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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090682
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220613BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220613BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/898
A61K8/81
A61K8/84
A61K8/73
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203121
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000147213
【氏名又は名称】株式会社成和化成
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正人
(72)【発明者】
【氏名】土井 美沙季
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC212
4C083AC342
4C083AD022
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD372
4C083BB04
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD14
4C083DD27
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】 保存中において凝集や沈殿がなく、また、経時的な粘度変化が少ない、紫外線吸収剤内包済み微小カプセルを含有する皮膚外用剤を提供する
【解決手段】 シリル化ペプチド/シラン化合物共重合体、又は、シリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体を壁膜とし紫外線吸収剤を内包する内包済み微小カプセル、及び、アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物、ビスステアリルPEG/PPG-8/6(SMDI/PEG-400)コポリマー、キサンタンガムから選ばれる水性増粘剤を含有させて皮膚外用剤を構成する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記の一般式(Ia)、(Ib)又は(Ic)で表される構造単位U:
【化1】
[式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。]、
及び下記の一般式(Id)又は(Ie)で表される構造単位W:
【化2】
[式中、Rは、炭素数1~3のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ同一又は異なっていてもよく、AはSiとNを結合する2価の基であって、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、*-(CHOCHCH(OH)CH-及び*-(CHOCOCHCH-(*は、Siと結合する側を表す)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、Eは数平均分子量100~50000のポリペプチド又はαアミノ酸から1つの1級アミノ基を除いた残基を表す]を有する共重合体であるシリル化ペプチド/シラン化合物共重合体又はシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体を壁膜とし、紫外線吸収剤を内包する内包済み微小カプセル、
(B)アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物、ビスステアリルPEG/PPG-8/6(SMDI/PEG-400)コポリマー、キサンタンガムから選ばれる水性増粘剤、を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
アクリルアミド系化合物が、ポリアクリルアミド、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13から選ばれる請求項1記載の皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れた紫外線吸収剤内包済み微小カプセル配合皮膚外用剤に関する。より詳しくは、(A)シリル化ペプチドとシラン化合物との共重合体又はシリル化アミノ酸とシラン化合物との共重合体を壁材とし紫外線吸収剤を内包する微小カプセルと、(B)特定の水性増粘剤を組み合わせて配合することで、保存中の経時的な粘度変化や微小カプセルの凝集、沈殿が抑制された皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンは、熱的・機械的に安定である、耐光性を有する、生体不活性であるなどの優れた特性を有することから、広い分野で利用されている。マイクロカプセルやナノカプセルなどの微小カプセルの分野においても、オルガノポリシロキサンやそれに類する化合物を壁材として用いた微小カプセルが製造されており、本発明者らもシリル化ペプチドとシラン化合物の共重合体を壁材に用いた紫外線吸収剤内包済み微小カプセルを、優れた紫外線防御剤として開発した(特許文献1)。
【0003】
さらには、内包物の滲み出しが少なく、壁材に由来するにおいがほとんどなく、広いpH安定性を有し、化粧品に配合した際には共存物と会合することなく安定性に優れ、しかも内包物の活性が十分に発揮できる内包済み微小カプセルとして、シリル化アミノ酸とシラン化合物の共重合体を壁材に用いた紫外線吸収剤内包済み微小カプセルを開発し、当該微小カプセルを配合した化粧料についても開発している(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これらの紫外線吸収剤内包済み微小カプセルを皮膚外用剤に含有させた場合には、その剤形によっては保存中に経時的に微小カプセルが凝集しその凝集体が沈殿するといった、微小カプセルの分散性を保持することが困難な場合があった。また、分散性を保持するために、増粘剤を含有させた場合であっても、経時的な粘度の上昇や低下が起こり、保存安定性を損なうおそれがあったり、増粘剤の種類によっては、肌に適用した場合に、べたつきのなさや肌なじみのよさといった使用感が低下したりする場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-221459号公報
