(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092659
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】パンコーティング装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/00 20060101AFI20220616BHJP
B01J 2/12 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B01J2/00 B
B01J2/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205496
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000112912
【氏名又は名称】フロイント産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】味園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】武内 優貴
【テーマコード(参考)】
4G004
【Fターム(参考)】
4G004BA01
4G004HA00
(57)【要約】
【課題】給気用や排気用のチャンバを装置から容易に着脱可能とし、チャンバ着脱時の作業性を向上させる。
【解決手段】パンコーティング装置1は、回転ドラム2と、給気部20、排気部30とを有する。排気部30には、チャンバ部34とシール部35とを備えた排気チャンバユニット33が配設される。チャンバ部34は、回転ドラム2に面した開口部36とその対向面が開放された角筒状に形成されている。シール部35には、回転ドラム2の周方向に沿って移動可能なシール板37が設けられている。シール板37は、コーティング処理の際に用いられる装着位置Pと、排気チャンバユニット33をパンコーティング装置1から着脱する際に用いられる着脱位置Qとの間で移動可能となっており、シール板37を着脱位置Qに移動させた状態で排気チャンバユニット33の着脱作業を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心に回転自在に設けられ、その内部にコーティング処理の対象となる被処理物が収容される回転ドラムと、
前記回転ドラム内の前記被処理物に対し処理気体を供給する給気部と、
前記給気部から前記回転ドラム内に供給された前記処理気体を前記回転ドラム外に排出する排気部と、を有するパンコーティング装置であって、
前記排気部は、前記回転ドラム内から前記処理気体の排出を行うための排気チャンバユニットを備え、
前記排気チャンバユニットは、
前記回転ドラムに近接して配置され、前記回転ドラムから前記処理気体が流入するチャンバ部と、
前記チャンバ部の前記回転ドラム側に前記回転ドラムの外周に沿って設けられ、前記回転ドラム外から前記チャンバ部内へのエアの流入を抑制するシール部と、を有し、
前記シール部は、前記回転ドラムの周方向に沿って移動可能なシール板を有し、
前記シール板は、コーティング処理の際に用いられる装着位置と、前記排気チャンバユニットを当該パンコーティング装置から着脱する際に用いられる着脱位置との間で移動可能であることを特徴とするパンコーティング装置。
【請求項2】
請求項1記載のパンコーティング装置において、
前記排気チャンバユニットの前記チャンバ部は、前記回転ドラムに面した開口部と、該開口部と対向する面とが開放された筒状に形成されてなることを特徴とするパンコーティング装置。
【請求項3】
回転軸線を中心に回転自在に設けられ、その内部にコーティング処理の対象となる被処理物が収容される回転ドラムと、
前記回転ドラム内の前記被処理物に対し処理気体を供給する給気部と、
前記給気部から前記回転ドラム内に供給された前記処理気体を前記回転ドラム外に排出する排気部と、を有するパンコーティング装置であって、
前記給気部は、前記回転ドラム内に前記処理気体を供給するための給気チャンバユニットを備え、
前記給気チャンバユニットは、
前記回転ドラムに近接して配置され、前記回転ドラムに前記処理気体を供給するチャンバ部と、
前記チャンバ部の前記回転ドラム側に前記回転ドラムの外周に沿って設けられ、前記チャンバ部内から前記回転ドラム外へのエアの流出を抑制するシール部と、を有し、
前記シール部は、前記回転ドラムの周方向に沿って移動可能なシール板を有し、
前記シール板は、コーティング処理の際に用いられる装着位置と、前記給気チャンバユニットを当該パンコーティング装置から着脱する際に用いられる着脱位置との間で移動可能であることを特徴とするパンコーティング装置。
【請求項4】
請求項3記載のパンコーティング装置において、
