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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090183
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】自動接続用継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/02 20060101AFI20220610BHJP
   F16L 33/16 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
F16L37/02
F16L33/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202398
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】300026203
【氏名又は名称】共栄テクニカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 好啓
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106BA02
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD05
3J106CA06
3J106CA12
3J106DA02
3J106DA08
(57)【要約】
【課題】流体圧機器の接続ポートに流体用ホースを自動で接続することが可能な自動接続用継手を提供する。
【解決手段】自動接続用継手1に、内スライダ11と、内スライダ11が先端側へスライドすると拡径する接続部12eを有する接続スリーブ12と、内スライダ11を基端側へ付勢する第一バネ13と、圧力流体により内スライダ11を先端側へスライドさせる第一圧力室と、先端から接続スリーブ12の先端部分が突出しており接続スリーブ12に対してスライド可能な外スライダ15と、外スライダ15の先端面に設けられている弾性シール部材16と、外スライダ15を先端側へ付勢している第二バネ17と、外スライダ15の基端側の外周面を覆い接続スリーブ12の基端に取付けられている外スリーブ18と、外スリーブ18に設けられ第一圧力室に圧力流体を供給するためのパイロットポート19と、を具備させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧機器における作動用の圧力流体を流通させるための孔状の接続ポートに、流体用ホースを接続するための自動接続用継手であって、
円筒状に延出しており内部を圧力流体が流通する内スライダと、
該内スライダよりも長い円筒状で軸方向の基端側に流体用ホースが接続されると共に、内部に前記内スライダが軸方向へスライド可能に挿入されており、先端側に周方向へ複数に分割されていることで該内スライダが先端側へスライドすると外径が拡径する接続部を有している接続スリーブと、
前記内スライダを基端側へ付勢している第一バネと、
前記内スライダと前記接続スリーブとの間に設けられており、圧力流体が供給されることで前記第一バネの付勢力に抗して前記内スライダを先端側へスライドさせるための第一圧力室と、
先端から前記接続スリーブの先端部分が突出するように該接続スリーブが挿入されており、該接続スリーブの先端に近い前進位置と該前進位置よりも基端側の後退位置との間で前記接続スリーブに対してスライド可能に設けられている筒状の外スライダと、
該外スライダの先端面において前記接続スリーブの外周を囲むように設けられているリング状の弾性シール部材と、
前記外スライダを前記前進位置へ付勢している第二バネと、
前記外スライダがスライド可能な状態で該外スライダの基端側の外周面を覆っており、該外スライダよりも基端側の部位で前記接続スリーブの基端に取付けられている外スリーブと、
該外スリーブに設けられており、前記第一圧力室に圧力流体を供給するためのパイロットポートと
を具備していることを特徴とする自動接続用継手。
【請求項2】
前記外スリーブと前記外スライダとの間に設けられていると共に、前記パイロットポートと連通しており、圧力流体が供給されることで前記外スライダを前記前進位置へスライドさせるための第二圧力室を、
更に具備していることを特徴とする請求項1に記載の自動接続用継手。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧機器における作動用の圧力流体を流通させるための孔状の接続ポートに、流体用ホースを接続するための自動接続用継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧等の圧力流体により動作する流体圧機器には、圧力流体を流通させるための雌ねじ孔からなる接続ポートが設けられており、その接続ポートに継手を介して流体用ホースが接続されている。