【特許文献2】特開2017-218392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紫外線吸収剤内包済み微小カプセルが均一に分散した皮膚外用剤であって、保存中においても当該微小カプセルが凝集したりその凝集体が沈殿したりするおそれがなく、また、経時的な粘度変化が少ない紫外線防止用皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討した結果、ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシリル化ペプチド又はシリル化アミノ酸の1種以上と、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が2個以上生じるシラン化合物の1種以上とを水溶液中で縮重合させて得られるシリル化ペプチド/シラン化合物共重合体又はシリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体を壁膜とし紫外線吸収剤を内包した紫外線吸収剤内包済み微小カプセルと、特定の水性増粘剤を組み合わせて配合することにより、保存中において上記微小カプセルの凝集や沈殿が抑制され、かつ、経時的な粘度変化が少ない優れた皮膚外用剤となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、前記課題は、以下に示す構成の皮膚外用剤により解決される。
【0008】
本発明は、その第1として、(A)下記の一般式(Ia)、(Ib)又は(Ic)で表される構造単位U:
【化1】
[式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ同一又は異なっていてもよい。]、
及び下記の一般式(Id)又は(Ie)で表される構造単位W:
【化2】
[式中、Rは、炭素数1~3のアルキル基を表し、各Rはそれぞれ同一又は異なっていてもよく、AはSiとNを結合する2価の基であって、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、*-(CHOCHCH(OH)CH-及び*-(CHOCOCHCH-(*は、Siと結合する側を表す)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、Eは数平均分子量100~50000のポリペプチド又はαアミノ酸から1つの1級アミノ基を除いた残基を表す]を有する共重合体であるシリル化ペプチド/シラン化合物共重合体、又は、シリル化アミノ酸/シラン化合物共重合体を壁膜とし紫外線吸収剤を内包する内包済み微小カプセル、及び(B)アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物、ビスステアリルPEG/PPG-8/6(SMDI/PEG-400)コポリマー、キサンタンガムから選ばれる水性増粘剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤を提供する。
【0009】
本発明の第2は、前記本発明の第1の皮膚外用剤であって、アクリルアミド系化合物が、ポリアクリルアミド、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13から選ばれることを特徴とする皮膚外用剤である。アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物のアクリルアミド系化合物が、これらの特定のアクリルアミド系化合物である場合には、本発明の皮膚外用剤の紫外線吸収剤内包済み微小カプセルの分散性を保持する効果や、保存中の粘度変化を抑制する効果という点で優れていることから、本発明の第2は、この好ましい様態に該当するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、紫外線吸収剤内包済み微小カプセルを含有する紫外線防止用皮膚外用剤であり、当該カプセルが製剤中に均一に分散し、保存中においても凝集や沈殿が起きにくい。また、経時的な粘度変化が抑制され、皮膚外用剤の剤形の安定性を保持される点で優れている。そして、肌に適用した場合には、優れた紫外線防御効果を示しつつ、べたつきの低さ、肌なじみのよさといった好ましい使用感を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚外用剤を構成する成分(A)紫外線吸収剤内包済み微小カプセル、(B)水性増粘剤について、さらには、本発明の皮膚外用剤の形態について、以下具体的に説明する。
【0012】
[紫外線吸収剤内包済み微小カプセル]
本発明の皮膚外用剤に配合される(A)成分である紫外線吸収剤内包済み微小カプセルとは、シリル化ペプチドとシラン化合物の共重合体を壁材としたカプセル又はシリル化アミノ酸とシラン化合物の共重合体を壁材としたカプセルに紫外線吸収剤を内包した紫外線防止効果を有する微小カプセルであり、これらの微小カプセルは、前記特許文献1又は特許文献2に記載の方法で製造することができるが、具体的に示すと下記の通りである。
【0013】
シリル化ペプチドとシラン化合物の共重合体を壁材とした紫外線吸収剤内包済み微小カプセルは下記一般式(III)
【化3】
[式中、R11 は水酸基又は炭素数1~3のアルキル基を表し、A1は結合手で、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、*-(CHOCHCH(OH)CH-及び*-(CHOCOCHCH-(*は、Siと結合する側を表す)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表す。]で表されるシリル基が結合したシリル化ペプチドと、次の一般式(IV):
21mSi(OH)nY(4-n-m) (IV)
[式中、R21は炭素数1~20のアルキル基又はフェニル基を表し、mは0から3の整数で、m個のR21は全て同じでもよく、異なっていてもよい。nは0から4の整数で、m+n≦4であり、(4-n-m)個のYは炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン基又は水素原子を表す。]で表されるシラン化合物とを、水性物質からなる連続相中に内包物となる紫外線吸収剤が分散している分散液中で共縮重合することで製造することができる。
