(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091629
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】座席シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20220614BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20220614BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20220614BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B60N2/56
B60N2/58
B60N2/90
A47C7/74 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204599
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】山口 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳之
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA06
3B084JF02
3B087DE04
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】ヒーターからの熱を効率的に着座者に伝えることができる、座席シートを、提供する。
【解決手段】本発明の座席シート300は、シートパッド302と、シートパッドの着座者側を覆う、表皮330と、シートパッド及び表皮どうしの間に配置された、ヒーター350と、シートパッド及びヒーターどうしの間に配置され、内部に気体が封入された、袋体360と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパッドと、
前記シートパッドの着座者側を覆う、表皮と、
前記シートパッド及び前記表皮どうしの間に配置された、ヒーターと、
前記シートパッド及び前記ヒーターどうしの間に配置され、内部に気体が封入された、袋体と、
を備えた、座席シート。
【請求項2】
前記座席シートの厚さ方向に複数の前記袋体が積層されている、請求項1に記載の座席シート。
【請求項3】
前記座席シートの厚さ方向の投影面において、複数の前記袋体が互いから異なる位置に配置されている、請求項1又は2に記載の座席シート。
【請求項4】
前記シートパッドの着座者側の面は、凹部を有しており、
前記袋体は、前記凹部内に収容されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の座席シート。
【請求項5】
前記座席シートの厚さ方向の投影面において、前記袋体は、前記ヒーターの領域内のみに位置している、請求項1~4のいずれか一項に記載の座席シート。
【請求項6】
前記袋体は、着座者が前記座席シートに着座した際に、前記袋体において前記座席シートの厚さ方向に互いに対向する一対の壁部どうしが接触しないように、構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の座席シート。
【請求項7】
前記座席シートは、車両用シートである、請求項1~6のいずれか一項に記載の座席シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートパッドとヒーターとの間に高密度のウレタンからなる断熱材を設けた座席シートがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術においては、断熱材を構成する高密度のウレタンが、蓄熱しやすいため、十分な断熱効果を有しておらず、ひいては、ヒーターからの熱を効率的に着座者に伝えることができなかった。
【0005】
本発明は、ヒーターからの熱を効率的に着座者に伝えることができる、座席シートを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の座席シートは、
シートパッドと、
前記シートパッドの着座者側を覆う、表皮と、
前記シートパッド及び前記表皮どうしの間に配置された、ヒーターと、
前記シートパッド及び前記ヒーターどうしの間に配置され、内部に気体が封入された、袋体と、
を備えている。
本発明の座席シートによれば、ヒーターからの熱を効率的に着座者に伝えることができる。
【0007】
本発明の座席シートにおいては、
前記座席シートの厚さ方向に複数の前記袋体が積層されていると、好適である。
これにより、ヒーターからの熱をより効率的に着座者に伝えることができる。
