(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098482
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】レーダセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20220624BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20220624BHJP
H01Q 13/22 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
G01S7/03 220
H01Q23/00
H01Q13/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205788
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】10 2020 216 362.6
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ホレンダー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ヒンメルシュトス
(72)【発明者】
【氏名】グスタフ・クレット
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ショール
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ニャット・ファム
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB05
5J021CA06
5J021FA13
5J021HA04
5J021JA08
5J045DA04
5J045FA02
5J045HA01
5J045MA04
5J045NA07
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC11
5J070AF03
5J070AK40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】導波管アンテナを回路基板に取り付ける際には、導波管アンテナを回路基板にねじで固定するかまたは接着する必要があり複雑である。
【解決手段】本発明は、レーダセンサの製造方法に関する。回路基板(2)が設けられる。回路基板(2)の表面にレーダ送受信器が取り付けられる。プラスチック製の導波管構造(1)が設けられる。導波管構造(1)内に、少なくとも1つの金属導電膜で被覆された側壁(12、13、14)と1つの開放面(15)とを有する導波管路(10)が構成される。最後に、導波管構造(1)は前記回路基板(2)の表面にはんだ付けされ、開放面(15)は回路基板(2)の方向に向くように配される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板(2)を設けるステップと、
前記回路基板(2)の表面にレーダ送受信器(3)を取り付けるステップと、
プラスチック製の導波管構造(1)を設けるステップと、
前記導波管構造(1)内に、少なくとも1つの金属導電膜で被覆された側壁(12、13、14)と1つの開放面(15)とを有する導波管路(10、10A、10B、10C)を構成するステップと、
前記導波管構造(1)を前記回路基板(2)の表面にはんだ付けするステップとを備え、
前記開放面(15)は前記回路基板(2)の方向に向くように配される、
ことを特徴とする、レーダセンサの製造方法。
【請求項2】
前記導波管路(10)は、金属導電膜で被覆された3つの側壁(12、13、14)を有する矩形の断面形状に構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導波管構造(1)が前記回路基板(2)の表面にはんだ付けされる前に、はんだ付け可能なコーティング(19)が、前記はんだ接合部の範囲で前記導波管構造(1)に塗布されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記導波管路(10、10A、10B、10C)の前記少なくとも1つの被覆された側壁(13)を介した前記導波管構造(1)の外側への開口部の形態で放射素子(11、11A、11B、11C)が実現されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