【0014】
シリル化ペプチドは、例えば、特開平8-59424又は特開平8-67608号公報に記載の製造方法により製造できる。具体的には、先ず、ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシランカップリング剤を生成する。生成したケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシランカップリング剤を、pH9~11の塩基性下、加温攪拌しているペプチド水溶液に滴下し、両者を接触させることでペプチドのアミノ基にシランカップリング剤が結合し、前記一般式(III)に表したようなケイ素原子に水酸基が2個以上有するシリル官能基が結合したペプチドが得られる。
【0015】
ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシランカップリング剤は、例えばケイ素原子に直結するアルコキシ基を有するシランカップリング剤を、酸性又は塩基性の水溶液中で、30~50℃で5~20分程度攪拌して、ケイ素原子に直結するアルコキシ基を水酸基に変換して生成することができる。しかし、シランカップリング剤とペプチドを反応させるpH9~11の範囲の溶液にケイ素原子に直結するアルコキシ基を有するシランカップリング剤を滴下すると、アルコキシ基は加水分解されて水酸基に変わる。すなわち、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を予め加水分解しておく必要はなく、溶液のpHを9~11にしたペプチド水溶液にアルコキシ基を有するシランカップリング剤を直接添加することで行うことができる。
【0016】
シリル化ペプチドとしては、具体的には、N-〔2-ヒドロキシ-3-(3’-トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解タンパク、N-〔2-ヒドロキシ-3-(3’-ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解タンパク、N-(3-トリヒドロキシシリル)プロピル加水分解タンパク、N-(3-ジヒドロキシメチルシリル)プロピル加水分解タンパクなどが挙げられる。シリル化ペプチドの製造に用いるペプチドとしては化粧品に用いられるものなら特に制限はないが、加水分解タンパクが好ましい。加水分解タンパクは、タンパク質を酸、アルカリ、酵素、又はそれらの併用によって部分加水分解することで得られるペプチドであり、このタンパク源としては、動物性タンパク質、植物性タンパク質、及び微生物由来のタンパク質などが挙げられるが、動物性タンパク質としては、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、シルクタンパク(フィブロインもしくはセリシン)、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、プロタミン、鶏などの卵黄タンパク質や卵白タンパク質などを挙げることができ、植物性タンパク質としては、大豆、小麦、米(米糠)、ゴマ、エンドウ、トウモロコシ、イモ類などに含まれるタンパク質を挙げることができる。また、微生物由来のタンパク質としては、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌、ビール酵母や清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク質、キノコ類(担子菌)やクロレラより分離したタンパク質、海藻由来のスピルリナタンパク質などを挙げることができるが、これに限られるものではない。さらに、加水分解タンパクの数平均分子量は、100~50000、特に200~5000が好ましい。
【0017】
工業的に入手しやすいといった観点からは、紫外線吸収剤内包済み微小カプセルの壁材を構成するシリル化ペプチド/シラン化合物共重合体のシリル化ペプチドとしては、シリル化加水分解シルクタンパクが好ましい。
【0018】
シリル化アミノ酸は、特開2017-132713号公報や特開2017-218392号公報に記載の製造方法により製造できる。具体的には、先ず、ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシランカップリング剤を生成する。生成したケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシランカップリング剤を、pH9~11の塩基性下、加温攪拌しているαアミノ酸水溶液に滴下し、両者を接触させることでαアミノ酸のアミノ基にシランカップリング剤が結合し、前記一般式(III)に表したようなケイ素原子に水酸基が2個以上有するシリル官能基が結合したアミノ酸が得られる。αアミノ基以外の他のアミノ基も有するαアミノ酸(塩基性アミノ酸、例えばリジン)の場合、シランカップリング剤と反応するアミノ基は、αアミノ基又は前記他のアミノ基のいずれでもよい。
【0019】
ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシランカップリング剤は、例えばケイ素原子に直結するアルコキシ基を有するシランカップリング剤を、酸性又は塩基性の水溶液中で、30~50℃で5~20分程度攪拌して、ケイ素原子に直結するアルコキシ基を水酸基に変換して生成することができる。しかし、シランカップリング剤とアミノ酸を反応させるpH9~11の範囲の溶液にケイ素原子に直結するアルコキシ基を有するシランカップリング剤を滴下すると、アルコキシ基は加水分解されて水酸基に変わる。すなわち、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を予め加水分解しておく必要はなく、溶液のpHを9~11にしたアミノ酸水溶液にアルコキシ基を有するシランカップリング剤を直接添加することで行うことができる。
【0020】
シリル化アミノ酸としては、具体的には、N-〔2-ヒドロキシ-3-(3’-トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピルアミノ酸、N-〔2-ヒドロキシ-3-(3’-ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ〕プロピルアミノ酸、N-(3-トリヒドロキシシリル)プロピルアミノ酸、N-(3-ジヒドロキシメチルシリル)プロピルアミノ酸などが挙げられる。シリル化アミノ酸の製造に用いるαアミノ酸は、化粧品に用いられるものなら特に制限はない。例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミンなどの中性アミノ酸、アルギニン、リシン、ヒスチジン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸のいずれも用いることができる。
