(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090361
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220610BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220610BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220610BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20220610BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
H01L29/78 616M
H01L29/78 616A
H01L29/78 618B
H01L29/78 617K
H01L29/78 627Z
H01L21/28 301B
H01L29/58 G
H01L29/44 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202722
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
【テーマコード(参考)】
4M104
5F110
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA03
4M104AA08
4M104AA09
4M104CC01
4M104CC05
4M104DD65
4M104DD71
4M104EE03
4M104EE06
4M104EE14
4M104EE17
4M104FF08
4M104GG09
4M104GG14
4M104HH14
4M104HH15
5F110AA13
5F110AA16
5F110BB11
5F110CC02
5F110DD01
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5F110DD14
5F110DD17
5F110EE23
5F110EE30
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5F110FF02
5F110FF03
5F110FF09
5F110GG01
5F110GG02
5F110GG13
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5F110HJ13
5F110HL14
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5F110NN03
5F110NN23
5F110NN24
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5F110NN44
5F110NN46
5F110NN77
5F110NN78
5F110QQ04
5F110QQ08
5F110QQ11
(57)【要約】
【課題】駆動能力及び信頼性を向上することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態の半導体装置の製造方法は、多結晶シリコン半導体の上方に第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層の上に島状の酸化物半導体を形成し、前記酸化物半導体の上に第2絶縁層を形成し、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層を含む複数の絶縁層に、前記多結晶シリコン半導体まで貫通したコンタクトホールを形成し、前記第2絶縁層の上に金属膜を形成し、前記金属膜の上にパターニングしたレジストを形成し、前記レジストをマスクとして前記金属膜をエッチングし、前記酸化物半導体に重畳するゲート電極、前記コンタクトホールにおいて前記多結晶シリコン半導体にそれぞれ接するソース電極及びドレイン電極を形成し、前記レジストを除去することなく、前記酸化物半導体にイオン注入を行い、前記レジストを除去する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコン半導体の上方に第1絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層の上に島状の酸化物半導体を形成し、
前記酸化物半導体の上に第2絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層を含む複数の絶縁層に、前記多結晶シリコン半導体まで貫通したコンタクトホールを形成し、
