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特開2022-93169電子部品装置の製造方法及び電子部品装置
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  • 特開-電子部品装置の製造方法及び電子部品装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093169
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】電子部品装置の製造方法及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20220616BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20220616BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20220616BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220616BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H05K3/28 G
H05K9/00 Q
H01L21/56 E
H01L23/30 R
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206303
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 研吾
(72)【発明者】
【氏名】増田 宏
(72)【発明者】
【氏名】宮武 正人
(72)【発明者】
【氏名】江尻 芳則
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
5E314
5E321
5F061
【Fターム(参考)】
4J002CC031
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CF211
4J002CM031
4J002CM041
4J002CP031
4J002FD140
4J002FD150
4J002GQ00
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA05
4M109CA10
4M109CA11
4M109CA12
4M109EA02
4M109EA07
4M109EA10
4M109EA11
4M109EA12
4M109EA15
4M109EB12
4M109EB13
4M109EE07
5E314AA02
5E314AA24
5E314AA25
5E314AA32
5E314AA33
5E314AA34
5E314AA36
5E314AA37
5E314AA39
5E314AA40
5E314AA41
5E314AA42
5E314AA43
5E314AA45
5E314AA47
5E314BB03
5E314BB11
5E314CC01
5E314DD08
5E314EE01
5E314FF01
5E314FF21
5E314GG17
5E314GG24
5E321AA21
5E321BB32
5E321BB34
5E321BB35
5E321BB51
5E321BB53
5E321BB60
5E321GG05
5E321GG11
5E321GH03
5F061AA01
5F061BA04
5F061CA05
5F061CA10
5F061CA11
5F061CA12
5F061CB02
5F061CB03
5F061CB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型化が可能であり、簡便な方法にて絶縁層及び機能層を形成可能な電子部品装置の製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品装置の製造方法は、実装面を有し、実装面に電子部品1が実装された基材2を準備することと、実装面上に選択的に絶縁層形成用組成物を塗布して少なくとも電子部品を覆うように絶縁層3を形成することと、実装面上に選択的に機能層形成用組成物を塗布して機能層(例えば、電磁波シールド材4)を形成することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有し、実装面に前記電子部品が実装された前記基材を準備することと、
前記実装面上に選択的に絶縁層形成用組成物を塗布して少なくとも前記電子部品を覆うように絶縁層を形成することと、
前記実装面上に選択的に機能層形成用組成物を塗布して機能層を形成することと、
を有する電子部品装置の製造方法。
【請求項2】
25℃における前記絶縁層形成用組成物の粘度は、5mPa・s~100Pa・sである請求項1に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項3】
前記実装面上に塗布された前記絶縁層形成用組成物に対し活性エネルギー線の照射を行うことによって前記絶縁層形成用組成物を硬化させて前記絶縁層を形成する請求項1又は請求項2に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層形成用組成物は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び湿気硬化樹脂からなる群より選択される少なくともの1つの硬化性樹脂を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項5】
機能層は、電磁波シールド材、配線、電極、放熱材及び電磁波吸収材からなる群より選択される少なくとも一つである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項6】
25℃における前記機能層形成用組成物の粘度は、5mPa・s~100Pa・sである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項7】
前記実装面上に塗布された前記機能層形成用組成物に対し加熱を行うことによって前記機能層形成用組成物を硬化させて前記機能層を形成する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項8】
実装面を有し、実装面に電子部品が実装された基材と、
前記実装面上に塗布された絶縁層形成用組成物から形成され、少なくとも前記電子部品を覆う絶縁層と、
前記実装面上に塗布された機能層形成用組成物から形成された機能層と、
を備える電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品装置の製造方法及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に外部から不要な電磁波が入射すると誤作動を起こす可能性がある。同様に、電子機器から不要な電磁波が外に出ることで外部の電子機器が誤作動を起こす可能性がある。そこで、電子機器にはこれらの不要な電磁波をシールドする電磁波シールド材が用いられている。
【0003】
多くの電磁波シールド材は金属で構成されており、電磁波を反射することで電子機器を電磁波からシールドしたり、電子機器からの電磁波をシールドしたりする。
【0004】
例えば、表面にグランド配線パターン及び所定配線パターンが形成された絶縁基板上に、電子部品を実装した後、前記電子部品を覆うように下面が開口した金属製蓋体を被覆して成る電子部品装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-345592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、電子部品を覆うように下面が開口した金属製蓋体を絶縁基板上に配置した場合、電子部品と金属製蓋体との間に空間が必要となる。そのため、電子部品装置の小型化が困難となる。