【0021】
シリル化アミノ酸を構成するαアミノ酸としては、親水性のアミノ酸が好ましく、従って、シリル化アミノ酸としては疎水性部と親水性部の両方を有しているものが好ましい。ここで親水性アミノ酸とは、25℃での水に対する溶解度が10%以上のものをいい、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、セリン、プロリンなどが挙げられる。親水性のアミノ酸の中でも、電荷を有しない中性アミノ酸を用いると、分散相への取り込みがよく、安定性により優れたより強固なカプセルが得られるためより好ましい。すなわち、中性アミノ酸のセリン、グリシン、アラニン、プロリンなどがより好ましい。
【0022】
反応に用いるαアミノ酸は、1種類のアミノ酸でも2種類以上のアミノ酸の混合物でもよい。ただし、アミノ酸によりシランカップリング剤との反応性が相違する場合があるため、アミノ酸混合物の場合、カプセル壁膜となるシリル化アミノ酸生成の反応率の低下につながる。そのため、シリル化アミノ酸の製造にあたっては、1種類のアミノ酸を用いてシリル化し、微小カプセルを調製する際に混合するのが望ましい。
【0023】
工業的に入手しやすいといった観点からは、紫外線吸収剤内包済み微小カプセルの壁材を構成するシリル化アミノ酸-シラン化合物共重合体のシリル化アミノ酸としては、シリル化加水分解セリンが好ましい。
【0024】
シリル化ペプチド又はシリル化アミノ酸と共重合させるシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどが挙げられる。
【0025】
シリル化ペプチドとシラン化合物の共重合体を壁材とした紫外線吸収剤内包済み微小カプセルは特許文献1や特許文献2に記載されている方法により製造することができる。具体的には、シリル化ペプチド又はシリル化アミノ酸の水溶液をpH1~5、好ましくはpH2~4に調整し、-5℃~90℃、好ましくは5℃~75℃、より好ましくは40~60℃の範囲で、100~400rpm、好ましくは200~300rpmで攪拌しながら、一般式(IV)で表されるシラン化合物を添加し、その添加終了後、さらに40~60℃で攪拌を続けて反応させた後、pHを約5~7に調整することによりプレポリマーを得る。なお、pH調整に用いられる酸剤としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸が、アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられる。
【0026】
次に、上記で調製したプレポリマーを含む分散液を、500~700rpm、好ましくは約550~650rpmで攪拌しながら、30~70℃、好ましくは45~55℃で、内包する芯物質となる紫外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を液状の油性物質に溶解した溶液を30分~3時間かけて添加する。添加終了後、この分散液をホモミキサーで、5,000~15,000rpm、好ましく8,000~12,000rpmでさらに2~5時間攪拌を続けて乳化を十分に行い、壁膜を形成させることができる。
【0027】
上記のようにして内包済み微小カプセルを得ることができるが、壁膜となっているシラン化合物縮合体には水酸基が残っている可能性があり、水酸基が残っている場合、カプセル表面にある水酸基同士が結合してカプセルが凝集し、沈殿を生じる恐れがある。そのため、上記のようにして得られた内包済み微小カプセルは、凝集防止のためのカプセルの表面処理を行うのが好ましい。
【0028】
カプセルの壁膜硬化処理や凝集防止処理などの表面処理は、あらかじめ加水分解して水酸基を生じさせた表面処理用シラン化合物をカプセルを含む分散液に添加するか、カプセルを含む分散液を、表面処理に用いるシラン化合物が加水分解するpHに調整し、その中に当該シラン化合物を添加することで行うことが出来る。すなわち、カプセルを含む分散溶液をpH2~4に調整し、好ましくは40℃~75℃の範囲で、300~800rpmで攪拌しながら、当該シラン化合物を添加することで行われる。添加終了後、さらに2~5時間攪拌を続けて充分に反応させる。
【0029】
表面処理用シラン化合物としては 、例えば、トリメチルシリルクロライド(トリメチルクロロシラン)、トリエチルシリルクロライド(トリエチルクロロシラン)、t-ブチルジメチルシリルクロライド(t-ブチルジメチルクロロシラン)、トリイソプロピルシリルクロライド(トリイソプロピルクロロシラン)、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどを用いることができる。
【0030】
上記のシラン化合物の構成モノマーと、シリル化ペプチド又はシリル化アミノ酸を共重合させてシリル化ペプチドとシラン化合物の共重合体又はシリル化アミノ酸とシラン化合物の共重合体を壁材とする紫外線吸収剤内包微小カプセルを製造する場合、紫外線吸収剤としては1種又は2種以上を混合したものを用いてもよい。紫外線吸収剤は微小カプセル全質量に対して0.01~99質量%の範囲で内包させることができるが、微小カプセルの調製のしやすさや、調製した微小カプセルの紫外線防御効果を考慮すると、紫外線吸収剤の内包率は微小カプセル全質量の80~95質量%が好ましい。すなわち、内包させる紫外線吸収剤の量が少ない場合は微小カプセルに内包された紫外線防御剤の紫外線防御効果が低くなるため、紫外線防御目的で化粧料に配合する場合には多量に配合しなければならず、化粧料として使用感を損なわせるおそれがある。一方、紫外線吸収剤の内包率を極端に上げると、微小カプセル全量に占める壁材部分の割合が減少し、微小カプセルの安定性が減少する恐れがある。
【0031】