【0008】
本発明の座席シートにおいては、
前記座席シートの厚さ方向の投影面において、複数の前記袋体が互いから異なる位置に配置されていてもよい。
これにより、袋体の全体としての耐久性を向上できる。
【0009】
本発明の座席シートにおいては、
前記シートパッドの着座者側の面は、凹部を有しており、
前記袋体は、前記凹部内に収容されていると、好適である。
これにより、袋体がシートパッドから突出するのを抑制できる。
【0010】
本発明の座席シートにおいては、
前記座席シートの厚さ方向の投影面において、前記袋体は、前記ヒーターの領域内のみに位置していてもよい。
これにより、座り心地の低下を抑制しつつ、ヒーターからの熱を効率的に着座者に伝えることができる。
【0011】
本発明の座席シートにおいては、
前記袋体は、着座者が前記座席シートに着座した際に、前記袋体において前記座席シートの厚さ方向に互いに対向する一対の壁部どうしが接触しないように、構成されていると、好適である。
これにより、ヒーターからの熱をより効率的に着座者に伝えることができる。
【0012】
本発明の座席シートにおいては、
前記座席シートは、車両用シートであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒーターからの熱を効率的に着座者に伝えることができる、座席シートを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る座席シートを示す、斜視図である。
【
図2】
図1の座席シートのクッションシートを示す、厚さ方向の投影面図である。
【
図3】
図2のクッションシートを
図2のA-A線に沿った断面により示す、A-A断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る座席シートのクッションシートを示す、厚さ方向の投影面図である。
【
図5】
図3に対応する図面であり、本発明の第3実施形態に係る座席シートのクッションシートを示す左右方向の断面図である。
【
図6】実施例及び比較例に係る座席シートの実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の座席シートは、任意の種類の座席シートに適用可能であり、例えば任意の乗り物用シートに好適に用いることができ、特に、車両用シートに好適に用いることができる。本発明の座席シートは、車両用シートに用いる場合、運転席、助手席、後部座席等、任意の座席のシートに用いることができる。
【0016】
以下、本発明に係る座席シートの実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には、同一の符号を付している。
【0017】
図1~
図3は、本発明の第1実施形態に係る座席シート300を示している。
図1は、本実施形態の座席シート300の斜視図である。
図1~
図3の例において、座席シート300は、車両用シートとして構成されている。ただし、座席シート300は、任意の種類の座席シート(例えば、乗り物用シート)として構成されてよい。
座席シート300は、シートパッド302と、シートパッド302の着座者側を覆う表皮330と、1つ又は複数のヒーター350と、1つ又は複数の袋体360と、を備えている。
座席シート300は、シートパッド302の裏側に設置されるフレーム(図示せず)と、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト340と、をさらに備えることができる。
【0018】
シートパッド302としては、
図1に破線で示すように、着座者が着座するためのクッションパッド310と、着座者の背中を支持するためのバックパッド320と、がある。クッションパッド310とバックパッド320とは、それぞれ、シートパッド302を構成している。以下では、クッションパッド310又はバックパッド320を、単に「シートパッド302」と呼ぶことがある。
【0019】
本明細書では、
図1に表記するとおり、座席シート300(ひいてはシートパッド302)に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、それぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などという。
【0020】
クッションパッド310は、着座者の臀部及び大腿部を下側から支持するように構成されたメインパッド部311と、メインパッド部311の左右両側に位置し、メインパッド部311よりも上側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部312と、メインパッド部311の後側に位置し、バックパッド320と対向するように構成された、バックパッド対向部313と、を有している。メインパッド部311は、着座者の大腿部を下側から支持するように構成された、腿下部311tと、腿下部311tに対し後側に位置し、着座者の尻部を下側から支持するように構成された尻下部311hと、からなる。
