(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096122
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】コイルの挿入方法および装置
(51)【国際特許分類】
B21C 47/24 20060101AFI20220622BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20220622BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
B21C47/24 G
B21C51/00 J
B21B38/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209049
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴貴
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026AA02
4E026DA03
4E026DA06
4E026DA13
4E026DA16
4E026DA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マンドレルにコイルを挿入するコイルの挿入方法を提供する。
【解決手段】コイル台車2に搭載したコイル1をマンドレル3に挿入する前に、コイル台車を停止し、コイルの側面12に対向して上下方向に移動可能に配設された第1のセンサー41により、コイルの内径部11とマンドレルとの位置関係、大小関係を表す距離プロファイルを算出することによりマンドレルへのコイル挿入の可否を判定する。挿入が可とされた場合には、コイル台車を走行させてコイルをマンドレルへ挿入しながら、コイルの側面の一点に対向して設けた第2のセンサーにより、コイルの移動距離を連続的または断続的に測定し、コイル移動距離と時間の関係を算出し、この関係から挿入中におけるコイルの転倒の有無を判定する。これにより、コイルとマンドレルとの衝突によるコイルの転倒を未然に防止でき、しかもマンドレルへの挿入中のコイルの転倒を早期に発見できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを搭載したコイル台車を走行させて、コイルをマンドレルに挿入するコイルの挿入方法であって、
搭載された前記コイルを前記マンドレルに挿入する前に、前記コイル台車を停止させて、前記コイルの側面に対向して上下方向に移動可能に配設された第1のセンサーにより、該第1のセンサー位置から、対向する前記コイルの側面までの距離、前記マンドレルの端面までの距離、またはさらに背景までの距離を、上下方向に移動させて測定し、得られた距離データから、上下方向各位置における、前記第1のセンサーと前記コイルの側面、前記マンドレルの端面、またはさらに背景までの距離を重ね合わせた、コイル内径部とマンドレルとの相対関係図である距離プロファイルを得る距離プロファイル算出工程と、
前記コイル台車を走行させて前記コイルを前記マンドレルへ挿入しながら、前記コイルの側面の一点に対向して設けられた第2のセンサーにより、移動する前記コイルの側面までの距離を連続的または断続的に測定し、コイル移動距離と時間の関係を算出するコイル移動距離算出工程と、を備えることを特徴とするコイルの挿入方法。
【請求項2】
コイルを搭載したコイル台車を走行させて、コイルをマンドレルに挿入するコイルの挿入方法であって、
搭載された前記コイルを前記マンドレルに挿入する前に、前記コイル台車を停止させて、
前記コイルの側面に対向して上下方向に移動可能に配設された第1のセンサーにより、該第1のセンサー位置から、対向する前記コイルの側面までの距離、前記マンドレルの端面までの距離、またはさらに背景までの距離を、上下方向に移動させて測定し、得られた距離データから、上下方向各位置における、前記第1のセンサーと前記コイルの側面、前記マンドレルの端面、またはさらに背景までの距離を重ね合わせた、コイル内径部とマンドレルとの相対関係図である距離プロファイルを得る距離プロファイル算出工程と、
前記得られた距離プロファイルを用いて、マンドレルへのコイル挿入の可否を判定する挿入可否判定工程とを行い、
前記挿入可否判定工程において、前記得られた距離プロファイルが、マンドレルへのコイル挿入が可能である距離プロファイルであると判定された場合には、さらに