【0003】
接続ポートに流体用ホースを接続するための継手として、先端が本体から突出している開閉可能な一対のアーム部材と、本体における一対のアーム部材とは反対側の基端から突出している摺動棒と、を有し、一対のアーム部材の先端を接続ポートに挿入した状態で、作業者が手で押して摺動棒を先端側へ摺動させると、摺動棒の先端に設けられている押圧部材により一対のアーム部材が開いて、接続ポートに接続される継手が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この特許文献1の技術では、摺動棒の外周面に溝が形成されており、摺動棒を先端側へ摺動させて一対のアーム部材を開かせると、摺動棒の溝にボールが嵌ると共に、スライド可能なスリーブにより溝から抜けることを阻止された状態となり、摺動棒の摺動がロックされて、一対のアーム部材が開いた状態で保持される。そして、接続ポートから継手を取り外す時には、作業者が手でスリーブをスライドさせて溝からボールが抜けることが可能な状態にすることで摺動棒の摺動のロックを解除し、摺動棒を基端側へ摺動させることで一対のアーム部材を閉じて接続ポートから取り外すことができる。
【0005】
この特許文献1の技術によれば、継手をその軸芯周りに対して回転させなくても、簡単に流体用ホースを接続ポートに接続したり接続ポートから取り外したりすることが可能である。
【0006】
ところで、流体圧機器の製造工場では、出荷する前の試験として、製造された流体圧機器の接続ポートに流体用ホースを接続し、圧力流体を流通させて流体圧機器が確実に動作すること確認するようにしている。そして、この試験の自動化の一つとして、接続ポートへの流体用ホースの自動接続用継手が望まれていた。
【0007】
そこで、特許文献1の技術において、一対のアーム部材を開閉させるための摺動棒の摺動や、ボールによる摺動棒の摺動のロックを解除するためのスリーブのスライドを、自動で行わせるようにすることが考えられる。しかしながら、接続する時には摺動棒を摺動させ、取り外す時にはスリーブをスライドさせる必要があり、それらを別々に駆動させるようにすると継手が大型化してしまう恐れがある。
【0008】
また、溝に嵌ったボールにより摺動棒の摺動をロックするようにしているため、例えば、溝に対して上方からボールが嵌っている場合、スリーブをスライドさせてボールが抜けるようにしても、重力によりボールが勝手に上方へ抜けることはない。そのため、スリーブを自動でスライドさせるようにしても、継手の向きによってはボールによるロックが解除されない恐れがある。このようなことから、従来の技術では、流体圧機器の接続ポートに流体用ホースを自動で接続したり取り外したりすることが可能な自動接続用継手を実現させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-249278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、流体圧機器の接続ポートに流体用ホースを自動で接続することが可能な自動接続用継手の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る自動接続用継手は、
「流体圧機器における作動用の圧力流体を流通させるための孔状の接続ポートに、流体用ホースを接続するための自動接続用継手であって、
円筒状に延出しており内部を圧力流体が流通する内スライダと、
該内スライダよりも長い円筒状で軸方向の基端側に流体用ホースが接続されると共に、内部に前記内スライダが軸方向へスライド可能に挿入されており、先端側に周方向へ複数に分割されていることで該内スライダが先端側へスライドすると外径が拡径する接続部を有している接続スリーブと、
前記内スライダを基端側へ付勢している第一バネと、
前記内スライダと前記接続スリーブとの間に設けられており、圧力流体が供給されることで前記第一バネの付勢力に抗して前記内スライダを先端側へスライドさせるための第一圧力室と、
先端から前記接続スリーブの先端部分が突出するように該接続スリーブが挿入されており、該接続スリーブの先端に近い前進位置と該前進位置よりも基端側の後退位置との間で前記接続スリーブに対してスライド可能に設けられている筒状の外スライダと、
該外スライダの先端面において前記接続スリーブの外周を囲むように設けられているリング状の弾性シール部材と、
前記外スライダを前記前進位置へ付勢している第二バネと、
前記外スライダがスライド可能な状態で該外スライダの基端側の外周面を覆っており、該外スライダよりも基端側の部位で前記接続スリーブの基端に取付けられている外スリーブと、
