(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095473
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】屋根構造体
(51)【国際特許分類】
E04B 7/02 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
E04B7/02 501Z
E04B7/02 501H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208819
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山鹿 栄治
(72)【発明者】
【氏名】島田 空
(72)【発明者】
【氏名】陣田 博史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】施工性により優れた屋根構造体を提供する。
【解決手段】屋根本体と、屋根本体の水下側に設けられる桁材と、屋根本体の水上側を支持する水上支持部材2aに見込方向に進入するビス7aにより固定される水上係止部材70と、水上支持部材と桁材との間に架け渡される下地部材71と、屋根本体の下方を覆う天井部材と、を有し、天井部材は、水上側の端が水上係止部材に係止されて、水下側の端が下方から進入するビス7bにより下地部材に固定されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根本体と、
前記屋根本体の水下側に設けられる桁材と、
前記屋根本体の水上側を支持する水上支持部材に見込方向に進入するビスにより固定される水上係止部材と、
前記水上支持部材と前記桁材との間に架け渡される下地部材と、
前記屋根本体の下方を覆う天井部材と、
を有し、
前記天井部材は、水上側の端が前記水上係止部材に係止されて、水下側の端が下方から進入するビスにより前記下地部材に固定されていることを特徴とする屋根構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根構造体であって、
前記天井部材は、見込方向に並べて配置される複数の天井パネルにより構成されていることを特徴とする屋根構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の屋根構造体であって、
前記複数の天井パネルのうちの互いに隣り合う2つの前記天井パネルは、水下側に位置する前記天井パネルの水上側が、水上側に位置する前記天井パネルの水下側に係止されて、水下側に位置する前記天井パネルの水下側の端が、前記下地部材に下方から進入するビスにより固定されていることを特徴とする屋根構造体。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の屋根構造体であって、
前記桁材は、平坦な底を有する排水溝をなす樋を備えており、
前記複数の天井パネルのうちの最も水下側に配置される前記天井パネルは、前記樋の下方に配置され、前記底の下には、前記天井パネルが有する平坦な面が位置していることを特徴とする屋根構造体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の屋根構造体であって、
前記水上支持部材は、当該屋根構造体と併設されている建物の外壁であることを特徴とする屋根構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の支柱と、支柱に取り付けられた複数の桁(水下桁、水上桁、一対の側桁)と、これら桁に取り付けられた屋根面材とを備えている屋根構造体は知られている(例えば、特許文献1参照)。この屋根構造体は、桁に囲まれた矩形状の領域において屋根面材の下方を覆う天井材を有している。天井材は、屋根構造体の天井面をなしており、細長い板状に形成された複数の天井パネルが、水下桁と水上桁との間に並べられ、互いに接続されて天井面を形成している。最も水下側に配置される天井パネルは、水下桁に固定されている取付材に水下側が係止され、水上側は、水下桁と水上桁との間に設けられている支持材に下方から進入するビスで固定されている。