前記コイル台車を走行させて前記コイルを前記マンドレルへ挿入しながら、前記コイルの側面の一点に対向して設けられた第2のセンサーにより、移動する前記コイルの側面までの距離を連続的または断続的に測定し、コイル移動距離と時間の関係を算出するコイル移動距離算出工程と、前記算出されたコイル移動距離と時間との関係から挿入されるコイルの転倒の有無を判定するコイル転倒判定工程とを行い、
前記コイル転倒判定工程において、コイル転倒なしと判断された場合には、コイル台車の走行を継続し、一方、コイル転倒ありと判断された場合には、コイル台車の走行を停止するコイル台車走行制御工程を行うことを特徴とするコイルの挿入方法。
【請求項3】
前記挿入可否判定工程において、前記得られた距離プロファイルが、コイルの位置を修正する必要がある距離プロファイルであると判定された場合には、さらにコイル位置修正手段によりコイルの位置を修正し、マンドレルへのコイル挿入が可能である距離プロファイルとしたのち、前記コイル台車を走行させて、前記コイル移動距離算出工程と前記コイル転倒判定工程とを行い、
一方、前記挿入可否判定工程において、前記得られた距離プロファイルが、マンドレルへのコイル挿入が不可能である距離プロファイルであると判定された場合には、マンドレルへのコイル挿入を中止することを特徴とする請求項2に記載のコイルの挿入方法。
【請求項4】
前記第2のセンサーとして、前記コイルの側面の一点に対向した位置に移動させた前記第1のセンサーを用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のコイルの挿入方法。
【請求項5】
前記第1のセンサーおよび前記第2のセンサーが、レーザ距離計であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のコイルの挿入方法。
【請求項6】
マンドレルにコイルを挿入するコイル挿入装置であって、
前記コイルを搭載して、前記マンドレルに対し進退自在に走行するコイル台車と、
上下方向に走行可能に配設されたセンサー走行用レールと、
前記コイルの側面に対向して、前記センサー走行用レールを上下方向に移動し、対向する前記コイルの側面、前記マンドレルの端面、またはさらに背景との間の距離を測定する第1のセンサーと、前記コイルの側面の一点に対向して設けられ、前記マンドレルへの前記コイルの挿入に際し対向する前記コイルの側面までの距離を連続的または断続的に測定する第2のセンサーと、を備え、さらに、
前記第1のセンサーで測定した前記距離のデータから、上下方向の距離プロファイルを算出し、さらに、前記第2のセンサーで測定した前記距離のデータからコイル移動距離と時間との関係を算出する解析手段と、
前記解析手段により算出された距離プロファイルから、前記コイルを前記マンドレルに挿入可能であるか否かを判定し、さらに前記解析手段により算出されたコイル移動距離と時間との関係から、挿入されるコイルの転倒の有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とするコイル挿入装置。
【請求項7】
前記第2のセンサーを、前記コイルの側面の上端近傍の一点に対向した位置に移動させた前記第1のセンサーとすることを特徴とする請求項6に記載のコイル挿入装置。
【請求項8】
前記第1のセンサーおよび前記第2のセンサーが、レーザ距離計であることを特徴とする請求項6または7に記載のコイル挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペイオフリールなどの巻戻し装置のマンドレルへの鋼帯コイルの挿入方法およびその装置に係り、とくにコイル挿入時の転倒防止に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼分野においては、ペイオフリールなどの巻戻し装置を用いてコイルを巻き戻して、鋼帯コイル(以下、単にコイルともいう)に処理を施すプロセスライン等が多く稼働している。ペイオフリールへのコイルの挿入方法としては、コイルをコイル台車に搭載し、コイル内径部(コイルの穴)にペイオフリールのマンドレルが挿入できるようにして、コイル台車をマンドレルの軸方向に移動させて、挿入する方法が行われている。
【0003】
