(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009303
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】多芯式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/14 20060101AFI20220106BHJP
B43K 24/16 20060101ALI20220106BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20220106BHJP
B43K 24/10 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B43K24/14 110
B43K24/16
B43K29/02 F
B43K24/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171646
(22)【出願日】2021-10-20
(62)【分割の表示】P 2017079649の分割
【原出願日】2017-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2016231802
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】住吉 聡
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA02
2C353HE02
2C353HE06
2C353HE13
2C353HG04
(57)【要約】
【課題】同一のリフィルの出没の繰り返しを簡単に行うことが可能な多芯式筆記具を提供する。
【解決手段】多芯式筆記具1が、軸筒3と、複数の筆記体5と、ノック部材30と、軸筒3に対して軸線回りに回転可能に設けられた回転選択部材20と、を具備し、複数の筆記体5の少なくとも1つは、熱変色性インクを収容し、回転選択部材20の回転に応じて、複数の筆記体5の1つが前進した位置に配置され、ノック操作によって、前進した位置に配置された筆記体5が、軸筒3から突出して筆記状態になる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、複数の筆記体と、ノック部材と、前記軸筒に対して軸線回りに回転可能に設けられた回転選択部材と、を具備し、
前記複数の筆記体の少なくとも1つは、熱変色性インクを収容し、
前記回転選択部材の回転に応じて、前記複数の筆記体の1つが前進した位置に配置され、
ノック操作によって、前記前進した位置に配置された前記筆記体が、前記軸筒から突出して筆記状態になり、
前記軸筒内に第1係止部が設けられ、前記ノック部材に第2係止部が設けられ、筆記状態において、前記第1係止部及び前記第2係止部が係止することによって、前記回転選択部材の回転が規制されることを特徴とする多芯式筆記具。
【請求項2】
前記第1係止部が、前記軸筒の内周面に設けられた、径方向内方に向かって延びるリブ状の係止突起であり、前記第2係止部が、前記ノック部材の外周面に設けられた、軸線方向に延びる複数の係止溝であることを特徴とする請求項1に記載の多芯式筆記具。
【請求項3】
前記複数の筆記体の各々にはカム突起が形成された摺動コマが接続され、前記ノック部材にはカムが形成され、前記カム突起と前記カムとが前記回転選択部材の回転によって協働して前記複数の筆記体の1つを前進した位置に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の多芯式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリフィルを備えた多芯式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のリフィルを備え、所望のリフィルを選択的に出没可能な多芯式筆記具が公知である(特許文献1)。特許文献1に記載の多芯式筆記具では、軸筒後端部に筆跡を変色させる摩擦部を備え、軸筒の側面に複数の操作部(摺動体)が、周方向に沿って配置されている。操作部の各々は、軸線方向に摺動可能である。軸筒内には複数のリフィルが配置され、リフィルの各々は、対応する操作部に接続されている。所望のリフィルに相当する操作部を前方へスライドさせることによって、当該リフィルを筆記状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の多芯式筆記具では、同一のリフィルを使用し続ける場合であっても、リフィルを出没させる度に、再度、複数の操作部の中から所望のリフィルに対応する操作部を選択し直さなければならない。すなわち、例えば、黒色、赤色及び青色のインクをそれぞれ収容した3本のリフィルを有する多芯式筆記具において、普段は黒色で筆記をする場合、一度、黒色で筆記した後に非筆記状態に戻し、再度、黒色で筆記をしようとすると、やはり3つの操作部の中から黒に対応する操作部を選択し直さなければならず、面倒である。
【0005】
また、特許文献1に記載の多芯式筆記具では、筆記状態から非筆記状態にするために、筆記状態にないリフィルに対応する操作部を前方へ軽くスライドさせることによって、筆記状態が解除される。そのため、多芯式筆記具を持ち替えた際などに、誤って他の操作部を操作してしまい、意図せず筆記状態が解除されてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、同一のリフィルの出没の繰り返しを簡単に行うことが可能な多芯式筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、軸筒と、複数の筆記体と、ノック部材と、前記軸筒に対して軸線回りに回転可能に設けられた回転選択部材と、を具備し、前記複数の筆記体の少なくとも1つは、熱変色性インクを収容し、前記回転選択部材の回転に応じて、前記複数の筆記体の1つが前進した位置に配置され、ノック操作によって、前記前進した位置に配置された前記筆記体が、前記軸筒から突出して筆記状態になることを特徴とする多芯式筆記具が提供される。なお、多芯式筆記具の軸線方向において、筆記部側を「前」側と規定し、筆記部とは反対側を「後」側と規定する。
【0008】
また、別の態様によれば、当該多芯式筆記具による筆跡を消去する消去部材をさらに具備する。
【0009】
また、別の態様によれば、カバー部材をさらに具備し、前記ノック部材に前記消去部材が設けられ、前記カバー部材が消去部材に嵌合している。
【0010】
