滓鍋に投射する投射口を有する鎮静剤投射ノズルと、
を備える、鎮静剤投射装置。
【請求項8】
前記鎮静剤投射ノズルに接続される前記粉体輸送管と前記水輸送管との成す角は、20°以上80°以下である、請求項7に記載の鎮静剤投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグのフォーミングの抑制方法、鎮静剤投射ノズル及び鎮静剤投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の製鋼工程では、転炉内の溶銑に対して予備処理を行う場合がある。その場合、転炉内の溶銑の上部にはスラグが発生する。このスラグは次工程の脱炭処理には不要であるため、脱炭処理前に、転炉下に配置した滓鍋にスラグを排出する中間排滓処理が行われている。この排滓処理の際には、スラグ中の酸素と炭素が反応し二酸化炭素のガスが発生する。発生した二酸化炭素のガスはスラグ中で気泡となり、フォーミング(スラグフォーミングともいう。)と呼ばれる泡立ち現象を引き起こす。スラグ中で発生した気泡は、スラグ表面で外気と接触し、固化してしまうため、気泡のまま存在し続け、フォーミングが発生するとスラグ体積が増大し、滓鍋より溢れ出してしまうことがある。滓鍋よりスラグが溢れ出してしまうと、溢れ出したスラグの除去を行わなければ、操業を継続することができず、大きな損失となる。そのため、フォーミングを発生させないよう排滓速度を調整する必要があった。
【0003】
排滓速度の調整の他、フォーミング発生抑制方法として外部から鎮静材を投入し、気泡を破壊する方法が用いられている。
特許文献1では、鎮静材として水を投射する方法が提案されている。さらに、特許文献2では水と同時に粒径5mm以上の破砕スラグ粉を投射する方法が提案されている。特許文献3では、粉体と水を事前に混合したスラリーを投射する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開番号WO2019/039326A1
【特許文献2】特開2017-31446号公報
【特許文献3】特開2018-95964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案された方法では、投射された水が1000℃程度のスラグ内部で蒸発してしまい、スラグ深さ方向への推進力を得られず、大きな抑制効果が期待できないという課題があった。
【0006】
また、特許文献2で提案された方法では、粒径5mm以下の破砕スラグ粉ではフォーミング抑制効果が得られないため。粒径5mm以上の破砕スラグ粉を選別するには粒径5mm未満の破砕スラグ粉が凝集している疑似粒子の選別除去など煩雑な工程が必要となる他、スラグ粉輸送系統での閉塞のリスクも残るといった課題があった。
さらに、特許文献3で提案された方法では、水及び粉体の貯留設備の他にスラリー調製のための設備を別途設置しなければならず、周辺設備が大型化してしまう他、輸送系統での閉塞リスクも残る。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、輸送系統での閉塞リスクを軽減し、設備の大型を抑制しながらも、十分なフォーミング抑制効果を有する、スラグフォーミングの抑制方法及び鎮静剤投射ノズルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、輸送系統での閉塞リスクを軽減し、設備の大型を抑制しながらも、十分なフォーミング抑制効果を有する、スラグのフォーミングの抑制方法、鎮静剤投射ノズル及び鎮静剤投射装置が提供される。
本発明の一態様によれば、精錬処理により発生したスラグを精錬容器から滓鍋に排出する際に、鎮静剤投射ノズルの内部で粉体を含むキャリアガスと、水とを混合させ、混合させた上記粉体を含む上記キャリアガスと、上記水とを鎮静剤として上記滓鍋に投射する、スラグのフォーミング抑制方法が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、精錬処理により発生し、精錬容器から滓鍋に排出されたスラグに鎮静剤を投射する鎮静剤投射装置であって、粉体を含むキャリアガスを輸送する粉体輸送管と、水を輸送する水輸送管と、上記粉体輸送管と上記水輸送管とに接続され、内部で粉体を含むキャリアガスと、水とを内部