前記微小カプセルに内包される紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン-スルホン酸ナトリウム、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等のパラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシケイヒ酸エチル、パラメトキシケイヒ酸イソプロピル、パラメトキシケイヒ酸-2-エチルヘキシル(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル)、パラメトキシケイヒ酸ナトリウム、パラメトキシケイヒ酸カリウム、ジパラメトキシケイヒ酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等のメトキシケイヒ酸誘導体、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ミリスチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸誘導体、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、アントラニル酸メチル、オクトクリレン(2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸-2-エチルヘキシル)、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシル(ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル)、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及びオクチルトリアゾン等が挙げられる。その中でも、パラメトキシケイヒ酸-2-エチルヘキシル、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オクトクリレン及び2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルが好ましく用いられる。ただし、上記例示のものに限られることはない。また、内包される物質には、本発明の目的を損なわない範囲で紫外線吸収剤以外の他の成分を含めてもよい。
【0032】
このような紫外線吸収剤内包微小カプセルの市販品としては、株式会社成和化成製のSilasoma ME(ポリシリコーン-14、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、水)、Silasoma MEA(ポリシリコーン-14、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、水)、Silasoma REA(S)(ポリシリコーン-14、オクトクリレン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、水)、Silasoma EP(S)(ポリシリコーン-14、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、水)、Silasoma SP(ポリシリコーン-35、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、水)等を用いることができる。
【0033】
シリル化ペプチドとシラン化合物の共重合体を壁膜とする紫外線吸収剤内包微小カプセル又はシリル化アミノ酸とシラン化合物の共重合体を壁膜とする紫外線吸収剤内包微小カプセルに内包される紫外線吸収剤は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の皮膚外用剤における成分(A)の紫外線吸収剤内包済み微小カプセルの含有量は、皮膚外用剤の全質量に対して0.5~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましい。成分(A)の含有量がこれより少ない場合には、紫外線防御成分としての十分な効果を発揮できない場合があり、含有量がこれより多い場合には、カプセルの凝集や沈殿が生じるおそれがある。
【0035】
[水性増粘剤]
本発明の皮膚外用剤に含有される成分(B)の増粘剤は、アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物、ビスステアリルPEG/PPG-8/6(SMDI/PEG-400)コポリマー、キサンタンガムから選ばれる水性増粘剤である。これらの特定の増粘剤を含有させることで、成分(A)の紫外線吸収剤内包済み微小カプセルの凝集や、製剤の経時的な減粘を抑えることができ、皮膚に適用した場合には、べたつきの低さ、肌なじみのよさといった好ましい使用感を発揮する。
【0036】
アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物のアクリルアミド系化合物としては、ポリアクリルアミド、アクリルアミドコポリマーが含まれ、アクリルアミドコポリマーとしては、アクリルアミド及び/又はアクリロイルジメチルタウリンを構成単位として含むコポリマーが挙げられる。
【0037】
アクリルアミド系化合物として、具体的には、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13(アクリル酸、アクリル酸アミド、アクリル酸Na及びアクリロイルジメチルタウリンNaの共重合体)等が挙げられ、中でも、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13が好ましく用いられる。
【0038】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸エステル及びそのポリアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのポリアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのポリアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのポリアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのポリアルキレングリコール付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、グリセリンアルキルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキルポリグルコシド等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルのポリアルキレングリコール付加物が好ましく用いられ、中でも、ラウレス-7、PEG-7トリメチロールプロパンヤシ油アルキルエーテル、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80が特に好ましく用いられる。