【0021】
バックパッド320は、着座者の背中を後側から支持するように構成されたメインパッド部321と、メインパッド部321の左右両側に位置し、メインパッド部321よりも前側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部322と、を有している。
【0022】
座席シート300は、着座者が着座するためのクッションシート300Aと、着座者の背中を支持するためのバックシート300Bと、を備えている。座席シート300は、クッションシート300A及びバックシート300Bのいずれか一方のみを備えていてもよい。座席シート300は、ヘッドレスト340をさらに備えることができる。
クッションシート300Aは、シートパッド302であるクッションパッド310と、
クッションパッド310の着座者側を覆う表皮330とを、備えている。クッションシート300Aは、
図1の例のように、ヒーター350と、袋体360と、をさらに備えることができる。クッションシート300Aは、ヒーター350及び/又は袋体360を備えていなくてもよい。クッションシート300Aは、クッションパッド310の裏側(下側)に設置されるフレーム(図示せず)をさらに備えることができる。
バックシート300Bは、シートパッド302であるバックパッド320と、バックパッド320の着座者側を覆う表皮330とを、備えている。バックシート300Bは、
図1の例のように、ヒーター350と、袋体360と、をさらに備えることができる。バックシート300Bは、ヒーター350及び/又は袋体360を備えていなくてもよい。バックシート300Bは、バックパッド320の裏側(後側)に設置されるフレーム(図示せず)をさらに備えることができる。
ヒーター350及び袋体360は、クッションシート300Aとバックシート300Bとの少なくとも一方に備えられていればよい。
【0023】
図1の例において、クッションパッド310とバックパッド320とは、互いに別体に構成されているが、これらは互いに一体に構成されてもよい。すなわち、
図1の例において、クッションシート300Aとバックシート300Bとは、互いに別体に構成されているが、これらは互いに一体に構成されてもよい。
また、
図1の例において、ヘッドレスト340は、バックパッド320(ひいてはバックシート300B)とは別体に構成されているが、ヘッドレスト340は、バックパッド320(ひいてはバックシート300B)と一体に構成されてもよい。
【0024】
本明細書において、シートパッド302の「厚さ方向TD」とは、クッションパッド310の場合、上下方向を指しており(
図1)、バックパッド320の場合、バックパッド320のメインパッド部321の着座者側の面(表面)FSから裏面BSまでにわたってメインパッド部321が延在する方向である(
図1)。座席シート300の厚さ方向TDは、シートパッド302の厚さ方向TDと同じである。
本明細書において、シートパッド302の「延在方向LD」とは、シートパッド302の左右方向及び厚さ方向TD)に対して垂直な方向であり、クッションパッド310の場合は前後方向を指しており(
図1)、バックパッド320の場合はバックパッド320のメインパッド部321の下面から上面までにわたってメインパッド部321が延在する方向を指している(
図1)。座席シート300の延在方向LDは、シートパッド302の延在方向LDと同じである。
また、シートパッド302の「着座者側の面(表面)FS」は、クッションパッド310の場合は上面を指しており(
図1)、バックパッド320の場合は前面を指している(
図1)。シートパッド302の「裏面BS」は、シートパッド302の着座者側の面FSとは反対側の面であり、クッションパッド310の場合は下面を指しており(
図1)、バックパッド320の場合は後面を指している(
図1)。シートパッド302の「側面SS」は、シートパッド302の着座者側の面FSと裏面BSとの間の面であり、クッションパッド310の場合は前面、後面、左面及び右面のうちいずれかを指しており(
図1)、バックパッド320の場合は下面、上面、左面及び右面のうちいずれかを指している(
図1)。
【0025】
以下、本実施形態の座席シート300について、
図2~
図3を参照しつつ、さらに詳しく説明する。
図2~
図3は、
図1に示す本実施形態の座席シート300のクッションシート300Aを示している。
図2は、
図1の座席シート300のクッションシート300Aを示す、厚さ方向TDの投影面図である。
図3は、
図2のクッションシート300Aを