また、その他の天井パネルは、水下側の端部が、水下側に隣接する天井パネルに係止され、水上側の端が下方から進入するビスで支持材に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の屋根構造体は、各天井パネルが、水下側に隣接する取付材または天井パネルに、水下側の端部が係止され、水上側の端が下方から進入するビスで支持材に固定されて、複数の天井パネルが水下側から水上側まで繋げられている。このため、最も水上側の天井パネルを支持材に固定するビスは、水上桁と近接した位置に配置される。屋根構造体は、水上側が建物の外壁に沿って設けられている、或いは、水上桁の下に格子等が設けられている場合があり、天井パネルを支持材に固定するビスが水上桁或いは建物の外壁に近接した位置に配置されると、外壁や格子などがビスを回す作業の妨げとなり、ビスを真っ直ぐに締められない、或いは、強固に締め込むことができないなど、施工性が悪いという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工性により優れた屋根構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の屋根構造体は、屋根本体と、屋根本体と、前記屋根本体の水下側に設けられる桁材と、前記屋根本体の水上側を支持する水上支持部材に見込方向に進入するビスにより固定される水上係止部材と、前記水上支持部材と前記桁材との間に架け渡される下地部材と、前記屋根本体の下方を覆う天井部材と、を有し、前記天井部材は、水上側の端が前記水上係止部材に係止されて、水下側の端が下方から進入するビスにより前記下地部材に固定されていることを特徴とする。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施工性により優れた屋根構造体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明にかかる屋外構築物の一例をなす壁付けの屋根ユニットの概略図である。
【
図3】天井パネルのアングル材上への配置方法を示す図ある。
【
図6】
図6(a)は、最も水下側に配置する天井パネルの平面図であり、
図6(b)は、最も水下側に配置する天井パネルの断面図である。
【
図7】最も水下側に配置する天井パネルの水下側の固定方法を示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、水上係止部材の取り付け方法を示す図であり、
図8(b)は、最も水上側に配置する天井パネルの取り付け方法を示す図であり、
図8(c)は、水下側から2番目に配置する天井パネルの取り付け方法を示す図であり、
図8(d)は、水下側から3番目に配置する天井パネルの取り付け方法を示す図である。
【
図9】屋外構築物の他の例をなす独立して構築される屋根ユニットの概略図である。
【
図10】独立して構築される屋根ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る屋根構造体について図面を参照して説明する。
本実施形態では、屋根構造体の一例として、
図1に示すような、例えば、一端が建物2の外壁2aに固定され、他端側が支柱4により支持される屋根本体3を有し、建物2に併設される壁付けの屋根ユニット1を例に挙げて説明する。
【0010】
以下の説明においては、構築された屋根ユニット1を建物2に向かって見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となり建物2の外壁2aに沿う方向を左右方向、建物2側と反建物側に向かう方向を見込み方向として示す。屋根ユニット1の各部位であっても、また、屋根ユニット1を構成する各部材については単体の状態であっても、構築された屋根ユニット1の状態にて上下方向、左右方向、見込み方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0011】
本実施形態の屋根ユニット1は、
図1、
図2に示すように、一端が建物2の外壁2aに固定され、建物2から離れる方向に向かって漸次高さが低くなる勾配を有する屋根本体3と、屋根本体3の水下側に設けられる桁材5と、地面から立設され桁材5の両端がそれぞれ接続される2本の支柱4と、各支柱4の上端と建物2との間に架け渡され屋根本体3と連結される側桁6と、屋根本体3の下方にて、支柱4により接合される桁材5及び側桁6と外壁2aとにより形成される領域内を塞ぐ天井構造部7と、を有している。