前記第2絶縁層の上に金属膜を形成し、
前記金属膜の上にパターニングしたレジストを形成し、
前記レジストをマスクとして前記金属膜をエッチングし、前記酸化物半導体に重畳するゲート電極、前記コンタクトホールにおいて前記多結晶シリコン半導体にそれぞれ接するソース電極及びドレイン電極を形成し、
前記レジストを除去することなく、前記酸化物半導体にイオン注入を行い、
前記レジストを除去する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記イオン注入を行う前に、前記レジストの体積を縮小し、前記ゲート電極の上面のうち、前記ゲート電極の側面に沿った一部の上面を露出する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記イオン注入を行うことにより、前記酸化物半導体に、第1領域と、前記第1領域よりも低抵抗の第2領域と、前記第2領域よりも低抵抗の第3領域とを形成し、
前記第1領域は、前記レジスト及び前記ゲート電極に重畳し、
前記第2領域は、前記レジストから露出した前記ゲート電極に重畳し、
前記第3領域は、前記レジスト及び前記ゲート電極から露出している、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2絶縁層は、シリコン酸化物によって形成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基材と、
前記基材の上方に配置された多結晶シリコン半導体と、
前記多結晶シリコン半導体に重畳する第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の上方に配置された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上に配置された酸化物半導体と、
前記酸化物半導体を覆う第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上に配置され、前記酸化物半導体に重畳する第2ゲート電極、前記多結晶シリコン半導体に接するソース電極及びドレイン電極と、を備え、
前記酸化物半導体は、不純物を含み、
前記第2絶縁層は、前記ソース電極と重畳する第1重畳領域と、前記第2ゲート電極と重畳する第2重畳領域と、前記第1重畳領域及び前記第2重畳領域を囲む周辺領域と、を有し、
前記第1重畳領域の不純物濃度は、前記第2重畳領域の不純物濃度と同等であり、
前記周辺領域の不純物濃度は、前記第1重畳領域及び前記第2重畳領域のそれぞれの不純物濃度より高い、半導体装置。
【請求項6】
前記酸化物半導体は、第1不純物濃度の第1領域と、前記第1不純物濃度より高い第2不純物濃度の第2領域と、前記第2不純物濃度より高い第3不純物濃度の第3領域と、を有し、
前記第1領域及び前記第2領域は、前記第2ゲート電極に重畳し、
前記第3領域は、前記第2ゲート電極に重畳していない、請求項5に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置において、表示領域の画素回路に酸化物半導体を備えたトランジスタが設けられ、且つ、周辺領域の駆動回路にシリコン半導体を備えたトランジスタが設けられる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-183312号公報
【特許文献2】特開2020-129635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、駆動能力及び信頼性を向上することが可能な半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態の半導体装置の製造方法は、
多結晶シリコン半導体の上方に第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層の上に島状の酸化物半導体を形成し、前記酸化物半導体の上に第2絶縁層を形成し、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層を含む複数の絶縁層に、前記多結晶シリコン半導体まで貫通したコンタクトホールを形成し、前記第2絶縁層の上に金属膜を形成し、前記金属膜の上にパターニングしたレジストを形成し、前記レジストをマスクとして前記金属膜をエッチングし、前記酸化物半導体に重畳するゲート電極、前記コンタクトホールにおいて前記多結晶シリコン半導体にそれぞれ接するソース電極及びドレイン電極を形成し、前記レジストを除去することなく、前記酸化物半導体にイオン注入を行い、前記レジストを除去する。