【0040】
炭化水素油としては、例えば、(C13-15)アルカン、(C15-19)アルカン、(C18-21)アルカン、(C21-28)アルカン、(C10,11)イソパラフィン、(C10-13)イソパラフィン、(C13,14)イソパラフィン、(C13-16)イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ポリイソブテン、ポリブテン等が挙げられ、中でも、(C13,14)イソパラフィン、スクワラン、イソヘキサデカン、ポリイソブテンが好ましく用いられる。
【0041】
アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物におけるアクリルアミド系化合物の含有量は、当該組成物全量に対して20~80質量%であることが好ましく、35~70質量%であることがより好ましい。
【0042】
上記組成物における非イオン性界面活性剤の含有量は、組成物全量に対して0.5~15質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
【0043】
上記組成物における炭化水素油の含有量は、組成物全量に対して10~50質量%であることが好ましく、20~35質量%であることがより好ましい。
【0044】
このようなアクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物として市販品を用いることができる。例えば、SEPPIC社から販売されているSEPIGEL 305(ポリアクリルアミド、(C13,14)イソパラフィン、ラウレス-7、水)、SIMULGEL EG QD((アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、水)、SIMULGEL FL((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート60、水)、SIMULGEL NS((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、スクワラン、ポリソルベート60、水)、SEPIPLUS S((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリイソブテン、PEG-7トリメチロールプロパンヤシ油アルキルエーテル、水)、SEPIPLUS 265((アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、ポリイソブテン、ポリソルベート20、水)、SIMULGEL 600((アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、水)、SEPIPLUS 400(ポリアクリレート-13、ポリイソブテン、ポリソルベート20、水)等を用いることができる。
【0045】
上記組成物の中では、本発明の皮膚外用剤の安定性や、紫外線吸収剤内包済み微小カプセルの分散性の高さの点から、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリイソブテン及びPEG-7トリメチロールプロパンヤシ油アルキルエーテルを含有する組成物、又は、ポリアクリレート-13、ポリイソブテン及びポリソルベート20を含有する組成物を用いることが好ましい。
【0046】
上記アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物以外の成分(B)の水性増粘剤としては市販品を用いることができる。例えば、住友精化株式会社製のアクペック HU C2002(ビスステアリルPEG/PPG-8/6(SMDI/PEG-400)コポリマー)、DSP五協フード&ケミカル株式会社製のラボールガムGS-C(キサンタンガム)等を用いることができる。
【0047】
本発明の皮膚外用剤における成分(B)の水性増粘剤の含有量は、皮膚外用剤全量に対して0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。成分(B)の含有量がこれより少ない場合には、紫外線吸収剤内包済み微小カプセルの分散性が不十分となるおそれがあり、これより多い場合には皮膚に適用した場合に、べたつきや肌なじみの悪さなど使用感が損なわれるおそれがある。
【0048】
本発明の皮膚外用剤には、前記の成分(A)及び(B)に加えて、水を含有することができる。さらに、皮膚外用剤としての効果や安定性等を損なわない限りにおいて、その用途に応じて、通常皮膚外用剤に使用される他の成分を広く配合することができる。
【0049】
前記成分(A)及び(B)や水の他に通常皮膚外用剤に使用される成分として、例えば、油剤、固形又は半固形油、界面活性剤、高分子化合物、保湿剤、美白剤、感触改良剤、薬剤、成分(A)の微小カプセルに内包されていない紫外線吸収剤、タンパク質、タンパク質加水分解物又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、防腐剤、顔料、着色料、香料等を適宜配合することができる。
【0050】
油剤としては、25℃において液状であり通常化粧料に用いられる油剤であれば特に限定はなく、いずれのものも使用することができる。揮発性、非揮発性や、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、例えば、炭化水素油、油脂、エステル油、脂肪酸、トリアシルグリセロール、高級アルコール、シリコーン油、フッ素系油、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。具体的には、例えば、(C13-15)アルカン、(C15-19)アルカン、(C18-21)アルカン、(C21-28)アルカン、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素油や、前記成分(B)の組成物に含まれるものとして例示した炭化水素油;オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;ホホバ油、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、2-エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、トリメリト酸トリトリデシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等のトリ脂肪酸グリセリル;N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2-オクチルドデシル)等のアミノ酸系油剤;イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類;シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等の鎖状シリコーン油;パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0051】