【0012】
屋根本体3は、建物2の外壁2aに固定される垂木掛け3aと、垂木掛け3aと桁材5との間に架け渡され幅方向に間隔を空けて設けられる複数の垂木3bと、隣り合う垂木3b間に掛け渡される屋根面材3cと、を有している。本実施形態においては、建物2の外壁2aが、屋根本体3の水上側を支持する水上支持部材に相当する。
【0013】
桁材5は、両端の小口が支柱の側面に突き合わされて固定される桁本体50と、桁本体50の水上側に固定される樋51と、を有している。桁本体50、及び、樋51は、例えば、押出成形により形成された金属(例えば、アルミニウム合金)製の形材から形成されており、
図2に示すように、各々長手方向に貫通し断面が矩形状をなす中空部50a、51aを有している。桁本体50は、断面がほぼ矩形状をなしており、樋51は、桁本体50において水上側を向く面50bの下部に長手方向に沿って取り付けられている。
【0014】
樋51は、桁本体50の水上側を向く面50bと対面して固定される樋固定部51bと、樋固定部51bの下端から水上側に延出された平坦な下面部51cと、下面部51cの水上側の端から上方に延出された樋外壁部51dと、下面部51cの上方に間隔を空けて対向する平坦な底面部51eと、底面部51eの水下側の端と樋固定部51bとを傾斜面で繋ぐ溝下壁部51fと、底面部51eの水上側の端と樋外壁部51dとを傾斜面で繋ぐ溝上壁部51gと、を有している。底面部51e、溝下壁部51f、及び、溝上壁部51gにより、底面部51eを底として上方に向かって開放された凹状の排水溝51hが形成されている。底面部51e、溝下壁部51f、及び、溝上壁部51gと、樋固定部51b、下面部51c、及び、樋外壁部51dとの間に中空部51aが設けられている。
【0015】
屋根本体3の垂木3bと屋根面材3cの水下側の端部は、樋外壁部51dの上方を覆い樋外壁部51dよりも水下側に張り出すように、樋外壁部51dに連結されている。
【0016】
天井構造部7は、外壁2aに取り付けられる水上係止部材70と、外壁2aと桁材5との間に架け渡される下地部材71と、水上係止部材70と桁本体50との間を下側から覆う天井部材72と、左右の側桁6に各々取り付けられるアングル材73(
図3)と、を有している。水上係止部材70と下地部材71は、押出成形により形成された金属(例えば、アルミニウム合金)製の形材である。
【0017】
水上係止部材70は、垂木掛け3aとほぼ同じ長さを有し、垂木掛け3aの下方にほぼ平行に配置されて外壁2aに固定されている。水上係止部材70は、
図4に示すように、長手方向に貫通する中空部70aを有し、中空部70aの水上側にて外壁2aと対向する水上対向壁部70bと、中空部70aよりも上方に突出する上方固定部70cと、中空部70aよりも水下側に突出する下地材固定部70d、及び、天井部材係止部70eと、が設けられている。
【0018】
上方固定部70cは、水上対向壁部70bと繋がって上方に突出しており、外壁2aと対面するように配置される。水上対向壁部70bの上下の端と上方固定部70cの上端には、外壁2a側に突出して外壁2aに当接される外壁当接片70fが設けられている。水上係止部材70は、外壁当接片70fが外壁2aに当接されて、垂木掛け3aとほぼ平行な状態で対面する上方固定部70cに、見込方向において水下側から水上側に向かって進入するビス7aにより固定されている。
【0019】
中空部70aの上面を形成している上面部70gは、水上係止部材70が外壁2aに取り付けられた状態で、水平をなしており、下地材固定部70dは、上面部70gと繋がって水下側に水平に延出されている。中空部70aの下面を形成している下面形成部70hは、水下側が水上側よりも高くなるような段差を有している。すなわち、水上係止部材70の下側には、上方に窪む凹部70iが設けられている。
【0020】
天井部材係止部70eは、下面形成部70hの水下側(凹部側)の端と繋がって水下側に水平に延出されている。中空部70aよりも水下側に突出する下地材固定部70dと天井部材係止部70eとは、下地材固定部70dの方が天井部材係止部70eよりも長く突出している。
【0021】
下地部材71は、押出成形により形成された金属(例えば、アルミニウム合金)製の形材であり、
