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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092952
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20220616BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220616BHJP
   G09F 9/35 20060101ALI20220616BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G02F1/1333
G02F1/1335 510
G09F9/35
G09F9/30 349E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205972
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 洋祐
【テーマコード(参考)】
2H189
2H291
5C094
【Fターム(参考)】
2H189AA22
2H189AA35
2H189HA16
2H189LA17
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291KA01
2H291LA21
5C094AA02
5C094BA43
5C094ED14
5C094JA13
(57)【要約】
【課題】 2枚の表示パネルを備える液晶表示装置における表示品位の低下を抑制し得る液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】 一実施形態に係る液晶表示装置は、画像を表示するための表示領域を有する第1表示パネルと、第1表示パネルの表示面の反対側に設けられるバックライトと、第1表示パネルとバックライトとの間に設けられ、第1表示パネルに表示される画像の明るさを制御する第2表示パネルと、を備える。第1表示パネルおよび第2表示パネルは共に液晶層を有し、第2表示パネルの液晶層と第1表示パネルの液晶層との間に設けられる部材の第1屈折率は、第1表示パネルの液晶層より上に設けられる部材の第2屈折率よりも高い。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するための表示領域を有する第1表示パネルと、
前記第1表示パネルの表示面の反対側に設けられるバックライトと、
前記第1表示パネルと前記バックライトとの間に設けられ、前記第1表示パネルに表示される前記画像の明るさを制御する第2表示パネルと、
を備え、
前記第1表示パネルおよび前記第2表示パネルは共に液晶層を有し、
前記第2表示パネルの液晶層と前記第1表示パネルの液晶層との間に設けられる部材の第1屈折率は、前記第1表示パネルの液晶層より上に設けられる部材の第2屈折率よりも高い、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1屈折率は、1.6以上1.9以下の値であり、
前記第2屈折率は、1.5以下の値である、
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1表示パネルおよび前記第2表示パネルは共に、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間で挟持される前記液晶層と、を有し、
前記第1表示パネルの前記第1基板の下に第1偏光板が設けられ、
前記第1表示パネルの前記第2基板の上に第2偏光板が設けられ、
前記第2表示パネルの前記第1基板の下に第3偏光板が設けられ、
前記第2表示パネルの前記第2基板の上に第4偏光板が設けられ、
前記第1屈折率は、前記第2表示パネルの第2基板と、前記第4偏光板と、前記第1偏光板と、前記第1表示パネルの第1基板と、前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとを接着する接着層と、による屈折率であり、
前記第2屈折率は、前記第1表示パネルの第2基板と、前記第2偏光板とによる屈折率である、
請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
第1偏光板及び第2偏光板を有する第1表示パネルと、
第3偏光板及び第4偏光板を有する第2表示パネルと、
前記第1表示パネルと前記第2表示パネルとの間に配置される接着層と、
を備え、
前記第1表示パネルは、前記第2表示パネル上に設けられ、
前記第1偏光板は、前記第2偏光板と前記接着層との間に位置し、
前記第4偏光板は、前記接着層と前記第3偏光板との間に位置し、
前記第1偏光板、前記接着層、および前記第4偏光板のうち少なくとも1つの部材の屈折率は、前記第2偏光板の屈折率よりも高い、
液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1偏光板の屈折率は、1.6以上1.9以下の値である、
請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記接着層の屈折率は、1.6以上1.9以下の値である、
請求項4または請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第4偏光板の屈折率は、1.6以上1.9以下の値である、
請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
さらに、バックライトを備え、
前記第2表示パネルは、前記第1表示パネルと前記バックライトとの間に位置している、