該外スリーブに設けられており、前記第一圧力室に圧力流体を供給するためのパイロットポートと
を具備している」ことを特徴とする。
【0012】
本構成の自動接続用継手は、流体圧機器の接続ポートに流体用ホースを接続する場合、自動接続用継手の基端に流体用ホースを接続した上で、自動接続用継手の先端から突出している接続スリーブの先端(接続部)を接続ポートに挿入させると共に、外スライダの先端面を接続ポートが開口しているポート開口面に当接させた状態にする。この状態で、パイロットポートに圧力流体を供給すると、パイロットポートを介して第一圧力室に供給された圧力流体の圧力により、内スライダが第一バネの付勢力に抗して先端側へスライドする。そして、内スライダが先端側へスライドすると、接続スリーブの先端に設けられている接続部が拡径することとなり、接続部の外面が接続ポートの内面を押圧することで接続部が接続ポートに固定され、自動接続用継手を介して流体用ホースを接続ポートに接続することができる。
【0013】
一方、接続ポートから流体用ホースを取り外す場合は、パイロットポートに供給している圧力流体の圧力を低下させると、第一圧力室の圧力が低下することで、内スライダが第一バネの付勢力により基端側へスライドし、内スライダにより拡径されていた接続部が縮径できるようになる。これにより、接続ポートの内面に接続部を押圧していた力が解除されるため、この状態で自動接続用継手を基端側(接続ポートから遠ざかる方向)へ移動させると、接続部を接続ポートから抜くことができ、自動接続用継手を介して流体用ホースを接続ポートから取り外すことができる。
【0014】
このように、本構成の自動接続用継手によれば、パイロットポートに供給される圧力流体により、自動的に接続ポートに接続したり接続ポートから取り外したりすることができる。また、パイロットポートを介して第一圧力室に供給される圧力流体によって、接続ポートに対して接続したり取り外したりすることができるため、駆動にかかる構成を簡単なものとすることができ、自動接続用継手の大型化を抑制して小型の自動接続用継手を提供することが可能となる。
【0015】
また、外スライダの先端面にリング状の弾性シール部材を設けているため、接続ポートに接続した時に、ポート開口面と外スライダの先端面との間から、作動用の圧力流体が漏れることを防止することができる。また、外スライダを先端側の前進位置へ付勢している第二バネを設けているため、接続ポートに接続部を挿入する際に、外スリーブの先端面がポート開口面に勢いよく当接しても、第二バネの弾性力によって衝撃を緩和させることができ、流体圧機器や自動接続用継手が破損することはない。
【0016】
本発明に係る自動接続用継手は、上記の構成に加えて、
「前記外スリーブと前記外スライダとの間に設けられていると共に、前記パイロットポートと連通しており、圧力流体が供給されることで前記外スライダを前記前進位置へスライドさせるための第二圧力室を、
更に具備している」ことを特徴としても良い。
【0017】
ところで、ポート開口面と外スライダの先端面との間には、自動接続用継手を流通している流体圧機器の作動用の圧力流体の圧力が作用するため、その圧力流体の圧力が外スライダを前進位置へ付勢している第二バネの付勢力よりも大きいと、外スライダが第二バネの付勢力に抗してポート開口面から離れる方向へスライドしてしまい、ポート開口面と外スライダの先端面との間から作動用の圧力流体が漏れてしまう恐れがある。
【0018】
本構成によれば、パイロットポートを介して第二圧力室に圧力流体を供給すると、その圧力流体の圧力により外スライダを前進位置側へ押圧することができる。これにより、第二バネの付勢力と第二圧力室内の圧力流体の圧力とによって外スライダの先端面をポート開口面へ押し付けることができるため、作動用の圧力流体の圧力が第二バネの付勢力よりも大きくなっても、外スライダがポート開口面から離れる方向へスライドすることはなく、ポート開口面と外スライダの先端面との間から作動用の圧力流体が漏れることはない。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の効果として、流体圧機器の接続ポートに流体用ホースを自動で接続することが可能な自動接続用継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の自動接続用継手を用いた流体圧機器の試験装置を概略で示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態である自動接続用継手を軸方向へ切断して示す断面図である。