図3に示すように、断面が矩形状をなし長手方向に貫通する角パイプ状をなしている。下地部材71は、
図2に示すように、樋51の樋外壁部51dよりも水上側に突出させて下面部51cに固定された平板状の連結部材8と、水上係止部材70の下地材固定部70dとの上に載置されて、連結部材8及び下地材固定部70dにビス止めされている。下地部材71は、左右の側桁6の間に複数本設けられており、左右方向において互いに適宜間隔を空けて配置されている。
【0022】
アングル材73は、左右の側桁6の下端に各々取り付けられている。アングル材73は、断面がL字状をなしている2つの板部73a、73bのうちの一方の板部73aが、左右の側桁6の互いに対向する面に固定され、固定された板部73aの下端に他方の板部73bが位置し、他方の板部73bが互いに対向する側に突出するように配置されている。突出している各板部73bの上には、天井部材72の左右の端部が載置される。
【0023】
天井部材72は、幅方向に長く板状をなす複数の天井パネル74、75により構成されている。複数の天井パネル74、75は、見込方向に並べられ、隣り合う2つの天井パネル74、75は、水上側に位置する天井パネル74の水下側に、水下側に位置する天井パネル74、75の水上側の端が係止されるように構成されている。
【0024】
複数の天井パネル74、75は、
図5、
図6に示すように、ほぼ全体が平坦な面をなすパネル面部74a、75aを有している。複数の天井パネル74、75のうちの最も水下側に配置される天井パネル75を除く天井パネル74は、パネル面部74aの水下側の端と繋がって水下側に、パネル面部74aよりも高い位置に延出された水下側延出片74bが設けられている。パネル面部74aと水下側延出片74bとの間には段差があり、天井パネル74の水下側における下側には、上方に窪む凹部74cが設けられている。
【0025】
水下側延出片74bには、見込方向における中央部付近から上方に立ち上がる中央壁部74dが設けられており、中央壁部74dの上端から水下側に延出されたパネル延出部74eが設けられている。天井パネル74の凹部74cは、水上係止部材70の凹部70iと同形状をなしており、水下側延出片74bの中央壁部74d方の延出量、及び、パネル延出部74eの延出量と、下地材固定部70d、及び、天井部材係止部70eの中空部70aからの突出量とは同一に形成されている。
【0026】
各天井パネル74、75のパネル面部74aの水上側の端には、上方に立ち上がって、水上側に隣接する天井パネル74の凹部74cまたは水上係止部材70の凹部70iに入り込む挿入部74f、75bが設けられている。挿入部74f、75bが、天井パネル74の凹部74cまたは水上係止部材70の凹部70iに入り込み、挿入部74f、75bの上端が凹部74c、70iに当接した状態で、パネル面部74a、75aの下面が下面形成部70hの低い面と同じ高さになるように形成されている。
【0027】
各天井パネル74、75のパネル面部74a、75aの水上側の部位には、挿入部74f、75bよりも水下側に、上方に延出された水上壁部74g、75cが設けられており、水上壁部74g、75cの上端側には、水上側に延出されて、水上側に隣接する天井パネル74または水上係止部材70と係合する係合片74h、75dが設けられている。
【0028】
各天井パネル74、75は、係合片74h、75dが、水上側に隣接する天井パネル74の水下側延出片74bまたは水上係止部材70の天井部材係止部70eに載置され、挿入部74f、75bが、天井パネル74の凹部74cまたは水上係止部材70の凹部70iに入り込み、その上端が凹部74c、70iに当接した状態で、水上側が係止される。天井パネル74は、水上側が係止された状態で、パネル延出部74eが下地部材71の下面に当接されて、下方から進入するビス7bにより下地部材71に固定される。
【0029】
最も水下側に配置される天井パネル75は、パネル面部75aの水下側の端から上方に延出された水下延出片75eが設けられている。水下延出片75eの上端には、水下側に僅かに突出するパネル係止片75fが設けられている。また、天井パネル75には、樋51の底面部51eから設けられる縦樋11が貫通する孔75gが、パネル面部75aに設けられている。
【0030】
天井パネル75は、