【0007】
さらに、特許文献1では、金型を用いて金属製蓋体を形成する必要があり、電子部品装置の製造工程が煩雑である。そのため、より簡便に電磁波シールド材で電子部品が覆われた電子部品装置を製造する方法が求められている。
【0008】
基板の実装面に、電子部品を保護する絶縁層、前述の電磁波シールド材、配線等の機能層が形成される場合もある。このような場合に、例えば、絶縁性のシート材、導電性のシート材等を基板の実装面に配置して加熱圧着等により、絶縁層、機能層等を基板の実装面に形成する方法がある。しかし、絶縁性のシート材、導電性のシート材等を基板の実装面に配置する方法は、実装面に対する追従性、生産性等を考慮すると改善の余地があり、基板の実装面上に絶縁層及び機能層を簡便な方法で形成する方法が求められている。
【0009】
本開示は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、小型化が可能であり、簡便な方法にて絶縁層及び機能層を形成可能な電子部品装置の製造方法並びに、小型化が可能であり、簡便な方法にて絶縁層及び機能層が形成された電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 実装面を有し、実装面に前記電子部品が実装された前記基材を準備することと、
前記実装面上に選択的に絶縁層形成用組成物を塗布して少なくとも前記電子部品を覆うように絶縁層を形成することと、
前記実装面上に選択的に機能層形成用組成物を塗布して機能層を形成することと、
を有する電子部品装置の製造方法。
<2> 25℃における前記絶縁層形成用組成物の粘度は、5mPa・s~100Pa・sである<1>に記載の電子部品装置の製造方法。
<3> 前記実装面上に塗布された前記絶縁層形成用組成物に対し活性エネルギー線の照射を行うことによって前記絶縁層形成用組成物を硬化させて前記絶縁層を形成する<1>又は<2>に記載の電子部品装置の製造方法。
<4> 前記絶縁層形成用組成物は、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一つの硬化性樹脂を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の電子部品装置の製造方法。
<5> 機能層は、電磁波シールド材、配線、電極、放熱材及び電磁波吸収材からなる群より選択される少なくとも一つである<1>~<4>のいずれか1つに記載の電子部品装置の製造方法。
<6> 25℃における前記機能層形成用組成物の粘度は、5mPa・s~100Pa・sである<1>~<5>のいずれか1つに記載の電子部品装置の製造方法。
<7> 前記実装面上に塗布された前記機能層形成用組成物に対し加熱を行うことによって前記機能層形成用組成物を硬化させて前記機能層を形成する<1>~<6>のいずれか1つに記載の電子部品装置の製造方法。
<8> 実装面を有し、実装面に電子部品が実装された基材と、
前記実装面上に塗布された絶縁層形成用組成物から形成され、少なくとも前記電子部品を覆う絶縁層と、
前記実装面上に塗布された機能層形成用組成物から形成された機能層と、
を備える電子部品装置。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、小型化が可能であり、簡便な方法にて絶縁層及び機能層を形成可能な電子部品装置の製造方法並びに、小型化が可能であり、簡便な方法にて絶縁層及び機能層が形成された電子部品装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の電子部品装置の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0014】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
各構成の厚さ、幅、高さ、距離、長さ等は、電子顕微鏡を用いて、測定対象の断面を観察することで測定してもよい。
本開示において、図面を用いて各部材の構成を説明する場合、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0015】
<電子部品装置の製造方法>
本開示の電子部品装置の製造方法は、実装面を有し、前記実装面に前記電子部品が実装された前記基材を準備することと、前記実装面上に選択的に絶縁層形成用組成物を塗布して少なくとも前記電子部品を覆うように絶縁層を形成することと、前記実装面上に選択的に機能層形成用組成物を塗布して機能層を形成することと、を有する電子部品装置の製造方法である。
【0016】
本開示の電子部品装置の製造方法では、電子部品を覆うように絶縁層を形成し、さらに、実装面上に選択的に機能層形成用組成物を塗布して機能層を形成する。これにより、機能層が電磁波シールド材であった場合に、絶縁層上に機能層形成用組成物である電磁波シールド用組成物を塗布して電磁波シールド材を形成することができる。その結果、電子部品と電磁波シールド材との絶縁を確保するために空間を設ける必要が無く、電子部品装置の小型化が可能となる。電子部品の小型化により、スマートフォン、スマートウォッチ等の電子機器などの省スペース化が可能となり、搭載可能な電池の容積を向上させ、電子機器の長時間駆動が可能となる。
【0017】
さらに、本開示の電子部品装置の製造方法では、金型を用いて電子部品装置を覆う金属シールド部材を電子部品装置の製造に用いる必要が無い。そのため、本開示の電子部品装置は、簡便な方法にて製造可能である。
【0018】
本開示の電子部品装置の製造方法では、絶縁層形成用組成物及び機能層形成用組成物を基材の実装面上に塗布して絶縁層及び機能層をそれぞれ形成する。これにより、基材の実装面に対して絶縁層及び機能層の追従性に優れ、効率よく、簡便な方法にて絶縁層及び機能層を形成可能である。さらに、実装面上に選択的に絶縁層形成用組成物及び機能層形成用組成物を塗布して所望の領域に絶縁層及び機能層をそれぞれ形成することができる。そのため、絶縁性のシート材、導電性のシート材等を基板の実装面に配置して絶縁層及び機能層を形成する場合と比較して、設計の変更、製造の簡略化等が容易である。
【0019】
[準備工程]
本開示の電子部品装置の製造方法は、実装面を有し、前記実装面に前記電子部品が実装された前記基材を準備すること(準備工程)を有する。
【0020】
(電子部品)
基材に実装された電子部品としては、配線板等の基材の実装面上に実装される部材であれば特に限定されず、半導体チップ、半導体パッケージ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などが挙げられる。基板の実装面には、複数の電子部品が配置されていてもよい。
【0021】
(基材)
基材としては、実装面に電子部品が実装可能であれば特に限定されず、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハー、セラミックス、テフロン(登録商標)、シクロオレフィンポリマー基板等が挙げられる。
【0022】
[絶縁層形成工程]
実装面上に選択的に絶縁層形成用組成物を塗布して少なくとも前記電子部品を覆うように絶縁層を形成すること(絶縁層形成工程)を有する。
【0023】
絶縁層形成用組成物を基材の実装面上に塗布する方法としては、特に限定されず、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、ジェットディスペンサー法、スクリーン印刷法、樹脂ポッティング法等が挙げられる。
【0024】
(絶縁層形成用組成物)
絶縁層形成用組成物は、絶縁性樹脂等を含むことが好ましい。絶縁性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化樹脂等の硬化性樹脂などが挙げられる。