【0006】
一実施形態の半導体装置は、
基材と、前記基材の上方に配置された多結晶シリコン半導体と、前記多結晶シリコン半導体に重畳する第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の上方に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に配置された酸化物半導体と、前記酸化物半導体を覆う第2絶縁層と、前記第2絶縁層の上に配置され、前記酸化物半導体に重畳する第2ゲート電極、前記多結晶シリコン半導体に接するソース電極及びドレイン電極と、を備え、前記酸化物半導体は、不純物を含み、前記第2絶縁層は、前記ソース電極と重畳する第1重畳領域と、前記第2ゲート電極と重畳する第2重畳領域と、前記第1重畳領域及び前記第2重畳領域を囲む周辺領域と、を有し、前記第1重畳領域の不純物濃度は、前記第2重畳領域の不純物濃度と同等であり、前記周辺領域の不純物濃度は、前記第1重畳領域及び前記第2重畳領域のそれぞれの不純物濃度より高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る半導体装置1の一構成例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための図である。
【
図3】
図3は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための断面図である。
【
図4】
図4は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための断面図である。
【
図5】
図5は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための断面図である。
【
図6】
図6は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための断面図である。
【
図7】
図7は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための断面図である。
【
図11】
図11は、イオン注入後の不純物の分布を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、イオン注入後の不純物の分布を模式的に示す平面図である。
【
図13】
図13は、レジストR2の体積を縮小する工程を説明するための図である。
【
図14】
図14は、イオン注入を行う工程を説明するための図である。
【
図15】
図15は、イオン注入後の不純物の分布及び酸素欠損の分布を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向または第1方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向または第3方向と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X-Y平面を見ることを平面視という。
【0011】
本実施形態に係る半導体装置1は、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、電気泳動表示装置、LED表示装置などの各種表示装置の他、静電容量式センサーや光学式センサーなどの各種センサー、その他の電子機器に適用可能である。
【0012】
図1は、本実施形態に係る半導体装置1の一構成例を示す断面図である。
半導体装置1は、基材10と、絶縁層11乃至19と、トランジスタTR1及びTR2と、素子電極30と、を備えている。
【0013】
トランジスタTR1は、半導体SC1と、ゲート電極(第1ゲート電極)GE1と、ソース電極(第1ソース電極)SE1と、ドレイン電極(第1ドレイン電極)DE1と、を備えている。半導体SC1は、例えば多結晶シリコン半導体であるが、その他のシリコン系半導体であってもよい。ゲート電極GE1は、ゲート線と電気的に接続された電極である。ソース電極SE1は、ソース線SLと電気的に接続された電極である。
【0014】
トランジスタTR2は、半導体SC2と、ゲート電極(第2ゲート電極)GE2と、ソース電極(第2ソース電極)SE2と、ドレイン電極(第2ドレイン電極)DE2と、を備えている。半導体SC2は、例えば酸化物半導体である。ゲート電極GE2は、ゲート線と電気的に接続された電極である。ソース電極SE2は、ソース線あるいは電源線などと電気的に接続された電極である。ドレイン電極DE2は、素子電極30と電気的に接続された電極である。