請求項4に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置のコントラストを向上させるために、画像表示用の表示パネルに加えて、調光用の表示パネルを用いる技術が開発されている。しかしながら、この技術においては、2枚の表示パネルが重ねて構成されるため、観察者が表示画像を観察した際に、一方の表示パネルの表示層と他方の表示パネルの表示層との間の距離に応じた視差が生じてしまい、二重像が発生する等、表示品位が低下してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-18043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、2枚の表示パネルを備える液晶表示装置における表示品位の低下を抑制し得る液晶表示装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る液晶表示装置は、画像を表示するための表示領域を有する第1表示パネルと、前記第1表示パネルの表示面の反対側に設けられるバックライトと、前記第1表示パネルと前記バックライトとの間に設けられ、前記第1表示パネルに表示される前記画像の明るさを制御する第2表示パネルと、を備える。前記第1表示パネルおよび前記第2表示パネルは共に液晶層を有し、前記第2表示パネルの液晶層と前記第1表示パネルの液晶層との間に設けられる部材の第1屈折率は、前記第1表示パネルの液晶層より上に設けられる部材の第2屈折率よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、2枚の表示パネルを備える表示装置の一構成例を示す分解斜視図である。
図2図2は、図1に示す表示装置の構成を概略的に示す断面図である。
図3図3は、2枚の表示パネルを備える表示装置において発生し得る二重像について説明するための模式図である。
図4図4は、2枚の表示パネルを備える表示装置において発生し得る二重像について説明するための別の模式図である。
図5図5は、2枚の表示パネルを備える表示装置において発生し得るハロについて説明するための図である。
図6図6は、一実施形態に係る構成と比較例に係る構成とを対比して示す模式図である。
図7図7は、同実施形態に係る構成の表示装置における屈折率と視差との関係を説明するための図である。
図8図8は、同実施形態に係る構成の表示装置における屈折率と視差との関係を説明するための別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実施の態様に比べて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を省略することがある。
【0008】
図1は、2枚の表示パネルを備える表示装置DSPの構成を概略的に示す分解斜視図である。図1は、第1方向Xと、第1方向Xに垂直な第2方向Yと、第1方向Xおよび第2方向Yに垂直な第3方向Zとによって規定される三次元空間を示している。なお、第1方向Xおよび第2方向Yは互いに直交しているが、90度以外の角度で交差してもよい。また、本実施形態においては、第3方向Zを上と定義し、第3方向Zと反対側の方向を下と定義する。「第1部材の上の第2部材」および「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は第1部材に接していてもよいし、第1部材から離れて位置していてもよい。また、第3方向Zを示す矢印の先端側に表示装置DSPを観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向Xおよび第2方向Yで規定されるX-Y平面に向かって見ることを「平面視」と言う。
【0009】
図1に示すように、表示装置DSPは、液晶表示パネルPNL1と、調光パネルPNL2と、バックライトユニットBLと、を備える。図1に示すように、液晶表示パネルPNL1とバックライトユニットBLとの間に調光パネルPNL2が配置されることにより、液晶表示パネルPNL1に表示される画像のコントラストを向上させることができる。
【0010】
液晶表示パネルPNL1は、一例では矩形状である。図示した例では、液晶表示パネルPNL1の短辺EXは第1方向Xと平行であり、液晶表示パネルPNL1の長辺EYは第2方向Yと平行である。第3方向Zは、液晶表示パネルPNL1の厚さ方向に相当する。液晶表示パネルPNL1の主面は、第1方向Xと第2方向Yとにより規定されるX-Y平面に平行である。液晶表示パネルPNL1は、表示領域DAと、当該表示領域DAの外側の周辺領域SAとを有している。周辺領域SAは、ICチップやフレキシブルプリント回路基板が実装される端子領域MTを有している。図1では、端子領域MTは斜線により示されている。
【0011】
表示領域DAは、画像を表示する領域であり、例えばマトリクス状に配置された複数の画素PXを備えている。図1において拡大して示すように、各画素PXは、走査線Gおよび信号線Sによって区画される領域に配置されており、スイッチング素子SW、画素電極PE、共通電極CE、液晶層LC、等を備えている。
【0012】
スイッチング素子SWは、例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって構成され、走査線Gや信号線Sと電気的に接続されている。走査線Gは、第1方向Xに並ぶ画素PXの各々におけるスイッチング素子SWと電気的に接続されている。信号線Sは、第2方向Yに並んだ画素PXの各々におけるスイッチング素子SWと電気的に接続されている。画素電極PEは、スイッチング素子SWと電気的に接続されている。画素電極PEの各々は共通電極CEと対向し、画素電極PEと共通電極CEとの間に生じる電界により液晶層LCが駆動される。容量CSは、例えば、共通電極CEと同電位の電極および画素電極PEと同電位の電極の間に形成される。
【0013】