しかし、このようなコイルの挿入方法では、コイルの内径部にコイル尾端が垂れ下がっていたり、コイルの内径部の径がマンドレルの径よりも小さかったり、またマンドレルの位置がコイル内径部の中心部からずれていたりする等の原因により、コイルとマンドレルが衝突し、コイルが転倒するトラブルが発生している。このようなトラブルが発生すれば、コイルに折れや疵が発生して歩留低下が生じるだけでなく、転倒したコイルが近傍の他の設備に衝突して他の設備を破損させ、他の設備の復旧に多大な時間と労力を要する。
【0004】
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、自動コイルセンター検出方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、コイルを積載したコイルカーを始めは高速度で一定方向に移動させ、次に一定位置に設けた第1検知手段がコイルの先端を検知した後はコイルカーを低速度で同方向へ移動させ、さらにコイルを挿入するマンドレルの先端と同位置に設けた第2検知手段がコイルの内径円周部を検知すると同時にコイルカーを停止し、検知手段をコイルから離れた位置へ移動させたのち、コイルをマンドレルに挿入するようにしている。第2検知手段はマンドレルの上端と同位置に設けられ、コイルの内径の上端を検知するようにして、挿入可能な状態を検出するとしている。
【0005】
また、特許文献2には、移動コイルのセンタリング方法が記載されている。特許文献2に記載された技術では、コイル台車等のコイル移動体に、第1のセンサー、第2のセンサーを装備し、かつコイル移動体のセンタリングすべき停止位置に第3のセンサーを配置して、第1のセンサーで搭載コイルのコイル幅またはコイル巻厚を検出し、第1のセンサーの動きと連動して移動させ、そのコイル幅中心位置またはコイル径中心位置に第2のセンサーを停止させた状態とし、第2のセンサーで第3のセンサーを検出して、コイル移動体を第3センサーの位置で停止させ、これにより、移動コイルの幅方向または径方向に対するセンタリングを行うことができるとしている。
【0006】
また、特許文献3には、コイル吊り具の搬送制御方法が記載されている。特許文献3に記載された技術は、コイルの内径部にコイル吊り具のアームを挿入し、該アームでコイルを支持して搬送するコイル搬送方法であり、アームがコイル内径部への挿入位置にあるときに、コイル吊り具のアームに一体的に形成された吊り部材に配設されたレーザ距離計で、コイル端部までの距離を連続的に測定し、測定したコイル端面までの距離の時間変位を演算して変位速度を算出し、該変位速度とコイル搬送装置の移動速度とを比較し、アームとコイルの干渉の有無を判定し、変位速度の値が、コイル搬送装置の移動速度に係数を乗じた値よりも小さい場合にはコイル搬送装置を停止する指令を出し、コイルの転倒、落下等のトラブルを防止するとしている。
【0007】
また、特許文献4には、コイルの幅方向調心方法が記載されている。特許文献4に記載された技術では、コイルスキッド上に置かれている鋼帯コイルの幅方向位置を位置検出センサーにより検出し、その測定結果に基づき、コイルカーの幅方向中心位置がコイル幅方向中心位置と一致するようにコイルカーを停止させ、コイルカーによりコイルを上昇させて、ペイオフリールのマンドレルの幅方向中心位置とコイルカーの幅方向中心位置とを一致させ、鋼帯コイルをペイオフリールのマンドレルに装着するとしている。
【0008】
また、特許文献5には、マンドレル挿入時のコイル転倒防止方法が記載されている。特許文献5に記載された技術では、コイル搬送用コイルカーがコイルを安定に搬送している状態下における走行駆動用電動モータの実績負荷電流値を検出し、該電流値の変動に基づきコイルの転倒可能性を判断し、とくに負荷電流値が異常に上昇した場合をコイル転倒と認識してコイルカーを停止するとしている。
【0009】
また、特許文献6には、コイルカーのコイル転倒防止方法が記載されている。特許文献6に記載された技術は、所定の間隔で配置された2個のフォトセンサーによって順次コイルの有無を検出する工程と、コイルカーの駆動モータの電流を検出し正常作動時のコイル基準電流を求める工程と、コイルカー基準電流よりも5~15%高いレベルの負荷電流上限設定値を設定する工程と、コイルカー基準電流が負荷電流上限設定値を超えたときにコイルカーを停止する工程と、から成るコイルカーのコイル転倒防止方法である。特許文献6に記載された技術では、第1のフォトセンサーを通過したのち、第2のフォトセンサーをコイルが通過せず、コイルカーの負荷電流が上昇した場合をコイル転倒と認識する、としている。
【0010】
