(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097345
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/14 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
B60N2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045107
(22)【出願日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】63/199300
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 治希
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA07
3B087BB12
3B087BC18
(57)【要約】
【課題】シート本体と一体に回転する回転支持体が軸受を介してベース体に回転自在に支持され、回転支持体の径方向外方側への過度の変形を抑制する変形抑制機構が、回転支持体を軸受よりも径方向外方側で回転支持体及びベース体間に介設される車両用シート装置において、回転支持体及びベース体間に緊密に接触して回転支持体のがたつきを抑制可能なガタ抑制部材の、回転支持体・ベース体への接触作用点を、回転支持体の回転中心から遠ざけ得るようにして、ガタ抑制効果を高める。
【解決手段】回転支持体30の径方向外方側への過度の変形を抑制する変形抑制機構Hが、軸受45よりも径方向外方側で回転支持体30及びベース体40間に介設され、ガタ抑制部材70が、前記径方向で変形抑制機構Hと軸受45との間に、或いはその間と該変形抑制機構Hの内部とに跨がって配置される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロア部(16)に固定可能に設けられるベース体(40)と、シート本体(S)に一体に回転するよう結合されて該シート本体(S)を支持する回転支持体(30)と、その回転支持体(30)を前記ベース体(40)に鉛直軸線回りに回転可能に支持させる軸受(45)と、前記ベース体(40)及び前記回転支持体(30)間に設けられて該回転支持体(30)を複数の回転位置の1つに選択的にロック可能なロック機構(L)と、そのロック機構(L)により前記回転支持体(30)が回転位置をロックされた状態で、前記ベース体(40)と前記回転支持体(30)とに緊密に接触して該回転支持体(30)のがたつきを抑制するガタ抑制部材(70)と、前記ロック機構(L)が前記回転位置をロック解除するのに応じて前記ガタ抑制部材(70)が前記ベース体(40)及び前記回転支持体(30)との緊密な接触状態を解除するように、該ガタ抑制部材(70)を前記ロック機構(L)に連動させる連動部材(60)とを備えた車両用シート装置において、
前記回転支持体(30)の前記ベース体(40)に対する回転は許容するが該回転支持体(30)の径方向外方側への過度の変形を抑制する変形抑制機構(H)が、前記軸受(45)よりも前記径方向外方側で該回転支持体(30)及び該ベース体(40)間に介設され、
前記ガタ抑制部材(70)が、前記径方向で前記変形抑制機構(H)と前記軸受(45)との間に、或いはその間と該変形抑制機構(H)の内部とに跨がって配置されることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
前記ガタ抑制部材(70)は、前記ベース体(40)に設けた第1受け部(81)及び前記回転支持体(30)に設けた第2受け部(82)の相互間に押込み・圧接可能な主体部(71)と、前記ロック解除の際に前記主体部(71)を前記第1,第2受け部(81,82)への押込方向とは逆方向に駆動して該ガタ抑制部材(70)を無効とする駆動力を前記連動部材(60)の駆動部(62)より受ける被動部(72)とを一体に結合して構成され、
前記主体部(71)及び前記被動部(72)は、それらが前記回転支持体(30)に連動して回転する方向に対し直交する方向に互いに並列配置されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記主体部(71)及び前記被動部(72)は、前記径方向に互いに並列配置されることを特徴とする、請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記連動部材(60)は、前記駆動部(62)を前記径方向で前記変形抑制機構(H)と前記軸受(45)との間に有することを特徴とする、請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項5】
前記主体部(71)を前記第1,第2受け部(81,82)の相互間に押込み・圧接可能な弾発力を前記ガタ抑制部材(70)に付与するばね(76)と、該ばね(76)の基端を前記回転支持体(30)に支持させるばね支持部材(77)とが、該ばね(76)及び該ばね支持部材(77)と前記変形抑制機構(H)との相互干渉を回避可能な位置に配設されることを特徴とする、請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項6】
前記第1,第2受け部(81,82)は、その両受け部(81,82)の相互間に前記主体部(71)が押込み・圧接される際に該主体部(71)を上下方向に挟持するように、上下方向で相対向して配置され、
前記被動部(72)の受け面(72f)は、前記回転支持体(30)の周方向で前記駆動部(62)に向かって下側に傾斜した第1斜面であり、また前記第1,第2受け部(81,82)のうち下側の受け部(82)に圧接可能な、前記主体部(71)の圧接面(71f2)は、前記周方向で該下側の受け部(82)に向かって上側に傾斜した第2斜面であることを特徴とする、請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項7】
前記連動部材(60)は、前記径方向で前記変形抑制機構(H)と前記軸受(45)との間を通る円環状に形成されて前記回転支持体(30)に相対回動可能に支持され、
前記連動部材(60)には、前記回転支持体(30)の周方向に延びる1条又は前記径方向に並ぶ複数条のスリット(61s)が形成されると共に、該スリット(61s)に前記被動部(72)の上部(72a)が前記周方向に摺動可能に嵌合されることを特徴とする、請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項8】
前記連動部材(60)は、前記径方向で前記変形抑制機構(H)と前記軸受(45)との間を通る円環状に形成され、