絶縁層形成用組成物は、流動性及び耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化樹脂等の硬化性樹脂を含むことが好ましい。
絶縁層形成用組成物では、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂が併用されていてもよく、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が併用されていてもよい。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ジエン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、パリレン(登録商標)樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
熱硬化性樹脂としては、加熱による架橋反応に利用できる官能基を1分子中に1つ以上有する樹脂であればよい。官能基としては、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ヒドロキシ基、ビニル基、カルボキシ基、アミノ基、マレイミド基、酸無水物基、チオール基、チオニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。
【0027】
熱硬化性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、オキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
中でも、熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。
熱硬化性樹脂は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
絶縁層形成用組成物は、熱硬化性樹脂とともに必要に応じて熱硬化性樹脂に含まれる官能基と反応して架橋構造を形成する硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。
硬化剤は、液体状のものでも固体状のものでも使用可能である。
硬化剤は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
光硬化性樹脂としては、光により架橋反応を起こす不飽和結合を1分子中に1つ以上有する樹脂であればよい。光硬化性樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
中でも、光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。
光硬化性樹脂は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
絶縁層形成用組成物は、光硬化性樹脂とともに必要に応じて活性エネルギー線を吸収して重合開始種であるラジカルを生成する光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、芳香族ケトン化合物、オキシムエステル化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
光重合開始剤は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
絶縁層形成用組成物は、前述した絶縁性樹脂、硬化剤、光重合開始剤等以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、溶剤、着色剤(例えば、顔料及び染料)、難燃剤、硬化促進剤、無機充填剤、滑剤、ブロッキング防止剤、金属不活性化剤、増粘剤、分散剤、シランカップリング剤、防錆剤、銅害防止剤、還元剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤等を含んでいてもよい。
【0032】
絶縁層形成用組成物は、硬化性樹脂を含む無溶剤型又は溶剤希釈型の組成物であることが好ましく、塗布後の乾燥工程を省略する観点から、硬化性樹脂を含む無溶剤型の組成物であることがより好ましい。
また、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一つの硬化性樹脂を含む無溶剤型又は溶剤希釈型の組成物であってもよい。
【0033】
絶縁層形成用組成物は、熱伝導性、電気特性(例えば、低誘電及び高誘電)、絶縁信頼性(たとえば、低吸湿性及び低熱膨張率)等の観点から、その他の成分である無機充填剤を含んでいてもよい。
【0034】
無機充填剤としては、特に限定されず、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、チタン酸バリウム等の粉体又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などが挙げられる。
中でも、絶縁信頼性(例えば、低吸湿性及び低熱膨張率)の観点から、シリカが好ましい。
【0035】
無機充填剤の含有率は特に制限されず、絶縁層形成用組成物の全量に対し、1質量%~90質量%であってもよく、10質量%~80質量%であってもよい。
【0036】
無機充填剤の平均粒子径は特に制限されない。無機充填剤の平均粒子径は、機械的強度及び狭い隙間への充填性の観点から、0.05μm~30μmであることが好ましく、0.5μm~20μmであることがより好ましい。
無機充填剤の平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)として測定することができる。
【0037】
絶縁層形成用組成物は、ピーク粒子径の異なる2種以上の無機充填剤を含むものであってもよい。例えば、絶縁層形成用組成物は、ピーク粒子径が0.5μm~3μmである第1の無機充填材及びピーク粒子径が5μm~20μmである第2の無機充填材を含んでいてもよい。
【0038】
25℃における絶縁層形成用組成物の粘度は、5mPa・s~100Pa・sであることが好ましく、5mPa・s~50Pa・sであることが好ましく、10mPa・s~20Pa・sであることがより好ましい。前記粘度が、5mPa・s以上であることにより、塗布後の液だれが抑制できる傾向にあり、100Pa・s以下であることにより、塗布装置の液詰まりが抑制でき、実装面の段差、凹凸部等に対してより均一な塗布ができる傾向にある。前述の粘度条件を満たす絶縁層形成用組成物をディスペンサー法、ジェットディスペンサー法等の塗布方法にて基材の実装面上に塗布することが好ましい。
【0039】
本開示にて、絶縁層形成用組成物の粘度は、25℃、回転数50rpm(回転/分)の条件にてE型粘度計を用いて測定される値である。
【0040】
実装面上の絶縁層形成用組成物が塗布される領域としては実装面に実装された電子部品が覆われれば特に限定されず、製造される電子部品装置の用途に応じて適宜選択すればよい。
【0041】
絶縁層形成用組成物の塗布量は、特に限定されず、所望される絶縁層の厚さに応じて適宜調整すればよい。
【0042】
絶縁層形成用組成物が光硬化性樹脂を含む場合、実装面上に塗布された絶縁層形成用組成物に対し活性エネルギー線の照射を行うことによって絶縁層形成用組成物を硬化させて絶縁層を形成することが好ましい。
【0043】
活性エネルギー線としては、紫外線等が挙げられる。紫外線の波長としては、280nm~400nmであってもよく、300nm~400nmであってもよい。より具体的には、紫外線の波長は、365nm又は385nmであってもよい。紫外線源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯等が挙げられる。
【0044】
活性エネルギー線の照射量は100mJ/cm~10000mJ/cmであってもよく、露光照度は1000mW/cm~10000mW/cmであってもよい。活性エネルギー線の照射量及び露光照度は、絶縁層形成用組成物の組成に応じて適宜変更してもよい。
