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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098029
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220624BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q11/00
A61K31/555
A61P1/02
A61K47/22
A61K47/18
A61K9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211342
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】水津 拓
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA08
4C076BB22
4C076CC09
4C076DD18
4C076DD19
4C076DD34
4C076DD38
4C076DD52
4C076EE23
4C076FF36
4C076FF63
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC422
4C083AC662
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC931
4C083AC932
4C083BB06
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD28
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE33
4C083EE34
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB04
4C086HA28
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA57
4C086NA03
4C086ZA67
(57)【要約】
【課題】銅クロロフィリンナトリウムの経時安定性が良好である口腔用組成物の提供。
【解決手段】銅クロロフィリンナトリウム及びカチオン性界面活性剤を含有する、口腔用組成物であり、前記組成物中、前記銅クロロフィリンナトリウム及び前記カチオン性界面活性剤の含有質量比が、70:1~1:30であり、前記組成物中、水の含有量が5質量%以下である、口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅クロロフィリンナトリウム及びカチオン性界面活性剤を含有する、口腔用組成物であり、
前記組成物中、前記銅クロロフィリンナトリウム及び前記カチオン性界面活性剤の含有質量比が、70:1~1:30であり、
前記組成物中、水の含有量が5質量%以下である、口腔用組成物。
【請求項2】
非水系組成物である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記組成物中、前記カチオン性界面活性剤の含有量が、0.001~0.5質量%である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記組成物中、前記銅クロロフィリンナトリウムの含有量が、0.5質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
前記カチオン性界面活性剤が、第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤及び/又はアミノ酸系カチオン性界面活性剤である、請求項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔用組成物等に関する。より詳細には非水系口腔用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
銅クロロフィリンナトリウムは歯肉炎予防や口臭予防効果を有する成分である。しかし、吸湿性があり、吸湿した状態での長期保存においては変質することが知られており、水存在下で不安定な点が、製剤開発において課題とされている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-041622号公報
【特許文献2】特開2017-214307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、銅クロロフィリンナトリウムの経時安定性が良好である口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、銅クロロフィリンナトリウムを口腔用組成物に安定に配合するためには、組成物中の水の含有量が少ないことが好ましいと考え、検討した。しかしながら、組成物中の水の含有量が少ない場合であっても、銅クロロフィリンナトリウムが経時的に減少してしまうことが分かった。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、銅クロロフィリンナトリウムとカチオン性界面活性剤を併用することによって、銅クロロフィリンナトリウムの経時安定性が向上する可能性があることを見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
銅クロロフィリンナトリウム及びカチオン性界面活性剤を含有する、口腔用組成物であり、
前記組成物中、前記銅クロロフィリンナトリウム及び前記カチオン性界面活性剤の含有質量比が、70:1~1:30であり、
前記組成物中、水の含有量が5質量%以下である、口腔用組成物。
項2.
非水系組成物である、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
前記組成物中、前記カチオン性界面活性剤の含有量が、0.001~0.5質量%である、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
前記組成物中、前記銅クロロフィリンナトリウムの含有量が、0.5質量%以下である、項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5.
前記カチオン性界面活性剤が、第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤及び/又はアミノ酸系カチオン性界面活性剤である、項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0008】
銅クロロフィリンナトリウムの経時安定性が良好な口腔用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、銅クロロフィリンナトリウム、及びカチオン性界面活性剤を含有する、口腔用組成物を包含する。本明細書において、当該口腔用組成物を、「本開示の口腔用組成物」と表記することがある。
【0010】
本開示に用いられるカチオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤、アミノ酸系カチオン性界面活性剤等が例示される。カチオン性界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を構成する第四級アンモニウム塩としては、例えば、アルキルピリジニウム塩、ベンゼトニウム塩、ベンザルコニウム塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。塩としては、例えば、塩化物塩、臭化物塩等が挙げられる。
アルキルピリジニウム塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、又はジアルキルジメチルアンモニウム塩におけるアルキル基としては、炭素数が8~22のアルキル基が例示される。炭素数の上限又は下限は、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21であってもよい。より具体的には、例えば、9~21であってもよい。
