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特開2022-96735鋼管杭及び該鋼管杭の施工方法、該鋼管杭の設計方法、該鋼管杭の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096735
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】鋼管杭及び該鋼管杭の施工方法、該鋼管杭の設計方法、該鋼管杭の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/24 20060101AFI20220623BHJP
   E02D 5/56 20060101ALI20220623BHJP
   E02D 7/22 20060101ALI20220623BHJP
   E02D 5/32 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
E02D7/24
E02D5/56
E02D7/22
E02D5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209868
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】恩田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】粟津 進吾
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041BA33
2D041BA35
2D041CA05
2D041CB06
2D041DB02
2D041FA14
2D050AA06
2D050CB23
2D050CB42
(57)【要約】
【課題】流体供給用のパイプを容易に配設でき、かつ、回転圧入時において流体供給用のパイプが地盤から強い反作用力を受けることを防ぐとともに鋼管内の閉塞を抑制することができる鋼管杭及び該鋼管杭の施工方法、該鋼管杭の設計方法、該鋼管杭の製造方法を得る。
【解決手段】本発明に係る鋼管杭1は、地盤に回転圧入するものであって、鋼管杭1を構成する鋼管3の先端内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状に設けられた螺旋状保持部材5と、鋼管3の上端から、鋼管3の内壁に沿って下方に向かって配設されて流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプ7と、流体供給用パイプ7の下端部に接続され、螺旋状保持部材5の上面に沿って配設されるとともに周面に流体を吐出する流体吐出口9aが形成された流体吐出用パイプ9と、を備えたことを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に回転圧入する鋼管杭であって、
前記鋼管杭を構成する鋼管の先端内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状に設けられた螺旋状保持部材と、
前記鋼管の上端から、該鋼管の内壁に沿って下方に向かって配設されて流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプと、
該流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能に設けられ、前記螺旋状保持部材の上面に沿って配設されるとともに周面に前記流体を吐出する流体吐出口が形成された流体吐出用パイプと、を備えたことを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
前記鋼管は、その先端に螺旋状に切り欠かれた切欠き部を有し、
前記螺旋状保持部材は前記切欠き部に沿って設けられると共にその先端部に地盤を掘削する掘削部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
【請求項3】
流体を吐出する流体吐出口を有する吐出ノズルを前記流体吐出用パイプの先端に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管杭。
【請求項4】
流体を吐出する流体吐出口を有する吐出ノズルを前記螺旋状保持部材の先端近傍に有し、該吐出ノズルに流体を供給する流体供給用パイプを前記流体吐出用パイプに流体を供給するものとは別に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管杭。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の鋼管杭を地盤に回転圧入する鋼管杭の施工方法であって、
鋼管杭を回転圧入する際に、前記流体供給用パイプに流体を供給し、前記流体吐出口から前記流体を吐出することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項6】