図3】(a)は流体圧機器の接続ポートに図2の自動接続用継手の接続部を挿入する前の状態を断面で示す説明図であり、(b)は(a)の状態から流体圧機器の接続ポートに自動接続用継手の接続部を挿入して自動接続用継手を接続ポート側へ押し付けている状態を断面で示す説明図であり、(c)は(b)の状態からパイロットポートに圧力流体を供給して自動接続用継手を接続ポートに接続した状態を断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態である自動接続用継手1について、図1乃至図3を参照して詳細に説明する。本実施形態の自動接続用継手1は、流体圧機器2における作動用の圧力流体(例えば、油圧を発生させる媒体としての油、圧縮空気、等)を流通させるための孔状の接続ポート3に、流体用ホース4を接続するためのものである。
【0022】
自動接続用継手1は、円筒状に延出している内スライダ11と、内スライダ11よりも長い円筒状で内部に内スライダ11が軸方向へスライド可能に挿入されている接続スリーブ12と、内スライダ11を基端側へ付勢している第一バネ13と、内スライダ11と接続スリーブ12との間に設けられており、圧力流体が供給されることで第一バネ13の付勢力に抗して内スライダ11を先端側へスライドさせるための第一圧力室14と、を備えている。
【0023】
また、自動接続用継手1は、先端から接続スリーブ12の先端部分が突出するように接続スリーブ12が挿入されており、接続スリーブ12に対して軸方向へスライド可能に設けられている筒状の外スライダ15と、外スライダ15の先端において接続スリーブ12の外周を囲むように設けられているリング状の弾性シール部材16と、外スライダ15を先端側へ付勢している第二バネ17と、外スライダ15がスライド可能な状態で外スライダ15の基端側の外周面を覆っており、外スライダ15よりも基端側の部位で接続スリーブ12の基端に取付けられている外スリーブ18と、外スリーブ18に設けられており、第一圧力室14に圧力流体を供給するためのパイロットポート19と、を備えている。
【0024】
また、自動接続用継手1は、接続スリーブ12の基端に設けられており、流体用ホース4が連結される連結板20と、外スリーブ18と外スライダ15との間に設けられていると共に、パイロットポート19と連通しており、圧力流体が供給されることで外スライダ15を先端側へスライドさせるための第二圧力室21と、を更に備えている。
【0025】
内スライダ11は、円筒状の内スライド部11aと、内スライド部11aの先端において径方向外方へ突出している円環状の内ピストン部11bと、内ピストン部11bの外周面において全周に亘って凹んでいるリング溝11cと、内ピストン部11bの先端面から軸方向へ筒状に延出しており外径が内ピストン部11bよりも小さい内延出部11dと、内延出部11dの先端から軸方向へ筒状に延出しており外周面が先端へ向かって窄まる円錐台面状に形成されている内テーパ部11eと、を有している。
【0026】
内スライダ11は、内延出部11dの外径が、内スライド部11aの外径よりも大きい。内スライダ11は、基端付近から先端まで一定の内径に形成されている。内スライダ11のリング溝11cには、内ピストン部11bと接続スリーブ12の後述するシリンダ部12dとの間を水密にシールしているOリング11fが嵌め込まれている。
【0027】
接続スリーブ12は、筒状のガイド部12aと、ガイド部12aの先端から径方向外方へ突出している円環状の隔壁部12bと、隔壁部12bを軸方向に貫通している第一連通孔12cと、隔壁部12bの先端面から軸方向へ延出している筒状のシリンダ部12dと、シリンダ部12dの先端から軸方向へ延出していると共に周方向へ複数に分割されている接続部12e、を有している。
【0028】
ガイド部12aは、内スライダ11の内スライド部11aよりも長く形成されており、先端側から内部に内スライド部11aがスライド可能に挿入されている。隔壁部12bは、外径が内スライダ11の内ピストン部11bの外径よりも大きい。シリンダ部12dは、内スライダ11における内ピストン部11bの基端から内テーパ部11eの先端までの長さよりも若干短く形成されており、内部に内スライダ11の内ピストン部11bがスライド可能に挿入されている。シリンダ部12dは、外径が隔壁部12bの外径と同じである。
【0029】
接続部12eは、内スライダ11の内テーパ部11eよりも長く形成されている。接続部12eは、シリンダ部12dの先端に近い部位から先端までの外周面に設けられており、シリンダ部12dの外径よりも若干大きい外径の接触面部12fを、有している。接続部12eは、先端面と接触面部12f(外周面)との境の角部分が、全周に亘ってC面取りされている。本実施形態では、接触面部12fの外径が、流体圧機器2の接続ポート3の内径と同じである。
【0030】