複数の前記ガタ抑制部材(70)が前記回転支持体(30)の周方向で間隔をおいて配設されると共に、それらガタ抑制部材(70)に対応した複数の前記ばね支持部材(77)が前記周方向で間隔をおいて前記回転支持体(30)に固定され、
前記ばね支持部材(77)は、前記連動部材(60)を相対回動可能に支持する連動部材受け部(77ha)を有することを特徴とする、請求項5に記載の車両用シート装置。
【請求項9】
前記変形抑制機構(H)は、前記ベース体(40)に固設される第1フック(F1)と、その第1フック(F1)に対応して前記回転支持体(30)に固設される第2フック(F2)とを有すると共に、該第2フック(F2)が該第1フック(F1)よりも前記径方向で外方側となるように配置され、
前記第1受け部(9)が、前記第1フック(F1)より前記径方向内方側で前記ベース体(40)に固定される一方、前記第2受け部(82)が該第1受け部(81)の下側となるよう前記回転支持体(30)に固定され、それら第1,第2受け部(81,82)間に前記主体部(71)を上下方向に挟持可能であることを特徴とする、請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項10】
前記第1受け部(81)は、これの背面が前記第1フック(F1)に支持されることを特徴とする、請求項9に記載の車両用シート装置。
【請求項11】
前記変形抑制機構(H)は、前記第1受け部(81)を一体に有して前記ベース体(40)に固設される第1フック(F1)と、前記第2受け部(82)を一体に有して前記回転支持体(30)に固設される第2フック(F2)とを備えると共に、該第1フック(F1)が該第2フック(F2)よりも前記径方向で外方側となり且つ該第1受け部(81)よりも該第2受け部(82)が下側となるように配置され、
前記ガタ抑制部材(70)は、これの前記主体部(71)が前記第1,第2フック(F1,F2)間に配置されると共に前記被動部(72)が前記第2フック(F2)と前記軸受(45)間に配置され、
前記第1,第2受け部(81,82)間に前記主体部(71)を上下方向に挟持可能であることを特徴とする、請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項12】
前記主体部(71)と前記被動部(72)とは、前記変形抑制機構(H)の、前記周方向で外側に延出して該変形抑制機構(H)との相互干渉を回避可能な接続部(73)を介して一体に結合されることを特徴とする、請求項11に記載の車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装置、特に車体のフロア部に固定可能に設けられるベース体と、シート本体に一体に回転するよう結合されてシート本体を支持する回転支持体と、その回転支持体をベース体に鉛直軸線回りに回転可能に支持させる軸受と、ベース体及び回転支持体間に設けられて回転支持体を複数の回転位置の1つに選択的にロック可能なロック機構と、そのロック機構により回転支持体が回転位置をロックされた状態で、ベース体と回転支持体とに緊密に接触して回転支持体のがたつきを抑制するガタ抑制部材と、ロック機構が回転支持体の回転位置をロック解除するのに応じてガタ抑制部材がベース体及び回転支持体との緊密な接触状態を解除するように、ガタ抑制部材をロック機構に連動させる連動部材とを備えた車両用シート装置に関する。
【0002】
本発明及び本明細書において、「径方向」とは、回転支持体(従ってシート本体)の回転軸線を中心軸線とした仮想円の半径方向をいい、また「周方向」とは、前記仮想円の円周方向をいう。
【背景技術】
【0003】
上記車両用シート装置において、回転支持体のベース体に対する回転は許容するが回転支持体の径方向外方側への過度の変形を抑制する変形抑制機構を回転支持体及びベース体間に介設したものは、例えば特許文献1,2に記載されるように従来公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-160556号公報
【特許文献1】国際公開2020-110984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来装置では、ガタ抑制部材が、変形抑制機構及び軸受に対し径方向で略同一位置又は内方位置、即ち径方向で比較的内方寄りに配置されているため、次のような課題がある。
【0006】
即ち、ガタ抑制部材は、回転支持体が回転位置をロックされた状態で、ベース体と回転支持体とに緊密に接触して回転支持体のがたつきを抑制するが、その抑制効果は、ガタ抑制部材の、回転支持体・ベース体への接触作用点が回転支持体の回転中心から遠ければ遠いほどレバー比の関係でより効果的(即ち強力)に発揮される。従って、従来装置のようにガタ抑制部材が径方向内方寄りに配置される構造では、ガタ抑制効果が十分には期待できなかった。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたもので、従来装置の上記課題を簡単な構造で解決可能とした車両用シート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、車体のフロア部に固定可能に設けられるベース体と、シート本体に一体に回転するよう結合されて該シート本体を支持する回転支持体と、その回転支持体を前記ベース体に鉛直軸線回りに回転可能に支持させる軸受と、前記ベース体及び前記回転支持体間に設けられて該回転支持体を複数の回転位置の1つに選択的にロック可能なロック機構と、そのロック機構により前記回転支持体が回転位置をロックされた状態で、前記ベース体と前記回転支持体とに緊密に接触して該回転支持体のがたつきを抑制するガタ抑制部材と、前記ロック機構が前記回転位置をロック解除するのに応じて前記ガタ抑制部材が前記ベース体及び前記回転支持体との緊密な接触状態を解除するように、該ガタ抑制部材を前記ロック機構に連動させる連動部材とを備えた車両用シート装置において、前記回転支持体の前記ベース体に対する回転は許容するが該回転支持体の径方向外方側への過度の変形を抑制する変形抑制機構が、前記軸受よりも前記径方向外方側で該回転支持体及び該ベース体間に介設され、前記ガタ抑制部材が、前記径方向で前記変形抑制機構と前記軸受との間に、或いはその間と該変形抑制機構の内部とに跨がって配置されることを第1の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記ガタ抑制部材は、前記ベース体に設けた第1受け部及び前記回転支持体に設けた第2受け部の相互間に押込み・圧接可能な主体部と、前記ロック解除の際に前記主体部を前記第1,第2受け部への押込方向とは逆方向に駆動して該ガタ抑制部材を無効とする駆動力を前記連動部材の駆動部より受ける被動部とを一体に結合して構成され、前記主体部及び前記被動部は、それらが前記回転支持体に連動して回転する方向に対し直交する方向に互いに並列配置されることを第2の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記主体部及び前記被動部は、前記径方向に互いに並列配置されることを第3の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記連動部材は、前記駆動部を前記径方向で前記変形抑制機構と前記軸受との間に有することを第4の特徴とする。
