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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092890
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】粉鉱石造粒物製造用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/244 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C22B1/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205867
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亮司
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001BA14
4K001CA27
4K001CA29
4K001KA06
(57)【要約】
【課題】生石灰が配合された粉鉱石造粒物に用いられる添加剤であって、堆積層とした場合の通気性に優れた粉鉱石造粒物を製造できる粉鉱石造粒物製造用添加剤を提供する。
【解決手段】(a)オキシカルボン酸、オキシカルボン酸の塩、オキシカルボン酸のエステル、アルカノールアミン、アルカノールアミンの塩、及びアルカノールアミンのエステルから選ばれる1種以上の化合物〔以下、(a)成分という〕を含有する、粉鉱石造粒物製造用添加剤であって、粉鉱石造粒物は生石灰を配合して製造された粉鉱石造粒物であり、粉鉱石造粒物物の製造時に配合される生石灰に対して(a)成分が0.001質量%以上2質量%以下の割合で使用される、粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オキシカルボン酸、オキシカルボン酸の塩、オキシカルボン酸のエステル、アルカノールアミン、アルカノールアミンの塩、及びアルカノールアミンのエステルから選ばれる1種以上の化合物〔以下、(a)成分という〕を含有する、粉鉱石造粒物製造用添加剤であって、粉鉱石造粒物は生石灰を配合して製造された粉鉱石造粒物であり、粉鉱石造粒物物の製造時に配合される生石灰に対して(a)成分が0.001質量%以上2質量%以下の割合で使用される、粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項2】
(a)成分の分子量が1000以下である、請求項1に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項3】
オキシカルボン酸が、乳酸、リンゴ酸及びクエン酸から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項4】
アルカノールアミンが、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミンから選ばれる1種以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項5】
粉鉱石造粒物の製造時に配合される生石灰の平均一次粒径が10μm以上である、請求項1~4の何れか1項記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項6】
粉鉱石と、生石灰と、(a)オキシカルボン酸、オキシカルボン酸の塩、オキシカルボン酸のエステル、アルカノールアミン、アルカノールアミンの塩、及びアルカノールアミンのエステルから選ばれる1種以上の化合物〔以下、(a)成分という〕とを混合して造粒する、粉鉱石造粒物の製造方法であって、(a)成分を、生石灰に対して0.001質量%以上2質量%以下混合する、粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項7】
粉鉱石と、生石灰と、(a)成分及び水を含有する混合物とを混合する、請求項6に記載の粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項8】
生石灰の平均一次粒径が10μm以上である、請求項6又は7に記載の粉鉱石造粒物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生石灰が配合された粉鉱石造粒物の製造用添加剤、及び粉鉱石造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスでは、高炉に供給する鉄源として、粉鉱石の造粒物を焼結した焼結鉱が用いられる。粉鉱石の造粒物は、例えば、ドラムミキサーなどの混合装置を用いて、粉鉱石と生石灰に、石灰石、粉コークス、水などを供給して混合した後、造粒して製造される。
【0003】
特許文献1には、製鉄用原料を造粒処理する方法において、上記製鉄用原料に、重量平均分子量1000~1000000の、カルボキシル基および/またはその塩を含有する高分子化合物と、(a)キレート剤、(b)酸、および(c)酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる分子量500未満の低分子造粒補助剤とを添加して造粒処理を行うことを特徴とする製鉄用原料の造粒処理方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、疎水性会合コポリマーと、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのペレット化助剤とを含有する、金属含有鉱石のペレット化のための組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、有機ポリマーと、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの電解質とを含む結合剤を、所定条件で粒状鉄鉱に添加して、鉄鉱のペレットを作る方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、硫酸塩を含む所定の焼鉱粉類を造粒するに際して、クエン酸、酒石酸などの所定の化合物を添加したものを造粒する焼鉱粉類の造粒方法が開示されている。