前記給気チャンバユニットの前記チャンバ部は、前記回転ドラムに面した開口部と、該開口部と対向する面とが開放された筒状に形成されてなることを特徴とするパンコーティング装置。
【請求項5】
回転軸線を中心に回転自在に設けられ、その内部にコーティング処理の対象となる被処理物が収容される回転ドラムと、
前記回転ドラム内の前記被処理物に対し処理気体を供給する給気部と、
前記給気部から前記回転ドラム内に供給された前記処理気体を前記回転ドラム外に排出する排気部と、を有するパンコーティング装置であって、
前記給気部は、前記回転ドラム内に前記処理気体を供給するための給気チャンバユニットを備え、
前記給気チャンバユニットは、
前記回転ドラムに近接して配置され、前記回転ドラムに前記処理気体を供給するチャンバ部と、
前記チャンバ部の前記回転ドラム側に前記回転ドラムの外周に沿って設けられ、前記チャンバ部内から前記回転ドラム外へのエアの流出を抑制するシール部と、を有し、
前記シール部は、前記回転ドラムの周方向に沿って移動可能なシール板を有し、
前記給気チャンバユニットの前記シール板は、コーティング処理の際に用いられる装着位置と、前記給気チャンバユニットを当該パンコーティング装置から着脱する際に用いられる着脱位置との間で移動可能であり、
前記排気部は、前記回転ドラム内から前記処理気体の排出を行うための排気チャンバユニットを備え、
前記排気チャンバユニットは、
前記回転ドラムに近接して配置され、前記回転ドラムから前記処理気体が流入するチャンバ部と、
前記チャンバ部の前記回転ドラム側に前記回転ドラムの外周に沿って設けられ、前記回転ドラム外から前記チャンバ部内へのエアの流入を抑制するシール部と、を有し、
前記シール部は、前記回転ドラムの周方向に沿って移動可能なシール板を有し、
前記排気チャンバユニットの前記シール板は、コーティング処理の際に用いられる装着位置と、前記排気チャンバユニットを当該パンコーティング装置から着脱する際に用いられる着脱位置との間で移動可能であることを特徴とするパンコーティング装置。
【請求項6】
請求項5記載のパンコーティング装置において、
前記給気チャンバユニットの前記チャンバ部、又は、前記排気チャンバユニットの前記チャンバ部のうち少なくとも何れか一方は、前記回転ドラムに面した開口部と、該開口部と対向する面とが開放された筒状に形成されてなることを特徴とするパンコーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ドラム内に収容した錠剤や粉粒体等の被処理物にコーティング処理を行うパン型のコーティング装置(パンコーティング装置)に関し、特に、被処理物表面に延展されたコーティング液を乾燥させるため回転ドラムに供給される乾燥用気体の給排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パンコーティング装置では、回転ドラム内に錠剤等の被処理物(以下、被処理物として錠剤を例にとって述べる)を収容し、ドラム内にて錠剤を転動させつつ、そこにコーティング剤をスプレーすることにより、錠剤のコーティング処理を行っている。コーティング処理に際しては、コーティング剤のスプレーと並行して、あるいは、スプレー処理後に回転ドラム内に錠剤乾燥用の処理気体(乾燥エア)を供給し、錠剤表面に延展したコーティング剤を乾燥させコーティング被膜を形成する。
【0003】
このような処理を行う装置として、従来より、胴部全周を多孔板にて形成した回転ドラム(全面パンチングパン)を用いたパンコーティング装置が知られている(特許文献1,2等)。全面パンチングパンを備えたパンコーティング装置では、回転ドラムの外周近傍に、ボックス状に形成された給気用や排気用のチャンバを配し、そこから、処理気体の給気と排気を行っている。各チャンバは、金属製のボックス構造となっており、給気ダクトから供給される気体は、給気チャンバのボックス内で方向を変えてドラム内に供給される。また、排気チャンバから排気される気体は、排気チャンバのボックスで方向を変えて排気ダクトに誘導され排出される。
【0004】
また、回転ドラムとチャンバの隙間(クリアランス部分)には、各チャンバに接続された給気・排気ダクト以外からエアが侵入しないよう、クリアランス部分にシール板が設けられている。
図7は、従来のパンコーティング装置における排気チャンバ構成を示す説明図である。
図7(a)に示すように、シール板81は、通常、チャンバ82側方の回転ドラム83外周に面した部分に設けられており、ドラム83外周に沿ってチャンバ開口部84から延伸した形で形成され、クリアランス部分からのエア侵入を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-10747号公報
【特許文献2】特開昭63-62536号公報
