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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098270
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】液体化粧料組成物及びシート状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20220624BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220624BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/44
A61Q19/00
A61K8/02
A61Q15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211707
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩一郎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB432
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC531
4C083AC532
4C083AD152
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC02
4C083CC17
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】シリカの凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、使用後の肌のさらさら感、使用後の肌のべたつきのなさ、及び使用後の肌のかさつきのなさに優れる液体化粧料組成物及びシート状化粧料の提供。
【解決手段】(A)メントール系清涼剤を0.5質量%以上と、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(C)エデト酸及びその塩の少なくともいずれかと、(D)シリカと、を含有し、前記(C)成分の含有量と前記(B)成分の含有量との質量比[(C)/(B)]が、0.5~10である液体化粧料組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メントール系清涼剤を0.5質量%以上と、
(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(C)エデト酸及びその塩の少なくともいずれかと、
(D)シリカと、を含有し、
前記(C)成分の含有量と前記(B)成分の含有量との質量比[(C)/(B)]が、0.5~10であることを特徴とする液体化粧料組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が、0.1質量%~0.3質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.3質量%~0.5質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、0.1質量%~1.5質量%である請求項1に記載の液体化粧料組成物。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載の液体化粧料組成物をシート状基剤に含侵させたことを特徴とするシート状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体化粧料組成物及びシート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の猛暑により高い清涼感を有する制汗用のシート状化粧料が求められている。しかし、メントール系清涼剤を0.5質量%以上配合したシート状化粧料では感触付与剤であるシリカが凝集してしまうという課題があった。
【0003】
従来、シリカ等の親水性無機粉体及び0.5質量%以上のメントール系清涼剤に、更に界面活性剤として特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含侵させることで、シリカの凝集を抑制したシート状化粧料が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案のシート状化粧料では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることで、含浸液が乾く際にべたつきを感じ、使用直後の使用感が低下してしまうという課題があった。
【0004】
