IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図1
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図2
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図3
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図4
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図5
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図6
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図7
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図8
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図9
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図10
  • 特開-タイヤ騒音の計測装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095386
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】タイヤ騒音の計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208682
(22)【出願日】2020-12-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名 公益社団法人自動車技術会 刊行物名 自動車技術会2020年秋季大会学術講演会講演予稿集 セッション番号182の337 発行日 令和2年10月16日 学会名 自動車技術会2020年秋季大会 開催日 令和2年10月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達矢
(72)【発明者】
【氏名】堀内 俊
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤの騒音に関する情報が詳細に把握されうる計測装置の提供。
【解決手段】計測装置2は、ドラム12の上で回転するタイヤ10から生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第一マイクロフォンを有しており、このタイヤ10の前方に位置する第一アレイ4a、タイヤ10から生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第二マイクロフォンを有しており、このタイヤ10の側方に位置する第二アレイ4b、タイヤ10から生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第三マイクロフォンを有しており、このタイヤ10の後方に位置する第三アレイ4c、及びコンピュータを有している。このコンピュータは、これらマイクロフォンによって計測された音圧に基づいて音響パワーを算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台上で回転するタイヤから生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第一マイクロフォンを有しており、このタイヤの前方に位置する第一アレイ、
上記タイヤから生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第二マイクロフォンを有しており、このタイヤの側方に位置する第二アレイ、
上記タイヤから生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第三マイクロフォンを有しており、このタイヤの後方に位置する第三アレイ、
及び
これらの第一マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第一音響パワーを算出し、これらの第二マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第二音響パワーを算出し、これらの第三マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第三音響パワーを算出しうるコンピュータ
を備えた、タイヤ騒音の計測装置。
【請求項2】
上記第一アレイにおいて上記第一マイクロフォンが格子状に配置されており、これらの第一マイクロフォンのピッチが50mm以下であり、
上記第二アレイにおいて上記第二マイクロフォンが格子状に配置されており、これらの第二マイクロフォンのピッチが50mm以下であり、
上記第三アレイにおいて上記第三マイクロフォンが格子状に配置されており、これらの第三マイクロフォンのピッチが50mm以下である請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
上記第一アレイの短辺の長さが200mm以上であり、