また、別の態様によれば、前記軸筒内に第1係止部が設けられ、前記ノック部材に第2係止部が設けられ、筆記状態において、前記第1係止部及び前記第2係止部が係止することによって、前記回転選択部材の回転が規制される。
【0011】
また、別の様態によれば、前記消去部材が、プラスチック字消し又は消しゴムであり、前記複数の筆記体の少なくとも1つは、前記プラスチック字消し又は前記消しゴムを用いて消去可能な筆跡を筆記可能である。ここでいう、プラスチック字消し又は消しゴムを用いて筆跡を消去可能とは、プラスチック字消し又は消しゴムで筆跡を擦過することによって、筆跡の周囲の紙面等を汚すことなく筆跡を消去可能であることをいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、同一のリフィルの出没の繰り返しを簡単に行うことが可能な多芯式筆記具を提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による多芯式筆記具の非筆記状態の縦断面図である。
【
図3】多芯式筆記具の非筆記状態の部分断面図である。
【
図9】第2カム及び第2カム突起の協働動作を説明する模式図である。
【
図10】第1カム及び第1カム突起の協働動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0015】
図1は、本発明の実施形態による多芯式筆記具1の非筆記状態の縦断面図であり、
図2は、多芯式筆記具1の筆記状態の縦断面図であり、
図3は、多芯式筆記具1の非筆記状態の部分断面図である。本明細書中では、多芯式筆記具1の軸線方向において、後述する筆記部4側を「前」側と規定し、筆記部4とは反対側を「後」側と規定する。また、「軸線」又は「中心軸線」とは、特に断りのない限り、多芯式筆記具1の中心軸線を意味する。
【0016】
多芯式筆記具1は、前軸2と後軸10とを備え且つ全体として円筒状に形成された軸筒3と、軸筒3の後端、すなわち後軸10の後端に取り付けられ且つ全体として円筒状に形成された回転選択部材20とを有している。前軸2と後軸10とは、前軸2の後端部が後軸10の前端部内において互いに螺合することで取り付けられる。軸筒3内には、筆記部4を備えた3本の筆記体、すなわちリフィル5が収容されている。前軸2の前端には、リフィル5の筆記部4を突出させるための孔が形成されている。
【0017】
リフィル5の後方の軸筒3内にはノック部材30が配置されている。ノック部材30は、スプリング6によって後方に付勢されている。ノック部材30の後端部には、消去部材7が設けられている。消去部材7は、円筒状に形成されたカバー部材8によって覆われている。カバー部材8は、ノック部材30の後端に着脱可能に取り付けられている。ノック部材30の外周面と軸筒3の内周面との間には、3つの摺動コマ50が配置されている。摺動コマ50の各々にはリフィル5の後端部が接続されている。ノック部材30の後端部近傍には、回転カム40が配置されている。
【0018】
図4は、後軸10の縦断面図である。後軸10の後端部は、より小径な小径部11が形成されている。小径部11の後端部近傍の外周面には、第1係合突起12が環状に形成されている。後軸10の内部には、後軸10内を前後に隔てる隔壁13が形成されている。後述する
図11の横断面図に示されているように、隔壁13の中心には、ノック部材30が挿入される貫通孔14が形成され、貫通孔14の周囲には、リフィル5の各々が挿入される3つの貫通孔15が同心円状に形成されている。また、隔壁13より後方の内周面には、径方向内方に向かって延びる3つのガイド壁16が、後軸10の後端部に至るまで形成されている。ガイド壁16の頂面、すなわち中心軸線に面した平坦な面には、第1係止部である、リブ状の係止突起17が形成されている。後軸10の後端部近傍のガイド壁16は、肉厚が薄く、それによって段部18が形成されている。
【0019】
図5は、回転選択部材20の縦断面図である。回転選択部材20の後端壁には、ノック部材30の後端部又は消去部材7が突出するための貫通孔21が形成されている。回転選択部材20の前端開口近傍の内周面には、2つの第2係合突起22が対向する位置に形成されている。第2係合突起22の各々は、軸線方向に延びる2つの縦孔22aの間に亘って形成されている。第2係合突起22が縦孔22aによって挟まれていることによって、第2係合突起22の周囲の回転選択部材20の部分が変形しやすくなり、したがって第2係合突起22は、径方向内方又は径方向外方へと僅かばかり移動可能となる。第2係合突起22の後方の内周面には、軸線方向に延びる4本のガイド溝23が周方向に沿って等間隔に形成されている。ガイド溝23は、回転選択部材20の軸線方向中央近傍の段差であるストップ部23aまで延びている。
【0020】
ストップ部23aの後方の内周面には、複雑な形状の溝が形成され、溝を画成する壁面によって第1カム24が形成される。すなわち、第1カム24は、溝によって画成された8つの第1突起24a及び4つの第2突起24bの壁面によって形成される。8つの第1突起24aは、周方向に沿って等間隔に形成されている。4つの第2突起24bは、第1突起24aのすぐ後方において、周方向に沿って等間隔に形成されている。第1突起24aの各々は、第1斜面25を有している。第2突起24bの各々は、周方向に沿って並列する2つの第2斜面26を有している。第2突起24b間には、回転選択部材20の後端壁まで延びる縦溝27が形成されている。第2突起24bの2つの第2斜面26間には、後方に向かって僅かばかり延びている停止溝28が形成されている。
【0021】
回転選択部材20の前端部は、軸筒3の後端部、すなわち後軸10の後端部に対して軸線回りに回転可能に取り付けられる。すなわち、回転選択部材20の前端開口を後軸10の後端部に対して挿入しようと、回転選択部材20の第2係合突起22が、後軸10の第1係合突起12に当接する。回転選択部材20を後軸10に対して押し込むと、第2係合突起22が径方向外方へ移動して第1係合突起12を乗り越え、スナップ式に嵌合する。その結果、回転選択部材20は、後軸10から外れることなく、軸線回りに回転可能となる。
【0022】
図6は、ノック部材30の斜視図である。ノック部材30は、円柱状の本体部材31を有している。本体部材31の外周面には、より大径の円柱状の円環部31aが形成されている。円環部31aの外周面には、4つのガイド突起32が周方向に沿って等間隔に形成されている。円環部31aよりも前方の本体部材31の外周面には、全周に亘る1本の溝が形成され、溝を画成する壁面によって第2カム33が形成されている。本体部材31の前方には、段部31bを介してより小径な円柱状に形成され、その外周面には、第2係合部である、軸線方向に延びる複数の係止溝34が形成されている。係止溝34の前方には、段部35aを介してより小径な円柱状のガイド杆35が形成されている。