で混合し、混合させた上記粉体を含む上記キャリアガスと、上記水とを鎮静剤として上記滓鍋に投射する投射口を有する鎮静剤投射ノズルと、を備える、鎮静剤投射装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、輸送系統での閉塞リスクを軽減し、設備の大型を抑制しながらも、十分なフォーミング抑制効果を有する、スラグのフォーミングの抑制方法、鎮静剤投射ノズル及び鎮静剤投射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鎮静剤投射装置を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る鎮静剤投射ノズルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0013】
<スラグフォーミングの抑制方法>
本実施形態に係るスラグのフォーミング抑制方法は、精錬容器である転炉1で溶鉄2を精錬する際に適用されるものであり、具体的には、転炉で溶鉄を精錬処理した後に、精錬処理により生じたスラグを滓鍋へと排出する際に適用されるものである。
【0014】
転炉では、溶鉄2から珪素を酸化除去する脱珪処理や、燐を酸化除去する脱燐処理といった酸化反応による精錬処理が施される。この際、転炉は開口部である炉口が上側に位置する正立した状態で精錬処理が行われる(精錬処理工程)。
そして、精錬処理工程が行われた後、転炉1の炉体に溶鉄2を収容した状態で、
図1に示すように転炉1が傾動することで、比重差によって溶鉄の浴面上に浮いているスラグ3が炉口から滓鍋2へと排出される(排滓工程)。
【0015】
本実施形態の排滓工程では、スラグ3を排出し始めてから、鎮静剤投射装置4を用いて、滓鍋2内に鎮静剤5を投射する(投射工程)。なお、滓鍋2は、スラグ3が排出される前において、空の状態であってもよく、前の精錬処理によって排出されたスラグ3が収容された状態であってもよい。
【0016】
鎮静剤投射装置4は、
図2に示すように、鎮静剤投射ノズル41と、ディスペンサー42と、粉体輸送管43と、水輸送管44とを備える。
ディスペンサー42は、製鋼工程の精錬処理(脱珪処理や脱燐処理、脱炭処理など)で発生したスラグを粉状にしたスラグ粉が収納される。さらに、スラグ粉は、5mm以下の粒径であることが好ましい。スラグ粉の粒径を5mm以下とすることで、配管内でのつまりをより抑制することができる。なお、スラグ3のリサイクルを考えると、スラグ粉には、本実施形態の精錬工程の精錬処理と同様な処理によって、発生したスラグが用いられることが好ましい。
【0017】
粉体輸送管43は、ディスペンサー42から供給される粉体であるスラグ粉をキャリアガスとともに鎮静剤投射ノズル41へと送る配管である。キャリアガスとしては、スラグ粉を搬送可能なものであれば特に限定されないが、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
水輸送管44は、不図示の供給設備から供給される水を鎮静剤投射ノズル41へと送る配管である。
【0018】
鎮静剤投射ノズル41は、滓鍋2の上方に設けられる。鎮静剤投射ノズル41は、合流部411を有する。合流部411には、粉体輸送管43と水輸送管44とが接続される。合流部411では、粉体輸送管43から輸送されるスラグ紛とキャリアガス、及び水輸送管44から輸送される水44が合流する。合流部411で合流した、キャリアガス、スラグ紛及び水は、鎮静剤5として、鎮静剤投射ノズル41の投射口412から投射される。投射口412は、滓鍋2に収容されたスラグ3に鎮静剤5が投射されるように、滓鍋2に向けて設置される。なお、本実施形態では、鎮静剤投射ノズル41は、固定部413によって滓鍋2の上方の床面等に固定される。
【0019】
ここで、合流部411に接続される粉体輸送管43と水輸送管44との成す角θが小さすぎる場合には、ノズル内部で二重層流様式が形成されず、直進性を得られない虞がある。二重層流様式とは、ノズル内部で粉体を含むガスが、ノズルの径方向外方を水で囲まれた状態で輸送される状態である。一方、成す角θが大きすぎる場合には、圧力損失が大きくなり、十分な直進性を確保できない虞がある。このため、粉体輸送管43と水輸送管44との成す角θは、20°以上80°以下であることが好ましく、30°以上60°以下であることがより好ましい。なお、本実施形態では、成す角θは一例として40°となっている。粉体輸送管43と水輸送管44との成す角θを上記条件とすることで、上記条件以外の場合と比較して、合流部411で合流するキャリアガス、粉体、及び水の圧損を小さくすることができ、かつノズル内部でキャリアガスと水が二重層流様式となることで、投射後の鎮静剤5の直進性を向上させることができる。