【0015】
基材10は、ガラス、樹脂フィルム等の絶縁性の材料によって形成されている。絶縁層11は、基材10の上に配置されている。
【0016】
遮光層LS1は、トランジスタTR1に対応して設けられ、絶縁層11の上に配置され、絶縁層12によって覆われている。遮光層LS1は、例えば金属層である。半導体SC1は、遮光層LS1の直上に位置し、絶縁層12の上に配置され、絶縁層13によって覆われている。
【0017】
ゲート電極GE1は、半導体SC1の直上に位置し、絶縁層13の上に配置され、絶縁層14によって覆われている。ゲート電極GE1は、例えば遮光層LS1と同電位である。
【0018】
ソース電極SE1及びドレイン電極DE1は、絶縁層15の上に配置され、絶縁層16によって覆われている。これらのソース電極SE1及びドレイン電極DE1は、それぞれ絶縁層13乃至15を貫通するコンタクトホールCH11及びCH12を介して半導体SC1に接している。
ソース線SLは、絶縁層16の上に配置され、絶縁層17によって覆われている。ソース線SLは、絶縁層16を貫通するコンタクトホールCH13を介してソース電極SE1に接している。
【0019】
遮光層LS2は、トランジスタTR2に対応して設けられ、絶縁層13の上に配置され、絶縁層14によって覆われている。ゲート電極GE1及び遮光層LS2は、同一層に位置し、同一材料によって形成された金属層である。半導体SC2は、遮光層LS2の直上に位置し、絶縁層14の上に配置され、絶縁層15によって覆われている。
【0020】
ゲート電極GE2は、半導体SC2の直上に位置し、絶縁層15の上に配置され、絶縁層16によって覆われている。ゲート電極GE2は、例えば遮光層LS2と同電位である。ゲート電極GE2、ソース電極SE1、及び、ドレイン電極DE1は、同一層に位置し、同一材料によって形成された金属層である。
【0021】
ソース電極SE2及びドレイン電極DE2は、絶縁層16の上に配置され、絶縁層17によって覆われている。これらのソース電極SE2及びドレイン電極DE2は、それぞれ絶縁層15及び16を貫通するコンタクトホールCH21及びCH22を介して半導体SC2に接している。ソース電極SE2、ドレイン電極DE2、及び、ソース線SLは、同一層に位置し、同一材料によって形成された金属層である。
【0022】
接続電極CN1は、絶縁層18の上に配置され、絶縁層19によって覆われている。接続電極CN1は、絶縁層17及び18を貫通するコンタクトホールCH23を介してドレイン電極DE2に接している。接続電極CN1は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成された透明電極であるが、金属層であってもよい。
【0023】
素子電極30は、絶縁層19の上に配置され、絶縁層19を貫通するコンタクトホールCH24を介して接続電極CN1に接している。素子電極30は、各種電子機器の画素電極、下部電極、アノード、あるいは、カソードなどを構成するものである。素子電極30は、例えば、ITOやIZOなどの透明導電材料によって形成された透明電極である。なお、素子電極30は、銀、アルミニウムなどの金属材料によって形成された金属電極であってもよい。また、素子電極30は、透明電極及び金属電極の積層体であってもよい。例えば、素子電極30は、透明電極、金属電極、及び、透明電極の順に積層された積層体として構成されてもよいし、3層以上の積層体として構成されてもよい。
【0024】
絶縁層11乃至17は、例えば、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸化物(SiO)などによって形成された透明な無機絶縁層である。なお、絶縁層11乃至17の各々は、単一の絶縁材料によって形成された単層体であってもよいし、複数の絶縁材料によって形成された積層体であってもよい。
絶縁層18及び19は、ポリイミドなどによって形成された透明な有機絶縁層である。
【0025】
次に、
図1に示したトランジスタTR1及びTR2の製造方法の一例について説明する。
【0026】
図2は、トランジスタTR1及びTR2の製造方法を説明するための図である。なお、
図3乃至
図10は、
図2に示した主要な工程を示す断面図である。
図3乃至
図10の断面図においては、基材10及び絶縁層11の図示を省略している。
【0027】
まず、
図3に示すように、半導体(多結晶シリコン半導体)SC1、絶縁層13、ゲート電極GE1及び遮光層LS2を形成した後に、シリコン窒化物を堆積して薄膜14Aを形成し、その後にシリコン酸化物を堆積して薄膜14Bを形成する(ステップST1)。薄膜14A及び薄膜14Bの積層体は、上記の絶縁層(第1絶縁層)14に相当する。