【0012】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記主体部を前記第1,第2受け部の相互間に押込み・圧接可能な弾発力を前記ガタ抑制部材に付与するばねと、該ばねの基端を前記回転支持体に支持させるばね支持部材とが、該ばね及び該ばね支持部材と前記変形抑制機構との相互干渉を回避可能な位置に配設されることを第5の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記第1,第2受け部は、その両受け部の相互間に前記主体部が押込み・圧接される際に該主体部を上下方向に挟持するように、上下方向で相対向して配置され、前記被動部の受け面は、前記回転支持体の周方向で前記駆動部に向かって下側に傾斜した第1斜面であり、また前記第1,第2受け部のうち下側の受け部に圧接可能な、前記主体部の圧接面は、前記周方向で該下側の受け部に向かって上側に傾斜した第2斜面であることを第6の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記連動部材は、前記径方向で前記変形抑制機構と前記軸受との間を通る円環状に形成されて前記回転支持体に相対回動可能に支持され、前記連動部材には、前記回転支持体の周方向に延びる1条又は前記径方向に並ぶ複数条のスリットが形成されると共に、該スリットに前記被動部の上部が前記周方向に摺動可能に嵌合されることを第7の特徴とする。
【0015】
また本発明は、第5の特徴に加えて、前記連動部材は、前記径方向で前記変形抑制機構と前記軸受との間を通る円環状に形成され、複数の前記ガタ抑制部材が前記回転支持体の周方向で間隔をおいて配設されると共に、それらガタ抑制部材に対応した複数の前記ばね支持部材が前記周方向で間隔をおいて前記回転支持体に固定され、前記ばね支持部材は、前記連動部材を相対回動可能に支持する連動部材受け部を有することを第8の特徴としている。
【0016】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記変形抑制機構は、前記ベース体に固設される第1フックと、その第1フックに対応して前記回転支持体に固設される第2フックとを有すると共に、該第2フックが該第1フックよりも前記径方向で外方側となるように配置され、前記第1受け部が、前記第1フックより前記径方向内方側で前記ベース体に固定される一方、前記第2受け部が該第1受け部の下側となるよう前記回転支持体に固定され、それら第1,第2受け部間に前記主体部を上下方向に挟持可能であることを第9の特徴とする。
【0017】
また本発明は、第9の特徴に加えて、前記第1受け部は、これの背面が前記第1フックに支持されることを第10の特徴とする。
【0018】
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記変形抑制機構は、前記第1受け部を一体に有して前記ベース体に固設される第1フックと、前記第2受け部を一体に有して前記回転支持体に固設される第2フックとを備えると共に、該第1フックが該第2フックよりも前記径方向で外方側となり且つ該第1受け部よりも該第2受け部が下側となるように配置され、前記ガタ抑制部材は、これの前記主体部が前記第1,第2フック間に配置されると共に前記被動部が前記第2フックと前記軸受間に配置され、前記第1,第2受け部間に前記主体部を上下方向に挟持可能であることを第11の特徴としている。
【0019】
また本発明は、第11の特徴に加えて、前記主体部と前記被動部とは、前記変形抑制機構の、前記周方向で外側に延出して該変形抑制機構との相互干渉を回避可能な接続部を介して一体に結合されることを第12の特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の特徴によれば、シート本体と一体に回転する回転支持体のベース体に対する回転は許容するが回転支持体の径方向外方側への過度の変形を抑制する変形抑制機構が、回転支持体をベース体上に回転自在に支持する軸受よりも径方向外方側で回転支持体及びベース体間に介設される車両用シート装置において、回転支持体及びベース体間に緊密に接触して回転支持体のがたつきを抑制可能なガタ抑制部材が、径方向で変形抑制機構と軸受との間に配置されるので、ガタ抑制部材の、回転支持体・ベース体への接触作用点を、回転支持体の回転中心から遠ざけることができ、これにより、ガタ抑制部材によるガタ抑制効果を、回転中心からのレバー比の関係で従来装置よりも強力に発揮させることができる。
【0021】
また第2の特徴によれば、ガタ抑制部材は、ベース体側の第1受け部及び回転支持体側の第2受け部の相互間に押込み・圧接可能な主体部と、主体部を第1,第2受け部への押込方向とは逆方向に駆動してガタ抑制部材を無効とする駆動力を連動部材の駆動部より受ける被動部とを一体に結合して構成され、主体部及び被動部は、それらが回転支持体に連動して回転する方向に対し直交する方向に互いに並列配置される。これにより、ガタ抑制部材は、がたつき抑制のための主体部と、ロック解除時に連動部材より駆動力(ロック解除力)を受ける被動部とを、それらの回転方向に対し直交する並列させて機能分担させることで、主体部及び被動部の各機能に則した最適な設計が可能となるため、ガタ抑制部材の設計自由度が高められる。
【0022】
また第3の特徴によれば、主体部及び被動部の並列配置方向は、回転支持体の径方向であるので、主体部及び被動部を並列配置してもガタ抑制部材を全体として上下に扁平化でき、従って、回転支持体とベース体間の狭小空間にも無理なく配備可能となる。
【0023】
また第4の特徴によれば、連動部材は、前記駆動部を径方向で変形抑制機構と軸受との間に有するので、連動部材の駆動部をガタ抑制部材の被動部に近接した位置に配備可能となり、従って、ロック解除時には、連動部材(駆動部)でガタ抑制部材(被動部)を効率よく駆動可能となる。
【0024】
また第5の特徴によれば、主体部を第1,第2受け部の相互間に押込み・圧接可能な弾発力をガタ抑制部材に付与するばねと、ばねの基端を回転支持体に支持させるばね支持部材とが、ばね及びばね支持部材と変形抑制機構との相互干渉を回避可能な位置に配設されるので、ガタ抑制部材を周方向一方側からばね付勢する構造であっても、そのばね及びばね支持部材を、変形抑制機構との干渉を回避しつつ回転支持体に無理なく支持させることができる。
【0025】