図2のA-A線に沿った断面により示す、A-A断面図である。
図2のA-A線は、左右方向に平行である。図示は省略するが、
図1に示す本実施形態の座席シート300のバックシート300Bも、
図2~
図3の例と同様に構成することができる。
以下では、特に断りが無い限り、クッションシート300A及びバックシート300Bを包括して「座席シート300」と呼ぶ。以下に説明する座席シート300の構成は、クッションシート300A及びバックシート300Bのいずれにも適用可能である。同様に、以下では、特に断りが無い限り、クッションパッド310及びバックパッド320を包括して「シートパッド302」と呼ぶ。以下に説明するシートパッド302の構成は、クッションパッド310及びバックパッド320のいずれにも適用可能である。
【0026】
シートパッド302は、例えば、可撓性のある樹脂からなる発泡体等から構成される。当該樹脂としては、例えばポリウレタンが好適である。
【0027】
表皮330は、例えば、通気性のよい材料(布等)から構成されると好適である。表皮330は、通気性の低い材料(合成皮革、皮革等)から構成されてもよい。
【0028】
ヒーター350は、
図3に示すように、厚さ方向TDにおけるシートパッド302及び表皮330どうしの間に配置されている。ヒーター350は、例えば電気により動作するように構成される。ヒーター350は、例えば帯状に構成される。ヒーター350は、例えば、帯状部材と、当該帯状部材に固定された電熱線と、を有する。当該帯状部材は、例えば、布、フェルト等からなる。
座席シート300は、ヒーター350を、1つのみ備えていてもよいし、複数備えていてもよい。
【0029】
袋体360は、
図3に示すように、厚さ方向TDにおけるシートパッド302及びヒーター350どうしの間に配置されている。袋体360は、内部に気体が封入されており、すなわち、内部に気体を密閉している。袋体360は、例えば、可撓性のある樹脂から構成される。当該樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。袋体360の内部に封入される気体としては、任意でよいが、例えば、大気(空気)、不活性ガス等が好適である。不活性ガスとしては、入手しやすさの観点から、窒素が好適である。
座席シート300は、袋体360を、1つのみ備えていてもよいし、複数備えていてもよい。
【0030】
上述のように、本実施形態の座席シート300は、シートパッド302及びヒーター350どうしの間に配置され、内部に気体が封入された、袋体360を備えている。気体は、例えば特許文献1の断熱材を構成する高密度のウレタン等の樹脂よりも、熱伝導率が低い。そのため、内部に気体が封入された袋体360は、例えば特許文献1の断熱材よりも、断熱効果が高い。したがって、袋体360により、ヒーター350からの熱がシートパッド302に伝わるのをより効果的に抑制でき、その分、ヒーター350からの熱を効率的に着座者に伝えることができる。
【0031】
座席シート300の製造時において、袋体360は、予め成形されたシートパッド302に対して貼り付け等により組み付けられてもよいし、あるいは、シートパッド302の成形時にシートパッド302と一体成形(例えば、一体に発泡)されてもよい。
【0032】
以下、本発明の好適な構成や他の実施形態について、
図4~
図5も適宜参照しつつ、説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る座席シート300のクッションシート300Aを示す、厚さ方向TDの投影面図である。以下では、厚さ方向TDの投影面を「投影面P」と表記する。
図5は、
図3に対応する図面であり、本発明の第3実施形態に係る座席シート300のクッションシート300Aを示す左右方向の断面図である。
【0033】
本明細書で説明する各実施形態においては、
図3や
図5の各実施形態のように、座席シート300の厚さ方向TDに複数の袋体360が積層されていると、好適である。この場合、袋体360に封入された気体どうしが分断され、袋体360どうしの間で熱伝導がしづらくなるため、袋体360による断熱効果がより高くなる。よって、仮に厚さ方向TDに袋体360が1つのみ設けられている場合に比べて、ヒーター350からの熱がシートパッド302に伝わるのをより効果的に抑制でき、その分、ヒーター350からの熱を効率的に着座者に伝えることができる。
ただし、本明細書で説明する各実施形態において、厚さ方向TDに袋体360が1つのみ設けられていてもよい。
【0034】
本明細書で説明する各実施形態においては、
図3や