地盤に回転圧入する鋼管杭を設計する設計方法であって、
前記鋼管杭を構成する鋼管の先端に、該鋼管の内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状の螺旋状保持部材を設定し、
流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプを、前記鋼管の上端から該鋼管の内壁に沿って下方に向かうよう設定し、
周面に前記流体を吐出する流体吐出口が設定された流体吐出用パイプを、前記流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能かつ前記螺旋状保持部材の上面に沿うように設定する、ことを特徴とする鋼管杭の設計方法。
【請求項7】
地盤に回転圧入する鋼管杭を製造する製造方法であって、
前記鋼管杭を構成する鋼管の先端に、該鋼管の内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状の螺旋状保持部材を形成し、
流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプを、前記鋼管の上端から該鋼管の内壁に沿って下方に向かうように取り付け、
周面に前記流体を吐出する流体吐出口を形成した流体吐出用パイプを、前記流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能かつ前記螺旋状保持部材の上面に沿うように取り付ける、ことを特徴とする鋼管杭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に回転圧入する鋼管杭及び該鋼管杭の施工方法、該鋼管杭の設計方法、該鋼管杭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭を地盤に回転圧入させる際、鋼管内が土砂で閉塞すると貫入抵抗が増大し、それに起因して施工トラブルが生じる場合がある。この土砂による閉塞を防止するための方法が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の「回転圧入用の開端鋼管杭」では、「鋼管杭の上端から途中まで該鋼管杭の内壁に沿って流体供給用パイプが配管され、該パイプの下端には該鋼管杭の内壁に沿って周方向に環状のパイプが配置されており、該環状のパイプの下端から下向きに該鋼管杭の内壁に沿って2箇所以上8箇所以下の第2の流体供給用パイプが配管され」ている。
そして、第2の流体供給用パイプのそれぞれに設けられた流体吐出用のノズルから鋼管の内壁に沿って周方向に流体を吐出することで、鋼管の内壁と土砂との間に流体を介在させ、鋼管内での閉塞が発生するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4242251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した方法では、環状のパイプの他、該環状のパイプに複数の流体供給用パイプを配管する必要があり、非常に手間がかかる。さらに、鋼管杭を回転圧入する際に環状パイプや第2の流体供給用パイプが地盤から強い反作用力を受けるので、これによる破壊を防止するために強固に補強する必要ある。
【0006】
また、従来は流体を噴射する方向が鋼管杭の内壁に沿った周方向であるため一定の高さのみにしか流体を噴射できない。よって、高さ方向により広い領域に流体を噴射する場合には、高さ方向に複数の流体吐出用ノズルを配置する必要があり、これを鋼管内に設置、固定するのは難しい。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、流体供給用のパイプを容易に配設でき、かつ、回転圧入時において流体供給用のパイプが地盤から強い反作用力を受けることを防ぐとともに鋼管内の閉塞を抑制することができる鋼管杭及び該鋼管杭の施工方法、該鋼管杭の設計方法、該鋼管杭の製造方法を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る鋼管杭は、地盤に回転圧入するものであって、前記鋼管杭を構成する鋼管の先端内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状に設けられた螺旋状保持部材と、前記鋼管の上端から、該鋼管の内壁に沿って下方に向かって配設されて流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプと、該流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能に設けられ、前記螺旋状保持部材の上面に沿って配設されるとともに周面に前記流体を吐出する流体吐出口が形成された流体吐出用パイプと、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