記導波管構造(1)は、前記回路基板(2)の表面にはんだ付けされるモジュールユニット(1,100、101、102、103、104)として構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの送信モジュール(100)と少なくとも1つの受信モジュール(101、102、103、104)とが、それぞれ別々に設けられ、異なる位置で前記回路基板(2)の表面にはんだ付けされることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記導波管構造(1)および前記レーダ送受信器(3)は、前記回路基板(2)の異なる面に配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記導波管構造(1)および前記レーダ送受信器(3)は、前記回路基板(2)の同じ面に配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの導波管路(10、10A、10B、10C)が部分的に前記回路基板(2)内へ続いていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
回路基板(2)と、
前記回路基板(2)の表面にはんだ付けされたプラスチック製の導波管構造(1)であって、少なくとも1つの金属導電膜で被覆された側壁(12、13、14)をもつ導波管路(10、10A、10B、10C)を有し、前記導波管路(10)の他の境界が前記回路基板(1)によって形成されている、導波管構造(1)と、
前記回路基板(2)の表面に配置されたレーダ送受信器(3)と
を備えるレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板にはんだ付けされる導波管構造を有するレーダセンサの製造方法と、それに対応するレーダセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レーダセンサは、例えば自動車に搭載され、例えばアダプティブクルーズコントロールなどの快適機能や、例えば緊急ブレーキアシストなどの安全機能を実現している。レーダセンサは、その際、例えば光学カメラの場合のように画像の解析に依らずに、例えば目標までの距離などの関連する物理量を直接計測する。
【0003】
レーダセンサは、アンテナ構造を介して、高周波のレーダ信号を対象物の方向に送信し、通常は対象物で反射されたレーダ信号を同じアンテナ構造を介して受信する。送受信されたレーダ信号を用いて、対象物までの距離や方向(すなわち角度)を求めることができる。さらに、レーダセンサに対する物体の相対速度を求めることができる。一般的なレーダセンサは、76~81GHzの周波数領域で動作する。
【0004】
レーダセンサのアンテナ構造は、一方では回路基板上の平面アンテナ、特にマイクロストリップアンテナとして構成されている。他方、例えば電力損失が少なく、広帯域性に優れているなど、平面アンテナに比べて高い性能要素を有する3次元導波管アンテナが使用されている。3次元導波管アンテナは、通常、複数の層から構成されており、これら層を複雑な工程で互いに接着したりはんだ付けしたりする必要がある。また、導波管アンテナを回路基板に取り付ける際には、導波管アンテナを回路基板にねじで固定するかまたは接着する必要があり複雑である。
【発明の概要】
【0005】
以下のステップを実施するレーダセンサの製造方法が提案される。
【0006】
レーダセンサのベースとなる回路基板は従来のものを使用する。回路基板は、例えば、低コストの標準的なFR(Flame Retardant Type)4技術によって製造できる。回路基板は、はんだ付けに適した材料、例えば回路基板に一般的に存在する銅構造や、はんだ付けの前に塗布されるはんだペーストを有する。
【0007】
また、レーダセンサのアンテナ構造から出力されるレーダ信号を生成して、アンテナ構造を介して受信したレーダ信号を受信するレーダ送受信器が設けられる。好ましくは、レーダ送受信器は表面実装型デバイス(SMD、surface-mounted device)、特にモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC、monolithic microwave integrated circuit)である。また、レーダ送受信器は、送受信分離型ユニットとして構成することもできる。回路基板の表面には、レーダ送受信器が取り付けられている。