【特許文献3】特開2008-253910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述のようなシール板は、チャンバ82側方よりはみ出した形状となっているため、シール板81のはみ出し(
図7(a)におけるA部)を大きくすると、洗浄等のためにチャンバ82を装置に対し着脱する際、シール板81とドラム83外周が干渉しやすくなる(
図7(b)のB部)。このため、はみ出し量の大きいシール板の採用は避けたいところではあるが、その一方で、シール板のはみ出し量が小さ過ぎるとシール効果が低減する。したがって、シール板としては、なるべく大きさを抑えつつも、シール性を確保し得るよう、ある程度の大きさのはみ出し量を有するものを採用せざるを得ない。
【0007】
しかしながら、シール性を確保し得る程度の大きさのシール板を採用すると、チャンバ着脱の際、シール板がドラムに当たらないよう、排気側ではチャンバを斜め上方に持ち上げながら作業を行う必要がある。また、給気側では、大きいシール板を採用すると、チャンバの着脱自体ができなくなる。さらに、金属板にて形成されたチャンバはかなり重量のある大きな部材であり、排気側にてチャンバを持ち上げて着脱する作業は容易とは言い難い。加えて、前述のように、従来の給排気用のチャンバはボックス構造であるため、チャンバを構成する部材が多くその重量も大きいことから、チャンバ着脱の際、作業者の負担が大きくなってしまうという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、給気用や排気用のチャンバを装置から容易に着脱可能とし、チャンバ着脱時の作業性を向上させることにある。また、本発明の他の目的は、チャンバをより軽量化し、チャンバ着脱時の作業性をさらなる向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパンコーティング装置は、回転軸線を中心に回転自在に設けられ、その内部にコーティング処理の対象となる被処理物が収容される回転ドラムと、前記回転ドラム内の前記被処理物に対し処理気体を供給する給気部と、前記給気部から前記回転ドラム内に供給された前記処理気体を前記回転ドラム外に排出する排気部と、を有するパンコーティング装置であって、前記排気部は、前記回転ドラム内から前記処理気体の排出を行うための排気チャンバユニットを備え、前記排気チャンバユニットは、前記回転ドラムに近接して配置され、前記回転ドラムから前記処理気体が流入するチャンバ部と、前記チャンバ部の前記回転ドラム側に前記回転ドラムの外周に沿って設けられ、前記回転ドラム外から前記チャンバ部内へのエアの流入を抑制するシール部と、を有し、前記シール部は、前記回転ドラムの周方向に沿って移動可能なシール板を有し、前記シール板は、コーティング処理の際に用いられる装着位置と、前記排気チャンバユニットを当該パンコーティング装置から着脱する際に用いられる着脱位置との間で移動可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明のパンコーティング装置にあっては、装置から排気チャンバユニットを着脱する際、排気チャンバユニットのシール板を着脱位置に移動させる。着脱位置は、ユニット着脱の際、シール板と回転ドラム外周との干渉が生じにくい位置に設定されている。このため、シール板を着脱位置に移動させた状態で、排気チャンバユニットをパンコーティング装置から着脱することにより、シール板と回転ドラム外周との干渉を避けるべくユニットを上に持ち上げて移動させる必要がなく、ユニットを斜めに引き上げる形でパンコーティング装置から着脱でき、従来のパンコーティング装置に比して着脱作業性が大きく改善される。
【0011】
前記パンコーティング装置において、前記排気チャンバユニットの前記チャンバ部を、前記回転ドラムに面した開口部と、該開口部と対向する面とが開放された筒状に形成しても良い。これにより、開口部がドラム側の1面しかない従来の排気チャンバに比して重量が軽量化され、従来の装置よりも容易に排気チャンバユニットを着脱でき、作業員の作業負担がさらに軽減される。
【0012】
また、本発明の他のパンコーティング装置は、回転軸線を中心に回転自在に設けられ、その内部にコーティング処理の対象となる被処理物が収容される回転ドラムと、前記回転ドラム内の前記被処理物に対し処理気体を供給する給気部と、前記給気部から前記回転ドラム内に供給された前記処理気体を前記回転ドラム外に排出する排気部と、を有するパンコーティング装置であって、前記給気部は、前記回転ドラム内に前記処理気体を供給するための給気チャンバユニットを備え、前記給気チャンバユニットは、前記回転ドラムに近接して配置され、前記回転ドラムに前記処理気体を供給するチャンバ部と、前記チャンバ部の前記回転ドラム側に前記回転ドラムの外周に沿って設けられ、前記チャンバ部内から前記回転ドラム外へのエアの流出を抑制するシール部と、を有し、前記シール部は、前記回転ドラムの周方向に沿って移動可能なシール板を有し、前記シール板は、コーティング処理の際に用いられる装着位置と、前記給気チャンバユニットを当該パンコーティング装置から着脱する際に用いられる着脱位置との間で移動可能であることを特徴とする。