【0045】
絶縁層形成用組成物が熱硬化性樹脂を含む場合、実装面上に塗布された絶縁層形成用組成物に対し加熱を行うことによって絶縁層形成用組成物を硬化させて絶縁層を形成することが好ましい。
【0046】
前述の加熱を行う際の温度条件、加熱時間等は特に限定されず、絶縁層形成用組成物の組成に応じて適宜設定される。
【0047】
加熱温度は、例えば、100℃以上であってもよく、120℃以上であってもよく、140℃以上であってもよい。当該加熱温度の上限は、特に制限されず、例えば300℃以下である。
加熱時間は、例えば、1分間~10時間であってもよく、10分間~5時間であってもよく、20分間~3時間であってもよい。
加熱処理には、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉、リフロー炉等の加熱装置を用いることができる。
【0048】
絶縁層の厚さは、絶縁性及び電子部品装置の小型化の観点から、1μm~500μmであってもよく、5μm~400μmであってもよく、10μm~300μmであってもよい。
本開示において、絶縁層の厚さは、その最大厚さを意味する。
【0049】
[機能層形成工程]
本開示の電子部品の製造方法は、前記実装面上に選択的に機能層形成用組成物を塗布して機能層を形成すること(機能層形成工程)を有する。
【0050】
機能層形成用組成物を基材の実装面上に塗布する方法としては、特に限定されず、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、ジェットディスペンサー法、スクリーン印刷法、樹脂ポッティング法等が挙げられる。
【0051】
(機能層形成用組成物)
機能層形成用組成物の組成としては生成される機能層の種類のよって適宜変更される。機能層としては、例えば、電磁波シールド材、配線、電極、放熱材及び電磁波吸収材からなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。配線は、アンテナ、回路等であってもよい。
機能層形成用組成物は、例えば、樹脂、銅粒子、銀粒子等の導電性粒子、溶剤等を含む電磁波シールド用組成物;樹脂、銅粒子等の導電性粒子、溶剤等を含む、配線、電極等を形成するための金属ペースト;樹脂、金属粒子、カーボン粒子等の導電性粒子を含む放熱材形成用組成物などであってもよい。
【0052】
機能層形成用組成物は、樹脂、導電性粒子、溶剤などを含んでいてもよい。機能層形成用組成物に含まれ得る樹脂としては、前述の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂などが挙げられる。
機能層形成用組成物は、流動性及び耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含むことが好ましい。
機能層形成用組成物では、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂が併用されていてもよく、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が併用されていてもよい。
【0053】
機能層形成用組成物は、熱硬化性樹脂及び硬化剤を含んでいてもよく、好ましくはエポキシ樹脂及び硬化剤を含んでいてもよい。
【0054】
機能層形成用組成物は、導電性粒子を含んでいてもよく、具体的には、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、銀、金、錫、チタン、クロム、パラジウム等の金属を含む金属粒子、当該金属を含む金属酸化物粒子、カーボン粒子などを含んでいてもよい。
導電性粒子は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。導電性粒子は、1種の成分からなるものであってもよく、2種以上の成分を含んでいてもよい。
【0055】
導電性粒子の大きさは、特に制限されない。例えば、体積平均粒子径(D50)が0.05μm~50μmであってもよい。
【0056】
機能層形成用組成物は、前述の機能層形成用組成物に含まれ得るその他の成分を含んでいてもよい。
【0057】
機能層形成用組成物は、導電性電磁波吸収体、誘電性電磁波吸収体、磁性電磁波吸収体等を含んでいてもよく、具体的には、金属繊維、カーボン繊維、酸化インジウムスズ、金属、カーボン等を被覆した繊維又は粒子、カーボンゴム、カーボン、グラファイト、酸化チタン、チタン酸バリウム、フェライト磁石のような酸化物磁性体、センダストのような金属間化合物、鉄、コバルト、パーマロイのような磁性金属、などを含んでいてもよい。
電磁波吸収体は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。電磁波吸収体は、1種の成分からなるものであってもよく、2種以上の成分を含んでいてもよい。
【0058】
25℃における機能層形成用組成物の粘度は、5mPa・s~100Pa・sであることが好ましく、10mPa・s~50Pa・sであることがより好ましい。前記粘度が、10mPa・s以上であることにより、液だれを抑制できる傾向にあり、50Pa・s以下であることにより、液詰まりを抑制できる傾向にある。前述の粘度条件を満たす機能層形成用組成物をスプレー法、ディスペンサー法、ジェットディスペンサー法、スクリーン印刷等の塗布方法にて基材の実装面上に塗布することが好ましい。
【0059】
本開示にて、機能層形成用組成物の粘度は、25℃、回転数50rpmの条件にてE型粘度計を用いて測定される値である。
【0060】
実装面上の機能層形成用組成物が塗布される領域としては生成される機能層の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、機能層が電磁波シールド材である場合、電子部品に対して外部からの不要な電磁波がシールドされるとともに、当該電子部品からの不要な電磁波もシールドされる領域に機能層形成用組成物が塗布されればよい。より具体的には、電子部品を覆うように絶縁層上に機能層形成用組成物が塗布されればよい。
【0061】
機能層形成用組成物が塗布される領域としては、例えば、電磁波シールド材の場合にはCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリ周辺;画像素子;通信アンテナ等の受信部から信号処理部への配線;無線通信モジュール周辺のアンテナ信号処理部品など;への塗布が想定される。電磁波吸収材の場合にはアンテナ素子の周辺、電磁波シールド層を塗布した周辺等への塗布が想定される。配線の場合は、アンテナ線として電磁波吸収材の上部、再配線としてはんだ実装チップ部品等の部品-部品間などへの塗布が想定される。
【0062】
機能層形成用組成物の塗布量は、特に限定されず、所望される機能層の厚さに応じて適宜調整すればよい。
【0063】
機能層形成用組成物が熱硬化性樹脂を含む場合、実装面上に塗布された機能層形成用組成物に対し加熱を行うことによって機能層形成用組成物を硬化させて機能層を形成することが好ましい。
【0064】
前述の加熱を行う際の温度条件、加熱時間等は特に限定されず、機能層形成用組成物の組成に応じて適宜設定される。
【0065】
加熱温度は、例えば、120℃以上であってもよく、140℃以上であってもよく、160℃以上であってもよい。当該加熱温度の上限は、特に制限されず、例えば300℃以下である。
加熱時間は、例えば、1分間~10時間であってもよく、3分間~3時間であってもよく、5分間~1時間であってもよい。
加熱処理には、前述の加熱装置を使用してもよい。
【0066】
機能層形成用組成物に対する加熱は、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気、ギ酸雰囲気、水素雰囲気等の還元雰囲気、低酸素濃度の雰囲気下などで行われてもよく、大気雰囲気下で行われてもよい。低酸素濃度雰囲気下とは、体積基準の酸素濃度が1000ppm以下の状態をいい、好ましくは100ppm以下である。