【0008】
プラスチック製の導波管構造が設けられる。導波管構造は、元々はプラスチックブロックである。後述するように、導波管構造には導波管路が構成されている。導波管構造は、レーダセンサのアンテナ構造として機能し、導波管路は、レーダセンサから送出されたりレーダセンサで受信されたりするレーダ信号のための導波管として機能する。ここで、導波管路は、導波管構造内に、少なくとも1つの金属導電膜で被覆(コーティング)された側壁を有し、さらに、導波管構造によって制限されない開放面を有するように構成される。金属導電性コーティングは金属からなり、導電性である。開放面は、全ての導波管路に対して導波管構造と同じ側に構成される。また導波管路は、その形状によっては複数の側壁を有する場合もある。ここで、個々の導波管路の形状は互いに異なっていてもよい。導波管構造では、導波管路を形成する全ての側壁が金属導電性コーティングで被覆されている。金属導電性コーティングは、少なくとも1つの側壁のみに形成されもよいし、導波管構造を部分的または完全に取り囲むものでもよい。
【0009】
導波管構造は回路基板の表面にはんだ付けされている。ここで、導波管構造では、導波管路の開放面が回路基板の方向に向くように配されている。導波管構造と回路基板とを接続するためには、それ自体公知なはんだ付けが使用される。例えば、ここでは、はんだペーストのマスク印刷を利用したリフローはんだ付けなどが挙げられる。ここで、導波管構造の導電性コーティングは、回路基板のはんだ付けに適した材料で、すなわち銅構造やはんだペーストで直接はんだ付けされることができる。さらに、導波管路の横に穴やスリットを設けることで、例えば赤外線による加熱などによって、はんだ接合部への最適な熱伝導が可能になる。導波管構造と回路基板とを接続することで、導波管路の開放面が回路基板で閉じられるため、完全に包囲された導電性導波管路が形成される。
【0010】
その結果、導波管構造と回路基板とをはんだ付けすることで、導波管構造内の少なくとも1つの側壁と回路基板とよって導波管が形成される。これには複数の利点がある。回路基板の表面を利用することで、一体型の導波管構造が使用できる。これは、通常、接着、はんだ付けまたはねじ止めする必要がある、一般的に使用されている多層で複雑なプラスチックまたは金属の薄板積層構造とは対照的に、複雑でなく、コストの安い構造を提供している。必要な部品数を減らし、回路基板製造時に特殊な高周波材料を使用せず、モジュール組付時の工程ステップをはんだ付けの工程のみに減らすことで、安定したシンプルな組付工程と最適な価格性能比が生じる。複雑さを減らし、工程ステップを減らすことで、安定性、品質、耐用年数も向上する。同時に、当該はんだ接続は導波管構造を回路基板に機械的に固定する役割も果たす。はんだ付けプロセスの際には引っ張り力が発生し、このために導波管路は表面全体にわたって重大な空隙がない状態で閉じられている。これにより、高周波の接続が非常に良好になる。さらに、はんだ付け工程の際には、はんだが溶けるため、はんだに表面張力が生じる。これにより、はんだ付け工程の間に導波管構造および回路基板が自己調心(自動調心)し、接合時の組付公差をある程度補償することができる。したがって、2つの構成部材が互いに多少ねじれたり、ずれたりしても、導波管路を回路基板上の正しい位置に引き込むことができる。
【0011】
一般的に、導波管路には様々な形状が考えられる。好ましくは、導波管路は、断面が矩形の形状を有する。矩形の導波管では、容易に実現可能なモードでレーダ信号を供給することができる。この場合、導波管構造には金属導電膜で被覆(コーティング)された3つの側壁が構成されており、4つ目の面は、はんだ付け後に回路基板によって制限される開放面となる。導波管構造内に金属導電膜で被覆された側壁が1つのみ構成された、(半)楕円形の導波管路を設けてもよい。代替的に、金属導電膜で被覆された複数の側壁を有する多角形の導波管路を設けてもよい。
【0012】
はんだ付け工程には、はんだ付けに適しており、はんだ接合部を覆うものであれば、金属導電性コーティングが使用可能である。それができない場合や、はんだ付けを向上させる必要がある場合には、はんだ接合部の範囲にはんだ付け可能な追加のコーティングを設けてもよい。このコーティングは、導波管構造を回路基板の表面にはんだ付けする前に塗布される。有利には、はんだ付け可能なコーティングは、はんだ付け工程時に回路基板のはんだペーストと接触するように配置されている。
【0013】