上記第二アレイの短辺の長さが200mm以上であり、
上記第三アレイの短辺の長さが200mm以上である請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
上記第一アレイ、上記第二アレイ又は上記第三アレイによって得られた音圧の分布のイメージ図を作成する音響ホログラフィをさらに備えた請求項1から3のいずれかに記載の計測装置。
【請求項5】
台上で回転するタイヤの前方に位置する第一アレイが有する複数の第一マイクロフォンのそれぞれによって、このタイヤから生じる音圧を計測する工程、
上記タイヤの側方に位置する第二アレイが有する複数の第二マイクロフォンのそれぞれによって、このタイヤから生じる音圧を計測する工程、
上記タイヤの後方に位置する第三アレイが有する複数の第三マイクロフォンのそれぞれによって、このタイヤから生じる音圧を計測する工程、
これらの第一マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第一音響パワーを算出する工程、
これらの第二マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第二音響パワーを算出する工程、
及び
これらの第三マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第三音響パワーを算出する工程
を備えたタイヤ騒音の計測方法。
【請求項6】
上記第一マイクロフォンによって計測された音圧、上記第二マイクロフォンによって計測された音圧、及び上記第三マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて、合計音響パワーを算出する工程をさらに備えた請求項5に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤが走行するときに生じる騒音を計測するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、トレッドを有している。タイヤが転動するとき、このトレッドが路面と衝突する。この衝突によって、騒音が生じる。一般的なトレッドは、多数の溝を有している。これらの溝の空気が圧縮されることでも、騒音が生じる。騒音は、ドライバーに不快感を与える。騒音の小さなタイヤが、望まれている。
【0003】
特開2008-304403公報には、タイヤの走行によって生じる騒音が計測されるための装置が開示されている。この措置は、タイヤを走行させるためのドラムと、多数のマイクロフォンとを有している。この装置により、屋内にて、天候の影響を受けることなく騒音が測定されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-304403公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2008-304403公報に開示された装置による測定の結果には、車輌に装着されたタイヤの走行で生じる騒音の特徴が、十分には反映されない。この測定では、騒音対策のための情報が、詳細には把握され得ない。
【0006】
本発明の目的は、タイヤ騒音に関する情報が詳細に把握されうる計測装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤ騒音の計測装置は、
台上で回転するタイヤから生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第一マイクロフォンを有しており、このタイヤの前方に位置する第一アレイ、
このタイヤから生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第二マイクロフォンを有しており、このタイヤの側方に位置する第二アレイ、
このタイヤから生じる音圧をそれぞれが計測しうる複数の第三マイクロフォンを有しており、このタイヤの後方に位置する第三アレイ、
及び
これらの第一マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第一音響パワーを算出し、これらの第二マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第二音響パワーを算出し、これらの第三マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第三音響パワーを算出しうるコンピュータ
を有する。
【0008】
第一アレイにおいて第一マイクロフォンが格子状に配置されてよい。好ましくは、これらの第一マイクロフォンのピッチは、50mm以下である。好ましくは、第一アレイの短辺の長さは、200mm以上である。
【0009】
第二アレイにおいて第二マイクロフォンが格子状に配置されてよい。好ましくは、これらの第二マイクロフォンのピッチは、50mm以下である。好ましくは、第二アレイの短辺の長さは、200mm以上である。
【0010】
第三アレイにおいて第三マイクロフォンが格子状に配置されてよい。好ましくは、これらの第三マイクロフォンのピッチは、50mm以下である。好ましくは、第三アレイの短辺の長さは、200mm以上である。
【0011】