【0023】
本体部材31の後方には、より小径の円柱状の嵌合部36が形成されている。嵌合部36の外周面には、2つの係止爪37が軸線に対称な位置に形成されている。係止爪37の後方の外周面には、2つの嵌合突起38が軸線に対称な位置に形成されている。嵌合部36の後端面には、後方に向かって延び且つ先端が膨らんだキノコ状の保持突起39が形成されている。保持突起39には、消去部材7が嵌合しているが、消去部材7を2色成形によって形成してもよい。嵌合突起38は、カバー部材8に形成された凹部又は貫通孔と嵌合し、それによって、カバー部材8がノック部材30の後端部に対して着脱可能に取り付けられる。
【0024】
なお、カバー部材8をノック部材30と嵌合させるのではなく、カバー部材8を消去部材7と嵌合させるようにしてもよい。すなわち、消去部材7を、カバー部材8の内径よりも僅かばかり大きい外径を有するように形成するか、又は、カバー部材8の内周面と当接する突起を有するように形成してもよい。それによって、カバー部材8が確実に取り付けられ、カバー部材8が意図せず外れてしまうことを防止することができる。
【0025】
組み立てられた状態では、ノック部材30のガイド杆35は、スプリング6に挿入されて、後軸10の貫通孔14に挿入されている。スプリング6の一端はノック部材30の段部35aによって支持され、スプリング6の他端は、後軸10の隔壁13によって支持される。その結果、ノック部材30は、スプリング6の付勢力によって後方へ付勢されている。ノック部材30の4つのガイド突起32の各々は、回転選択部材20の4本のガイド溝23内にそれぞれ配置される。したがって、ノック部材30のガイド突起32が回転選択部材20のガイド溝23内をスライドすることによって、ノック部材30を安定して前後に移動させることが可能となる。ノック部材30の前進は、ノック部材30の段部31bが後軸10の段部18に当接することによって規制され、ノック部材30の後退は、ノック部材30のガイド突起32が回転選択部材20のストップ部23aに当接することによって規制される。
【0026】
図7は、回転カム40の斜視図である。回転カム40は、中空円柱状に形成されている。回転カム40の外周面には、2つの円柱状の第1カム突起41が軸線に対称な位置に形成されている。回転カム40は、ノック部材30の後端部の嵌合部36に対して軸線回りに回転可能に取り付けられる。すなわち、回転カム40をノック部材30の嵌合部36に対して押し込みながら挿入すると、回転カム40は、係止爪37を越えてノック部材30の本体部材31の後端面に当接し、取り付けが完了する。回転カム40は、嵌合部36の外径よりも僅かばかり大きな内径の内周面を有している。したがって、回転カム40は、ノック部材30に取り付けられながら、軸線回りに容易に回転することができる。また、係止爪37が回転カム40と係止することによって、回転カム40が後方へ外れてしまうことが防止される。
【0027】
組み立てられた状態では、回転カム40の第1カム突起41は、回転選択部材20の第1カム24を含む溝内に配置されている。したがって、回転カム40の第1カム突起41は、
図10を参照しながら後述するように、回転選択部材20の第1カム24と協働し、多芯式筆記具1の筆記状態及び非筆記状態を選択的に維持する。
【0028】
図8は、摺動コマ50の斜視図である。摺動コマ50は、後述する
図12の横断面図に示されているように、中空円柱を120度の中心角で縦割りしたような柱状の部材である。前半体51の肉厚は、後半体52の肉厚よりも厚く形成されている。前半体51の前端面には、リフィル5を挿入する挿入孔53が、軸線方向に延びるように形成されている。挿入孔53は、前半体51の円筒面状の内面に向かって矩形に開口している。後半体52の円筒面状の内面には、円柱状の第2カム突起54が形成されている。
【0029】
組み立てられた状態では、3つの摺動コマ50の各々は、
図12に示されるように、後軸10のガイド壁16間に配置されている。また、摺動コマ50の第2カム突起54は、ノック部材30の第2カム33を含む溝内に配置されている。したがって、摺動コマ50の第2カム突起54は、
図9を参照しながら次に説明するように、ノック部材30の第2カム33と協働し、所定の1つの摺動コマ50を前進させ、残りの2つの摺動コマ50を後退、あるいは停滞させる。
【0030】
図9は、第2カム33及び第2カム突起54の協働動作を説明する模式図である。
図9では、第2カム33を周方向に展開したものに対して、3つの第2カム突起54の位置、すなわち3つの摺動コマ50の位置を示したものである。
図9において、上方が多芯式筆記具1の後端側で、下方が多芯式筆記具1の前端側である。第2カム33は、上述したように、1本の溝の壁面によって形成されるものであるから、
図9における第2カム33の左右は繋がっている。
【0031】
多芯式筆記具1は、
図10を参照しながら後述するように、多芯式筆記具1の後端部をノック操作することによって、筆記状態及び非筆記状態を選択的に切り替え可能なノック式筆記具である。ノック操作によって、3つのリフィル5の中で相対的に前進しているリフィル5が、前軸2の前端の孔から突出し、多芯式筆記具1は筆記状態となる。すなわち、ノック操作によって、第2カム33が形成されたノック部材30と、第2カム33と協働する第2カム突起54を有する摺動コマ50と、摺動コマ50に接続されたリフィル5とが、一体となって前進し、相対的に前進しているリフィル5のみが、前軸2の前端の孔から突出可能となっている。したがって、
図9(A)の状態でノック操作を行うと、相対的に前進している図中左の摺動コマ50に接続されたリフィル5が筆記状態となる。
【0032】
筆記するリフィル5を変更したい場合、回転選択部材20を把持しながら、軸筒3に対して軸線回りに回転させる。回転選択部材20を回転させると、回転選択部材20のガイド溝23内には、ノック部材30のガイド突起32が配置されていることから、回転選択部材20とノック部材30とは一体となって回転する。このとき、摺動コマ50は、ガイド壁16によって軸線回りの回転が規制されている。したがって、ノック部材30の第2カム33は、摺動コマ50の第2カム突起54に対して、相対的に移動する。なお、後述するように、回転選択部材20は、多芯式筆記具1が非筆記状態のときにのみ回転可能であり、多芯式筆記具1が筆記状態のときは回転させることができない。
【0033】