【0067】
(絶縁層形成用組成物及び機能層形成用組成物の製造方法)
本開示で用いる絶縁層形成用組成物及び機能層形成用組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。絶縁層形成用組成物又は機能層形成用組成物を構成する成分を混合し、さらに撹拌、溶解、分散等の処理をすることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等のための装置としては、特に限定されるものではなく、3本ロールミル、プラネタリーミキサ、遊星式ミキサ、自転公転型撹拌装置、らいかい機、二軸混練機、薄層せん断分散機等を使用することができる。また、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。上記処理の際、必要に応じて加熱してもよい。
【0068】
以下、機能層形成用組成物が電磁波シールド用組成物である場合に、機能層である電磁波シールド材を形成するときの好ましい構成について説明する。まず、電磁波シールド用組成物を実装面上の絶縁層に塗布し、絶縁層に塗布された前記電磁波シールド用組成物を焼結させることで機能層である電磁波シールド材が形成される。基材の実装面にはグランド配線が設けられていてもよく、当該グランド配線が電磁波シールド材と電気的に接続していてもよい。例えば、グランド配線が電磁波シールド材と直接接続していてもよく、はんだを介してグランド配線が電磁波シールド材と接続していてもよい。
【0069】
[電磁波シールド用組成物]
電磁波シールド材の形成に用いる電磁波シールド用組成物は、金属粒子Aと、前記金属粒子Aよりも融点の低い金属粒子Bと、樹脂と、を含有することが好ましい。
以下、電磁波シールド用組成物を構成する成分について詳細に説明する。
本開示で用いる機能層形成用組成物は、以下に説明する成分を好ましい成分として含んでいてもよい。
【0070】
(金属粒子)
本開示で用いる電磁波シールド用組成物は、金属粒子Aと、金属粒子Aよりも融点の低い金属粒子Bとを含有することが好ましい。金属粒子Aと金属粒子Bとの間では、遷移的液相焼結が可能とされる。
本開示における「遷移的液相焼結」は、Transient Liquid Phase Sintering(TLPS)とも称され、融点の異なる金属のうち相対的に融点の低い金属(以下、「低融点金属」ともいう。)の粒子界面における加熱による液相への転移と、相対的に融点の高い金属(以下、「高融点金属」ともいう。)の前記液相への反応拡散とにより、両金属による金属化合物の生成(例えば、合金化)が進行する現象をいう。この現象を利用して、低温で焼結可能であり、かつ焼結後の融点が高い焼結体を得ることができる。
また、本開示における「遷移的液相焼結」では、金属粒子A及び金属粒子Bに含まれる少なくとも一部の金属成分が焼結可能であればよく、全ての金属成分が焼結可能である必要はない。例えば、金属粒子Bは、Bi等の焼結時の反応に寄与しない金属成分を含んでいてもよい。
また、銅粉上に銀めっきをしたAgコート銅、樹脂、溶剤等を含む電磁波シールド用組成物を用いた場合、焼結した際の焼結体とグランド配線又ははんだとの接合が不充分となり、接合の信頼性に劣り、接合部の接触抵抗が高くなりやすい。一方、金属粒子Aと、金属粒子Aよりも融点の低い金属粒子Bとを含有する電磁波シールド用組成物を用いることで、焼結した際の焼結体とグランド配線又ははんだとの接合が充分となり、接合信頼性に優れ、接合部の接触抵抗も抑制できる傾向にある。
【0071】
遷移的液相焼結が可能な金属成分としては、遷移的液相焼結が可能な融点の異なる金属の組み合わせ(低融点金属と高融点金属の組み合わせ)が挙げられる。遷移的液相焼結が可能な金属の組み合わせは特に限定されず、例えば、低融点金属と高融点金属がそれぞれSnとCuである組み合わせ、ZnとCuである組み合わせ、InとAuである組み合わせ、SnとCoである組み合わせ、及びSnとNiである組み合わせが挙げられる。遷移的液相焼結が可能な金属の組み合わせは2種の金属の組み合わせであっても、3種以上の金属の組み合わせであってもよい。
【0072】
焼結後の接合強度の観点からは、金属粒子Aの融点は300℃より高いことが好ましく、500℃以上であることがより好ましく、800℃以上であることがさらに好ましい。本開示で用いる電磁波シールド用組成物は、2種以上の金属粒子Aを含んでいてもよく、例えば、融点がいずれも300℃より高い2種以上の金属粒子Aを含んでいてもよい。
【0073】
焼結時の液相への転移を促進する観点からは、金属粒子Bの融点は300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。本開示で用いる電磁波シールド用組成物は、2種以上の金属粒子Bを含んでいてもよく、例えば、融点がいずれも300℃以下の2種以上の金属粒子Bを含んでいてもよい。
【0074】
金属粒子A及び金属粒子Bの具体的な態様は、特に制限されない。金属粒子A及び金属粒子Bは、それぞれ1種の金属のみからなっていても、2種以上の金属からなっていてもよい。金属粒子A又は金属粒子Bが2種以上の金属からなる場合、当該金属粒子は2種以上の金属のそれぞれを含む金属粒子の組み合わせ(混合物)であっても、2種以上の金属が同じ金属粒子中に含まれていても、これらの組み合わせであってもよい。
【0075】
同じ金属粒子中に2種以上の金属を含有する金属粒子の構成は、特に制限されない。例えば、2種以上の金属の合金からなる金属粒子であっても、2種以上の金属の単体から構成される金属粒子であってもよい。2種以上の金属の単体から構成される金属粒子は、例えば、一方の金属を含む金属粒子の表面に、めっき、蒸着等により他方の金属を含む層を形成することで得ることができる。また、一方の金属を含む金属粒子の表面に、高速気流中で衝撃力を主体とした力を用いて乾式で他方の金属を含む粒子を付与して両者を複合化する方法により、同じ金属粒子中に2種以上の金属を含有する金属粒子を得ることもできる。
【0076】
好ましい態様は、金属粒子Aが金属単体の粒子であり、金属粒子Bが合金の粒子である。
【0077】
金属粒子Aは、Cu、Au、Ag、Co、Ni及びFeからなる群より選択される少なくとも一種を含む金属粒子であることが好ましく、Cu、Au、Ag、Co、Ni又はFeの粒子であることがより好ましい。
金属粒子Bは、Sn、Zn又はInを含む金属粒子であることが好ましく、Sn、Zn又はIn、及び後述の金属成分Xを含む合金粒子であることがより好ましい。
【0078】
金属粒子Aと金属粒子Aよりも融点が低い金属粒子Bとの組み合わせ(金属粒子A、金属粒子B)としては、例えば、(Cuを含む金属粒子、Snを含む金属粒子)、(Cuを含む金属粒子、Znを含む金属粒子)、(Auを含む金属粒子、Inを含む金属粒子)、(Coを含む金属粒子、Snを含む金属粒子)及び(Niを含む金属粒子、Snを含む金属粒子)が挙げられる。
【0079】
金属粒子Bは、遷移的液相焼結が可能となる温度を低下させる観点から、Bi、In、Zn、Cd、Pb、Ag、及びCuからなる群より選択される少なくとも一種の金属成分Xを含むことが好ましく、Snを含み、かつ金属成分Xを含むことがより好ましい。
なお、金属粒子BがZnを含む場合、金属成分XはBi、In、Cd、Pb、Ag、及びCuからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、金属粒子BがInを含む場合、金属成分XはBi、Zn、Cd、Pb、Ag、及びCuからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0080】
金属成分Xは、Bi、In、Zn、Cd、Ag、及びCuからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、遷移的液相焼結が可能となる温度をより低下させる観点から、Bi、In、Zn、及びCdからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0081】