また第6の特徴によれば、第1,第2受け部は、その両受け部の相互間に主体部が押込み・圧接される際に主体部を上下方向に挟持するように、上下方向で相対向して配置され、被動部の受け面は、回転支持体の周方向で連動部材の駆動部に向かって下側に傾斜した第1斜面であり、また第1,第2受け部のうち下側の受け部に圧接可能な、主体部の圧接面は、周方向で下側の受け部に向かって上側に傾斜した第2斜面であるので、ロック解除時に連動部材の駆動部が被動部の受け面(即ち第1斜面)を押し下げつつ前記逆方向に駆動する。この駆動により、ガタ抑制部材の主体部の圧接面(即ち第2斜面)は、下側の受け部を下降しながら摺動するので、該主体部の、上側の受け部との圧接状態を迅速容易に解消でき、従って、ガタ抑制部材は、これの一時的な無効状態への作動切換えがスムーズになされる。
【0026】
また第7の特徴によれば、連動部材は、径方向で変形抑制機構と軸受との間を通る円環状に形成されて回転支持体に相対回動可能に支持され、連動部材には、回転支持体の周方向に延びる1条又は径方向に並ぶ複数条のスリットが形成されると共に、スリットに被動部の上部が周方向に摺動可能に嵌合されるので、回転支持体が一時的なロック解除状態から再び所定の回転位置にロックされて、ガタ抑制部材の主体部が第1,第2受け部間に押込み・圧接される際に、被動部は、これが上記スリットに摺動、嵌合することで、横振れが効果的に抑えられる。これにより、ガタ抑制部材は、安定した姿勢を保ちながら、主体部を第1,第2受け部に的確に圧接させることができる。
【0027】
また第8の特徴によれば、連動部材は、径方向で変形抑制機構と軸受との間を通る円環状に形成され、複数のガタ抑制部材が回転支持体の周方向で間隔をおいて配設されると共に、それらガタ抑制部材に対応した複数のばね支持部材が周方向で間隔をおいて回転支持体に固定され、ばね支持部材は、連動部材を相対回動可能に支持する連動部材受け部を有する。これにより、ばね支持部材を、円環状の連動部材に対する支持手段に兼用できるため、装置の構造簡素化に寄与することができる。
【0028】
また第9の特徴によれば、変形抑制機構は、ベース体に固設される第1フックと、その第1フックに対応して回転支持体に固設される第2フックとを有すると共に、第2フックが第1フックよりも径方向で外方側となるように配置され、第1受け部が、第1フックより径方向内方側でベース体に固定される一方、第2受け部が第1受け部の下側となるよう回転支持体に固定され、それら第1,第2受け部間に主体部を上下方向に挟持可能である。これにより、ガタ抑制部材の全部を、径方向で軸受と変形抑制機構との間に配備しても、その間の狭小な空間において第1,第2受け部の有効受け面を径方向に十分幅広に確保可能となり、がたつき抑制効果を高めることができる。
【0029】
また第10の特徴によれば、第1受け部は、これの背面が第1フックに支持されるので、第1フックを、第1受け部に対する補強支持手段に兼用でき、従って、装置の構造簡素化を図ると共に、第1受け部の支持剛性を高めることができる。
【0030】
また第11の特徴によれば、変形抑制機構は、第1受け部を一体に有してベース体に固設される第1フックと、第2受け部を一体に有して回転支持体に固設される第2フックとを備えると共に、第1フックが第2フックよりも径方向で外方側となり且つ第1受け部よりも第2受け部が下側となるように配置され、ガタ抑制部材は、これの主体部が第1,第2フック間に配置されると共に被動部が第2フックと軸受間に配置され、第1,第2受け部間に主体部を上下方向に挟持可能である。これにより、第1,第2フック自体が第1,第2受け部に各々兼用されることとなって、装置の構造簡素化が図られ、また第1,第2フック間のデッドスペースを、ガタ抑制部材の一部(主体部)の設置空間に有効活用可能となるから、それだけ装置のコンパクト化に寄与することができる。
【0031】
また第12の特徴によれば、主体部と被動部とは、変形抑制機構の、周方向で外側に延出して変形抑制機構との相互干渉を回避可能な接続部を介して一体に結合されるので、ガタ抑制部材(主体部・被動部)が変形抑制機構の内外に跨がる配置となっても、その内外の主体部・被動部間を、変形抑制機構との干渉を回避しつつ上記接続部で支障なく一体に結合可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る車両用シート装置の第1実施形態を示す全体斜視図
【
図2】前記シート装置のシート座部の要部(特に回転支持体以下の要素)を示す斜視図
【
図3】
図2の3矢視図(ロック機構がロック作動状態)
【
図4】
図2の3矢視図(ロック機構がロック解除状態)
【
図8】回転支持体へのばね支持部材及びばねの支持形態、並びにガタ抑制部材とばねとの係合態様を示す平面図
【
図10】前記ロック作動状態における連動部材とガタ抑制部材と第1,第2受け部との相対位置関係を示すものであって、(A)は
図5の10A-10A線断面図、(B)は
図5の10B-10B線断面図
【
図11】前記ロック解除状態における連動部材とガタ抑制部材と第1,第2受け部との相対位置関係を示すものであって、(A)は
図6の11A-11A線断面図、(B)は
図6の11B-11B線断面図
【
図12】第2実施形態でロック機構のロック作動状態を示す要部平面図(
図5対応図)
【
図13】第2実施形態でロック機構のロック解除作動状態を示す要部平面図(
図6対応図)
【
図15】第2実施形態のガタ抑制部材を単体で示すもので、(A)は斜視図、(B)は側面図(即ち
図15(A)の15B矢視図)
【
図16】第2実施形態における回転支持体へのばね支持部材及びばねの支持形態、並びにガタ抑制部材とばねとの係合態様を示す平面図
【
図17】前記ロック作動状態における連動部材とガタ抑制部材と第1,第2受け部との相対位置関係を示すものであって、(A)は
図12の17A-17A線断面図、(B)は
図12の17B-17B線断面図
【
図18】前記ロック解除状態における連動部材とガタ抑制部材と第1,第2受け部との相対位置関係を示すものであって、(A)は
図13の18A-18A線断面図、(B)は
図13の18B-18B線断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明で「前後」、「左右」および「上下」は、座った乗員が前向きとなる姿勢にシートがある状態で当該乗員から見た方向を言うものとする。
【0034】
先ず、第1実施形態について
図1~
図11を参照しながら説明すると、
図1において、車両に搭載される車両用シート装置10のシート本体Sは、乗員の尻部を載せるシート座部Scと、そのシート座部Scの後部上方に起立して乗員の背中や腰を支持するシートバック部Sbとを備える。
【0035】