【0013】
本発明のパンコーティング装置にあっては、装置から給気チャンバユニットを着脱する際、給気チャンバユニットのシール板を着脱位置に移動させる。着脱位置は、ユニット着脱の際、シール板と回転ドラム外周との干渉が生じにくい位置に設定されている。このため、シール板を着脱位置に移動させた状態で、給気チャンバユニットをパンコーティング装置から着脱することにより、シール板と回転ドラム外周との干渉を避けるべくユニットを上に持ち上げて移動させる必要がなく、ユニットを引き抜く形でパンコーティング装置から着脱でき、従来のパンコーティング装置に比して着脱作業性が大きく改善される。
【0014】
前記パンコーティング装置において、前記給気チャンバユニットの前記チャンバ部を、前記回転ドラムに面した開口部と、該開口部と対向する面とが開放された筒状に形成しても良い。これにより、開口部がドラム側の1面しかない給気チャンバに比して重量が軽量化され、容易に給気チャンバユニットを着脱でき、作業員の作業負担がさらに軽減される。
【0015】
さらに、本発明の他のパンコーティング装置は、回転軸線を中心に回転自在に設けられ、その内部にコーティング処理の対象となる被処理物が収容される回転ドラムと、前記回転ドラム内の前記被処理物に対し処理気体を供給する給気部と、前記給気部から前記回転ドラム内に供給された前記処理気体を前記回転ドラム外に排出する排気部と、を有するパンコーティング装置であって、前記給気部は、前記回転ドラム内に前記処理気体を供給するための給気チャンバユニットを備え、前記給気チャンバユニットは、前記回転ドラムに近接して配置され、前記回転ドラムに前記処理気体を供給するチャンバ部と、前記チャンバ部の前記回転ドラム側に前記回転ドラムの外周に沿って設けられ、前記チャンバ部内から前記回転ドラム外へのエアの流出を抑制するシール部と、を有し、前記シール部は、前記回転ドラムの周方向に沿って移動可能なシール板を有し、前記給気チャンバユニットの前記シール板は、コーティング処理の際に用いられる装着位置と、前記給気チャンバユニットを当該パンコーティング装置から着脱する際に用いられる着脱位置との間で移動可能であり、前記排気部は、前記回転ドラム内から前記処理気体の排出を行うための排気チャンバユニットを備え、前記排気チャンバユニットは、前記回転ドラムに近接して配置され、前記回転ドラムから前記処理気体が流入するチャンバ部と、前記チャンバ部の前記回転ドラム側に前記回転ドラムの外周に沿って設けられ、前記回転ドラム外から前記チャンバ部内へのエアの流入を抑制するシール部と、を有し、前記シール部は、前記回転ドラムの周方向に沿って移動可能なシール板を有し、前記排気チャンバユニットの前記シール板は、コーティング処理の際に用いられる装着位置と、前記排気チャンバユニットを当該パンコーティング装置から着脱する際に用いられる着脱位置との間で移動可能であることを特徴とする。
【0016】
本発明のパンコーティング装置にあっては、装置から給気チャンバユニットや排気チャンバユニットを着脱する際、各チャンバユニットのシール板を着脱位置に移動させる。着脱位置は、ユニット着脱の際、それぞれのシール板と回転ドラム外周との干渉が生じにくい位置に設定されている。このため、各シール板を着脱位置に移動させた状態で、給気チャンバユニットや排気チャンバユニットをパンコーティング装置から着脱することにより、シール板と回転ドラム外周との干渉を避けるべくユニットを上に持ち上げて移動させる必要がなく、ユニットを引き抜いたり、斜めに引き上げたりする形でパンコーティング装置から着脱でき、従来のパンコーティング装置に比して着脱作業性が大きく改善される。
【0017】
前記パンコーティング装置において、前記給気チャンバユニットの前記チャンバ部、又は、前記排気チャンバユニットの前記チャンバ部のうち少なくとも何れか一方を、前記回転ドラムに面した開口部と、該開口部と対向する面とが開放された筒状に形成しても良い。これにより、開口部がドラム側の1面しかない従来の給気チャンバや排気チャンバに比して重量が軽量化され、従来の装置よりも容易に給気チャンバや排気チャンバユニットを着脱でき、作業員の作業負担がさらに軽減される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパンコーティング装置によれば、回転ドラム内から処理気体を排出する排気部に、処理気体が流入するチャンバ部とチャンバ部内へのエアの流入を抑制するシール部と、を有する排気チャンバユニットを配し、シール部に、装着位置と着脱位置との間で移動可能なシール板を設けたので、パンコーティング装置から排気チャンバユニットを着脱する際、排気チャンバユニットのシール板を着脱位置に移動させることにより、シール板と回転ドラム外周との干渉を避けつつ、排気チャンバユニットを容易にパンコーティング装置から着脱でき、ユニット着脱時の作業性を向上させることが可能となる。