また、接続部12eは、シリンダ部12dの内径と同じ内径の基端から先端側へ向かって内径が窄まるように延出しているガイド孔部12gと、ガイド孔部12gの先端から一定の内径で先端側へ延出している直孔部12hと、直孔部12hの先端から接続部12eの先端まで内径が窄まるように延出しているテーパ孔部12iと、を有している。直孔部12hの内径は、内スライダ11の内延出部11dの外径と同じである。テーパ孔部12iは、内スライダ11の内テーパ部11eと対応する(一致する)ように形成されている。
【0031】
なお、本実施形態の接続スリーブ12は、ガイド部12aと隔壁部12bから先端側との二つの部材を組み合わせて構成されている。また、シリンダ部12dにおける軸方向の中間の部位に、複数の貫通孔12jが設けられている。
【0032】
第一バネ13は、コイルバネである。第一バネ13は、内スライダ11の内延出部11dが挿入されており、基端側が内スライダ11の内ピストン部11bに当接していると共に、先端側が接続スリーブ12のガイド孔部12gに当接している。
【0033】
第一圧力室14は、図3(c)に示すように、内スライダ11の内ピストン部11bと接続スリーブ12の隔壁部12bとの間に設けられている。
【0034】
外スライダ15は、筒状の外ピストン部15aと、外ピストン部15aの外周面において全周に亘って凹んでいるリング溝15bと、外ピストン部15aを軸方向へ貫通している第二連通孔15cと、外ピストン部15aの先端面から軸方向へ延出している筒状の外延出部15dと、外延出部15dの先端から外延出部15dよりも大きい外径で軸方向へ延出している筒状の先端当部15eと、先端当部15eの先端面において先端当部15eの軸芯と同軸上の環状に凹んでいるシール溝15fと、を有している。
【0035】
外ピストン部15aは、軸方向の長さが接続スリーブ12のガイド部12aの長さよりも短く、外径がシリンダ部12dの外径よりも大きく形成されており、内部に接続スリーブ12のガイド部12aがスライド可能に挿入されている。リング溝15bには、外ピストン部15aと外スリーブ18の後述する外シリンダ部18aとの間を水密にシールしているOリング15gが嵌め込まれている。
【0036】
外延出部15dは、外径が外ピストン部15aの外径よりも小さく、内部に接続スリーブ12の内延出部11dがスライド可能に挿入されている。先端当部15eは、内径が外延出部15dの内径と同じであり、接続スリーブ12の内延出部11dがスライド可能に挿入されている。シール溝15fは、環状の中心円の直径が、外ピストン部15aの外径よりも小さく形成されている。従って、外ピストン部15aにおける基端側を向いている端面の面積が、シール溝15fよりも内側における先端側を向いている端面の面積よりも大きい。
【0037】
なお、本実施形態の外スライダ15は、二つの部材を組み合わせて構成されている。詳しくは、外ピストン部15aにおいて、外延出部15dと一体で外延出部15dよりも内径が小さい筒状の部位と、当該筒状の部位の外周に嵌合しており外径が外延出部15dよりも大きい筒状の部材と、で構成されている。二つの部材の間は、Oリング15hにより水密にシールされている。この外ピストン部15aでは、外延出部15dと一体の部位において第二連通孔15cが形成されており、外側の筒状の部材にリング溝15bが形成されている。
【0038】
第二連通孔15cは、外ピストン部15aにおける外延出部15dの内部側の部位で貫通している。先端当部15eは、内径が外延出部15dの内径と同じである。シール溝15fは、開口部よりも底部の方が広い蟻溝である。
【0039】
弾性シール部材16は、Oリングであり、外スライダ15のシール溝15fに一部が突出するように嵌め込まれている。
【0040】
第二バネ17は、コイルバネである。第二バネ17は、外スライダ15の外延出部15dが挿入されており、基端側が外スリーブ18の先端面に当接していると共に、先端側が外スライダ15の先端当部15eに当接している。第二バネ17は、第一バネ13よりも付勢力が強く、太い線材により形成されている。
【0041】
外スリーブ18は、内周が円筒状で基端側の外周が多角柱状(ここでは六角柱状)の外シリンダ部18aと、外シリンダ部18aの基端から径方向内方へ延出している円環状の基端側壁部18bと、外シリンダ部18aの先端から径方向内法へ延出している円環状の先端側壁部18cと、を有している。
【0042】
外シリンダ部18aは、軸方向の長さが接続スリーブ12のガイド部12aの長さよりも短く、内部に外スライダ15の外ピストン部15aがスライド可能に挿入されている。基端側壁部18bは、内部に接続スリーブ12におけるガイド部12aを通過させた状態でガイド部12aに取付けられている。先端側壁部18cは、内部に外スライダ15の外延出部15dがスライド可能に挿入されている。