【0028】
続いて、絶縁層14(あるいは薄膜14B)の上に、酸化物半導体膜を形成し、この酸化物半導体膜をパターニングする。これにより、
図3に示すように、遮光層LS2の直上に、島状の半導体(酸化物半導体)SC2を形成する(ステップST2)。
【0029】
なお、酸化物半導体SC2を形成する以前に、ゲート電極GE1等をマスクとして半導体SC1に不純物をドープし、チャネル領域C1、ソース領域S1、及び、ドレイン領域D1を形成する。ドープする不純物は、例えばnチャネル型の場合にはリン(P)であり、pチャネル型の場合にはホウ素(B)である。
【0030】
図示した例はnチャネル型に相当し、半導体SC1は、ソース領域S1とチャネル領域C1との間の低抵抗領域SL1と、ドレイン領域D1とチャネル領域C1との間に低抵抗領域DL1と、を有している。
低抵抗領域SL1及びDL1は、チャネル領域C1と比較して、不純物濃度が高く、低抵抗である。ソース領域S1及びドレイン領域D1は、低抵抗領域SL1及びDL1と比較して、不純物濃度が高く、低抵抗である。本明細書における不純物濃度とは、単位体積当たりの不純物数として表すことができる。
【0031】
続いて、
図4に示すように、絶縁層14及び半導体SC2の上に、シリコン酸化物を堆積して、絶縁層(第2絶縁層)15を形成する(ステップST3)。これにより、半導体SC2は、シリコン酸化物である薄膜14Bと絶縁層15との間に位置することになる。
【0032】
続いて、
図5に示すように、絶縁層15の上にパターニングしたレジストR1を形成し、レジストR1をマスクとして、絶縁層13乃至15をエッチングし、絶縁層13乃至15を半導体SC1まで貫通したコンタクトホールCH11及びCH12を形成する(ステップST4)。コンタクトホールCH11においてはドレイン領域D1の一部が露出し、コンタクトホールCH12においてはソース領域S1の一部が露出する。
なお、この段階では、半導体SC2まで貫通するコンタクトホールは形成されない。つまり、半導体SC2に重畳する領域の絶縁層15は、レジストR1によって覆われている。コンタクトホールCH11及びCH12を形成した後に、レジストR1を除去する。
【0033】
続いて、
図6に示すように、絶縁層15の上に、金属膜Mを形成する(ステップST5)。金属膜Mは、コンタクトホールCH11においてドレイン領域D1に接し、また、コンタクトホールCH12においてソース領域S1に接する。
【0034】
続いて、
図7に示すように、金属膜Mの上に、所望の形状にパターニングしたレジストR2を形成する(ステップST6)。レジストR2は、金属膜Mのうち、ソース電極SE1、ドレイン電極DE1、ゲート電極GE2等を形成すべき領域に重なっている。また、コンタクトホールCH11及びCH12においては、レジストR2は、金属膜Mに重なっている。
【0035】
続いて、
図8に示すように、レジストR2をマスクとして金属膜Mをエッチングし、コンタクトホールCH12においてソース領域S1に接したソース電極SE1、コンタクトホールCH11においてドレイン領域D1に接したドレイン電極DE1、半導体SC2に重畳するゲート電極GE2などを形成する(ステップST7)。金属膜Mをエッチングすることで、金属膜Mが除去された領域では、絶縁層15が露出する。
【0036】
続いて、
図9に示すように、レジストR2を除去することなく、半導体SC2にイオン注入を行う(ステップST8)。つまり、イオン注入は、それぞれレジストR2が積層された状態のソース電極SE1、ドレイン電極DE1、ゲート電極GE2をマスクとして行う。一例では、イオン注入により不純物としてホウ素(B)を半導体SC2にドープする。なお、ホウ素の代わりに、リン(P)やアルゴン(Ar)を半導体SC2にドープしてもよい。
【0037】
これにより、半導体SC2には、ほとんど不純物がドープされないチャネル領域C2と、不純物がドープされたソース領域S2及びドレイン領域D2とがそれぞれ形成される。また、図示した例では、チャネル領域C2とソース領域S2との間に低抵抗領域SL2が形成され、チャネル領域C2とドレイン領域D2との間に低抵抗領域DL2が形成される。
【0038】
続いて、
図10に示すように、レジストR2を除去する(ステップST9)。その後、絶縁層16を形成し、絶縁層15及び16を貫通するコンタクトホールCH21及びCH22を形成し、ソース電極SE2及びドレイン電極DE2を形成する。これにより、トランジスタTR1及びTR2を備えた半導体装置1が製造される。
【0039】