シート本体Sの骨格となるシートフレームSFは、シート座部Scの骨格となる座部フレームSFcと、シートバック部Sbの骨格となるバックフレームSFbとを備え、座部フレームSFcは、シートクッションパッドPcで覆われ、またバックフレームSFbはシートバックパッドPbで覆われる。バックフレームSFbは、座部フレームSFcの後端部に電動式又は手動式リクライニング機構(何れも従来周知)を介して前後揺動可能に支持される。
【0036】
座部フレームSFcは、左右の間隔をおいて並び且つ前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム11aと、それらのサイドフレーム11aの前端部間を連結するフロントフレーム11bと、一対の前記サイドフレーム11aの後端部間を連結するリヤパイプ11cとを有する。フロントフレーム11bには、両サイドフレーム11a間を結合するパンフレーム11pが固定される。またフロントフレーム11bおよびリヤパイプ11c間には、左右方向に間隔をおいて並び且つ各々がジグザグに折れ曲がりつつ前後方向に延びる複数のシートスプリング12の前後端部が架け渡される。
【0037】
またバックフレームSFbは、左右の間隔をおいて並び且つ上下方向に延びる左右一対のサイドフレーム13aと、左右のサイドフレーム13aの下端部間を連結する下部横フレーム13bと、左右のサイドフレーム13aの上端部間を連結する上部横フレーム13cとを有する。そして、左右のサイドフレーム13a間には、複数のシートスプリング14の左右両端部が架け渡され、また上部横フレーム13cには、ヘッドレストを支持するヘッドレスト支持部13chが固設される。
【0038】
図2~
図7を併せて参照して、車両用シート装置10は、これの土台枠として機能するベース体40を最下部に有しており、そのベース体40は、中心部に大きな円形孔40hを有して平面視矩形状に形成される。ベース体40の左右両側部の下面には、前後方向に延びる左右一対の可動レール15が固着されており、それら可動レール15は、車体のフロア部16に固着されて前後方向に延びる左右一対の固定レール17にそれぞれ前後摺動可能に支持される。
【0039】
可動レール15と固定レール17間には、可動レール15(即ちベース体40、延いてはシート本体S)の前後位置を任意に調節・固定可能な従来周知の前後位置調節機構(図示せず)が配設され、その前後位置調節機構は、これに連動連結されてシート座部Scの下部前方に張出す操作レバー18により手動操作される。
【0040】
尚、上記前後位置調節機構は、これを省略してもよく、その場合は、車体のフロア部16上にベース体40が前後位置調節不能に固着される。
【0041】
またベース体40とシート座部Scとの間には、シート座部Sc(従ってシート本体S)を鉛直軸線回りに回転可能に支持するシート回転機構Rが設けられる。即ち、ベース体40の上方には、シート座部Scと共に回転可能な回転支持体30が配置され、その回転支持体30は、シート座部Sc(より具体的には座部フレームSFcの左右のサイドフレーム11a)に前後左右の四隅部分がそれぞれ固着(例えば複数のボルト31で締結)される。
【0042】
回転支持体30は、中心部に大きな円形孔30hを有して平面視矩形状に形成され、その回転支持体30とベース体40の内周端部の相互間には、回転支持体30を鉛直軸線回りに回転可能に支持する軸受45(例えばボール軸受)が介装される。
【0043】
ベース体40の上面には、軸受45の下側のボール受け凹部を一体に有するベース板41が重合、固着され、一方、回転支持体30は、これの内周部に軸受45の上側のボール受け凹部を一体に有しており、その回転支持体30の内周端は、円環状のスライダ46を介して環状の保持プレート47に回転摺動可能に保持される。その保持プレート47は、段付き短円筒状をなす外周起立壁47wと、その外周起立壁47wの下端に連設される径方向内向きのフランジ部47fとを一体に有しており、フランジ部47fが複数のボルト48でベース板41(従ってベース体40)の内周端部に重合、固着される。
【0044】
回転支持体30とベース体40との間には、回転支持体30のベース体40に対する回転は許容するが回転支持体30の径方向外方側への過度の変形を抑制する変形抑制機構Hが、軸受45よりも径方向外方側(より具体的には回転支持体30・ベース体40の前後左右の四隅部分)配設される。変形抑制機構Hは、ベース体40に固設される第1フックF1と、第1フックF1に対応(即ち係合可能と)して回転支持体30に固設される第2フックF2とを有しており、特に第1実施形態では第2フックF2が第1フックF1よりも径方向で外方側となるように配置される。
【0045】
而して第1,第2フックF1,F2は、平時は相互間に隙間が設定されているが、車両衝突時等において回転支持体30が径方向外方側へ過度に変形、移動しようとする場合には、両フックF1,F2の先端鉤部が互いに係合することで過度の変形、移動を規制できるように構成される。
【0046】
また、回転支持体30とベース体40との間には、回転支持体30(従ってシート本体S)を複数の回転位置の1つに選択的にロック可能なロック機構Lと、ロック機構Lにより回転支持体30が回転位置をロックされた状態で回転支持体30のがたつきを抑制するガタ抑制機構Gと、そのガタ抑制機構Gのガタ抑制機能を通常は有効に発揮可能とするが、ロック機構Lが回転支持体30の回転位置をロック解除するのに応じて上記ガタ抑制機能を一時無効化するようにガタ抑制機構Gをロック機構Lに連動させる連動機構Iとが介装される。次にこれら機構L,G,Iの具体的な一例を順に説明する。
【0047】
ロック機構Lは、回転支持体30の前部に中間部が回動操作可能に軸支51pされたベルクランク状のロックレバー51と、ロックレバー51の先部腕51aの先端部を連動機構Iの後述する連動部材60に枢支連結するリンク部材52と、ロックレバー51及び回転支持体30間に張設されてロックレバー51をロック方向(
図3,4で時計回り)に付勢するロックばね53と、回転支持体30の短円筒状をなす中間起立壁30wに設けたロック孔32と、前記保持プレート47の外周起立壁47wに設けたロック孔42と、ロックレバー51の先部腕51aに突設されてロック孔32,42に係脱可能なロック爪54とを備える。ロックレバー51の基部腕51bは、シート座部Sbの前部下方より前方に張り出して、乗員が手動操作可能な操作レバーとして機能する。
【0048】
ロック孔32は、ロック爪54に対応してロックレバー51の周辺に1つだけ配置されるが、ロック孔42は、ロック機構Lでロックすべきシート本体Sの複数の回転位置に対応して複数配置される。例えば、図示例ではシート本体Sの回転位置を、2つの回転位置、即ちシート本体Sが前方を向く正面回転位置とそこから180度位相をずらして後方を向く背面回転位置との2段階に選択可能としている関係で、
図2,
図3で明らかなように、ロック孔42が保持フレーム47の前部と後部とにおいて、180度位相をずらした位置に設定される。