既に上述したように、導波管路は導波管として機能する。所期の放射を達成するために、放射素子が設けられている。好ましくは、これらは、導波管路の少なくとも1つの被覆された側壁を介した導波管構造の外側への開口部の形態で実現される。開口部は、例えばスリット状に構成されている。
【0014】
導波管構造は、上述のように、回路基板とは別々に製造することができる。そのため、導波管構造をモジュールユニットとして構成することも可能である。モジュールユニットは、封鎖された機能ユニットを形成し、構造的に回路基板から分離して実現でき、その後回路基板にはんだ付けされる独立したモジュールである。また、同一の回路基板に複数のモジュールユニットを接続することもできる。したがって、同じ基板を異なるモジュールユニットに使用することができる。導波管構造のサイズは、回路基板のサイズとは関係なく選択することができる。これにより、用途や要件(例えば、レンジ、角度範囲、角度精度など)に応じて、適切なモジュールユニットを構成することができる。また、異なる用途や要求に対して汎用的なモジュールを提供することも可能である。好ましくは、回路基板上の搭載位置は、異なるモジュールユニットに対しても同じままである。さらに、モジュールユニットとして実現することで、さらなる利点が生じる。
【0015】
- 導波管構造と回路基板との間の熱膨張係数の差についての要求が低下する。
- 回路基板上の導波管構造の位置に関する許容範囲についての要求が低下する。
- 製造工程や、経年変化および温度の影響に関するねじれや膨らみについて、回路基板の配置構成における要求が低下する。
- 導波管構造は、導波管路でより良好に回路基板にはんだ付けできる。
- 別々に配置されたモジュールでは、例えば表面波などによる導波管路間のクロスカップリングを最小化できる。
- 導波管構造と、例えば車両のカバー(レドーム)やバンパーなど他の部品との間の多重反射が、導波管構造の総表面積に比例して減少する。
- アンテナモジュールは、同一部品の概念(回路基板に対する外形寸法、接点位置が同一)に相当し得るため、認定試験、環境試験、信頼性試験を大幅に削減することができる。
【0016】
特に、上述したように、少なくとも1つの送信モジュールと少なくとも1つの受信モジュールとが、それぞれ独立した導波管構造として構成され、それらを別々に設けることが企図される。少なくとも1つの送信モジュールと少なくとも1つの受信モジュールとは、異なる位置で回路基板の表面にはんだ付けされる。これにより、上述したように、送信モジュールと受信モジュールとを互いに独立して構成または選択することができる。
【0017】
一般的に、現在は、複数のアンテナ経路を有するレーダセンサが使用されている。複数の導波管路が導波管構造または複数のモジュールユニットにまとめて構成されていることが企図され得る。放射素子、ひいては導波管路は、単一の放射器として構成されても、アレイ状に配置されてもよく、所望のアンテナパラメータ(アンテナ利得やサイドローブの減衰など)を実現する。レーダセンサの性能、特にそれを用いて行う角度推定のためには、個々の送信モジュールと受信モジュールの放射素子の間隔と正確なアラインメントとを正確に把握することが重要である。これに対して、送信モジュールと受信モジュールの位置は自由に選択可能であり、特別な位置の要求はない。
【0018】
レーダ送受信器は、概ね回路基板の1つの表面に2つの異なるバリエーションで取り付けることができる。ある変形例では、導波管構造とレーダ送受信器は、回路基板の異なる面に配置できる。好ましくは、レーダ送受信器は導波管構造と対向する面に配置される。そして、レーダ信号は回路基板を介して導波管路に供給される。このために、導波管遷移部、結合構造、および/または金属のスルーホールを有する導電性供給部を設けてもよい。回路基板は一般的に比較的薄いため、レーダ送受信器と導波管構造との間で短い直接的な結合が可能である。その他の表面実装型デバイス(SMD、surface-mounted device)は、レーダ送受信器と同じ面に配置されることが好ましい。したがって、片側の搭載プロセスで十分であり、これにより製造コストが削減される。さらに、回路基板は片面のみ加熱されるため、この面に熱伝導素子を設けてもよい。さらに、上述のモジュールユニットに関連して、表面には他の構成要素が設けられていないため、導波管構造のモジュールユニットは、完全な表面上に配置および接続することができるという利点がある。さらに、SMDの光学品質管理、特にはんだ接合部の光学品質管理を片側から行うことができる。基本的には、他のSMDは、他の、例えば横方向の面や、導波管構造と同じ面、場合によっては導波管構造の下に配置されてもよい。