【0007】
特許文献5には、粉鉄鉱石に低分子界面活性剤を加えて造粒する粉鉄鉱石の造粒物の製造方法であって、粉鉄鉱石を100質量部とした場合に、低分子界面活性剤であってその分子量が280~450のもの0.01~10質量部と、水3~25質量部を、粉鉄鉱石100質量部に加える粉鉄鉱石の造粒物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-76137号公報
【特許文献2】特開2018-527464号公報
【特許文献3】特開昭62-149825号公報
【特許文献4】特開昭50-49103号公報
【特許文献5】特開2013-087335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
粉鉱石の造粒物は、焼結して焼結鉱として高炉に供給される。焼結は、下方吸引式の焼結機で行われることが多い。下方吸引式の焼結機では、粉鉱石の造粒物は、数百mm程度の厚さの焼結ベッドともいわれる堆積層として取り扱われる。下方吸引式の焼結機では、焼結ベッドの下側から吸引することによって焼結に必要な空気を流通させると共に、焼結原料の上側から下側へ向かって凝結材を燃焼させることにより、焼結原料である造粒物を焼結するようになっている。粉鉱石造粒物は、焼結時の堆積層とした場合の通気性がよい事が望まれる。粉鉱石造粒物の通気性の向上は、焼結鉱の生産性の向上につながると考えられる。
【0010】
粉鉱石の造粒物を得る際に用いられる生石灰は、水和して水酸化カルシウムを生成し、これが粉鉱石の間隙に充填されて固着することで、バインダーとして機能すると考えられている。そのため、生石灰の添加量を増やすことは造粒物の強度向上させ、堆積層とした場合の通気性の向上につながると予想されたが、本発明者らの検討の結果、添加量を増やしても効果は頭打ちとなり、添加量に見合う通気性の向上効果は得られなかった。
【0011】
本発明は、生石灰が配合された粉鉱石造粒物に用いられる添加剤ないし製造方法であって、堆積層とした場合の通気性に優れた粉鉱石造粒物を製造できる粉鉱石造粒物製造用添加剤及び粉鉱石造粒物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(a)オキシカルボン酸、オキシカルボン酸の塩、オキシカルボン酸のエステル、アルカノールアミン、アルカノールアミンの塩、及びアルカノールアミンのエステルから選ばれる1種以上の化合物〔以下、(a)成分という〕を含有する、粉鉱石造粒物製造用添加剤であって、粉鉱石造粒物は生石灰を配合して製造された粉鉱石造粒物であり、粉鉱石造粒物物の製造時に配合される生石灰に対して(a)成分が0.001質量%以上2質量%以下の割合で使用される、粉鉱石造粒物製造用添加剤。
に関する。
【0013】
また、本発明は、粉鉱石と、生石灰と、(a)オキシカルボン酸、オキシカルボン酸の塩、オキシカルボン酸のエステル、アルカノールアミン、アルカノールアミンの塩、及びアルカノールアミンのエステルから選ばれる1種以上の化合物〔以下、(a)成分という〕とを混合して造粒する、粉鉱石造粒物の製造方法であって、(a)成分を、生石灰に対して0.001質量%以上2質量%以下混合する、粉鉱石造粒物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生石灰が配合された粉鉱石造粒物に用いられる添加剤ないし製造方法であって、堆積層とした場合の通気性に優れた粉鉱石造粒物を製造できる粉鉱石造粒物製造用添加剤及び粉鉱石造粒物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記のように、生石灰は粉鉱石の造粒物を得る際に水和して水酸化カルシウムを生成してバインダーとして機能すると考えられている。その際、生石灰は、表面に水酸化カルシウムの不動態を形成し、生石灰内部の水和を阻害する。本発明は、(a)成分の特定の化合物が、この不動態の形成を抑制し、効率よく水和を進行させること、いわば生石灰を活性化する機能を有することを見いだしたものである。更に本発明者の検討により、(a)成分は、生石灰と併用すると(a)成分自身の不動態を形成しやすい場合があることが判明した。本発明では、(a)成分を生石灰に対して所定の量で用いることで、生石灰の活性化効果と(a)成分自身の不動態の形成抑制効果とがバランス良く発現し、粉鉱石造粒物中の微粉の低減などにより、強固で粒径の揃った造粒物が得られ、その結果、堆積層とした場合に通気性がよい造粒物が得られるものと推察される。
【0016】
<粉鉱石造粒物製造用添加剤>
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、生石灰を配合して粉鉱石造粒物を製造する際に用いられる。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、(a)成分のオキシカルボン酸、オキシカルボン酸の塩、オキシカルボン酸のエステル、アルカノールアミン、アルカノールアミンの塩、及びアルカノールアミンのエステルから選ばれる1種以上の化合物を含有する。