【0019】
本発明の他のパンコーティング装置によれば、回転ドラム内に処理気体を供給する給気部に、処理気体が流入するチャンバ部とチャンバ部内からのエアの流出を抑制するシール部と、を有する給気チャンバユニットを配し、シール部に、装着位置と着脱位置との間で移動可能なシール板を設けたので、パンコーティング装置から給気チャンバユニットを着脱する際、給気チャンバユニットのシール板を着脱位置に移動させることにより、シール板と回転ドラム外周との干渉を避けつつ、給気チャンバユニットを容易にパンコーティング装置から着脱でき、ユニット着脱時の作業性を向上させることが可能となる。
【0020】
本発明のさらに他のパンコーティング装置によれば、回転ドラム内に処理気体を供給する給気部に、処理気体が流入するチャンバ部とチャンバ部内からのエアの流出を抑制するシール部と、を有する給気チャンバユニットを配し、シール部に、装着位置と着脱位置との間で移動可能なシール板を設けると共に、回転ドラム内から処理気体を排出する排気部に、処理気体が流入するチャンバ部とチャンバ部内へのエアの流入を抑制するシール部と、を有する排気チャンバユニットを配し、シール部に、装着位置と着脱位置との間で移動可能なシール板を設けたので、パンコーティング装置から給気チャンバユニットや排気チャンバユニットを着脱する際、各チャンバユニットのシール板をそれぞれ着脱位置に移動させることにより、シール板と回転ドラム外周との干渉を避けつつ、給気チャンバユニットや排気チャンバユニットを容易にパンコーティング装置から着脱でき、ユニット着脱時の作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態であるパンコーティング装置の側面図である。
【
図2】
図1のパンコーティング装置の正面図である。
【
図3】
図1のパンコーティング装置の平面図である。
【
図4】給気チャンバユニットと排気チャンバユニットの着脱の様子を示す説明図である。
【
図5】排気チャンバユニットの構造を示す説明図である。
【
図6】(a)は排気チャンバユニットの装着時(装着位置P)の状態、(b)は排気チャンバユニットの着脱時(着脱位置Q)の状態を示す説明図である。
【
図7】従来のパンコーティング装置における排気チャンバ構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1~3は、本発明の一実施の形態であるパンコーティング装置1(以下、コーティング装置1と略記する)の全体構成を示す説明図であり、
図1はその側面図、
図2は正面図、
図3は平面図である。
図1~3のコーティング装置1は、いわゆる全面パンチングタイプの回転ドラム(コーティングパン、以下、ドラムと略記する)2を使用したジャケットレスタイプの構成となっている。ドラム2内には、コーティング処理の対象となる錠剤(被処理物)3が収容され、そこにコーティング液を噴霧することにより、錠剤3のコーティング処理が行われる。
【0023】
図1,3に示すように、コーティング装置1は、筐体4のパン室4a内にドラム2を回転自在に設置した構成となっている。ドラム2は、ほぼ水平な回転軸線Oを中心に回転し、その内部には、錠剤3が投入される。ドラム2は、円筒形の胴部5と、胴部5の両端に形成された円錐台状のコニカル部6とを備えている。胴部5はステンレス製の多孔板(パンチングプレート)にて形成されており、胴部5の外周は多数個の通気孔7により通気可能な構成となっている。コニカル部6は孔のないステンレス製板材にて形成されており、一方のコニカル部6の端部(
図1において左側:ドラム2の一端側)には前面開口部8が形成されている。他方のコニカル部6の端部(
図1において右側:ドラム2の他端側)はエンドプレート9にて閉鎖されており、回転軸11が取り付けられる。
【0024】
パン室4aの
図1において右側は機械室4bとなっており、電動のドラム駆動モータを用いた図示しないドラム回転機構が配置されている。ドラム2の右端側(他端側)には、前述のように回転軸11が固定されており、この回転軸11には図示しないスプロケットが取り付けられている。スプロケットは、チェーンを介して筐体4内に設置されたモータ側のスプロケットと接続されている。モータを回転させると、その回転に伴ってドラム2がチェーン駆動され、回転軸線Oを中心に回転する。ドラム2の