図7に示すように、水上側が隣接する天井パネル74に係止された状態で、係合固定部材9により固定される。係止固定部材9は、パネル係止片75fと係合する係止部9aを有しており、樋51の下面部51cに下方から進入するビス7cにより固定される。係合固定部材9は、下方から取り付けられるカバー材10により覆われている。
天井構造部7の取り付けは、桁材5及び側桁6と共に屋根本体3が支柱4により支持されて建物2の外壁2aに取り付けられた状態で施工される。
【0031】
まず、
図8(a)に示すように、外壁2aに水上係止部材70を見込方向に進入するビス7aで固定し、樋51の下面部51cに連結部材8を取り付ける。また、左右の側桁6には、アングル材73を取り付けておく。
【0032】
次に、連結部材8と水上係止部材70の下地材固定部70dとの上に下地部材71を載置し、下地部材71を連結部材8及び下地材固定部70dにビス止めする。
【0033】
次に、天井パネル74を、下方から両側のアングル材73の上側であって、水上係止部材70よりも水下側に配置した後に、天井パネル74を水上係止部材70側に移動する。このとき、天井パネル74は、例えば、
図3に示すように、左側の端が高くなるように傾けて、高い側の端を先にアングル材73の上側に移動しつつ、左右方向における取り付け位置よりも左側に配置し、次に右側の端をアングル材よりも高い位置に押し上げた後に、取り付け位置に戻してアングル材73の板部73bの上に配置する。
【0034】
天井パネル74の係合片74hが、水上係止部材70の天井部材係止部70eに載置され、挿入部74fが、水上係止部材70の凹部70iに入り込み、その上端が凹部70iに当接した状態で、天井パネル74の水上側が係止される。このため、天井パネル74は、係合片74hが水上壁部74gから水上側に延出されている延出量分、少なくとも移動する。
【0035】
次に、天井パネル74のパネル延出部74eを下地部材71の下面に当接させて、下方から進入するビス7bにより下地部材71にパネル延出部74eを固定する。
次に、既に取り付けた天井パネル(以下、既設天井パネルという)74の水下側に、新たな天井パネル(以下、新設天井パネルという)74を取り付ける。
【0036】
具体的には、新設天井パネル74を、下方から両側のアングル材73の上側であって、既設天井パネル74よりも水下側に配置した後に、新設天井パネル74を既設天井パネル74側に移動する。このとき、
図8(b)に示すように、新設天井パネル74の係合片74hが、既設天井パネル74の水下側延出片74bに載置され、挿入部74fが、既設天井パネル74の凹部74cに入り込み、その上端が凹部74cに当接した状態で、天井パネル74の水上側が係止される。
【0037】
次に、
図8(c)に示すように、天井パネル74のパネル延出部74eを下地部材71の下面に当接されて、下方から進入するビス7bにより下地部材71に天井パネル74を固定する。このように、
図8(d)に示すように、水上側から新設天井パネル74を既設天井パネル74に係止して下地部材71に固定していく。
【0038】
そして、最も水下側の天井パネル75は、
図7に示すように、下方から両側のアングル材73の上側であって、既設天井パネル74よりも水下側に配置した後に、天井パネル75を既設天井パネル74側に移動する。このとき、天井パネル75の係合片75dが、既設天井パネル74の水下側延出片74bに載置され、挿入部75bが、既設天井パネル74の凹部74cに入り込み、その上端が凹部74cに当接した状態で、天井パネル75の水上側が係止される。
【0039】
次に、天井パネル75の水下延出片75eの上端を下地部材71に当接させ、係合固定部材9をパネル係止片75fに係合させて樋51の下面部51cに下方から進入するビス7cにより固定する。
【0040】
最後に、係合固定部材9に下方からカバー材10を係止すると共に下方から進入するビス7dにより樋51の下面部51cに固定し、ビス7dを覆うようにキャップ10aをカバー材10に係止する。
【0041】