固形又は半固形油としては油脂等が挙げられ、例えば、テオブロマグランジフロルム種子脂、マンゴー種子脂、カカオ脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、ショレアステノプテラ脂、アフリカマンゴノキ核脂、アボカド脂、サラソウジュ種子脂、アストロカリウムムルムル脂、アストロカリウムムルムル種子脂、アストロカリウムツクマ種子脂、ガルシニアインディカ種子脂、トリチリアエメチカ種子脂、バシアラチホリア種子脂、ガルシニアインディカ種子脂、水素添加カカオ脂、(マカデミア種子油/水添マカデミア種子油)エステルズ、乳脂等が挙げられる。
【0052】
界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシル-N-メチルタウリン塩、N-アシルアミノ酸塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、脂肪酸アミドアルキルアミン等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシ-N-ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーン、アルキルポリグルコシドや、前記成分(B)の組成物に含まれるものとして例示した非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
高分子化合物としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、高分子のジメチルポリシロキサン、アラビアガム、トラガカントガム、キャブロガム、グアーガム、ペクチン、寒天、クインスシード、デンプン、アルゲコロイド、デキストラン、サクシノグルカン、コラーゲン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、カルボキシメチルデンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギニン酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンアクリレート等のアクリル酸系化合物、カチオンポリマーや、前記成分(B)の組成物に含まれるものとして例示したアクリルアミド系化合物等が挙げられる。
【0054】
前記アクリル酸系化合物としては、例えば、(アクリル酸/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸べへネス-25)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ステアレス-25)クロスポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンアクリレート、ポリアクリレートクロスポリマー-6、(アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリレーツ)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸べへネス-25)コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス-20)コポリマー、ステアレス-10アリルエーテル/アクリレーツコポリマー、カルボキシビニルポリマー等を挙げることができる。
【0055】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、マルチトール、ソルビトール、1,3-ブチレングリコール、乳酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0056】
美白剤としては、例えば、エラグ酸、カミツレエキス、甘草エキス、ルシノール、ローズマリーエキス、アルブチン、トラネキサム酸、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸リン酸マグネシウムなどのアスコルビン酸誘導体等を挙げることができる。
【0057】
感触改良剤としては、アミロペクチン(アミロース)、アシル化アミノ酸、ポリメタクリル酸メチル、窒化ホウ素、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、金属石鹸、シリコーン粉体、ポリメチルメタクリル酸メチル、ジメチルシリル化シリカなどが挙げられる。
【0058】
薬剤としては、肌荒れ防止剤又は抗炎症剤を挙げることができる。肌荒れ防止剤又は抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリル、サリチル酸メチル、ピリドキシン塩酸塩、アラントイン、海塩、ソウハクヒエキス、アロエエキス、クチナシエキス、カミツレエキス、カンゾウエキス、ムクロジエキス、キョウニンエキス、オウゴンエキス、甜茶エキス、ビワエキス、イチョウエキス、オトギリソウエキス、セイヨウノコギリソウエキス、ベニバナエキス、トウヒエキス、サルビアエキス、シラカバエキス、チンピエキス、トウニンエキス、ガイヨウエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、ニンジンエキス、シャクヤクエキス、センキュウエキス、ゲンチアナエキス、冬虫夏草エキス、オウバクエキス、インチンコウエキス、ゲンノショウコエキス、モモ葉エキス、クマザサエキス、ヨクイニンエキス、マロニエエキス、サンザシエキス、オウレンエキス、レイシエキス、トウキンセンカエキス、ペパーミントエキス、コンフリーエキス、ブッチャーブルームエキス、ウスベニアオイエキス、ヤグルマルソウエキス、トゲナシエキス等が挙げられる。その他、育毛用薬剤、ニキビ用薬剤、ふけ・かゆみ用薬剤、腋臭防止用薬剤等も薬剤として挙げることができる。