【0017】
(a)成分は、カルシウムイオン拡散の観点から、分子量が1000以下、更に500以下、更に250以下の化合物が好ましい。(a)成分が塩又はエステルの場合は、オキシカルボン酸又はアルカノールアミンの分子量、つまりオキシカルボン酸換算又はアルカノールアミン換算の分子量が前記範囲であることが好ましい。
【0018】
(a)成分のオキシカルボン酸は、ヒドロキシ基を1個以上5個以下有するものが挙げられる。
(a)成分のオキシカルボン酸は、炭素数が2以上、更に3以上、そして、15以下、更に10以下のものが挙げられる。
【0019】
(a)成分のオキシカルボン酸としては、例えば、「化合物の辞典」(高本進、稲本直樹、中原勝儼、山崎昶編、朝倉書店(1997)pp.500-509)に記載されたものが挙げられる。(a)成分は、ラクトンのような環状エステルであってもよい。(a)成分としては、生石灰への吸着の観点から、α-ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
【0020】
(a)成分のオキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、イソクエン酸、クエン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、キナ酸、アスコルビン酸、及びグルコン酸から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、乳酸、リンゴ酸、クエン酸から選ばれる1種以上の化合物がより好ましい。
【0021】
(a)成分のオキシカルボン酸の塩としては、オキシカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、鉄塩などが挙げられる。また、鉄アンモニウム塩のような複塩であってもよい。オキシカルボン酸の塩は、オキシカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。なお、本発明では、(a)成分どうしで形成される塩も(a)成分としてよい。その場合、(a)成分を複数含む化合物であり、化合物全体の量を(a)成分の量とする。
【0022】
(a)成分のオキシカルボン酸のエステルとしては、オキシカルボン酸と炭素数1以上6以下のアルコールとのエステル、オキシカルボン酸と炭素数1以上6以下のカルボン酸とのエステルが挙げられる。前記アルコールは、1価以上3価以下のアルコールが挙げられる。また、前記カルボン酸は、1価以上3価以下のカルボン酸が挙げられる。
オキシカルボン酸がカルボン酸基を2個以上有する場合、エステル化度は、20以上100以下であってよい。
オキシカルボン酸がヒドロキシ基を2個以上有する場合、エステル化度は、20以上100以下であってよい。
該エステルは、オキシカルボン酸と炭素数1以上4以下の1価アルコールとのエステルが好ましい。
オキシカルボン酸のエステルとしては、具体的には、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、リンゴ酸ジメチル、リンゴ酸ジエチル、リンゴ酸ジブチル、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチルヘキシルが挙げられる。
なお、本発明では、(a)成分どうしで形成されるエステルも(a)成分としてよい。その場合、(a)成分を複数含む化合物であり、化合物全体の量を(a)成分の量とする。
【0023】
(a)成分のアルカノールアミンは、アルカノール基を1個以上3個以下有するものが挙げられる。
(a)成分のアルカノールアミンのアルカノール基は、炭素数が1以上、更に2以上、そして、5以下、更に3以下のものが挙げられる。
(a)成分のアルカノールアミンは、炭素数が2以上、更に4以上、そして、15以下、更に10以下のものが挙げられる。
(a)成分のアルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールモノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン等が挙げられ、生石灰の活性向上の観点から、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びN-メチルジエタノールアミンから選ばれる化合物が好ましい。
【0024】
アルカノールアミンの塩としては、アルカノールアミンの脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩などが挙げられる。更に、アルカノールアミンの塩としては、アルカノールアミンと酸基を有する高分子化合物との塩が挙げられる。かかる塩としては、アルカノールアミンのナフタレン系高分子化合物の塩、アルカノールアミンのポリカルボン酸系高分子化合物の塩、アルカノールアミンのメラミン系高分子化合物の塩、アルカノールアミンのリグニン系高分子化合物の塩、及びアルカノールアミンの酸基を有するフェノール系高分子化合物の塩が挙げられる。
【0025】
アルカノールアミンのエステルとしては、アルカノールアミンと脂肪族カルボン酸とのエステル、アルカノールアミンと芳香族カルボン酸塩とのエステルが挙げられる。更に、例えば、アルカノールアミンと炭素数1以上20以下のカルボン酸とのエステルが挙げられる。前記カルボン酸は、1価以上3価以下のカルボン酸が挙げられる。アルカノールアミンのエステルは、アルカノールアミンと炭素数1以上4以下の1価又は2価のカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0026】