【0019】
他の変形例では、導波管構造およびレーダ送受信器を回路基板の同一表面上に配置してもよい。レーダ信号は、1つまたは複数の導波管路に直接入力したり、導波管路から出力したりできる。これにより、レーダ信号の入出力が容易になり、回路基板を貫通するスルーコンタクトを省略できる。他の表面実装型デバイス(SMD)は、同一面および対向面に配置されることが好ましい。これにより、より高いパッケージ密度が可能となり、回路基板の小型化、ひいてはレーダセンサの小型化につながる。しかし、SMDを導波管構造の表面に配置することにより、導波管構造や導波管路のスペースが減少する。基本的には、他のSMDは他の面に配置されてもよい。レーダ送受信器および/またはSMDが導波管構造と同じ面に配置され、導波管構造で覆われている場合、これらは導波管構造の金属コーティングによって覆われる。これにより導波管構造は、電磁両立性(EMC、electromagnetic compatibility)の観点からもシールドケージとして作用する。
【0020】
また、片側が開放されている導波管構造は、レーダ信号を導波管路に出入力するための、回路基板への遷移をさらに実現することができる。導波管路は、部分的に回路基板内へ続いていてもよい。これにより、回路基板をパターニングすることで、導波管路内で直接、良好な出入力が可能になる。このために、導波管路に突出したビアを設けてもよい。ここで、回路基板への遷移は、導波管路内の1つ以上の段で行われるか、またはスロープや他の適応構造によって行われる。これで、導波管路には単体の導管による供給ができるようになる。
【0021】
また、回路基板、プラスチック製導波管構造、レーダ送受信器を有するレーダセンサも提案されている。導波管構造は、回路基板の表面にはんだ付けされている。また、この導波管構造は、少なくとも1つの金属導電膜で被覆(コーティング)された側壁を有する導波管路を有する。ここで、導波管路の他の境界は、回路基板によって形成されている。レーダ送受信器は、回路基板の表面に構成されている。レーダセンサの利点と考えられる改善構成については、上記の説明を参照されたい。
【0022】
本発明の実施例を図面に示し、以下の説明で詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例に係るレーダセンサの等角断面図である。
【
図2】本発明に係る方法の一実施形態による、はんだ付け工程前の導波管構造と回路基板の部分断面図である。
【
図3】本発明に係る方法の一実施形態による、はんだ付け工程前の導波管構造と回路基板の他の部分断面図である。
【
図4】本発明に係る方法の一実施形態による、はんだ付け工程後の導波管構造と回路基板の部分断面図である。
【
図5】本発明に係る方法の他の実施形態による、はんだ付け工程後の導波管構造と回路基板の部分断面図である。
【
図6a】本発明に係るレーダセンサの実施例を示す等角図である。
【
図6b】本発明に係るレーダセンサの実施例を示す等角図である。
【
図7a】本発明に係るレーダセンサの実施例の平面図である。
【
図7b】本発明に係るレーダセンサの実施例の平面図である。
【
図7c】本発明に係るレーダセンサの実施例の平面図である。
【
図7d】本発明に係るレーダセンサの実施例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の実施例に係るレーダセンサの等角断面図である。レーダセンサは、ブロック状に構成されたプラスチック製の導波管構造1と、複数の層からなる回路基板(多層回路基板)2とを有し、これは標準的なFR4技術を用いて製造されたものである。この導波管構造1は、以下に詳述するはんだ付け工程によって回路基板2の表面(以下、上面と呼ぶ)に接続されている。導波管構造1は、断面が矩形の複数の導波管路10を有し、回路基板2の表面とともにレーダ信号の導波管として機能する。このようにして、レーダセンサ用のアンテナ構造が形成される。導波管路10の詳細な説明については、以下の説明を参照されたい。導波管構造1には、導波管路10と導波管構造1の表面とを接続し、レーダ信号の放射素子11として機能する複数のスリット状開口部が形成されている。さらに、このレーダセンサはレーダ送受信器3を有し、レーダ送受信器3は、本例では、導波管構造1と対向する回路基板2の表面(以下、下面と呼ぶ)に表面実装型デバイス(SMD、surface-mounted device)として配置され、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC、Monolithic Microwave Integrated Circuit)として構成されている。