【0043】
なお、本実施形態の外スリーブ18は、一体に形成されている外シリンダ部18a及び先端側壁部18cと、別体に形成されている基端側壁部18bと、の二つの部材を組み合わせて構成されている。外シリンダ部18aと基端側壁部18bとの間は、Oリング18dにより水密にシールされている。
【0044】
パイロットポート19は、外スリーブ18の外シリンダ部18aにおける基端側の外周が多角柱状の部位を貫通して設けられており、内周面に雌ねじが形成されている。
【0045】
連結板20は、先端面が外スリーブ18における基端側壁部18bの基端面と当接している状態で、接続スリーブ12のガイド部12aの後端に取付けられている。連結板20は、中心において軸方向へ貫通しており、内周面に雌ねじが形成されている流体用ホース連結ポート20aを、有している。流体用ホース連結ポート20aは、接続スリーブ12のガイド部12aの内部と連通している。
【0046】
外スリーブ18の基端側壁部18bと連結板20との間は、Oリング20bにより水密にシールされている。
【0047】
第二圧力室21は、接続スリーブ12のガイド部12aと外スリーブ18の外シリンダ部18aとの間で、外スライダ15の外ピストン部15aと外スリーブ18の基端側壁部18bとの間に設けられている。
【0048】
本実施形態では、軸方向における第一圧力室14の受圧面積が、第二圧力室21の受圧面積よりも小さく形成されている。
【0049】
なお、流体用ホース連結ポート20aの部位に、自動接続用継手1が接続ポート3から取り外されている時に、流体用ホース4内の圧力流体が自動接続用継手1から漏れることを防止するための開閉弁(例えば、ボール弁)を設けても良い。
【0050】
続いて、本実施形態における自動接続用継手1の動作及び使用方法について説明する。この自動接続用継手1は、例えば、図1に示すような、流体圧機器2の試験装置30に使用される。試験装置30は、先端に把持部31aが設けられているロボットアーム31と、流体圧機器2を保持するテーブル32と、テーブル32に保持されている流体圧機器2を撮影するカメラ33と、カメラ33により撮影された映像に基づいてロボットアーム31を制御する制御装置(図示は省略)と、を備えている。テーブル32は、保持している流体圧機器2の向きを変更することができるものである。
【0051】
自動接続用継手1には、流体用ホース連結ポート20aに流体用ホース4が接続されていると共に、パイロットポート19にパイロット用ホース5が接続されている。また、流体圧機器2には、接続ポート3が複数設けられている。
【0052】
テーブル32に流体圧機器2を保持させ、接続ポート3がカメラ33の撮影範囲に入るように流体圧機器2の向きを調整する。続いて、ロボットアーム31を駆動させて、所定の収容場所に収容されている所望の自動接続用継手1に対し、その外スリーブ18の外シリンダ部18aにおける先端側の円筒状の部位を把持部31aにより把持させて、自動接続用継手1を収容場所から流体圧機器2へ移動させる。
【0053】
そして、自動接続用継手1の先端を流体圧機器2の接続ポート3へ向けると共に、自動接続用継手1の軸芯を接続ポート3の軸芯と同軸上に位置させる(図3(a)を参照)。ロボットアーム31による自動接続用継手1の位置は、カメラ33による画像解析により制御している。
【0054】
この状態の自動接続用継手1は、パイロットポート19と連通している第一圧力室14及び第二圧力室21の夫々の内部が加圧されていないため、内スライダ11が第一バネ13の付勢力により基端側へ付勢されて内ピストン部11bが接続スリーブ12の隔壁部12bに当接している。また、外スライダ15は、第二バネ17の付勢力により前進位置に位置している。外スライダ15は、前進位置にある状態では、外ピストン部15aが外スリーブ18の先端側壁部18cに当接しており、これ以上の先端側へのスライドが阻止されている。
【0055】
この状態で、ロボットアーム31により自動接続用継手1を接続ポート3側へ移動させて、自動接続用継手1の先端の接続部12eを接続ポート3に挿入させると共に、外スライダ15における先端当部15eの先端面を接続ポート3が開口しているポート開口面3aに当接させる。この際に、外スライダ15は、第二バネ17により先端側へ付勢されているため、外スライダ15がある程度の勢いでポート開口面3aに当接しても、第二バネ17の弾性力によりその衝撃を吸収させることができ、流体圧機器2や自動接続用継手1が破損することはない。
【0056】
外スライダ15の先端をポート開口面3aに当接させた後に、外スライダ15が第二バネ17の付勢力に抗して後退位置へスライドするように、ロボットアーム31により自動接続用継手1を接続ポート3側へ押し付ける(図3(b)を参照)。この状態では、先端当部15eの先端面とポート開口面3aとの間が、弾性シール部材16によって水密にシールされている。