(a)成分は、オキシカルボン酸、オキシカルボン酸の塩、オキシカルボン酸のエステル、アルカノールアミン、及びアルカノールアミンの塩から選ばれる1種以上の化合物であってよく、2種以上の化合物が好ましい。
(a)成分は、オキシカルボン酸、オキシカルボン酸の塩、アルカノールアミン、及びアルカノールアミンの塩から選ばれる1種以上の化合物であってよい。
(a)成分は、オキシカルボン酸、及びアルカノールアミンから選ばれる1種以上の化合物であってよい。
【0027】
(a)成分は、オキシカルボン酸、更に乳酸、リンゴ酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、(a)成分として、オキシカルボン酸、更に乳酸、リンゴ酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の化合物を含有するものが好ましい。(a)成分中、オキシカルボン酸、更に乳酸、リンゴ酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の化合物の割合は、好ましくは0質量%超、より好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0028】
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、(a)成分以外の任意成分として、水、分散剤、界面活性剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、消泡剤などを含有することができる。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、(a)成分からなるものであってもよい。
【0029】
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、生石灰が配合された粉鉱石造粒物に用いられる。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、粉鉱石造粒物物の製造時に配合される生石灰に対して(a)成分が0.001質量%以上、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下の割合で使用される。なお、本発明では、(a)成分の質量%や質量比は、オキシカルボン酸又はアルカノールアミンの量、つまりオキシカルボン酸換算又はアルカノールアミン換算の量に基づいて算出される。
【0030】
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤を適用する、粉鉱石造粒物に用いる生石灰の粒径としては、(a)成分の効果がより発現しやすい観点から、平均一次粒径が好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、そして、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。生石灰の平均一次粒径は体積基準のメジアン径である。生石灰の平均一次粒径(メジアン径)は、レーザー回折/散乱法を用いた方法で測定できる。具体的には、以下の条件の方法で測定できる。
・生石灰の平均一次粒径の測定方法
レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定する。レーザー回折/散乱式粒度分布計として、粒度分布測定装置「LA-300」(株式会社堀場製作所製)を用いる。測定すべき生石灰を、粒度分布測定装置「LA-300」に対して試料投入口から投入し、10分間超音波処理後に測定を開始する。
測定方法:フロー法
分散媒:エタノール
分散方法:攪拌、内蔵超音波照射(15W、28kHz、1分間)
測定時の透過率:70~90%
相対屈折率:1.2
【0031】
<粉鉱石造粒物の製造方法>
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法は、粉鉱石と、生石灰と、(a)成分とを混合して造粒する、粉鉱石造粒物の製造方法であって、(a)成分を、生石灰に対して、0.001質量%以上2質量%以下混合する、粉鉱石造粒物の製造方法である。(a)成分の具体例や好ましい態様は、本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤と同じである。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤で述べた事項は、本発明の粉鉱石造粒物の製造方法に適宜適用することができる。
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法は、本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤を用いて行うことができる。
【0032】
粉鉱石としては、ヘマタイト鉱石、ピソライト鉱石、マラマンバ鉱石、ゲーサイト鉱石などがあり、これら1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。粉鉱石は、例えば、南米産、豪州産、カナダ産、インド産などのものが使用できる。
【0033】