第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ラウリルベンジルジメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。中でも、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが好ましい。
【0012】
アミノ酸系カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノ-N-長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステル塩などが挙げられる。アミノ酸系カチオン性界面活性剤を構成する塩基性アミノ酸としては、例えば、オルニチン、リシン、アルギニン等の天然アミノ酸などが挙げられる。また、α,γ-ジアミノ酪酸のような合成アミノ酸を用いることもできる。これらは光学活性体であってもよく、ラセミ体であってもよい。
モノ-N-長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステル塩のアシル基としては、炭素数が8~22の飽和または不飽和の高級脂肪酸残基であることが好ましい。炭素数の上限又は下限は、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21であってもよい。より具体的には、例えば、9~21であってもよい。例えば、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基等の単一高級脂肪酸残基;ヤシ油脂肪酸残基、牛脂高級脂肪酸残基等の天然の混合高級脂肪酸残基等が挙げられる。
低級アルキルエステルとしては、炭素数1~8のアルキルエステルが例示される。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル等が挙げられる。低級アルキルエステルは、塩の形が好ましく、具体的には、塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩類;グリコール酸塩、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、酸性アミノ酸塩、高級脂肪酸塩、L-またはDL-ピロリドンカルボン酸塩、ピログルタミン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩等が例示される。中でも、塩酸塩、L-またはDL-ピロリドンカルボン酸塩、酸性アミノ酸塩が好ましい。
アミノ酸系カチオン性界面活性剤としては、例えば、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。
【0013】
本開示の口腔用組成物中、銅クロロフィリンナトリウム及びカチオン性界面活性剤の含有質量比は、例えば70:1~1:30程度とすることができる。当該範囲の上限又は下限は、例えば、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、5:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:4、1:6、1:8、1:10、1:15、1:20、又は1:25程度であってもよい。具体的には、例えば、60:1~1:25程度であってもよい。
【0014】
本開示の口腔用組成物中、銅クロロフィリンナトリウムの含有量は、例えば、0.5質量%以下程度とすることができる。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0.001、0.003、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、0.2、0.22、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.35、0.4、又は0.45質量%程度であってもよい。具体的には、例えば、0.001~0.45質量%程度であってもよい。
【0015】
本開示の口腔用組成物中、カチオン性界面活性剤の含有量は、例えば、0.001~0.5質量%程度とすることができる。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0.002、0.003、0.004、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、0.2、0.22、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.35、0.4、又は0.45質量%程度であってもよい。具体的には、例えば、0.002~0.45質量%程度であってもよい。なお、本開示の口腔用組成物中、カチオン性界面活性剤が2種以上含まれる場合には、カチオン性界面活性剤の総量を上記範囲とすることができる。
【0016】
本開示の口腔用組成物は、銅クロロフィリンナトリウムの経時安定性が損なわれない範囲で、水を含んでいてもよい。具体的には、例えば、水の含有量は5質量%以下程度であることが好ましい。当該水の含有量の範囲の上限は、4、3、2、1、又は0.5質量%程度であってもよい。また、本開示の口腔用組成物は、水を含まない組成物(すなわち、非水系組成物)であることがより好ましい。ただし、不可避的不純物として除去困難な量の水が当該組成物に含まれる場合については、本明細書における「非水系組成物」に包含される。
【0017】
本開示の口腔用組成物は、上述した成分を含み、さらに口腔用組成物に配合することができる公知の成分を含むことができる。当該公知の成分としては、例えば、炭化水素油、多価アルコール、カチオン性界面活性剤以外の界面活性剤、研磨剤、湿潤剤、発泡剤、香料、活性剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、安定化剤、矯味剤、収れん剤、増粘剤、他の薬効剤等が挙げられる。なお、このような公知の成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
炭化水素油としては、パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、セレシン、リモネン、テレビン油等が例示される。中でも、スクワラン、パラフィンが好ましく、パラフィンがより好ましい。
スクワランとしては、動物性スクワラン及び植物性スクワランのどちらも用いることができ、例えばサメスクワラン、オリーブスクワラン等を好ましく用いることができる。
パラフィンとしては、流動パラフィンが好ましく、軽質流動パラフィンがより好ましい。本明細書において、軽質流動パラフィンとは、比重が、0.830~0.870であり、粘度が、37mm/s未満のものを言う。粘度は、第十七改正日本薬局方の記載に従って、毛細管粘度計法により算出される。軽質流動パラフィンの動粘度としては、例えば、45mm/s未満程度とすることができる。
炭化水素油は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
多価アルコールとしては、グリセリン、プロパンジオール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が例示される。
プロパンジオールとしては、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)及び1,3-プロパンジオールのいずれも好ましく用いることができる。
ブチレングリコールとしては、1,3-ブチレングリコールが好ましい。
ポリエチレングリコールとしては、エチレンオキシドユニット(EO)の平均付加モル数が4~20(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)であることが好ましい。
中でも、多価アルコールとしては、グリセリンが好ましい。