また、特許文献7には、コイル転倒・落下防止方法が記載されている。特許文献7に記載された技術では、コイル台車に載せたコイルをマンドレルに挿入する際に、マンドレルと反対側のコイルエッジを撮像装置で撮影することによりコイル移動量を検出し、検出されたコイル移動量とコイル台車の移動量との差が設定値を超えたとき、コイル台車を停止させるとしている。なお、コイル台車の移動量は上位計算機から与えられるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭49-032427号公報
【特許文献2】特開昭62-187517号公報
【特許文献3】特開2001-097663号公報
【特許文献4】特開2014-036982号公報
【特許文献5】特開平06-142763号公報
【特許文献6】特開平07-284848号公報
【特許文献7】特開2004-105980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1~4に記載された技術では、各種センサーを利用して、ペイオフリールのマンドレルとコイル内径部とのセンタリングを行って、予め挿入可能な状態を検出したうえで、マンドレルへコイルを挿入している。しかし、これらの技術では挿入途中でコイルが転倒した場合には、これを検出できないという問題がある。また、特許文献5~7に記載された技術によれば、コイルの転倒を早期に発見できるが、しかし、これらの技術では、転倒の検出はコイルが衝突等で傾きはじめた後であり、衝突等によるコイルの傾きを未然に防止することができないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、コイルの巻き戻しのために、コイルをペイオフリールのマンドレルに挿入する際に、コイルとマンドレルとの衝突を未然に防止でき、しかもマンドレルへのコイル挿入中にもコイルの転倒を早期に発見できる、コイルの挿入方法、および、その装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記した課題を達成するため、鋭意検討した。その結果、コイルの挿入方法において、目的の異なる2個の距離センサーを利用することに想到した。第1のセンサーを、コイル、マンドレルまたはさらに背景までの距離を測定するセンサーとして、コイル内径とマンドレルの位置や大きさが適切であるかの判定に利用することにより、マンドレルへコイルを挿入する前に未然に、コイルとマンドレルとの衝突を防止でき、また、第2のセンサーを、マンドレルへの挿入中のコイルまでの距離を連続的または断続的に測定するセンサーとして、コイルの移動量が予測どおりであるかの判定に利用することにより、マンドレルへのコイル挿入中に発生するコイル転倒を、早期に発見できることを知見した。
【0015】
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成したものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
[1]コイルを搭載したコイル台車を走行させて、コイルをマンドレルに挿入するコイルの挿入方法であって、
搭載された前記コイルを前記マンドレルに挿入する前に、前記コイル台車を停止させて、前記コイルの側面に対向して上下方向に移動可能に配設された第1のセンサーにより、該第1のセンサー位置から、対向する前記コイルの側面までの距離、前記マンドレルの端面までの距離、またはさらに背景までの距離を、上下方向に移動させて測定し、得られた距離データから、上下方向各位置における、前記第1のセンサーと前記コイルの側面、前記マンドレルの端面、またはさらに背景までの距離を重ね合わせた、コイル内径部とマンドレルとの相対関係図である距離プロファイルを得る距離プロファイル算出工程と、
前記コイル台車を走行させて前記コイルを前記マンドレルへ挿入しながら、前記コイルの側面の一点に対向して設けられた第2のセンサーにより、移動する前記コイルの側面までの距離を連続的または断続的に測定し、コイル移動距離と時間の関係を算出するコイル移動距離算出工程と、を備えることを特徴とするコイルの挿入方法。
[2]コイルを搭載したコイル台車を走行させて、コイルをマンドレルに挿入するコイルの挿入方法であって、
搭載された前記コイルを前記マンドレルに挿入する前に、前記コイル台車を停止させて、