【0057】
この状態で、圧力流体をパイロットポート19へ供給すると、パイロットポート19から第二圧力室21へ供給された圧力流体の圧力により、外スライダ15の外ピストン部15aが先端側へ押圧され、外スライダ15が前進位置へスライドする。この際に、外スライダ15の先端がポート開口面3aに当接しているため、外スライダ15に対して外スリーブ18及び接続スリーブ12が基端側(ポート開口面3aから遠ざかる方向)へ相対的にスライドすることとなる。
【0058】
外スライダ15が前進位置へスライドすると、外ピストン部15aが外スリーブ18の先端側壁部18cに当接し、先端側へのこれ以上のスライドが阻止された状態となる。この状態では、外スライダ15には、第二圧力室21内の圧力流体の圧力に加えて、第二バネ17の付勢力が先端側へ作用している。
【0059】
外スライダ15が前進位置へスライドすると、外ピストン部15aを貫通している第二連通孔15c、及び接続スリーブ12の隔壁部12bを貫通している第一連通孔12cを通して、圧力流体が第一圧力室14に供給される。そして、第一圧力室14に供給された圧力流体の圧力により、内スライダ11の内ピストン部11bが先端側へ押圧され、内スライダ11が第一バネ13の付勢力に抗して先端側へスライドする。
【0060】
内スライダ11が先端側へスライドすると、内スライダ11の先端の内テーパ部11eが、接続スリーブ12における接続部12eの内周に形成されているテーパ孔部12iに当接し、内テーパ部11eの楔作用により接続部12eが拡径する。これにより、接続部12eの外面が接続ポート3の内面を押圧することとなり、接続部12eが接続ポート3に固定される(図3(c)を参照)。
【0061】
なお、本実施形態では、パイロットポート19に供給される圧力流体の圧力は、供給開始当初は作動用の圧力流体の圧力よりも低い圧力(低圧)で供給し、内スライダ11を先端側へスライドさせる段階では、作動用の圧力流体の圧力と同じ圧力(高圧)で供給するようにしている。これにより、自動接続用継手1をゆっくりと高圧に慣らすことができる。また、最初に加圧される第二圧力室21の外ピストン部15aの受圧面積を、大きくしているため、初めに圧力流体が低圧で供給されても、外スライダ15を前進位置へスライドさせることができる。
【0062】
接続ポート3に自動接続用継手1を接続したら、パイロットポート19に供給されている圧力流体の圧力を維持した状態で、当該自動接続用継手1からロボットアーム31の把持部31aを離す。そして、ロボットアーム31の把持部31aに、次の自動接続用継手1を把持させ、上記と同様の手順で次の接続ポート3に接続し、流体圧機器2に設けられている全ての接続ポート3に自動接続用継手1を接続する。この際に、接続ポート3がカメラ33の撮影範囲外に位置している場合は、接続ポート3が撮影範囲内に入るようにテーブル32により流体圧機器2の向きを変える。
【0063】
全ての接続ポート3に自動接続用継手1を接続したら、自動接続用継手1を介して流体用ホース4から作動用の圧力流体を流体圧機器2内に流通させ、流体圧機器2の作動を確認する。この際に、作動用の圧力流体を流通させると、当該圧力流体がポート開口面3aと外スライダ15の先端面との間に進入することで、作動用の圧力流体の圧力により外スライダ15が接続ポート3から離れる方向へ押圧されることとなるが、外スライダ15の先端面における圧力が作用する弾性シール部材16よりも内側の面積を、外ピストン部15aの基端面の面積よりも小さくしているため、外スライダ15が接続ポート3から離れる方向へスライドすることはない。
【0064】
なお、本実施形態では、パイロットポート19に供給される圧力流体と、流体圧機器2を作動させるための作動用の圧力流体とは、同じ種類の流体である。また、パイロットポート19に接続されるパイロット用ホース5は、電磁弁34により流体圧機器2の作動用の圧力流体が流通する通路と連通可能に設けられており、自動接続用継手1を介して流体用ホース4に圧力流体を流通させている時には、電磁弁34を開いてパイロットポート19と接続ポート3とを連通させている。つまり、パイロットポート19に作動用の圧力流体と同じ圧力を作用させている。因みに、作動用の圧力流体としての油圧の圧力は、35MPa~50MPaである。
【0065】