金属粒子Bは、遷移的液相焼結が可能となる温度を低下させる観点及び電磁波シールド材の体積抵抗率を好適に低下させる観点から、金属粒子Bの全体に占める金属成分Xの割合が、3質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%、20質量%~30質量%、又は50質量%~60質量%であることがより好ましい。
【0082】
金属粒子BがSnを含む合金の状態である場合の例としては、SnBi合金、SnIn合金、SnZn合金、SnPb合金、SnCd合金等が挙げられる。中でも、遷移的液相焼結が可能となる温度を低下させる観点から、SnBi合金が好ましい。
【0083】
SnBi合金の組成は特に制限されず、例えば、合金の中に元素Biが58質量%含まれているSn-Bi58が挙げられる。Sn-Bi58で表される合金の融点(液相転移温度)は、約138℃である。
【0084】
例えば、金属粒子AがCu(融点:1085℃)を含み、金属粒子BがSn(融点:232℃)を含むことが好ましく、金属粒子AがCu粒子であり、金属粒子BがSnを含む合金粒子(融点:232℃未満、例えば、138℃)であることがより好ましい。CuとSnとは、焼結により銅-錫金属化合物(CuSn)を生成する。この生成反応は150℃付近で進行するため、リフロー炉等の一般的な設備による焼結が可能である。
【0085】
金属粒子AがCuを含み、金属粒子BがSnを含む場合、金属粒子A及び金属粒子Bの全体に占める、質量基準でのCuの含有率とSnの含有率との比(Cu含有率/Sn含有率)は、0.6~21であることが好ましく、0.8~9.5であることがより好ましく、1.0~5.6であることがさらに好ましい。
【0086】
金属粒子Aに対する金属粒子Bの割合(金属粒子B/金属粒子A)が、質量基準で10/90~90/10であることが好ましく、20/80~80/20であることがより好ましく、30/70~70/30であることがさらに好ましい。
【0087】
金属粒子A及び金属粒子Bの平均粒子径は、特に限定されない。
例えば、金属粒子Aの平均粒子径は、0.05μm~50μmであることが好ましく、0.1μm~40μmであることがより好ましく、0.15μm~30μmであることがさらに好ましい。特に金属粒子Aの平均粒子径が2μm以下であることにより、遷移的液相焼結後に、液相焼結していない金属粒子Aの量を低減させることができ、その結果、電磁波シールド材の体積抵抗率を好適に低下させることができる傾向にある。
【0088】
金属粒子Bの平均粒子径は、金属充填率の観点から、0.01μm~4μmであることが好ましく、0.05μm~1μm又は2μm~3μmであることがより好ましい。
【0089】
本開示では、金属粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター株式会社、LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置)によって測定される体積平均粒子径をいう。具体的には、分散媒(テルピネオール)125gに、金属粒子を0.01質量%~0.3質量%の範囲内で添加し、分散液を調製する。この分散液の約100ml程度をセルに注入して25℃で測定する。粒度分布は分散媒の屈折率を1.48として測定する。
【0090】
電磁波シールド用組成物中における金属粒子A及び金属粒子Bの合計の含有率は、特に限定されるものではない。例えば、電磁波シールド用組成物の固形分全体に占める金属粒子A及び金属粒子Bの合計の質量基準の割合は、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、94質量%以下であることがさらに好ましい。また、電磁波シールド用組成物の固形分全体に占める金属粒子A及び金属粒子Bの合計の質量基準の割合は、65質量%以上であってもよい。
【0091】
(樹脂)
本開示で用いる電磁波シールド用組成物は、樹脂を含有することが好ましい。電磁波シールド用組成物が樹脂を含むことで、金属粒子Aと金属粒子Bとの電磁波シールド材中の空隙が樹脂で充填され、応力緩和性及び接着力が向上する傾向にある。
【0092】
電磁波シールド用組成物に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても、これらの組み合わせであってもよい。また、樹脂は、加熱により重合反応を生じうる官能基を有するモノマー又はオリゴマーの状態であっても、すでに重合したポリマーの状態であってもよい。電磁波シールド用組成物に含まれる樹脂は、その耐熱温度が電磁波シールド用組成物の焼結温度よりも高くてもよく、例えば、その耐熱温度が150℃以上であってもよい。
【0093】
電磁波シールド用組成物では、耐熱性の観点からは、樹脂として熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ヒドロキシ基、ビニル基、カルボキシ基、アミノ基、マレイミド基、酸無水物基、チオール基、チオニル基等の官能基を有する樹脂が挙げられる。
【0094】
熱硬化性樹脂として具体的には、エポキシ樹脂、オキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂が好ましい。
【0095】
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂及び環式脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0096】
電磁波シールド用組成物中における樹脂の含有率は特に制限されない。例えば、電磁波シールド用組成物の固形分全体に占める樹脂の割合は、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~6質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることがさらに好ましい。
また、金属粒子A及び金属粒子Bを除く電磁波シールド用組成物の固形分に占める樹脂の割合は、5質量%~50質量%であることが好ましく、7質量%~30質量%であることがより好ましく、10質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
【0097】
(硬化剤)
樹脂が熱硬化性樹脂である場合、電磁波シールド用組成物は、熱硬化性樹脂を硬化する硬化剤を含有してもよい。
硬化剤の種類は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0098】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。
硬化剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0099】
アミン系硬化剤としては、鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、具体的には、m-フェニレンジアミン、1,3-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール等の芳香環が1個の芳香族アミン硬化剤;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香環が2個の芳香族アミン硬化剤;芳香族アミン硬化剤の加水分解縮合物;ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノ安息香酸エステル、ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノベンゾエート等のポリエーテル構造を有する芳香族アミン硬化剤;芳香族ジアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物;芳香族ジアミンとスチレンとの反応生成物;などが挙げられる。