図5の各実施形態のように、シートパッド302の着座者側の面FSは、凹部302cを有しており、1つ又は複数の袋体360が、凹部302c内に収容されていると、好適である。これにより、袋体360がシートパッド302から突出するのを、抑制できる。ひいては、袋体360がシートパッド302から突出することにより表皮330をシートパッド302に取り付ける作業がしにくくなるのを、抑制できる。また、袋体360がシートパッド302から突出することにより着座者が違和感を感じるのを、抑制できる。
凹部302cは、シートパッド302の着座者側の面FSに開口しており、シートパッド302の裏面BSに至る手前で終端している。
同様の観点から、凹部302c内に収容された1つ又は複数の袋体360の厚さ方向TDの厚さの合計は、凹部302cの深さの1.3倍以下であると好適であり、1.1倍以下であるとより好適である。また、着座者が違和感を感じるのを抑制する観点から、凹部302c内に収容された1つ又は複数の袋体360の厚さ方向TDの厚さの合計は、凹部302cの深さの0.7倍以上であると好適であり、0.9倍以上であるとより好適である。
ただし、本明細書で説明する各実施形態において、シートパッド302の着座者側の面FSは、凹部302cを有していなくてもよく、1つ又は複数の袋体360が、シートパッド302の着座者側の面FS上に配置されていてもよい。
【0035】
本明細書で説明する各実施形態においては、
図4の実施形態のように、座席シート300の厚さ方向TDの投影面Pにおいて、複数の袋体360が互いから異なる位置に配置されていてもよい。この場合、例えば当該複数の袋体360のうちいずれかが穴が空く等して破損しても、残りの袋体360によって依然として断熱効果を発揮することができるので、仮に投影面Pにおいて1つの袋体360のみを設けた場合に比べて、袋体360の全体としての耐久性を向上できる。
なお、投影面Pにおいて、複数の袋体360が互いに重なり合わないように配置されていると、好適である。この場合、複数の袋体360どうしは、互いから離間していてもよいし、互いに接触していてもよい。
また、投影面Pにおいて互いに重なり合わないように配置された複数の袋体360のそれぞれの位置において、袋体360は、厚さ方向TDに1つのみ設けられてもよいし、あるいは、厚さ方向TDに複数積層されていてもよい。
投影面Pにおいて互いに重なり合わないように配置された複数の袋体360どうしは、厚さ方向TDの位置が同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。
ただし、本明細書で説明する各実施形態において、投影面Pにおいて、1つの袋体360のみを設けてもよい。
【0036】
本明細書で説明する各実施形態においては、
図2及び
図3や、
図4の各実施形態のように、座席シート300の厚さ方向TDの投影面Pにおいて、袋体360は、ヒーター350の領域内のみに位置していてもよい。この場合、袋体360を必要な部分のみに配置することとなるので、袋体360の存在により生じ得る座り心地の低下を抑制しつつ、ヒーター350からの熱を効率的に着座者に伝えることができる。
同様の観点から、特に、
図2及び
図3の実施形態のように、投影面Pにおいて、袋体360の領域が、ヒーター350の領域とほぼ一致していると、より好適である。
ただし、投影面Pにおいて、袋体360の一部のみが、ヒーター350の領域内に位置していてもよい。
【0037】
本明細書で説明する各実施形態においては、袋体360による断熱効果を向上させる観点から、投影面Pにおいて、ヒーター350と1つ又は複数の袋体360とが重なった部分は、当該ヒーター350の面積の80%以上を占めていると好適であり、当該ヒーター350の面積の90%以上を占めているとより好適である。
本明細書で説明する各実施形態においては、座り心地の低下を抑制する観点から、ヒーター350と重なっている1つ又は複数の袋体360の面積の合計は、当該ヒーター350の面積の120%以下であると好適であり、110%以下であるとより好適である。ここで、「ヒーター350と重なっている1つ又は複数の袋体360の面積の合計」とは、ヒーター350と1つ又は複数の袋体360とが重なった部分の面積に加えて、当該1つ又は複数の袋体360のうち当該ヒーター350と重なっていない部分がある場合には、当該1つ又は複数の袋体360のうち当該ヒーター350と重なっていない部分の面積も含めた面積を指す。
【0038】
本明細書で説明する各実施形態において、袋体360は、着座者が座席シート300に着座した際に、袋体360において座席シート300の厚さ方向TDに互いに対向する一対の壁部361(
図3)どうしが接触しないように(ひいては、袋体360がつぶれないように)、構成されていると、好適である。これにより、着座者が座席シート300に着座した際に、袋体360が内部に区画する気体層が無くなって断熱効果が低下するのを抑制することができる。よって、ヒーター350からの熱をより効率的に着座者に伝えることができる。