したがって、シリカの凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、使用後の肌のさらさら感、使用後の肌のべたつきのなさ、及び使用後の肌のかさつきのなさに優れ、シート状化粧料に好適に用いることができる液体化粧料組成物として、未だ満足できるものは提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-158429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、シリカの凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、使用後の肌のさらさら感、使用後の肌のべたつきのなさ、及び使用後の肌のかさつきのなさに優れる液体化粧料組成物及びシート状化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、(A)メントール系清涼剤を0.5質量%以上と、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(C)エデト酸及びその塩の少なくともいずれかと、(D)シリカと、を含有し、前記(C)成分の含有量と前記(B)成分の含有量との質量比[(C)/(B)]を0.5~10とすることにより、液体化粧料組成物におけるメントール系清涼剤の含有量を0.5質量%以上とした場合でもシリカの凝集を抑制することができ、更に、肌への刺激がなく、清涼感、使用後の肌のさらさら感、使用後の肌のべたつきのなさ、及び使用後の肌のかさつきのなさに優れることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> (A)メントール系清涼剤を0.5質量%以上と、
(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(C)エデト酸及びその塩の少なくともいずれかと、
(D)シリカと、を含有し、
前記(C)成分の含有量と前記(B)成分の含有量との質量比[(C)/(B)]が、0.5~10であることを特徴とする液体化粧料組成物である。
<2> 前記(B)成分の含有量が、0.1質量%~0.3質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.3質量%~0.5質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、0.1質量%~1.5質量%である前記<1>に記載の液体化粧料組成物である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体化粧料組成物をシート状基剤に含侵させたことを特徴とするシート状化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、シリカの凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、使用後の肌のさらさら感、使用後の肌のべたつきのなさ、及び使用後の肌のかさつきのなさに優れる液体化粧料組成物及びシート状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(液体化粧料組成物)
本発明の液体化粧料組成物は、(A)メントール系清涼剤と、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(C)エデト酸及びその塩の少なくともいずれかと、(D)シリカと、を含有し、必要に応じて更にその他の成分を含有する。
【0011】
<(A)メントール系清涼剤>
前記(A)成分としてのメントール系清涼剤は、主に、清涼感を付与するために含有される。
【0012】
前記(A)成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メントール、メントール誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記メントールとしては、例えば、L-メントール、DL-メントールなどが挙げられる。
前記メントール誘導体としては、例えば、メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、メンチルピロリドンカルボン酸、メンチルエチルアミノシュウ酸、メントキシプロパンジオールメントールなどが挙げられる。
また、前記(A)成分としては、前記メントール及び前記メントール誘導体から選択される少なくとも1種を含有するハッカ、ペパーミント、スペアミント等の植物や、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等の精油を用いてもよい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記(A)成分としては、シリカの凝集の抑制及び清涼感の点で、メントール、乳酸メンチルが好ましい。
【0013】
前記(A)成分は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(A)成分の市販品としては、例えば、商品名で、l-メントール(高砂香料工業株式会社製)、l-メントール(小川香料株式会社製)、l-メントール(小城製薬株式会社製)、Frescolat(登録商標) ML Cryst.(乳酸メンチル、シムライズ製)、Frescolat(登録商標) ML(乳酸メンチル、シムライズ製)などが挙げられる。
【0014】
前記(A)成分の含有量としては、前記液体化粧料組成物全量に対して0.5質量%以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、清涼感、使用後の肌のさらさら感、肌への刺激のなさ、及びシリカの凝集の抑制の点から、前記液体化粧料組成物全量に対して、0.5質量%~1.2質量%が好ましく、0.7質量%~1.0質量%がより好ましい。前記(A)成分の含有量が、0.5質量%未満であると、清涼感が不十分となる。一方、前記(A)成分の含有量が、0.5質量%以上であると、清涼感が良好であり、1.2質量%以下であると、シリカの凝集の抑制、肌への刺激のなさ、及び使用後の肌のさらさら感が良好である。
【0015】
<(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油>