好ましくは、計測装置は、音響ホログラフィをさらに有する。この音響ホログラフィは、第一アレイ、第二アレイ又は第三アレイによって得られた音圧の分布のイメージ図を作成する。
【0012】
他の観点によれば、本発明に係るタイヤ騒音の計測方法は、
台上で回転するタイヤの前方に位置する第一アレイが有する複数の第一マイクロフォンのそれぞれによって、このタイヤから生じる音圧を計測する工程、
このタイヤの側方に位置する第二アレイが有する複数の第二マイクロフォンのそれぞれによって、このタイヤから生じる音圧を計測する工程、
このタイヤの後方に位置する第三アレイが有する複数の第三マイクロフォンのそれぞれによって、このタイヤから生じる音圧を計測する工程、
これらの第一マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第一音響パワーを算出する工程、
これらの第二マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第二音響パワーを算出する工程、
及び
これらの第三マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて第三音響パワーを算出する工程
を有する。
【0013】
好ましくは、この計測方法は、
第一マイクロフォンによって計測された音圧、第二マイクロフォンによって計測された音圧、及び第三マイクロフォンによって計測された音圧に基づいて、合計音響パワーを算出する工程
をさらに有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る計測装置による測定結果には、車輌に装着されたタイヤの走行で生じる騒音の特徴が、十分に反映されうる。この測定では、騒音対策のための情報が、詳細に把握されうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る計測装置が示された概念図である。
図2図2は、図1の計測装置の一部がタイヤ及びドラムと共に示された斜視図である。
図3図3は、図2の計測装置の一部が示された正面図である。
図4図4は、図3の計測装置のアレイユニットが示された拡大図である。
図5図5は、図4のアレイユニットの一部が示された拡大図である。
図6図6は、図2の計測装置の一部が示された右側面図である。
図7図7は、図2の計測装置の一部が示された背面図である。
図8図8は、図1の計測装置が用いられた計測方法が示されたフローチャートである。
図9図9は、図8の計測方法によって得られた結果が示されたグラフである。
図10図10は、図8の計測方法によって得られた結果が示されたグラフである。
図11図11は、図8の計測方法によって得られた結果が示された音圧分布のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1に示された計測装置2は、第一アレイ4a、第二アレイ4b、第三アレイ4c、コンピュータ6及び音響ホログラフィ8を有している。第一アレイ4a、第二アレイ4b及び第三アレイ4cのそれぞれは、有線又は無線によってコンピュータ6に接続されている。音響ホログラフィ8は、有線又は無線によってコンピュータ6に接続されている。この装置2は、タイヤ騒音の計測に用いられうる。
【0018】
図2に、図1の計測装置2が用いられた計測の様子が示されている。図2には、タイヤ10も示されている。図2には、走行試験機のドラム12も示されている。タイヤ10は、トレッド面14を有している。このトレッド面14は、ドラム12の外周面16と接触している。ドラム12の外周面16は平滑でもよく、疑似路面でもよい。ISO規格で定められた路面が疑似された外周面16が、好ましい。ドラム12の直径は、タイヤ10の直径に比べて十分に大きい。
【0019】
ドラム12は、矢印A1の方向に回転する。この回転に起因して、タイヤ10は矢印A2の方向に回転する。図2において、矢印Xはタイヤ10の進行方向を表し、矢印Yはタイヤ10の軸方向を表し、矢印Zは鉛直方向を表す。タイヤ10の回転はドラム12の回転に起因するので、タイヤ10は進行方向(X方向)に移動しない。換言すれば、X方向は相対的な進行方向である。ドラム12は、台の1種である。台として、ドラム12に代えて、ベルトが用いられてもよい。
【0020】
図2に示されるように、タイヤ10の前方には、第一アレイ4aが位置している。図2では、便宜上、第一アレイ4aが板状に画かれている。第一アレイ4aの詳細は、後述される。タイヤ10の側方には、第二アレイ4bが位置している。図2では、便宜上、第二アレイ4bが板状に画かれている。第二アレイ4bの詳細は、後述される。タイヤ10の後方には、第三アレイ4cが位置している。図2では、便宜上、第三アレイ4cが板状に画かれている。第三アレイ4cの詳細は、後述される。第一アレイ4a、第二アレイ4b及び第三アレイ4cのそれぞれは、計測面を形成している。タイヤ10は、三方を計測面によって囲まれている。
【0021】
図3は、図2の計測装置2の一部が示された正面図である。図3には、第一アレイ4aが示されている。この第一アレイ4aは、複数のアレイユニット18を有している。本実施形態では、アレイユニット18の数は8である。これらのアレイユニット18は、鉛直方向(Z方向)に沿って1列に並んでいる。
【0022】