レーダ送受信器3は、複数のスルーホール31を介して回路基板2を貫通し、導波管構造1の導波管路10に接続されている。レーダ送受信器3は、レーダセンサから送出されるレーダ信号を生成し、このレーダ信号をスルーホール31を介して導波管路10に供給し、導波管路10はその後放射素子11を介してレーダ信号を放射する。レーダセンサが放射素子11および導波管路10を介して受信したレーダ信号は、スルーホール31を介してレーダ送受信器3に送られ、そこで処理される。さらに、レーダ送受信器3は熱伝導材32を有し、この熱伝導材を介して、レーダ送受信器3で発生した熱が図示しないハウジングに放出される。
【0025】
図2は、導波管構造1および回路基板2の部分断面図を示す。ここでは、導波管構造1および回路基板2はまだ互いにはんだ付けされていない。導波管構造1には、導波管構造1に形成された3つの側壁12、13、14を有する導波管路10が構成されている。断面では、3つの側壁12、13、14は矩形の3辺を表している。矩形の第4の辺15は開放されており、回路基板2の方を向いている。少なくとも側壁12、13、14、本実施例では導波管構造1の面全体が、金属の導電性コーティング18で被覆されている。導波管路10の上部側壁13は、放射素子11として機能するスリット状の開口部を有する。導波管路10の開放面15と側面12、14との間の角部には、それぞれ回路基板2の表面にはんだ付けするためのはんだ接合部16、17が設けられている。さらに、はんだ接合部16、17には、はんだ付け可能なコーティング19が設けられている。金属の導電性コーティング18も同様に十分にはんだ付け可能であり、はんだ接合部16、17上に広がっている場合には、追加のはんだ付け可能なコーティング19を省略することができる。回路基板2は、少なくとも導波管構造1と対向する面に銅層21を有する。回路基板2の表面における上記のはんだ接合部16、17に対応する位置には、はんだペースト22が塗布されている。さらに外側にはソルダレジスト(はんだレジスト)23が設けられており、はんだ付けをはんだ接合部16、17に限定して行うことができるる。
【0026】
図3は、
図2の断面とは直交する別の断面にて、はんだ付け工程前の導波管構造1および回路基板2を全体の高さで示す別の部分を表すものである。同一の要素には同一の参照符号を付し、この点については上述の説明を参照されたい。レーダ送受信器3は、回路基板2の下面、すなわち導波管構造1の対向面に、はんだ付け前に既に取り付けられている。他の実施形態では、レーダ送受信器3は、はんだ付け後に取り付けることもできる。導波管路10とスルーホール31とは、はんだ付け後に結合されるように配置されている。導波管構造1は、回路基板2の表面にはんだペースト22で取り付けられる。その後、導波管構造1と回路基板2とは、少なくともはんだ接合部16、17で互いにはんだ付けされる。このために、回路基板2上のはんだ接合部16、17に配置されたはんだペースト22を用いて、それ自体公知のリフローはんだ付けが行われる。はんだ付けプロセスの際には引っ張り力が発生するため、導波管路10は、表面全体にわたって重大な空隙がない状態で閉じられる。さらに、はんだ付け工程では、はんだペースト22中のはんだの溶融が起こるため、はんだに表面張力が発生する。これにより、導波管構造1および回路基板2は、はんだ付け工程の間に自己調心(自動調心)する。
【0027】
図4には、一実施形態に係るはんだ付け後の
図3の断面図が示されている。はんだ付け後、導波管構造1および回路基板2は強固に接続されている。回路基板2の表面の銅層21は、導波管路の開放面15を閉じるため、導波管として機能する、完全に閉じられた矩形の導波管路10が形成される。この実施形態では、回路基板2の下面に他のSMD4が配置されている。
【0028】
図5には、他の実施形態が示されている。ここでも、はんだ付け後の導波管構造1および回路基板2が示されている。本実施形態は、レーダ送受信器3が回路基板2の上面、すなわち導波管構造1と同じ面に取り付けられている点が、上述したものとは異なる。この例では、レーダ送受信器3は、導波管構造1に囲まれているので、被覆されている。回路基板2を貫通するスルーホール31は省略されてもよい。代わりに、レーダ送受信器3は、直接的なコンタクト部33を介して導波管路10に結合されている。この実施形態では、回路基板2の下面と上面(導波管構造1の下側)の両方に、他のSMD4が配置されている。レーダ送受信器3を回路基板2の上面に取り付けたこの実施形態は、他の実施例にも適用できる。