前記(B)成分としてのエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が65以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、主に、シリカの凝集を抑制し、使用後の肌のさらさら感を付与するために含有される。
【0016】
前記(B)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数としては、65以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、65~100が好ましく、70~100がより好ましい。前記(B)成分のエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が65未満であると、シリカが凝集してしまい、シート状基剤への含侵性が低下する。なお、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が100を超える製品は市場に存在しない。
【0017】
前記(B)成分は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(B)成分の市販品としては、例えば、商品名で、NIKKOL HCO-80(ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL HCO-100(ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ株式会社製)、EMALEX HC-60(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、日本エマルジョン株式会社製)、EMALEX HC-80(ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、日本エマルジョン株式会社製)、EMALEX HC-100(ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油、日本エマルジョン株式会社製)、クレモフォ-ルCO-60(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、BASFジャパン株式会社製)、ユニオックス(登録商標)HC-100(ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油、日油株式会社製)などが挙げられる。なお、前記括弧内の数字は、エチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数を示す。
【0018】
前記(B)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、使用後の肌のさらさら感、使用後の肌のべたつきのなさ、及びシリカの凝集の抑制の点から、前記液体化粧料組成物全量に対して、0.05質量%~1.0質量%が好ましく、0.1質量%~0.3質量%がより好ましい。前記(B)成分の含有量が、0.05質量%以上であると、シリカの凝集の抑制及び使用後の肌のさらさら感が良好であり、1.0質量%以下であると、使用後の肌のべたつきのなさが良好である。
【0019】
<(C)エデト酸及びその塩の少なくともいずれか>
前記(C)成分としてのエデト酸及びその塩の少なくともいずれかは、主に、シリカの凝集を抑制するために含有される。
【0020】
前記(C)成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリカの凝集の抑制の点で、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウムが好ましい。
【0021】
前記(C)成分は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(C)成分の市販品としては、例えば、商品名で、キレスト2A-SD(エデト酸、キレスト株式会社製)、キレスト2B-SD(エデト酸二ナトリウム、キレスト株式会社製)、キレスト2C-SD(エデト酸三ナトリウム、キレスト株式会社製)、キレスト2D-SD(エデト酸四ナトリウム四水塩、キレスト株式会社製)、キレスト2K-SD(エデト酸二カリウム二水塩、キレスト株式会社製)、ディゾルビン(登録商標)Z(エデト酸、アクゾノーベル社製)、ディゾルビン(登録商標)NA2(エデト酸・二ナトリウム塩・二水塩、アクゾノーベル社製)、ディゾルビン(登録商標)NA-X(エデト酸四ナトリウム、アクゾノーベル社製)、クワレットTAA(エデト酸・4H、ナガセケムテックス株式会社製)、クワレットN(エデト酸二ナトリウム二水塩、ナガセケムテックス株式会社製)、EDTA 3Na 2HO(エデト酸三ナトリウム二水塩、ナガセケムテックス株式会社製)、クワレットT(エデト酸四ナトリウム四水塩、ナガセケムテックス株式会社製)、クワレットS1(エデト酸四ナトリウム二水塩、ナガセケムテックス株式会社製)、EDETA(登録商標)BS(エデト酸、BASFジャパン株式会社製)、EDETA(登録商標)ND(エデト酸二ナトリウム、BASFジャパン株式会社製)、EDETA(登録商標)B(エデト酸四ナトリウム、BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0022】