前記コイルの側面に対向して上下方向に移動可能に配設された第1のセンサーにより、該第1のセンサー位置から、対向する前記コイルの側面までの距離、前記マンドレルの端面までの距離、またはさらに背景までの距離を、上下方向に移動させて測定し、得られた距離データから、上下方向各位置における、前記第1のセンサーと前記コイルの側面、前記マンドレルの端面、またはさらに背景までの距離を重ね合わせた、コイル内径部とマンドレルとの相対関係図である距離プロファイルを得る距離プロファイル算出工程と、
前記得られた距離プロファイルを用いて、マンドレルへのコイル挿入の可否を判定する挿入可否判定工程とを行い、
前記挿入可否判定工程において、前記得られた距離プロファイルが、マンドレルへのコイル挿入が可能である距離プロファイルであると判定された場合には、さらに
前記コイル台車を走行させて前記コイルを前記マンドレルへ挿入しながら、前記コイルの側面の一点に対向して設けられた第2のセンサーにより、移動する前記コイルの側面までの距離を連続的または断続的に測定し、コイル移動距離と時間の関係を算出するコイル移動距離算出工程と、
前記算出されたコイル移動距離と時間との関係から挿入されるコイルの転倒の有無を判定するコイル転倒判定工程とを行い、
前記コイル転倒判定工程において、コイル転倒なしと判断された場合には、コイル台車の走行を継続し、一方、コイル転倒ありと判断された場合には、コイル台車の走行を停止するコイル台車走行制御工程を行うことを特徴とするコイルの挿入方法。
[3]前記挿入可否判定工程において、前記得られた距離プロファイルが、コイルの位置を修正する必要がある距離プロファイルであると判定された場合には、さらにコイル位置修正手段によりコイルの位置を修正し、マンドレルへのコイル挿入が可能である距離プロファイルとしたのち、前記コイル台車を走行させて、前記コイル移動距離算出工程と前記コイル転倒判定工程とを行い、
一方、前記挿入可否判定工程において、前記得られた距離プロファイルが、マンドレルへのコイル挿入が不可能である距離プロファイルであると判定された場合には、マンドレルへのコイル挿入を中止することを特徴とする[2]に記載のコイルの挿入方法。
[4]前記第2のセンサーとして、前記コイルの側面の一点に対向した位置に移動させた前記第1のセンサーを用いることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載のコイルの挿入方法。
[5]前記第1のセンサーおよび前記第2のセンサーが、レーザ距離計であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載のコイルの挿入方法。
[6]マンドレルにコイルを挿入するコイル挿入装置であって、
前記コイルを搭載して、前記マンドレルに対し進退自在に走行するコイル台車と、
上下方向に走行可能に配設されたセンサー走行用レールと、
前記コイルの側面に対向して、前記センサー走行用レールを上下方向に移動し、対向する前記コイルの側面、前記マンドレルの端面、またはさらに背景との間の距離を測定する第1のセンサーと、前記コイルの側面の一点に対向して設けられ、前記マンドレルへの前記コイルの挿入に際し対向する前記コイルの側面までの距離を連続的または断続的に測定する第2のセンサーと、を備え、さらに、
前記第1のセンサーで測定した前記距離のデータから、上下方向の距離プロファイルを算出し、さらに、前記第2のセンサーで測定した前記距離のデータからコイル移動距離と時間との関係を算出する解析手段と、
前記解析手段により算出された距離プロファイルから、前記コイルを前記マンドレルに挿入可能であるか否かを判定し、さらに前記解析手段により算出されたコイル移動距離と時間との関係から、挿入されるコイルの転倒の有無を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とするコイル挿入装置。
[7]前記第2のセンサーを、前記コイルの側面の上端近傍の一点に対向した位置に移動させた前記第1のセンサーとすることを特徴とする[6]に記載のコイル挿入装置。
[8]前記第1のセンサーおよび前記第2のセンサーが、レーザ距離計であることを特徴とする[6]または[7]に記載のコイル挿入装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コイルをペイオフリールのマンドレルに挿入するに際し、コイルとマンドレルとの衝突を未然に防止でき、しかもコイル挿入中のコイルの転倒をも早期に発見でき、製品の歩留り低下や装置の損傷を顕著に抑制あるいは防止でき、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明で使用する装置の関係を模式的に示す説明図である。