【0020】
また、鎮静剤投射ノズル41は、合流部411の合流位置(キャリアガスによって輸送される粉体と水とが合流する位置)から投射口412までの距離である合流区間長Lは、ノズル内部で粉体を含むキャリガスと水とが二重層流様式となる長さ以上であることが好ましい。ノズル内部で鎮静剤5が二重層流様式となることで、噴射された鎮静剤5が環状噴霧流となる。ノズル内部で鎮静剤5が二重層流様式となることで、水が相対的に流速の大きいキャリアガスと接触することで水の流速が向上し、投射後の鎮静剤5の直進性が向上する。その結果、鎮静剤5がスラグに衝突する力が水のみを噴射させる場合に比べて大きくなり、より短い時間でスラグフォーミングを鎮静することができるようになる。なお、合流区間長Lが短すぎる場合、スラグ紛と水との接触区間が十分でないために、十分な鎮静効果が得られないことがある。また、合流区間長Lが長すぎる場合、圧損が大きくなり、十分な鎮静力が得られない虞がある。なお、二重層流様式となる合流区間長Lは、管径や、キャリアガス及び水の供給圧力、流量に応じて決まるものである。さらに、合流位置から投射口412までの形状は、直線状となることが好ましい。さらに、合流部から投射口412までの形状において、上記の合流区間長L以上となる直線状の部位が形成されるものであれば、湾曲した部位を有していてもよい。
例えば、合流区間長Lは、ノズルの管径が50A~80A程度で、キャリアガス、水及びスラグ粉の輸送量が一般的な製鉄所の製鋼設備で簡易に実現可能な範囲である場合において、1250mm以上2000mm以下であることが好ましい。
【0021】
投射工程では、キャリアガスの流量は、スラグ紛の搬送量に応じて設定される、粉体輸送管43内においてスラグ紛を搬送可能な量として設定される。また、投射する鎮静剤5中のスラグ紛(粉体)と水の質量の和に対するスラグの質量の比(Ws/(Ws+Ww)は、0超0.73以下であることが好ましい。この比が0.73超である場合、鎮静剤5中のキャリアガスの比率が大きくなり、投射口412から出た鎮静剤5のうち、投射方向に対して垂直に進む拡散成分が大きくなる。この結果、投射された鎮静剤5は、スラグ3表面での衝突圧が小さくなり、十分な鎮静効果が得られない可能性がある。また、キャリアガスと水の体積の和に対する水の体積の比(Vw/(Vw+Vg))は0超0.05以下であることが望ましい。この比が0.05超である場合、合流区間内での水の比率が優位になりノズル内で二重層流が形成できない可能性がある。一方、この比が0となり、ガス比率が優位となる場合、吐出後の拡散成分が増大し鎮静能力が低下する可能性がある。
【0022】
本実施形態では、鎮静剤投射装置4を用いて鎮静剤5を投射する。この際、粉体輸送管43から供給されるスラグ紛(粉体)を含むキャリアガスと、水輸送管44から供給される水とが、合流部411にて事前に混合され、鎮静剤5として投射口412から投射される。これにより、輸送系統つまり配管での閉塞リスクを軽減することができる。また、予め水とスラグを混合し、スラリー状にした状態で投射する場合と比べ、スラグと水とを混ぜ合わせるための設備スペースを省略することができ、設備の大型を抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態では、鎮静剤投射ノズル41を流れる鎮静剤5を二重層流様式とし、投射された鎮静剤5を環状噴霧流とすることで、スラグフォーミングの鎮静効果をより高めることができる。
【0024】
<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
【0025】
例えば、上記実施形態では、精錬処理工程では脱珪処理や脱燐処理が施されるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、精錬処理工程では、溶鉄2から炭素を酸化除去する脱炭処理が施されてもよい。