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、(a)成分の効果がより発現しやすい観点から、(a)成分を、生石灰に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下混合する。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤を用いる場合は、(a)成分の混合量がこの範囲となるように用いることが好ましい。
【0034】
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、焼結時の燃焼の観点から、(a)成分を、粉鉱石に対して、好ましくは0.0002質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上、そして、好ましくは0.06質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下混合する。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤を用いる場合は、(a)成分の混合量がこの範囲となるように用いることが好ましい。
【0035】
生石灰は造粒の際に粒子同士を結合させるためのバインダーとしても好ましい。生石灰は、水と反応すると水酸化カルシウムの微細粒子を生成し、この水酸化カルシウムの微細粒子が造粒時に粉鉱石の各粒子間間隙に侵入して付着することにより、紛鉱石粒子同士を結び付けて強固な疑似粒子を形成する作用がある。本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、造粒物の乾燥強度の観点から、生石灰を、粉鉱石に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下混合する。
【0036】
生石灰の粒径としては、(a)成分の効果がより発現しやすい観点から、平均一次粒径(メジアン径)が好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、そして、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0037】
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、粉鉱石と、生石灰と、(a)成分及び水を含有する混合物と、を混合することが好ましい。当該混合物は、スラリ、水溶液などが挙げられる。
【0038】
前記混合物は、(a)成分を、固形分として、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下含有する。前記混合物を用いる場合、生石灰や粉鉱石に対する(a)成分の混合量が前記範囲となるように用いることが好ましい。
【0039】
前記混合物は、製鉄原料、高炉、転炉、コークス炉など製鉄所から発生するダスト、スラジに加え、炭酸カルシウム、カオリンクレー、シリカ、珪砂、タルク、ベントナイト、ドロマイト粉末、ドロマイトプラスタ、炭酸マグネシウム、シリカヒューム、無水石膏、セリサイト、モンモリロナイト、シラス、シラスバルーン、珪藻土、焼成珪藻土、シリコンカーバイト、黄色酸化鉄、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、黒鉛、ワラストナイト、クレカスフェアー、カーボンブラック、ベンガラ、粉砕蛇紋岩、活性白土、ポルトランドセメント、粉砕珪石、酸化マグネシウム、焼成ヒル石、発電所ダスト、肺炎脱硫石膏、アスベスト粉塵などを含有することができ、製鉄ダスト、製鋼ダスト、及びコークスダストから選ばれる粉体を含有することが好ましい。前記混合物は、製鉄ダストを、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下含有する。
【0040】
粉鉱石と生石灰と(a)成分、更に、粉鉱石と生石灰と前記混合物との混合、造粒に用いられる造粒機としては、一般に焼結鉱プロセスで広く用いられているドラムミキサー、アイリッヒミキサー、ディスクペレタイザー、プロシャミキサー等などの造粒能力が高い造粒機が用いられる。なかでも粉鉱石、その他鉄含有原料、副原料、および、炭材に水や前記混合物を添加して1種類の造粒機のみで良好な混合、造粒を行なうことができ、生産性の高い、ドラムミキサーを用いることが好ましい。
【0041】
粉鉱石造粒物は、造粒後の焼結工程に必要な製鉄用副原料、凝結材等を含んでもよい。製鉄用副原料とは、焼結時の組成を調整するもので、石灰石、ドロマイトなどのCa含有原料(生石灰を除く)、蛇紋岩、珪石、スラグなどのSi含有原料、返鉱等が好適である。凝結材とは焼結時の熱源となるもので、粉コークス、無煙炭等が最適である。これらの成分の添加タイミングについては、目的により随時変更することができ、粉鉱石と生石灰と前記混合物とを混合する方法や、造粒物の焼結促進のため、副原料や凝結材を粉鉱石と生石灰と前記混合物とを混合した後に加える方法がある。
【0042】
本発明により製造された粉鉱石造粒物は、平均粒径が、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下である。ここで、粉鉱石造粒物の平均粒径は、下記の方法で算出することができる。後述の実施例では、下記の方法で粉鉱石造粒物の平均粒径を求めた。下記の方法は、例えば、東北大学の学位論文11301甲第18218号「鉄鉱石の資源の自由度拡大に資する焼結原料予備処理プロセスに関する研究」の5.2.4章などを参考にできる。
〔粉鉱石造粒物の平均粒径〕