多価アルコールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等が例示される。中でも、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステルやマルトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル;マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートやポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ラウリン酸ジエタノールアミドのような脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ラウリルグルコシド、デシルグルコシドなどのアルキルグルコシド;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。
【0022】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、炭素数が8~24の飽和又は不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのエステルが例示される。炭素数の上限又は下限は、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、又は23であってもよい。より具体的には、例えば、9~23であってもよい。
脂肪酸は飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、当該脂肪酸は、直鎖脂肪酸であっても、分岐脂肪酸であってもよい。当該脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、イソカプリン酸、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソパルミトレイン酸、イソマルガリン酸、イソオレイン酸、イソリノール酸、イソベヘン酸等が例示される。中でも、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸が好ましい。また、これらの脂肪酸を含む、ヤシ油脂肪酸及びパーム油脂肪酸といった天然の脂肪酸を用いてもよい。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、前記脂肪酸と、ポリグリセリンとの、モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、又はシクロエステル化合物が好ましく、モノ、ジ、又はトリエステル化合物がより好ましい。
ポリグリセリンは、平均4~12のグリセリン単位を含むことが好ましい。グリセリン単位の上限又は下限は、例えば、5、6、7、8、9、10、又は11であってもよい。より具体的には、例えば、5~11であってもよい。
好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとして、例えば、カプリン酸ポリグリセリル-n、ラウリン酸ポリグリセリル-n、ミリスチン酸ポリグリセリル-n、ステアリン酸ポリグリセリル-n、オレイン酸ポリグリセリル-n、ジミリスチン酸ポリグリセリル-n、ジステアリン酸ポリグリセリル-n、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-n、トリラウリン酸ポリグリセリル-n、トリミリスチン酸ポリグリセリル-n(nはグリセリン単位数を表す)等が挙げられる。より好適には、ミリスチン酸ポリグリセリル-nである。
【0023】
本開示の口腔用組成物の形態は、特に限定されないが、例えば、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、塗布剤等の形態(剤形)にすることができる。
本開示の口腔用組成物は、例えば、医薬品、医薬部外品としても用いることができる。また、本開示の口腔用組成物は、例えば、口腔用組成物用担体としても用いることができる。
【0024】
本開示の口腔用組成物は、銅クロロフィリンナトリウム、及びカチオン性界面活性剤と、必要に応じて他の成分とを組み合わせて常法により調製することができる。
【0025】
経時安定性は、後述する実施例に示すように、銅クロロフィリンナトリウム量の経時的な変化を、吸光度(405nm)により確認することで評価することができる。例えば、本開示の口腔用組成物は、3週間5℃放置品の吸光度に対する3週間55℃放置品の吸光度の割合(%)が90%以上程度であることが好ましい。当該範囲の下限は、例えば、91、92、93、94、又は95%程度であってもよい。
【0026】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0027】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0028】
本開示の内容を以下の実施例等を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を意味する。また、各表に記載される各成分の配合量値も特に断らない限り「質量%」を示す。
【0029】
組成物調製
下記の表1に示す処方に従って、組成物を調製し、40gずつハミガキチューブに充填し、5℃及び加速条件として55℃環境下に1又は3週間放置した。なお、表1に記載のセラム中、各成分の含有量は、グリセリン35質量%、ミリスチン酸ポリグリセリル-10 5質量%、軽質流動パラフィン 60質量%であった。なお、軽質流動パラフィンは、動粘度が12.56 mm2/s (40℃)、密度(比重)が0.843のものを用いた。当該動粘度、密度から算出される軽質流動パラフィンの粘度は、10.59 mm2/sであった。
【0030】
【表1】
【0031】
紫外可視吸光度測定用試料の調製
実施例1~4及び7(5℃、55℃)放置品については、以下の手順に従って測定用試料を調製した。
検体1gにイソプロパノール/メタノール(9:1)混合液30mLを添加し、30分間強く振盪した。振盪後の溶液にイソプロパノール/メタノール(9:1)混合液を加え、全量を100mLとし、測定用試料とした。
実施例5、6及び8、比較例1及び2(5℃、55℃)放置品については、以下の手順に従って測定用試料を調製した。
検体2gにイソプロパノール/メタノール(9:1)混合液10mLを添加し、30分間強く振盪した。振盪後の溶液にイソプロパノール/メタノール(9:1)混合液を加え、全量を25mLとし、測定用試料とした。
【0032】
紫外可視吸光度測定
イソプロパノール/メタノール(9:1)混合液を対照液とし、吸光度(405nm)を測定した。1週間5℃放置品の吸光度に対する1週間55℃放置品の吸光度の割合(%)、及び3週間5℃放置品の吸光度に対する3週間55℃放置品の吸光度の割合(%)を算出し、銅クロロフィリンナトリウムの安定性を評価した。結果を、表1にあわせて示す。
【0033】
表1に示す通り、実施例1~8においては、1週間目及び3週間目のいずれにおいても5℃放置品の吸光度に対する55℃放置品の吸光度の割合が90%以上であり、銅クロロフィリンナトリウムの経時安定性が良好であることが分かった。
【0034】
組成物調製
下記の表2に示す処方に従って、組成物を調製し、実施例5等と同様の方法により、銅クロロフィリンナトリウムの安定性を評価した。なお、表2に記載のセラム中、各成分の含有量は、グリセリン35質量%、ミリスチン酸ポリグリセリル-10 5質量%、軽質流動パラフィン 60質量%であった。
結果を、表2にあわせて示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示す通り、塩化セチルピリジニウムに代えて、塩化ベンザルコニウム又はN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩を用いた場合には(実施例9、10)、1週間目及び3週間目のいずれにおいても5℃放置品の吸光度に対する55℃放置品の吸光度の割合が90%以上であり、銅クロロフィリンナトリウムの経時安定性が良好であることが分かった。