なお、具体的には、袋体360は、着座者の着座時に負荷荷重450N以上が座席シート300に負荷した場合に、袋体360において厚さ方向TDに互いに対向する一対の壁部361どうしが接触しないように、構成されていると、好適であり、着座者の着座時に負荷荷重600N以上が座席シート300に負荷した場合に、袋体360において厚さ方向TDに互いに対向する一対の壁部361どうしが接触しないように、構成されていると、より好適である。
なお、このことは、例えば、袋体360の伸縮性が十分に低くなるように袋体360の材料を選択することにより実現できる。このような袋体360の材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0039】
本明細書で説明する各実施形態においては、袋体360の断熱効果を向上させる観点から、座席シート300に外力が加わっていない自然状態において、袋体360の1つあたりの層厚(厚さ方向TDの厚さ)は、3mm以上が好適であり、5mm以上がより好適である。
本明細書で説明する各実施形態においては、座り心地の低減を抑制させる観点から、座席シート300に外力が加わっていない自然状態において、袋体360の1つあたりの層厚(厚さ方向TDの厚さ)は、30mm以下が好適であり、15mm以下がより好適である。
【0040】
本明細書で説明する各実施形態において、ヒーター350及び袋体360は、シートパッド302における任意の部分に配置されてよい。
クッションパッド310(ひいてはクッションシート300A)の場合、より効果的に着座者を温める観点から、ヒーター350及び袋体360は、
図1の例のように、メインパッド部311に配置されると好適であるが、これに加えて又は代えて、サイドパッド部312に配置されてもよい。座り心地の低減を抑制する観点から、袋体360は、
図1の例のように、尻下部311hに配置されていないのが好適であり、腿下部311t及び/又はサイドパッド部312に配置されていると好適である。ただし、袋体360は、尻下部311hに配置されてもよい。
バックパッド320(ひいてはバックシート300B)の場合、より効果的に着座者を温める観点から、ヒーター350及び袋体360は、
図1の例のように、メインパッド部321に配置されると好適であるが、これに加えて又は代えて、サイドパッド部322に配置されてもよい。
【0041】
本明細書で説明する各実施形態において、ヒーター350は、表皮330の裏面に、縫い付け又は貼り付け等により固定されていてもよい。あるいは、
図5に示す実施形態のように、ヒーター350が厚さ方向TDにおいて袋体360と重ならない部分350aを有している場合、当該部分350aがシートパッド302に、貼り付け等により固定されていてもよい。
【0042】
本明細書で説明する各実施形態において、座席シート300は、
図3の例のように、荷重センサーを備えていなくてもよいし、あるいは、厚さ方向TDの任意の位置に荷重センサーを備えていてもよい。
【実施例0043】
座席シート300の比較例1及び実施例1~3を試作して実験を実施したので説明する。
比較例1の座席シート300は、シートパッド302と、シートパッド302の着座者側を覆う表皮330と、シートパッド302及び表皮330どうしの間に配置されたヒーター350と、を備えていたが、袋体360を備えていなかった。
実施例1~3の座席シート300は、シートパッド302と、シートパッド302の着座者側を覆う表皮330と、シートパッド302及び表皮330どうしの間に配置されたヒーター350と、シートパッド302及びヒーター350どうしの間に配置され、内部に大気が封入された、袋体360を備えていた。実施例1は、袋体360を1つのみ備えていた。実施例2は、厚さ方向TDに積層された2つの袋体360を備えていた。実施例3は、厚さ方向TDに積層された6つの袋体360を備えていた。実施例1~3は、1つあたりの袋体360の厚さがほぼ同じであった。
比較例1及び実施例1~3は、上述のように、袋体360の数のみが異なり、その他の構成はほぼ同じであった。
実験においては、比較例1及び実施例1~3のそれぞれにおいて、ヒーターによる加熱を開始した直後から、表皮330における着座者側の面の温度を連続的に測定した。その結果を
図6に示す。
【0044】
図6からわかるように、実施例1~3は、比較例1に比べて、表皮330における着座者側の面の温度の上昇が速く、ヒーター350からの熱を効率的に着座者に伝えることができるものであった。
本発明の座席シートは、任意の種類の座席シートに適用可能であり、例えば任意の乗り物用シートに好適に用いることができ、特に、車両用シートに好適に用いることができる。本発明の座席シートは、車両用シートに用いる場合、運転席、助手席、後部座席等、任意の座席のシートに用いることができる。