図4には、1つのアレイユニット18が示されている。図5は、このアレイユニット18の一部が示された拡大図である。アレイユニット18は、フレーム20と多数のマイクロフォン22を有している。本実施形態では、1つのアレイユニット18におけるマイクロフォン22の数は、48である。これらのマイクロフォン22は、格子状に配置されている。本実施形態では、マイクロフォン22は、(12列,4行)に配置されている。それぞれのマイクロフォン22は、フレーム20に固定されている。
【0023】
前述の通り、第一アレイ4aでは、8のアレイユニット18が1列に並んでいる。従って、第一アレイ4aの全体において、多数のマイクロフォン22が格子状に配置されている。本実施形態では、第一アレイ4aにおけるマイクロフォン22の数は、384である。これらのマイクロフォン22は、(12列,32行)に配置されている。第一アレイ4aのマイクロフォン22は、「第一マイクロフォン」とも称される。
【0024】
図6は、図2の計測装置2の一部が示された右側面図である。図6には、第二アレイ4bが示されている。この第二アレイ4bは、複数のアレイユニット18を有している。本実施形態では、アレイユニット18の数は24である。これらのアレイユニット18は、3列に並んでいる。それぞれのアレイユニット18の構造は、第一アレイ4aのアレイユニット18の構造と同じである。第二アレイ4bにおいても、それぞれのアレイユニット18は、48のマイクロフォン22を有している。これらのマイクロフォン22は、格子状に配置されている(図4参照)。第二アレイ4bのマイクロフォン22は、「第二マイクロフォン」とも称される。
【0025】
前述の通り、第二アレイ4bでは、24のアレイユニット18を有している。従って、第二アレイ4bにおけるマイクロフォン22の数は、1152である。これらのマイクロフォン22は、格子状に配置されている。これらのマイクロフォン22は、(36列,32行)に配置されている。
【0026】
図7は、図2の計測装置2の一部が示された背面図である。図7には、第三アレイ4cが示されている。この第三アレイ4cは、複数のアレイユニット18を有している。本実施形態では、アレイユニット18の数は8である。これらのアレイユニット18は、1列に並んでいる。それぞれのアレイユニット18の構造は、第一アレイ4aのアレイユニット18の構造と同じである。第三アレイ4cにおいても、それぞれのアレイユニット18は、48のマイクロフォン22を有している。これらのマイクロフォン22は、格子状に配置されている(図4参照)。第三アレイ4cのマイクロフォン22は、「第三マイクロフォン」とも称される。
【0027】
前述の通り、第三アレイ4cでは、8のアレイユニット18を有している。従って、第三アレイ4cにおけるマイクロフォン22の数は、384である。これらのマイクロフォン22は、格子状に配置されている。これらのマイクロフォン22は、(12列,32行)に配置されている。
【0028】
それぞれのマイクロフォン22は、タイヤ10の走行によって発生する音の音圧を計測しうる。第一マイクロフォン22は、主としてタイヤ10から前方に向かう音の音圧を計測する。第二マイクロフォン22は、主としてタイヤ10から側方に向かう音の音圧を計測する。第三マイクロフォン22は、主としてタイヤ10から後方に向かう音の音圧を計測する。各マイクロフォン22で得られた音圧の信号は、コンピュータ6へと送信される。
【0029】
コンピュータ6は、受信した信号に、種々の演算を施しうる。典型的な演算は、音圧の合算である。合算に関し、音圧ごとに係数が乗じられてもよい。係数は、マイクロフォン22の位置が考慮して定められうる。コンピュータ6は、第一アレイ4aに属する全ての第一マイクロフォン22からの信号を合算し、周波数ごとの第一音響パワーを算出しうる。この第一音響パワーは、タイヤ10の前方に向けて放射される音のエネルギーと相関する。コンピュータ6は、第二アレイ4bに属する全ての第二マイクロフォン22からの信号を合算し、周波数ごとの第二音響パワーを算出しうる。この第二音響パワーは、タイヤ10の側方に向けて放射される音のエネルギーと相関する。コンピュータ6は、第三アレイ4cに属する全ての第三マイクロフォン22からの信号を合算し、周波数ごとの第三音響パワーを算出する。この第三音響パワーは、タイヤ10の後方に向けて放射される音のエネルギーと相関する。
【0030】
図8は、図1の計測装置2が用いられた計測方法が示されたフローチャートである。この方法では、タイヤ10が準備される(STEP1)。このタイヤ10は、トレッド面14に複数の溝を有している。これらの溝により、タイヤ10にトレッドパターンが形成されている。タイヤ10が、溝を含まないトレッド面14を有してもよい。
【0031】
このタイヤ10は、所定のリムに組み込まれる(STEP2)。このタイヤ10には、空気が充填される(STEP3)。この充填により、タイヤ10の内圧が所定の値に達する。
【0032】
このタイヤ10が、走行試験機に装着される(STEP4)。タイヤ10には、所定の荷重が負荷される。
【0033】
次に、ドラム12が回転させられる(STEP5)。換算されたタイヤ10の走行速度が所定の値となるような回転速度で、ドラム12が回転させられる。回転により、トレッド面14が路面と衝突する。この衝突によって、騒音が生じる。溝の空気が圧縮されることでも、騒音が生じる。
【0034】