前記(C)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シリカの凝集の抑制及び肌への刺激のなさの点から、前記液体化粧料組成物全量に対して、0.1質量%~0.8質量%が好ましく、0.3質量%~0.5質量%がより好ましい。前記(C)成分の含有量が、0.1質量%以上であると、シリカの凝集の抑制が良好であり、0.8質量%以下であると、肌への刺激のなさが良好である。
【0023】
<質量比[(C)/(B)]>
前記(C)成分の含有量(質量%)と前記(B)成分の含有量(質量%)との質量比[(C)/(B)]は、シリカの凝集の抑制の点から、0.5~10であるが、シリカの凝集の抑制及び使用後の肌のかさつきのなさの点で1.5~5が好ましい。前記質量比[(C)/(B)]が、0.5未満であるとシリカが凝集し、10を超えると、使用後の肌のかさつきが生じる。
【0024】
<(D)シリカ>
前記(D)成分としてのシリカは、主に、さらさら感を付与するために含有される。
【0025】
前記(D)成分の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状シリカ、破砕シリカなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、使用後の肌のさらさら感及びシリカの凝集の抑制の点で、球状シリカが好ましい。
【0026】
前記(D)成分は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(D)成分としての球状シリカの市販品としては、例えば、商品名で、サンスフェアH-121(平均円形度:0.8、AGCエスアイテック株式会社製)、サンスフェアH-122(平均円形度:0.8、AGCエスアイテック株式会社製)、サンスフェアH-201(平均円形度:0.8、AGCエスアイテック株式会社製)、サンスフェアNP-30(平均円形度:0.8、AGCエスアイテック株式会社製)、ゴッドボールB-6C(平均円形度:0.9、鈴木油脂工業株式会社製)、ゴッドボールE-16C(平均円形度:0.9以上、鈴木油脂工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、前記(D)成分としての球状シリカの市販品としては、サンスフェアH-121が好ましい。
前記(D)成分としての非球状シリカの市販品としては、例えば、商品名で、サイリシア730(富士シリシア株式会社製)、サイリシア550(富士シリシア株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、前記(D)成分としての非球状シリカの市販品としては、サイリシア730が好ましい。
【0027】
前記球状シリカの平均円形度は、例えば、球状シリカの粉体粒子の走査型電子顕微鏡写真をもとに、円形度測定装置(本体:島津製作所株式会社製、画像解析ソフトウェア:Win ROOF、三谷商事株式会社製)を用いて画像処理(二値化処理)した後、該処理画像の粉体粒子の面積及び周囲長を測定して下記計算式に基づき円形度を算出し、3個以上の粉体粒子の円形度の平均をとることにより求めることができる。
円形度=4π×二値化処理画像のシリカ粒子の面積/(二値化処理画像のシリカ粒子の周囲長)
【0028】
前記(D)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、使用後の肌のさらさら感及びシリカの凝集の抑制の点から、前記液体化粧料組成物全量に対して、0.01質量%~3.0質量%が好ましく、0.1質量%~1.5質量%がより好ましい。前記(D)成分の含有量が、0.01質量%以上であると、使用後の肌のさらさら感が良好であり、3.0質量%以下であると、シリカの凝集の抑制が良好である。
【0029】
<その他の成分>
前記液体化粧料組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を配合することができる。前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、油脂類、ワックス類、多価アルコール、シリコーン類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、前記(B)成分以外の界面活性剤、高分子化合物、酸化防止剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤、収斂剤、防腐剤、紫外線吸収剤、前記(C)成分以外のキレート剤、前記(D)成分以外の親水性粉体、保湿剤、増粘剤、抗炎症剤、アミノ酸、ビタミン剤、各種植物抽出エキス、殺菌剤、制汗剤、溶剤(エタノール、水等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
-粘度-
前記液体化粧料組成物の25℃における粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体化粧料組成物のシート状基材への含浸性が良好である点で、0.5mPa・s~10mPa・sの範囲内が好ましい。
前記粘度の測定方法としては、公知の測定方法を適宜選択することができ、例えば、BM型粘度計を用い、No.1ローターを使用し、60rpmで1分間の条件で測定することができる。
【0031】
-製造方法-
前記液体化粧料組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の各成分と、更に必要に応じて前記その他の成分、エタノール、及び水(残部)とを混合し、製造する方法などが挙げられる。
前記液体化粧料組成物は、装置を用いて製造してもよい。前記装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、剪断力と全体混合できる複数の攪拌羽根(例えば、プロペラ、タービン、ディスパー等)を備えた攪拌装置などが好ましい。