具体的には、
図9(A)の状態から、図中の矢印の方向に回転選択部材20を回転させると、第2カム33の相対的な移動によって第2カム33と第2カム突起54とが協働し、図中左の摺動コマ50が後退すると共に図中中央の摺動コマ50が前進し、
図9(B)の状態となる。なお、図中右の摺動コマ50は、後退したままである。この状態でノック操作を行うと、図中中央の摺動コマ50に接続されたリフィル5が筆記状態となる。
【0034】
図9(B)の状態から、図中の矢印の方向に回転選択部材20をさらに回転させると、第2カム33の相対的な移動によって第2カム33と第2カム突起54とが協働し、図中中央の摺動コマ50が後退すると共に図中右の摺動コマ50が前進し、
図9(C)の状態となる。なお、図中左の摺動コマ50は、後退したままである。この状態でノック操作を行うと、図中右の摺動コマ50に接続されたリフィル5が筆記状態となる。
図9(C)の状態から、図中の矢印の方向に回転選択部材20をさらに回転させると、再び
図9(A)の状態に戻り、これを繰り返す。当然のことながら図中の矢印と逆方向に回転させてもよい。
【0035】
ノック操作によってどのリフィル5が筆記状態となるか、すなわちどの摺動コマ50及びリフィル5が前進した位置にあるか判別可能なように、軸筒3側面に開口又は透明又は半透明にしてもよい。具体的にいうと、軸筒3側面に開口を設ける場合、摺動コマ50が前進した位置にあるときにのみ開口から視認可能なように、各摺動コマ50の対応する軸筒3の側面に開口を形成してもよい。摺動コマ50を、挿入されるリフィル5の筆記色と同一色で着色してもよい。
【0036】
図10は、第1カム24及び第1カム突起41の協働動作、すなわちノック操作を説明する模式図である。
図10では、第1カム24の一部を周方向に展開したものに対して、第1カム突起41の一方の位置を示したものである。
図10において、上方が多芯式筆記具1の後端側で、下方が多芯式筆記具1の前端側である。図中に番号が付された円形は、その番号順に、経時的に変化する第1カム突起41の位置を示している。したがって、以下の説明では、第1カム突起41の位置を、位置1、位置2、・・、位置7と称する。
【0037】
第1カム突起41が位置1、すなわち回転選択部材20の縦溝27内にある場合、これは、多芯式筆記具1が非筆記状態にある場合を示している。この状態から、多芯式筆記具1の後端部をノック操作すると、すなわちスプリング6の付勢力に抗して、操作部、すなわちカバー部材8、消去部材7及びノック部材30を前方へ押圧すると、回転カム40はノック部材30と共に前進する。それによって、回転カム40の第1カム突起41は、縦溝27内において前方へ移動し、回転選択部材20の第1斜面25に当接する。第1カム突起41が第1斜面25に当接すると、第1カム突起41は、位置2に示されるように、第1斜面25をスライドしながら周方向の分力を受け、回転カム40は軸線回りに回転する。
【0038】
ノック部材30の前進が、ノック部材30の段部31bと後軸10の段部18との当接によって停止したとき、第1カム突起41は、位置3にある。次いで、操作部の押圧を解除すると、スプリング6の付勢力によって、ノック部材30及び回転カム40が後退する。それによって、第1カム突起41は、位置3の後方にある回転選択部材20の第2斜面26に当接する。第1カム突起41が第2斜面26に当接すると、第1カム突起41は、位置4に示されるように、第2斜面26をスライドしながら周方向の分力を受け、回転カム40が軸線回りに回転する。第1カム突起41のスライド、すなわちノック部材30の後退は、第1カム突起41が位置5に移動して停止溝28内に嵌ることで停止する。このとき、
図9を参照しながら説明したように、前進した位置にある摺動コマ50に接続されたリフィル5が、筆記状態にある。
【0039】
多芯式筆記具1を筆記状態から非筆記状態に移行させるためには、再びノック操作を行う。すなわち、第1カム突起41が位置5にある状態からノック操作を行うと、第1カム突起41は、第1斜面25に当接してスライドする。次いで、第1カム突起41は、位置6を経て、第2斜面26に当接してスライドし、位置1の縦溝27の隣の縦溝27内に進入して後方へ移動する。縦溝27内の第1カム突起41の後方への移動は、上述したように、ノック部材30のガイド突起32が回転選択部材20のストップ部23aに当接することによって停止し、第1カム突起41は位置7に配置される。その結果、多芯式筆記具1は非筆記状態になる。
【0040】
図11は、
図1の線A-Aにおける断面図である。
図1は、上述したように、多芯式筆記具1の非筆記状態を示しており、線A-Aは、軸線方向において、後軸10の係止突起17の後端部近傍を含む箇所の線である。
図11に示されるように、非筆記状態では、後軸10とノック部材30とは、軸線回りの回転に対して係止していない。
【0041】
図12は、
図2の線B-Bにおける断面図である。
図2は、上述したように、多芯式筆記具1の筆記状態を示しており、
図2の線B-Bは、
図1の線A-Aと後軸10に対して同一箇所の線である。
図12に示されるように、筆記状態では、後軸10とノック部材30とは、軸線回りの回転に対して係止している。すなわち、筆記状態では、ノック部材30は相対的に前進した位置にあることから、後軸10の係止突起17の対応する一部が、ノック部材30の係止溝34内に配置される。
【0042】
したがって、多芯式筆記具1の非筆記状態においては、回転選択部材20及びこれと一体的にノック部材30を軸線回りに回転させることができる。一方、多芯式筆記具1の筆記状態においては、後軸10の係止突起17とノック部材30の係止溝34との係止によって、回転選択部材20及びこれと一体的にノック部材30を回転させることができない。そのため、筆記中に、意図せず回転選択部材20を回転させてしまい、リフィル5が変更されてしまうという誤動作が防止される。
【0043】
また、ノック操作によって、筆記状態から非筆記状態にしたとしても、
図10を参照しながら説明したように回転選択部材20を回転させない限りは、同一の摺動コマ50が前進した位置にある。したがって、例えば黒色で筆記した後に、ノック操作をして非筆記状態にし、再度、黒色で筆記をしようとする場合には、操作部の選択等をすることなく、単一の操作部をノック操作するだけで、再び黒色のリフィルを筆記状態にすることができる。すなわち、毎回、複数の操作部の中から所望のリフィルを突出させるために所定の操作部を探すということなく、単一の操作部をノック操作することで、同一のリフィル5の出没の繰り返しを簡単に行うことができる。一方、ノック操作によって筆記状態となるリフィル5を切り替えるには、上述したように、回転選択部材20を軸線回りに回転させることで簡単に行うことができる。