端子領域MTは、液晶表示パネルPNL1の短辺EXに沿って設けられ、液晶表示パネルPNL1を外部装置等と電気的に接続するための端子を含んでいる。液晶表示パネルPNL1は、端子領域MTに設けられる端子部を介して、例えばフレキシブルプリント回路基板等の外部装置と電気的に接続される。
【0014】
図1では詳細な構成の図示を省略しているが、調光パネルPNL2は、液晶表示パネルPNL1と基本的に同じ構成を有している。
【0015】
バックライトユニットBLは、調光パネルPNL2の下側に配置され、このバックライトユニットBLからの光を画素PX毎に制御することにより画像が表示される。
【0016】
図2は、図1に示す表示装置DSPの構成を概略的に示す断面図である。
上記したように、表示装置DSPは、液晶表示パネルPNL1と、調光パネルPNL2と、バックライトユニットBLと、を備える。なお、図2においてはバックライトユニットBLの図示を省略している。また、図2では説明の便宜上、液晶表示パネルPNL1と調光パネルPNL2の一部構成の図示を省略している。
【0017】
図2に示すように、液晶表示パネルPNL1と調光パネルPNL2とは、例えば透明な接着層OCAによって接着されている。より詳しくは、液晶表示パネルPNL1と調光パネルPNL2とで共通する構成が、平面視において重畳するように位置調整がなされた上で、液晶表示パネルPNL1と調光パネルPNL2とは接着層OCAにより接着されている。
【0018】
以下では、まず、液晶表示パネルPNL1の構成について説明する。
図2に示すように、液晶表示パネルPNL1は、第1基板SUB11と、第2基板SUB21と、第1偏光板PL11と、第2偏光板PL21と、を備えている。なお、図2では説明の便宜上図示を省略しているが、第1基板SUB11と第2基板SUB21との間には液晶層が設けられており、当該液晶層は図示しないシールによって封止されている。
【0019】
第1偏光板PL11は第1基板SUB11の下に設けられ、第2偏光板PL21は第2基板SUB21の上に設けられている。第1偏光板PL11の偏光軸と、第2偏光板PL21の偏光軸とは、例えばクロスニコルの関係、つまり、90度になっている。
【0020】
次に、調光パネルPNL2の構成について説明する。
図2に示すように、調光パネルPNL2は、液晶表示パネルPNL1と同様に、第1基板SUB12と、第2基板SUB22と、第1偏光板PL12と、第2偏光板PL22と、を備えている。なお、液晶表示パネルPNL1と同様に、第1基板SUB12と第2基板SUB22との間には液晶層が設けられており、当該液晶層は図示しないシールによって封止されている。
【0021】
第1偏光板PL12は第1基板SUB12の下に設けられ、第2偏光板PL22は第2基板SUB22の上に設けられている。第1偏光板PL12の偏光軸と、第2偏光板PL22の偏光軸とは、例えばクロスニコルの関係、つまり、90度になっている。また、液晶表示パネルPNL1の第1偏光板PL11の偏光軸と、調光パネルPNL2の第2偏光板PL22の偏光軸とは、同じ向きになっている。
【0022】
ここで、図3図5を参照して、2枚の表示パネル、具体的には、液晶表示パネルPNL1と調光パネルPNL2とを備える表示装置DSPにおいて発生し得る問題について説明する。図3および図4は、表示装置DSPにおいて発生し得る二重像について説明するための模式図である。
【0023】
図3では、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に画像が表示される場合を想定している。この場合、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する調光パネルPNL2の画素、具体的には、当該画素PX1の真下に位置する調光パネルPNL2の画素PX2もまた調光のために点灯(または消灯)するように制御される。
【0024】
このため、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に表示された画像を観察するために、観察者が表示面斜め方向から当該画素PX1を観察した場合、当該観察者の眼には、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線の他に、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線が入射する。より詳しくは、観察者の眼には、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線が図3に示す光路L1を辿って入射し、当該観察者の網膜において結像する。同様に、観察者の眼には、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線が図3に示す光路L2を辿って観察者の眼に入射し、当該観察者の網膜において結像する。
【0025】
これによれば、図3に示すように、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線と、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線とは、観察者の網膜上の異なる位置において結像する。より詳しくは、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線は図3のP1において結像し、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線は図3のP2において結像する。つまり、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線が結像する網膜上の位置(以下、結像位置と表記する)P1と、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線が結像する結像位置P2との間には、図3のD1に相当する差が生じてしまう。この差は視差と称され、当該視差によれば、例えば図4に示すように、表示画像が二重に見えてしまうといった問題(つまり、二重像が発生してしまうといった問題)が生じてしまう。