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体化粧料組成物全量に対して、55質量%~77質量%が好ましく、60質量%~77質量%がより好ましい。
【0032】
-用途-
本発明の液体化粧料組成物は、シリカの凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、さらさら感、清涼感、べたつきのなさ、及び使用後の肌のかさつきのなさに優れることから、例えば、後述する本発明のシート状化粧料に好適に用いることができる。なお、前記液体化粧料組成物は、シート状基材に含浸させずにそのまま使用してもよい。
【0033】
(シート状化粧料)
本発明のシート状化粧料は、液体化粧料組成物をシート状基材に含浸させたものである。
【0034】
<液体化粧料組成物>
前記シート状化粧料における前記液体化粧料組成物は、上記した本発明の液体化粧料組成物である。
【0035】
<シート状基材>
前記シート状基材としては、特に制限はなく、公知のシート状化粧料に用いられているものを適宜選択することができ、例えば、親水性繊維及び疎水性繊維からなるものなどが挙げられる。
【0036】
前記親水性繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、綿、パルプ、麻、レーヨンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、レーヨンが好ましい。
【0037】
前記疎水性繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維;ナイロン等のポリアミド系繊維;ポリアクリロニトリル系繊維;ポリビニルアルコール系繊維;あるいはこれらの繊維の混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記親水性繊維と、前記疎水性繊維との質量比(親水性繊維/疎水性繊維)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50/50~90/10が好ましく、60/40~75/25がより好ましい。
【0039】
前記シート状基材の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特に前記疎水性繊維は、芯鞘型繊維あるいはサイド-バイ-サイド型繊維等の複合繊維などが挙げられる。
前記シート状基材、特に前記疎水性繊維は、芯鞘型複合繊維からなることが好ましく、PE・PP芯鞘型繊維が好ましい。前記PE・PP芯鞘型繊維とは、PP繊維の表面を、PPよりも融点が低いPEで被覆処理した構造である。
【0040】
前記シート状基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯鞘型複合繊維を、好適にはPE・PP芯鞘型繊維をレーヨンでサンドイッチ構造とする積層シート状基材が特に好ましい。
前記積層シート状基材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PE・PP芯鞘繊維(NBF-H)を熱融着によりシート状(不織布)にし、レーヨンのウェブで前記シートを挟みこみ、ウォータージェットで繊維を交絡させることにより得ることができる。
【0041】
前記シート状基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01mm~5mmが好ましく、0.05mm~1mmがより好ましい。
本明細書において、前記シート状基材の厚みは、荷重8g/cmで測定した厚みである。
【0042】
前記シート状基材の坪量(一層当たり)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10g/m~100g/mが好ましく、20g/m~80g/mがより好ましい。
【0043】
前記シート状基材は、適宜製造したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記シート状基材の市販品としては、例えば、以下の(a)~(e)などが挙げられる。
(a)レーヨン/PP・PE芯鞘型繊維/レーヨン=(20g/m)/(20g/m)/(20g/m):(60g/m)(親水性繊維/疎水性繊維=67/33、質量比)(大和紡績株式会社製)
(b)レーヨン/PP/レーヨン=(20g/m)/(20g/m)/(20g/m):(60g/m)(親水性繊維/疎水性繊維=57/43、質量比)(大和紡績株式会社製)
(c)レーヨン/PE・PET芯鞘型繊維/レーヨン=(20g/m)/(20g/m)/(20g/m):(60g/m)(親水性繊維/疎水性繊維=67/33、質量比)(大和紡績株式会社製)
(d)レーヨン/PP・PE芯鞘型繊維=(54g/m)/(6g/m):(60g/m)(親水性繊維/疎水性繊維=90/10、質量比)(大和紡績株式会社製)
(e)レーヨン/PET/親水性PET=(36g/m)/(18g/m)/(6g/m):(60g/m)(親水性繊維/疎水性繊維=60/40、質量比)(大和紡績株式会社製)
【0044】
前記シート状化粧料は、前記液体化粧料組成物を前記シート状基材に含浸させることにより得ることができる。
前記シート状基材に対する前記液体化粧料組成物の含浸倍率(質量比)(液体化粧料組成物/シート状基材)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3~6の範囲が好ましく、3.5~4.5の範囲がより好ましい。