【0059】
成分(A)の微小カプセルに内包されていない紫外線吸収剤としては、該微小カプセルに内包された紫外線吸収剤を用いてもよく、前記成分(A)の微小カプセルに内包された紫外線吸収剤として例示したものが、具体例として挙げられる。
【0060】
タンパク質、タンパク加水分解物又はその誘導体としては、例えば、乳タンパク、絹タンパク、小麦タンパク、米タンパク、エンドウマメタンパク、コラーゲン、ケラチン、大豆、ゴマ、コンキオリン、海洋コラーゲン等のタンパク質、これらの加水分解物又はタンパク加水分解物のアシル化、シリル化、カチオン化、アルキルエステル誘導体等が挙げられる。
【0061】
アミノ酸又はそれらの誘導体としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、シスチン、システイン、メチオニン、トリプトファン、プロリン、ヒスチジン等のアミノ酸、及びこれらのアシル化、アルキル化、グリセリル化、エステル化誘導体等が挙げられる。
【0062】
酸化防止剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、ビタミンE又はその誘導体、タンニン、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)等を挙げることができる。
【0063】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム塩、リン酸、エチドロン酸等を挙げることができる。
【0064】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
【0065】
防腐剤としては、例えば、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等の1,2-アルカンジオール、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン等が挙げられる。
上記通常化粧料に使用される成分は、1種単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0066】
本発明の皮膚外用剤は、クリーム状、乳液状、ジェル状、液状等の様々な剤型で好適に用いられる。製品形態としては、日焼け止め化粧料を含むスキンケア用外用剤として、あるいは日焼け止め効果を有する下地、ファンデーション等のメーキャップ化粧料としても使用することができる。
【実施例0067】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。なお、実施例の表中に記載されている数値は、いずれも皮膚外用剤の全質量に対する質量%である。
【0068】
実施例1~8及び比較例1~4:紫外線吸収剤内包済み微小カプセル水分散液
表1及び2に記載の水性増粘剤と水を混合後、紫外線吸収剤内包済み微小カプセル((株)成和化成製のSilasoma MEA)を添加し、ディスパー(1500rpm)で撹拌することで、紫外線吸収剤内包済み微小カプセル水分散液を調製した。
【0069】
[安定性、分散性の評価]
上記で調製した紫外線吸収剤内包微小カプセル水分散液を25℃、50℃の恒温槽に4週間保存し、安定性及びカプセルの分散性について下記の評価基準で評価した。粘度測定はブルックフィールドLVT粘度計を用いて行った。その結果を表1及び2に示す。
安定性:
〇: 調製直後に対して粘度変化が±20%以下であった。
△: 調製直後に対して粘度変化が±20%以上であった。
×: カプセルの凝集や沈殿がみられた。
分散性:
〇: カプセルが均一に分散していた。
△: 一部のカプセルが凝集し、巨大化する傾向がみられた。
×: カプセルの凝集や沈殿がみられた。
【0070】
【表1】
表1中、*1は(株)成和化成製のSilasoma MEA(商品名、ポリシリコーン-14を壁材としメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを内包した微小カプセルを60質量%、水40質量%を含有)として配合した。
*2はSEPIGEL 305、*3はSEPIGEL EG QD、*4はSIMULGEL NS、*5はSEPIPLUS S、*6はSEPIPLUS 400、*7はSIMULGEL FL(以上、商品名、いずれもSEPPIC社製)として配合した。
*8はDSP五協フード&ケミカル株式会社製のラボールガムGS-C(商品名)、*9は住友精化(株)製のアクペック HU C2002(商品名)である。
【0071】
【表2】
表2中、*10はSEPPIC社製のSEPINOV EMT 10(商品名)である。
【0072】
表1及び2に示す結果から、アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物、ビスステアリルPEG/PPG-8/6(SMDI/PEG-400)コポリマー又はキサンタンガムを増粘剤として配合した実施例1~8の紫外線吸収剤内包済み微小カプセル水分散液の場合には、その他の増粘剤を配合した比較例1~3に比べて安定性、分散性に優れていることが明らかであった。また、増粘剤としてアクリルアミド系化合物のみを配合した比較例4に比べて、同じアクリルアミド系化合物を含有する、アクリルアミド系化合物、非イオン性界面活性剤及び炭化水素油を含有する組成物を配合した場合の方が、安定性、カプセルの分散性に優れていることが明らかであった。
【0073】
実施例9、10:水性ジェル
表3に記載の成分(A)を混合し、成分(B)を加えてディスパー(2000rpm)で3分間撹拌した。実施例9においては続けて成分(C)を加えてディスパー(4000rpm)で1分間撹拌した。さらに成分(D)を添加し、ディスパー(3000rpm)で1分間撹拌することで、水性ジェルを調製した。調製した水性ジェルについて、実施例1~8及び比較例1~4と同様な方法で、安定性、分散性を評価した。
【0074】
【表3】
表3中、*1、*5は表1と同じ。*11はシュルケ&マイヤー社製のeuxyl PE9010(商品名)として配合した。
*12はSEPPIC社製のSEPIFINE BB(商品名)である。
【0075】
表3の結果が示すように、実施例9、10で作製した水性ジェルは安定性、カプセルの分散性に優れていることが明らかであった。