また、上記実施形態では、排滓工程では溶鉄2を転炉1内に収容した状態で、スラグ3を排出するとしたが本発明はかかる例に限定されない。例えば、精錬処理工程の後、溶鉄2を転炉1の出湯孔から溶鉄用の収容容器(例えば、取鍋や溶銑鍋など)へ排出し、転炉1内にスラグ3のみを収容した状態から、スラグ3を炉口11から排出する排滓工程を行ってもよい。
【0026】
さらに、上記実施形態では、精錬容器は転炉1であるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、精錬容器は、トピードや溶銑鍋などの他のものであってもよい。
さらに、上記実施形態では、スラグ粉には製鋼工程で発生するスラグが用いられるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、製銑工程などの他の精錬処理によって生じたスラグが用いられてもよい。
【0027】
さらに、上記実施形態では、鎮静剤5に用いられる粉体がスラグ紛であるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。粉体は、鎮静効果を示すものとして、水よりも比重が大きく、常温で粉状化できる物質の粉状体である物質粉であってもよい。例えば、粉体には、スラグ粉の代わりに、砂や使用済み耐火物の破砕粉、鉄粉などの他の物質粉が含まれてもよい。また、粉体としては、作業性の観点から、1400℃程度の高温でガスを発生しないものが用いられることが好ましい。さらに、粉体の性状としては、配管内での詰まりを考慮すると、上記実施形態のスラグ粉と同様な粒径とすることが好ましい。
【実施例0028】
本発明者らが行った実施例1について説明する。実施例1では、合流区間長Lを変化させた鎮静剤投射ノズル41を使用し、水及びキャリアガスのみを混合し、鎮静剤投射ノズル41から噴出させる試験を行った。実施例1では、合流区間超Lが、1000mm、1250mm、1500mm、2000mmの計4種類のノズルを使用し、試験を行った。
表1に、実施例1の結果を示す。合流区間長Lが1000mmのノズルを用いて噴射試験を行った比較例1-1の結果では、投射した水が途中落下し、水の飛距離が不十分な結果となった。これは合流部から吐出口までの長さが短いため、ノズル内部で流体形式が環状噴霧流とならず、水がガスと接触する区間が十分に確保できなかったことが原因と考えられる。また、合流区間長Lが1250mm、1500mm、2000mmのノズルを用いて噴射試験を行った実施例1-1~1-3の結果では、ノズル内部で水とガスが二重層流様式となり、環状噴霧流となったことから、吐出後の飛距離が十分に達成できた。上記の結果から上記試験の条件において、合流区間長が1250mm以上であると、ノズル内部で水とキャリアガスが環状噴霧流となり投射後の直進性が向上することが確認できた。
【0029】
次に、実施例2では、上記実施形態と同様に転炉1内にて精錬処理を行い、排滓工程において鎮静剤投射装置4を用いて、固液比を変化させた鎮静剤5(水・スラグ・キャリアガス)を滓鍋2に投射し、排滓処理に要する時間を測定した。表2に実施例2における条件と結果を示す。表2に示す結果から、合流区間長Lを長くするほど投射口412と滓鍋2の湯面までの距離が小さくなり、鎮静効果向上が見込まれる。なお、実施例2では合流区間長Lは1250mm以上且つ排滓時に傾転する転炉と干渉しない範囲である1500mm以下とした。また鎮静剤として、5mmの篩目で篩ったスラグ粉、キャリアガスとして窒素を用いた。さらに、表2に示す排滓時間は、要した時間が短い順に、◎、○、△で示す。
実施例2-1と実施例2-2とを比較すると、水のみを投射した場合と比べ、水・スラグ粉・キャリアガスを混合投射した場合、鎮静時間が0.48min短縮されていることが分かった。これは鎮静材として、水・スラグ粉・キャリアガスを投射することで、滓鍋2に排出されたスラグ3のフォーミングが抑制され、多量のスラグ3を転炉1から連続的に排出可能となったためである。
また実施例2-3より、固液比を0.4として投射を行った場合、固液比0.7で投射を行った場合に比べ鎮静時間が0.98min延長する結果となった。これは投射スラグ量が十分でなく鎮静力が弱くなり排滓時間が長くなったと考えられる。