前記液体化粧料組成物を前記シート状基材に含浸させる方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記シート状基材に前記液体化粧料組成物を滴下乃至スプレーする方法、前記シート状基材に前記液体化粧料組成物を塗工する方法、前記シート状基材を前記液体化粧料組成物に浸漬する方法などが挙げられる。
【0045】
-包装体-
前記シート状化粧料は、包装体に収容された状態で保管されることが好ましい。前記包装体としては、特に制限はなく、シート状化粧料に通常用いられるものを適宜選択して使用することができる。
【0046】
-用途-
本発明のシート状化粧料の用途としては、肌を拭き取るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シリカの凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、使用後の肌のさらさら感、使用後の肌のべたつきのなさ、及び使用後の肌のかさつきのなさに優れることから、例えば、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、身体用デオドラントシート、足用拭き取りシート、介護用清拭シート、皮脂拭き取り用シート、眠気覚まし用シートなどに好適に用いることができ、特に、使用後の肌のさらさら感及び肌のさらさら感の持続性に優れる観点から、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、身体用デオドラントシートに好ましく用いることができる。
【実施例0047】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
実施例及び比較例に記載の各成分の含有量は質量%で示し、全て純分換算した値である。また、(C)成分の含有量(質量%)と(B)成分の含有量(質量%)との質量比[(C)/(B)]は、小数点以下第2位を四捨五入し、小数点以下第1位まで求め、記載した。また、共通成分のエタノールは、トレーサブル95 1級(95度、発酵アルコール)(日本アルコール産業株式会社製)を使用し、無水エタノール換算値(無水エタノールに換算した含有量(質量%))を記載した。
【0049】
(実施例1~12及び比較例1~8)
<液体化粧料組成物の製造>
下記表1~表3に示す組成及び含有量で、エタノールに、(A)成分及び(B)成分又は(B)成分の比較成分、エチルパラベン、プロピルパラベン、及び香料を分散又は溶解させた後、(C)成分、クエン酸、水(精製水)、及び1,3-ブチレングリコールを添加し、最後に(D)成分、高重合メチルポリシロキサン、及びタルクを加えて分散させ、実施例1~12及び比較例1~8の液体化粧料組成物を得た。
実施例1~12及び比較例1~8各液体化粧料組成物の25℃における粘度は、0.5mPa・s~10mPa・sの範囲内であった。前記各液体化粧料組成物の粘度は、BM型粘度計を用い、No.1ローターを使用し、60rpmで1分間の条件で測定した。
【0050】
<シート状化粧料の製造>
下記シート状基材(縦:10cm、横:15cm)に、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を含浸させて、シート状化粧料(身体用汗拭きシート)を作製した。
具体的には、下記シート状基材に、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を含浸した後の質量が、液体化粧料組成物を含浸する前のシート状基材の質量の5倍(即ち、含浸倍率(質量比)=(液体化粧料組成物/シート状基材)=4)となるように、下記シート状基材に、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を含浸させた。
-シート状基材-
・ レーヨン/PP・PE芯鞘型繊維/レーヨン=(20g/m)/(20g/m)/(20g/m):(60g/m)(親水性繊維/疎水性繊維=67/33、質量比)(大和紡績株式会社製)
【0051】
実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を用いて作製した各シート状化粧料(身体用汗拭きシート)について、以下に記載の評価方法で、「シリカの凝集」、「使用後の肌のさらさら感」、「清涼感」、「肌への刺激のなさ」、「使用後の肌のべたつきのなさ」、及び「使用後の肌のかさつきのなさ」を評価した。結果を下記表1~表3に示した。
なお、比較例2~5及び7の液体化粧料組成物は、シート状基材に含浸させることができなかったため、「シリカの凝集」以外の評価を行うことができなかった。比較例2~5及び7の「シリカの凝集」以外の評価は「N.D.」として示した。
【0052】
<<シリカの凝集>>
実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物100gを目開き75μmのJIS篩で全量を篩過したときの篩上に残った凝集物の質量を測定した。また、専門パネラーが、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を用いて作製した各シート状化粧料の表面を凝集物の有無を観察し、「シリカの凝集」を下記評価基準に基づいて評価した。
-「シリカの凝集」の評価基準-
◎ : 篩上に残った凝集物が0.5g以下であり、かつシート状基材表面に凝集物がない
○ : 篩上に残った凝集物が0.5g超え1.5g以下であり、かつシート状基材表面に僅かに凝集物がある
△ : 篩上に残った凝集物が1.5g超え2.5g以下であり、かつシート状基材表面に凝集物がある