【
図2】センサーを用いた距離測定の概要を模式的に示す説明図である。
【
図3】距離測定により得られた距離プロファイルの一例を模式的に示す説明図である。
【
図4】距離プロファイルの他の例を模式的に示す説明図である。
【
図5】コイル挿入中のコイル転倒開始を模式的に示す説明図である。
【
図6】コイル挿入方法の手順の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で使用するコイル挿入装置の構成を
図1に示す。本発明では、コイル1をコイル台車2に搭載し、ペイオフリールのマンドレル3に向かってコイル台車2を走行させて、コイル1をマンドレル3に挿入する。
【0019】
通常、マンドレル3は固定で、コイル台車2はレール(表示せず)上をマンドレル3に対して進退自在に走行する。なお、コイル台車2には、上下方向に昇降可能なコイル位置修正手段(昇降手段)21が付設され、コイルの上下方向のセンタリング(上下方向位置の調整)を可能としている。また、マンドレル3とコイル1の内径部11とは、図示しないセンタリング手段により、予めセンタリングされている。
【0020】
そして、本発明では、コイル1の側面12に対向して、上下方向に走行可能なセンサー走行用レール43を配設し、該センサー走行用レール43上を、上下方向(コイルの厚み方向)に走査可能な第1のセンサー41を配設する。第1のセンサー41は、上下方向に走査して、上下方向各位置における、対向するコイルの側面12、マンドレルの端面31、またはさらに背景との距離を測定する。この状況を
図2(a)に示す。なお、第1のセンサー41は、コイル1の側面12を正面に見たとき、左右方向についてコイル1の中心近傍を通る線上を走査可能に配設されることが精度の観点から好ましい。
【0021】
また、本発明では、コイル1の側面12の一点、好ましくはコイル1の側面12の上端近傍の一点、に対向して、第2のセンサー42を配設する。そして、配設された第2のセンサー42を用いて、マンドレル3へのコイル1の挿入に際し、移動するコイル1の側面12までの距離、すなわちコイル移動距離を連続的または断続的に測定する。この状況を
図2(b)に示す。センサー41,42としては、レーザ距離計とすることが好ましいが、レーザ距離計以外に、超音波距離計、ToFカメラ等が例示できる。
【0022】
なお、本発明で使用するコイル挿入装置では、計算機を用いた解析手段、判定手段を備える構成とし、第1および第2のセンサーの出力を、解析手段に入力し、判定手段により、コイルの挿入の可否を判定することが好ましい。
【0023】
解析手段では、第1のセンサーで測定した距離のデータから、上下方向の距離プロファイルを算出し、さらに、第2のセンサーで測定した距離のデータからコイル移動距離と時間との関係を算出する。また、判定手段では、解析手段により算出された距離プロファイルから、コイルをマンドレルに挿入可能であるか否かを判定し、また、解析手段により算出されたコイル移動距離と時間との関係から、挿入されるコイルの転倒の有無を判定する。そして、判定手段からの指令により、コイル台車の走行を制御する。これら解析手段、判定手段は記録手段を備えることもできる。
【0024】
本発明のコイル挿入方法では、上記した装置を用いて、距離プロファイル算出工程、挿入可否判定工程、さらに、コイル移動距離算出工程、コイル転倒判定工程、を順次、行って、コイルをマンドレルに挿入する。
[距離プロファイル算出工程]
本発明では、まず、コイル台車2に搭載されたコイル1をマンドレル3に挿入する前に、コイル台車2を所定の位置に停止し、その位置で、距離プロファイル算出を行う。なお、ここでいう「挿入する前」とは、コイル1をマンドレル3に挿入する指示を出す前をいうものとする。
【0025】
本発明の距離プロファイル算出工程では、
図2(a)に示すように、第1のセンサー41を用いて上下方向(コイルの厚み方向)に対向するコイル1の側面12を走査し、上下方向各位置におけるセンサー41と、対向するコイル側面12、あるいはマンドレルの端面31、またはさらには背景との距離を測定する。そして、好ましくは、測定されたそれら距離データは解析手段に入力され、解析手段により、得られた距離を上下方向に連続するように重ね合わせて、例えば、