記鋼管は、その先端に螺旋状に切り欠かれた切欠き部を有し、前記螺旋状保持部材は前記切欠き部に沿って設けられると共にその先端部に地盤を掘削する掘削部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、流体を吐出する流体吐出口を有する吐出ノズルを前記流体吐出用パイプの先端に設けたことを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、流体を吐出する流体吐出口を有する吐出ノズルを前記螺旋状保持部材の先端近傍に有し、該吐出ノズルに流体を供給する流体供給用パイプを前記流体吐出用パイプに流体を供給するものとは別に設けたことを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、本発明に係る鋼管杭の施工方法は、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の鋼管杭を地盤に回転圧入するものであって、鋼管杭を回転圧入する際に、前記流体供給用パイプに流体を供給し、前記流体吐出口から前記流体を吐出することを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、本発明に係る鋼管杭の設計方法は、地盤に回転圧入する鋼管杭を設計するものであって、前記鋼管杭を構成する鋼管の先端に、該鋼管の内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状の螺旋状保持部材を設定し、流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプを、前記鋼管の上端から該鋼管の内壁に沿って下方に向かうよう設定し、周面に前記流体を吐出する流体吐出口が設定された流体吐出用パイプを、前記流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能かつ前記螺旋状保持部材の上面に沿うように設定する、ことを特徴とするものである。
【0014】
(7)また、本発明に係る鋼管杭の製造方法は、地盤に回転圧入する鋼管杭を製造するものであって、前記鋼管杭を構成する鋼管の先端に、該鋼管の内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状の螺旋状保持部材を形成し、流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプを、前記鋼管の上端から該鋼管の内壁に沿って下方に向かうように取り付け、周面に前記流体を吐出する流体吐出口を形成した流体吐出用パイプを、前記流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能かつ前記螺旋状保持部材の上面に沿うように取り付ける、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、鋼管の先端内面側に突出する螺旋状保持部材と、前記螺旋状保持部材の上面に沿って配設される流体吐出用パイプとを備え、該流体吐出用パイプに設けられた流体吐出口から流体を吐出することにより、高さ方向にも広く流体を吐出することができ、効果的に鋼管内部の土砂詰りを防止する。また、流体吐出用パイプは分岐することなく螺旋状保持部材の上面に配設されているので、設置が簡易であるとともに、回転圧入中にも地盤から直接反作用力を受けることはなく、破壊の危険性も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係る鋼管杭の説明図である。
図2図2(a)は図1に示した鋼管杭の底面図、図2(b)は図2(a)のA-A断面図、図2(c)は図2(a)のB-B断面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る鋼管杭の他の態様の説明図である(その1)。
図4】本発明の一実施の形態に係る鋼管杭の他の態様の説明図である(その2)。
図5】本発明の一実施の形態に係る鋼管杭の他の態様の説明図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態に係る鋼管杭1は、地盤に回転圧入するものであって、図1図2に示すように、鋼管3と、鋼管3の先端に設けられた螺旋状保持部材5と、流体を供給する流体供給用パイプ7と、流体供給用パイプ7の下端部から供給される流体を通流可能に設けられた流体吐出用パイプ9とを備えている。
各構成について、以下に詳しく説明する。
【0018】
<鋼管>
鋼管3は、鋼管杭1を構成するものであり、その先端に螺旋状に切り欠かれた切欠き部3aを有している。本実施の形態において鋼管3に切欠き部3aを設けた理由は後述する。
【0019】
<螺旋状保持部材>
螺旋状保持部材5は、流体吐出用パイプ9を保持するための部材であり、鋼管3の先端内面側に突出すると共に切欠き部3aに沿って螺旋状に設けられている。