造粒直後の造粒物を篩目0.5mm、1.0mm、2.8mm、4.75mm、8mm、9.5mmのスクリーンによって30秒間篩分けを行い、各篩上の質量を測定する。各篩での代表粒径には目開きの算術平均値を用い、代表粒径と各粒度の質量比率を加重平均して算出する。
【0043】
<粉鉱石造粒物>
本発明は、粉鉱石と、生石灰と、(a)成分とを含有する粉鉱石造粒物であって、(a)成分を、生石灰に対して、0.001質量%以上2質量%以下含有する、粉鉱石造粒物を提供する。本発明の粉鉱石造粒物は、粉鉱石と、生石灰と、生石灰に対して0.001質量%以上2質量%以下の(a)成分と、を混合して得られた粉鉱石造粒物であってよい。(a)成分の具体例や好ましい態様は、本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤及び粉鉱石造粒物の製造方法と同じである。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤及び粉鉱石造粒物の製造方法で述べた事項は、本発明の粉鉱石造粒物に適宜適用することができる。その場合、粉鉱石造粒物の製造方法における混合量は必要に応じて含有量に置き換えて適用できる。
【0044】
生石灰などを用いた粉鉱石造粒物は一般に塩基性雰囲気であることから、(a)成分の化合物は、粉鉱石造粒物中で塩や塩基性化合物となっていてもよい。本発明の粉鉱石造粒物では、(a)成分は、オキシカルボン酸の塩、アルカノールアミン、及びアルカノールアミンの塩から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。すなわち、本発明により、粉鉱石と、生石灰と、オキシカルボン酸の塩、アルカノールアミン、及びアルカノールアミンの塩から選ばれる1種以上の化合物とを含有する粉鉱石造粒物であって、前記化合物を、生石灰に対して、0.001質量%以上2質量%以下含有する、粉鉱石造粒物が提供される。
【実施例0045】
表に示す粉鉱石、粉鉱石造粒物製造用添加剤混合物、水などの成分を用いて下記の造粒方法により粉鉱石造粒物を製造した。得られた粉鉱石造粒物について以下の評価を行った。結果を表に示す。
【0046】
なお、表で用いた成分は以下のものである。
・カラジャス鉱石:南米産ヘマタイト鉱石
・ヤンディ鉱石:豪州産ピソライト鉱石
・生石灰:粒径200μm以下、平均一次粒径(メジアン径)25μm
・石灰石:粒径4.75mm、工業分析値 CaO55%、揮発分44%
・返鉱:焼結過程により形成された焼結ケーキを破砕時に得られる、所定の粒径に満たない焼結鉱
・粉コークス:粒径2.8mm、工業分析値 固定炭素(Fixed carbon)86%、灰分12%、揮発分2%
・ダスト:一次粒径が0.1μm以上10μm以下の粒子の製銑ダスト(平均一次粒径0.9μm)
【0047】
(1)粉鉱石の造粒方法
ドラムミキサーに粉鉱石、生石灰、石灰石、返鉱を投入し3分間混合した。その後、粉鉱石造粒物製造用添加剤混合物を添加しドラムミキサーで1分間混合し、更に水を添加しながら1分30秒造粒した。水の添加後、更に2分間造粒を行った。その後、粉コークスを添加して更に30秒造粒を行い、造粒物を得た。なお、各成分の混合量は表に示す質量部及び質量%となるように調整した。
【0048】
(2)通気性
造粒直後の粉鉱石造粒物を直径42mm高さ300mmの円筒に充填し、下部より差圧20.4mmHOで吸引を行い、円筒直下の風量を測定した。稲角著「焼結鉱」社団法人日本鉄鋼協会より、通気性JPUをJPU=F/A×(L/ΔP)0.6より算出した。JPUの値が大きいほど通気性がよいことを意味する。
F:風量(m/min)
A:円筒断面積(m
L:円筒高さ(mm)
ΔP:差圧(mmHO)
【0049】
【表1】
【0050】
*1 トリエタノールアミンのポリカルボン酸塩:トリエタノールアミンと、下記ポリカルボン酸Aとの塩、表には、トリエタノールアミンとしての量を示した。
*ポリカルボン酸A
メタクリル酸と、メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルのエステル(エチレングリコールの平均重合度120)との共重合体(共重合体中のメタクリル酸比率が90mol%)、重量平均分子量40000
【0051】
【表2】
【0052】
表1~2に示すように、(a)成分を用いて粉鉱石を造粒することで、通気性に優れた造粒物が得られることがわかる。
また、参考例2-1、2-2に示すように、生石灰を用いない場合は、(a)成分の有無により、造粒物の通気性には差違がみられなかった。このことから、本発明の(a)成分は、生石灰との組み合わせにおいて顕著な効果を発現する成分、すなわち生石灰が配合された粉鉱石造粒物において顕著な効果を示す成分であることがわかる。
一般に、粉鉱石造粒物の通気性と生産にはある程度の相関があることが知られており、例えば、冷間の通気性(JPU)が10%向上することで生産性が5%程度向上するという報告もある(出口ら「討 3 擬似粒子化の促進による焼結原料層の通気性向上(I 焼結原料の事前処理技術, 第 110 回講演大会討論会講演概要)」、鐵と鋼、日本鐡鋼協會々誌、社団法人日本鉄鋼協会、1985年8月1日、A177-A180, vol 71, No10(1985))。この水準は、例えば、実機における造粒物の造粒物において、火格子面積400mとした場合、焼結機1台で約30t/h生産量が向上することを意味する。ここで、表1の実施例1-3、1-7のJPUは51であり、比較例1-1のJPU47に対して通気性が7%程度向上している。そのため、実機による粉鉱石造粒物の製造では、これらの実施例は、比較例と比べて、1時間あたり数十トン程度生産性が向上すると予想され、この違いは当業者には非常に大きなものとして認識される。