【0044】
また、回転選択部材20を軸線回りに回転させることによって、摺動コマ50の各々は前後に移動することから、摺動コマ50に接続されたリフィル5の各々を個別に付勢する複数のスプリングを配置する必要がない。その結果、多芯式筆記具1は、軸線方向の全長に対して、出没機構やリフィル選択機構の占める割合を小さくすることができ、簡便な機構とすることができる。また、多芯式筆記具1の外面は凹凸が少なく、絵柄をプリントしたり、装飾を施したりすることが容易である。
【0045】
上述した実施形態では、多芯式筆記具1は、3本のリフィル5を有しているが、2本又は4本以上であってもよく、そのうちの1本を、ボールペン用リフィルの代わりにシャープペンシル又はその他種類のリフィルとしてもよい。また、多芯式筆記具1は、その後端部に、多芯式筆記具1による筆跡を消去する消去部材7が設けられていたが、これに加え又これに代えて、多芯式筆記具1の異なる箇所に消去部材を設けてもよい。例えば、前軸2の一部、例えば前端部に設けてもよく、消去部材の機能を持たせたクリップが多芯式筆記具の側面に設けられた構成にしてもよい。
【0046】
多芯式筆記具1の筆記状態においては、後軸10の係止突起17とノック部材30の係止溝34との係止によって、回転選択部材20の軸線回りの回転を規制したが、後軸側に溝又は凹部を設け、ノック部材側に突起を設けるようにしてもよい。また、回転選択部材の回転が規制される限りにおいて、任意の形状を採用してもよい。例えば、後軸側及びノック部材側のいずれにも突起を設け、突起と突起を係止させてもよい。
【0047】
上述した実施形態におけるリフィル5は、熱変色性色材を含有する熱変色性インクを収容してもよい。この場合、多芯式筆記具1は熱変色性筆記具であり、消去部材としての摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、多芯式筆記具1の筆跡を熱変色可能である。
【0048】
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた多芯式筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0049】
熱変色性色材となる熱変色性マイクロカプセル顔料としては、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
【0050】
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という。)用いることができる。
【0051】
具体的には、6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1(3H)-イソベンゾフラノン、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジメチルアミノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジブチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-エチルイソアミルアミノフルオラン、2-メチル-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(N-フェニル-N--メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(3’-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル-3’,6’-ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ-3’,6’-ビスジフェニルアミノフルオラン、3-メトキシ-4-ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられる。
【0052】
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
【0053】
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
【0054】
具体的には、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1-フェニル-1,1-ビス( 4’-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0055】
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、上述したロイコ色素1質量部に対して、0.1~100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
【0056】
用いることができる変色温度調整剤は、上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
【0057】
より具体的には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C7H15)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C11H23)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C13H27)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C13H27)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C15H30)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C21H43)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C13H27)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0058】
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1~100質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
【0059】