図3に示すような、上下方向の距離プロファイルを算出する。
図3に示す距離プロファイルは、上下方向各位置における、第1のセンサー41と、コイルの側面12との距離、マンドレル3の端面31との距離、あるいは背景との距離を、重ね合わせた線図であり、コイル1の内径部11とマンドレル3との位置関係、大小関係が正確に描かれたコイル内径部とマンドレルとの相対関係図といえる。
【0026】
[挿入可否判定工程]
ついで、本発明では、挿入可否判定を行う。
この挿入可否判定工程では、距離プロファイル算出工程で得られた距離プロファイルを、予め求めておいた正常な距離プロファイル(コイルをマンドレルに挿入することが可能な距離プロファイル)と比較し、得られた距離プロファイルの状態が、コイル内径部とマンドレルとの位置関係、大小関係からコイルをマンドレルに挿入可能な距離プロファイルであるか否かを、判定手段により判定する。
【0027】
正常な距離プロファイルは、
図3に示すような、マンドレルの両側に隙間10が形成された距離プロファイルとする。このような隙間10が2箇所で認められる距離プロファイルであれば、マンドレルへのコイル挿入が可能と判定する。
【0028】
一方、例えば、得られた距離プロファイルが、
図4(a)に示すような、内径部11端面とマンドレル3との間に隙間10がない距離プロファイルである場合には、マンドレルへのコイルの挿入は不可と判定する。
図4(a)に示すような距離プロファイルは、コイル内径よりマンドレル径が大きい場合であり、このままの状態で、コイルをマンドレルに挿入すれば、コイルとマンドレルが衝突し、コイルが転倒する。このため、このような距離プロファイルが示される状態では、マンドレルへのコイルの挿入は不可と判定する。
【0029】
また、得られた距離プロファイルが、
図4(b)に示すような、内径部11端面とマンドレル3との間に隙間10が一つしか認められない場合には、コイル内径部11とマンドレル3との位置がずれており、マンドレルへのコイルの挿入は不可と判定する。
図4(b)のような距離プロファイルは、コイル内径部11とマンドレル3とのセンタリングが不十分であるために生じると考えられ、コイル位置修正手段(コイル昇降手段)21でコイルの位置を修正することにより、隙間10が2箇所認められる正常な距離プロファイルとなれば、再度判定し、マンドレルへのコイルの挿入が可能と判定する。
【0030】
また、
図4(c)に示すような距離プロファイルでは、コイル内径部11に巻き端(鋼板)が突出した状態(以下、内径垂れともいう)を示し、コイルをマンドレルに挿入する際に、この内径垂れがマンドレルに抵触するため、マンドレルへのコイルの挿入は不可と判定する。なお、内径垂れがマンドレルに抵触しないような位置にある場合には、マンドレルへのコイルの挿入は可と判定する場合もある。
【0031】
本発明では、得られた距離プロファイルが、マンドレルへのコイル挿入が可能な距離プロファイルであると判定された場合には、ついで、コイル台車を所定の速度で走行させ、マンドレルへコイルを挿入する。また、得られた距離プロファイルが、
図4(b)に示すようなコイルの位置を修正する必要がある距離プロファイルであると判定された場合には、コイル位置修正手段(コイル昇降手段)によりコイルの位置を修正し、2箇所の隙間10が認められるマンドレルへの挿入可能な距離プロファイルとなったのち、コイル台車を所定の速度で走行させて、マンドレルへコイルを挿入する。
【0032】
[コイル移動距離算出工程]
本発明では、コイル台車2を所定の速度で走行させて、マンドレル3へコイル1を挿入しながら、コイル移動距離算出を行う。
一方、得られた距離プロファイルは、2箇所の隙間10が認められず、マンドレルへのコイル挿入が不可能である距離プロファイルであると判定された場合には、コイルの挿入を中止する。
【0033】
コイル移動距離算出工程では、
図2(b)に示すように、コイル台車2を所定の速度で走行させて、マンドレル3へコイル1を挿入しながら、コイルの側面の一点に対向して設けられた第2のセンサー42により、対向するコイル1の側面までの距離(コイル移動距離)を連続的または断続的に測定する。なお、第2のセンサーの配設位置は、とくに限定する必要はないが、コイル転倒時の速度変動が大きくなるコイル側面の上端近傍の一点とすることが、コイル転倒の検知という観点からより好ましい。
【0034】
そして、得られた距離(コイル移動距離)のデータから、好ましくは解析手段により、