【0100】
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、メチルハイミック酸無水物、ハイミック酸無水物、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、水素化メチルナジック酸無水物、無水マレイン酸とジエン化合物からディールス・アルダー反応で得られ、複数のアルキル基を有するトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸等の各種環状酸無水物が挙げられる。
【0101】
フェノール系硬化剤としては、フェノール化合物(例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA及びビスフェノールF)並びにナフトール化合物(例えば、α-ナフトール、β-ナフトール及びジヒドロキシナフタレン)からなる群より選択される少なくとも1種と、アルデヒド化合物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒド)とを、酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂;フェノール・アラルキル樹脂;ビフェニル・アラルキル樹脂;ナフトール・アラルキル樹脂;等が挙げられる。
【0102】
硬化剤の官能基(例えば、アミン系硬化剤の場合にはアミノ基、フェノール系硬化剤の場合にはフェノール性水酸基、酸無水物系硬化剤の場合には酸無水物基)の当量数とエポキシ樹脂の当量数との比(硬化剤の当量数/エポキシ樹脂の当量数)を、0.6~1.4の範囲に設定することが好ましく、0.7~1.3の範囲に設定することがより好ましく、0.8~1.2の範囲に設定することがさらに好ましい。
【0103】
(硬化促進剤)
電磁波シールド用組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、電磁波シールド用組成物は熱硬化性樹脂の硬化反応又は熱硬化性樹脂と硬化剤との硬化反応を促進する硬化促進剤を含有してもよい。
硬化促進剤の種類は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜選択される。
【0104】
硬化促進剤としては、具体的には、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザ-ビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物;シクロアミジン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物;3級アミン化合物の誘導体;イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;イミダゾール化合物の誘導体;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボレート塩;テトラフェニルボレート塩の誘導体;トリフェニルホスフィン-トリフェニルボラン錯体、モルホリン-トリフェニルボラン錯体等のトリフェニルボラン錯体;などが挙げられる。硬化促進剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0105】
硬化促進剤の含有率は、熱硬化性樹脂及び硬化剤の合計量に対して、0.1質量%~15質量%であることが好ましい。
【0106】
(フラックス成分)
本開示で用いる電磁波シールド用組成物は、フラックス成分を含有してもよい。本開示においてフラックス成分とは、フラックス作用(酸化膜の除去作用)を発揮しうる有機化合物を意味し、その種類は特に制限されない。フラックス成分は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂の硬化剤として機能するものであってもよい。本開示において、フラックス成分としてもエポキシ樹脂の硬化剤としても機能する成分は、フラックス成分と称することとする。
フラックス成分として具体的には、ロジン、活性剤、チキソ剤、酸化防止剤等が挙げられる。フラックス成分は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0107】
ロジンとして具体的には、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ピマル酸、イソピマル酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(BHPA)等が挙げられる。
活性剤として具体的には、アミノデカン酸、ペンタン-1,5-ジカルボン酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミンジフェニル酢酸、セバシン酸、フタル酸、安息香酸、ジブロモサリチル酸、アニス酸、ヨードサリチル酸、ピコリン酸等が挙げられる。
チキソ剤として具体的には、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アマイド等が挙げられる。
酸化防止剤として具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0108】
電磁波シールド用組成物がフラックス成分を含有する場合、フラックス成分としては、ロジン及び活性剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、ロジンがBHPAを含み、活性剤がトリエタノールアミンを含むことが好ましい。フラックス成分としては、BHPAとトリエタノールアミンとを併用することがより好ましい。
【0109】
電磁波シールド用組成物がフラックス成分を含有する場合、電磁波シールド用組成物の固形分全体に占めるフラックス成分の割合は、例えば、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~40質量%であることがより好ましく、1質量%~30質量%であることがさらに好ましい。
金属粒子A及び金属粒子Bを除く電磁波シールド用組成物の固形分に占めるフラックス成分の割合は、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、15質量%~40質量%であることがさらに好ましい。
【0110】
(溶剤)
本開示で用いる電磁波シールド用組成物は、溶剤を含有してもよい。樹脂を充分に溶解する観点から、溶剤は極性溶剤が好ましく、電磁波シールド用組成物を塗布する際の電磁波シールド用組成物の乾燥を抑制する観点から、80℃以上の沸点を有している溶剤であることが好ましく、焼結時のボイドの発生を抑制する観点から300℃以下の沸点を有している溶剤であることがより好ましい。
【0111】
溶剤の例としては、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、テルピネオール、ステアリルアルコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名、エトキシエトキシエタノール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(別名、ヘキシルカルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコールフェニルエーテル、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール等のアルコール類;クエン酸トリブチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類;イソホロン等のケトン;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム;フェニルアセトニトリル等のニトリル類;などを挙げることができる。溶剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0112】