× : 篩上に残った凝集物が2.5g超えであり、かつシート状基材表面に凝集物がかなりある
【0053】
<<使用後の肌のさらさら感>>
20代~30代の女性の専門パネラー20名に、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を用いて作製した各シート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭いてもらい、上腕内側に塗布した含浸液が乾いた後、「使用後の肌のさらさら感」を下記評価基準に基づいて評価した。
-「使用後の肌のさらさら感」の評価基準-
◎ : 専門パネラー20名中18名以上20名以下が、「塗布部が無塗布部よりもさらさら感がある」と回答
○ : 専門パネラー20名中14名以上17名以下が、「塗布部が無塗布部よりもさらさら感がある」と回答
△ : 専門パネラー20名中8名以上13名以下が、「塗布部が無塗布部よりもさらさら感がある」と回答
× : 専門パネラー20名中7名以下が、「塗布部が無塗布部よりもさらさら感がある」と回答
【0054】
<<清涼感>>
20代~30代の女性の専門パネラー5名に、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を用いて作製した各シート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭いてもらい、使用してから30分間後の「清涼感」を下記評価基準に基づいて評価した。
-「清涼感」の評価基準-
◎ : 専門パネラー5名中4名以上5名以下が、「清涼感を感じる」と回答
○ : 専門パネラー5名中3名が、「清涼感を感じる」と回答
△ : 専門パネラー5名中2名が、「清涼感を感じる」と回答
× : 専門パネラー5名中1名以下が、「清涼感を感じる」と回答
【0055】
<<肌への刺激のなさ>>
20代~30代の女性の専門パネラー5名に、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を用いて作製した各シート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭いてもらい、使用中の「肌への刺激のなさ」を以下の評価基準により評価した。
-「肌への刺激のなさ」の評価基準-
◎ : 専門パネラー5名中4名以上5名以下が、「刺激を感じない」と回答
○ : 専門パネラー5名中3名が、「刺激を感じない」と回答
△ : 専門パネラー5名中2名が、「刺激を感じない」と回答
× : 専門パネラー5名中1名以下が、「刺激を感じない」と回答
【0056】
<<使用後の肌のべたつきのなさ>>
20代~30代の女性の専門パネラー5名に、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を用いて作製した各シート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭いてもらい、使用直後の「肌(シート状化粧料を持っていた手指及び塗布部の上腕内側)のべたつきのなさ」を下記評価基準に基づいて評価した。結果は、専門パネラー5名の平均評価点を求め、下記判定基準に基づき判定した。
-「使用後の肌のべたつきのなさ」の評価基準-
5点 : べたつきを感じない
4点 : ややべたつきを感じる
3点 : 少しべたつきを感じる
2点 : かなりべたつきを感じる
1点 : 非常にべたつきを感じる
-「使用後の肌のべたつきのなさ」の判定基準-
◎ : 平均評価点が、4点以上
○ : 平均評価点が、2.5点以上4点未満
△ : 平均評価点が、1.5点超え2.5点未満
× : 平均評価点が、1.5点以下
【0057】
<<使用後の肌のかさつきのなさ>>
20代~30代の女性の専門パネラー5名に、実施例1~12及び比較例1~8の各液体化粧料組成物を用いて作製した各シート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭いてもらい、「使用後の肌のかさつきのなさ」を下記評価基準に基づいて評価した。結果は、専門パネラー5名の平均評価点を求め、下記判定基準に基づき判定した。
-「使用後の肌のかさつきのなさ」の評価基準-
5点 : かさつきを感じない
4点 : ややかさつきを感じる
3点 : 少しかさつきを感じる
2点 : かなりかさつきを感じる
1点 : 非常にかさつきを感じる
-「使用後の肌のかさつきのなさ」の判定基準-
◎ : 平均評価点が、4点以上
○ : 平均評価点が、2.5点以上4点未満
△ : 平均評価点が、1.5点超え2.5点未満
× : 平均評価点が、1.5点以下
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
前記実施例及び比較例で使用した各成分の詳細について、下記表4に示す。
【0062】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の液体化粧料組成物及びこれを含侵させた本発明のシート状化粧料は、シリカの凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、使用後の肌のさらさら感、使用後の肌のべたつきのなさ、及び使用後の肌のかさつきのなさに優れるため、例えば、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、身体用デオドラントシート、足用拭き取りシート、介護用清拭シート、皮脂拭き取り用シート、眠気覚まし用シートなどに好適に用いることができる。