熱変色性マイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、平均粒子径が0.2~5μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
【0060】
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、イソシアネート系樹脂溶液などを徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
【0061】
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1~100、変色温度調整剤1~100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1~1である。
【0062】
熱変色性マイクロカプセル顔料は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、摩擦熱等の熱により有色から無色となることが好ましい。
【0063】
熱変色性マイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、ウレア/ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。マイクロカプセル色材の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
【0064】
熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性、インク中での流動性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制、後述する光変色性マイクロカプセル顔料との相用性などの点から、好ましくは、0.2~5μm、さらに好ましくは、0.3~3μmである。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社製)〕にて、平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
【0065】
この平均粒子径が0.2μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5μmを越えると、筆記性の劣化、熱変色性マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、振動によるインクバックが発生しやすくなり好ましくない。さらには90%径が8μm以下、好ましくは6μm以下である。径が大きい粒子が一定割合以上存在すると、上述した影響がより顕著になる傾向がみられる。なお、上述した平均粒子径の範囲(0.2~5μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
【0066】
熱変色性マイクロカプセル顔料の比重は、0.9~1.3、好ましくは1.0~1.2の範囲である。比重がこの範囲外であると、マイクロカプセル顔料の分散安定性が低下しやすい。また、比重が1.3を超えるマイクロカプセル顔料は、振動によってインクバックが発生しやすい。
【0067】
筆記具用水性インク組成物において、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、その効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
【0068】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
【0069】
これらのうち、インクバックによる筆記部でのインク固化を抑制する目的として、グリセリンを用いることが好ましく、その添加量はインク全量に対して1~10質量%であることが好ましい。グリセリンによる作用のメカニズムは不明だが、乾燥状態における顔料及びインク成分との凝集力を低下させる効果があるものと推察される。
【0070】
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
【0071】
これらのうち、多糖類を使用することが好ましい。多糖類はそのレオロジー特性から、振動による流動性への影響を受けにくい傾向があり、インクバックに起因する筆記不良等の不具合が生じにくい。特にキサンタンガムは、筆記具インクに要求されるその他の特性とのバランスに優れており好ましい。
【0072】
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0073】
この筆記具用水性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記熱変色性、光変色性マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。さらに必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
【0074】
筆記具用水性インク組成物の粘度値は、25℃、剪断速度3.83/sにおいて、500~2000mPa・s、剪断速度383/sにおいて20~100mPa・sであることが好ましい。上記粘度範囲に設定することによって、筆記性と経時安定性に優れたインクとすることができる。さらに、S=αDn(但し、1>n>0)(Sは剪断応力(dyn/cm2)、Dは剪断速度(s-1)、αは非ニュートン粘性係数)で示される粘性式で求められる非ニュートン粘性指数nが、0.2~0.6であることが好ましい。上記粘度範囲に加えて非ニュートン粘性指数nを上記範囲とすることで、振動に対するインクの流動性を適切に設定することが可能となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
【0075】
筆記具用水性インク組成物の表面張力は、25~45mN/m、さらには30~40mN/mであることが好ましい。この範囲内であれば、ペン先内部とインクの濡れ性のバランスが適切となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
【0076】
リフィル内においては、インクのすぐ後方にインク追従体を配置してもよい。追従体を構成する材料としては、少なくとも、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、増粘剤とにより構成することができる。インク追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インク追従体の基油として用いるものであり、例えば、流動パラフィンが用いられる。流動パラフィンには、鉱物油、化学合成油が用いられ、化学合成油としては、ポリブテン、ポリα-オレフィン、エチレンα-オレフィンオリゴマーなどを用いることができる。