本実施形態の屋根ユニット1によれば、最も水上側の天井パネル74が係止される水上係止部材70は、水下側から水上側に向かって進入するビス7aにより固定されているので、屋根本体3の水上側を支持する水上係止部材70が外壁2aに固定されていても、外壁2aは水上係止部材70を固定する際の妨げとならない。また、最も水上側の天井パネル74は、水上側の端が水上係止部材70に係止されて、水下側の端が下方から進入するビス7bにより下地部材71に固定されているので、最も水上側の天井パネル74を下地部材71に固定する位置を、外壁2aからより離れた位置に配置することが可能である。このため、最も水上側の天井パネル74を固定するビス7bを締める際に、外壁2aに設けられているサッシ枠2b等もビス止め作業の妨げとならないので、最も水上側の天井パネル74が取り付け易く、施工性により優れた屋根ユニット1を提供することが可能である。
【0042】
また、天井部材72は、見込方向に並べて配置される複数の天井パネル74、75により構成されているので、屋根本体3の下の全域を1つの天井部材で覆う場合よりも各々の天井パネル74、75が小さい。このため、個々の天井パネル74、75の取り回しがし易く施工性に優れている。また、屋根本体3の大きさに合わせて天井パネル74の数を調節することができるので、汎用性が高い屋根ユニット1を提供することができる。
【0043】
また、互いに隣り合う2つの天井パネル74のうちの、水下側に位置する天井パネル74の水上側の端を、水上側に位置する天井パネル74の水下側の端に係止し、水下側に位置する天井パネル74の水下側の端を、下地部材71に下方から進入するビス7bにより固定するだけで、屋根本体3の下方を覆うことが可能である。
【0044】
樋51の排水溝51hの底をなす底面部51eおよび下面部51cには、排水溝51hに進入した水を排出するために縦樋11を設ける必要があり、樋51の下方に位置する最も水下側の天井パネル75にも縦樋11が貫通する孔75gを設ける必要がある。このとき、例えば、従来のように複数の天井パネル74を水下側から順次取り付ける構造の場合には、最初に取り付ける天井パネル74が係止される水上係止部材70に相当する部材が水下側に配置されて樋51の下方に位置するため、縦樋11が貫通する孔75gを形成する加工が煩雑である。一方、本実施形態の屋根ユニット1は、排水溝51hの底をなす底面部51eの下には、天井パネル75の、排水溝の底面部51eの平坦なパネル面部75aが位置しているので、縦樋11が貫通する孔75gを容易に形成することが可能である。尚、天井部材が1枚の天井パネルで構成してもよい。この場合には、天井部材を構成する1枚の天井パネルが樋の下方に位置する天井パネルとなり、当該天井パネルのパネル面部に縦樋が貫通する孔が形成される。
【0045】
また、最も水下側の天井パネル75は、その他の天井パネル74と異なりパネル延出部が設けられておらず、水下側に僅かに突出するパネル係止片75fを係止する係止部9aを備えた係合固定部材9を係合させて固定している。このため、天井パネル75を取り付けた状態で天井パネル75のパネル面部75aを、桁本体50のより近い位置まで設けることができる。これにより、天井パネル75のパネル面部75aと、樋51の底面部51eとが対向する領域が広がり、樋51の底面部51eから設けられる縦樋11が貫通する孔75gを天井パネル75の平坦なパネル面部75aに設けることができる。
【0046】
上記実施形態においては、屋根構造体として、一端が建物2の外壁2aに固定され、他端側が支柱4により支持される屋根本体3を有し、建物2に併設される壁付けの屋根ユニット1を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。たとえば、
図9、
図10に示すように、4本の支柱4に支持されて独立して構築される屋根ユニット1aであっても構わない。より具体的には、4本の支柱4と、支柱4の上端部間に取り付けられた2本の桁材5、5a及び2本の側桁6と、これら桁材5、5a及び側桁6に取り付けられた屋根本体3と、を有する屋根ユニット1aであっても構わない。この場合には、例えば、水上側に配置される桁材5aに水上係止部材70が見込方向に進入するビス7aにより固定され、天井パネル74、75が水上側から水下側に向かって順次取り付けられていく。このような屋根ユニット1aにおいて、水上側の桁材5aの下に格子等が設けられる場合であっても、屋根本体3の水上側を支持する水上係止部材70が水上側の桁材5aに固定される際に、格子などは水上係止部材70を固定する際の妨げとならないので、容易に施工することが可能である。