電磁波シールド用組成物中の溶剤の割合は、電磁波シールド用組成物がスプレーコート等の塗布方法に適した粘度となる量であることが好ましい。
電磁波シールド用組成物中の溶剤の割合は、例えば、0.1質量%~25質量%であることが好ましく、0.2質量%~20質量%であることがより好ましく、0.3質量%~15質量%であることがさらに好ましい。
【0113】
本開示の電子部品装置は、実装面を有し、実装面に電子部品が実装された基材と、前記実装面上に塗布された絶縁層形成用組成物から形成され、少なくとも前記電子部品を覆う絶縁層と、前記実装面上に塗布された機能層形成用組成物から形成された機能層と、を備える。本開示の電子部品装置では、前述の本開示の製造方法と同様に絶縁層形成用組成物及び機能層形成用組成物を用いてそれぞれ絶縁層及び機能層が形成されている。これにより、電子部品装置の小型化が可能であり、簡便な方法にて絶縁層及び機能層が形成される。本開示の電子部品装置の好ましい構成は、前述の本開示の製造方法にて製造される電子部品装置と同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
以下、機能層が電磁波シールド材であるときの電子部品装置を製造する方法の一例について図1を用いて説明する。図1に示す方法により、電子部品装置10を製造することができる。
【0115】
図1の(c)に示すように、電子部品装置10は、複数の電子部品1と、基材2と、絶縁層3と、電磁波シールド材4と、グランド配線5と、はんだ6とを備える。複数の電子部品1が基材2の実装面に配置され、電子部品1の間に複数のグランド配線5が配置されている。
【0116】
電子部品装置10では、電子部品1を覆うように絶縁層3が形成されている。また、グランド配線5上にははんだ6が配置され、はんだ6を介して電磁波シールド材4とグランド配線5とが電気的に接続している。
【0117】
また、電子部品1上の絶縁層3を覆うように電磁波シールド材4が配置されている。これにより、基材2上に配置された電子部品1に対して外部からの不要な電磁波がシールドされるとともに、電子部品1からの不要な電磁波もシールドされる。
【0118】
(基材の準備)
図1に(a)に示すように、実装面に、複数の電子部品1及び複数のグランド配線5が配置された基材2を準備する。グランド配線5は、電子部品1の間に配置されていればよく、グランド配線5上の少なくとも一部にははんだ6が設けられている。
【0119】
グランド配線5上にはんだ6を設けることで、はんだ6を介して電磁波シールド材4とグランド配線5を強固に接続することが可能となる。また、はんだ6を設けることでグランド配線5を構成する銅等の金属の酸化を抑制できる。
【0120】
はんだ6としては特に限定されず、Sn-Ag-Cu系、Sn-Zn-Bi系、SnCu系、SnAgInBi系、SnZnAl系等の鉛フリーはんだが挙げられる。
【0121】
電磁波シールド材4の形成に用いる電磁波シールド用組成物がSn、Bi、Cu等の元素を含む場合、鉛フリーはんだ等のはんだ6と、電磁波シールド用組成物とが類似組成となる。これにより、低抵抗で高信頼性を有する、電磁波シールド材4とグランド配線5との接続が可能となる。
【0122】
電子部品装置10の小型化、製造工程の簡略化等の観点から、グランド配線5上にはんだ6が設けられていなくてもよい。また、電磁波シールド用組成物がフラックス成分を含有する場合、はんだ6を設けずともグランド配線5を構成する銅等の金属の酸化を抑制できる傾向にある。
【0123】
(絶縁層の形成)
図2の(b)に示すように、基材2の実装面上に配置された複数の電子部品1及び複数のはんだ6を覆う絶縁層3を形成する。このとき、絶縁層形成用組成物を電子部品1上に塗布し、次いで当該組成物を加熱、活性エネルギー線の照射等により硬化させて絶縁層3を形成すればよい。
【0124】
絶縁層形成用組成物を電子部品1上に塗布する際、図2の(b)に示すように、はんだ6の上に絶縁層形成用組成物が塗布されないように絶縁層形成用組成物を選択的に塗布し、隣接する絶縁層3の間に開口部7が形成されることが好ましい。
【0125】
あるいは、はんだ6の上に絶縁層形成用組成物を塗布した場合には、絶縁層3におけるはんだ6を覆う部分を除去し、はんだ6の少なくとも一部が露出する開口部7を形成すればよい。絶縁層3の一部を除去する方法としては、特に限定されず、絶縁層3におけるはんだ6を覆う部分にレーザーを照射して当該部分を除去してもよい。
【0126】
(電磁波シールド用組成物の塗布)
次に、絶縁層3及びはんだ6に電磁波シールド用組成物を塗布してもよい。電磁波シールド用組成物の好ましい組成は、前述の通りである。
【0127】
絶縁層3上及びグランド配線5上に電磁波シールド用組成物を塗布した後、電磁波シールド用組成物を焼結させる前に、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。
【0128】
電磁波シールド用組成物が溶剤を含む場合、絶縁層3上及びグランド配線5上に塗布された電磁波シールド用組成物に対して乾燥処理を行うことが好ましい。電磁波シールド用組成物の乾燥方法は、溶剤の少なくとも一部を除去できれば特に制限されず、通常用いられる乾燥方法から適宜選択することができる。
乾燥方法は、常温(例えば、25℃)放置による乾燥、加熱乾燥又は減圧乾燥を用いることができる。加熱乾燥又は減圧乾燥には、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等を用いることができる。
乾燥のための温度及び時間は、使用した溶剤の種類及び量に合わせて適宜調整することができ、例えば、40℃~130℃で、1分間~120分間乾燥させることが好ましい。
【0129】
(電磁波シールド材の形成)
塗布された電磁波シールド用組成物を焼結させることで絶縁層3を覆い、グランド配線5と電気的に接続している電磁波シールド材4を形成することを含む。これにより、図2の(c)に示すように、絶縁層3を覆い、はんだ6を介してグランド配線5と電気的に接続している電磁波シールド材4を備える電子部品装置10を製造できる。
【0130】
電磁波シールド材は、電磁波シールド用組成物が金属粒子A及び金属粒子Bを含む場合、電磁波シールド用組成物を加熱することで金属粒子Aと金属粒子Bとを遷移的液相焼結させて製造することができる。
遷移的液相焼結は、加熱処理で行ってもよいし、加熱加圧処理で行ってもよい。
加熱処理には、前述の加熱装置を用いることができる。
また、加熱加圧処理には、熱板プレス装置等を用いてもよいし、加圧しながら上述の加熱処理を行ってもよい。
遷移的液相焼結における加熱温度は、金属粒子の種類によるが、140℃以上であることが好ましく、190℃以上であってもよく、220℃以上であってもよい。当該加熱温度の上限は、特に制限されず、例えば300℃以下である。
遷移的液相焼結における加熱時間は、金属粒子の種類によるが、5秒間~10時間であることが好ましく、1分間~30分間であることがより好ましく、3分間~10分間であることがさらに好ましい。
【0131】
遷移的液相焼結は、低酸素濃度の雰囲気下で行われてもよく、大気雰囲気下で行われてもよい。低酸素濃度雰囲気下とは、体積基準の酸素濃度が1000ppm以下の状態をいい、好ましくは100ppm以下である。
【0132】
本開示の電子部品装置の製造方法では、機能層として電磁波シールド材を形成する構成に限定されず、機能層として配線、電極、放熱材、電磁波吸収材等を所望の位置に形成する構成も包含する。
【符号の説明】
【0133】
1 電子部品、2 基材、3 絶縁層、4 電磁波シールド材、5 グランド配線、6 はんだ、7 開口部、10 電子部品装置
図1