以上説明したように、多結晶シリコン半導体SC1を形成した後に、酸化物半導体SC2を形成する過程において、レジストR2が積層された状態のソース電極SE1、ドレイン電極DE1、ゲート電極GE2をマスクとして酸化物半導体SC2にイオン注入を行う。このため、レジストR2を除去した後にイオン注入を行う場合と比較して、ソース電極SE1及びドレイン電極DE1を介して多結晶シリコン半導体SC1へのイオン注入が抑制される。これにより、多結晶シリコン半導体SC1とソース電極SE1とのコンタクト抵抗の増大、及び、多結晶シリコン半導体SC1とドレイン電極DE1とのコンタクト抵抗の増大が抑制される。したがって、トランジスタの駆動能力を向上させることが可能となる。
【0040】
また、多結晶シリコン半導体SC1への不所望なイオン注入を抑制するための別途の工程が不要であり、製造コストの増加が抑制される。
【0041】
なお、ソース電極SE1及びドレイン電極DE1の膜厚を増大することで、不所望なイオン注入が抑制されるが、ゲート電極GE2もソース電極SE1と同時に形成されるため、ゲート電極GE2の膜厚も増大する。これらの電極の膜厚が増大すると、これらの電極の後に形成される絶縁層が電極のエッジ部分で途切れる絶縁不良や、これらの電極の後に形成される他の導電層(電極及び配線)とのショートや断線等の不良を招くおそれがあり、望ましくない。
【0042】
図11は、イオン注入後の不純物の分布を模式的に示す断面図である。図中の『B』は、注入される不純物であるホウ素(B)を意味するものである。
【0043】
レジストR2をマスクとするエッチングによって形成されたゲート電極GE2では、レジストR2に接する上面GU2の幅が絶縁層15に接する底面GB2の幅より小さい。また、側面GS2は斜面であり、底面GB2と側面GS2とのなす角度θは鋭角である。一例では、角度θは60°程度である。
【0044】
半導体SC2において、レジストR2及びゲート電極GE2に重畳する領域がチャネル領域(第1領域)C2に相当し、レジストR2から露出しゲート電極GE2に重畳する領域が低抵抗領域(第2領域)DL2及びSL2に相当し、レジストR2及びゲート電極GE2から露出した領域がソース領域(第3領域)S2及びドレイン領域(第3領域)D2に相当する。つまり、ソース領域(第3領域)S2及びドレイン領域(第3領域)D2は、ゲート電極GE2には重畳していない。
【0045】
低抵抗領域SL2及びDL2は、チャネル領域C2と比較して、不純物濃度が高く、低抵抗である。ソース領域S2及びドレイン領域D2は、低抵抗領域SL2及びDL2と比較して、不純物濃度が高く、低抵抗である。なお、酸化物半導体について、不純物濃度が高いということは、単位体積当たりの酸素欠損数が多い、あるいは、単位体積当たりの結晶欠陥数が多いことを意味するものである。
【0046】
図示したように、チャネル領域C2に含まれる不純物は極めて少なく、また、絶縁層15のうち、チャネル領域C2とゲート電極GE2との間の領域に含まれる不純物も極めて少ない。低抵抗領域SL2に含まれる不純物は、チャネル領域C2に含まれる不純物より多いが、ソース領域S2に含まれる不純物より少ない。また、低抵抗領域DL2に含まれる不純物は、チャネル領域C2に含まれる不純物より多いが、ドレイン領域D2に含まれる不純物より少ない。
【0047】
図12は、イオン注入後の不純物の分布を模式的に示す平面図である。
絶縁層15は、ソース電極SE1と重畳する第1重畳領域151と、ゲート電極GE2と重畳する第2重畳領域152と、第1重畳領域151及び第2重畳領域152を囲む周辺領域153と、を有している。第1重畳領域151は、コンタクトホールCH12を囲む枠状の領域である。
【0048】
イオン注入の際、ソース電極SE1及びゲート電極GE2の上にはいずれもレジストR2が積層されていたため、第1重畳領域151の不純物濃度は、第2重畳領域152の不純物濃度と同等である。なお、絶縁層15のうち、ドレイン電極DE1と重畳する領域における不純物濃度も、第1重畳領域151の不純物濃度と同等である。
【0049】
一方で、イオン注入の際、レジストR2から露出していた周辺領域153の不純物濃度は、第1重畳領域151及び第2重畳領域152のそれぞれの不純物濃度より高い。上記の製造方法を適用した場合、絶縁層15には、図示したような不純物の分布が形成される。また、絶縁層14についても絶縁層15と同様の不純物の分布が形成される。このように不純物濃度の分布が形成されるため、チャネルにかかる電界が緩和されトランジスタの信頼性が向上する。
【0050】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例について説明する。ここで説明する変形例は、