【0020】
上記のように螺旋状保持部材5が鋼管3の先端内面側に突出し、その上面に流体吐出用パイプ9を配設しているので、鋼管杭1を図1に黒矢印で示す方向に回転しながら圧入する際、螺旋状保持部材5が地盤からの反作用力を受けながら掘り進むので、流体吐出用パイプ9が地盤から直接反作用力を受けることがない。
螺旋状保持部材5が通った部分は、図2(c)の二点鎖線で示すように、鋼管3の内径よりも内径が小さいドーナツ状に地盤がほぐされる。
【0021】
螺旋状保持部材5によって流体吐出用パイプ9が保持されて回転圧入時に流体吐出用パイプ9が地盤からの反作用力を受けないようにするためには、螺旋状保持部材5における鋼管3の先端内面側に突出する幅a(図2(b)参照)は、流体吐出用パイプ9の外径と同等、もしくは、それよりも若干大きくするのが好ましい。
【0022】
また、本実施の形態の螺旋状保持部材5の先端部には、地盤を掘削する掘削部5aが形成されている。掘削部5aは、図1に示すように水平に対して上方に傾斜する傾斜面を有しており、このような掘削部5aを設けることで地盤の掘削効率を向上させることができる。
掘削部5aによって掘削効率を向上させることで、流体の吐出圧力を低減することができる(例えば0.02MPa~1MPa程度)。
【0023】
螺旋状保持部材5の先端部に掘削部5aを設ける場合には、本実施の形態のように鋼管3に螺旋状の切欠き部3aを設けるのが好ましい。その理由は以下のとおりである。
上述したように、掘削部5aは水平に対して上方に傾斜する傾斜面を有しているので、回転圧入時において掘削部5aによって掘削された土は掘削部5aの傾斜面によってすくいあげられ、鋼管内部の上方に移動する。一方、鋼管杭1の内側の土は、鋼管内壁との摩擦によって鋼管杭1と共に下方に移動する。そのため、鋼管杭1の内側先端部では、掘削部5aによってすくいあげられて上方に移動する土と鋼管杭1と共に下方に移動する土が衝突することで土の締め固まりが発生し、当該部位で土による閉塞が生ずる。
【0024】
この点、本実施の形態のように鋼管3に切欠き部3aを設けることで、図2(b)、図2(c)に示すように側面視で斜めの開口部10があるため、掘削部5aによってすくいあげられて上方に移動する土と鋼管杭1と共に下方に移動する土が衝突したとしても、開口部10が土の逃げ場となり、締め固まりが生じたとしても閉塞に至ることはない。そのため、土の閉塞による弊害を抑制することができる。
【0025】
<流体供給用パイプ>
流体供給用パイプ7は、流体吐出用パイプ9に流体を供給するものであり鋼管3の上端から、鋼管3の内壁に沿って下方に向かって配設される。
前述したように、鋼管3の内面側に突出した螺旋状保持部材5によって鋼管3の内壁近傍の地盤がほぐされているので(図2(c)の二点鎖線参照)、鋼管3の内壁に沿って配設された流体供給用パイプ7は地盤から強い反作用力を受けることがない。従って、従来例と比べて流体供給用パイプ7やその取り付け部(配管バンドや溶接部等)の補強を低減することができる。
【0026】
なお、流体供給用パイプ7に供給する流体の例としては水または空気などが挙げられる。水または空気を用いれば所定の効果は得られるが、必要に応じてベントナイト溶水などの掘削液を用いてもよい。また、水と空気の混合物、掘削液と空気の混合物などを用いてもよい。
【0027】
<流体吐出用パイプ>
流体吐出用パイプ9は、螺旋状保持部材5の上面に沿って配設されて流体供給用パイプ7から供給される流体を鋼管3の内側に吐出するものである。流体吐出用パイプ9の周面には流体を吐出するための流体吐出口9aが形成され、先端には流体を吐出する流体吐出口を有する吐出ノズル11が設けられている。
流体吐出口9aは、例えば2mm程度の穴を流体吐出用パイプ9に設けたものであり、流体吐出用パイプ9に通流する流体の一部が流体吐出口9aから吐出する。
また、流体吐出用パイプ9の先端に設けられた吐出ノズル11の流体吐出口からは、螺旋状保持部材5の先端部に設けられた掘削部5aの近傍に向けて流体が吐出される。
【0028】
上記のように構成された鋼管杭1を施工する際には、流体供給用パイプ7に流体である水、掘削液、空気、またはこれらの混合流体等を供給し、流体吐出口9a及び吐出ノズル11の流体吐出口から流体を吐出しながら鋼管杭1を回転圧入する。
その際、図1の白抜き矢印に示すように、流体吐出用パイプ9の上面に設けられた流体吐出口9aからは上方に向かって流体が吐出されるので、鋼管杭1の端部より上方の土砂と流体を混合することができ、従来例に比べて鋼管内奥の土砂詰まりを解消することができる。
【0029】
また、流体吐出用パイプ9の下面に設けられた流体吐出口9aからは螺旋状保持部材5に向けて流体が吐出される。この場合にも流体吐出口9aの近傍の土砂と流体を混合することで土砂詰まりを解消することができる。また、螺旋状保持部材5に向けて流体を吐出することで螺旋状保持部材5を冷却することができるので、回転圧入時に生じる螺旋状保持部材5の損傷を防止することができる。