【0047】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0048】
屋根本体と、前記屋根本体の水下側に設けられる桁材と、前記屋根本体の水上側を支持する水上支持部材に見込方向に進入するビスにより固定される水上係止部材と、前記水上支持部材と前記桁材との間に架け渡される下地部材と、前記屋根本体の下方を覆う天井部材と、を有し、前記天井部材は、水上側の端が前記水上係止部材に係止されて、水下側の端が下方から進入するビスにより前記下地部材に固定されていることを特徴とする屋根構造体である。
【0049】
このような屋根構造体によれば、天井部材が係止される水上係止部材は、水下側から水上側に向かって進入するビスにより固定されているので、屋根本体の水上側を支持する水上支持部材が固定される部位が、格子が設けられた桁や外壁であったとしても、ビス止めの妨げとならない。また、天井部材は、水上側の端が水上係止部材に係止されて、水下側の端が下方から進入するビスにより下地部材に固定されているので、天井部材を下地部材に固定する位置を、水上係止部材が固定される部位からより離れた位置に配置することが可能である。このため、天井部材を固定するビスを締める際に、妨げとなる物が周囲に存在しないので、天井部材が取り付け易く、施工性により優れた屋根構造体を提供することが可能である。
【0050】
かかる屋根構造体であって、前記天井部材は、見込方向に並べて配置される複数の天井パネルにより構成されていることを特徴とする。
このような屋根構造体によれば、天井部材は複数の天井パネルにより構成されているので、屋根本体の下の全域を1つの天井部材で覆う天井部材場合よりも、各々の天井パネルが小さいため、取り回しがし易く施工性に優れている。また、屋根本体の大きさに合わせて天井パネルの数を調節することができるので、汎用性が高い屋根構造体を提供することができる。
【0051】
かかる屋根構造体であって、前記複数の天井パネルのうちの互いに隣り合う2つの前記天井パネルは、水下側に位置する前記天井パネルの水上側が、水上側に位置する前記天井パネルの水下側に係止されて、水下側に位置する前記天井パネルの水下側の端が、前記下地部材に下方から進入するビスにより固定されていることを特徴とする。
【0052】
このような屋根構造体によれば、複数の天井パネルの各々の、水上側を、水上側に位置する天井パネルの水下側に係止し、水下側に位置する天井パネルの水下側の端を、下地部材に下方から進入するビスにより固定するだけで、天井部材により屋根本体の下方を容易に覆うことが可能である。
【0053】
かかる屋根構造体であって、前記桁材は、平坦な底を有する排水溝をなす樋を備えており、前記複数の天井パネルのうちの最も水下側に配置される前記天井パネルは、前記樋の下方に配置され、前記底の下には、前記天井パネルが有する平坦な面が位置していることを特徴とする。
【0054】
樋の排水溝の底には、排水溝に進入した水を排出するために縦樋を設ける必要があり、樋の下方に天井パネルが存在する場合には、天井パネルに縦樋が貫通する孔を設ける必要がある。このとき、樋の下方に配置され、排水溝の底の下に配置される、最も水下側に配置される天井パネルは、排水溝の底の下に天井パネルが有する平坦な面が位置しているので、縦樋が貫通する孔を容易に形成することが可能である。
【0055】
かかる屋根構造体であって、前記水上支持部材は、当該屋根構造体と併設されている建物の外壁に固定されていることを特徴とする。
【0056】
このような屋根構造体によれば、水上支持部材が固定される部位が、当該屋根構造体と併設されている建物の外壁であっても、天井部材を下地部材に固定する位置は、外壁からより離れた位置に配置されるので、天井部材を固定するビスを締める際に、外壁が妨げとならない。このため、天井部材が取り付け易く、施工性により優れた屋根構造体を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 屋根ユニット、1a 屋根ユニット、2 建物、2a 外壁、3 屋根本体、
5 桁材、5a 水上側の桁材、7a 見込方向に進入するビス、
7b 下方から進入するビス、51 樋、51c 下面部、51e 底面部、
51h 排水溝、70 水上係止部材、71 下地部材、72 天井部材、
74 天井パネル、75 天井パネル、75a パネル面部、