【0077】
用いることができる具体的な鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルNS-100、PW-32、PW-90、NR-68、AH-58(出光興産社製)などが挙げられる。
【0078】
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N、ポリブテン10N、ポリブテン5N、ポリブテン3N、ポリブテン015N、ポリブテン06N、ポリブテン0N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV-15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
【0079】
用いることができる具体的なポリα-オレフィンとしては、例えば、市販品のバーレルプロセス油P-26、P-46,P-56、P-150,P-350,P-1500、P-2200、(P-10000、P-37500)(松村石油社製)などが挙げられる。
【0080】
用いることができる具体的なエチレンα-オレフィンオリゴマーとしては、例えば、市販品のルーカント HC-10、HC-20、HC-100、HC-150、(HC-600、HC-2000)(以上、三井化学社製)などが挙げられる。
【0081】
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
【0082】
インク追従体に使用する増粘剤としては、例えば、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、ポリスチレン-ポリエチレン/ブチレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチレン/プロピレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマー、水添スチレン-ブタジエンラバー、スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー及びアセトアルコキシアルミニウムジアルキレートなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上用いることができる。
【0083】
用いることができるリン酸エステルのカルシウム塩の好ましい市販品としては、CrodaxDP-301LA(クローダジャパン社製)等が挙げられる。用いることができる微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL-300、AEROSIL-380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL-974D、AEROSIL-972(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0084】
また、ポリスチレン-ポリエチレン/ブチレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGFG-1901X、クレイトンGG-1650(以上、シェルジャパン社製)、セプトン8007、セプトン8004(以上、クラレ社製)などが挙げられる。さらに、ポリスチレン-ポリエチレン/プロピレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGG-1730(シェルジャパン社製)、セプトン2006、セプトン2063(以上、クラレ社製)などが挙げられる。
【0085】
水添スチレン-ブタジエンラバーの好ましい市販品としては、DYNARON1320P、DYNARON1321P(以上、JSR社製)、タフテックHl041、タフテックHl141(以上、旭化成工業社製)などが挙げられる。
【0086】
スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON4600P(JSR社製)等が挙げられ、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON6200P、DYNARON6201B(JSR社製)等が挙げられる。
【0087】
アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートの好ましい市販品としては、プレンアクトAL-M(味の素ファインテクノ社製)などが挙げられる。
【0088】
これらの増粘剤の中で、本発明の効果をさらに発揮させる点から、スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーなどの熱可塑性オレフィン系エラストマーの使用が好ましい。
【0089】
さらに、インクバックの発生を防止するインク追従体を得る点から、周波数領域1~63rad/sで指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることが好ましく、1.7~3.4とすることがさらに好ましい。
【0090】
ここで、tanδは、損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、従来では、周波数領域「1~63rad/s」で指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以下のものが好ましいことが知られていた。本発明では、上記1~63rad/sで各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることにより、振動を吸収してインクバックの発生を防止することが可能となる。
【0091】
摩擦体を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性ゴムやスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物を用いることができ、これを、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)で荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が25mg未満となるように構成し、摩擦体を形成する。