【0049】
而して、ロック機構Lは、ロックレバー51の非操作時には
図3,
図5に示すロック作動状態となってロック爪54がロック孔32,42に係合することで回転支持体30、従ってシート本体Sの回転位置がロックされる。またロックレバー51のロック解除操作時には
図4,
図6に示すロック解除状態となってロック爪54がロック孔32,42より係合離脱し、これによりに回転支持体30、従ってシート本体Sの回転が許容されるので、シート本体Sの回転位置を任意に変更可能となる。
【0050】
また前記連動機構Iは、ロック機構Lとガタ抑制機構Gとを連動させる連動部材60を主要部とする。実施形態の連動部材60は、径方向で変形抑制機構Hと軸受45との間を通る円環状に形成されて回転支持体30に相対回動可能に支持される連動部材本体61と、連動部材本体61に一体に形成されてロック機構Lのロック解除操作に応じてガタ抑制機構Gの後述するガタ抑制部材70に駆動力を付与する駆動部62とを一体に備える。
【0051】
而して、連動部材60は、これがロックレバー51とリンク部材52を介して連係することで、ロック機構Lのロック・ロック解除に応じて回転支持体30の中間起立壁30w回りに所定の小ストロークだけ回動可能である。
【0052】
次に
図8~
図11も併せて参照して、回転支持体30の回転位置がロック機構Lによりロックされた状態で回転支持体30のがたつきを抑制するガタ抑制機構Gの一例を説明する。ガタ抑制機構Gは、ベース体40と回転支持体30とに緊密に接触して上記がたつきを抑制するガタ抑制部材70を主要部品とするもので、特に第1実施形態ではガタ抑制部材70が、径方向で変形抑制機構Hと軸受45との間に配置される。
【0053】
そして、ガタ抑制部材70は、ベース体40に設けた第1受け部81及び回転支持体30に設けた第2受け部82の相互間に押込み・圧接可能な主体部71と、ロック解除の際に主体部71を第1,第2受け部81,82への押込方向とは逆方向に駆動してガタ抑制部材70を無効とする駆動力を連動部材60より受ける被動部72とを一体に結合して構成される。本実施形態の主体部71及び被動部72は、それらが回転支持体30に連動して回転する方向(実施形態では径方向)に対し直交する方向に互いに並列配置される。
【0054】
また
図7で明らかなように、本実施形態の第1受け部81は、横断面L字状に形成され且つ第1フックF1より径方向内方側でベース板41(従ってベース体40)に立設、固定される一方、第2受け部82が横断面L字状に形成され且つ第1受け部81の下側となるよう回転支持体30に固定され、それら第1,第2受け部81,82間に主体部71を上下方向に挟持可能である。また第1受け部81は、これの背面が第1フックF1に支持されて、第1フックF1で補強される。
【0055】
しかも第1,第2受け部81,82は、その両受け部81,82の相互間にガタ抑制部材70の主体部71が押込み・圧接される際に主体部71を上下方向に挟持するように、上下方向で相対向して配置される。
【0056】
またガタ抑制部材70の被動部72の受け面72fは、回転支持体30の周方向で連動部材60の駆動部62に向かって下側に傾斜した第1斜面として機能し、その第1斜面(受け面72f)に摺動可能に係合させる駆動部62の押込面たる前面62fは、受け面72fと同一の傾斜角で被動部72に向かって上側に傾斜した斜面に形成される。
【0057】
また第1,第2受け部81,82のうち下側の第2受け部82に圧接可能な、主体部71の下側の圧接面71f2は、周方向で下側の第2受け部82に向かって上側に傾斜した第2斜面として機能し、その第2斜面(圧接面71f2)に摺動可能に圧接させる下側の第2受け部82の受圧面82fは、圧接面71f2と同一の傾斜角度で主体部71に向かって下側に傾斜した斜面に形成される。
【0058】
さらに上側の第1受け部81の受圧面81fと、これに圧接させるべき主体部71の上側の圧接面71f1は、何れも水平面に形成される。
【0059】
而して、主体部71は、上側の水平な圧接面71f1と下側の上り勾配の圧接面71f2とに挟まれた先細りの楔状に形成され、これがばね76の弾発力を受けて第1,第2受け部81,82の受け部81f,82f間に楔状に押し込まれると、両受け部81f,82fに両圧接面71f1,71f2が緊密に圧接して回転支持体30(従ってシート本体S)のガタ抑制機能を発揮可能となる。
【0060】
また連動部材60の連動部材本体61は、下側が開放した横断面コ字状に形成され、これの水平な天井壁部分において、回転支持体30の周方向に延びる1条又は径方向に並ぶ複数条のスリット61sが形成される。それらスリット61sは、前記駆動部62に対し周方向に隣接配置され、各々のスリット61sには、連動部材本体61内に嵌合した前記被動部72の上部72aがそれぞれ周方向に摺動可能に嵌合される。
【0061】
また、ガタ抑制機構Gは、これの前記主体部71を第1,第2受け部81,82の相互間に押込み・圧接可能な弾発力をガタ抑制部材70に付与するばね76と、ばね76の基端を回転支持体30に支持させるばね支持部材77とを備える。ばね76の先部は、主体部71に設けた窪みに嵌合し、その窪みの内端にばね76の先端が係合する。ばね76及びばね支持部材77は、それらと変形抑制機構Hとの相互干渉を回避可能な位置に配設される。
【0062】
また、ばね支持部材77は、回転支持体30の中間起立壁30wに固定(実施形態ではクリップ止め)される縦壁部77vと、縦壁部77vの外側面に一体に連設される横壁部77hとを有しており、横壁部77hの水平な上面は、連動部材本体61を相対回転摺動可能に支持する連動部材受け部77haを一体に有する。
【0063】
ところで第1実施形態では、ガタ抑制部材70が回転支持体30の前後左右の四隅部分に(従って周方向で間隔をおいて)それぞれ、従って都合4個が配設される。従って、その4個のガタ抑制部材70に対応して4個のばね支持部材77が、回転支持体30の前後左右の四隅部分に(従って周方向で間隔をおいて)にそれぞれ固定される。
【0064】
次に第1実施形態の作用を説明する。
【0065】
図2,3,5は、ロック機構Lがシート本体Sを前向きの回転位置にロックした状態を示しており、この状態では、ロックレバー51のロック爪54が回転支持体30及びベース体40(保持プレート47)の各ロック孔32,42に係合して、シート本体Sの回転を規制している。このとき、
図10で明らかなように、ガタ抑制機構Gのガタ抑制部材70は、これの被動部72が連動部材60の駆動部62から非係合(即ちフリーの)状態にあり、従って、先細り状の主体部71は、ばね76の弾発力を受けて第1,第2受け部81,82の受け面81f,82f間に楔状に食い込むように押し込まれ、その両受け面81f,82fに主体部71の圧接面71f1,71f2に圧接することで、回転支持体30、延いてはシート本体Sのがたつきが抑制される。