【0026】
なお、上記した視差は、原理的には、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線と、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線とが、観察者の網膜上の同じ位置において結像することによりゼロにすることが可能である。つまり、調光パネルPNL2の画素PX2が、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線と仮想的に同じ光路を辿る光線を出射可能な画素PX2´の位置にあると仮定すれば、上記した視差をゼロにすることが可能であり、このことを鑑みると、画素PX2と画素PX2´との間の画素数(つまり、図3のd1に相当する差)が視差と称されても構わない。
【0027】
上記した視差に起因する二重像の発生を抑制する手法としては、ぼかし処理が知られている。ぼかし処理とは、例えば液晶表示パネルPNL1の画素PX1に画像が表示される場合、当該画素PX1に対応する調光パネルPNL2の画素PX2に加えて、当該画素PX2の周辺に位置する画素を調光のために点灯(または消灯)するように制御し、液晶表示パネルPNL1に表示される画像をぼかして表示する方法である。
【0028】
図5は、上記したぼかし処理を説明するための図である。図5(a)は、表示画像に対応する画素が点灯するように制御されることにより当該表示画像が白色表示される場合のぼかし処理について説明するための模式図である。一方、図5(b)は、表示画像に対応する画素が消灯するように制御されることにより当該表示画像が黒色表示される場合のぼかし処理について説明するための模式図である。
【0029】
表示画像が白色表示される場合、液晶表示パネルPNL1においては、図5(a)に示すように、「あ」という文字の画像を白色表示するために当該画像に対応する1以上の画素PX1が点灯するように制御され、その他の画素PX1が消灯するように制御される。一方、調光パネルPNL2においては、液晶表示パネルPNL1において点灯された画素PX1に対応する画素PX2に加えて、当該画素PX2の周辺に位置する画素PX2もまた点灯するように制御される(換言すると、高階調部(白色)を低階調部(黒色)側に広げるように制御される)。このため、調光パネルPNL2においては、図5(a)に示すように、液晶表示パネルPNL1に比べて太めの「あ」という文字が白色表示される。
【0030】
これによれば、正面方向から表示装置DSPが観察された場合、図5(a)に示すように、輪郭が白みがかった「あ」という文字が観察者により観察される。一方、斜め方向から表示装置DSPが観察された場合であっても、調光パネルPNL2には上記したぼかし処理を加えているため表示画像が細らず、図5(a)に示すように、輪郭が白みがかった「あ」という文字が観察者により観察される。つまり、上記したぼかし処理によれば、「あ」という文字が二重に見えてしまうことを抑制し、輪郭が白みがかった太めの「あ」という文字を観察者に提供することが可能である。
【0031】
また、表示画像が黒色表示される場合、液晶表示パネルPNL1においては、図5(b)に示すように、「あ」という文字の画像を黒色表示するために当該画像に対応する1以上の画素PX1が消灯するように制御され、その他の画素PX1が点灯するように制御される。一方、調光パネルPNL2においては、液晶表示パネルPNL1において消灯された画素PX1に対応する画素PX2に加えて、当該画素PX2の周辺に位置する画素PX2もまた消灯するように制御される(換言すると、この場合においても、高階調部(白色)を低階調部(黒色)側に広げるように制御される)。このため、調光パネルPNL2においては、図5(b)に示すように、液晶表示パネルPNL1に比べて細めの「あ」という文字が黒色表示される。
【0032】
これによれば、正面方向から表示装置DSPが観察された場合、図5(b)に示すように、液晶表示パネルPNL1に表示された黒色画像と同じ太さの「あ」という文字が観察者により観察される。一方、斜め方向から表示装置DSPが観察された場合、調光パネルPNL2には上記したぼかし処理を加えているため、図5(b)に示すように、正面方向から表示装置DSPが観察された場合に比べて太めの「あ」という文字が観察者により観察される。つまり、上記したぼかし処理によれば、「あ」という文字が二重に見えてしまうことを抑制し、太めの「あ」という文字を観察者に提供することが可能である。
【0033】
以上のように、調光パネルPNL2においてぼかし処理が行われることにより、斜め方向から表示装置DSPを観察する観察者に対して、二重像に見えにくい表示画像、より詳しくは、液晶表示パネルPNL1に表示される表示画像に比べて輪郭が太った表示画像を提供することが可能である。
【0034】
上記したぼかし処理においては、高階調部を低階調部側に広げるように点灯または消灯される画素PX2の範囲(以下、ぼかし処理範囲と表記する)が広いほど、観察者に対して二重像に見えにくい表示画像を提供することが可能である。一方、ぼかし処理範囲が広いと、広範囲にわたってハロが発生することになるので、表示品位が低下してしまうといった問題がある。つまり、上記したぼかし処理によれば、視差に起因する二重像の発生を抑制することはできるものの、ぼかし処理範囲が広すぎると、広範囲にわたってハロが発生することになるため、表示画像が見辛くなる等、表示品位が低下してしまう可能性がある。
【0035】