図1において左端側は、図示しないローラによって支持されている。
【0025】
図2に示すように、筐体4の正面(
図1において左側)は3分割構造となっている。筐体正面の中央には前面ドア12が、その両側にはユニットカバー13a,13bが設けられている。前面ドア12は、一方のユニットカバー13aに回動自在に支持され、筐体4に対し開閉自在に設けられている。ユニットカバー13a,13bも筐体4に対し開閉自在に設けられている。前面ドア12の正面には点検扉14が取り付けられており、また、前面ドア12の下部には、処理完了後の製品を取り出すための製品排出口15が設けられている。
【0026】
コーティング装置1にはさらに、ドラム2内に処理気体を供給する給気部20と、給気部20からドラム2内に供給された処理気体をドラム外に排出する排気部30が設けられている。筐体上面4cには、給気部20の給気孔21と、排気部30の排気孔31が設けられており、それぞれ、図示しない外部給気ダクト、外部排気ダクトが接続される。給気孔21は、筐体4内に配された給気ダクト22を介して給気チャンバユニット23と接続され、給気部20を構成している。給気チャンバユニット23は、ドラム2の
図2において右上部に、ドラム2の胴部5に隣接・対向する形で配設されている。ドラム2内には、この給気チャンバユニット23から通気孔7を介して処理気体が供給される。
【0027】
給気チャンバユニット23は、給気ダクト22と接続される角筒状のチャンバ部24と、チャンバ部24とドラム2との間に配されドラム-チャンバ部間のクリアランスからエアが流入するのを抑制するシール部25とを備えた構成となっている。シール部25には、チャンバ部24のドラム側開口部26の側方に設けられ、ドラム2の外周に沿って延びるシール板27が設けられている。シール板27はフレーム28に取り付けられており、シール板27及びフレーム28の周縁には、ドラム2の外周と摺接しつつ、外部からのエアの侵入を防止する合成樹脂製のシール材29が取り付けられている。
【0028】
一方、排気孔31は、筐体4内に配された排気ダクト32を介して排気チャンバユニット33と接続され、排気部30を構成している。排気チャンバユニット33は、ドラム2の
図2において左下部に、ドラム2の胴部5に近接・対向する形で配設されている。ドラム2内に供給された処理気体は、通気孔7を介して排気チャンバユニット33に抜け、排気ダクト32、排気孔31を通って装置外へと排出される。
【0029】
排気チャンバユニット33も給気チャンバユニット23と同様の構成となっており、排気ダクト32と接続される角筒状のチャンバ部34と、チャンバ部34とドラム2との間に配されドラム-チャンバ部間のクリアランスからエアが流入するのを抑制するシール部35とを備えた構成となっている。シール部35には、チャンバ部34のドラム側開口部36の側方に設けられ、ドラム2の外周に沿って延びるシール板37が設けられている。シール板37はフレーム38に取り付けられており、シール板37及びフレーム38の周縁には、ドラム2の外周と摺接しつつ、外部からのエアの侵入を防止する合成樹脂製のシール材39が取り付けられている。
【0030】
ドラム2内にはさらに、コーティング液噴霧用のスプレーガン41が配置されている。スプレーガン41は、ガンホルダ42に取り付けられており、ドラム2の前面開口部8からドラム内に挿入され、装置正面側からドラム内に出し入れ自在に設けられている。スプレーガン41には、ガンホルダ42内に収容された図示しないホースを介して、コーティング液や噴霧エアが供給される。スプレーガン41はドラム2内にて上下方向に移動し、ドラム2内の錠剤3に対し、所定のスプレー位置から所望のタイミングでコーティング液等が適宜スプレーされ、コーティング処理が実施される。
【0031】
ここで、コーティング装置1では、筐体4の
図2,3において左右の側面にメンテナンス扉51,52が設けられており、そこから、給気チャンバユニット23と排気チャンバユニット33を筐体外に取り出せるようになっている。
図4は、給気チャンバユニット23と排気チャンバユニット33の着脱の様子を示す説明図である。
図4に示すように、筐体4の図中右上部には給気チャンバユニット着脱部53、同左下部には排気チャンバユニット着脱部54が設けられている。給気チャンバユニット着脱部53は、メンテナンス扉52を外側に開いた状態で、給気チャンバユニット23を水平方向に筐体4内から引き出せるようになっている。また、排気チャンバユニット着脱部54は、メンテナンス扉51を外側に開いた状態で、排気チャンバユニット33を筐体4内から斜め上方に引き出せるようになっている。
【0032】