【0066】
上記したロック状態より
図4,6に示すように、ロックレバー51がロックばね53の弾発力に抗してロック解除操作されると、ロック爪54が回転支持体30及びベース体40の各ロック孔32,42より離脱すると共に、ロックレバー51に連動して連動部材60が回転支持体30に対し
図4で時計方向に少し回動する。この回動によれば、
図11で明らかなように、ガタ抑制部材70は、被動部72が連動部材60の駆動部62から押し込まれて、ばね76の弾発力に抗して後退(
図11で左動)し、それと共に主体部71も同量後退(
図11で左動)することで、主体部71の圧接面71f1,71f2が第1,第2受け部81,82の受け面81f,82fより離間するよう後退し、かくして、ガタ抑制部材70のガタ抑制機能が一時的に無効化される。
【0067】
従って、このようなロック解除状態でのシート本体Sの任意の回転が許容されるので、乗員はシート本体Sに座ったままシート本体Sを別の回転位置(実施形態では後向きの回転位置)までスムーズに回転操作可能となる。
【0068】
そして、シート本体Sが別の回転位置に到達した後、乗員がロックレバー51の手を放せば、ロックレバー51はロックばね53の弾発力で
図2,3,5に示すロック位置まで自動復帰する。そして、その自動復帰に連動部材60が追従回動することで、ロック爪54が回転支持体30及びベース体40の各ロック孔32,42に再び係合して、シート本体Sの回転を規制する。このとき、ガタ抑制部材70は、これの被動部72が連動部材60の駆動部62から非係合(即ちフリーの)状態にあり、従って、先細り状の主体部71は、ばね76の弾発力を受けて第1,第2受け部81,82の受け面81f,82f間に楔状に食い込むように押し込まれ、その両受け面81f,82fに主体部71の圧接面71f1,71f2に圧接することで、回転支持体30、延いてはシート本体Sのがたつきが再び抑制可能となる。
【0069】
以上説明した第1実施形態によれば、回転支持体30をベース体40上に支持する軸受45よりも径方向外方側で回転支持体30及びベース体40間にに変形抑制機構Hが介設されるシート装置10において、回転支持体30に周方向摺動可能に支持されるガタ抑制部材70は、シート本体Sが所定の回転位置にロックされた状態では、回転支持体30及びベース体40間に緊密に接触して回転支持体30のがたつきを抑制可能であり、また、このガタ抑制部材70は、径方向で変形抑制機構Hと軸受45との間に配置されるため、ガタ抑制部材70の、回転支持体30・ベース体40への接触作用点を、回転支持体30の回転中心から遠ざけることができ、従って、ガタ抑制部材70によるガタ抑制効果を、回転中心からのレバー比の関係で従来装置よりも強力に発揮させることができる。
【0070】
また上記ガタ抑制部材70は、ベース体40側の第1受け部81及び回転支持体30側の第2受け部82の相互間に押込み・圧接可能な主体部71と、主体部71を第1,第2受け部81,82への押込方向とは逆方向に駆動してガタ抑制部材70を無効とする駆動力を連動部材60より受ける被動部72とを一体に結合して構成され、主体部71及び被動部72は、それらが回転支持体30に連動して回転する方向に対し直交する方向(実施形態では径方向)に互いに並列配置される。これにより、ガタ抑制部材70は、がたつき抑制のための主体部71と、ロック解除時に連動部材60より駆動力(ロック解除力)を受ける被動部72とを、それらの回転方向に対し直交する並列させて機能分担させることで、主体部71及び被動部72の各機能に則した最適な設計が可能となるため、ガタ抑制部材70の設計自由度が高められる。
【0071】
また特に主体部71及び被動部72の並列配置方向は、回転支持体30の径方向であるため、主体部71及び被動部72を並列配置しても、ガタ抑制部材70を全体として上下に扁平化でき、従って、回転支持体30とベース体40間の狭小空間にも無理なく配備可能となる。
【0072】
また実施形態の連動部材60は、ロック機構Lのロック解除操作に応じて被動部72に上記駆動力を付与する駆動部62を、径方向で変形抑制機構Hと軸受45との間に有するので、連動部材60の駆動部62をガタ抑制部材70の被動部72に近接した位置に配備可能となる。これにより、ロック解除時には、連動部材60(駆動部62)でガタ抑制部材70(被動部72)を効率よく駆動可能となる。
【0073】
また実施形態では、主体部71を第1,第2受け部81,82の相互間に押込み・圧接可能な弾発力をガタ抑制部材70に付与するばね76と、ばね76の基端を回転支持体30に支持させるばね支持部材77とが、ばね76及びばね支持部材77と変形抑制機構Hとの相互干渉を回避可能な位置に配設される。これにより、ガタ抑制部材70を周方向一方側からばね付勢する構造であっても、そのばね76及びばね支持部材77を、変形抑制機構Hとの干渉を回避しつつ回転支持体30に無理なく支持させることができる。
【0074】
また実施形態の第1,第2受け部81,82は、その両受け部81,82の相互間に主体部71が押込み・圧接される際に主体部71を上下方向に挟持するように、上下方向で相対向して配置され、被動部72の受け面72fは、回転支持体30の周方向で連動部材60の駆動部62に向かって下側に傾斜した第1斜面であり、また第1,第2受け部81,82のうち下側の受け部82に圧接可能な、主体部71の圧接面71f2は、周方向で下側の受け部82に向かって上側に傾斜した第2斜面である。これにより、ロック解除時には連動部材60の駆動部62が被動部72の受け面72f1(即ち第1斜面)を押し下げつつ、主体部71の第1,第2受け部81,82への押込方向(即ちばね76の付勢方向)とは逆方向に駆動する。この駆動により、ガタ抑制部材70の主体部71の圧接面72f(即ち第2斜面)は、下側の受け部82を下降しながら摺動するので、主体部71の、上側の受け部81との圧接状態を迅速容易に解消でき、従って、ガタ抑制部材70は、これの一時的な無効状態への作動切換えがスムーズになされる。
【0075】
さらに実施形態の連動部材60は、径方向で変形抑制機構Hと軸受45との間を通る円環状に形成されて回転支持体30に相対回動可能に支持され、連動部材60には、回転支持体30の周方向に延びる1条又は径方向に並ぶ複数条のスリット61sが形成されると共に、スリット61sに被動部72の上部72aが周方向に摺動可能に嵌合される。これにより、回転支持体30が一時的なロック解除状態から再び所定の回転位置にロックされて、ガタ抑制部材70の主体部71が第1,第2受け部81,82間に押込み・圧接される際に、被動部72は、これの上部72aが上記スリット61sに摺動、嵌合することで、横振れが効果的に抑えられるため、ガタ抑制部材70は、安定姿勢を保ちながら、主体部71を第1,第2受け部81,82に的確に圧接させることができる。