そこで、本願発明者は、上記した視差に起因する二重像の発生を抑制するためにぼかし処理を行うのではなく、当該視差自体を小さくすることで、視差に起因する二重像の発生を抑制可能な表示装置DSPの構成を考案した。換言すれば、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線の結像位置と、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線の結像位置との間の視差を小さくすることが可能な表示装置DSPの構成を考案した。
【0036】
具体的には、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線の結像位置が、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線の結像位置に近づくように、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの各部を高屈折部材で構成し、視差を小さくすることが可能な構成を考案した。より詳しくは、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの各部による屈折率(第1屈折率)が、液晶表示パネルPNL1の第2基板SUB21および第2偏光板PL21による屈折率(第2屈折率)よりも高くなるように、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの各部を高屈折部材で構成し、視差を小さくすることが可能な構成を考案した。
【0037】
以下では、比較例を用いて、本実施形態に係る表示装置DSPの効果について説明する。なお、比較例は、本実施形態に係る表示装置DSPが奏し得る効果の一部を説明するためのものであって、比較例と本実施形態とで共通する効果を本願発明の範囲から除外するものではない。
【0038】
図6は、比較例に係る構成の表示装置DSPにおける液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線の光路L1および調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線の光路L2と、本実施形態に係る構成の表示装置DSPにおける液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線の光路L1および調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線の光路L3と、を対比して示す模式図である。なお、図6では、比較例に係る構成の表示装置DSPにおける光路を破線で示し、本実施形態に係る構成の表示装置DSPにおける光路を実線で示している。
【0039】
なお、本実施形態に係る構成の表示装置DSPは、上記したように、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの各部が高屈折部材で構成されており、ここでは一例として、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの部材による屈折率が第1の値n1を示すものとする。なお、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの部材による屈折率は、調光パネルPNL2の表示層(液晶層)から液晶表示パネルPNL1の表示層(液晶層)までの部材による屈折率に相当するため、層間屈折率と称されてもよい。
【0040】
一方、比較例に係る構成の表示装置DSPは、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの各部が低屈折部材で構成され、例えば、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの層間屈折率は第2の値n2(<n1)を示すものとする。
【0041】
比較例に係る構成においては、図6の破線に示すように、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線は、光路L1を辿って観察者の眼に入射し、当該観察者の網膜における第1結像位置P1で結像する。また、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線は、光路L2を辿って観察者の眼に入射し、当該観察者の網膜における第2結像位置P2で結像する。
【0042】
このため、比較例に係る構成においては、図6に示すように、画素PX1に対応する光線の結像位置P1と、画素PX2に対応する光線の結像位置P2との間に視差D1が生じることになる。換言すると、比較例に係る構成においては、図6に示すように、画素PX2と、画素PX1に対応する光線と仮想的に同じ光路を辿る光線を出射可能な画素PX2Aとの間の画素数に相当する視差d1が生じることになる。
【0043】
一方、本実施形態に係る構成おいては、図6の実線に示すように、調光パネルPNL2の画素PX2に対応する光線は、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの層間屈折率が比較例に係る構成よりも大きい第1の値n1を示すため、比較例における光路L2よりも大きな傾きを有した光路L3を辿って観察者の眼に入射し、当該観察者の網膜における第3結像位置P3で結像する。
【0044】
なお、本実施形態に係る構成と、比較例に係る構成とは、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの層間屈折率が異なること以外は同様であるため、液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11より上に位置する画素PX1に対応する光線は、上記した層間屈折率の違いによる影響を受けず、液晶表示パネルPNL1の画素PX1に対応する光線は、上記した比較例と同様に、光路L1を辿って観察者の眼に入射し、当該観察者の網膜における第1結像位置P1で結像する。