図5に示すような、コイル移動距離と時間の関係を算出する。なお、コイル移動距離と時間の関係に代えて、コイル移動速度を用いてもよい。また、予め定められたコイル台車2の走行条件から、コイル台車の走行距離と時間の関係を求めておく。コイル台車の走行距離と時間の関係に代えて、コイル台車の走行速度としても良い。
【0035】
[コイル転倒判定工程]
本発明では、ついで、コイル転倒判定を行う。
コイル転倒判定工程では、コイル移動距離算出工程で得られたコイル移動距離と時間の関係と、コイル台車の走行距離と時間の関係と、を比較し、コイルの転倒の有無を判定する。なお、コイル移動速度とコイル台車走行速度とを比較してもよい。判定は、判定手段を利用して行うことが好ましい。
得られたコイル移動距離と時間との関係(点線)が、
図5に示すように、コイル台車の走行距離と時間との関係(直線)から、一定基準以上外れる場合には、その時点で、コイルの転倒が開始していると判定する。
【0036】
[コイル台車走行制御工程]
コイルの転倒が開始していると判定された場合には、判定手段から指令を発し、制御手段等により、コイル台車の走行を停止するコイル台車走行制御を行う。一方、それ以外の場合には、コイル台車の走行を継続し、コイルの挿入を完了する。なお、上記した手順について、
図6に纏めて示す。
【実施例0037】
図1に示すコイル挿入装置を用いて、コイル1(単重:10~20ton)を搭載したコイル台車2をレール上を走行させて、ペイオフリールのマンドレル3(直径:508mmおよび610mm)に挿入するコイル挿入作業を、3個のコイル(コイルA、B、C)について実施した。
【0038】
そして、コイルをマンドレルに挿入する前に、コイル1を搭載したコイル台車2を所定の位置(第1のセンサー位置から3m)に停止させ、その位置で、距離プロファイル算出を行った。
【0039】
距離プロファイル算出工程では、センサー走行レール43に沿って、レーザ距離計である第1のセンサー41を下から上に向かって走行させ、上下方向各位置で対向するコイル1の側面12との距離、コイル内径部11を通してのマンドレルの端面31との距離、あるいは背景のとの距離を測定した。得られた距離データを解析手段に入力し、上下方向位置とコイル側面等までの距離を重ね合わせた、コイル内径部とマンドレルとの相対関係である距離プロファイルを算出した。
【0040】
ついで、挿入可否判定工程では、得られた距離プロファイルをもとに、
図6に示す手順に従い、コイルの挿入の可否を判定した。その結果、コイルの挿入を中止したケースはコイルCのみであった。なお、使用したコイル挿入装置では、コイル台車とマンドレルとのセンタリングは、設備的に所定の精度範囲内に設定されているが、コイルCでは
図4(b)に示すような距離プロファイルとなっていた。そのため、コイル昇降手段21を用いて高さ位置を調整して、再度距離プロファイル算出工程と挿入可否判定工程を経て、挿入可と判定された。なお、コイル挿入可と判定したものでは、挿入に際しコイルとマンドレルの衝突が発生したケースは0 %であった。
【0041】
なお、上下方向各位置における距離測定を終了した第1のセンサー41は、そのまま、コイル1の側面12の上端近傍の一点に対向して配置し、次工程における第2のセンサー42として利用した。
【0042】
挿入可否判定工程で挿入可と判定されたコイルは、コイル台車2を所定の速度で走行させて、マンドレル3に挿入し、コイル移動距離算出およびコイル転倒判定を行った。
【0043】
コイル移動距離算出工程では、第2のセンサー(第1のセンサー)を用いて、センサーとコイル台車2の走行に伴い移動するコイル1の側面12との距離(コイル移動距離)を測定した。得られたコイル移動距離データを解析手段に入力して、コイル移動距離と時間との関係を算出した。
【0044】
ついで、得られたコイル移動距離と時間との関係に基づき、コイル転倒判定工程を行った。コイル転倒判定工程では、得られたコイル移動距離と時間の関係と、予め求めておいたコイル台車の走行距離と時間の関係と、を比較し、判定手段により、両者のずれからコイルの転倒開始の有無を判定した。なお、コイルBの場合、コイル台車走行中に、コイル移動距離と時間との関係が、コイル台車の走行距離と時間との関係からずれはじめたため、転倒開始有りと判定され、判定手段からの指令により、コイル台車の走行を停止した。それ以外のコイルA、Cの場合には、コイル台車の走行を継続し、マンドレルへのコイルの挿入を完了させた。