【0076】
その上、実施形態では、複数のガタ抑制部材70が回転支持体30の四隅に(即ち周方向で間隔をおいて)配設されると共に、それらガタ抑制部材70に対応した複数のばね支持部材77も同様に回転支持体30の四隅に固定され、ばね支持部材77は、円環状の連動部材60を相対回動可能に支持する連動部材受け部77haを有する。これにより、ばね支持部材77を、円環状の連動部材60に対する支持手段に兼用できるため、装置の構造簡素化に寄与することができる。
【0077】
また実施形態の変形抑制機構Hは、回転支持体30に固定の第2フックF2がベース体40に固定の第1フックF1よりも径方向で外方側となるように配置され、第1受け部81が、第1フックF1より径方向内方側でベース体40に固定される一方、第2受け部82が第1受け部81の下側となるよう回転支持体30に固定され、それら第1,第2受け部81,82間に主体部71を上下方向に挟持可能である。これにより、ガタ抑制部材70の全部を、径方向で軸受45と変形抑制機構Hとの間に配備しても、その間の狭小な空間において第1,第2受け部81,82の有効受け面を径方向に十分幅広に確保可能となり、がたつき抑制効果を高めることができる。
【0078】
しかも第1受け部81は、これの背面が第1フックF1に支持されるので、第1フックF1を、第1受け部81に対する補強支持手段に兼用でき、従って、装置の構造簡素化を図ると共に、第1受け部81の支持剛性を高めることができる。
【0079】
次に
図12~
図18を参照して、第2実施形態の特徴部分を説明する。第2実施形態では、ガタ抑制機構Gの主要部品であるガタ抑制部材70が、径方向で変形抑制機構Hと軸受45との間と、変形抑制機構Hの内部とに跨がって配置される。
【0080】
また変形抑制機構Hは、第1実施形態と同様、第1受け部81を一体に有してベース体40に固設される第1フックF1と、第2受け部82を一体に有して回転支持体30に固設される第2フックF2とを備えるが、第2実施形態では、
図14で明らかなように、第1フックF1が第2フックF2よりも径方向で外方側となり且つ第1受け部81よりも第2受け部82が下側となるように配置されている。
【0081】
ガタ抑制部材70は、これの主体部71が第1,第2フックF1,F2間に配置されると共に、被動部72が第2フックF2と軸受45間に配置され、主体部71は、第1,第2受け部81,82間に上下方向に挟持可能である。
【0082】
そして、この第2実施形態のガタ抑制部材70は、主体部71と被動部72とが、径方向に互いに離間して並列配置されていて、その相互間が接続部73を介して一体に結合される。その接続部73は、変形抑制機構Hの、周方向で外側に延出して変形抑制機構Hとの相互干渉を回避可能な位置に配置される。
【0083】
またガタ抑制部材70を第1,第2受け部81,82間に押し込む弾発力を発揮するばね76は、これの基端がばね支持部材77に支持され、またばね76の先部は被動部72の背面側(即ち駆動部62と反対側)に係合する。即ち、ばね76の先部は、被動部72の背面に設けた窪み(凹孔)に嵌合し、その窪みの内端にばね76の先端が係合する。尚、ばね支持部材77は、第1実施形態と同様、回転支持体30の中間起立壁30wに固定(例えばクリップ止め)される。
【0084】
また連動部材60の連動部材本体61は、大部分が上下に扁平な円形リング板状に構成されるが、その一部(即ち被動部72を摺動可能に嵌合させる部分とその周辺部)は、下側に開放した横断面コ字状に形成(
図14,
図17,
図18を参照)される。また連動部材本体61は、上記したコ字状部61cの天井壁部に、第1実施形態のようなスリット61sは設けられていない。
【0085】
第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と基本的に同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。
【0086】
特に第2実施形態によれば、変形抑制機構Hは、第1受け部81を一体に有してベース体40に固設される第1フックF1と、第2受け部82を一体に有して回転支持体30に固設される第2フックF2とを備えると共に、第1フックF1が第2フックF2よりも径方向で外方側となり且つ第1受け部81よりも第2受け部82が下側となるように配置され、ガタ抑制部材70は、これの主体部71が第1,第2フックF1,F2間に配置されると共に被動部72が第2フックF2と軸受45間に配置され、第1,第2受け部81,82間に主体部71を上下方向に挟持可能である。これにより、第1,第2フックF1,F2が第1,第2受け部81,82に各々兼用されることとなって、装置の構造簡素化が図られ、また第1,第2フックF1,F2間のデッドスペースを、ガタ抑制部材70の一部(主体部71)の設置空間に有効活用可能となるから、それだけ装置のコンパクト化に寄与することができる。
【0087】
また第2実施形態の主体部71と被動部72とは、変形抑制機構Hの、周方向で外側に延出して変形抑制機構Hとの相互干渉を回避可能な接続部73を介して一体に結合されるので、ガタ抑制部材70(主体部71・被動部72)が変形抑制機構Hの内外に跨がる配置となっても、その内外の主体部71・被動部72間を、変形抑制機構Hとの干渉を回避しつつ上記接続部73で支障なく一体に結合可能となる。
【0088】
第2実施形態のその他の作用効果は、第1実施形態の作用効果と同様であるので、それ以上の説明は省略する。 0 以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0089】
例えば、前記実施形態では、シート本体Sの回転位置を、2つの回転位置、即ちシート本体Sが前方を向く正面回転位置とそこから180度位相をずらして後方を向く背面回転位置との2段階に選択可能としたものを示したが、シート本体Sの任意選定可能な回転位置は、実施形態及び参考実施形態に限定されない。即ち、その回転位置は、変更設定してもよいし、或いは3以上設定してもよく、その場合は、その設定される回転位置に応じてベース体40側のロック孔42の開口位置を変更するか、或いは増設すればよい。
【符号の説明】
【0090】
F1,F2・・第1,第2フック
H・・・・・変形抑制機構
L・・・・・ロック機構
S・・・・・シート本体
10・・・・シート装置
16・・・・フロア部
30・・・・回転支持体
40・・・・ベース体
45・・・・軸受
60・・・・連動部材
61s・・・スリット
62・・・・駆動部
76・・・・ばね
77・・・・ばね支持部材
77ha・・・連動部材受け部
70・・・・ガタ抑制部材
71・・・・主体部
71f2・・第2斜面としての圧接面
72・・・・被動部
72f・・・第1斜面としての受け面
72a・・・被動部の上部
73・・・・接続部
81,82・・第1,第2受け部