【0045】
これによれば、本実施形態に係る構成においても、図6に示すように、画素PX1に対応する光線の結像位置P1と、画素PX2に対応する光線の結像位置P3との間には視差D2が生じてしまうものの、比較例に係る構成において生じる視差D1に比べてその値を小さくすることができるため、比較例に係る構成に比べて二重像の発生を抑制することが可能である。換言すると、本実施形態に係る構成においては、図6に示すように、画素PX2と、画素PX1に対応する光線と仮想的に同じ光路を辿る光線を出射可能な画素PX2Bとの間の画素数に相当する視差d2は生じてしまうものの、比較例に係る構成に比べて(d1-d2)に相当する画素数分だけ視差を小さくすることができ、比較例に係る構成に比べて二重像の発生を抑制することが可能である。
【0046】
また、本実施形態に係る構成によれば、上記したように、調光パネルPNL2においてぼかし処理が行われなくても二重像の発生をある程度抑制することが可能であるため、例えば、二重像の発生をさらに抑制するために、調光パネルPNL2においてさらにぼかし処理が行われる場合、ぼかし処理範囲が狭くても十分に二重像の発生を抑制することが可能である。つまり、本実施形態に係る構成によれば、視差に起因する二重像の発生を抑制しつつ、ぼかし処理をさらに加えたとしても、当該ぼかし処理に起因したハロの発生を抑制し、当該ハロを狭い範囲に留めることが可能である。
【0047】
図7は、層間屈折率と視差との関係を説明するための図である。
なお、ここでは、図7(a)に示すように、調光パネルPNL2の第2基板SUB22が0.5mmの厚さを有し、第2偏光板PL22が0.3mmの厚さを有し、接着層OCAが0.4mmの厚さを有し、液晶表示パネルPNL1の第1偏光板PL11が0.3mmの厚さを有し、第1基板SUB11が0.5mmの厚さを有している場合の層間屈折率と視差との関係について説明する。
【0048】
図7(b)に示すように、層間屈折率が高い値を示すほど、所定の視野角における視差は小さくなっていることが分かる。一例として、視野角が80度の場合における層間屈折率と視差との関係に注目すると、層間屈折率が1.5の場合、視差はおよそ1.8mmを示すのに対し、層間屈折率が2.0の場合、視差はおよそ1.15mmを示しており、層間屈折率が高い値を示すほど視差が小さくなっていることが分かる。なお、ここでは一例として、視野角が80度の場合における層間屈折率と視差との関係に注目したが、視野角が別の値を示す場合も同様に、層間屈折率が高い値を示すほど視差は小さな値を示している。
【0049】
このため、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までを高屈折部材で構成した本実施形態に係る構成の表示装置DSPにおいては、視差を小さくすることができ、当該視差に起因する二重像の発生を抑制することが可能である。
【0050】
図8は、層間屈折率と視差との関係を説明するための別の図である。
ここでは、図8(a)および図8(b)に示すように、観察者が、縦420mm×横340mmの21型の表示装置DSPを、最適視距離である1260mmだけ離れた位置から45度の視野角をもって観察した場合の層間屈折率と視差との関係について説明する。最適視距離とは、表示装置DSPを観察するにあたって最適とされる距離であり、例えば、表示装置DSPの高さの3倍が最適視距離に相当する。
【0051】
この場合においても、図8(c)に示すように、層間屈折率が高い値を示すほど視差は小さくなっていることが分かる。例えば、層間屈折率が1.5の場合、視差はおよそ6.5画素を示すのに対し、層間屈折率が2.0の場合、視差はおよそ4.5画素を示しており、およそ2画素分だけ視差が小さくなっていることが分かる。
【0052】
このため、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までを高屈折部材で構成した本実施形態に係る構成の表示装置DSPにおいては、視差を小さくすることができ、当該視差に起因する二重像の発生を抑制することが可能である。
【0053】
なお、図8(c)に示すように、層間屈折率が高い値を示すほど視差を小さくすることはできるものの、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの各部の構成部材の材質や価格等を考慮すると、層間屈折率を例えば2.3等の高い値にすることは難しく、層間屈折率は1.6以上1.9以下であることが好ましい。
【0054】
以上説明した一実施形態に係る構成の表示装置DSPは、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの各部による屈折率が、液晶表示パネルPNL1の第2基板SUB21および第2偏光板PL21による屈折率よりも高くなるように、調光パネルPNL2の第2基板SUB22から液晶表示パネルPNL1の第1基板SUB11までの各部が高屈折部材で構成される。これによれば、視差に起因する二重像の発生を抑制することが可能であり、2枚の表示パネルを備える表示装置における表示品位の低下を抑制することが可能である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
DSP…表示装置、PNL1…液晶表示パネル、SUB11…第1基板、SUB21…第2基板、PL11…第1偏光板、PL21…第2偏光板、PX1…画素、PNL2…調光パネル、SUB12…第1基板、SUB22…第2基板、PL12…第1偏光板、PL22…第2偏光板、PX2,PX2A,PX2B…画素、L1~L3…光路、D1,D2,d1,d2…視差、P1~P3…結像位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8