このタイヤ10の回転が継続された状態で、それぞれの第一マイクロフォン22が音圧を計測する(STEP6)。それぞれの第二マイクロフォン22も、音圧を計測する(STEP7)。それぞれの第三マイクロフォン22も、音圧を計測する(STEP8)。第一マイクロフォン22による計測(STEP6)、第二マイクロフォン22による計測(STEP7)、及び第三マイクロフォン22による計測(STEP8)は、同時になされる。これらの計測が、別のタイミングでなされてもよい。
【0035】
コンピュータ6は、複数の第一マイクロフォン22から、音圧の信号を受信する(STEP9)。コンピュータ6は、複数の第二マイクロフォン22から、音圧の信号を受信する(STEP10)。さらにコンピュータ6は、複数の第三マイクロフォン22から、音圧の信号を受信する(STEP11)。第一マイクロフォン22からの受信(STEP9)、第二マイクロフォン22からの受信(STEP10)、及び第三マイクロフォン22からの受信(STEP11)は、同時になされる。これらの受信が、別のタイミングでなされてもよい。
【0036】
コンピュータ6は、複数の第一マイクロフォン22からの信号に基づいて、第一音響パワーを算出する(STEP12)。コンピュータ6は、複数の第二マイクロフォン22からの信号に基づいて、第二音響パワーを算出する(STEP13)。さらにコンピュータ6は、複数の第三マイクロフォン22からの信号に基づいて、第三音響パワーを算出する(STEP14)。第一音響パワーの算出(STEP12)、第二音響パワーの算出(STEP13)、及び第三音響パワーの算出(STEP14)は、同時になされる。これらの算出が、別のタイミングでなされてもよい。
【0037】
次にコンピュータ6は、第一マイクロフォン22によって計測された音圧、第二マイクロフォン22によって計測された音圧、及び第三マイクロフォン22によって計測された音圧に基づいて、合計音響パワーを算出する(STEP15)。
【0038】
必要に応じてコンピュータ6は、第一音響パワー、第二音響パワー、第三音響パワー又は合計音響パワーを、外部機器に向けて出力する(STEP16)。
【0039】
次にコンピュータ6は、第一音響パワー、第二音響パワー又は第三音響パワーの電子情報を、音響ホログラフィ8に送信する(STEP17)。音響ホログラフィ8は、この電子情報に基づいて、音圧の分布のイメージ図を作成する(STEP18)。
【0040】
図9は、音響パワーの算出(STEP12、STEP13、STEP14)によって得られた結果が示されたグラフである。このグラフにおいて、横軸は周波数であり、縦軸は音響パワーのレベルである。図9には、タイヤ10の前方で計測された音響パワー(第一音響パワー)、タイヤ10の側方で計測された音響パワー(第二音響パワー)、及びタイヤ10の後方で計測された音響パワー(第三音響パワー)が示されている。このグラフのための計測に使用されたタイヤ10のサイズは、「265/65R18」である。このタイヤ10は、トレッド面14に多数の溝を有している。このタイヤ10の内圧は、230kPaである。タイヤ10に負荷される荷重は、7.28kNである。走行速度は、50km/hである。
【0041】
図9から明らかなように、タイヤ10の後方で計測された音響パワーは、タイヤ10の前方で計測された音響パワーよりも小さく、タイヤ10の側方で計測された音響パワーよりも小さい。パワーが最も大きい音の周波数は、約1250Hzである。パワーが最も大きい音は、タイヤ10の前方で計測されている。タイヤ10の側方で計測される音には、周波数が約400Hzであるピークと、周波数が約800Hzであるピークとが見られる。これらの情報に基づいて、タイヤ10に騒音対策が施されうる。
【0042】
図10は、合計音響パワーの算出(STEP15)によって得られた結果が示されたグラフである。このグラフにおいて、横軸は周波数であり、縦軸は音響パワーのレベルである。図10には、合計音響パワー(凡例は「Drum Test」)と共に、実際の車両に装着されたタイヤ10にて計測された騒音(凡例は「Vehicle」)も示されている。このグラフのための計測に使用されたタイヤ10のサイズは、「265/65R18」である。このタイヤ10は、トレッド面14に多数の溝を有している。このタイヤ10の内圧は、230kPaである。タイヤ10に負荷される荷重は、7.28kNである。走行速度は、50km/hである。
【0043】
図10から明らかなように、実際の車両に装着されたタイヤ10にて計測された騒音の曲線は、周波数が約400Hzであるピークと、周波数が約1250Hzであるピークとを有している。合計音響パワーの曲線も、周波数が約400Hzであるピークと、周波数が約1250Hzであるピークとを有している。合計音響パワーの曲線の形状は、実際の車両に装着されたタイヤ10にて計測された騒音の曲線の形状と、近似している。換言すれば、本発明に係る計測方法により、実際の車両に装着されたタイヤ10にて生じる騒音が、精度よく再現されうる。本発明に係る計測方法によって得られた情報に基づいて、タイヤ10に騒音対策が施されうる。
【0044】
図11は、音響ホログラフィ8によって得られた音圧の分布のイメージ図である。図9から明らかな通り、第一アレイ4aで計測される、周波数が1250Hzである音響パワーは、大きい。図11には、第一アレイ4aで計測される、周波数が1250Hzである音の、音圧分布が示されている。このイメージ図から得られる情報に基づいて、タイヤ10に騒音対策が施されうる。