【0029】
以上の実施例では、1つの導波管路10のみを説明した。しかし、一般的には、複数のアンテナ経路、例えば最大32の経路が設けられている。
図6aおよび
図6bには、複数のアンテナ経路を実現した2つの実施例が示されている。同じ要素にはここでも同じ参照符号が付けられており、上記の説明を参照されたい。
図6aでは、導波管構造1は、閉じられた機能ユニットを形成し、レーダ信号を送信する機能と反射されたレーダ信号を受信する機能とを統合したモジュールユニットとして構成されている。本実施例では、導波管構造1は、このために、レーダ信号送信用の対応する放射素子11Aを有する4つの導波管路10Aと、レーダ信号受信用の対応する放射素子11Bを有するさらに3つの導波管路10Bとを有し、これらは、レーダ送受信器3に個別に接続されている。導波管構造1の大きさは、回路基板2の大きさとは関係なく選択できるため、この実施例では、回路基板2の上面にSMD4が取り付けられている。
【0030】
図6bでは、送信および受信の機能を統合した1つのモジュールユニットの代わりに、導波管構造の複数のモジュールユニットが構成されている。第1のモジュールユニット100は送信モジュールとして構成されており、レーダ信号を送信する機能のみを備えている。このため、送信モジュール100は、レーダ信号送信用の対応する放射素子11Aを備えた3つの導波管路10Aを有する。他の2つのモジュールユニット101、102は受信モジュールとして構成されており、レーダ信号を受信する機能のみを備えている。このため、各受信モジュール101、102は、レーダ信号受信用の対応する放射素子11Bを備えた導波管路10Bを有する。モジュールユニット100、101、102は、互いに独立したサイズを有し、回路基板2のサイズからも独立しているため、この実施例では、回路基板2の上面にSMD4が取り付けられている。
【0031】
用途に応じて、導波管路や放射素子の数を選択することができる。さらに、モジュールユニットは、用途に応じて交換や異なる組み合わせが可能である。さらに、複数の汎用モジュールを用意することが可能であるため、レーダセンサをキットから組み立ててもよい。この場合、回路基板上のモジュールの位置は同じであるため、はんだ接合部は変化しない。さらに、上述の実施例では、他のSMD4を、回路基板2の下面または他の一方の面に配置してもよい。
【0032】
図7aから
図7dはそれぞれ、モジュールユニットの異なる配置構成を表す、複数の実施例のレーダセンサの平面図である。
図7aには、SMD4を除いた
図6aの配置構成が示される。ここでは、モジュールユニットが送信および受信の機能を果たす。
図7bには、
図6bで説明した送信モジュール100および受信モジュール101が示されている。送信モジュール100は、レーダ信号を送信するように構成されており、受信モジュール101は、レーダ信号を受信するように構成されている。2つのモジュール100、101の位置は任意に選択可能であり、矢印で示されているように相対的に移動させることができる。解析、特にレーダセンサによる角度の推定には、モジュール101,101の正確な距離と互いの正確な向きのみが重要となる。したがって、回路基板2の表面に複数のSMD4を配置するスペースを設けることができる。これは、後述の実施例にも該当する。
図7cには、同様に送信モジュール100および受信モジュール103が示されている。受信モジュール103は、
図7bのものとは異なる形状を有する。
図7c,
図7dには、同様に送信モジュール100および受信モジュール104が示されている。この例では、受信モジュール104は、個々の導波管路10Bに加えて、複数の放射素子11Cを有する導波管路アレイ10Cも有し、導波管路アレイ10Cも同様にレーダ信号を受信する機能を果たす。
【0033】
さらに、全ての実施形態において、導波管路10が部分的に回路基板2内へ続くようにされることが企図され得る(図示せず)。そのために、導波管路10に突出する金属のビアを設けてもよい。ここで、回路基板2への遷移は、導波管路10の1つ以上の段で行うことができ、または、スロープや他の適応構造によって行うことができる。導波管路10には、単体の線路を介して給電がなされる。例えば、線路の端点は、矩形導波管路10にH10基本モードを励起させるために、側壁12、14から波長の1/4の距離を有する。
【外国語明細書】