【0030】
さらに、流体吐出用パイプ9の先端に設けられた吐出ノズル11からは螺旋状保持部材5の掘削部5a近傍に流体が吐出される。掘削部5aは鋼管杭1が回転圧入する際の掘削最前部となる部分であり、掘削部5aの近傍は未掘削の固い地盤(原地盤)であるから、この部分に流体を吐出することで、より地盤を軟らかくすることができて貫入抵抗の低減や土砂詰まり防止に効果的である。
【0031】
なお、本発明において、流体吐出口9aは流体吐出用パイプ9の周面に設けられればよく、その位置を限定するものではないが、流体吐出用パイプ9の側面に設けるよりも上述のように上面または下面に設ける方が土砂詰まり防止の効果が高くて好ましい。その理由は以下の通りである。
前述したように鋼管内壁との摩擦によって下方に移動した土と掘削されて鋼管内部に移動した土が衝突することで生じる土の締め固まりによって土閉塞が生じる。この点、流体吐出口9aを流体吐出用パイプ9の上面または下面に設けて流体を吐出することで、流体が鋼管内壁と土との境界面に浸入して鋼管内壁と土の摩擦力を低減し、鋼管内部の土の移動をし易くでき、鋼管内部での土の締め固まりが生じにくくなる。
これに対して、例えば鋼管径の中心側に流体吐出口9aを設けた場合には、鋼管径の中心側の土砂に向かって流体を吐出することになるので上記鋼管内壁と土の摩擦を低減する作用を十分に発揮できず、土の閉塞防止の効果が低い。
したがって、流体吐出用パイプ9の上面または下面、またはその両方に流体吐出口9aを設けると図1で説明したように土砂詰まり防止の効果が高く得られるので好ましい。
【0032】
また、本発明において、流体吐出用パイプ9は流体供給用パイプ7の下端部から供給される流体を通流可能に設けられれば良く、その接続位置を限定するものではないが、図1に示すように流体吐出用パイプ9の上端に流体供給用パイプ7の下端部が接続されているのが好ましい。
上記のようにすることで、全ての流体吐出口9aよりも上方の位置から流体が供給されるので、流体を供給するための圧力に加えて重力も作用し、効率的に流体吐出口9aに流体を供給することができる。
【0033】
また、前述のように回転圧入時には螺旋状保持部材5が流体吐出用パイプ9の保護部材としての役割を果たすので、従来例と比べて流体吐出用パイプ9やその取り付け部(配管バンドや溶接部等)の補強を低減することができる。
【0034】
以上のように本実施の形態においては、螺旋状保持部材5の上面に螺旋状に配設された流体吐出用パイプ9から流体を吐出しながら鋼管杭1を回転圧入するので、高さ方向に広く流体を吐出することができ、鋼管3の内部の土閉塞を効率的に防止して、貫入抵抗を抑えることができる。
さらに、従来例よりも設置が簡易であり、流体吐出用パイプ9が回転圧入中にも地盤から直接反作用力を受けることはないので、破壊の危険性も少ない。
【0035】
上記の説明では、流体吐出用パイプ9の先端に吐出ノズル11を設けた例を用いたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば図3に示すように流体供給用パイプ7を2本設けて、一方の先端に流体吐出用パイプ9を接続し、他方の先端に吐出ノズル11を設けるようにしてもよい。このように、吐出ノズル11に流体を供給する流体供給用パイプ7を流体吐出用パイプ9に流体を供給するものとは別に設けることで、吐出ノズル11から高い圧力で流体を吐出することができる。このとき、吐出ノズル11の位置は図1と同様に螺旋状保持部材5の先端近傍に設けるようにするのが好ましい。吐出ノズル11を螺旋状保持部材5の先端近傍に設けることで、前述したように回転圧入の最前部の地盤に流体を混合することができるので、貫入抵抗の低減や土砂詰まり防止に効果的である。また、図3の場合は、流体吐出用パイプ9の先端は、閉塞させて流体を吐出しない例を示している。もちろん、それに限らず、開口させて流体が吐出されるようにしてもよい。
なお、図3は流体供給用パイプ7を2本設けているが、例えば1本の流体供給用パイプ7を途中で分岐させて、分岐した一方を流体吐出用パイプ9、他方を吐出ノズル11に接続するようにしても良い。
【0036】
また、本発明に係る螺旋状保持部材5は、螺旋方向に必ずしも連続的である必要はなく、図4に示すように、単尺材5bが螺旋方向に所定の間隔を離して複数配置され、全体として螺旋状保持部材5を構成するものであってもよい。このように、螺旋状保持部材5が連続していない場合であっても、螺旋状保持部材5が図2(c)の二点鎖線に示したように鋼管3の内径よりも内径が小さいドーナツ状に地盤をほぐしながら掘り進むので、流体吐出用パイプ9が直接地盤の反作用力を受けることがなく、図1と同様の効果を得ることができる。
【0037】
土の取込み時の推進力(回転によって螺旋状保持部材5の張り出し部上を土が移動することで、鋼管に下向きの力がかかる)による圧入補助を期待するのであれば、螺旋状保持部材5の長さは、鋼管杭1全周のうち少なくとも50%以上であることが望ましい。これは、50%を下回ると、螺旋状保持部材5の張り出し部上に乗った土が、推進力を発揮する前に螺旋状保持部材5から落ちてしまうためである。