【0045】
音響ホログラフィ8により、他の周波数における音圧分布のイメージ図も得られうる。本発明に係る装置2により、第二アレイ4b及び第三アレイ4cで計測される音の音圧分布のイメージ図も得られうる。
【0046】
実際の車両に装着されたタイヤ10の評価では、タイヤ10が4本必要である。発明に係る計測方法では、1本のタイヤ10で、評価がなされうる。実際の車両に装着されたタイヤ10の評価は、屋外でなされる。従ってこの評価は、気候の影響を受ける。発明に係る計測方法は、屋内でなされうる。従ってこの計測方法では、気候の影響が排除されうる。屋内での計測では、タイヤ10の騒音以外の音をマイクロフォン22が計測することが、回避されうる。
【0047】
本実施形態では、各アレイ4は、複数のアレイユニット18を有している。各アレイ4において、複数のアレイユニット18が、1つの計測面を形成している。1つのアレイユニット18が移動することで、1つの計測面が形成されてもよい。換言すれば、本発明における「アレイ」は、仮想されたものであってよい。アレイユニット18の移動によって計測面が形成される装置では、準備されるアレイユニット18が少数で足りる。
【0048】
図5において矢印Pは、マイクロフォン22のピッチを表す。ピッチPは、各アレイ4において計測されうる最大周波数と相関する。ピッチPと最大周波数との関係は、以下の通りである。
ピッチP(mm) 最大周波数(Hz)
25 6000
50 3000
100 1500
150 1000
200 750
【0049】
タイヤ10から生じる、2500Hz以下の騒音の音圧は、大きい。この騒音の計測には、ピッチPが50mm以下であるアレイ4が、適している。ピッチPが小さいほど、広い周波数域の騒音が計測されうる。この観点から、ピッチPは35mm以下がより好ましく、25mm以上が特に好ましい。ピッチPが25mm以下であるアレイ4により、タイヤ10から生じる騒音のほぼ全域が、計測されうる。
【0050】
図5における上下方向及び左右方向の両方において、ピッチPは50mm以下が好ましく、25mm以下が特に好ましい。第一アレイ4a、第二アレイ4b及び第三アレイ4cのそれぞれにおいて、ピッチPは50mm以下が好ましく、25mm以下が特に好ましい。
【0051】
図3において矢印L1は、第一アレイ4aの左右方向の長さを表す。第一アレイ4aの輪郭は長方形であり、左右方向の長さL1は上下方向の長さよりも小さい。換言すれば、矢印L1は、第一アレイ4aの短辺の長さである。長さL1は、配置されうるマイクロフォン22の数Nと相関する。マイクロフォン22の数Nは、計測されうる最小周波数と相関する。ピッチPが25mmであるときの、距離L1、個数N及び最小周波数の関係は、以下の通りである。
距離L1(mm) 個数N 最小周波数(Hz)
100 4 570
200 8 245
300 12 156
600 24 80
800 32 60
900 36 50
【0052】
タイヤ10からは、周波数が300Hz以上である騒音が主として生じる。距離L1が200mm以上である第一アレイ4aにより、この騒音が精度よく計測されうる。距離L1が大きいほど、広い周波数域の騒音が計測されうる。この観点から、距離L1は250mm以上がより好ましく、300mm以上が特に好ましい。
【0053】
輪郭が長方形でないアレイ4の場合、輪郭内に画かれる左右方向の最長線分と、輪郭内に画かれる上下方向の最長線分とが対比される。これらの線分の内、距離が小さい方の線分の距離が、このアレイ4の短辺の長さと定義される。
【0054】
図6において矢印L2は、第二アレイ4bの上下方向の長さを表す。第二アレイ4bの輪郭は長方形であり、上下方向の長さL2は左右方向の長さよりも小さい。換言すれば、矢印L2は、第二アレイ4bの短辺の長さである。第一アレイ4aの長さL1と同様の理由から、長さL2は200mm以上が好ましく、250mm以上がより好ましく、300mm以上が特に好ましい。
【0055】
図7において矢印L3は、第三アレイ4cの左右方向の長さを表す。第三アレイ4cの輪郭は長方形であり、左右方向の長さL3は上下方向の長さよりも小さい。換言すれば、矢印L3は、第三アレイ4cの短辺の長さである。第一アレイ4aの長さL1と同様の理由から、長さL3は200mm以上が好ましく、250mm以上がより好ましく、300mm以上が特に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る装置により、乗用車用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪自動車用タイヤ等の、種々のタイヤの騒音が計測されうる。
【符号の説明】
【0057】
2・・・計測装置
4・・・アレイ
4a・・・第一アレイ
4b・・・第二アレイ
4c・・・第三アレイ
6・・・コンピュータ
8・・・音響ホログラフィ
10・・・タイヤ
12・・・ドラム
14・・・トレッド面
16・・・ドラムの外周面
18・・・アレイユニット
20・・・フレーム
22・・・マイクロフォン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11