前述のように、従来のコーティング装置では、各チャンバとシール板を筐体外に取り出す際、ドラム外周に沿って延在するシール部の端部がドラム外周と干渉してしまうおそれがあった。そこで、当該コーティング装置1では、各ユニット23,33において、シール板27,37を周方向に移動可能な可動構造とし、シール板27,37を周方向に逃がした状態で各ユニット23,33を筐体4に対し着脱できるようにしている。
図5は、排気チャンバユニット33の構造を示す説明図、
図6は、排気チャンバユニット33の(a)装着時と(b)着脱時の状態を示す説明図である。なお、給気チャンバユニット23も取付位置による若干の違いあるが、ほぼ同様の構造、状態となっており、ここでは、排気チャンバユニット33側を例にとって述べ、給気チャンバユニット23側についての説明は省略する。
【0033】
前述のように、排気チャンバユニット33は、チャンバ部34とシール部35とを有しているが、コーティング装置1では、シール部35のシール板37がドラム周方向に移動可能に設けられている。この場合、チャンバ部34とシール板37との間には、シール板37を移動可能に支持するシール板可動支持部61が設けられている。シール板可動支持部61は、チャンバ部34のドラム側開口部36側に配設され、チャンバ部34側に設けられた支持ピン62と、シール板37側に形成され支持ピン62と嵌合する長孔63を有している。支持ピン62と長孔63は、チャンバ部34の幅方向(ドラム2の軸方向)両側にそれぞれ3組ずつ配設されている。
【0034】
シール板可動支持部61にはさらに、ドラム側開口部36からドラム周方向に沿って上方に延びるガイドプレート64が設けられている。ガイドプレート64は、シール板37が取り付けられたフレーム38の内側に対向配置され、そこには、シール板37の移動位置(装着位置P・着脱位置Q)に合わせて、周方向に間隔を開けて2つの位置決め孔65(65p,65q)が形成されている。これに対し、フレーム38にはプランジャ66が設けられており、先端の可動ピン(図示せず)が位置決め孔65p,65qに嵌合することにより、シール板37が各位置P,Qにて位置決め保持される。
【0035】
また、チャンバ部34のドラム側開口部36側には、パチン錠67が2個取り付けられている。これに対し、フレーム38の中央側部には、パチン錠67の掛金アーム68が係合する受金フック69が設けられている。掛金アーム68と受金フック69は、シール板37が装着位置Pにあるとき対向するよう配置されており、装着位置Pにおいて、シール板37をチャンバ部34と固定できるようになっている。なお、掛金アーム68と受金フック69は、排気チャンバユニット33を筐体4内に設置したとき、メンテナンス扉51に臨む面側(作業員側)に設けられている。
【0036】
さらに、チャンバ部34の両側面71には、排気ダクト32との接続用のブラケット72が取り付けられている。排気ダクト32にはブラケット72に対応して固定ナット73が設けられており、排気ダクト32上に排気チャンバユニット33を配した状態で、ハンドル付きボルト74にて両者を固定できるようになっている。加えて、両側面71には、排気チャンバユニット33を着脱する際の持ち手となるハンドル75が取り付けられている。
【0037】
このようなコーティング装置1では、次のようにして排気チャンバユニット33の着脱が行われる。なお、給気チャンバユニット23も以下と同様の手順にて筐体4に着脱される。排気チャンバユニット33を筐体4から取り出す場合、まず、作業員は、メンテナンス扉51を開け、排気チャンバユニット33を筐体外からアクセス可能な状態とする。次に、装着位置P(
図4,
図6(a)参照)にある排気チャンバユニット33にて、パチン錠67を外した後、位置決め孔65pに嵌合しているプランジャ66を引き、シール板37を可能自在な状態とする。シール板37が上下可動となったところで、シール板37を着脱位置Qまで上方に引き上げ(矢示X方向)、プランジャ66を位置決め孔65qに嵌合させる。これにより、シール板37が着脱位置Q(
図4,
図6(b)参照)となる。そして、ハンドル付きボルト74を外して排気チャンバユニット33を排気ダクト32から解放した後、ハンドル75を持って、
図5に示すように、排気チャンバユニット33を斜め上方に引き出す。
【0038】
この際、排気チャンバユニット33では、シール板37が上方の着脱位置Qに移動しているため、シール板37とドラム外周が干渉しにくく、ユニットを上に持ち上げずに斜めに引き上げる形で着脱でき、従来に比して着脱作業性が大きく改善される。また、シール板37を大きくしても着脱時のドラムとの干渉を回避できるため、より大きなはみ出し量のシール板37を採用でき、シール性を確保しつつ、作業性の改善を図ることが可能となる。さらに、排気チャンバユニット33は、チャンバ部34が、上下2面(ドラム側開口部36とその対向面)が開口した角筒状に形成されているため、開口部がドラム側の1面しかない従来の排気チャンバに比して重量が軽量化される。このため、従来の装置よりも容易に排気チャンバユニット33を着脱でき、作業員の作業負担をさらに軽減することが可能となる。