【0092】
また、摩擦体の材料に対して、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを添加してもよい。摩擦体が、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを含むことによって、紙面を傷めず且つ印刷文字等を掠れさせることなく、筆跡の消去が可能となる。さらに、摩擦体は、JIS K6203に規定されたデュロメータA硬度が60以上であることが好ましい。それによって、所定の硬さが確保でき、より安定した擦過動作が可能となる。なお、摩擦体は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能であり、導電性を付与してもよい。
【0093】
また、摩擦体は、多芯式筆記具1に収容された熱変色性インクの色よりも明度値が低い色で着色されていることが好ましい。すなわち、摩擦体の使用時に多芯式筆記具1の熱変色性インクが変色することなく摩擦体の表面に転写した場合に、熱変色性インクの転写を目立たなくすることができる。特に、摩擦体の色を黒色又は明度値が2.5以下とすることによって、摩擦体の使用に伴う表面の汚れも目立たなくすることができる。
【0094】
明度値は汎用型色差計(TC-8600A、東京電色株式会社製)等の測定装置を用いてマンセル表色系を使用し、摩擦体の明度値は表面を測定し、熱変色性インクの明度値は、紙面(旧JIS P3201;化学パルプ100%を原料に抄造された上質紙、坪量範囲40~157g/m2、白色度75.0%以上)上に筆記速度4.5m/min、ピッチ間隔0.1mmで筆記した描線上のインクを測定することによって求められる。
【0095】
また、上述した実施形態における複数のリフィル5の少なくとも1本を、シャープペンシル芯、鉛筆芯又は消しゴム消去性インクを収容するリフィルとし、残りのリフィル5の少なくとも1本を、熱変色性インクを収容したリフィルとしてもよい。この場合、消去部材7を、プラスチック字消し又は消しゴムとすることによって、シャープペンシル芯、鉛筆芯又は消しゴム消去性インクによる筆跡が消去可能となる。さらに、プラスチック字消し又は消しゴムを用いて熱変色性インクによる筆跡を擦過し、摩擦熱を生じさせることによって筆跡を熱変色させることもできる。
【0096】
したがって、プラスチック字消し又は消しゴムは、異なる種類の筆跡のための消去部材として使用可能、すなわち、シャープペンシル芯、鉛筆芯又は消しゴム消去性インクによる筆跡を消去する消去部材、及び、熱変色性インクの筆跡を熱変色させる(消去する)摩擦体として使用可能である。なお、ここでいう、プラスチック字消し又は消しゴムを用いて筆跡を消去可能とは、プラスチック字消し又は消しゴムで筆跡を擦過することによって、筆跡の周囲の紙面等を汚すことなく筆跡を消去可能であることをいう。
【0097】
シャープ芯又は鉛筆芯は、例えば、焼成前の配合組成物として無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種の微粒子(但し、ガラス粉体を除く)を分散又は内包させた平均厚さ0.1~2μm、アスペクト比5~150であり、且つ、平面度が200nm以下のフレーク状であるガラス粉体又は平均粒径0.1~50μm、真球度0.1~50μmの粒状であるガラス粉体を鉛筆芯全量に対して、3~80重量%含有することが好ましい。
【0098】
消しゴム消去性インクは、平均粒子径が2~20μmであり、且つ、非熱可塑性である着色樹脂粒子をインク組成物全量に対して5~30重量%と、ガラス転移点が0℃未満である非着色粒子とを少なくとも含有することが好ましい。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、上述したように、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社製)〕にて、平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
【0099】
この場合、摩擦体は、前述の摩擦体に加え、ガラス転移温度(Tg)の比較的高いシェルと、該シェルよりガラス転移温度(Tg)の比較的低いコアで構成されている一次粒径が20~80μmであるアクリル系熱可塑性樹脂粉末、可塑剤及び無機粉体と熱可塑性樹脂を含有し、その熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂又はその共重合体であり、無機粉体が炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムであるものが、熱変色性インクの筆跡と消去可能なインクの筆跡を共に擦過により作用させることができるので好ましい。なお、「ガラス転移温度(Tg)」とは、アクリル樹脂粉末の非結晶部分の運動性が大きくなりゴム状態になる境目の温度をいう。
【符号の説明】
【0100】
1 多芯式筆記具
2 前軸
3 軸筒
4 筆記部
5 リフィル
6 スプリング
7 消去部材
8 カバー部材
10 後軸
20 回転選択部材
30 ノック部材
50 摺動コマ
40 回転カム
【手続補正書】
【提出日】2021-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、複数の筆記体と、ノック部材と、前記軸筒に対して軸線回りに回転可能に設けられた回転選択部材と、を具備し、
前記回転選択部材の回転に応じて、前記複数の筆記体の1つが前進した位置に配置され、
ノック操作によって、前記前進した位置に配置された前記筆記体が、前記軸筒から突出して筆記状態になり、
前記軸筒内に第1係止部が設けられ、前記ノック部材に第2係止部が設けられ、筆記状態において、前記第1係止部及び前記第2係止部が係止することによって、前記回転選択部材の回転が規制されることを特徴とする多芯式筆記具。
【請求項2】
前記第1係止部が、前記軸筒の内周面に設けられた、径方向内方に向かって延びるリブ状の係止突起であり、前記第2係止部が、前記ノック部材の外周面に設けられた、軸線方向に延びる複数の係止溝であることを特徴とする請求項1に記載の多芯式筆記具。
【請求項3】
前記複数の筆記体の各々にはカム突起が形成された摺動コマが接続され、前記ノック部材にはカムが形成され、前記カム突起と前記カムとが前記回転選択部材の回転によって協働して前記複数の筆記体の1つを前進した位置に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の多芯式筆記具。