図2に示したステップST7の金属膜Mのエッチングの後であって、且つ、ステップST8のイオン注入の前に、レジストR2の体積を縮小する工程(ステップST10)を追加するものである。
【0051】
図13は、レジストR2の体積を縮小する工程を説明するための図である。
レジストR2の体積を縮小する手法として、例えば、アッシング処理が適用可能である。レジストR2をマスクとして金属膜Mをエッチングした後に、アッシング処理を行うことにより、レジストR2の体積が縮小する。なお、アッシング処理の代わりに、金属膜Mのドライエッチング中に、酸素や窒素などの導入量を増やし、レジストR2と金属膜Mとの選択比を下げることで、レジストR2の体積を縮小してもよい。
【0052】
これにより、レジストR2のエッジが後退し、ゲート電極GE2の上面GU2のうち、側面GS2に沿った一部の上面GU21がレジストR2から露出する。露出する上面GU21の幅は、アッシング条件によって調整することができる。
【0053】
図14は、イオン注入を行う工程を説明するための図である。
図13を参照して説明したレジストR2の体積を縮小する工程の後に、レジストR2を除去することなく、半導体SC2にイオン注入を行う。つまり、イオン注入は、レジストR2が積層された状態のゲート電極GE2をマスクとして行う。
【0054】
これにより、半導体SC2には、ほとんど不純物がドープされないチャネル領域C2と、不純物がドープされたソース領域S2及びドレイン領域D2と、チャネル領域C2とソース領域S2との間に低抵抗領域SL2と、チャネル領域C2とドレイン領域D2との間に低抵抗領域DL2とがそれぞれ形成される。
【0055】
図15は、イオン注入後の不純物の分布及び酸素欠損の分布を模式的に示す断面図である。図中の左側の断面における『B』は、注入される不純物であるホウ素(B)を意味するものであり、図中の右側の断面における白丸は、不純物によって生じた酸素欠損を模式的に示すものである。
【0056】
半導体SC2において、レジストR2及びゲート電極GE2に重畳する領域がチャネル領域(第1領域)C2に相当し、レジストR2から露出しゲート電極GE2に重畳する領域が低抵抗領域(第2領域)DL2及びSL2に相当し、レジストR2及びゲート電極GE2から露出した領域がソース領域(第3領域)S2及びドレイン領域(第3領域)D2に相当する。
【0057】
上記の通り、レジストR2から露出した上面GU21の幅は、アッシング条件によって調整することができる。このため、低抵抗領域DL2及びSL2の幅も、アッシング条件によって自在に調整することができる。
【0058】
図の左側の断面に示すように、低抵抗領域SL2及びDL2は、チャネル領域C2と比較して、不純物濃度が高く、低抵抗である。ソース領域S2及びドレイン領域D2は、低抵抗領域SL2及びDL2と比較して、不純物濃度が高く、低抵抗である。
また、他の観点では、図の右側の断面に示すように、低抵抗領域SL2及びDL2は、チャネル領域C2と比較して、酸素欠損数が多く、低抵抗である。ソース領域S2及びドレイン領域D2は、低抵抗領域SL2及びDL2と比較して、酸素欠損数が多く、低抵抗である。
【0059】
このように、トランジスタTR2を構成する半導体SC2は、チャネル領域C2とソース領域S2との間の低抵抗領域SL2と、チャネル領域C2とドレイン領域D2との間の低抵抗領域DL2とを有している。このため、ソース-ドレイン間に印加されうる高電圧に関して、高い耐電圧特性を得ることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、駆動能力及び信頼性を向上することが可能な半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態として説明した半導体装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0062】
1…半導体装置 14…絶縁層(第1絶縁層) 15…絶縁層(第2絶縁層) 151…第1重畳領域 152…第2重畳領域 153…周辺領域
TR1…トランジスタ GE1…ゲート電極(第1ゲート電極) SE1…ソース電極(第1ソース電極) DE1…ドレイン電極(第1ドレイン電極)
SC1…半導体(多結晶シリコン半導体) C1…チャネル領域 SL1、DL1…低抵抗領域 S1…ソース領域 D1…ドレイン領域
TR2…トランジスタ GE2…ゲート電極(第2ゲート電極) SE2…ソース電極(第2ソース電極) DE2…ドレイン電極(第2ドレイン電極)
SC2…半導体(酸化物半導体) C2…チャネル領域 SL2、DL2…低抵抗領域 S2…ソース領域 D2…ドレイン領域