接続ポート3から自動接続用継手1を取り外す場合は、ロボットアーム31の把持部31aにより自動接続用継手1の外スリーブ18を把持させた上で、パイロットポート19に供給されている圧力流体の圧力を低下させると、第二圧力室21及び第一圧力室14の圧力が低下し、内スライダ11が第一バネ13の付勢力により基端側へスライドする。これにより、接続部12eによる接続ポート3の内周面への押圧が解除される。そして、ロボットアーム31により自動接続用継手1を接続ポート3から遠ざかる方向へ移動させることにより、接続部12eが接続ポート3から抜けて、自動接続用継手1を取り外すことができる。
【0066】
このように、本実施形態の自動接続用継手1によれば、パイロットポート19に供給される圧力流体により、自動的に接続ポート3に接続したり接続ポート3から取り外したりすることができる。また、パイロットポート19を介して第一圧力室14に供給される圧力流体によって、接続ポート3に対して接続したり取り外したりすることができるため、駆動にかかる構成を簡単なものとすることができ、自動接続用継手1の大型化を抑制して小型の自動接続用継手1を提供することが可能となる。また、自動接続用継手1を小型化することが可能であるため、複数の接続ポート3が密に設けられている流体圧機器2にも対応することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、外スライダ15の先端面にリング状の弾性シール部材16を設けているため、接続ポート3に接続した時に、ポート開口面3aと外スライダ15の先端面との間から、作動用の圧力流体が漏れることを防止することができる。また、外スライダ15を先端側の前進位置へ付勢している第二バネ17を設けているため、接続ポート3に接続部12eを挿入する際に、外スリーブ18の先端面がポート開口面3aに勢いよく当接しても、第二バネ17の弾性力によって衝撃を緩和させることができ、流体圧機器2や自動接続用継手1が破損することはない。
【0068】
更に、本実施形態によれば、パイロットポート19を介して第二圧力室21に圧力流体を供給すると、その圧力流体の圧力により外スライダ15を前進位置側へ押圧することができる。これにより、第二バネ17の付勢力と第二圧力室21内の圧力流体の圧力とによって外スライダ15の先端面をポート開口面3aへ押し付けることができるため、作動用の圧力流体の圧力が第二バネ17の付勢力よりも大きくなっても、外スライダ15がポート開口面3aから離れる方向へスライドすることはなく、ポート開口面3aと外スライダ15の先端面との間から作動用の圧力流体が漏れることはない。
【0069】
また、本実施形態によれば、作動用の圧力流体が流通する内スライダ11の内周面を、一定の内径で延出させていると共に、その同軸上に接続部12e及び流体用ホース連結ポート20aを設けているため、流体圧機器2を作動させるための作動用の圧力流体の流通抵抗が低い自動接続用継手1を提供することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、内スライダ11の先端の内テーパ部11eを、接続スリーブ12における接続部12eの先端までスライドさせるようにしていると共に、内テーパ部11eの面とテーパ孔部12iの面とを接触させて、面圧により接続部12eを拡径させるようにしていため、接続部12eを強い力で接続ポート3の内周面に押し付けることができ、接続ポート3から外れ難いものとすることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、自動接続用継手1のパイロットポート19に供給される圧力流体により、自動的に接続ポート3に接続したり接続ポート3から取り外したりすることができるため、自動接続用継手1の取り扱いの自由度が大きい。従って、接続ポート3と流体用ホース4との接続を、手扱いではワンタイム処理ができるし、全自動対応で、協働型ロボットによる全自動処理も可能になる。
【0072】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0073】
例えば、上記の実施形態では、内周面の内径が一定の接続ポート3を示したが、これに限定するものではなく、内周面に雌ねじが形成されている接続ポートとしても良い。この場合、接続部12eの外周面(接触面部12f)に雄ねじを形成しても良い。
【0074】
また、上記の実施形態では、自動接続用継手1として、第二圧力室21を備えたものを示したが、これに限定するものではなく、第二圧力室を備えていないものとしても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 自動接続用継手
2 流体圧機器
3 接続ポート
4 流体用ホース
11 内スライダ
12 接続スリーブ
12e 接続部
13 第一バネ
14 第一圧力室
15 外スライダ
16 弾性シール部材
17 第二バネ
18 外スリーブ
19 パイロットポート
20 連結板
20a 流体用ホース連結ポート
21 第二圧力室

図1
図2
図3