【0038】
なお、図1に示した例は、鋼管杭1の先端に一つの切欠き部3aを設け、これに沿うように略1周設けた螺旋状保持部材5の上面に流体吐出用パイプ9を配設したものであったが、本発明はこれに限られるものではない。例えば図5に示すように、鋼管杭1に切欠き部3aを二つ設け、各切欠き部3aに沿って設けられた2本の螺旋状保持部材5の上面にそれぞれ流体吐出用パイプ9を配設したものでもよい。
この場合、各螺旋状保持部材5の下側先端は鉛直方向の高さが揃っているのが好ましい。これによって、掘削時に螺旋状保持部材5の先端に作用する荷重が分散され、螺旋状保持部材5に対する負荷が小さくなり、螺旋状保持部材5の板厚等を薄くできるからである。
【0039】
なお、図5は流体供給用パイプ7を2本設けてそれぞれに流体吐出用パイプ9を接続した例であるが、図3で説明したのと同様に、1本の流体供給用パイプ7を途中で分岐させて、分岐した流体供給用パイプ7をそれぞれ流体吐出用パイプ9に接続するようにしても良い。
【0040】
なお、螺旋状保持部材5の取付態様として、図1~5では切欠き部3aを有する鋼管3の先端面に、螺旋状保持部材5の上面を当接させて取り付ける場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、鋼管3の最も先端の内周壁に螺旋状保持部材5の側面を当接させるようにして取り付けても良い。この場合、図1~5の場合と比較すると、鋼管3の板厚分だけ螺旋状保持部材5が内側に移動した状態となる。この場合でも、鋼管周方向に螺旋状に延出していることで、同様に流体吐出用パイプ9を保護する効果を得ることができる。
【0041】
また、図1図5に示した例は、鋼管3が切欠き部3aを1つ以上有する例であったが、本発明は先端に切欠き等のない通常の鋼管杭にも適用できる。
【0042】
なお、流体吐出用パイプ及び流体供給用パイプの名称は機能的な観点からつけたものであり、物理的に別部材を接続したものでもよいし、同一パイプを曲げて加工した一体物であってもよい。そして、流体吐出用パイプは、流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能に設けられておればよく、流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能に配される、または備えられる、または配設されるといういずれの表現にも含まれるものである。
【0043】
さらに、回転圧入される地盤の固さに応じて、上述した鋼管杭1の下端にバンド状の外側フリクションカッターや先端掘削刃等を設置してもよく、その場合には、鋼管杭1の施工能率がさらに高まることが期待される。
【0044】
また、上記の説明では、物の発明として鋼管杭1を説明したが、本実施の形態に係る鋼管杭1は以下のような設計方法によって設計される。
地盤に回転圧入する鋼管杭を設計する設計方法であって、
前記鋼管杭を構成する鋼管の先端に、該鋼管の内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状の螺旋状保持部材を設定し、
流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプを、前記鋼管の上端から該鋼管の内壁に沿って下方に向かうよう設定し、
周面に前記流体を吐出する流体吐出口が設定された流体吐出用パイプを、前記流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能かつ前記螺旋状保持部材の上面に沿うように設定する。
なお、本発明における鋼管杭の設計方法の各構成要件の順序は、上記の記載の順序に限定されるものではない。
【0045】
さらに、上記の説明では、物の発明として鋼管杭1を説明したが、本実施の形態に係る鋼管杭1は以下のような製造方法によって製造される。
地盤に回転圧入する鋼管杭を製造する製造方法であって、
前記鋼管杭を構成する鋼管の先端に、該鋼管の内面側に突出すると共に連続的又は断続的な螺旋状の螺旋状保持部材を形成し、
流体を供給する1本又は複数本の流体供給用パイプを、前記鋼管の上端から該鋼管の内壁に沿って下方に向かうように取り付け、
周面に前記流体を吐出する流体吐出口を形成した流体吐出用パイプを、前記流体供給用パイプの下端部から供給される流体を通流可能かつ前記螺旋状保持部材の上面に沿うように取り付ける。
なお、本発明における鋼管杭の製造方法の各構成要件の順序は、上記の記載の順序に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 鋼管杭
3 鋼管
3a 切欠き部
5 螺旋状保持部材
5a 掘削部
5b 単尺材
7 流体供給用パイプ
9 流体吐出用パイプ
9a 流体吐出口
10 開口部
11 吐出ノズル
図1
図2
図3
図4
図5