【0039】
なお、給気部20の給気チャンバユニット23では、シール板27を下方の着脱位置Qに移動させ、ユニットを水平に引き抜く形となる。また、このように給気チャンバユニット23のシール板27を移動可能とすることにより、従来よりも大きなシール板27を採用しても、給気チャンバユニット23を筐体4に対し容易に着脱できるようになる。このため、作業性のみならず、給気部20のシール性の向上も図られる。
【0040】
斜め上方に引き出した排気チャンバユニット33は、チャンバ部34の底部34aを、メンテナンス扉51の開口部76の上縁77に載せた状態で、筐体4から引き出される。この場合、パンコーティング装置1においては、開口部76の上縁77と、排気ダクト32のメンテナンス扉51側の上端部78とが同じ高さに形成されている。このため、引き出した排気チャンバユニット33を開口部上縁77に載せながら作業を行うことができる。排気チャンバユニット33は前述のように軽量化が図られてはいるものの、それなりに大きく重量もあるため、着脱作業時に一旦開口部上縁77にユニットを載せることができるのは作業性の点でメリットがあり、この点においても作業負担の軽減が図られる。
【0041】
このようにして筐体4から取り出された排気チャンバユニット33は、適宜、洗浄処理が行われ、コーティング処理時には、前述とは逆の手順にて筐体4内に戻される。すなわち、シール板37を着脱位置Qとし、その状態で排気チャンバユニット33をメンテナンス扉51の開口部上縁77に載せ、筐体4内に挿入する。次に、開口部76から排気チャンバユニット33を斜め下方に押し込み、ハンドル付きボルト74により排気ダクト32上に固定する。そして、位置決め孔65qに嵌合しているプランジャ66を引き、シール板37を可能自在な状態とし、シール板37が上下可動となったところで、シール板37を装着位置Pまで下げ、プランジャ66を位置決め孔65pに嵌合させる。これにより、シール板37が装着位置Pの状態となり、さらに、パチン錠67を止めてシール板37を固定し、メンテナンス扉51を閉じて排気チャンバユニット33の取り付け作業を終了する。
【0042】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、ドラム2内に給気チャンバユニット23を介して処理気体を供給する給気部構造のパンコーティング装置に本発明を適用した例を示したが、ドラム2に対し、前面開口部8から処理気体を供給する給気部を備えた装置に本発明を適用し手も良い。その場合、給気部側は前記の構成となり、排気部側の排気チャンバユニット33のみを本発明のような筒状チャンバや可動シール板構造とする。なお、給気部のみを本発明のような筒状チャンバや可動シール板構造とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、薬や健康食品などの錠剤以外にも、ガムやチョコレートなどの菓子や他の食品のコーティング処理にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 パンコーティング装置
2 回転ドラム
3 錠剤
4 筐体
4a パン室
4b 機械室
4c 筐体上面
5 胴部
6 コニカル部
7 通気孔
8 前面開口部
9 エンドプレート
11 回転軸
12 前面ドア
13a,13b ユニットカバー
14 点検扉
15 製品排出口
20 給気部
21 給気孔
22 給気ダクト
23 給気チャンバユニット
24 チャンバ部
25 シール部
26 ドラム側開口部
27 シール板
28 フレーム
29 シール材
30 排気部
31 排気孔
32 排気ダクト
33 排気チャンバユニット
34 チャンバ部
34a 底部
35 シール部
36 ドラム側開口部
37 シール板
38 フレーム
39 シール材
41 スプレーガン
42 ガンホルダ
51 メンテナンス扉
52 メンテナンス扉
53 給気チャンバユニット着脱部
54 排気チャンバユニット着脱部
61 シール板可動支持部
62 支持ピン
63 長孔
64 ガイドプレート
65 位置決め孔
65p,65q 位置決め孔
66 プランジャ
67 パチン錠
68 掛金アーム
69 受金フック
71 側面
72 ブラケット
73 固定ナット
74 ハンドル付きボルト
75 ハンドル
76 開口部
77 上縁
78 上端部
81 シール板
82 チャンバ
83 回転ドラム
84 開口部
O 回転軸線
P 装着位置
Q 着脱位置